説明

ワークの形状認識システムおよびそれを具備する組立ライン、並びにワークの形状認識方法

【課題】搬送途中のワークの表面に現れる形状変化を精度良く認識し、組立ライン内に設けられる組付装置と、ワークとの間の位置ズレを防止することが可能な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の基準位置Zを検出するリミットスイッチ30と、同じく車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の基準位置Zからの移動量Lを検出するロータリエンコーダ40と、同じく車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の表面(主としてルーフ面3a、並びにその他の表面)との直線距離Hを検出するレーザ変位計50と、ロータリエンコーダ40とレーザ変位計50とにより検出された二つの検出値に基づいて、搬送方向と平行な方向における車体3の表面の形状変化を認識する認識装置60と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送経路に沿って搬送されるワークの形状変化及びその位置を、ワークの搬送途中に認識する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車両を組み立てる組立工程では、車両のシャシーにエンジン及び電装品等を組み付ける組立ライン、車両にウインドガラス及び車輪等を組み付ける組立ライン、車両に塗装を施す組立ライン等の各種組立ラインが用いられている。これらの組立ラインを独立して配置し、各組立ライン内で組立作業が行うことによって、作業効率、製品品質等の向上が図られている。
また、上記のような組立ラインでは、作業時間を短縮する、重量物からなる作業対象等を搬送する、作業対象等を精度良く位置決めする等のために、それぞれの作業を補助する作業用ロボットが適宜導入されている。
【0003】
上述のような作業用ロボットを用いた作業では、人手による作業と異なり、プログラムされた動作を繰り返し行うため、係る動作の調整を行う際には、一旦作業を中断して調整を行う必要があり、作業用ロボットによる作業中の動作の微調整が困難である。
このため、例えば位置決め誤差等に起因する作業対象と作業用ロボットとの間の位置ズレによって、作業対象と作業用ロボットとが接触する、又は作業対象と当該作業対象に組み付ける部品等とが接触する等の不具合が生じ得る。そして、このような不具合が生じたときには、製品不良、作業用ロボットの破損等の問題が発生する。
【0004】
上記のような問題を解消する手段として、以下に示す特許文献1のような技術が開示されている。
特許文献1に開示された技術は、図10に示すように、車体101の窓枠102にウインドガラス103を取り付けるウインドガラス取付装置100であって、ウインドガラス取付装置100は、ウインドガラス取付装置100を所定位置に位置決めする位置決め手段104と、ウインドガラス103の異なる縁を視野の一部に含む複数の撮像手段105・105・・・とを具備する。ウインドガラス取付装置100は、さらに撮像手段105・105・・・からの信号に基づいて視野内の輝度信号を積分する輝度信号積分手段106と、輝度信号積分手段106からの出力が基準値になるように位置決め手段104を制御する制御手段107とを具備するものである。また、以上のように構成されるウインドガラス取付装置100によってウインドガラス103を取り付けられる作業対象となる車体101は、支持台108上に位置決めされている。
これによれば、位置認識のための複雑な信号処理を必要とすることなく、単に輝度信号の積分という簡単な処理によりウインドガラス103を正確に車体101の窓枠102に位置決めすることが可能となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、搬送経路に沿って搬送されている車体101を支持台108上に移載して位置決めする必要があるため、搬送経路から車体101を取り出して支持台108に固定するための装置が別途必要となり、組立ラインが大がかりとなるとともに組立ラインが分断されるという点で不利である。
また、車体101を認識する方法として、カメラ等により構成される撮像手段105・105・・・を用いるため、組立ライン内に発生し得る外乱光の影響を受けやすく、さらに、上記のように撮像手段105・105・・・を使用しているため、車体101の高さを認識することが不可能である。これにより、車体101の位置認識ミスが生じる可能性がある点でも不利である。
そして、このような位置認識ミスが生じた場合には、作業対象の一形態である車体101と作業用ロボットの一形態であるウインドガラス取付装置100との間に位置ズレが生じ、係る位置ズレに起因する問題が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3410205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、搬送途中のワークの表面に現れる形状変化を精度良く認識し、組立ライン内に設けられる組付装置と、ワークとの間の位置ズレを防止することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様であるワークの形状認識システムは、ワークの搬送経路に沿って設けられ、当該ワークの基準位置を検出する第一検出装置と、同じくワークの搬送経路に沿って設けられ、前記基準位置からのワークの移動量を検出する第二検出装置と、同じくワークの搬送経路に沿って設けられ、前記ワークの表面との直線距離を検出する第三検出装置と、前記第二検出装置と前記第三検出装置とにより検出された二つの検出値に基づいて、前記搬送経路の搬送方向における前記ワークの表面の形状変化を認識する認識装置と、を具備する。
【0009】
前記ワークの形状認識システムにおいて、前記第三検出装置は、前記第一検出装置によって検出された基準位置を基準として、前記第二検出装置によって検出される所定の移動量毎に、前記ワークの表面との直線距離を検出し、前記認識装置は、前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分を評価することによって、前記ワークの表面の形状変化を認識することが好ましい。
【0010】
前記ワークの形状認識システムにおいて、前記ワークは所定の形状を有し、前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、前記基準位置は、前記認識装置によって認識されるワークの表面における形状変化が前記しきい値よりも小さい位置とすることが好ましい。
【0011】
前記ワークの形状認識システムにおいて、前記ワークは所定の形状を有し、前記認識装置による、前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分の評価は、前記ワークが、前記基準位置から所定の移動区間を移動する間に行われ、前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、前記移動区間内で、最後に認識されたワークの形状変化を、前記ワークの形状変化として認識することが好ましい。
【0012】
前記ワークの形状認識システムにおける別実施形態として、前記ワークは所定の形状を有し、前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、さらに、前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分の評価を、前記ワークの形状変化が認識された位置から所定の移動量を移動する間にも行い、前記移動中に、新たにワークの形状変化が認識されない場合は、最後に認識されたワークの形状変化を、前記ワークの形状変化として認識することが好ましい。
【0013】
本発明の第二の態様である組立ラインは、ワークに部品を組み付ける組立ラインであって、前記ワークを所定の搬送経路に沿って搬送する搬送装置と、前記ワークに前記部品を組み付ける組付装置と、上記本発明の第一の態様に係るワークの形状認識システムと、を具備し、前記搬送装置によって前記ワークを搬送しつつ、前記組付装置によって、前記ワークにおける、前記ワークの形状認識システムにより認識されるワークの表面の形状変化に応じた位置に、前記部品を組み付ける。
【0014】
本発明の第二の態様である組立ラインの別実施形態は、ワークに部品を組み付ける組立ラインであって、前記ワークを所定の搬送経路に沿って搬送する搬送装置と、前記ワークに前記部品を組み付ける組付装置と、前記組付装置を、前記搬送装置によって搬送されるワークと平行に、かつ、同期して搬送する同期搬送装置と、上記本発明の第一の態様に係るワークの形状認識システムと、を具備し、前記ワークの形状認識システムの第三検出装置は、前記同期搬送装置に設けられるとともに、前記部品との直線距離を検出可能であり、前記搬送装置によって前記ワークを搬送しつつ、前記第三検出装置によって、前記部品の端部と前記ワークの表面の形状変化とが一直線上にあることを検出して調整しながら、前記組付装置によって、前記ワークにおける、前記ワークの形状認識システムにより認識されるワークの表面の形状変化に応じた位置に、前記部品を組み付ける。
【0015】
前記組立ラインにおいて、前記ワークは、自動車の車体であり、前記部品は、ウインドガラスであり、かつ、前記認識装置により認識されるワークの表面の形状変化は、前記車体のルーフ面の形状と窓枠の形状との境界部分における形状変化とすることが好ましい。
【0016】
本発明の第三の態様であるワークの形状認識方法は、所定の搬送経路に沿って搬送されるワークの基準位置を検出する第一検出工程と、前記第一検出工程にて検出された前記ワークの前記基準位置からの移動量を検出する第二検出工程と、前記第二検出工程にて検出される前記基準位置からの所定の移動量毎に、所定位置とワークの表面との直線距離を検出する第三検出工程と、前記第三検出工程にて検出された前記直線距離の差分値を演算する演算工程と、前記演算工程にて演算された差分値と所定のしきい値とを比較することによって、前記ワークの表面の形状変化を認識する認識工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送途中のワークの表面に現れる形状変化を精度良く認識することができ、組立ライン内に設けられる組付装置と、ワークとの間の位置ズレを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】組立ラインを示す図である。
【図2】形状認識システムによる制御構成を示すブロック図である。
【図3】ワークの形状変化を示す拡大図である。
【図4】認識装置による認識制御を示す図である。
【図5】基準位置を示す図である。
【図6】認識装置の第二実施形態を示す図である。
【図7】認識装置による認識制御を示す図である。
【図8】組立ラインの第二実施形態を示す図である。
【図9】組付装置によるウインドガラスの組み付け作業を示す図である。
【図10】従来のウインドガラス組付装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図1を参照して、本発明に係る組立ラインの実施の一形態である組立ライン1について説明する。
なお、以下において、図1における矢印Aの指す方向を上方向とし、上下方向を規定する。また、図1における矢印Bの指す方向を前方向とし、前後方向を規定する。
【0020】
図1に示すように、組立ライン1は、ウインドガラス2を車体3に組み付ける作業工程等を含む一連の生産システムであり、搬送システム5、組付装置9、形状認識システム20等を具備する。より詳細には、図1に示すように、組立ライン1では、搬送システム5により車体3を所定の搬送経路に沿って搬送しつつ、組付装置9によりウインドガラス2を車体3の後部に配置される窓枠4に組み付ける作業が行われる。
ウインドガラス2は、車体3の窓枠4に組み付けられる部品である。ウインドガラス2は、強化ガラス、UVカットガラス等のガラス素材により構成される部材であり、車体3の後部に配置される窓枠4に応じた形状を有する。
車体3は、組立ライン1における作業対象(ワーク)であり、ノッチバックのセダン形状を有する車両の車体として構成される。また、図1に示すように、車体3の上面(ルーフ面3a)は、緩やかな曲面として形成されている。車体3の後部には窓枠4が形成され、この窓枠4にウインドガラス2が組み付けられる。
【0021】
搬送システム5は、車体3を搬送経路8に沿って搬送する装置である。
図1に示すように、搬送システム5は、移動台車6、コンベヤ7等を具備する。移動台車6は、コンベヤ7上に載置されており、図示せぬ車体支持部等を具備する台車である。前記車体支持部によって車体3が支持される。このように、車体3は、前記車体支持部に支持されつつ、移動台車6とともにコンベヤ7に沿って搬送される。
【0022】
図1に示すように、コンベヤ7は、搬送経路8に沿って設けられており、チェン駆動、ローラ駆動、又はフリクション駆動等の駆動方式によって駆動可能に構成されている。コンベヤ7を駆動することによって、コンベヤ7上に載置される移動台車6が所定の搬送経路8に沿って案内される。
このようにして、車体3は、コンベヤ7上に載置される移動台車6の前記車体支持部に支持されつつ、搬送経路8に沿って搬送されている。
【0023】
組付装置9は、作業用ロボット等により構成され、ワークである車体3の後部に配置される窓枠4に、部品であるウインドガラス2を組み付ける装置であり、搬送経路8に沿って設けられている。
図1に示すように、組付装置9は、ロボットアーム10、駆動制御部10a、ウインドガラス支持装置11等を具備する。ロボットアーム10は、適宜のモータ及び当該モータの駆動を制御する駆動制御部10aにより高精度に駆動可能に構成される多関節のロボットアームである。ロボットアーム10の先端部にはウインドガラス支持装置11が設けられている。ウインドガラス支持装置11は、適宜のサクション装置等を具備し、ウインドガラス2を吸着すること等により支持しつつ、ウインドガラス2を車体3の上方から下方に向けて窓枠4に組み付ける装置である。
このように、ロボットアーム10の駆動により、ロボットアーム10の先端部に配置されるウインドガラス支持装置11を位置決めし、ウインドガラス支持装置11に支持されるウインドガラス2の組み付け位置を決定して窓枠4に組み付けている。
【0024】
また、図1に示すように、ウインドガラス2の位置決め機能を有するロボットアーム10の駆動制御部10aは、形状認識システム20に接続されており、形状認識システム20からの制御信号によって制御されている。つまり、組立ライン1においては、形状認識システム20によって、組付装置9によるウインドガラス2の組み付け位置の位置決めを行っている。
【0025】
以下では、図1〜図3を参照して、形状認識システム20について詳細に説明する。
形状認識システム20は、ワークである車体3の表面(本実施形態では、ルーフ面3aと窓枠4の端面)における形状変化を認識することにより、車体3の形状を認識するシステムである。
【0026】
図1及び図2に示すように、形状認識システム20は、リミットスイッチ30、ロータリエンコーダ40、レーザ変位計50、認識装置60等を含む。認識装置60と、リミットスイッチ30、ロータリエンコーダ40及びレーザ変位計50とは、それぞれ電気的に接続されており、それぞれの検出値が認識装置60に出力される。認識装置60は、これらの検出値を用いて所定の演算を行い、車体3の形状変化を認識する。
【0027】
リミットスイッチ30は、接触子31等を具備する公知のローラレバー型のリミットスイッチにより構成されるセンサであり、搬送経路8に沿って設けられている。
図1及び図2に示すように、リミットスイッチ30の接触子31は、移動台車6の前端部と接触可能に配置されている。接触子31とコンベヤ7により搬送される移動台車6の前端部とが接触することにより、リミットスイッチ30から認識装置60に、信号Cが伝送される。
そして、認識装置60は、信号Cが伝送された位置を車体3の「基準位置Z」として検出し記憶する。
【0028】
ロータリエンコーダ40は、接触子41等を具備する公知の光学式のロータリエンコーダにより構成されるセンサであり、搬送経路8に沿って設けられている。
図1及び図2に示すように、ロータリエンコーダ40の接触子41は、移動台車6の側部に接触可能、かつ、その接触により円滑に回転可能に配置されている。接触子41とコンベヤ7により搬送される移動台車6の側部とが接触することにより、接触子41が回転する。ロータリエンコーダ40から認識装置60に、接触子41の回転量に応じた信号Dが伝送される。
そして、認識装置60は、この信号Dを車体3の「移動量」として検出し記憶する。ここで、認識装置60は、リミットスイッチ30によって信号Cが伝送された後に、信号Dによる前記移動量の検出を開始するように設定されている。つまり、リミットスイッチ30によって伝送される信号Cが、ロータリエンコーダ40による車体3の移動量検出を開始する合図となっている。このようにして、認識装置60は、車体3の「基準位置Zからの移動量L」を検出し記憶する。
【0029】
レーザ変位計50は、投光部51、受光部52等を具備する公知のレーザ変位計により構成されるセンサであり、受光部52によって受光する受光量がレーザ変位計50と測定対象との距離に応じて変化する特性を利用するものである。レーザ変位計50は、搬送経路8に沿って設けられており、かつ、車体3の表面(上面)に設けられるアンテナ、キャリア等の障害物を回避可能な位置に設けられている。
図1〜図3に示すように、レーザ変位計50は、車体3のルーフ面3aと対向する位置であって、ルーフ面3aに対して略垂直方向に向けてレーザを照射するように配置されている。レーザ変位計50は、投光部51から、搬送経路8に沿って搬送されてくる車体3のルーフ面3a及びその他の表面に向けてレーザ光を照射し、その反射光を受光部52で受光する。レーザ変位計50から認識装置60に、受光部52における受光量に応じた信号Eが伝送される。
そして、認識装置60は、この信号Eをレーザ変位計50と車体3のルーフ面3a及びその他の表面との「直線距離」として検出する。ここで、上述のように認識装置60は、リミットスイッチ30によって信号Cが伝送された後に、ロータリエンコーダ40によって信号Dが伝送され、車体3の「基準位置Zからの移動量L」を検出するが、認識装置60では、所定の移動量dL毎に信号Eによる直線距離を検出し、レーザ変位計50と車体3との「位置Pにおける直線距離H(P)」を検出し記憶するように構成されている。
【0030】
レーザ変位計50は、投光部51から車体3のルーフ面3a及びその他の表面にレーザ光線を照射し、受光部52によってその反射光を受光する構成である。このように、本発明に係る第三検出装置としては、外乱光に強いレーザ光線を用いるレーザ変位計50が好ましく、これによって、形状認識システム20の信頼性を向上させることができる。
【0031】
認識装置60は、図示せぬ演算部、記憶部等を具備し、上述のように構成されるリミットスイッチ30、ロータリエンコーダ40及びレーザ変位計50からそれぞれ伝送される信号C、信号D及び信号Eが前記演算部に入力され、当該演算部において所定の演算が行われる。そして、上述のように、これらの検出装置30・40・50により検出される検出値に基づいて、ワークである車体3の表面の形状変化を検出する。
認識装置60は、図3に示すように、車体3のルーフ面3aの形状と窓枠4の形状との間に存在する段差4a、つまり、ルーフ面3aと窓枠4との境界部分の形状変化を車体3の表面の形状変化として認識する。そして、認識装置60は、この認識された段差4aに基づいて窓枠4の位置を決定し、組付装置9(より厳密には駆動制御部10a)を制御して、ウインドガラス2を窓枠4に位置決めして組み付ける。
【0032】
以下では、図3及び図4を参照して、以上のように構成される形状認識システム20の認識装置60による車体3の表面の形状変化の認識方法について説明する。
【0033】
上記のように、本実施形態における車体3の表面の形状変化とは、車体3のルーフ面3aの形状と窓枠4の形状との間に存在する段差4a、つまり、ルーフ面3aと窓枠4との境界部分における形状変化である(図3参照)。
なお、この段差4aの大きさ、言い換えればワークである車体3の形状変化の大きさは、車体3によって異なるが、本実施形態に係る形状認識システム20によれば、認識装置60による演算方法を変更又は選択することによって、5mm程度の小さい変化でも認識可能であることが分かっている。
【0034】
より具体的には、図4に示すように、まず、接触子31が移動台車6の前端に接触すると、リミットスイッチ30によって信号Cが伝送され、ロータリエンコーダ40による検出(つまり、認識装置60への検出値の伝送)が開始される。次に、このロータリエンコーダ40によって伝送される信号Dによって検出される車体3の所定の移動距離毎に、レーザ変位計50による検出を行う。
レーザ変位計50によって伝送される信号Eは、信号Dによって決定される車体3の移動量Lとともに、認識装置60の記憶部によって記憶される。言い換えれば、認識装置60は、搬送経路8中のある位置(P)において、ロータリエンコーダ40によって検出される車体3の移動量L(P)と、このときの車体3の表面との直線距離H(P)とを連続的に検出し記憶する。これとともに、この直線距離H(P)と、位置(P)の直前の位置(P−1)における直線距離H(P−1)と、の差分値dH(H(P)−H(P−1))を演算し、この差分値dHと所定のしきい値Tとを比較し、差分値dHがしきい値Tを超える場合に、認識装置60は段差4aとして認識する制御構成である。そして、この段差4aの認識完了後、認識装置60による認識制御を終了する。
ここで、認識装置60は、この段差4aを認識するときの移動量Lを検出し、この移動量Lに基づいて窓枠4の前後位置を決定するとともに、段差4aを認識するときの直線距離Hを検出し、この直線距離Hに基づいて窓枠4の高さ(より厳密には、レーザ変位計50と窓枠4との直線距離)を決定する。そして、このように決定された窓枠4の前後位置及び高さを認識して、それに応じた制御信号を組付装置9の駆動制御部10aに伝送することによって、窓枠4にウインドガラス2を組み付ける際の位置決め精度を向上している。
従って、組付装置9のウインドガラス支持装置11と車体3の窓枠4との位置ズレを確実に防止でき、ウインドガラス2を精度良く窓枠4に組み付けることが可能となる。
【0035】
なお、車体3は、搬送方向に対して十分な長さを有しているが、搬送方向に対する長さが短いワークの表面の形状を認識する場合には、位置(P−1)から位置(P)までの所定の移動量dL(L(P)−L(P−1))を小さくすること、言い換えればレーザ変位計50によるワークの表面との直線距離の検出箇所を十分に集中させることが好ましい。
また、ワークの形状変化が小さい場合には、上述のような差分値dHとしきい値Tとの比較の代わりに、差分値dHを位置(P−1)から位置(P)までの所定の移動量dL(L(P)−L(P−1))で除算することによって得られる微分値DHとしきい値Tとを比較する制御構成とすることが好ましい。
これらによれば、本発明に係る第三検出装置によるワークとの直線距離の検出可能距離が短い(つまり、第二検出装置によって検出される移動量が短い)場合及びワークの形状変化が小さい場合においても十分な形状認識が可能となり、本発明に係る形状認識装置によって認識可能となるワークの形状の種類を多くできる。従って、形状認識システム20の汎用性を向上できる。
【0036】
以上のように、本発明に係るワークの形状認識方法の実施の一形態である形状認識工程は、ワークである車体3の表面の形状変化の認識する工程であって、搬送経路8に沿って搬送される車体3の基準位置Zを検出する第一検出工程と、基準位置Zからの移動量Lを検出する第二検出工程と、所定の移動量dL毎に車体3の表面との直線距離Hを検出する第三検出工程と、位置(P)における直線距離H(P)と位置(P−1)における直線距離H(P−1)との差分値dHを演算する演算工程と、この差分値dHと所定のしきい値Tとを比較することによって、車体3の表面の形状変化として段差4aを認識する認識工程を具備する。
なお、上述のように、搬送経路8に沿って搬送されるワークの表面の形状に応じて、形状認識システム20における前記演算工程における演算方法を選択することが好ましい。
【0037】
また、しきい値Tは、実験、シミュレーション等によって予め設定されている値であり、認識装置60に記憶されている。本実施形態では、直線距離Hの検出開始位置(つまり、リミットスイッチ30によって検出される基準位置Z)を車体3のルーフ面3a上の形状変化が段差4aと比べて十分に小さい箇所、言い換えれば車体3のルーフ面3aの形状が安定している箇所(図5参照)として、形状認識システム20による形状認識に際して差分値dHがしきい値Tを超える可能性がある箇所を段差4aのみに予め限定することにより、段差4aの認識精度を向上している。
これによれば、形状認識システム20による形状変化の認識の信頼性を向上することができ、形状認識システム20のロバスト性を向上できる。従って、形状認識システム20によって認識された形状変化(段差4a)に応じて制御される組付装置9の位置決め精度に対する信頼性が増し、組付装置9と車体3との位置ズレをより確実に防止することが可能となる。
【0038】
さらに、搬送システム5による搬送方向におけるルーフ面3a上の検出距離Laを、段差4aの大きさHa(上下方向の直線距離)と比較して十分に大きく取ることによっても、段差4aの認識精度の向上を図っている。
より具体的には、図5に示すように、例えば段差4aの大きさHa(つまり、形状変化の大きさ)が10mmであった場合には、ルーフ面3aにおいて少なくとも段差4aの10mm以上(本実施形態では50mm程度)前方に基準位置Zを設定し、そこからレーザ変位計50による車体3の表面(ルーフ面3a)との直線距離Hの検出を開始するものである。また、図5に示すように、本実施形態ではリミットスイッチ30と移動台車6に支持される車体3との相対的な関係を考慮しつつ、上記のような検出開始位置に応じた位置にリミットスイッチ30及びレーザ変位計50を配置している。このとき、ロータリエンコーダ40は、レーザ変位計50による検出中に連続的に検出可能な適宜位置に配置されている。
これによれば、形状認識システム20による形状変化の認識の信頼性を向上することができ、形状認識システム20のロバスト性をさらに向上できる。従って、形状認識システム20によって認識された形状変化(段差4a)に応じて制御される組付装置9の位置決め精度に対する信頼性が増し、組付装置9と車体3との位置ズレをより確実に防止することが可能となる。
【0039】
以上のように、形状認識システム20は、ワークである車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の基準位置Zを検出するリミットスイッチ30と、同じく車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の基準位置Zからの移動量Lを検出するロータリエンコーダ40と、同じく車体3の搬送経路8に沿って設けられ、車体3の表面(主としてルーフ面3a、並びにその他の表面)との直線距離Hを検出するレーザ変位計50と、ロータリエンコーダ40とレーザ変位計50とにより検出された二つの検出値に基づいて、搬送方向と平行な方向における車体3の表面の形状変化を認識する認識装置60と、を具備する。
また、組立ライン1は、車体3を搬送経路8に沿って搬送する搬送システム5と、車体3にウインドガラス2を組み付ける組付装置9と、上記のように構成される形状認識システム20と、を具備し、搬送システム5によって車体3を搬送しつつ、組付装置9によって、車体3における、形状認識システム20によって認識される車体3の表面の形状変化に応じた位置(窓枠4)に、ウインドガラス2を組み付ける。
これによれば、搬送途中の車体3の前後位置を計測しつつ、車体3の表面の形状変化(高さの変化)を検出することができるとともに、当該形状変化がある位置の高さを計測することができる。
従って、組立ライン1内において、車体3に対してウインドガラス2の組み付け作業を行う組付装置9の前後位置と高さ位置における位置決め精度を向上することができるので、車体3と組付装置9との位置ズレを防止することができる。
また、車体3を搬送経路8に沿って搬送しながらウインドガラス2を精度良く組み付けることが可能となるので、従来のようにウインドガラス2を組み付ける際に車体3をラインから取り出す装置を別途設ける必要がなくコストを抑えることができ、組立工程のサイクルタイムを短縮することができる。
また、本実施形態のように、車体3の表面との直線距離Hを検出する装置として外乱光に強いレーザ変位計50を用いることによって、車体3の表面(主としてルーフ面3a、並びにその他の表面)との直線距離を精度良く検出することが可能となり、形状認識システム20による形状変化の認識に係る信頼性が向上する。
また、ウインドガラス2を自動車の車体3の窓枠4に精度良く組み付けることが可能となり、ウインドガラス2又はウインドガラス2を組み付ける組付装置9と、車体3との接触を防止でき、組立後の車体3の品質を維持できる。
【0040】
また、認識装置60は、リミットスイッチ30によって検出された基準位置Zから、ロータリエンコーダ40によって検出される所定の移動量dL毎に、レーザ変位計50によって検出される車体3の表面(主としてルーフ面3a、並びにその他の表面)との直線距離Hを連続的に検出し、搬送経路8に沿った位置(P)において、検出される直線距離H(P)と、当該検出される直線距離H(P)の直前に検出された直線距離H(P−1)との差分値dHを演算し、この差分値dHと所定のしきい値Tとを比較して評価することによって、車体3の表面の形状変化(ルーフ面3aと窓枠4との間の段差4a)を認識する。
これによれば、形状変化(段差4a)を認識するときの移動量Lを検出し、この移動量Lに基づいて窓枠4の前後位置を決定するとともに、段差4aを認識するときの直線距離Hを検出し、この直線距離Hに基づいて窓枠4の高さを決定する。そして、このように決定された窓枠4の前後位置及び高さを認識して、それに応じた制御信号を組付装置9の駆動制御部10aに伝送することによって、窓枠4にウインドガラス2を組み付ける際の位置決め精度を向上できる。
従って、組付装置と車体3との位置ズレをより確実に防止でき、ウインドガラス2を精度良く窓枠4に組み付けることが可能となる。
【0041】
また、車体3は、所定の形状(ノッチバックのセダン形状)を有し、認識装置60は予め設定されるしきい値Tにより車体3の形状変化の有無を認識し、基準位置Zは、認識装置60によって認識される車体3のルーフ面3a上の形状変化が段差4aと比べて(しきい値Tと比べて)十分に小さい箇所、言い換えればルーフ面3aの形状が安定している位置とするものである。
これによれば、形状認識システム20による形状変化の認識の信頼性を向上することができ、形状認識システム20のロバスト性を向上できる。
従って、形状認識システム20によって認識された形状変化(段差4a)に応じて制御される組付装置9の位置決め精度に対する信頼性が増し、組付装置9と車体3との位置ズレをより確実に防止することが可能となる。
【0042】
また、本発明に係る搬送装置は、搬送システム5に限定されず、ワークである車体3を所定の搬送経路8に沿って搬送可能なものであれば良く、例えば、フリクションローラ等の移動手段を有する移動台車及びガイドレール等によって構成しても良い。
また、本実施形態では、搬送システム5をフロアタイプの搬送装置により構成したが、これに限定されず、ガイドレール、ハンガー、フリクションローラ等を具備するオーバーヘッドタイプの搬送装置によって構成しても良く、ワークに対する作業内容に応じてこれらを変更しても良い。
また、本発明に係る搬送経路は、平面視において直線に限らず曲線等に構成されているものでも良く、さらには、側面視において平らなものに限らず傾斜を有するもの等でも良い。つまり、搬送経路は、搬送装置によってワークを安定して搬送可能であれば良い。
【0043】
また、本発明に係る第一検出装置は、リミットスイッチ30に限定されず、例えば、赤外線センサ、レーザセンサ等の非接触式のセンサにより移動台車6又は車体3の前端部を検出して、認識装置60に適宜の信号を伝送する構成でも良く、搬送経路8に沿って設けられており、かつ、ワークである車体3の基準位置Zを検出可能であれば良い。
また、本発明に係る第二検出装置は本実施形態のロータリエンコーダ40に限定されず、例えば、搬送手段であるコンベヤ7の駆動軸の回転数を検出すること等の非接触式の検出方法により車体3の移動量を検出して、認識装置60に適宜の信号を伝送する構成でも良く、ワークである車体3の移動量を検出可能であれば良い。
また、本発明に係る第三検出装置は本実施形態のレーザ変位計50に限定されず、例えば、光センサ等の光学式のセンサによって車体3のルーフ面3a及びその他の表面との直線距離を検出して、認識装置60に適宜の信号を伝送する構成でも良く、車体3の表面(主としてルーフ面3a、並びにその他の表面)との直線距離を検出可能であれば良い。
【0044】
また、本発明に係る組立ラインは、車体3の窓枠4にウインドガラス2を組み付ける組立ライン1に限定されず、組立工程内において、ワークを搬送しながら部品をワークに組み付けるものであれば良く、例えば、ワークとなる車体に部品となるエンジン、又は電装部品を組み付ける工程を含む組立ラインでも良い。
また、本発明に係るワークは、本実施形態の車体3の形状に限定されず、ハッチバック形状、ハッチバックのセダン形状、ワゴンタイプの形状等を有する車体でも良く、さらには、車体に限らず、搬送経路に沿って搬送され、かつ、組み付け又は加工等の作業対象であれば良い。
【0045】
以下では、図6及び図7を参照して、本発明に係る認識装置の第二実施形態である認識装置160について説明する。
【0046】
上述の認識装置60は、レーザ変位計50によって走査される領域に内装部品等の障害物がないことが分かっている組立ラインに適している、例えば、組立ライン1における、車体3の後部に配置される窓枠4の上端部とルーフ面3aとの間の段差4aを認識することに適している。
特にレーザ変位計50は、搬送システム5の搬送方向上流側から搬送されてくる車体3に対して、車体3の前側から順に走査することとなるため、例えば、認識装置60を車体3の前部に配置される窓枠15の上端部の段差15aを認識することに用いた場合、内装部品等が車体3のルーフ面3aから前方にはみ出している(図6参照)と、当該ルーフ面3aからはみ出しているはみ出し部位16の前端部を段差15aとして誤検出する可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る認識装置160では、車体3の前部の窓枠15における形状認識に適する認識方法を提案する。
図6に示すように、車体3の前部の窓枠15には、ルーフ面3aから前方に向けて突出するはみ出し部位16が存在する。なお、はみ出し部位16の前端部の段差16aは、窓枠15の段差15aと同程度のものとする。
【0048】
図6に示すように、認識装置160には、リミットスイッチ130、ロータリエンコーダ140及びレーザ変位計150が電気的に接続されている。これらリミットスイッチ130、ロータリエンコーダ140、レーザ変位計150の構成は、それぞれ上述のリミットスイッチ30、ロータリエンコーダ40、レーザ変位計50と同様である。また、リミットスイッチ130、ロータリエンコーダ140、レーザ変位計150は、それぞれ車体3の前部の窓枠15の段差15aを認識すべく適宜位置に配置されている。
認識装置160は、これらの検出装置130・140・150から信号を受信し、その信号に基づいて、適宜の演算等を行うことによって、車体3の形状変化を認識する。
【0049】
認識装置160では、認識装置60と同様に、しきい値Tを設定し、差分値dH(H(P)−H(P−1))としきい値Tとを比較する。差分値dH(H(P)−H(P−1))がしきい値Tを超える場合に、仮段差17aとして仮記憶する。これと同時に、この仮段差17aを認識するときの移動量L及び直線距離Hを検出し、この移動量L及び直線距離Hに基づいて窓枠15の前後位置及び高さを仮決定する。
【0050】
このとき、認識装置160では、以下の(1)又は(2)に記載の認識制御に基づいて仮段差17aを窓枠15とルーフ面3aとの段差15aとして認識し、前記仮決定された前後位置及び高さを窓枠15の前後位置及び高さとして決定する。
(1)図7(a)に示すように、基準位置Zから所定の移動区間S1についてのみ形状認識判定を行うこととし、しきい値Tを超える毎に、仮段差17aとして仮記憶し、最後に仮記憶された仮段差17aを段差15aとして認識する。なお、認識装置160が、移動区間S1内を移動中に仮段差17aを複数回認識する場合は、(a)新たな仮段差17aとして随時更新して一つだけ記憶する、又は、(b)それぞれ異なる仮段差17a・17a・・・として複数個記憶する、の何れでも良い。
(2)図7(b)に示すように、しきい値Tを超えたときの位置から所定の移動量S2を移動するまでに、新たにしきい値Tを超えない場合は、当該しきい値Tを超えたときの仮段差17aを段差15aとして認識する。
【0051】
以上のように、認識装置160を用いれば、車体3のルーフ面3aから窓枠15側に内装部品等が前方に向けてはみ出している状態でも、窓枠15の前後位置及び高さの誤検出を防止でき、窓枠15の段差15aを精度良く認識することができる。
このように、組立ライン1では、特に、車体3の前部の窓枠15に対しては認識装置160による形状変化の認識方法を用い、車体3の後部の窓枠4に対しては認識装置60による形状変化の認識方法を用いることが適している。
また、認識装置160は、認識装置60と略同様の構成を有するので、認識装置160を含むワークの形状認識システム及びそれを具備する組立ラインについても、形状認識システム20及び組立ライン1と略同様の効果を奏する。
【0052】
以下では、図8及び図9を参照して、本発明に係る組立ラインの第二実施形態である組立ライン201について説明する。
図8に示すように、組立ライン201は、ウインドガラス202を車体203に組み付ける作業工程等を含む一連の生産システムであり、搬送システム205、組付装置209、同期搬送装置215、形状認識システム220等を具備する。組立ライン201では、搬送システム205により車体203を所定の搬送経路に沿って搬送し、同期搬送装置215によって前記搬送経路に沿って組付装置209を搬送しつつ、組付装置209によりウインドガラス202を車体203の前部に配置される窓枠204に組み付ける作業が行われる。
ウインドガラス202は、車体203の窓枠204に組み付けられる部品である。ウインドガラス202は、強化ガラス、UVカットガラス等のガラス素材により構成される部材であり、車体203の前部に配置される窓枠204に応じた形状を有する。
車体203は、組立ライン201における作業対象(ワーク)であり、ハッチバック形状を有する車両の車体として構成される。また、図8に示すように、車体203の上面(ルーフ面203a)は、緩やかな曲面として形成されている。車体203の前部には窓枠204が形成され、この窓枠204にウインドガラス202が組み付けられる。
【0053】
搬送システム205は、車体203を搬送経路208に沿って搬送する搬送装置である。
図8に示すように、搬送システム205は、フリクション台車206、レール207等を具備する。フリクション台車206は、公知のローラフリクション駆動方式による移動台車であり、搬送経路208に沿って設けられるレール207に係合する。つまり、フリクション台車206は、搬送経路208に沿って移動可能に構成されている。フリクション台車206上には車体203が載置され、フリクション台車206を駆動することにより車体203が搬送経路208に沿って搬送される。
【0054】
組付装置209は、作業用ロボット等により構成され、車体203の窓枠204にウインドガラス202を組み付ける装置であり、搬送経路208に沿って設けられている。
図8に示すように、組付装置209は、ロボットアーム210、組付制御部210a、ウインドガラス支持装置211等を具備する。ロボットアーム210は、適宜のモータ及び当該モータの駆動を制御する組付制御部210aにより高精度に駆動可能に構成される多関節のロボットアームである。ロボットアーム210の先端部にはウインドガラス支持装置211が設けられている。ウインドガラス支持装置211は、適宜のサクション装置等を具備し、ウインドガラス202を吸着すること等により支持しつつ、ウインドガラス202を車体203の上方から下方に向けて窓枠204に組み付ける装置である。
【0055】
同期搬送装置215は、組付装置209を支持・搬送する搬送装置であり、搬送経路208に沿って設けられ、搬送システム205のフリクション台車206と同期して進行可能に構成されている。
図8に示すように、同期搬送装置215は、駆動輪216、搬送制御部216a、リニアガイド217等を具備する。駆動輪216は、フリクション駆動方式によりリニアガイド217に沿って組付装置209を移動させる部材であり、適宜のモータ及び当該モータの駆動を制御する搬送制御部216aにより高精度に駆動可能に構成される駆動部材である。リニアガイド217は、搬送経路208と平行に設けられるガイド部材であり、駆動輪216の移動経路として構成されるものである。
【0056】
以上のように、組立ライン201では、同期搬送装置215の作動により車体203と同期状態に維持される組付装置209によって、車体203の窓枠204にウインドガラス202を組み付ける。
同期搬送装置215及び組付装置209のそれぞれの作動を制御する制御部210a・216aは、形状認識システム220に接続されており、形状認識システム220からの制御信号を受信して、駆動制御を行っている。つまり、組立ライン201においては、形状認識システム220によって、組付装置209によるウインドガラス202の組み付け位置の位置決めを行うとともに、同期搬送装置215及び組付装置209による組み付け作業を制御している。
【0057】
以下では、図8を参照して、形状認識システム220について詳細に説明する。
形状認識システム220は、ワークである車体203の表面(本実施形態では、窓枠204とルーフ面203aとの端面)における形状変化(段差204a)を認識することにより、車体203の形状を認識するシステムである。
【0058】
図8に示すように、形状認識システム220は、レーザセンサ230、ロータリエンコーダ240、レーザ変位計250、認識装置260等を含む。認識装置260と、レーザセンサ230、ロータリエンコーダ240及びレーザ変位計250とは、それぞれ電気的に接続されており、それぞれの検出値が認識装置260に出力される。認識装置260は、これらの検出値を用いて所定の演算を行い、車体203の形状変化を認識する。
【0059】
レーザセンサ230は、公知のレーザセンサであり、搬送経路208に沿って設けられ、車体203の前端部を検出可能に配置されている。つまり、レーザセンサ230は、リミットスイッチ30と同様に車体203の「基準位置Z」を検出し、認識装置260に信号Cを伝送するものである。
【0060】
ロータリエンコーダ240は、公知の光学式のロータリエンコーダであり、搬送経路208に沿って移動するフリクション台車206の駆動部に設けられ、当該駆動部によるフリクション台車206の移動距離を検出可能に配置されている。つまり、ロータリエンコーダ240は、ロータリエンコーダ40と同様に車体203の移動量を検出し、認識装置260に信号Dを伝送するものである。
そして、認識装置260では、レーザセンサ230によって信号Cが伝送された後に、信号Dによる前記移動量の検出を開始するように設定されている。
このようにして、認識装置260は、車体203の「基準位置Zからの移動量L」を検出し記憶する。
【0061】
レーザ変位計250は、断面形状を計測可能なライン光タイプの公知のレーザ変位計により構成されるセンサであり、投光部及び受光部等を有する。レーザ変位計250は、搬送経路208に沿って移動する組付装置209に固定・支持されている。つまり、レーザ変位計250は、同期搬送装置215の移動に伴って、搬送経路208に沿って移動可能に設けられている。
レーザ変位計250は、レーザ変位計250と測定対象(車体203の表面等)との直線距離を検出可能であり、レーザ変位計50と同様に、前記受光部における受光量に応じた信号Eを認識装置260に伝送する。
認識装置260は、レーザセンサ230によって信号Cが伝送された後に、ロータリエンコーダ240によって信号Dが伝送され、車体203の「基準位置Zからの移動量L」を検出するが、認識装置260では、所定の移動量dL毎に信号Eによる直線距離を検出し、レーザ変位計250と車体203との「位置Pにおける直線距離H(P)」を検出し記憶する。
【0062】
認識装置260は、図示せぬ演算部、記憶部等を具備し、上述のように構成されるレーザセンサ230、ロータリエンコーダ240及びレーザ変位計250からそれぞれ伝送される信号C、信号D及び信号Eが前記演算部に入力され、当該演算部において所定の演算が行われる。そして、上述のように、これらの検出装置230・240・250により検出される検出値に基づいて、車体203の表面の形状変化を検出する。
また、認識装置260は、車体203の形状変化を認識するとともに、形状変化の位置を、窓枠204の前後位置及び高さ(窓枠204と組付装置209との相対的な位置関係)として記憶する。
なお、認識装置260による車体203の形状変化の認識方法は、前述の認識装置60、又は認識装置160と同様の認識方法が適用可能であり、適宜選択可能である。特に、車体203の前部の窓枠204にウインドガラス202を組み付ける際に、車体203のルーフ面203aから前方に向けて内装部品がはみ出ていると容易に確認できる場合は、認識装置160と同様の認識方法が適している。
【0063】
以下では、図9を参照して、組立ライン201での組付装置209及び同期搬送装置215によるウインドガラス202の組み付け作業について説明する。
組立ライン201では、認識装置260により窓枠204の形状とルーフ面203aの形状との間に存在する段差204aを車体203の形状変化として認識した後、同期搬送装置215を駆動させて、組付装置209及びレーザ変位計250を車体203と同期させて移動させながら、組付装置209によってウインドガラス202を組み付ける作業を行う。また、本実施形態では、組み付け作業時にレーザ変位計250によってウインドガラス202の上端部を検出することによって、窓枠204と組付装置209との相対的な位置関係のズレを補正する。
【0064】
図9に示すように、ウインドガラス202の窓枠204への組み付け作業は、以下の(1)〜(4)の手順に従って行われる。
(1)組付装置209のロボットアーム210を下降させ、(2)ロボットアーム210を動かせて、ウインドガラス202の上端がレーザ変位計250の光路を横切るようにし、(3)光路を横切った位置で、ロボットアーム210の前後位置及びウインドガラス202の姿勢を合わせ、(4)ロボットアーム210を真下に下降させてウインドガラス202を組み付ける。
これによれば、組付装置209(同期搬送装置215)と車体203(フリクション台車206)との同期がずれた場合でもレーザ変位計250により、係るズレを検出し、補正することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 組立ライン
2 ウインドガラス(部品)
3 車体(ワーク)
3a ルーフ面
4 窓枠
4a 段差(ワークの形状変化)
5 搬送システム(搬送装置)
8 搬送経路
9 組付装置
20 形状認識システム(ワークの形状認識システム)
30 リミットスイッチ(第一検出装置)
40 ロータリエンコーダ(第二検出装置)
50 レーザ変位計(第三検出装置)
60 認識装置
H レーザ変位計とワークとの直線距離
L 基準位置からの移動量
Z 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの搬送経路に沿って設けられ、当該ワークの基準位置を検出する第一検出装置と、
同じくワークの搬送経路に沿って設けられ、前記基準位置からのワークの移動量を検出する第二検出装置と、
同じくワークの搬送経路に沿って設けられ、前記ワークの表面との直線距離を検出する第三検出装置と、
前記第二検出装置と前記第三検出装置とにより検出された二つの検出値に基づいて、前記搬送経路の搬送方向における前記ワークの表面の形状変化を認識する認識装置と、を具備するワークの形状認識システム。
【請求項2】
前記第三検出装置は、前記第一検出装置によって検出された基準位置を基準として、前記第二検出装置によって検出される所定の移動量毎に、前記ワークの表面との直線距離を検出し、
前記認識装置は、
前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分を評価することによって、
前記ワークの表面の形状変化を認識する請求項1に記載のワークの形状認識システム。
【請求項3】
前記ワークは所定の形状を有し、
前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、
前記基準位置は、前記認識装置によって認識されるワークの表面における形状変化が前記しきい値よりも小さい位置とする請求項2に記載のワークの形状認識システム。
【請求項4】
前記ワークは所定の形状を有し、
前記認識装置による、前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分の評価は、前記ワークが、前記基準位置から所定の移動区間を移動する間に行われ、
前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、
前記移動区間内で、最後に認識されたワークの形状変化を、前記ワークの形状変化として認識する請求項2に記載のワークの形状認識システム。
【請求項5】
前記ワークは所定の形状を有し、
前記認識装置は、前記差分によって得られる差分値と予め設定されるしきい値とを比較することにより前記ワークの形状変化の有無を認識し、
さらに、前記第三検出装置により検出された直線距離と、当該検出された直線距離の直前に検出された直線距離との差分の評価を、前記ワークの形状変化が認識された位置から所定の移動量を移動する間にも行い、
前記移動中に、新たにワークの形状変化が認識されない場合は、最後に認識されたワークの形状変化を、前記ワークの形状変化として認識する請求項2に記載のワークの形状認識システム。
【請求項6】
ワークに部品を組み付ける組立ラインであって、
前記ワークを所定の搬送経路に沿って搬送する搬送装置と、
前記ワークに前記部品を組み付ける組付装置と、
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のワークの形状認識システムと、を具備し、
前記搬送装置によって前記ワークを搬送しつつ、
前記組付装置によって、前記ワークにおける、前記ワークの形状認識システムにより認識されるワークの表面の形状変化に応じた位置に、前記部品を組み付ける組立ライン。
【請求項7】
ワークに部品を組み付ける組立ラインであって、
前記ワークを所定の搬送経路に沿って搬送する搬送装置と、
前記ワークに前記部品を組み付ける組付装置と、
前記組付装置を、前記搬送装置によって搬送されるワークと平行に、かつ、同期して搬送する同期搬送装置と、
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のワークの形状認識システムと、を具備し、
前記ワークの形状認識システムの第三検出装置は、前記同期搬送装置に設けられるとともに、前記部品との直線距離を検出可能であり、
前記搬送装置によって前記ワークを搬送しつつ、
前記第三検出装置によって、前記部品の端部と前記ワークの表面の形状変化とが一直線上にあることを検出して調整しながら、前記組付装置によって、前記ワークにおける、前記ワークの形状認識システムにより認識されるワークの表面の形状変化に応じた位置に、前記部品を組み付ける組立ライン。
【請求項8】
前記ワークは自動車の車体であり、前記部品はウインドガラスであり、かつ、前記認識装置により認識されるワークの表面の形状変化は、前記車体のルーフ面の形状と窓枠の形状との境界部分における形状変化である請求項6又は請求項7に記載の組立ライン。
【請求項9】
所定の搬送経路に沿って搬送されるワークの基準位置を検出する第一検出工程と、
前記第一検出工程にて検出された前記ワークの前記基準位置からの移動量を検出する第二検出工程と、
前記第二検出工程にて検出される前記基準位置からの所定の移動量毎に、所定位置とワークの表面との直線距離を検出する第三検出工程と、
前記第三検出工程にて検出された前記直線距離の差分値を演算する演算工程と、
前記演算工程にて演算された差分値と所定のしきい値とを比較することによって、前記ワークの表面の形状変化を認識する認識工程と、を具備するワークの形状認識方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−227271(P2009−227271A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44689(P2009−44689)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594133456)株式会社アラキ製作所 (8)
【Fターム(参考)】