説明

ワイヤーハーネス保持クランプ

【課題】ワイヤーハーネスのU字状経路部の様々な形状やワイヤーハーネスの様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができるワイヤーハーネス保持クランプを提供する。
【解決手段】本クランプは、ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプ1であって、ワイヤーハーネスを保持するための第1ベルト3及び第2ベルト4と、第1ベルトに接続され、第1ベルトを保持する第1保持孔5aが形成された第1移動部材5と、第2ベルトに接続され、第2ベルトを保持する第2保持孔6aが形成された第2移動部材6と、第1移動部及び第2移動部の間に設けられ、第1ベルト及び第2ベルトが挿通される挿通部材7と、を備え、第1移動部材及び第2移動部材のそれぞれには、ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向CDから挟持するための横壁部13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス保持クランプに関し、さらに詳しくは、ワイヤーハーネスのU字状経路部の様々な形状やワイヤーハーネスの様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができるワイヤーハーネス保持クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるクランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、長方形板状の樹脂ベースに、この樹脂ベースとの間でワイヤーハーネスを保持する抑え部材と、ワイヤーハーネスを案内するU字状ガイドと、を設けてなるクランプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−125162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の技術では、樹脂ベースに対してU字状ガイドが移動不能に配置されているので、ワイヤーハーネスのU字状経路部の形状(例えば、U字状経路部の横方向の幅の大きさ等)やワイヤーハーネスの径の大きさが制限されてしまう。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ワイヤーハーネスのU字状経路部の様々な形状やワイヤーハーネスの様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができるワイヤーハーネス保持クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプであって、前記ワイヤーハーネスを保持するための第1ベルト及び第2ベルトと、前記第1ベルトに接続され、前記第1ベルトを保持する第1保持孔が形成された第1移動部材と、前記第2ベルトに接続され、前記第2ベルトを保持する第2保持孔が形成された第2移動部材と、前記第1移動部及び前記第2移動部の間に設けられ、前記第1ベルト及び前記第2ベルトが挿通される挿通部材と、を備え、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向から挟持するための横壁部が設けられ、前記挿通部材に挿通された前記第1ベルト及び前記第2ベルトを引くことで前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間隔を調整して前記横壁部の間で前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持するとともに、前記第1ベルトを前記第1保持孔に挿入保持し且つ前記第2ベルトを前記第2保持孔に挿入保持することで前記ワイヤーハーネスを保持することを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項2に記載の発明は、ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプであって、前記ワイヤーハーネスを保持するためのベルトと、前記ベルトに接続され、前記ベルトを保持する保持孔が形成された第1移動部材と、前記ベルトが挿通される第2移動部材と、前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間に設けられ、前記ベルトが挿通される挿通部材と、を備え、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向から挟持するための横壁部が設けられ、前記挿通部材及び前記第2移動部材に挿通された前記ベルトを引くことで前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間隔を調整して前記横壁部の間で前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持するとともに、前記ベルトを前記保持孔に挿入保持することで前記ワイヤーハーネスを保持することを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部の縦方向への移動を規制する奥壁部が設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項記載において、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部の高さ方向への移動を規制する抑え部が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のワイヤーハーネス保持クランプによると、挿通部材に挿通された第1ベルト及び第2ベルトを引くことで第1移動部材及び第2移動部材の間隔が調整されて横壁部の間でワイヤーハーネスのU字状経路部が挟持されるとともに、第1ベルトを第1保持孔に挿入保持し且つ第2ベルトを第2保持孔に挿入保持することでワイヤーハーネスが保持される。これにより、ワイヤーハーネスのU字状経路部の様々な形状やワイヤーハーネスの様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。特に、比較的狭い空間であっても、設計通りの線長で周辺部品に干渉しないようにワイヤーハーネスのU字状経路部を形成することができる。
他の本発明のワイヤーハーネス保持クランプによると、挿通部材及び第2移動部材に挿通されたベルトを引くことで第1移動部材及び第2移動部材の間隔が調整されて横壁部の間でワイヤーハーネスのU字状経路部が挟持されるとともに、ベルトを保持孔に挿入保持することでワイヤーハーネスが保持される。これにより、ワイヤーハーネスのU字状経路部の様々な形状やワイヤーハーネスの様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。特に、比較的狭い空間であっても、設計通りの線長で周辺部品に干渉しないようにワイヤーハーネスのU字状経路部を形成することができる。
また、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれに奥壁部が設けられている場合は、奥壁部によりワイヤーハーネスのU字状経路部の縦方向への移動が規制される。よって、ワイヤーハーネスの位置ずれを抑制して保持することができる。
さらに、前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれに抑え部が設けられている場合は、抑え部によりワイヤーハーネスのU字状経路部の高さ方向への移動が規制される。よって、ワイヤーハーネスの位置ずれを抑制して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るクランプの斜視図を示す。
【図2】上記クランプの分解斜視図を示す。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】上記クランプの作用を説明するための説明図である。
【図7】上記クランプの作用を説明するための説明図である。
【図8】上記クランプの作用を説明するための説明図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】実施例2に係るクランプの斜視図を示す。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】上記クランプの作用を説明するための説明図である。
【図13】上記クランプの作用を説明するための説明図である。
【図14】その他の形態のクランプを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.ワイヤーハーネス保持クランプ
本実施形態1.に係るワイヤーハーネス保持クランプは、ワイヤーハーネス(2)をU字状経路部(2a)を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプ(1)であって、ワイヤーハーネスを保持するための第1ベルト(3)及び第2ベルト(4)と、第1ベルトに接続され、第1ベルトを保持する第1保持孔(5a)が形成された第1移動部材(5)と、第2ベルトに接続され、第2ベルトを保持する第2保持孔(6a)が形成された第2移動部材(6)と、第1移動部及び第2移動部の間に設けられ、第1ベルト及び第2ベルトが挿通される挿通部材(7)と、を備え、第1移動部材及び第2移動部材のそれぞれには、ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向(CD)から挟持するための横壁部(13)が設けられている(例えば、図1及び図8等参照)。そして、挿通部材(7)に挿通された第1ベルト(3)及び第2ベルト(4)を引くことで第1移動部材(5)及び第2移動部材(6)の間隔を調整して横壁部(13)の間でワイヤーハーネス(2)のU字状経路部(2a)を挟持するとともに、第1ベルト(3)を第1保持孔(5a)に挿入保持し且つ第2ベルト(4)を第2保持孔(6a)に挿入保持することでワイヤーハーネスを保持することを特徴とする。なお、上記「U字状経路部の横方向」とは、U字状経路部を文字(U字)として平面から見た場合の左右方向を意図する。
【0011】
上記実施形態1.に係るワイヤーハーネス保持クランプとしては、例えば、上記第1移動部材(5)及び第2移動部材(6)のそれぞれには、ワイヤーハーネス(2)のU字状経路部(2a)の縦方向(LD)への移動を規制する奥壁部(14)が設けられている形態A(例えば、図5等参照)を挙げることができる。なお、上記「U字状経路部の縦方向」とは、U字状経路部を文字(U字)として平面から見た場合の上下方向を意図する。
【0012】
上記実施形態1.に係るワイヤーハーネス保持クランプとしては、例えば、上記第1移動部材(5)及び第2移動部材(6)のそれぞれには、ワイヤーハーネス(2)のU字状経路部(2a)の高さ方向(HD)への移動を規制する抑え部(15)が設けられている形態B(例えば、図4等参照)を挙げることができる。なお、上記「U字状経路部の高さ方向」とは、U字状経路部の横幅方向及び縦方向と略直交する方向を意図する。
【0013】
上記実施形態1.に係るワイヤーハーネス保持クランプとしては、例えば、上記横壁部(13)は、第1横壁部(13a)と、上記保持孔(5a、6a)が形成され第1横壁部より低い高さの第2横壁部(13b)と、を有する形態C(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、ワイヤーハーネスの径が比較的小さな場合であっても、ベルトをワイヤーハーネスの外周に巻き付けた状態で保持孔に保持でき、ワイヤーハーネスを強固に保持できる。
【0014】
上記実施形態1.に係るワイヤーハーネス保持クランプとしては、例えば、上記挿通部材(7)は、中央側より両横側の高さが低くなる形状に形成されている形態D(例えば、図9等参照)を挙げることができる。これにより、ワイヤーハーネスの傷付きを抑制できる。
【0015】
2.ワイヤーハーネス保持クランプ
本実施形態2.に係るワイヤーハーネス保持クランプは、ワイヤーハーネス(2)をU字状経路部(2a)を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプ(21)であって、ワイヤーハーネスを保持するためのベルト(23)と、ベルトに接続され、ベルトを保持する保持孔(25a)が形成された第1移動部材(25)と、ベルトが挿通される第2移動部材(26)と、第1移動部材及び第2移動部材の間に設けられ、ベルトが挿通される挿通部材(27)と、を備え、第1移動部材及び第2移動部材のそれぞれには、ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向(CD)から挟持するための横壁部(13)が設けられている(例えば、図10及び図12等参照)。そして、挿通部材(27)及び第2移動部材(26)に挿通されたベルト(23)を引くことで第1移動部材(25)及び第2移動部材(26)の間隔を調整して横壁部(13)の間でワイヤーハーネス(2)のU字状経路部(2a)を挟持するとともに、ベルト(23)を保持孔(25a)に挿入保持することでワイヤーハーネスを保持することを特徴とする。なお、上記「U字状経路部の横方向」とは、U字状経路部を文字(U字)として平面から見た場合の左右方向を意図する。
【0016】
上記実施形態2.に係るワイヤーハーネス保持クランプとしては、例えば、上記実施形態1.で説明した形態A〜Dのうちの1種又は2種以上の組み合わせを適用することができる。なお、上記形態Cでは、通常、上記横壁部(13)は、第1横壁部(13a)と、上記保持孔(25a)又は挿通孔(26a)が形成され第1横壁部より低い高さの第2横壁部(13b)と、を有する(例えば、図10等参照)。
【0017】
3.ワイヤーハーネスの保持方法
本実施形態3.に係るワイヤーハーネスの保持方法は、上記実施形態1.のワイヤーハーネス保持クランプ(1)を用いて、ワイヤーハーネス(2)をU字状経路部(2a)を形成するように屈曲した状態で保持する方法であって、上記第1移動部材(5)及び第2移動部材(6)のそれぞれの横壁部(13)の間にワイヤーハーネスのU字状経路部を配置する工程と、上記挿通部材(7)に挿通された第1ベルト(3)及び第2ベルト(4)を引くことで第1移動部材及び第2移動部材の間隔を調整して横壁部の間でワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持する工程と、上記第1ベルト(3)を第1保持孔(5a)に挿入保持し且つ第2ベルト(4)を第2保持孔(6a)に挿入保持する工程と、を備えることを特徴とする(例えば、図6〜図8等参照)。これにより、ワイヤーハーネスのU字状経路部の形状やワイヤーハーネスの径の大きさに制限されることなく、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。特に、比較的狭い空間であっても、設計通りの線長で周辺部品に干渉しないようにワイヤーハーネスのU字状経路部を形成することができる。
【0018】
4.ワイヤーハーネスの保持方法
本実施形態4.に係るワイヤーハーネスの保持方法は、上記実施形態2.のワイヤーハーネス保持クランプ(21)を用いて、ワイヤーハーネス(2)をU字状経路部(2a)を形成するように屈曲した状態で保持する方法であって、上記第1移動部材(25)及び第2移動部材(26)のそれぞれの横壁部(13)の間にワイヤーハーネスのU字状経路部を配置する工程と、上記挿通部材(27)及び第2移動部材に挿通されたベルト(23)を引くことで第1移動部材及び第2移動部材の間隔を調整して横壁部の間でワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持する工程と、上記ベルト(23)を保持孔(25a)に挿入保持する工程と、を備えることを特徴とする(例えば、図12及び図13等参照)。これにより、ワイヤーハーネスのU字状経路部の形状やワイヤーハーネスの径の大きさに制限されることなく、ワイヤーハーネスを屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。特に、比較的狭い空間であっても、設計通りの線長で周辺部品に干渉しないようにワイヤーハーネスのU字状経路部を形成することができる。
【実施例】
【0019】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0020】
<実施例1>
(1)ワイヤーハーネス保持クランプの構成
本実施例に係るワイヤーハーネス保持クランプ1(以下、単に「クランプ1」とも記載する。)は、図1及び図2に示すように、ワイヤーハーネス2(図6参照)を保持するための可撓性を有する第1ベルト3及び第2ベルト4と、第1ベルト3の一端側に接続された樹脂製の第1移動部材5と、第2ベルト4の一端側に接続された樹脂製の第2移動部材6と、これら第1移動部5及び第2移動部6の間に設けられた樹脂製の挿通部材7と、を備えている。上記第1移動部材5には、第1ベルト3を保持する第1保持孔5aが形成されている。また、第2移動部材6には、第2ベルト4を保持する第2保持孔6aが形成されている。さらに、挿通部材7には、第1ベルト3及び第2ベルト4が挿通される縦断面略T字状の挿通孔7aが形成されている。
【0021】
上記第1ベルト3及び第2ベルト4のそれぞれの表面側には、図3に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔で複数の係止溝3a、4aが形成されている。上記第1移動部材5の第1保持孔5aには、第1ベルト3の係止溝3aに係止して第1ベルト3を保持する係止突起9が設けられている。また、第2移動部材6の第2保持孔6aには、第2ベルト4の係止溝4aに係止して第2ベルト4を保持する係止突起10が設けられている。さらに、上記挿通部材7の挿通孔7aには、第1ベルト3の係止溝3aに係止して第1ベルト3を保持する係止突起11aと、第2ベルト4の係止溝4aに係止して第2ベルト4を保持する係止突起11bと、が設けられている。
【0022】
なお、上記係止溝3a、4a及び係止突起9、10、11a、11bは、両者の係止により各孔5a、6a、7aに対する各ベルト3、4の抜け方向への移動が規制される一方、各孔5a、6a、7aに対して各ベルト3、4を挿入方向に移動させる場合には両者の係止及び解除が繰り返されるように構成されている。
【0023】
上記各移動部材5、6のそれぞれには、図1及び図2に示すように、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aを横方向CDから挟持するための板状の横壁部13が設けられている(図8参照)。この横壁部13は、第1横壁部13aと、この第1横壁部13aと横壁部の長手方向に連なり上記保持孔5a、6aが形成され第2横壁部13bと、を有している。この第2横壁部13bの高さh2は、第1横壁部13aの高さh1より小さな値に設定されている(図3参照)。
【0024】
また、上記各移動部材5、6のそれぞれには、図1及び図2に示すように、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの縦方向LDへの移動を規制する湾曲板状の奥壁部14が設けられている(図5参照)。この奥壁部14は、上記横壁部13の長手方向の一端側から横壁部13の長手方向と交差する方向に延びている。そして、この奥壁部14は、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの縦方向LDの先端側が当接可能とされている。
【0025】
また、上記各移動部材5、6のそれぞれには、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの高さ方向HDへの移動を規制する庇状の抑え部15が設けられている(図4参照)。この抑え部15は、横壁部13の長手方向の一端側の上端縁から横壁部13の長手方向と交差する方向に延びている。さらに、各移動部材5、6には、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aが載置される載置部16が設けられている。この載置部16は、横壁部13の長手方向にわたって下端縁から横壁部13の長手方向と交差する方向に延びている。
【0026】
上記挿通部材7は、図1及び図2に示すように、中央側が上方に突出した段差形状に形成されている。この挿通部材7の下側には、図示しない相手部材(例えば、車両天井材等)に形成された取付座に嵌合される周知のクランプ部7bが設けられている。
【0027】
(2)ワイヤーハーネス保持クランプの作用
次に、上記構成のクランプ1を用いるワイヤーハーネス2の保持方法について説明する。先ず、図6に示すように、ワイヤーハーネス2を折り曲げて予めU字状経路部2aを形成し、そのU字状経路部2aを各移動部材5、6の各横壁部13の間に配置する。このとき、U字状経路部2aは、その底側が載置部16に載置されるとともに、その縦方向LDの先端側が奥壁部14に当接される。次に、図7に示すように、挿通部材7に挿通された第1ベルト3及び第2ベルト4を引き上げると、各移動部材5、6が近接して両者の間隔が調整されて横壁部13の間でU字状経路部2aが挟持される。このとき、各ベルト3、4は、係止溝3a、4aと係止突起11a、11bとの係止により挿通孔7aに保持され、引き上げられた状態に保たれる。
【0028】
次いで、図8に示すように、第1ベルト3を、第1移動部材5の横壁部13に当接したワイヤーハーネス2を囲うように第1保持孔5aに挿入して下方に引き下げるとともに、第2ベルト4を、第2移動部材6の横壁部13に当接したワイヤーハーネス2を囲うように第2保持孔6aに挿入して下方に引き下げる。すると、各ベルト3、4は、係止溝3a、4aと係止突起9、10との係止により各保持孔5a、6aに保持され、ワイヤーハーネス2の外周に巻き付けられた状態に保たれる(図9参照)。これにより、クランプ1に対してワイヤーハーネス2がU字状経路部2aを形成した屈曲状態に保持される。その後、各ベルト3、4の保持孔5a、6aから下方に抜け出た余り部分3’、4’(図8参考)を切断し、必要に応じて、クランプ部7bを相手部材の取付座に嵌め込んで固定する。
【0029】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス保持クランプ1によると、挿通部材7に挿通された第1ベルト3及び第2ベルト4を引くことで第1移動部材5及び第2移動部材6の間隔が調整されて横壁部13の間でワイヤーハーネス2のU字状経路部2aが挟持されるとともに、第1ベルト3を第1保持孔5aに挿入保持し且つ第2ベルト4を第2保持孔6aに挿入保持することでワイヤーハーネス2が保持される。これにより、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの様々な形状(例えば、U字状経路部2aの横方向CDの幅の大きさ等)やワイヤーハーネス2の様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネス2を屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。
【0030】
特に、本クランプ1によると、比較的狭い空間であっても、設計通りの線長で周辺部品に干渉しないようにワイヤーハーネス2のU字状経路部2aを形成することができる。これに対して、例えば、ワイヤーハーネスを折り曲げ後、テープを巻き付けてU字状経路部を形成する場合では、多回路構成ワイヤーハーネスのような径が太いものやワイヤーハーネス保護材が固いもの等においては、ワイヤーハーネスのU字状経路部が膨らみ易く、ワイヤーハーネスが周辺部品と接触して傷付き断線してしまう恐れがある。また、ワイヤーハーネスの折り曲げやテープの巻き付けは人手により行われるため、作業性が低く、工数・工程の増加やテープ使用量の増加などのコストアップにつながる。
【0031】
また、本実施例では、第1移動部材5及び第2移動部材6のそれぞれに奥壁部14が設けられているので、奥壁部14によりワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの縦方向LDへの移動が規制される。よって、ワイヤーハーネス2の位置ずれを抑制して保持することができる。
【0032】
さらに、本実施例では、第1移動部材5及び第2移動部材6のそれぞれに抑え部15が設けられているので、抑え部15によりワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの高さ方向HDへの移動が規制される。よって、ワイヤーハーネス2の位置ずれを抑制して保持することができる。
【0033】
また、本実施例では、横壁部13は、第1横壁部13aと、保持孔5a、6aが形成され第1横壁部13aより低い高さの第2横壁部13bと、を有するので、ワイヤーハーネス2の径が比較的小さな場合であっても、ベルト3、4をワイヤーハーネス2の外周に巻き付けた状態で保持孔5a、6aに保持でき、ワイヤーハーネス2を強固に保持できる。
【0034】
さらに、本実施例では、挿通部材7は、中央側より両横側の高さが低くなる段差形状に形成されているので、ワイヤーハーネス2の傷付きを抑制できる。
【0035】
<実施例2>
次に、本実施例2に係るワイヤーハーネス保持クランプについて説明する。なお、本実施例2のワイヤーハーネス保持クランプにおいて、上記実施例1のワイヤーハーネス保持クランプ1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0036】
(1)ワイヤーハーネス保持クランプの構成
本実施例に係るワイヤーハーネス保持クランプ21(以下、単に「クランプ21」とも記載する。)は、図10及び図11に示すように、ワイヤーハーネス2を保持するための可撓性を有するベルト23と、ベルト23の一端側に接続された樹脂製の第1移動部材25と、ベルト23が挿通される挿通孔26aが形成された樹脂製の第2移動部材26と、これら第1移動部25及び第2移動部26の間に設けられた樹脂製の挿通部材27と、を備えている。上記第1移動部材25には、ベルト23を保持する保持孔25aが形成されている。また、挿通部材27には、ベルト23が挿通される挿通孔27aが形成されている。
【0037】
上記ベルト23の表面側には、図11に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔で複数の係止溝23aが形成されている。上記第1移動部材25の保持孔25aには、ベルト23の係止溝23aに係止してベルト23を保持する係止突起29が設けられている。また、第2移動部材26の挿通孔26aには、ベルト23の係止溝23aに係止してベルト23を保持する係止突起30が設けられている。さらに、上記挿通部材27の挿通孔27aには、ベルト23の係止溝23aに係止してベルト23を保持する係止突起31が設けられている。
【0038】
なお、上記係止溝23a及び係止突起29、30、31は、両者の係止により各孔25a、26a、27aに対するベルト23の抜け方向への移動が規制される一方、各孔25a、26a、27aに対してベルト23を挿入方向に移動させる場合には両者の係止及び解除が繰り返されるように構成されている。
【0039】
上記各移動部材25、26のそれぞれには、横壁部13、奥壁部14、抑え部15及び載置部16が設けられている。また、上記挿通部材27は、図10及び図11に示すように、中央側が上方に突出した段差形状に形成されている。この挿通部材27の下側には、図示しない相手部材(例えば、車両天井材等)に形成された取付座に嵌合される周知のクランプ部27bが設けられている。
【0040】
(2)ワイヤーハーネス保持クランプの作用
次に、上記構成のクランプ21を用いるワイヤーハーネス2の保持方法について説明する。先ず、ワイヤーハーネス2を折り曲げて予めU字状経路部2aを形成し、そのU字状経路部2aを各移動部材25、26の各横壁部13の間に配置する。このとき、U字状経路部2aは、その底側が載置部16に載置されるとともに、その縦方向LDの先端側が奥壁部14に当接される。次に、図11に示すように、挿通部材27及び第2移動部材26に挿通されたベルト23を引き上げると、各移動部材25、26が近接して両者の間隔が調整されて横壁部13の間でU字状経路部2aが挟持される。このとき、ベルト23は、係止溝23aと係止突起30、31との係止により挿通孔26a、27aに保持され、引き上げられた状態に保たれる。
【0041】
次いで、図12に示すように、ベルト23を各横壁部13に当接したワイヤーハーネス2を囲うように保持孔25aに挿入して下方に引き下げる。すると、ベルト23は、係止溝23aと係止突起29との係止により保持孔25aに保持され、ワイヤーハーネス2の外周に巻き付けられた状態に保たれる(図13参照)。これにより、クランプ21に対してワイヤーハーネス2がU字状経路部2aを形成した屈曲状態に保持される。その後、ベルト23の保持孔23から抜け出た余り部分23’(図12参照)を切断し、必要に応じて、クランプ部27bを相手部材の取付座に嵌め込んで固定する。
【0042】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス保持クランプ21によると、実施例1のクランプ1と略同様の作用・効果を奏することに加えて、挿通部材27及び第2移動部材26に挿通されたベルト23を引くことで第1移動部材25及び第2移動部材26の間隔が調整されて横壁部13の間でワイヤーハーネス2のU字状経路部2aが挟持されるとともに、ベルト23を保持孔25aに挿入保持することでワイヤーハーネス2が保持される。これにより、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの様々な形状(例えば、U字状経路部2aの横方向CDの幅の大きさ等)やワイヤーハーネス2の様々な径の大きさに対応して、ワイヤーハーネス2を屈曲した状態に容易且つ迅速に保持することができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1及び2では、第1横壁部13a及び第2横壁部13bを有する長手方向に段差状の横壁部13を例示したが、これに限定されず、例えば、長手方向に高さ寸法が略一様である横壁部を採用してもよい。
【0044】
また、上記実施例1及び2では、ベルト3、4、23がワイヤーハーネス2の外周に巻き付いてワイヤーハーネスを保持する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図14に示すように、ベルト3、4(23)がワイヤーハーネス2の外周に非接触で巻き回されてワイヤーハーネス2を保持するようにしてもよい。なお、実施例1及び2のクランプ1、21においても、ワイヤーハーネス2の径が小さな場合には、ベルト3、4、23がワイヤーハーネス2の外周に非接触で巻き回されることもある。
【0045】
また、上記実施例1及び2では、中央側より両横側の高さが低くなる段差状の挿通部材7、27を例示したが、これに限定されず、例えば、中央側より両横側の高さが低くなる半月状又は三角状の挿通部材としてもよい。
【0046】
また、上記実施例1及び2では、クランプ1、21にワイヤーハーネス2を保持した後に、クランプ1、21を相手部材に取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、クランプ1、21を相手部材に取り付けた後に、クランプ1、21にワイヤーハーネス2を保持するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施例1及び2では、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの縦方向LDの一箇所のみをベルト3、4、23で巻くようにしたが、これに限定されず、例えば、ワイヤーハーネス2のU字状経路部2aの縦方向LDの複数箇所をベルト3、4、23で巻くようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記実施例1及び2では、挿通部材7、27の挿通孔7a、27aにベルト3、4、23の係止溝3a、4a、23aに係止する係止突起11a、11b、31を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、挿通部材7、27の挿通孔7a、27aに係止突起11a、11b、31を設けないようにしてもよい。また、上記実施例2では、第2移動部材26の挿通孔26aにベルト23の係止溝23aに係止する係止突起30を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、第2移動部材26の挿通孔26aに係止突起30を設けないようにしてもよい。
【0049】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0050】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ワイヤーハーネスを保持するクランプとして広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両内装材にワイヤーハーネスを配索するためのクランプとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0052】
1,21;クランプ、2;ワイヤーハーネス、2a;U字状経路部、3;第1ベルト、4;第2ベルト、5,25;第1移動部材、5a;第1保持孔、25a;保持孔、6,26;第2移動部材、6a;第2保持孔、7,27;挿通部材、13;横壁部、14;奥壁部、15;抑え部、16;載置部、CD;U字状経路部の横方向、LD;U字状経路部の縦方向、HD;U字状経路部の高さ方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプであって、
前記ワイヤーハーネスを保持するための第1ベルト及び第2ベルトと、
前記第1ベルトに接続され、前記第1ベルトを保持する第1保持孔が形成された第1移動部材と、
前記第2ベルトに接続され、前記第2ベルトを保持する第2保持孔が形成された第2移動部材と、
前記第1移動部及び前記第2移動部の間に設けられ、前記第1ベルト及び前記第2ベルトが挿通される挿通部材と、を備え、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向から挟持するための横壁部が設けられ、
前記挿通部材に挿通された前記第1ベルト及び前記第2ベルトを引くことで前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間隔を調整して前記横壁部の間で前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持するとともに、前記第1ベルトを前記第1保持孔に挿入保持し且つ前記第2ベルトを前記第2保持孔に挿入保持することで前記ワイヤーハーネスを保持することを特徴とするワイヤーハーネス保持クランプ。
【請求項2】
ワイヤーハーネスをU字状経路部を形成するように屈曲した状態で保持することができるワイヤーハーネス保持クランプであって、
前記ワイヤーハーネスを保持するためのベルトと、
前記ベルトに接続され、前記ベルトを保持する保持孔が形成された第1移動部材と、
前記ベルトが挿通される第2移動部材と、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間に設けられ、前記ベルトが挿通される挿通部材と、を備え、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を横方向から挟持するための横壁部が設けられ、
前記挿通部材及び前記第2移動部材に挿通された前記ベルトを引くことで前記第1移動部材及び前記第2移動部材の間隔を調整して前記横壁部の間で前記ワイヤーハーネスのU字状経路部を挟持するとともに、前記ベルトを前記保持孔に挿入保持することで前記ワイヤーハーネスを保持することを特徴とするワイヤーハーネス保持クランプ。
【請求項3】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部の縦方向への移動を規制する奥壁部が設けられている請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス保持クランプ。
【請求項4】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材のそれぞれには、前記ワイヤーハーネスのU字状経路部の高さ方向への移動を規制する抑え部が設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス保持クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−115834(P2013−115834A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256758(P2011−256758)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】