説明

ワイヤーロープのダスト回収装置

【課題】ワイヤーロープ、シーブ間等で発生するダストを周囲に飛散させることなくダスト発生位置で、簡易な方法で確実に回収できるようにしたワイヤーロープのダスト回収装置を提供すること。
【解決手段】ワイヤーロープWを挿通して取り付けたダスト吸引ボックス1と、内部に吸引ファンを備え、かつダスト吸引ボックス1に近設して配設したダスト回収ボックス2とを、ダスト吸引ホース3にて接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロープのダスト回収装置に関し、特に、半導体製造工場、液晶板製造工場等のクリーンルーム内で、部材等の搬送、扛上作業に用いるスタッカークレーンにおける昇降台の昇降を行うワイヤーロープに付着するダスト(微粉塵)を、簡易な方法で確実に回収するようにしたワイヤーロープのダスト回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場、液晶板製造工場等においては、製品の精度向上のため一般的にクリーンルーム内で行われる。そして、このような半導体製造工場、液晶板製造工場等では、ストッカーから製造ステーション間或いはステーションとステーション間に各種の部材等を搬送及び/又は昇降させて移載するため、スタッカークレーンを採用している。
【0003】
このスタッカークレーンには部材などを搭載して搬送、昇降するための昇降移載台を備え、かつ該昇降移載台を、走行台車上に樹立するマストに沿ってワイヤーロープにて昇降可能に吊垂支持する構成となっている。
【0004】
ところで、昇降移載台をワイヤーロープにて昇降可能に吊垂支持する場合、マスト上部に配設するシーブにワイヤーロープを引っ掛けて、該ワイヤーロープの巻き取り、巻き戻しにより昇降移載台を昇降させるように構成しているため、このシーブとワイヤーロープとの接触にてシーブ及び/又はワイヤーロープが摩耗することにより、この摩耗微粉塵等によるダストが発生する。
この発生ダストは、クリーンルーム内のクリーン度を低下させ、さらには製品、部材に付着して製品の品質を低下させるので、このダストを除去するためにクリーンルーム内にダウンフローを発生させている。
【0005】
しかしながら、ダウンフローのない既設の設備ではダウンフローのための改造費が高価になるとともに、ワイヤーロープ、シーブ間で発生するダストを、このダウンフローにて効率的には除去することが難しいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ワイヤーロープに付着するダストの有する問題点に鑑み、ワイヤーロープ、シーブ間等で発生するダストを周囲に飛散させることなくダスト発生位置で、簡易な方法で確実に回収できるようにしたワイヤーロープのダスト回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のワイヤーロープのダスト回収装置は、ワイヤーロープを挿通して取り付けたダスト吸引ボックスと、内部に吸引ファンを備え、かつダスト吸引ボックスに近設して配設したダスト回収ボックスとを、ダスト吸引ホースにて接続して構成したことを特徴とする。
【0008】
この場合において、ダスト吸引ボックスを、シーブを経た近傍で、ワイヤーロープがほぼ垂直となる位置に配設することができる。
【0009】
また、ダスト吸引ボックスに接続するダスト吸引ホース接続口を、ダスト吸引ボックスに形成する上下両ワイヤーロープ挿通口の近傍に形成することができる。
【0010】
また、ダスト回収ボックスに、内蔵する吸引ファンの上流側前面にプレフイルターを、下流側後面にフイルターをそれぞれ着脱可能に配設することができる。
【0011】
また、ダスト回収ボックスに、回収ダストを排出するためのダスト排出口に通気可能としたダスト排出扉を開閉可能に配設することができる。
【0012】
また、ダスト吸引ホースを可撓性とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤーロープのダスト回収装置によれば、ワイヤーロープを挿通して取り付けたダスト吸引ボックスと、内部に吸引ファンを備え、かつダスト吸引ボックスに近設して配設したダスト回収ボックスとを、ダスト吸引ホースにて接続して構成することにより、シーブとの接触摩擦により生じるダストがワイヤーロープに付着してもダスト吸引ボックス内にて強制的に吸引し、ダスト回収ボックス内にて回収できるので、ダストがクリーンルーム内にて飛散して周囲を汚染したり、製品などに付着するのを未然に防止することができる。
【0014】
また、ダスト吸引ボックスを、シーブを経た近傍で、ワイヤーロープがほぼ垂直となる位置に配設することにより、ワイヤーロープがダスト吸引ボックス内を通過するだけで、シーブとの接触摩擦により生じるダストを周囲に飛散させることなく効果的に吸収して回収することができる。
【0015】
また、ダスト吸引ボックスに接続するダスト吸引ホース接続口を、ダスト吸引ボックスに形成する上下両ワイヤーロープ挿通口の近傍に形成することにより、ワイヤーロープが進入する側の挿通口から侵入するダストや、ワイヤーロープが出る側の挿通口から落下せんとするダストをも確実に回収することができる。
【0016】
また、ダスト回収ボックスに、内蔵する吸引ファンの上流側前面にプレフイルターを、下流側後面にフイルターをそれぞれ着脱可能に配設することにより、このプレフイルターにて粗いダストを、またフイルターにて細かいダストをそれぞれ個別的に捕捉するようにしているので、フイルターの目詰まりを抑制することができ、また目詰まりが生じても簡単に交換することもできる。
【0017】
また、ダスト回収ボックスに、回収ダストを排出するためのダスト排出口に通気可能としたダスト排出扉を開閉可能に配設しているので、該ダスト排出扉を開くことで簡単、迅速に回収ダストを排出することができる。
【0018】
また、ダスト吸引ホースを可撓性とすることにより、ダスト吸引ボックスとダスト回収ボックスとが離間し、かつどの位置関係にあっても簡易に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のワイヤーロープのダスト回収装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図6に、本発明のワイヤーロープのダスト回収装置の一実施例を示す。
半導体製造工場、液晶板製造工場等のクリーンルーム内において、特に限定されるものではないが、例えば、ストッカーから製造ステーション間或いはステーションとステーション間に各種の部材等を搬送及び/又は昇降させて移載するためのスタッカークレーン(図示省略)が配設される。
このスタッカークレーンには、各種の部材等を搬送及び/又は昇降させるための昇降移載台(図示省略)を、走行台車上に樹立するマストMに沿ってワイヤーロープWにて昇降可能に吊垂支持するように構成している。
【0021】
このワイヤーロープWは、マストM(図示省略)、特に限定されるものではないが、例えば、上部にシーブSを備え、このシーブSに掛けて張架するようにする。
また、このシーブSの近傍で、シーブSを経て出てくるワイヤーロープWを挿通するようにしてダスト吸引ボックス1を配設するが、このダスト吸引ボックス1は、特に限定されるものではないが、例えば、マストMの一部やシーブケースに取り付けるようにし、このダスト吸引ボックス1に、望ましくは近設してダスト回収ボックス2を配設し、このダスト吸引ボックス1とダスト回収ボックス2とをダスト吸引ホース3により接続して本発明のワイヤーロープのダスト回収装置を構成する。
【0022】
このダスト吸引ボックス1は、図4〜図5に示すように、張設したワイヤーロープWを切断或いは取り外すことなく内部に挿通できるよう2分割形態とし、これを蝶番を介して開閉可能とする。これは1面が開口した2つの箱形のダスト吸引ボックス片11、12をその開口面を対向するよう配置し、この対峙する開口面の1側に蝶番13、13を取り付けて開閉可能とし、この蝶番13と対向する他の辺に係止具14を取り付けて、2つのダスト吸引ボックス片11、12を閉じたとき、この係止具14にて一体とするように構成する。これにより、ダスト吸引ボックス1内に、簡易にワイヤーロープWを挿通できるようにする。
また、このダスト吸引ボックス1の上面と下面には一直線となるようにしてワイヤーロープ挿通孔15、16を穿設する。このワイヤーロープ挿通孔15、16の径は、挿通するワイヤーロープWの径に応じて定めるもので、ワイヤーロープ径よりも若干大となるようにする。
また、いずれか一方、例えば、ダスト吸引ボックス片11の側面には、筒状をした2つのダスト吸引ホース接続口17、18を突設形成し、これにそれぞれダスト吸引ホース3、3を接続するようにする。このダスト吸引ホース接続口17、18は、その一方を上側のワイヤーロープ挿通孔15の近傍に、他方をワイヤーロープ挿通孔16の近傍になるように配設する。
なお、2つのダスト吸引ボックス片11、12を係止具14にて閉じたとき、さらにこれが一体となるよう、ダスト吸引ボックス片11、12の上面と下面に、ワイヤーロープ挿通孔15a、16aを穿設し、左右2つに分割したプレート19、19を取り付けるようにする。
【0023】
ダスト回収ボックス2は、図6に示すように、一側面に回収ダストを排出するための開口面とし、このダスト排出口21に通気可能とした、特に限定されるものではないが、例えば、ルーバ、パンチングメタルなどのダスト排出扉22を留め具23を介して開閉可能に配設するとともに、このダスト排出口と一直線状に対向するダスト侵入側の側面には筒状をした2つのダスト吸引ホース接続口24、25を突設形成し、このダスト回収ボックス2内に吸引ファン26を配設し、さらに該吸引ファン26の上流側前面にプレフイルター27を、下流側後面にフイルター28をそれぞれ着脱可能に配設して構成する。
なお、図示の実施例ではダスト侵入側面とダスト排出側面とを一直線状に対峙して配置し、この途中にプレフイルター27、吸引ファン26、フイルター28を順次配設することにより、ダストを含む空気の流れを円滑にするようにしているが、これは特に限定されるものではなく、プレフイルターの上流側であればいずれの位置にもダスト吸引ホース接続口を形成することができる。
また、主として粗いダストを捕捉するためのプレフイルター27は、清掃などのメンテナンスが容易に行えるよう、ダスト回収ボックス2の一側面より着脱可能として配置し、かつ交換もできるようにする。この場合、プレフイルターの挿入口には交換用蓋29を取り付ける。
主として細かいダストを捕捉するためのフイルター28の清掃、メンテナンス等は、ダスト排出扉22を開くことにより行えるようにする。
このように吸引ファン26の前後面にプレフイルター27、フイルター28を配設することで、フイルターに目詰まりを生じにくくして効率的にダストを捕捉回収できるようにする。
【0024】
ダスト吸引ホース3は、望ましくは可撓性とし、近接配置されるダスト吸引ボックス1のダスト吸引ホース接続口17、18と、ダスト回収ボックス2のダスト吸引ホース接続口との間を接続する。これにより、ダスト回収ボックス2に内蔵する吸引ファン26の稼働にてダスト吸引ボックス1内に負圧を発生させてダスト吸引ボックス1内を通過するワイヤーロープWに付着するダストを吸引し、ダスト回収ボックス2内に回収できるようにするが、この場合、該ダスト吸引ホース3が、ダスト吸引ホース接続口17、18及び24、25と妄りに離間しないようバンド止め31を採用することができる。
【0025】
次に、本発明のワイヤーロープのダスト回収装置の作用について説明する。
シーブSに掛けられ、シーブSから離間してくるワイヤーロープWをダスト吸引ボックス1内に挿通されるようにする。これは2つのダスト吸引ボックス片11、12を係止具14を外すことで蝶番13より開くようになる。このダスト吸引ボックス片11、12を開いた状態で上下のワイヤーロープ挿通孔15、16にワイヤーロープWを挿通した後、ダスト吸引ボックス片11、12を閉じ、係止具14で固定することでワイヤーロープWをダスト吸引ボックス1内に挿通されるようにして取り付けられる。なお、このダスト吸引ボックス1をマスト、シーブケースなどに取り付ける。
【0026】
シーブSから離間してくるワイヤーロープWがワイヤーロープ挿通孔15を経てダスト吸引ボックス1内に挿通されると、ダスト吸引ボックス1内の空気はダスト回収ボックス2内の吸引ファン26の駆動により2本のダスト吸引ホース3、3を介して吸引されているので、該ワイヤーロープWに付着しているダストはこの吸引力にて吸引され、ダスト回収ボックス2内に回収されるとともに、同時にシーブから出て周囲に飛散せんとするワイヤーロープWに未付着のダストもワイヤーロープ挿通孔15を経て吸引される空気にてともに吸引されるので周囲に飛散することを防ぐことができる。
また、同時にワイヤーロープWがワイヤーロープ挿通孔16を経てワイヤーロープ挿通孔16の外へ出る際、このワイヤーロープ挿通孔16より落下せんとするダストをもワイヤーロープ挿通孔16より吸引される外気の流れにてダスト吸引ボックス外への落下が阻止される。これにより、ワイヤーロープWに付着しているダストが吸引除去され、ワイヤーロープWは清浄な状態で移動する。
【0027】
このダスト回収ボックス2内に、ダスト吸引ホース接続口24、25を経て吸引されたダストを含む空気は、まずプレフイルター27にて予め粗いダストが捕捉、除去された後、次にフイルター28を経て外部へ排出されるが、このときフイルター28にて細かいダストも捕捉、除去される。その後、吸引空気はダストが除去され清浄となってダスト排出口21、通気可能としたダスト排出扉22を経て外部へ排出される。
このプレフイルター27、フイルター28にて捕捉されたダストは、該フイルターに付着するか、フイルター下方のダスト回収ボックス内に蓄積されるものとなる。この捕捉ダストが所定量になれば、留め具23を外してダスト排出扉22を開き、かつフイルター28を取り外して内部の回収ダストを排出するようにする。
【0028】
以上、本発明のワイヤーロープのダスト回収装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のワイヤーロープのダスト回収装置は、昇降台を吊垂支持するワイヤーロープに付着するダストを、空気の吸引力にて回収するという特性を有していることから、半導体製造工場、液晶板製造工場等のクリーンルーム内で、部材等の搬送、扛上作業に用いるスタッカークレーンの用途に好適に用いることができるほか、例えば、清潔度を要求される食品工場内でのワイヤーロープを用いた扛上機、搬送機の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のワイヤーロープのダスト回収装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】ダスト吸引ボックスを示し、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図5】ダスト吸引ボックスを示し、(A)は左側面図、(B)は右側面図である。
【図6】ダスト回収ボックスを示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
【符号の説明】
【0031】
W ワイヤーロープ
S シーブ
1 ダスト吸引ボックス
11、12 ダスト吸引ボックス片
13 蝶番
14 係止具
15、16、15a、16a ワイヤーロープ挿通孔
17、18 ダスト吸引ホース接続口
19 プレート
2 ダスト回収ボックス
21 ダスト排出口
22 ダスト排出扉
23 留め具
24、25 ダスト吸引ホース接続口
26 吸引ファン
27 プレフイルター
28 フイルター
29 プレフイルター交換用蓋
3 ダスト吸引ホース
31 バンド止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープを挿通して取り付けたダスト吸引ボックスと、内部に吸引ファンを備え、かつダスト吸引ボックスに近設して配設したダスト回収ボックスとを、ダスト吸引ホースにて接続して構成したことを特徴とするワイヤーロープのダスト回収装置。
【請求項2】
ダスト吸引ボックスを、シーブを経た近傍で、ワイヤーロープがほぼ垂直となる位置に配設したことを特徴とする請求項1記載のワイヤーロープのダスト回収装置。
【請求項3】
ダスト吸引ボックスに接続するダスト吸引ホース接続口を、ダスト吸引ボックスに形成する上下両ワイヤーロープ挿通口の近傍に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤーロープのダスト回収装置。
【請求項4】
ダスト回収ボックスに、内蔵する吸引ファンの上流側前面にプレフイルターを、下流側後面にフイルターをそれぞれ着脱可能に配設したことを特徴とする請求項1記載のワイヤーロープのダスト回収装置。
【請求項5】
ダスト回収ボックスに、回収ダストを排出するためのダスト排出口に通気可能としたダスト排出扉を開閉可能に配設したことを特徴とする請求項1又は4記載のワイヤーロープのダスト回収装置。
【請求項6】
ダスト吸引ホースを可撓性としたことを特徴とする請求項1記載のワイヤーロープのダスト回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−302415(P2007−302415A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132745(P2006−132745)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】