説明

ワーク収納カセット

【課題】簡素な構成で検査用ワークを適確に収納することができるとともに、検査用ワークの出し入れが容易なカセットを提供する。
【解決手段】1枚のウェーハ付きフレーム5を収納する複数のスロット114と、スロット114にオペレータがウェーハ付きフレーム5を出し入れするための開口部111と、スロット114に収納されるウェーハ付きフレーム5のスロット114への挿入方向の先端を係止する背面板104とを有するウェーハ収納部110の上部に、ウェーハ付きフレーム5を上方から出し入れ可能とする仮置き部120を設け、この仮置き部120に検査用ウェーハ1Aを有するウェーハ付きフレーム5を上方から出し入れする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェーハ等の薄板状のワークを複数収納して、該ワークの加工装置に設置されるワーク収納カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のワークを切断して多数のチップに分割する切削装置には、多数のワークを収納したカセットが着脱可能に設置され、設置されたカセットからワークを1枚ずつ搬出して切削加工し、加工後のワークを同じカセットに戻す形式のものがある(例えば特許文献1)。カセットは、ワークを水平な姿勢で上下方向に積層した状態に収納する多数の棚状のスロットを有しており、ワークを水平方向にスライドさせて出し入れする構成となっている。また、カセットは昇降手段によって上下動可能に設置され、処理前のワークが搬送手段によりカセットから装置側に引き出されて切削手段まで搬送され、切削加工後は、該搬送手段により切削手段から該カセットに戻されるようになっている。このようなカセットは、同一型番の多数のワークを収納して運搬し、かつ、それらワークを連続して処理するにあたって有用なワーク収納手段とされている。
【0003】
ところで、切削加工のプロセスにおいては、多数のワークのうちの1枚を抜き取って切削状態を検査し、再び処理工程に戻すことが行われている。1枚のワークを抜き取り検査する場合、切削装置にあっては危険防止等の理由によって連続運転中におけるカセットの取り出しは制限されているため、装置の運転を一旦停止しなければならず、手間がかかり非効率的である。
【0004】
そこで、多数のワークを収納するカセットとは別に抜き取り検査用収納部を設け、多数のワークを収納するカセット(大型カセット)から搬出されて切削加工される多数のワークのうちの1枚を、抜き取り検査用収納部に収納してオペレータが取り出せるようにした構成が提案されている。上記特許文献1には、大型のカセットの下部に抜き取り検査用収納部が配設されている。また、特許文献2には、装置の手前側、すなわちオペレータ側にカセットを引き出して検査用ワークを取り出し可能とし、検査後は該カセットを装置側に押し込んでスライドさせ、元の収納位置に戻すようにされた抜き取り検査用収納部が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に開示されるように、検査後のワークを収納したカセットを装置側にスライドさせて装置に戻す構成においては、オペレータがカセットを押して元に戻す力が強すぎると、慣性力によってワークがカセット内において奥側すなわち装置側に移動し、ワークの一部がはみ出して突出してしまうことがしばしば起こる。ワークがカセットから装置側に突出すると、その突出部分が上記昇降手段や搬送手段に干渉し、ワークの破損や装置の停止といった不具合を招くことになる。そこで、ワークの突出を検知する手段を設けたり、カセットの奥側にワークが突き当たって突出を阻止する段差等のストッパを設けたりするなどの対策が講じられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−74004号公報
【特許文献2】特許第2997766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の対策手段のうち、ワークの突出を検知する手段を設けた場合には、突出を検知するに留まり、突出を防止することはできないという不満が生じる。また、段差等のストッパを設けても、ワークが反っていた場合などにはワークが段差を乗り越える可能性があって突出を十分に阻止することができないことがある。また、いずれの対策手段も装置の複雑化を招くといった弊害を招く。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な技術的課題は、簡素な構成で検査用ワークを適確に収納することができるとともに、検査用ワークの出し入れが容易なワーク収納カセットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワークを収納するワーク収納部を有し、加工装置に設置されるワーク収納カセットであって、前記ワーク収納部は、収納されるワークを支持する複数のスロットと、該スロットにワークを出し入れするための開口部と、該スロットに収納されて支持されるワークの、該スロットへのワーク挿入方向の先端を係止する係止部とを有し、該ワーク収納部の上部に、ワークを上方から出し入れ可能とする上方開口部を有するワークの仮置き部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ワークの仮置き部を上記検査用ワークの収納部として構成することができる。仮置き部には、上方開口部を経て上方からワークを出し入れすることができるようになっている。すなわち、ワークを収納する際には、上方からワークを仮置き部に向けて下ろしていき、上方開口部を通して仮置き部に載置することで、ワークは当該カセットに収納される。ワークを水平方向にスライドさせて収納する形式ではないため、ワーク収納時にワークの一部が装置側にはみ出して突出するといった不具合は起こらず、ワークを適確に収納することができるとともに、ワークの出し入れも容易である。また、ワークを上方から載置することができればよいため、仮置き部は簡素な構成で実現することができる。
【0011】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の上記半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス系あるいはシリコン系の基板、各種電子部品、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種ドライバ、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワーク収納カセットによれば、簡素な構成で検査用ワークを適確に収納することができるとともに、検査用ワークの出し入れが容易であるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るカセットが設置される切削装置の斜視図である。
【図2】一実施形態のカセットおよび該カセットに収納されるウェーハ付きフレームを示す斜視図である。
【図3】同カセットの正面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】カセットの他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る切削装置(加工装置)10を示している。該装置10は、図2に示す円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハと略称)1をワークとするものであって、切削ブレード65による切削加工動作を自動制御してウェーハ1を多数のデバイス(半導体チップ)にダイシングするダイシング装置である。
【0015】
(1)ウェーハ
まず、図2に示したウェーハ1を説明する。ウェーハ1は、厚さが例えば100〜700μm程度であって、表面には格子状の分割予定ラインにより多数の矩形状のデバイス2が形成されている。これらデバイス2には、図示せぬICやLSI等の電子回路が形成されている。切削装置10による切削加工(ダイシング)は、ウェーハ1の厚さを貫通して完全に切断するフルカットの他に、表面から厚さの途中まで切削して溝を形成する溝加工を含む。溝を形成した場合には、後工程でさらに溝の残り厚さ部分を別の切削ブレードでフルカットするか、あるいは応力を付与して割断することにより、ウェーハ1は多数のデバイス2に分割される。
【0016】
ウェーハ1は、環状のフレーム3の内側に粘着テープ4を介して同心状に一体に支持された状態で、切削装置10に供給される。粘着テープ4は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム3とウェーハ1が貼り付けられる。フレーム3は、金属等の板材からなる剛性を有するものであり、このフレーム3を支持することにより、ウェーハ1が搬送される。粘着テープ4を介してウェーハ1を支持したフレーム3(以下、ウェーハ付きフレーム5と称する)は、図2〜図4に示すウェーハ収納カセット(以下、カセットと略称)100内に、ウェーハ1を上側にした状態で複数が収納される。カセット100には、多数のウェーハ付きフレーム5が水平、かつ上下方向に積層されて収納される。このカセット100は本発明に係るものであり、後で詳述する。
【0017】
(2)切削装置
(2−1)切削装置の構成
次に、図1に示す切削装置10の構成を説明する。切削装置10は、一対の上記切削ブレード65を互いに対向配置した2軸対向型である。図1の符合11は基台であり、この基台11の上面中央には、X軸方向に延びる長方形状の凹所12が形成されている。この凹所12には、円板状のチャックテーブル20がX軸方向に移動自在に設けられている。
【0018】
チャックテーブル20は、図1でX軸方向手前側(X1方向側)の着脱位置と、奥側(X2方向側)の加工位置との間を往復移動させられる。図1で示すチャックテーブル20は、着脱位置と加工位置との中間に位置付けられている。着脱位置の、図1においてY軸方向手前側(Y1方向側)にはカセット台13が配設され、反対側のY軸方向奥側(Y2方向側)にはスピンナ式の洗浄装置70が配設されている。また、図1における基台11上のX軸方向奥側(X2方向側)であって上記加工位置に対応する箇所には、凹所12をまたぐ門型コラム30が固定されている。
【0019】
多数のウェーハ付きフレーム5が収納されたカセット100は、カセット台13に着脱可能に設置される。カセット台13は昇降可能なエレベータ式であり、昇降することによってカセット100内の1つのウェーハ付きフレーム5が、一定高さの搬入出位置に位置付けられるようになっている。
【0020】
カセット台13に設置されたカセット100内のウェーハ付きフレーム5は、上記搬入出位置からチャックテーブル20に移されて保持される。チャックテーブル20は一般周知の真空チャック式のもので、矩形状のテーブルベース25上に、鉛直方向であるZ軸方向を回転軸線として回転自在に支持されており、テーブルベース25に設けられた図示せぬ回転駆動機構によって時計方向あるいは反時計方向に回転させられる。テーブルベース25は、凹所12内に配設された図示せぬ移動機構によってX軸方向に往復移動するようになされており、したがってチャックテーブル20はテーブルベース25とともにX軸方向に往復移動する。
【0021】
チャックテーブル20の水平な上面には、ウェーハ1を吸着、保持する円形状の吸着面21が形成されている。この吸着面21の直径は、ウェーハ1の直径とほぼ同じとされ、ウェーハ1は全体が吸着面21に同心状に載置されて保持される。上記のようにフレーム3に支持されたウェーハ1は、真空運転状態のチャックテーブル20の吸着面21上に載置されて吸着、保持される。チャックテーブル20の周囲には、フレーム3を着脱自在に保持する複数のクランプ26が配設されている。これらクランプ26は、テーブルベース25に取り付けられている。
【0022】
チャックテーブル20の周囲は、長方形状のプレートカバー27によって覆われている。このプレートカバー27はテーブルベース25に支持されており、チャックテーブル20と一体にX軸方向に移動する。そしてプレートカバー27のX軸方向の両端部には、凹所12を覆う伸縮自在な蛇腹状のカバー28が取り付けられている。凹所12は、チャックテーブル20がX軸方向に移動しても常にプレートカバー27とカバー28で覆われる。これにより、切削加工時に使用される切削液や切削屑が、テーブルベース25をX軸方向に移動させる上記移動機構に落下することが防がれるようになっている。
【0023】
上記門型コラム30は、凹所12の両側にY軸方向に並んで立設された一対の脚部31と、これら脚部31の上端部間に水平に架け渡された梁部32とを有している。梁部32の図1で手前側(X1方向側)の面には、Y軸方向に延びる上下一対のY軸ガイド33が設けられており、これらY軸ガイド33に、第1Y軸スライダ41と第2Y軸スライダ42とがそれぞれ摺動自在に取り付けられている。第1Y軸スライダ41は、図示せぬ第1Y軸送りモータによって作動する第1Y軸ボールねじ送り機構412によりY軸ガイド33に沿って往復移動させられる。また、第2Y軸スライダ42は、第2Y軸送りモータ421によって作動する第2Y軸ボールねじ送り機構422によりY軸ガイド33に沿って往復移動させられる。
【0024】
第1Y軸スライダ41および第2Y軸スライダ42には、Z軸方向に延びる一対のZ軸ガイド34がそれぞれ設けられており、第1Y軸スライダ41のZ軸ガイド34には第1Z軸スライダ51が、また、第2Y軸スライダ42のZ軸ガイド34には第2Z軸スライダ52が、それぞれ摺動自在に取り付けられている。第1Z軸スライダ51は、第1Z軸送りモータ511によって作動する図示せぬ第1Z軸ボールねじ送り機構により、Z軸ガイド34に沿って昇降させられる。また、第2Z軸スライダ52は、第2Z軸送りモータ512によって作動する図示せぬ第2Z軸ボールねじ送り機構により、Z軸ガイド34に沿って昇降させられる。
【0025】
第1Z軸スライダ51の下端部には第1切削手段61が固定されており、第2Z軸スライダ52の下端部には第2切削手段62が固定されている。各切削手段61,62は同一構成であって、直方体状のスピンドルハウジング63内に、サーボモータ等によって高速回転する円筒状の回転軸が収容され、スピンドルハウジング63の先端開口から突出する該回転軸の先端に、円板状の上記切削ブレード65が同心状に取り付けられたものである。これら切削手段61,62の下方が、上記加工位置となっている。
【0026】
これら切削手段61,62は上記回転軸がY軸方向と平行、かつ互いに同軸的で、切削ブレード65が取り付けられた先端どうしが向かい合う状態に、スピンドルハウジング63が第1Z軸スライダ51および第2Z軸スライダ52の下端部にそれぞれ固定されている。切削手段61,62は、それぞれY軸スライダ41,42と一体にY軸方向に移動させられ、Y軸方向に互いに接近したり離間したりする。スピンドルハウジング63の先端には、回転する切削ブレード65によって跳ね上げられる切削液の周囲への飛散を押さえるブレードカバー64が取り付けられている。
【0027】
切削ブレード65は、チャックテーブル20上に保持されたウェーハ1に切り込んで切削加工を施す。本装置10では、切削ブレード65を支持する上記回転軸がY軸方向に延びているので、切削ブレード65がウェーハ1に切り込んで切削を進行する加工送り方向はX軸方向である。一方、切削ブレード65を軸方向に移動させる割り出し送り方向はY軸方向である。したがって、切削ブレード65の加工送りは、チャックテーブル20をX軸方向に移動させて切削ブレード65に対し相対的にX軸方向にウェーハ1を移動させることによりなされる。また、割り出し送りは、各Y軸スライダ41,42によって切削ブレード65をY軸方向に移動させることによりなされる。
【0028】
上記洗浄装置70は、ウェーハ付きフレーム5が保持されるスピンナテーブル71を有している。スピンナテーブル71は、上記チャックテーブル20と同様の真空チャック式のもので、ウェーハ付きフレーム5を上面に吸着して保持する。スピンナテーブル71の外周面には、フレーム3を把持して保持する複数のクランプ72が取り付けられている。スピンナテーブル71は、図示せぬ回転駆動機構によって回転させられ、また、図示せぬ昇降機構によって基台11の上面と高さ位置がほぼ同じウェーハ受け渡し位置と、下方の基台11内部に設定される洗浄位置との間を昇降させられる。
【0029】
洗浄装置70では、上記切削手段61,62で切削加工されたウェーハ1を洗浄して乾燥させる洗浄工程が行われる。洗浄装置70には、上記洗浄位置において、スピンナテーブル71に保持されたウェーハ1の表面に洗浄水を供給する洗浄水ノズルと、ウェーハ1に乾燥空気を噴出して乾燥させる空気噴出ノズルが備えられている(いずれも図示略)。
【0030】
次に、図1によりウェーハ付きフレーム5を搬送する搬送系を説明する。
上記カセット100内に収納され、カセット台13の昇降動作によって上記搬入出位置に位置付けられた1枚のウェーハ付きフレーム5は、搬入出機構80によってY2方向に水平に引き出され、着脱位置の上方に配設された一対のY軸方向に延びるガイドバー90で受けられる。
【0031】
搬入出機構80は、基台11の側面11aに設けられたリニアガイド81に沿ってY軸方向に移動可能に支持され、先端にクランプ82を有するアーム83と、モータ84によって作動し、アーム83をリニアガイド81に沿ってY軸方向に移動させるボールねじ送り機構85とから構成されている。一対のガイドバー90はX軸方向に同期して互いに近付いたり離れたりするように作動し、両者の中間位置が常にチャックテーブル20の中心に一致するようになされている。
【0032】
カセット台13に設置されたカセット100内に収納されているウェーハ付きフレーム5は、搬入出機構80のアーム83のクランプ82によって上下方向から把持され、アーム83のY2方向への移動によって2つのガイドバー90に架け渡される状態に載置される。そして各ガイドバー90が互いに近付いてフレーム3の外周縁に接触することによりウェーハ付きフレーム5のX軸方向の位置決めがなされる。なお、Y軸方向の位置決めはアーム83の移動によってなされる。これによりウェーハ1は、チャックテーブル20と同心状にセンタリング(X・Y軸方向の位置決め)される。
【0033】
次に、ガイドバー90で支持された状態のフレーム3は、上方の第1搬送機構91によって保持され、この後、2つのガイドバー90が離間し、ウェーハ付きフレーム5は第1搬送機構91で保持される。そしてウェーハ付きフレーム5は、着脱位置で待機しているチャックテーブル20上に載置され、ウェーハ1がチャックテーブル20に吸着、保持されるようになっている。
【0034】
第1搬送機構91は、図示せぬY軸方向移動機構によってY軸方向に往復移動させられる上下伸縮アーム911の先端に、ステー912を介してH状のブラケット913が固定され、このブラケット913の4つの端部に、パッド914が設けられたもので、フレーム3は、各パッド914の下面に水平な状態で保持される。パッド914は、空気吸引による負圧作用でフレーム3を吸着、保持し、また、パッド914から空気を噴出する正圧作用でフレーム3を下方に離脱させるものである。
【0035】
また、この第1搬送機構91により、ウェーハ1が切削加工されて着脱位置に戻されたウェーハ付きフレーム5が、上記洗浄装置70に搬送される。すなわち、チャックテーブル20に保持されていたウェーハ付きフレーム5は、パッド914で保持されて第1搬送機構91に移され、上下伸縮アーム911が上方に縮小してからY2方向に移動させられ、次いで上下伸縮アーム911が下方に伸びてから、フレーム3がパッド914から離脱され、これによってウェーハ付きフレーム5は洗浄装置70のスピンナテーブル71に同心状に載置される。
【0036】
洗浄装置70で洗浄・乾燥処理されたウェーハ付きフレーム5は、第2搬送機構92によって上記ガイドバー90に戻される。第2搬送機構92は第1搬送機構91と同様の構成であって、図示せぬY軸方向移動機構によってY軸方向に往復移動させられる上下伸縮アーム921の先端にH状のブラケット923が固定され、このブラケット923の4つの端部に空気吸引による負圧作用でフレーム3を吸着、保持するパッド924が設けられたもので、フレーム3は、各パッド924の下面に水平な状態で保持される。
【0037】
第2搬送機構92によると、上下伸縮アーム921が伸びて、ウェーハ受け渡し位置で待機しているウェーハ付きフレーム5のフレーム3がパッド924で吸着、保持され、次いで上下伸縮アーム921が縮小してからY1方向に移動し、上下伸縮アーム921が伸びてパッド924からフレーム3が離脱されることにより、ウェーハ付きフレーム5は上記ガイドバー90に載置される。また、上記搬入出機構80は、ガイドバー90に載置されたフレーム3のY2方向側の端部をクランプ82で把持してアーム83がY1方向に移動することにより、ウェーハ付きフレーム5をカセット100内に収納する。
【0038】
(2−2)切削装置の動作概要
以上が一実施形態に係る切削装置10の全体構成であり、次に、この切削装置10によってウェーハ1を多数のデバイス2にダイシングする動作を図1により説明する。
【0039】
カセット100内に収納され、カセット台13の昇降動作によって搬入出位置に位置付けられた1枚のウェーハ付きフレーム5が搬入出機構80によってY2方向に引き出され、ガイドバー90に載置されてX・Y軸方向の位置決めがなされる。次いで、第1搬送機構91によって、予め真空運転され、かつ、着脱位置に位置付けられているチャックテーブル20上にウェーハ付きフレーム5が載置され、ウェーハ1は吸着面21に吸着、保持され、フレーム3がクランプ26で保持される。
【0040】
次に、チャックテーブル20がX2方向に移動してウェーハ1は加工位置に搬送され、この加工位置において、各切削手段61,62により、デバイス2間の交差する多数の分割予定ラインのうち、まず一方向に延びる側が全て切削加工され、次いで、他方向に延びる側の全ての分割予定ラインが切削加工されて、ウェーハ1が多数のデバイス2にダイシングされる。切削加工される分割予定ラインは、チャックテーブル20を回転させてウェーハ1を自転させることにより、X軸方向と平行に定められる。
【0041】
切削加工は、チャックテーブル20をX2方向に移動させながら、下端の刃先が所定の切り込み高さ(Z軸方向の位置)に設定された高速回転する切削ブレード65を、分割予定ラインに対しX2方向側の端部からX1方向側の端部に向けて切り込ませる加工送りをすることによってなされる。1回の加工送りが終わったら、切削ブレード65が上方に退避し、チャックテーブル20がX1方向に移動して切削ブレード65が加工送りの始点に戻されるとともに、切削手段61,62がY軸方向に移動して次の分割予定ラインに切削ブレード65の刃先を合わせる割り出し送りが行われてから、該次の分割予定ラインに対し切削ブレード65を加工送りさせる。以上の動作を行って、X軸方向に延びる全ての分割予定ラインに切削加工が施される。なお、分割予定ラインに切削ブレード65を位置決めするには、カメラ等を用いた周知のアライメント手段を利用して行われる。
【0042】
ウェーハ1がダイシングされた後は、チャックテーブル20が着脱位置に戻され、第1搬送機構91によって洗浄装置70に搬送され、ウェーハ受け渡し位置で待機しているスピンナテーブル71に吸着、保持される。続いて、スピンナテーブル71が処理位置に下降し、回転が開始されるとともに、上記洗浄水ノズルからウェーハ1の表面に洗浄水が供給されてウェーハ1が洗浄される。洗浄が終了したら、スピンナテーブル71の回転を続行させたまま、上記空気噴出ノズルからウェーハ1の表面に空気を噴出させてウェーハ1を乾燥させる。ウェーハ1が乾燥したらスピンナテーブル71がウェーハ受け渡し位置に上昇させられる。
【0043】
以上のようにしてウェーハ1のダイシングと洗浄を経たウェーハ付きフレーム5は、第2搬送機構92によってスピンナテーブル71からガイドバー90に移され、次いで搬入出機構80のクランプ82がフレーム3のY2方向側の端部を把持した状態でアーム83がY1方向に移動することにより、カセット100に戻される。
【0044】
以上の一連の動作が、カセット100に収納された全てのウェーハ付きフレーム5に対して遂行される。そして、カセット100内のウェーハ1が全てダイシング済みのものになったら、ウェーハ付きフレーム5はカセット100ごと次の工程(例えば、ダイシングされたデバイス2をピックアップする工程)に運搬される。
【0045】
(3)カセット
次に、図2〜図4により、上記カセット100について説明する。
カセット100は、上下に離間して平行に配設された底板101および天板102と、これら底板101と天板102の間の対向する一対の側面に設けられた側板103と、背面板(係止部)104とが組み合わされて、外形が直方体の箱状に形成されたもので、内部が複数のウェーハ付きフレーム5を収納するウェーハ収納部(ワーク収納部)110となっている。各側板103の外面には、持ち運び用の把手105が固定されている。ウェーハ収納部110は、前方(背面板104とは反対側の端部)に開口する開口部111によって水平方向に開放している。
【0046】
各側板103の内面には、水平方向に延びる複数の棚板113が、上下方向に等間隔をおいて固定されている。これら棚板113は開口部111から背面板104にわたる長さを有している。棚板113が固定されたことにより、ウェーハ収納部110の棚板113間、および最上段の棚板113と天板102との間には、スロット114が形成されている。棚板113は、側板103の一方側と他方側で一対の状態に配設されており、その一対の棚板113の上に、フレーム3の両端部が載置されてウェーハ付きフレーム5が水平に支持されるようになっている。各スロット114にはウェーハ付きフレーム5が1枚ずつ収納され、ウェーハ収納部110には複数のウェーハ付きフレーム5が水平、かつZ軸方向に積層されて収納される。
【0047】
処理前のウェーハ付きフレーム5は、オペレータによって開口部111から1枚ずつスロット114に挿入されて棚板113に載置され、収納される。ウェーハ付きフレーム5の、スロット114への挿入方向の先端(収納された状態での奥側の端部)は、背面板104に当接して係止される。ウェーハ収納部110に複数のウェーハ付きフレーム5が収納されたカセット100は切削装置10まで運搬され、図1に示すように、背面板104を手前側(Y1方向側)に向け、かつ、開口部111を装置10の内側(Y2方向側)に向けた状態とされてカセット台13上に載置される。
【0048】
そして、上記のように搬入出機構80によって開口部111からウェーハ付きフレーム5が引き出されてウェーハ1の切削加工ならびに洗浄処理がなされ、洗浄処理後は再び搬入出機構80によって開口部111からスロット114にウェーハ付きフレーム5が収納される。そして、全てのウェーハ1に対する切削加工・洗浄処理が終了してウェーハ付きフレーム5がカセット100内に収納されたら、カセット100ごとウェーハ付きフレーム5を次工程まで運搬し、次工程では、開口部111からウェーハ付きフレーム5が取り出される。カセット100の運搬時には、フレーム3が背面板104に係止された状態とすることにより、カセット100内からウェーハ付きフレーム5が脱落しないように運搬することができる。
【0049】
また、このカセット100においては、天板102の上部に、前述した検査用ウェーハ(図2の1Aで示す)の仮置き部120が設けられている。この仮置き部120には、開口部111側の端部から背面板104側の端部にわたって延びる一対のウェーハ載置台121がそれぞれ固定されている。これらウェーハ載置台121は、天板102の両側の上面に固定された載置板部122と、この載置板部122の幅方向一端から立ち上がる側縁部123とを有する断面L字状のもので、左右対称の状態に固定されている。
【0050】
仮置き部120の上方は開口しており、この上方開口部124から、双方の載置板部122の上にフレーム3の両端部が載置されて仮置き部120にウェーハ付きフレーム5が水平に支持されるようになっている。また、仮置き部120の、開口部111側の端部も開口している。
【0051】
切削装置10によりカセット100に収納された複数のウェーハ1を順次切削加工する間においては、その最中に1枚のウェーハ付きフレーム5を抜き取ってウェーハ1Aの切削状態を検査することが行われる。その検査用ウェーハ1Aを有するウェーハ付きフレーム5は、切削加工後、搬入出機構80によってウェーハ載置台121の載置板部122上に挿入され、フレーム3の両端部が載置板部122に載置される。
【0052】
載置板部122にフレーム3が載置されるため、フレーム3と天板102との間には、載置板部122の厚さに応じた隙間が生じる。この隙間に、搬入出機構80のクランプ82の下側が挿入可能となっており、クランプ82によるウェーハ載置台121へのウェーハ付きフレーム5の出し入れが可能となっている。上記のようにして仮置き部120に載置されたウェーハ付きフレーム5は、ウェーハ載置台121の側縁部123によってX軸方向への移動が規制される。
【0053】
仮置き部120に検査用ウェーハ1Aが載置されると、オペレータはウェーハ付きフレーム5を仮置き部120から上方に取り出し、ウェーハ1Aの切削加工の状態を検査する。そして検査後は、ウェーハ付きフレーム5を、上方からウェーハ載置台121の載置板部122にフレーム3の両端部を載置して仮置き部120に戻す。
【0054】
本実施形態のカセット100では、検査用ウェーハ1Aを載置する仮置き部120には、上方開口部124を経て上方からウェーハ付きフレーム5を出し入れすることができるようになっている。すなわち、検査用ウェーハ1Aを有するウェーハ付きフレーム5を収納する際には、上方からウェーハ付きフレーム5を仮置き部120に向けて下ろしていき、上方開口部124を通してウェーハ載置台121の載置板部122にフレーム3の両端部を載置することで収納される。
【0055】
本実施形態のカセット100によれば、検査用ウェーハ1Aを有するウェーハ付きフレーム5を、従来のように水平方向にスライドさせて収納する形式ではなく、上方から出し入れ可能な仮置き部120に載置するようになっている。このため、収納時にフレーム3の挿入方向先端部が装置側にはみ出して突出するといった不具合は起こらず、ウェーハ付きフレーム5をカセット100に適確に収納することができる。その結果、カセット台13が昇降したり搬入出機構80が作動した際に突出したフレーム3の端部が干渉し、フレーム3あるいはウェーハ1Aの破損や装置10の停止といった不具合の発生が防がれる。
【0056】
また、仮置き部120に対するウェーハ付きフレーム5の出し入れも容易であるとともに、ウェーハ付きフレーム5を上方から載置することができればよいため、仮置き部120は一対のウェーハ載置台121を天板102に固定するといった簡素な構成で実現することができる。
【0057】
図5は、カセット100に設けられる仮置き部120の他の形態を示している。この仮置き部120は、上記ウェーハ載置台121の載置板部122が除外されて、側縁部123のみが天板102に直接固定されている。また、天板102の開口部111側の端部の中央に、円弧状の切欠き102aが形成されている。
【0058】
この実施形態の仮置き部120によれば、検査用ウェーハ1Aを有するウェーハ付きフレームは天板102に直接載置され、側縁部123によってX軸方向への移動が規制される。また、切欠き102aによって、フレーム3の開口部111側の端部は上下面が露出し、このため、上記クランプ82によってフレーム3を把持することができるようになっている。
【0059】
なお、上記実施形態のカセット100は半導体ウェーハの切削装置に適用されるものであるが、本発明のカセットが適用される加工装置は切削装置に限られず、複数のワークを連続的に加工する各種装置(例えば、半導体ウェーハを裏面研削する研削装置)に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…ウェーハ(ワーク)
10…切削装置(加工装置)
100…ウェーハ収納カセット(ワーク収納カセット)
104…背面板(係止部)
110…ウェーハ収納部(ワーク収納部)
111…開口部
114…スロット
120…仮置き部
124…上方開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを収納するワーク収納部を有し、加工装置に設置されるワーク収納カセットであって、
前記ワーク収納部は、収納されるワークを支持する複数のスロットと、該スロットにワークを出し入れするための開口部と、該スロットに収納されて支持されるワークの、該スロットへのワーク挿入方向の先端を係止する係止部と、を有し、
該ワーク収納部の上部に、ワークを上方から出し入れ可能とする上方開口部を有するワークの仮置き部が設けられていることを特徴とするワーク収納カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−60898(P2011−60898A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207137(P2009−207137)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】