説明

ワーク移動装置及び円柱状ワークの調芯装置

【課題】本発明は、位置決めの正確性を低下させずに処理速度を迅速化可能なワーク位置決め装置及び円柱状ワークの調芯装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係わるワーク移動装置は、ワークを一の方向に移動させるためのワーク移動装置であって、ワークを一面に載置する載置手段と、空気圧で押圧され一の方向に移動する推進部材を有するとともに推進部材の先端がワークを望む状態で配置された空気圧アクチュエータと、推進部材に取り付けられた圧電素子と、ワークに当接可能に圧電素子に取り付けられた衝撃体と、ワークの位置を検出する検出手段と、空気圧アクチュエータへ供給される空気の空気圧を調整する空気圧調整手段とを備え、空気圧調整手段は、位置検出手段の検出したワークの位置とワークが位置すべき所望の位置との偏差に基づいて前記一の方向に推進部材を押圧する場合の空気圧を調整することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク移動装置及び円柱状ワークの調芯装置に関り、特にμmレベルの非常に短いストロークでワークの精密位置決めや調芯を行うのに好適なワーク移動装置及び円柱状ワークの調芯装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の位置に精密にワークを位置決めしたり、回転装置の回転軸心に対し円筒状ワークの軸心を精密に位置決めする(この操作を調芯という。)にあたり、それらの作業における位置決めの正確性を低下させずに処理速度を迅速化可能な技術の開発という要請がある。
【0003】
そのような要請に関連する技術の一例が下記特許文献1・2に開示されている。特許文献1には、精密位置決め装置に係わり、空気圧アクチュエータを使用した圧電素子による衝撃力を用いた精密位置決め装置において、ベースに搭載される空気圧アクチュエータと、空気圧アクチュエータに取り付けられる圧電素子と、圧電素子の前記空気圧アクチュエータが取り付けられる側と反対側の面に取り付けられる衝撃体と、圧電素子に外部より電圧パターンを与える手段と、空気圧アクチュエータに外部より駆動気圧を与える手段とを具備してなる圧電素子による衝撃力を用いた精密位置決め装置が開示されている。かかる精密位置決め装置によれば、圧電素子の伸長により位置決めすべきワークを微動させる衝撃体は、駆動気圧が付与された空気圧アクチュエータにより常にワークに当接するよう配置されているので、位置決めを高精密に行えるとともに、変位の小さい圧電素子とストロークの長い空気圧アクチュエータとを一体化し、自動組み立て作業の自動化を図ることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、調芯装置に係わり、ワークを保持して軸線回りに回転する回転体を有する加工機の調整装置において、ワークに対する押圧部を有するとともに押圧部を所定の振幅、強度で往復移動することによりワークを軸線と交わる方向に断続的に押圧して移動させるアクチュエータと、ワークに対して軸線と交わる方向外方に配置され、ワークの側面との距離を計測する計測センサと、計測センサの計測結果に基づいて、アクチュエータを制御する制御装置とを備えることを特徴とする加工機の調整装置が開示されている。かかる調整装置によれば、アクチュエータの押圧動作と、計測センサの計測動作と、制御装置によるアクチュエータの制御機能とを組み合わせることによって、芯出し作業を自動的に、精度良く且つ効率良く行うことができるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平11‐143541号公報
【特許文献2】特開2004‐314239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示された技術には上記利点があるものの精密な位置決めを迅速に行うという点においては未だ不十分である。すなわち、特許文献1に記載された精密位置決め装置においては、ワークの移動量は本質的に圧電素子の伸長量に依存する。ここで、位置決め作業を迅速化するため伸長量の大きな圧電素子を用いるとワークの微小移動が困難になり精密な位置決めができず、一方で位置決めの正確性のために伸長量の小さな圧電素子を用いるとワークの移動に時間がかかり作業の迅速性を阻害するという二律背反の問題点があった。
【0007】
また、特許文献2の調整装置において、ワークの移動はアクチュエータの断続的な押圧動作により行われるが、精密位置決め用のアクチュエータとして一般的に用いられる圧電素子の最大伸長量は圧電素子の長さに比例し、かつ最大伸長量が大きな圧電素子は細かな精度で伸長量の制御ができないという特性がある。そのため、長距離のワーク移動のために最大伸長量の大きな圧電素子を使用すると芯出し作業の最終段階における精密な位置決めができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記説明した従来技術の問題について鋭意鑑みてなされたものであり、所定の位置に精密にワークを位置決めしたり、回転装置の回転軸心に対し円筒状ワークの軸心を精密に調芯するにあたり、位置決めの正確性を低下させずに処理速度の迅速化が可能なワーク位置決め装置及び円柱状ワークの調芯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明に係わるワーク移動装置は、ワークを移動させるためのワーク移動装置であって、ワークを一面に載置する載置手段と、空気圧で押圧され一の方向に移動する推進部材を有するとともに推進部材の先端がワークを望む状態で配置された空気圧アクチュエータと、推進部材に取り付けられた圧電素子と、ワークに当接可能に圧電素子に取り付けられた衝撃体と、ワークの位置を検出する検出手段と、空気圧アクチュエータへ供給される空気の空気圧を調整する空気圧調整手段とを備え、空気圧調整手段は、位置検出手段の検出したワークの位置とワークが位置すべき所望の位置との偏差に基づいて前記一の方向に推進部材を押圧する場合の空気圧を調整することを特徴としている。
【0010】
かかるワーク移動装置によれば、載置手段に載置されたワークは、圧電素子の急激な伸長によりワークの方向へ移動する衝撃体で押圧されて移動する。ここで、圧電素子は空気圧アクチュエータの推進部材に取り付けられているので、その伸長量の一部は空気圧アクチュエータの内部に供給された空気のダンピングにより吸収されるが、位置検出手段により検出したワークの位置とワークが位置すべき所望の位置との偏差に基づき、偏差が大きい場合には空気圧調整手段で調整された高い空気圧の空気を空気圧アクチュエータに供給することで、圧電素子の伸長量の空気ダンピングによる吸収は抑制され、その結果ワークの移動距離を長くすることができる。一方で、位置検出手段で検出された偏差が小さな場合には、低い空気圧の空気を空気圧アクチュエータに供給することで、圧電素子の伸長量の空気ダンピングによる吸収が大きくなり、ワークの移動距離を短くすることができる。このように本発明に係わるワーク移動装置では、空気圧制御手段により空気圧が調整された空気が供給される空気圧アクチュエータと、電圧が印加されることにより伸長する圧電素子との協働によりワークの移動距離を調整する。そして、位置検出手段により検出されたワークの位置とワークが位置すべき所望の位置との偏差の大きい位置決めの初期段階では、高い空気圧の空気を空気圧アクチュエータに供給してワークを長く移動させて比較的粗い位置決めを行い、偏差の小さな最終段階では、低い空気圧の空気を空気圧アクチュエータに供給してワークを短く移動させ精密な位置決めを行うことにより、精密な位置決めを迅速に行うことができる。さらに、本発明に係わるワーク移動装置では、上記のように構成してあるので、微動制御が困難な伸長量の大きな圧電素子を使用した場合にも、空気圧アクチュエータに供給する空気の空気圧を調整することでワークを微動させることが可能となり、偏差の比較的大きな位置決め操作にも適用することができる。
【0011】
なお、偏差を確実に検出して位置決め精度を高めるためには、位置検出手段は、ワークを介して空気圧アクチュエータと反対側に配置されていることが望ましい。
【0012】
さらに、位置決め操作の迅速性を高めるためには、空気圧制御手段は、圧電素子が動作する前には衝撃体がワークに当接しかつワークが移動しないよう、空気圧を調整可能に構成されていることが望ましい。すなわち、電圧を印加して圧電素子を伸長させワークを移動させる過程では衝撃体はワークと密接しているが、電圧の印加を解除すると圧電素子は縮長し、ワークから一定の距離だけ離隔し、衝撃体とワークの間には間隙が形成される。ここで、衝撃体が移動する過程において、上記間隙では衝撃体は何らワークに作用せず損失となる。上記構成によれば、かかる間隙を圧電素子が動作する前に消失させることにより損失を抑制することができる。
【0013】
上記問題を解決する本発明に係わる円柱状ワークの調芯装置は、円柱状ワークの調芯を行う調芯装置であって、一面に円柱状ワークが水平方向に移動自在に載置されるとともに、回転自在に垂設されたスピンドルと、スピンドルの回転角を検出する回転角検出手段と、空気圧で押圧されて移動する推進部材を有するとともに、推進部材の先端が円柱状ワークの外周面を望む状態で配置された空気圧アクチュエータと、推進部材に取り付けられた圧電素子と、円柱状ワークの外周面に当接可能に圧電素子に取り付けられた衝撃体と、円柱状ワークを介して空気圧アクチュエータと反対側に配置され、円柱状ワークの側面からの距離を検出する位置検出手段と、空気圧アクチュエータへ供給される空気の空気圧を調整する空気圧調整手段とを備え、空気圧調整手段は、位置検出手段の検出した円柱状ワークの外周面からの距離により算出した前記スピンドルの回転軸心と前記円筒状ワークの軸心との偏差に基づいて推進部材を押圧する空気圧を調整することを特徴とする。
【0014】
かかる円柱状ワーク調芯装置によれば、円筒状ワークは、その軸心とスピンドルの回転軸心とが一致しない状態でスピンドルの一面に載置され、スピンドルにより所定の回転方向に回転される。そして、位置検出手段により検出した円柱状ワークの外周面からの距離により算出したスピンドルの回転軸心と円筒状ワークの軸心との偏差に基づき空気圧アクチュエータに供給される空気の空気圧は空気圧調整手段で調整され、回転角検出手段で検出された回転角に基づきスピンドルの所定の回転位置において圧電素子には所定の電圧が印加される。円筒状ワークは、上記ワーク移動装置と同様に、圧電素子伸長量から空気圧アクチュエータの空気ダンピングによる伸長の吸収量を減じた移動距離だけ円筒状ワークの方向へ移動する衝撃体で押圧され、スピンドルの回転軸心に向けて移動する。ここで、スピンドルの回転軸心とワークの軸心の偏差は具体的には次のようにして算出される。すなわち、円柱状ワークを介して空気圧アクチュエータと反対側に配置され、円柱状ワークの側面からの距離を検出可能に配置された位置検出手段は、スピンドルの回転軸心の回りを振れ回る円筒状ワークの最大振れ量(Lmax)及び最小振れ量(Lmin)を検出する。そして、調芯装置は、この検出した最大振れ量から最小振れ量を減じた量を2分した量[(Lmax−Lmin)/2]を偏差とする。また、上記スピンドルの回転角に基づく圧電素子へ電圧を印加するタイミングの制御は具体的には次のように行われる。すなわち、調芯装置は、位置検出手段で円筒状ワークの振れ量を検出しつつ回転角検出手段でスピンドルの回転角を検出する。そして、調芯装置は、位置検出手段で最大振れ量が検出された回転角において圧電素子に電圧を印加する。ここで、位置検出手段は、円筒状ワークを介して衝撃体が取り付けられた空気圧アクチュエータの反対側に組み込まれているので、位置検出手段で最大振れ量が検出された円筒状ワークの反対側の点は最小振れ量となる点である。この最小振れ量となる点で衝撃体により押圧されることにより円筒状ワークはスピンドルの回転軸心に向け移動し、当該回転軸心と円筒状ワークの軸心との偏差は縮小する。
【0015】
なお、円柱状ワークは、スピンドルの一面に設置される載置部材の一面に載置され、衝撃体は円筒状ワークに代えて載置部材の外周面に当接可能に圧電素子に取り付けられている構成とすれば好ましい。これにより、円柱状ワークが傷つきやすい材質で、衝撃体で直接円柱状ワークを押圧できない場合においても円柱状ワークの調芯を行うことができる。
【0016】
さらに、調芯操作の迅速性を高めるためには、上記ワーク移動装置と同様に、空気圧制御手段は、位置検出手段による偏差の検出後、圧電素子が動作する前には衝撃体が円柱状ワークまたは載置部材の外周面に当接しかつ円柱状ワークまたは前記載置部材が移動しないよう空気圧を調整可能に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記説明のとおり本発明は構成されているので、位置決めの正確性を低下させずに処理速度を迅速化可能なワーク位置決め装置及び円柱状ワークの調芯装置を提供するという本発明の課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[ワーク移動装置]
まず、本発明のワーク移動装置について、その実施態様に基づき図1及び図2を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明に係わるワーク移動装置の一実施形態を示す概略構成図、図2は図1のワーク移動装置の動作を説明する図である。なお、本発明は本実施態様に限定されることなく、実施態様中の構成要素は適宜組み合わせて実施することができる。
【0019】
ワーク移動装置1を示す図1において、符号Wは位置決めをすべき直方体形状のワークであり、端面S1と端面S1に相向かう端面S2が紙面に対し垂直となるよう載置手段である平坦なベース19の上面にセットされている。ワーク移動装置1は、このワークWの端面S2を現在位置P1から所望の位置P0に移動させることにより所望の位置にワークWを位置決めするものである。なお、位置決めされたワークWには、加工や他の部材との組み付けなど適宜な処理が加えられる。
符号11は、空気圧アクチュエータである。空気圧アクチュエータ11は、具体的には、供給される空気で押圧され駆動する不図示のピストンにより図示水平方向に所定のストロークで移動するテーブル(推進部材)12を有する空気圧シリンダーである。そして、テーブル12の移動方向においてワークWの側の先端は、ワークWの側面S1を望む状態にベース19の上に配置されている。なお、空気圧アクチュエータ11へは、ワークWの側に向かいテーブル12が推進可能なよう、後述する空気圧調整手段16を介し接続された空気源から供給ポートを通じ空気が供給される。
【0020】
符号13は、接続部材15を介してテーブル12に接続された圧電素子である。圧電素子13は、その先端がワークWの側面S1に向かう姿勢で組み込まれており、印加される駆動電圧に応じて伸長しその先端がワークWに接近し、駆動電圧が解除されると縮長する構成となっている。
【0021】
符号14は、圧電素子13の先端に取り付けられた衝撃体である。衝撃体14は、ワークWの側面S1に当接可能な位置に取り付けられており、上記説明した圧電素子13の伸長によりワークWの方向へ移動しワークWの側面S1を押圧することで、ワークWを所定距離だけ水平移動させる。
【0022】
符号10は、位置検出手段である。本態様の位置検出手段は、レーザ変位計により構成され、ワークWを介して空気圧アクチュエータ11と反対側に配置され、衝撃体14が当接するワークWの側面S1に相対する側面S2に対しレーザ光を照射可能なよう配置されている。ここで、位置検出手段10は、これにより検出されたワークWの位置P1とワークWが位置すべき所望の位置P0との偏差を後述する制御手段17で演算可能なよう、ワークWが位置すべき所望の位置における当該側面S2の位置P0から一定の距離(基準距離)L0の位置に配置されている。そして、位置検出手段10は、現在位置P1にあるワークWの側面S2から反射されたレーザ光から当該側面S2までの距離(現在距離)L1を検出し、検出した現在距離L1を検出信号として制御装置17へ出力する。
【0023】
符号16は、空気圧調整手段である。空気圧調整手段16は、具体的には電空レギュレーターで構成されており、一方のポートが空気源に接続され、他方のポートが空気圧アクチュエータ11と接続されている。なお、空気圧アクチュエータ11へ供給する空気の空気圧は、制御手段17から出力される制御信号により空気圧調整手段16が制御され調整される。これにより、空気圧アクチュエータ11には、所定の空気圧に調整された空気が供給されることとなる。
【0024】
符号18は、駆動電圧を制御しつつ印加して圧電素子13を駆動する電圧印加手段である。電圧印加手段18は、圧電素子13を駆動させる駆動電圧の高さを調整し、かつその駆動電圧を入切可能に構成された電気回路から構成されている。なお、圧電素子13へ印加する駆動電圧の高さや入切のタイミングは、制御手段17から入力される制御信号により制御される。これにより、圧電素子13には、制御手段17の制御信号により電圧印加手段18が所定の高さに調整した駆動電圧が所定のタイミングで印加され、それにより圧電素子13は伸長し、かつ電圧の印加を切ると圧電素子13は縮長することとなる。
【0025】
符号17は、制御手段である。制御手段17は、具体的には以下のプログラムやデータが格納されたメモリーと当該プログラムを実行する演算回路などが組み込まれたコンピューターであり、位置検出手段10、空気圧調整手段16及び電圧印加手段18と接続され、以下のように位置検出手段10から入力された検出信号に基づいて空気圧調整手段16及び電圧印加手段18を制御する制御信号を出力可能なよう構成されている。
すなわち、制御手段17には、偏差算出プログラムと偏差算出プログラムで算出された偏差に基づいて空気圧アクチュエータ11に供給する空気の空気圧と圧電素子13に印加する駆動電圧を求め制御信号とし空気圧調整手段16及び電圧印加手段18へ出力する制御信号生成プログラムと、電圧印加手段18による駆動電圧の入切のタイミングを制御する駆動電圧制御プログラムが格納されている。
【0026】
偏差算出プログラムは、位置検出手段10により検出され入力された検出信号から現在距離L1を演算し、予め記憶させている基準距離L0を現在距離L1から引くことで、偏差L2を算出する。
【0027】
制御信号生成プログラムは、偏差算出プログラムで求めた偏差L2に基づき空気圧調整手段16で調整すべき空気圧及び電圧印加手段18で調整すべき駆動電圧の高さを算出し、これらを制御信号として空気圧調整手段16及び圧印加手段18に出力する。なお、偏差算出プログラムには、当該偏差L2から空気圧アクチュエータ11へ供給する空気の空気圧及び圧電素子13へ駆動印加する電圧の高さを算出可能なよう、それらの関係が所定の演算式や数表として格納されている。さらに、制御信号生成プログラムは、駆動電圧の印加により圧電素子13が動作する前には衝撃体14がワークWの側面S1に当接しかつワークWが移動しないよう空気圧調整手段16を制御して空気圧アクチュエータ11へ供給する空気圧を調整する。そして、駆動電圧制御プログラムは、電圧印加手段18による駆動電圧の入切のタイミングを制御する。
【0028】
上記構成を備えるワーク移動装置1によるワークWの位置決め動作について図2に基づいて説明する。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、端面S1と端面S1に相向かう端面S2が紙面に対し垂直となるようベース19の上面にワークWをセットする。次いで、圧電素子13などが搭載された空気圧アクチュエータ11を、衝撃体14がワークWの側面S1に当接可能な位置に配置する。
【0030】
そして、ワーク移動装置1を作動させる。ワーク移動装置1は、位置検出手段10によって現在距離L1を検出し、偏差算出プログラムで当該検出された現在距離L1に基づき偏差L2を算出する。そして、制御信号生成プログラムは、この偏差L2から空気圧アクチュエータ11に供給する空気圧と圧電素子13の駆動電圧を求め、制御信号を不図示の圧力調整手段と電圧印加手段へ出力する。なお、図2(a)では偏差L2は大きくワークWを長距離移動させることが必要であるので、空気圧と駆動電圧は高めに設定される。さらに、空気圧は、空気圧アクチュエータ11による推力により自重による摩擦力に抗してワークWが移動しない程度に設定される。これにより、図2(a)に示すように、空気圧アクチュエータ11のテーブルはワークWの側へ前進し、ワークWの移動を生じせしめることなく、ワークWの側面S1に衝撃体14の先端が当接する状態となる。
【0031】
次に、ワーク移動装置1は、図2(b)に示すように、駆動電圧制御プログラムの制御により電圧印加手段で調整された駆動電圧を圧電素子13に印加する。すると、圧電素子13は図示Xの長さだけ伸長する。ここで、圧電素子13の伸長量の一部は空気圧アクチュエータ11の空気ダンピングにより吸収されるが、上記のように空気圧を比較的高めに設定してあるので吸収量が少なく、圧電素子の伸長量から吸収量を差し引いた総合的な衝撃体14の移動量はX1となる。その結果、衝撃体14の先端が当接するワークWはX1の距離だけ移動する。
【0032】
次に、ワーク移動装置1は、図2(c)に示すように、駆動電圧制御プログラムの制御により電圧印加手段で調整された変化率が負であるパターンの駆動電圧を圧電素子13に印加する。すると、圧電素子13は縮長するので衝撃体14の先端はワークWの側面S1から離隔し、ワークWの側面S1と衝撃体14の先端との間には大きさX2の間隙が生じる。
【0033】
次に、ワーク移動装置1は、駆動電圧を印加して圧電素子13が伸長させる前に、衝撃体14がワークWの側面S1に当接しかつワークWが移動しないよう空気圧調整手段を制御して空気圧アクチュエータ11へ供給する空気圧を調整する。すると、ワークWの移動を生じせしめることなく、衝撃体14の先端は再びワークWの側面S1当接し、図2(a)と同様な状態となる。そして、ワーク移動装置1は、ワークWの位置決めが完了するまで、図2(a)〜図2(c)の動作を繰り返す。
【0034】
ここで、図2(d)に示すように、位置決め操作の最終段階において、ワークWが所望の位置に近接した状態となった場合には、所望の位置P0を超えてワークWが移動することを防止するためワークWを微動させる必要がある。このため、ワーク移動装置1は、所定の値より偏差L2が小さくなった場合には、ワークWの微動に必要な移動量だけ衝撃体を移動させるため、空気圧アクチュエータ11の空気圧と圧電素子13の駆動電圧をともに低く設定した制御信号を制御手段から空気圧調整手段及び電圧印加手段に出力する。これにより、圧電素子13の伸長量のうち適正量が空気圧アクチュエータ11に吸収され、ワークWの微動に必要な移動量だけ衝撃体14は移動し、ワークWを微動させることができる。
【0035】
そして、ワーク移動装置1は、制御手段がワークWの位置決めが完了したと判断、すなわち偏差L2が所望の範囲に入り側面S2が所望の位置P0に達したと判断すると、上記図2(c)で説明した衝撃体14の先端がワークWの側面S1から離隔した状態を保持した後、空気圧アクチュエータ11のテーブル12を一定量後退させる。
【0036】
[円柱状ワークの調芯装置]
次に、本発明に係わる円柱状ワークの調芯装置について、その一実施形態に基づき図3〜5を参照して説明する。ここで、図3は調芯装置の概略構成図、図4は図3の調芯装置の動作を説明する図、図5は図3の調芯装置の変形態様を示す概略構成図である。なお、調芯装置の動作を理解しやすくするため、図4は図3の調芯装置2を平面視で表している。また、図1で説明した上記ワーク移動装置と同一の構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
調芯装置2を示す図3において、符号Wは円柱形状のワークである。調芯装置2は、このワークWの軸心K2を後述するスピンドル20の回転軸心K1に一致するよう位置決めするものである。
【0038】
調芯装置2は、上記ワーク移動装置1と同様に、ベース19に設けられた固定部材23の上面に固定された空気圧アクチュエータ11と、接続部材15を介して空気圧アクチュエータ11のテーブル12に固定された圧電素子13と、圧電素子13の先端に固定された衝撃体14と、ワークWを介して空気圧アクチュエータ11と反対側に配置されワークWの側面からの距離を検出する位置検出手段10と、不図示の空気圧調整手段、電圧印加手段及び制御手段とを有するとともに、調芯操作を行うための構成としてのスピンドル20と、当該スピンドル20の回転角を検出する回転角検出手段21と、制御手段に格納された特有のプログラムとが付加して構成してある。なお、衝撃体14は、図3に示すようにワークWの外周面に当接可能で、かつ図4(a)に示すように平面視においてスピンドル20の回転軸心K1を通る中心線上に存するよう配置されている。以下、スピンドル20、回転角検出手段21及び特有のプログラムについて詳細に説明する。
【0039】
図3において符号20がスピンドルである。スピンドル20は、制御手段により回転数及び回転角度が制御されるモータで回転軸心K1の回りに自在に回転するよう構成されており、一方の端面を上方に向けベース19に配置されている。そして、スピンドル20の内部には、その回転角度を検出するため回転式エンコーダで構成された回転角検出手段21が組み込まれており、スピンドル20の回転角を検出し、検出した回転角を第2の検出信号として制御手段へ出力するよう構成してある。
【0040】
調芯装置2における制御手段は、調芯操作を行うために特有の偏差算出プログラムと、駆動電圧制御プログラムとを有している。すなわち、図4(a)、(b)に示すように、スピンドル20の回転軸心K1とワークWの軸心K2とが一致していない場合には、ワークWは回転軸心K1の回りに振れ回るため、平面視において衝撃体14からスピンドル20の回転軸心K1の方向に見た場合における位置検出手段10からワークWの外周面までの距離が最大振れ量Lmaxとなる場合と、最小振れ量Lminとなる場合がある。ここで、平面視で見たときの回転軸心K1と軸心K2との距離、つまり偏差Eは上記最大振れ量Lmaxから最小振れ量Lminを減じて2分した値(E=(Lmax−Lmin)/2)である。そこで、調芯装置2の制御手段には、ワークWの外周面までの距離として位置検出手段10から入力された第1の検出信号から最大振れ量Lmaxと最小振れ量Lminを求め、これに基づいて偏差Eを算出可能なよう構成された偏差算出プログラムが格納されている。そして、上記ワーク移動装置1と同様に、制御手段の制御信号生成プログラムは、偏差算出プログラムで算出された偏差Eに基づいて空気圧アクチュエータ11へ供給する空気の空気圧及び圧電素子13へ駆動印加する電圧の高さを算出し、それらの制御信号を空気圧調整手段及び電圧印加手段へ出力する。
【0041】
また、駆動電圧制御プログラムは、回転角検出手段21から入力された第2の検出信号からスピンドル20の回転角を求め、所定の回転角のときに駆動電圧を圧電素子13に印加する制御信号を電圧印加手段に出力可能なよう構成されている。
【0042】
次に、上述した構成の調芯装置2によるワークWの調芯動作について図3及び図4を参照して説明する。
【0043】
まず、図3に示すように、スピンドル20の上面にワークWの底面が接するよう配置し、水平方向にのみ移動可能なよう固定部材でワークWを固定する。次いで、圧電素子13などが搭載された空気圧アクチュエータ11を、衝撃体14がワークWの外周面に当接可能な位置に配置する。
【0044】
そして、調芯装置2を作動させる。調芯装置2は、空気圧アクチュエータ11を作動しない状態で、スピンドル20を一定の回転速度で回転させる。すると、位置検出手段10は、回転するワークWの外周面からの距離を検出し、第1の検出信号として制御手段へ出力する。また、その位置検出と同時に、回転角検出手段は、ワークWを回転させる際のスピンドルの回転角を検出し、第2の検出信号として制御手段に出力する。ここで、位置検出手段10で検出された第1の検出信号は、回転角検出手段で検出された回転角ごとの第2の検出信号と対応づけたデータとしてメモリーに格納される。
【0045】
制御手段は、偏差算出プログラムにより第1の検出信号から図4(a)に示す回転角Aにおける最大振れ量Lmaxを、同図(b)に示す回転角Bおける最小振れ量Lminを求め、それらから偏差Eを算出する。そして、制御信号生成プログラムは、偏差算出プログラムで算出された偏差Eから空気圧アクチュエータ11に供給する空気圧と圧電素子13の駆動電圧を求め、制御信号を不図示の圧力調整手段と電圧印加手段へ出力する。なお、調芯操作の初期段階では偏差Eは大きくワークWを長距離移動させることが必要であるので、空気圧と駆動電圧は高めに設定され、最終段階ではワークWを微動させるために低めに設定される。さらに、空気圧は、空気圧アクチュエータ11による推力により自重による摩擦力に抗してワークWが移動しない程度に設定される。すると、図4(c)に示すように、空気圧アクチュエータ11のテーブルはワークWの側へ前進し、ワークWの移動を生じせしめることなく、ワークWの外周面に衝撃体14の先端が当接する状態となる。
【0046】
次に、調芯装置2は、メモリーに格納されたデータから最大振れ量Lmaxにおけるスピンドル20の回転角Aを求め、図4(c)に示すように、その回転角Aに対応するワークWの外周面が位置検出手段10と相向かうよう位置となり最小振れ量Lminの回転角Bに対応するワークWの外周面が衝撃体14の先端と相向かうよう位置となったときに、駆動電圧制御プログラムの制御により電圧印加手段で調整された駆動電圧を圧電素子13に印加する。すると、上記ワーク移動装置1と同様に、圧電素子13の伸長量から空気圧アクチュエータの空気ダンピングによる吸収量を差し引いた量だけ移動する衝撃体14により押圧されワークWは移動し、偏差Eは減少する。
【0047】
引き続き、調芯装置2は、図4(d)(e)に示すように、回転するワークWの表面の最大振れ量Lmax及び最小振れ量Lminを検出し偏差Eを求め、図4(f)に示すように上記と同様に所定の位置で圧電素子13を伸長させることでワークWを移動せしめ、ワークWの調芯を行う。ここで、空気圧アクチュエータ11には上記のように調整された空気圧の空気が供給されているので、図4(d)〜(f)に示すように、衝撃体14の先端が外周面に接した状態でワークWは回転する。上記図4(d)〜(f)を繰り返した後、調芯装置2が、偏差Eが所望の範囲に入り調芯が完了したと制御手段が判断すると、駆動電圧を切られた衝撃体14が縮長しその先端がワークWの外周面から離隔した状態を保持した後、空気圧アクチュエータ11のテーブルを一定量後退させる。
【0048】
なお、ワークWが傷付易い材質で衝撃体14で直接押圧できない場合は、図5に示す調芯装置3のように、スピンドル20の上面に置かれた円板形状の載置部材31を介してワークWを載置し、この載置部材31を衝撃体14で押圧するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係わるワーク移動装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のワーク移動装置の動作を説明する図である。
【図3】調芯装置の概略構成図である。
【図4】図3の調芯装置の動作を説明する図である。
【図5】図3の調芯装置の変形態様を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ワーク移動装置
2(3) 円柱状ワークの調芯装置
10 位置検出手段
11 空気圧アクチュエータ
12 テーブル
13 圧電素子
14 衝撃体
15 接続部材
16 空気圧調整手段
17 制御手段
18 電圧印加手段
19 載置手段
20 スピンドル
21 回転角検出装置
23 スペーサ
31 載置部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを移動させるためのワーク移動装置であって、前記ワークを一面に載置する載置手段と、空気圧で押圧されて一の方向に移動する推進部材を有するとともに前記推進部材の先端が前記ワークを望む状態で配置された空気圧アクチュエータと、前記推進部材に取り付けられた圧電素子と、前記ワークに当接可能に前記圧電素子に取り付けられた衝撃体と、前記ワークの位置を検出する位置検出手段と、前記空気アクチュエータへ供給する空気の空気圧を調整する空気圧調整手段とを備え、前記空気圧調整手段は、前記位置検出手段の検出した前記ワークの位置と前記ワークが位置すべき所望の位置との偏差に基づいて前記一の方向に推進部材を押圧する場合の空気圧を調整することを特徴とするワーク移動装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、前記ワークを介して前記空気圧アクチュエータと反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク移動装置。
【請求項3】
前記空気圧制御手段は、前記圧電素子が動作する前には前記衝撃体が前記ワークに当接しかつ前記ワークが移動しないよう、空気圧を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク移動装置。
【請求項4】
円柱状ワークの調芯を行う調芯装置であって、一面に前記円筒状ワークが水平方向に移動自在に載置されるとともに回転自在に垂設されたスピンドルと、前記スピンドルの回転角を検出する回転角検出手段と、空気圧で押圧されて一の方向に移動する推進部材を有するとともに前記推進部材の先端が前記円柱状ワークの外周面を望む状態で配置された空気圧アクチュエータと、前記推進部材に取り付けられた圧電素子と、前記円柱状ワークの外周面に当接可能に前記圧電素子に取り付けられた衝撃体と、前記円柱状ワークを介して前記空気圧アクチュエータと反対側に配置され前記円柱状ワークの側面からの距離を検出する位置検出手段と、前記空気アクチュエータへ供給する空気の空気圧を調整する空気圧調整手段とを備え、前記空気圧調整手段は、前記位置検出手段の検出した前記円柱状ワークの外周面からの距離により算出した前記スピンドルの回転軸心と前記円筒状ワークの軸心との偏差に基づいて前記一の方向に推進部材を押圧する場合の空気圧を調整することを特徴とする調芯装置。
【請求項5】
前記円柱状ワークは、前記スピンドルの一面に設置される載置部材の一面に載置され、前記衝撃体は前記円筒状ワークに代えて前記載置部材の外周面に当接可能に前記圧電素子に取り付けられている請求項4に記載の調芯装置。
【請求項6】
前記空気圧制御手段は、前記圧電素子が動作する前には前記衝撃体が前記円柱状ワークまたは前記載置部材の外周面に当接しかつ前記円柱状ワークまたは前記載置部材が移動しないよう、空気圧を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の調芯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−86475(P2010−86475A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257672(P2008−257672)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】