ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの製造方法
【課題】ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より少ない簡易な構成で実現できるようにすることを目的とする。
【解決手段】ワイヤーハーネス10は、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部12と、ワイヤーハーネス本体部12を保護する保護部材20とを備える。保護部材20は、不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分22と、不織部材が前記内周側保護部分22の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分24とを有する。
【解決手段】ワイヤーハーネス10は、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部12と、ワイヤーハーネス本体部12を保護する保護部材20とを備える。保護部材20は、不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分22と、不織部材が前記内周側保護部分22の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分24とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、電線束を、不織布で覆った状態でホットプレスして電線用保護部材を形成して保護及び経路規制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−160611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、電線束を保護部材で覆ったワイヤーハーネスを車両に固定するためには、別途クリップ部品等の固定用部品を取付ける必要が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より少ない簡易な構成で実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部と、不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分と、不織部材が前記内周側保護部の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分とを有する、保護部材とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかい。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、配設箇所である隙間に圧入可能な範囲で前記隙間のサイズよりも大きく形成されている。
【0009】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈する。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部の延在方向において間隔をあけて複数箇所に設けられている。
【0011】
また、上記課題を解決するため、第6の態様は、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護部材で覆ったワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部に第1不織部材を巻付ける工程と、(b)前記第1不織部材をホットプレスして内周側保護部分を形成する工程と、(c)前記内周側保護部分の延在方向の一部に第2不織部材を巻付ける工程と、(d)前記第2不織部材をホットプレスして外周側保護部分を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様によると、内周側保護部分によってワイヤーハーネスを保護及び経路規制することができる。また、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に圧入することで、ワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分を外周側保護部分によって覆っているため、内周側保護部分をホットプレスによって十分に硬くすることができ、保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【0013】
第2の態様によると、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかいため、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に容易に圧入してワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。
【0014】
第3の態様によると、前記外周側保護部分を、隙間にガタ無く圧入できる。
【0015】
第4の態様によると、前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈するため、外周側保護部分を隙間に容易に圧入することができる。
【0016】
第5の態様によると、複数の外周側保護部分を隙間に圧入することができ、ワイヤーハーネスをしっかりと取付けることができ、また、複数の外周側保護部分間で内周側保護部分が車両に接触することを抑制できる。
【0017】
第6の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法によると、不織部材をホットプレスすることによって形成された内周側保護部分の周りに、外周側保護部分を容易に形成することができる。そして、内周側保護部分によってワイヤーハーネスを保護及び経路規制することができる。また、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に圧入することで、ワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分を外周側保護部分によって覆っているため、内周側保護部分をホットプレスによって十分に硬くすることができ、保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図2】同上のワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す説明図である。
【図3】同上のワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す説明図である。
【図4】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図5】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図6】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図7】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図8】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図9】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図10】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図11】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図12】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図13】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図14】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図15】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図16】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス10及びその製造方法について説明する。
【0020】
まず、ワイヤーハーネス10について説明する。図1はワイヤーハーネス10を示す概略斜視図であり、図2及び図3は同ワイヤーハーネス10を車両に配設した状態を示す説明図である。
【0021】
ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、保護部材20とを備えている。
【0022】
ワイヤーハーネス本体部12は、少なくとも1本の電線を含んでいる。ここでは、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が束ねられることにより構成されている。なお、電線は、車体等において各種電気機器間を電気的に相互接続する配線材である。ワイヤーハーネス本体部12に、光ケーブル等が含まれていてもよい。
【0023】
保護部材20は、内周側保護部分22と外周側保護部分24とを有しており、これらの内周側保護部分22及び外周側保護部分24は、共に不織部材をホットプレスすることによって形成されている。
【0024】
ここで、不織部材としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能なものを用いることができる。このような不織部材として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織部材を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染込む。その後、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織部材が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。また、不織部材同士が接触している部分では、当該接触部分にも溶融した接着樹脂が染込んで固化する。これにより、不織部材同士の接触部分が接合される。
【0025】
ただし、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0026】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織部材を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、上記成形形状の維持及び不織部材同士の接合を行う。
【0027】
また、ホットプレスとは、不織部材に対する加熱処理及び不織部材を型に押付けて所定形状に形成する処理を施すことをいう。加熱処理と所定形状への形成処理とは、同時に行われてもよいし、或は、連続的に別々に行われてもよい。例えば、不織部材を圧縮状態で加熱した後、冷却により固まる前に所定の型に押付けて曲げることで、当該曲げ形状に維持できる。この実施形態に係る保護部材20を製造するのに適したホットプレス加工の例については後にさらに詳述する。
【0028】
内周側保護部分22は、不織部材がワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。この内周側保護部分22は、ワイヤーハーネス本体部12の長手方向略全体を覆っていてもよいし、ワイヤーハーネス本体部12の一部を覆っていてもよい。
【0029】
この内周側保護部分22の外周表面全体は、ホットプレスによって十分に圧縮及び硬化され、ワイヤーハーネス本体部12を保護できる程度の硬さ、及び、その経路を維持できる程度の形状維持性を有している。そして、この内周側保護部分22がワイヤーハーネス本体部12の車両等における布設経路に応じた形状(直線状であってもよいし、曲っていてもよい)に形成されることで、ワイヤーハーネス本体部12が当該形状に規制される。なお、ここでは、内周側保護部分22は、横断面円形状に形成されているが、横断面楕円形、横断面多角形状等に形成されていてもよい。また、内周側保護部分22の一部はホットプレスされていなくてもよいが、少なくとも外周側保護部分24により覆われる部分はホットプレスされている。
【0030】
外周側保護部分24は、不織部材が内周側保護部分22の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。ここでは、外周側保護部分24は、内周側保護部分22の延在方向において間隔をあけて複数箇所(ここでは2箇所)に設けられている。もっとも、外周側保護部分24は、1つだけ設けられていてもよい。
【0031】
また、外周側保護部分24は、ここでは、横断面円形状に形成されている。換言すれば、外周側保護部分24は、内周側保護部分22の周方向全体において同一高さで突出する環状凸形状に形成されている。もっとも、外周側保護部分24は、横断面円形以外、例えば、横断面楕円状、横断面多角形状等であってもよい。
【0032】
また、外周側保護部分24は、配設箇所である隙間Sに圧入可能な範囲で前記隙間Sのサイズよりも大きく形成されている(図2及び図3参照)。より具体的には、本ワイヤーハーネス10の配設箇所が一対のパネルP間の隙間Sであるとすると、外周側保護部分24の外径Lは、パネルPの隙間Sの間隔SLよりも大きく設定されている。これにより、外周側保護部分24を隙間Sにガタ無く圧入できる。外周側保護部分24の外径Lを、隙間Sの間隔SLよりもどの程度大きくすればよいかについては、外周側保護部分24の柔軟性にもよる。外周側保護部分24を十分に柔らかく形成した場合には、外周側保護部分24の外径Lを隙間Sの間隔SLより十分に大きく設定することができ、外周側保護部分24を硬めに形成した場合には、外周側保護部分24の外径Lを隙間Sの間隔SLよりも多少大きい程度に設定するとよい。
【0033】
いずれにせよ、外周側保護部分24は、内周側保護部分22よりも柔らかいことが好ましく、より具体的には、外周側保護部分24の外径L及び上記隙間Sの差を考慮して、外周側保護部分24を隙間Sに圧入してがたつきなく保持できる程度で柔らかいことが好ましい。もっとも、外周側保護部分24は、内周側保護部分22と同程度の硬さを有していてもよい。
【0034】
上記内周側保護部分22と外周側保護部分24とを作分ける具体例については、後に製造方法例と共に説明する。
【0035】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、内周側保護部分22によってワイヤーハーネス10の保護し、また、経路規制を行うことができる。また、外周側保護部分24を車両における配設箇所である隙間Sに圧入することで、ワイヤーハーネス10を車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネス10を保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分22を外周側保護部分24によって覆っているため、内周側保護部分22をホットプレスによって十分に硬くすることができ、外周側保護部分24が形成された部分でも保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【0036】
また、上記のように外周側保護部分24を隙間Sに圧入してワイヤーハーネス10を車両に取付けた状態で、内周側保護部分22をパネルPから離して配設することができる。これにより、内周側保護部分22がパネルPと干渉することによる異音(打音)の発生及び摩耗を抑制することができる。
【0037】
また、外周側保護部分24自体は、隙間Sに圧入可能な形状、上記例では、横断面円形状に形成すればよいため、形状の簡易化が可能となる。
【0038】
また、外周側保護部分24は、内周側保護部分22よりも柔いため、外周側保護部分24を隙間Sに容易に圧入してワイヤーハーネス10を車両に取付けることができる。
【0039】
また、外周側保護部分24は横断面円形状に形成されているため、外周側保護部分24を隙間Sに圧入する際に、厳密な方向性を気にしなくともよく、圧入作業が容易になる。
【0040】
さらに、外周側保護部分24が間隔をあけて複数箇所(ここでは2箇所)に設けられているため、ワイヤーハーネス10をより振れないように、しっかり取付けることができ、また、複数の外周側保護部分24間で内周側保護部分22が車両に接触することを抑制できる。
【0041】
上記保護部材20を製造する方法について説明する。
【0042】
まず、図4及び図5に示すように、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部に第1不織部材30を巻付ける。ここでは、第1不織部材30として方形シート状の不織布を用い、当該第1不織部材30をワイヤーハーネス本体部12に少なくとも1回巻付けている。もっとも、第1不織部材30として細帯状の不織布を用い、これを螺旋状にワイヤーハーネス本体部12に巻付けてもよい。
【0043】
次に、第1不織部材30をホットプレスして内周側保護部分22を形成する。ここで、ホットプレス用成形型の構成例について説明する。図6はホットプレス用成形型60を示す説明図であり、図7はホットプレス加工中におけるホットプレス用成形型60の概略横断面図である。
【0044】
ホットプレス用成形型60は、下型62と、上型70とを備える。
【0045】
下型62は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下型面63が形成されている。下型面63は、概略的には、底部が半円筒表面形状を呈しかつ上方に開口する溝形状に形成されている。下型面63の長手方向の長さは、ワイヤーハーネス本体部12における保護対象部分(保護部材20で覆うべき部分)の長さと略同一に形成されている。また、下型面63は、ワイヤーハーネス本体部12における保護対象部分を車体に配設した場合の経路に応じて延びる形状に形成されている(図6では直線状、曲っていてもよい)。
【0046】
上型70は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面72が形成されている。上型面72は、上記下型面63の上方開口を塞ぎつつ当該下型面63内に配設可能な幅に形成されている。また、上型面72は、上記下型面63の屈曲形状に応じて、経路に応じて延びる形状に形成されている。
【0047】
そして、この上型面72が下型面63内に配置されることにより、上型面72と下型面63との間で、内周側保護部分22を形成可能なスペースが形成される。なお、下型62及び上型70には、ヒーター等の加熱部66が設けられている。
【0048】
そして、ワイヤーハーネス本体部12のうち第1不織部材30が巻付けられた箇所を、下型面63内に押込む。
【0049】
この後、上型70の上型面72を下型面63内に挿入し、この状態で、下型62及び上型70を加熱してホットプレスを行うと、第1不織部材30は下型面63及び上型面72間において圧縮状態で加熱される。
【0050】
この後、第1不織部材30が冷却されると、第1不織部材30の表面は下型面63及び上型面72の形状に応じた形状で硬化し、これにより、内周側保護部分22が形成される。なお、第1不織部材30が冷却して硬化する前に、次の工程を実施してもよい。
【0051】
次に、図8及び図9に示すように、内周側保護部分22の延在方向の一部に、つまり、上記外周側保護部分24に対応する部分に第2不織部材32を巻付ける。
【0052】
ここでは、第2不織部材32として細帯状の不織布を巻付けている。第2不織部材32として細帯状の不織布の幅は、形成対象となる外周側保護部分24の幅と同じかそれよりも小さく設定されている。第2不織部材32として細帯状の不織布の幅が、形成対象となる外周側保護部分24の幅よりも小さい場合、第2不織部材32を螺旋状に巻付ければよい。
【0053】
なお、ここでは、上記のように複数の外周側保護部分24を設けるため、内周側保護部分22の外周に間隔をあけて複数箇所(2箇所)に、第2不織部材32を巻付けている。
【0054】
次に、第2不織部材32をホットプレスして外周側保護部分24を形成する。
【0055】
ここでのホットプレス用成形型160としては、図10及び図11に示すように、下型面63に対応する下型面163及び上型面72に対応する上型面172の大きさが異なる点を除いて、上記ホットプレス用成形型60と同様構成のものを用いることができる。すなわち、このホットプレス用成形型160の下型面163及び上型面172は、上記下型面63及び上型面72大きく形成されている。そして、下型面163と上型面172との間に、内周側保護部分22よりも大きく、かつ、巻付けられた第2不織部材32を圧縮可能なスペース、即ち、外周側保護部分24を形成可能なスペースが形成される。なお、図10及び図11において、ホットプレス用成形型60と同様構成部分については、同一符合を付している。
【0056】
もっとも、本ホットプレス用成形型160は、外周側保護部分24を形成するものであるため、当該外周側保護部分24が設けられた箇所だけをホットプレス可能な小さい長さ寸法に形成されていてもよいし、また、当該外周側保護部分24だけを加熱可能な構成であってもよい。
【0057】
上記下型面163内に、ワイヤーハーネス本体部12のうち第2不織部材32が巻付けられた箇所を、下型面63内に押込む。
【0058】
この後、上型面172を下型面163内に挿入し、この状態で、下型62及び上型70を加熱してホットプレスを行うと、第2不織部材32は下型面163及び上型面172間において圧縮状態で加熱される。
【0059】
この後、第2不織部材32が冷却されると、第2不織部材32の表面は下型面163及び上型面172の形状に応じた形状で硬化し、これにより、外周側保護部分24が形成される。
【0060】
この製造方法によると、第1不織部材30をホットプレスすることによって形成された内周側保護部分22の周りに、外周側保護部分24を容易に形成することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、第1不織部材30と第2不織部材32とが別々である例で説明したが、図12に示す変形例のように、第1不織部材30に対応する第1不織部材130の部分の一側縁部に、第2不織部材32に対応する第2不織部材132の部分が延出するように、一体形成されたものを用いてもよい。ここでは、第1不織部材130の部分の一側縁部に、その両端部より内側でかつ間隔をあけて第2不織部材132の部分が延出している。
【0062】
そして、第1不織部材130の部分の他側縁部に沿ってワイヤーハーネス本体部12を配設して、図13に示すように、第1不織部材130の部分をワイヤーハーネス本体部12に巻付ける。
【0063】
この状態で、図15及び図16に示すように、ホットプレス成形型260を用いて、第1不織部材130の部分をホットプレスする。この際の、ホットプレス成形型260としては、下型62に対応する下型262として、下型面63に対応する下型面263が形成されると共に、一対の第2不織部材132に対応する各部分に一対の溝263hが形成されたものを用いるとよい。溝263hは、第2不織部材132と同幅でかつ下型面263の底部側方に達する形状に形成されている。
【0064】
そして、第2不織部材132の部分を当該溝263hを通じて外方に引出した状態で、巻付けられた第1不織部材部分130の部分を下型面263内に配設することにより、上記実施形態と同様に、第1不織部材部分130の部分をホットプレスする。
【0065】
この後、図14に示すように、第2不織部材132の部分を、ホットプレスされた第1不織部材部分130の外周に巻付ける。そして、上記実施形態と同様に、ホットプレス用成形型160を用いて、第2不織部材132が巻付けられた部分をホットプレスすると、上記実施形態と同様のワイヤーハーネスが製造される。特に、この変形例によると、一枚の不織シートを用いて製造できるため、部品種類数の削減及び製造の容易化を図ることができ、また、第2不織部材132の巻付け箇所を揃えやすいというメリットもある。
【0066】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0067】
10 ワイヤーハーネス
12 ワイヤーハーネス本体部
20 保護部材
22 内周側保護部分
24 外周側保護部分
30、130 第1不織部材
32、132 第2不織部材
S 隙間
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、電線束を、不織布で覆った状態でホットプレスして電線用保護部材を形成して保護及び経路規制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−160611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、電線束を保護部材で覆ったワイヤーハーネスを車両に固定するためには、別途クリップ部品等の固定用部品を取付ける必要が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より少ない簡易な構成で実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部と、不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分と、不織部材が前記内周側保護部の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分とを有する、保護部材とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかい。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、配設箇所である隙間に圧入可能な範囲で前記隙間のサイズよりも大きく形成されている。
【0009】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈する。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部の延在方向において間隔をあけて複数箇所に設けられている。
【0011】
また、上記課題を解決するため、第6の態様は、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護部材で覆ったワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部に第1不織部材を巻付ける工程と、(b)前記第1不織部材をホットプレスして内周側保護部分を形成する工程と、(c)前記内周側保護部分の延在方向の一部に第2不織部材を巻付ける工程と、(d)前記第2不織部材をホットプレスして外周側保護部分を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様によると、内周側保護部分によってワイヤーハーネスを保護及び経路規制することができる。また、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に圧入することで、ワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分を外周側保護部分によって覆っているため、内周側保護部分をホットプレスによって十分に硬くすることができ、保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【0013】
第2の態様によると、前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかいため、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に容易に圧入してワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。
【0014】
第3の態様によると、前記外周側保護部分を、隙間にガタ無く圧入できる。
【0015】
第4の態様によると、前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈するため、外周側保護部分を隙間に容易に圧入することができる。
【0016】
第5の態様によると、複数の外周側保護部分を隙間に圧入することができ、ワイヤーハーネスをしっかりと取付けることができ、また、複数の外周側保護部分間で内周側保護部分が車両に接触することを抑制できる。
【0017】
第6の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法によると、不織部材をホットプレスすることによって形成された内周側保護部分の周りに、外周側保護部分を容易に形成することができる。そして、内周側保護部分によってワイヤーハーネスを保護及び経路規制することができる。また、外周側保護部分を車両における配設箇所である隙間に圧入することで、ワイヤーハーネスを車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネスを保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分を外周側保護部分によって覆っているため、内周側保護部分をホットプレスによって十分に硬くすることができ、保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図2】同上のワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す説明図である。
【図3】同上のワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す説明図である。
【図4】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図5】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図6】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図7】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図8】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図9】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図10】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図11】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図12】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図13】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図14】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図15】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図16】変形例に係るワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス10及びその製造方法について説明する。
【0020】
まず、ワイヤーハーネス10について説明する。図1はワイヤーハーネス10を示す概略斜視図であり、図2及び図3は同ワイヤーハーネス10を車両に配設した状態を示す説明図である。
【0021】
ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、保護部材20とを備えている。
【0022】
ワイヤーハーネス本体部12は、少なくとも1本の電線を含んでいる。ここでは、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が束ねられることにより構成されている。なお、電線は、車体等において各種電気機器間を電気的に相互接続する配線材である。ワイヤーハーネス本体部12に、光ケーブル等が含まれていてもよい。
【0023】
保護部材20は、内周側保護部分22と外周側保護部分24とを有しており、これらの内周側保護部分22及び外周側保護部分24は、共に不織部材をホットプレスすることによって形成されている。
【0024】
ここで、不織部材としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能なものを用いることができる。このような不織部材として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織部材を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染込む。その後、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織部材が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。また、不織部材同士が接触している部分では、当該接触部分にも溶融した接着樹脂が染込んで固化する。これにより、不織部材同士の接触部分が接合される。
【0025】
ただし、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0026】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織部材を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、上記成形形状の維持及び不織部材同士の接合を行う。
【0027】
また、ホットプレスとは、不織部材に対する加熱処理及び不織部材を型に押付けて所定形状に形成する処理を施すことをいう。加熱処理と所定形状への形成処理とは、同時に行われてもよいし、或は、連続的に別々に行われてもよい。例えば、不織部材を圧縮状態で加熱した後、冷却により固まる前に所定の型に押付けて曲げることで、当該曲げ形状に維持できる。この実施形態に係る保護部材20を製造するのに適したホットプレス加工の例については後にさらに詳述する。
【0028】
内周側保護部分22は、不織部材がワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。この内周側保護部分22は、ワイヤーハーネス本体部12の長手方向略全体を覆っていてもよいし、ワイヤーハーネス本体部12の一部を覆っていてもよい。
【0029】
この内周側保護部分22の外周表面全体は、ホットプレスによって十分に圧縮及び硬化され、ワイヤーハーネス本体部12を保護できる程度の硬さ、及び、その経路を維持できる程度の形状維持性を有している。そして、この内周側保護部分22がワイヤーハーネス本体部12の車両等における布設経路に応じた形状(直線状であってもよいし、曲っていてもよい)に形成されることで、ワイヤーハーネス本体部12が当該形状に規制される。なお、ここでは、内周側保護部分22は、横断面円形状に形成されているが、横断面楕円形、横断面多角形状等に形成されていてもよい。また、内周側保護部分22の一部はホットプレスされていなくてもよいが、少なくとも外周側保護部分24により覆われる部分はホットプレスされている。
【0030】
外周側保護部分24は、不織部材が内周側保護部分22の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。ここでは、外周側保護部分24は、内周側保護部分22の延在方向において間隔をあけて複数箇所(ここでは2箇所)に設けられている。もっとも、外周側保護部分24は、1つだけ設けられていてもよい。
【0031】
また、外周側保護部分24は、ここでは、横断面円形状に形成されている。換言すれば、外周側保護部分24は、内周側保護部分22の周方向全体において同一高さで突出する環状凸形状に形成されている。もっとも、外周側保護部分24は、横断面円形以外、例えば、横断面楕円状、横断面多角形状等であってもよい。
【0032】
また、外周側保護部分24は、配設箇所である隙間Sに圧入可能な範囲で前記隙間Sのサイズよりも大きく形成されている(図2及び図3参照)。より具体的には、本ワイヤーハーネス10の配設箇所が一対のパネルP間の隙間Sであるとすると、外周側保護部分24の外径Lは、パネルPの隙間Sの間隔SLよりも大きく設定されている。これにより、外周側保護部分24を隙間Sにガタ無く圧入できる。外周側保護部分24の外径Lを、隙間Sの間隔SLよりもどの程度大きくすればよいかについては、外周側保護部分24の柔軟性にもよる。外周側保護部分24を十分に柔らかく形成した場合には、外周側保護部分24の外径Lを隙間Sの間隔SLより十分に大きく設定することができ、外周側保護部分24を硬めに形成した場合には、外周側保護部分24の外径Lを隙間Sの間隔SLよりも多少大きい程度に設定するとよい。
【0033】
いずれにせよ、外周側保護部分24は、内周側保護部分22よりも柔らかいことが好ましく、より具体的には、外周側保護部分24の外径L及び上記隙間Sの差を考慮して、外周側保護部分24を隙間Sに圧入してがたつきなく保持できる程度で柔らかいことが好ましい。もっとも、外周側保護部分24は、内周側保護部分22と同程度の硬さを有していてもよい。
【0034】
上記内周側保護部分22と外周側保護部分24とを作分ける具体例については、後に製造方法例と共に説明する。
【0035】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、内周側保護部分22によってワイヤーハーネス10の保護し、また、経路規制を行うことができる。また、外周側保護部分24を車両における配設箇所である隙間Sに圧入することで、ワイヤーハーネス10を車両に取付けることができる。これにより、ワイヤーハーネス10を保護及び経路規制しつつ車両に取付けるための構成を、より簡易な構成で実現できる。しかも、ホットプレスされた内周側保護部分22を外周側保護部分24によって覆っているため、内周側保護部分22をホットプレスによって十分に硬くすることができ、外周側保護部分24が形成された部分でも保護性能及び経路規制性能を良好にすることができる。
【0036】
また、上記のように外周側保護部分24を隙間Sに圧入してワイヤーハーネス10を車両に取付けた状態で、内周側保護部分22をパネルPから離して配設することができる。これにより、内周側保護部分22がパネルPと干渉することによる異音(打音)の発生及び摩耗を抑制することができる。
【0037】
また、外周側保護部分24自体は、隙間Sに圧入可能な形状、上記例では、横断面円形状に形成すればよいため、形状の簡易化が可能となる。
【0038】
また、外周側保護部分24は、内周側保護部分22よりも柔いため、外周側保護部分24を隙間Sに容易に圧入してワイヤーハーネス10を車両に取付けることができる。
【0039】
また、外周側保護部分24は横断面円形状に形成されているため、外周側保護部分24を隙間Sに圧入する際に、厳密な方向性を気にしなくともよく、圧入作業が容易になる。
【0040】
さらに、外周側保護部分24が間隔をあけて複数箇所(ここでは2箇所)に設けられているため、ワイヤーハーネス10をより振れないように、しっかり取付けることができ、また、複数の外周側保護部分24間で内周側保護部分22が車両に接触することを抑制できる。
【0041】
上記保護部材20を製造する方法について説明する。
【0042】
まず、図4及び図5に示すように、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部に第1不織部材30を巻付ける。ここでは、第1不織部材30として方形シート状の不織布を用い、当該第1不織部材30をワイヤーハーネス本体部12に少なくとも1回巻付けている。もっとも、第1不織部材30として細帯状の不織布を用い、これを螺旋状にワイヤーハーネス本体部12に巻付けてもよい。
【0043】
次に、第1不織部材30をホットプレスして内周側保護部分22を形成する。ここで、ホットプレス用成形型の構成例について説明する。図6はホットプレス用成形型60を示す説明図であり、図7はホットプレス加工中におけるホットプレス用成形型60の概略横断面図である。
【0044】
ホットプレス用成形型60は、下型62と、上型70とを備える。
【0045】
下型62は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下型面63が形成されている。下型面63は、概略的には、底部が半円筒表面形状を呈しかつ上方に開口する溝形状に形成されている。下型面63の長手方向の長さは、ワイヤーハーネス本体部12における保護対象部分(保護部材20で覆うべき部分)の長さと略同一に形成されている。また、下型面63は、ワイヤーハーネス本体部12における保護対象部分を車体に配設した場合の経路に応じて延びる形状に形成されている(図6では直線状、曲っていてもよい)。
【0046】
上型70は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面72が形成されている。上型面72は、上記下型面63の上方開口を塞ぎつつ当該下型面63内に配設可能な幅に形成されている。また、上型面72は、上記下型面63の屈曲形状に応じて、経路に応じて延びる形状に形成されている。
【0047】
そして、この上型面72が下型面63内に配置されることにより、上型面72と下型面63との間で、内周側保護部分22を形成可能なスペースが形成される。なお、下型62及び上型70には、ヒーター等の加熱部66が設けられている。
【0048】
そして、ワイヤーハーネス本体部12のうち第1不織部材30が巻付けられた箇所を、下型面63内に押込む。
【0049】
この後、上型70の上型面72を下型面63内に挿入し、この状態で、下型62及び上型70を加熱してホットプレスを行うと、第1不織部材30は下型面63及び上型面72間において圧縮状態で加熱される。
【0050】
この後、第1不織部材30が冷却されると、第1不織部材30の表面は下型面63及び上型面72の形状に応じた形状で硬化し、これにより、内周側保護部分22が形成される。なお、第1不織部材30が冷却して硬化する前に、次の工程を実施してもよい。
【0051】
次に、図8及び図9に示すように、内周側保護部分22の延在方向の一部に、つまり、上記外周側保護部分24に対応する部分に第2不織部材32を巻付ける。
【0052】
ここでは、第2不織部材32として細帯状の不織布を巻付けている。第2不織部材32として細帯状の不織布の幅は、形成対象となる外周側保護部分24の幅と同じかそれよりも小さく設定されている。第2不織部材32として細帯状の不織布の幅が、形成対象となる外周側保護部分24の幅よりも小さい場合、第2不織部材32を螺旋状に巻付ければよい。
【0053】
なお、ここでは、上記のように複数の外周側保護部分24を設けるため、内周側保護部分22の外周に間隔をあけて複数箇所(2箇所)に、第2不織部材32を巻付けている。
【0054】
次に、第2不織部材32をホットプレスして外周側保護部分24を形成する。
【0055】
ここでのホットプレス用成形型160としては、図10及び図11に示すように、下型面63に対応する下型面163及び上型面72に対応する上型面172の大きさが異なる点を除いて、上記ホットプレス用成形型60と同様構成のものを用いることができる。すなわち、このホットプレス用成形型160の下型面163及び上型面172は、上記下型面63及び上型面72大きく形成されている。そして、下型面163と上型面172との間に、内周側保護部分22よりも大きく、かつ、巻付けられた第2不織部材32を圧縮可能なスペース、即ち、外周側保護部分24を形成可能なスペースが形成される。なお、図10及び図11において、ホットプレス用成形型60と同様構成部分については、同一符合を付している。
【0056】
もっとも、本ホットプレス用成形型160は、外周側保護部分24を形成するものであるため、当該外周側保護部分24が設けられた箇所だけをホットプレス可能な小さい長さ寸法に形成されていてもよいし、また、当該外周側保護部分24だけを加熱可能な構成であってもよい。
【0057】
上記下型面163内に、ワイヤーハーネス本体部12のうち第2不織部材32が巻付けられた箇所を、下型面63内に押込む。
【0058】
この後、上型面172を下型面163内に挿入し、この状態で、下型62及び上型70を加熱してホットプレスを行うと、第2不織部材32は下型面163及び上型面172間において圧縮状態で加熱される。
【0059】
この後、第2不織部材32が冷却されると、第2不織部材32の表面は下型面163及び上型面172の形状に応じた形状で硬化し、これにより、外周側保護部分24が形成される。
【0060】
この製造方法によると、第1不織部材30をホットプレスすることによって形成された内周側保護部分22の周りに、外周側保護部分24を容易に形成することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、第1不織部材30と第2不織部材32とが別々である例で説明したが、図12に示す変形例のように、第1不織部材30に対応する第1不織部材130の部分の一側縁部に、第2不織部材32に対応する第2不織部材132の部分が延出するように、一体形成されたものを用いてもよい。ここでは、第1不織部材130の部分の一側縁部に、その両端部より内側でかつ間隔をあけて第2不織部材132の部分が延出している。
【0062】
そして、第1不織部材130の部分の他側縁部に沿ってワイヤーハーネス本体部12を配設して、図13に示すように、第1不織部材130の部分をワイヤーハーネス本体部12に巻付ける。
【0063】
この状態で、図15及び図16に示すように、ホットプレス成形型260を用いて、第1不織部材130の部分をホットプレスする。この際の、ホットプレス成形型260としては、下型62に対応する下型262として、下型面63に対応する下型面263が形成されると共に、一対の第2不織部材132に対応する各部分に一対の溝263hが形成されたものを用いるとよい。溝263hは、第2不織部材132と同幅でかつ下型面263の底部側方に達する形状に形成されている。
【0064】
そして、第2不織部材132の部分を当該溝263hを通じて外方に引出した状態で、巻付けられた第1不織部材部分130の部分を下型面263内に配設することにより、上記実施形態と同様に、第1不織部材部分130の部分をホットプレスする。
【0065】
この後、図14に示すように、第2不織部材132の部分を、ホットプレスされた第1不織部材部分130の外周に巻付ける。そして、上記実施形態と同様に、ホットプレス用成形型160を用いて、第2不織部材132が巻付けられた部分をホットプレスすると、上記実施形態と同様のワイヤーハーネスが製造される。特に、この変形例によると、一枚の不織シートを用いて製造できるため、部品種類数の削減及び製造の容易化を図ることができ、また、第2不織部材132の巻付け箇所を揃えやすいというメリットもある。
【0066】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0067】
10 ワイヤーハーネス
12 ワイヤーハーネス本体部
20 保護部材
22 内周側保護部分
24 外周側保護部分
30、130 第1不織部材
32、132 第2不織部材
S 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部と、
不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分と、不織部材が前記内周側保護部の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分とを有する、保護部材と、
を備えるワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかい、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、配設箇所である隙間に圧入可能な範囲で前記隙間のサイズよりも大きく形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈する、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、前記内周側保護部の延在方向において間隔をあけて複数箇所に設けられている、ワイヤーハーネス。
【請求項6】
少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護部材で覆ったワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部に第1不織部材を巻付ける工程と、
(b)前記第1不織部材をホットプレスして内周側保護部分を形成する工程と、
(c)前記内周側保護部分の延在方向の一部に第2不織部材を巻付ける工程と、
(d)前記第2不織部材をホットプレスして外周側保護部分を形成する工程と、
を備えるワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項1】
少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部と、
不織部材が前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された内周側保護部分と、不織部材が前記内周側保護部の延在方向の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成された外周側保護部分とを有する、保護部材と、
を備えるワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、前記内周側保護部分よりも柔らかい、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、配設箇所である隙間に圧入可能な範囲で前記隙間のサイズよりも大きく形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、横断面円形状を呈する、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記外周側保護部分は、前記内周側保護部の延在方向において間隔をあけて複数箇所に設けられている、ワイヤーハーネス。
【請求項6】
少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護部材で覆ったワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部に第1不織部材を巻付ける工程と、
(b)前記第1不織部材をホットプレスして内周側保護部分を形成する工程と、
(c)前記内周側保護部分の延在方向の一部に第2不織部材を巻付ける工程と、
(d)前記第2不織部材をホットプレスして外周側保護部分を形成する工程と、
を備えるワイヤーハーネスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−89526(P2013−89526A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230442(P2011−230442)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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