説明

ワーク貼合方法、およびワーク貼合装置

【課題】より簡単な構造でワークを吸着保持して、ワーク貼合面への空気のかみ込みを解消でき、貼合製品の歩留まりを向上できるワーク貼合装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバー2の内部に固定貼合台4とダイヤフラム膜6を備えた可動貼合台5とを対向配置し、固定貼合台4およびダイヤフラム膜6に第1ワークW1と第2ワークW2を装着する。ダイヤフラム膜6は、一群の通気口18が形成されたゴム板で形成し、可動貼合台5に設けた空圧凹部14の開口面の全体を覆う状態で固定する。ダイヤフラム膜6で吸着保持した第2ワークW2を第1ワークW1と正対させ、真空チャンバー2内に真空圧を作用させる。この状態で、第2ワークW2の吸着状態を解除し、同時に加圧空気を空圧凹部14に作用させて、ダイヤフラム膜6を膨張させ、第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス板どうし、あるいはガラス板とフィルムなどを貼合するのに好適なワーク貼合方法、およびワーク貼合装置に関する。本発明のワーク貼合装置は、例えば液晶ワークやプラズマディスプレイワークを製造する過程で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明のワーク貼合装置では、ダイヤフラムで片方のワークを他方のワークに押し付けて、両ワークの中央部分から周辺部へ向かって貼合を行なうが、同様の貼合形態を採る液晶パネルの製造装置が特許文献1に公知である。そこでは、上側の貼合テーブルにゴム製のエアーバッグを設けておき、下側のテーブルに載置した一対のワークにエアーバッグを押し付けて貼合する。
【0003】
本発明のワーク貼合装置においては、真空チャンバー内で一対のワークを貼合するが、この種の貼合装置は特許文献2に公知である。そこでは、真空チャンバーの内部に貼合対象となるワークを支持する上下一対のステージを対向配置し、真空チャンバー内を減圧した状態で一対のワークを貼合する。貼合されるワークは、それぞれ静電チャックで吸着保持される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−255540号公報(段落番号0015、図3)
【特許文献2】特開2004−301909号公報(段落番号0031、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のワーク貼合装置は、大気中において一対のワークを貼合する。そのため、貼合前の両ワークの間に空気が存在するのを避けられない。また、貼合時に両ワークの間の空気を強制的に排除しながら貼合を行なえばよいが、ワーク間に挟み込まれる空気を完全に排除するのが難しく、いずれにしても不良品の発生率が高く、貼合製品の歩留まりを向上するうえで大きな障害になっている。とくに大面積のワークを貼合対象とする場合には、局部的に空気をかみ込みやすいため、かみ込んだ空気の排除処理を別途行なっており、その分だけ手間とコストが余分に必要であった。例えば、ワーク貼合体を電気釜の内部に収容して、所定温度に加熱した状態で数気圧の圧力をかけ、かみ込んだ空気の排除処理を別途行なっており、貼合製品の製造に要するコストが嵩むのを避けられなかった。
【0006】
その点、特許文献2の基板張り合わせ装置によれば、減圧された真空チャンバー内で一対のワークを貼合するので、空気のかみ込みを解消できる。しかし、貼合対象のワークをそれぞれ高価な静電チャックで吸着保持するので貼合装置の全体コストが嵩み、貼合製品のコストを低コスト化するうえで問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ワーク貼合面への空気のかみ込みを解消して、貼合製品の歩留まりを向上できるワーク貼合方法とワーク貼合装置を提供することにある。本発明の目的は、より簡単な構造でワークを吸着保持して正確に貼合でき、したがって静電チャックでワークを吸着保持する場合に比べて貼合設備に要するコストを削減し、貼合製品を低コスト化するのに好適なワーク貼合方法とワーク貼合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワーク貼合方法は、固定チャンバー体2Aの内部に配置される固定貼合台4と、可動チャンバー体2Bの内部に配置される可動貼合台5と、可動貼合台5に設けられる通気可能なダイヤフラム膜6とを用いて、以下の過程を経て第1ワークW1と第2ワークW2を貼合する。固定貼合台4と、可動貼合台5のダイヤフラム膜6のそれぞれに、第1ワークW1および第2ワークW2を装着する工程と、ダイヤフラム膜6に真空圧を作用させて第2ワークW2を吸着固定した状態で、可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに接合して真空チャンバー2を閉鎖する工程と、第1ワークW1と第2ワークW2を所定の隙間を介して正対させ、真空チャンバー2内の空気を排気する工程と、ダイヤフラム膜6に対する真空圧の供給を遮断して第2ワークW2の吸着状態を解除したのち、ダイヤフラム膜6に加圧空気を作用させて、第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合することを特徴とする。
【0009】
真空チャンバー2内の空気を排気する工程においては、真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6に同一真空源3の真空圧を作用させて、第2ワークW2の内外に均等な真空圧を作用させる。
【0010】
真空チャンバー2内の空気を排気する工程においては、第1ワークW1と第2ワークW2の正対隙間が0.1〜1mmに設定する。
【0011】
本発明に係るワーク貼合装置は、真空チャンバー2と、真空チャンバー2の内部の空気を排気する真空源3とを備えている。真空チャンバー2の内部に、第1ワークW1が装着される固定貼合台4と、第2ワークW2が装着されるダイヤフラム膜6を備えた可動貼合台5とを設ける。ダイヤフラム膜6は、一群の通気口18が形成されたゴム板で形成されて、可動貼合台5に設けた空圧凹部14の開口面の全体を覆う状態で固定する。空圧凹部14は、真空源3、および圧力源7に対して通路21・22・23および切換弁28・31を介して接続されて、真空源3と圧力源7とに択一的に連通できるように構成する。以て、下記の条件下でダイヤフラム膜6に加圧空気を作用させて、第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合する。固定貼合台4に装着した第1ワークW1が、ダイヤフラム膜6に装着した第2ワークW2に所定の隙間を隔てて正対していること。真空チャンバー2内の空気が真空源3によって排気されていること。ダイヤフラム膜6に対する真空圧の供給を遮断して第2ワークW2の吸着状態が解除されていること。
【0012】
空圧凹部14は可動貼合台5に凹み形成した渦巻状の溝で構成する。渦巻中心に通路22を接続する。
【0013】
真空チャンバー2は固定チャンバー体2Aと可動チャンバー体2Bとで構成する。固定チャンバー体2Aの内部に、固定貼合台4と、固定貼合台4をダイヤフラム膜6へ向かって昇降操作する駆動構造11の出力部12とを設ける。可動チャンバー体2Bの内部にダイヤフラム膜6を備えた可動貼合台5を設ける。可動チャンバー体2Bは固定チャンバー体2Aに対して揺動軸9を介して揺動開閉可能に連結する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワーク貼合方法においては、第2ワークW2を第1ワークW1に向かって押圧するダイヤフラム膜6を利用して、第2ワークW2をダイヤフラム膜6の外面に真空圧によって吸着保持するようにした。また、両ワークW1・W2を所定の隙間を介して正対させ、真空チャンバー2内の空気を排気したのち、第2ワークW2の吸着状態を解除し、さらにダイヤフラム膜6に加圧空気を作用させて、第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合できるようにした。このように、真空環境において第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合すると、両ワークW1・W2の貼合面への空気のかみ込みを生じる余地がなく、したがって貼合製品の歩留まりを向上できる。また、第2ワークW2を押圧するダイヤフラム膜6を利用して、第2ワークW2をダイヤフラム膜6の外面に真空圧によって吸着保持するので、ワークを静電チャックで吸着保持する従来の貼合装置に比べて、より簡単な構造で第2ワークW2を吸着保持でき、貼合設備に要するコストやランニングコストを大幅に削減して、その分だけ貼合製品を低コスト化できる。
【0015】
真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6に同一真空源3の真空圧を作用させると、第2ワークW2の内外面に作用する真空圧を均等にして、第2ワークW2をダイヤフラム膜6から適正に分離できる。したがって、第2ワークW2の吸着状態の解除に連続して行なわれるダイヤフラム膜6による両ワークW1・W2の貼合を適正に行なうことができる。なお、ダイヤフラム膜6に作用する真空圧と、真空チャンバー2に作用する真空圧に差があると、第2ワークW2がダイヤフラム膜6から早いタイミングで分離し、あるいは逆に、第2ワークW2がダイヤフラム膜6に押し付けられて分離タイミングが遅れるおそれがある。第2ワークW2の分離タイミングが早い場合には、ダイヤフラム膜6による押圧に先行して両ワークW1・W2の周縁どうしが不規則に接着するおそれがある。また、第2ワークW2の分離タイミングが遅い場合には、ダイヤフラム膜6による押圧面の拡がり方にばらつきを生じて、接着強度がばらつくおそれがある。
【0016】
第1ワークW1と第2ワークW2の正対隙間を0.1〜1mmに設定して両ワークW1・W2を貼合するのは、両ワークW1・W2をダイヤフラム膜6で適正に貼合するためである。因みに対向隙間が0.1mm未満であると、第2ワークW2をダイヤフラム膜6で押圧する以前に、両ワークW1・W2の周縁部が他に先行して接着するなどの接着不良を招きやすい。また、対向隙間が1mmを越えると、両ワークW1・W2の周縁部の押圧力が不足して、貼合面の周縁部で接着不良を生じるおそれがある。
【0017】
本発明に係るワーク貼合装置によれば、真空チャンバー2内の真空環境において、第2ワークW2をダイヤフラム膜6で中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合するので、両ワークW1・W2の貼合面への空気のかみ込みを生じる余地がなく、したがって貼合製品の歩留まりを向上できる。また、第2ワークW2を押圧するダイヤフラム膜6を利用して、第2ワークW2をダイヤフラム膜6の外面に真空圧によって吸着保持するので、ワークを静電チャックで吸着保持する従来の貼合装置に比べて、より簡単な構造で第2ワークW2を吸着保持でき、貼合装置に要するコストやランニングコストを大幅に削減して、その分だけ貼合製品を低コスト化できる。
【0018】
また、ダイヤフラム膜6で覆われる空圧凹部14を、通路21・22・23および切換弁28・31を介して真空源3と圧力源7とに択一的に連通できるように構成するので、各切換弁28・31を切り換え操作するだけで、ダイヤフラム膜6に第2ワークW2を吸着保持し、あるいはダイヤフラム膜6を膨張させて両ワークW1・W2を貼合でき、従来のこの種の貼合装置に比べて、貼合装置の構造を簡素化し全体コストを削減できる。
【0019】
可動貼合台5に凹み形成した渦巻状の溝で空圧凹部14を構成し、渦巻中心に通路22を接続する貼合装置によれば、通路22に臨む渦巻中心から渦巻外端へ向かって真空圧や加圧空気を作用させることができる。したがって、第2ワークW2の吸着状態の解除、さらにダイヤフラム膜6による第2ワークW2の押圧動作などを、中央部から周縁部へと拡げることができ、さらに好適に両ワークW1・W2を貼合できる。
【0020】
真空チャンバー2を構成する固定チャンバー体2Aの内部に、固定貼合台4や駆動構造11の出力部12を設け、可動チャンバー体2Bの内部に可動貼合台5およびダイヤフラム膜6を設け、可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに対して揺動軸9を介して揺動開閉可能に連結する貼合装置によれば、第1・第2の両ワークW1・W2の装着から、ダイヤフラム膜6による両ワークW1・W2の貼合に至る一連の過程を円滑に連続して行なって、両ワークW1・W2を能率よく貼合できる。また、可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに接合することにより、両ワークW1・W2を前後、左右方向に位置決めした状態で正対できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施例) 図1ないし図8は本発明に係るワーク貼合装置の実施例を示す。図1においてワーク貼合装置は、基台1の上部に設けられる真空チャンバー2と、真空チャンバー2内の空気を排気する真空ポンプ(真空源)3と、真空チャンバー2内に配置される固定貼合台4および可動貼合台5と、可動貼合台5に設けられるダイヤフラム膜6と、ダイヤフラム膜6に加圧空気を供給する加圧ポンプ7(圧力源)などで構成する。固定貼合台4に第1ワークW1が固定され、可動貼合台5のダイヤフラム膜6に第2ワークW2が吸着固定される。
【0022】
第1ワークW1および第2ワークW2は、液晶基板やプラズマディスプレイ基板などの四角形状のガラス板やプラスチック板、あるいは液晶基板やプラズマディスプレイ基板などに貼合される静電防止用フィルム、反射防止用フィルムなどからなる。本発明のワーク貼合装置は、基板どうしを貼合する場合と、基板に対してフィルムを貼合する場合と、フィルムどうしを貼合する場合に適用できる。なお、両ワークW1・W2のいずれか一方には、透明な接着剤層が全面にわたって形成してある。
【0023】
真空チャンバー2は、上向きに開口する箱構造の固定チャンバー体2Aと、下向きに開口する箱構造の可動チャンバー体2Bとで構成してあり、真空チャンバー2内の空間は後述する通路および切換弁を介して真空ポンプ3に連通している。可動チャンバー体2Bは、固定チャンバー体2Aで揺動軸9を介して揺動開閉自在に支持されており、図示していないエアーシリンダーで揺動開閉操作される。固定チャンバー体2Aの可動チャンバー体2Bとの接合面には、シール体10が配置してあり、このシール体10によって真空チャンバー2を内外に封止している。
【0024】
固定チャンバー体2Aは基台1に固定してあり、その内部に、先の固定貼合台4と、固定貼合台4をダイヤフラム膜6へ向かって昇降操作する駆動構造11の出力部12とが設けてある。駆動構造11は、図示していないエアーシリンダーを駆動源にして構成してあり、エアーシリンダーのピストンの昇降動作を、先の出力部12を介して固定貼合台4に伝える。左右一対の出力部12は、固定チャンバー体2Aに設けたスライドブッシュ15で案内支持してある。第1ワークW1と第2ワークW2の対向隙間をより正確に設定するために、駆動構造11はボールねじと、ステップモータあるいはサーボモーターとで構成することができる。
【0025】
可動チャンバー体2Bの内面に先の可動貼合台5が固定してある。可動貼合台5の固定貼合台4との対向面には空圧凹部14が凹み形成され、空圧凹部14の開口面の全体を覆う状態でダイヤフラム膜6が可動貼合台5に固定してある。空圧凹部14は真空ポンプ3および加圧ポンプ7に対して、後述する通路および切換弁を介して連通している。
【0026】
図3に示すように空圧凹部14は、第2ワークW2の各辺部に沿って徐々に中央部へ向かって近づく四角形渦巻状の溝からなり、その中央部の溝端に後述する第2通路22が連通してある。図1から図7においては、空圧凹部14を明示するために、溝幅および溝深さを誇張して図示したが、実際の溝幅および溝深さは、ワークサイズの違いに応じて、それぞれ0.5〜1.5mmに設定する。このように、溝幅および溝深さを小さく設定するのは、第2ワークW2をダイヤフラム膜6で吸着するとき、ダイヤフラム膜6が溝の内部へ凹むのを防ぐためである。ダイヤフラム膜6は、全面にわたって通気口18が開口してあるゴム板で形成してあり、その周縁は四角形の押え枠19で可動貼合台5に固定してある。通気口18は、直径寸法が数mmの丸穴からなり、ダイヤフラム膜6の全面にわたって一定間隔おきに形成してある。自由状態におけるダイヤフラム膜6は、図2に示すように、空圧凹部14の開口周縁壁で受け止められて平坦になっており、この状態において通気口18の大半が空圧凹部14に臨んでいる。
【0027】
真空チャンバー2は、第1通路(通路)21を介して真空ポンプ3と連通してあり、空圧凹部14は、第2通路(通路)22を介して加圧ポンプ7と連通され、さらに第2通路22から分岐される第3通路(通路)23と、第1通路21を介して真空ポンプ3と連通してある。第1通路21の中途部には第1切換弁(切換弁)24と、負圧センサー25と、大気開放弁26が設けてある。第2通路22の中途部には、第2切換弁(切換弁)28と、負圧センサー29と、大気開放弁30が設けてある。第3通路23は、第2切換弁28と負圧センサー29との間の第2通路22と、真空ポンプ3と第1切換弁24との間の第1通路21とを連通しており、その中途部に第3切換弁(切換弁)32が設けてある。
【0028】
第1〜第3の各切換弁24・28・32は、第1〜第3の各通路21・22・23を遮断する状態と通気可能な状態とのいずれかに切り換えることができる電磁弁からなり、これらの切換弁24・28・32を切り換え操作することにより、真空チャンバー2に真空圧を作用させることができ、あるいは空圧凹部14に真空圧と加圧空気を択一的に作用させることができる。その詳細は後述する。
【0029】
以上のように構成した貼合装置は、次のようにして第1・第2の両ワークW1・W2を貼合する。以下においては、第1ワークW1がガラス基板であり、第2ワークW2がフィルムである場合について説明する。
【0030】
まず、可動チャンバー体2Bを開放操作した状態で、固定貼合台4の上面に第1ワークW1を載置し、その周縁の4箇所を図示していない位置決め体で位置決め保持する(図2参照)。次に、固定チャンバー体2Aをほぼ反転姿勢にした状態で、第2ワークW2をダイヤフラム膜6に載置し、さらに位置決め治具で位置決めする。この状態で、第3切換弁32を通気可能な状態にして真空ポンプ3の真空圧を空圧凹部14に作用させ、第2ワークW2をダイヤフラム膜6に吸着固定する。このとき、第1切換弁24と第2切換弁28とは通路21・23を遮断した状態にしておく。位置決め治具は、第2ワークW2をダイヤフラム膜6に吸着固定した後に、ダイヤフラム膜6から取り外しておく。
【0031】
上記のように貼合準備が終了したのち、図5に示すように可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aの開口面に被せ付けて真空チャンバー2を閉鎖し、第1・第2の両ワークW1・W2を上下に正対させて、図示していないロック構造で可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに固定する。この状態における第1・第2の両ワークW1・W2は、充分に大きな隙間を介して上下に対向している。そこで、駆動構造11を起動して固定貼合台4を可動貼合台5へ向かって接近移動させ、第1ワークW1と第2ワークW2の対向隙間を貼合に適した所定の隙間に設定する。
【0032】
両ワークW1・W2の対向隙間は0.1〜1mmの範囲内で設定することが好ましい。対向隙間が0.1mm未満であると、第2ワークW2をダイヤフラム膜6で押圧する以前に、両ワークW1・W2の周縁部が他に先行して接着するなどの接着不良を招きやすい。また、対向隙間が1mmを越えると、両ワークW1・W2の周縁部の押圧力が不足して、貼合面の周縁部で接着不良を生じるおそれがある。
【0033】
次に、図6に示すように第1通路21の第1切換弁24を通気可能な状態に切り換えて、真空ポンプ3の真空圧を真空チャンバー2に作用させ、真空チャンバー2の内部の空気を排気する。これにより、真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6には、同じ真空ポンプ3の真空圧が作用するので、真空チャンバー2の排気が終了した時点で、第2ワークW2の内外には均等な真空圧が作用することになる。
【0034】
真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6に作用する真空圧が均等になったことを、負圧センサー25・29からの出力信号で確認したのち、真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6に対する真空圧の供給を遮断して第2ワークW2の吸着状態を解除する。具体的には、図7に示すように、第3通路23の第3切換弁32をそれぞれ遮断状態に切り換える。この時点で、第2ワークW2は吸着力から開放される。第3切換弁32が遮断状態に切り換わるのと同時に、第2通路22の第2切換弁28を通気可能な状態にして、加圧空気を空圧凹部14に作用させる。これにより、ダイヤフラム膜6は図8に示すように下向きに膨張して第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する。なお、第1通路21の切換弁24は、第2通路22の第2切換弁28が通気可能な状態に切り換わったのち、一定時間(約2秒)は通気可能な状態を維持して真空チャンバー2の内部の空気を排気しており、第2切換弁28の切り換えから先の一定時間が経過した時点で、図7に示すように遮断状態に切り換えられる。
【0035】
空圧凹部14に加圧空気が送給された直後のダイヤフラム膜6は、その中央部分が他の部分に先行して膨張し、膨張する領域が周縁部へと拡がる。このときの第2ワークW2と第1ワークW1とは、ごく僅かな隙間を介して正対している。そのため、図8に示すように、それまでダイヤフラム膜6に吸着保持されていた第2ワークW2は、第1ワークW1を介して固定貼合台4で受け止められ、両ワークW1・W2は中央部から周縁部へと貼合されることになる。
【0036】
したがって、最悪の状況として真空チャンバー2の内部にごく僅かな空気が残存していたとしても、両ワークW1・W2の間に存在する空気を強制的にワーク周縁部側へ押し出しながら、両ワークW1・W2を貼合して空気のかみ込みを確実に防止できる。両ワークW1・W2が周縁部まで完全に貼合された状態では、図1に示すように、ダイヤフラム膜6の殆どの部分は、固定貼合台4と平行な姿勢になって両ワークW1・W2を密着保持している。以後、真空チャンバー2の内部は、ダイヤフラム膜6の通気口18から噴出する空気によって気圧が上昇する。真空チャンバー2の内圧が所定の圧力(約5気圧)になった状態で第2切換弁28を遮断状態に切り換え、その状態を一定時間維持する。これにより、両ワークW1・W2の周縁部分を高圧の空気で念のため密着させて、両ワークW1・W2の貼合を完璧なものとすることができる。
【0037】
最後に、電磁操作される大気開放弁26・30を大気と連通する状態に開放して、真空チャンバー2および空圧凹部14を大気開放する。この状態で可動チャンバー体2Bを開放揺動操作して、貼合されたワークを取り出す。なお、ダイヤフラム膜6が膨張する過程では、空圧凹部14に送給された加圧空気の一部が通気口18から真空チャンバー2内へ噴出される。しかし、先に説明したように、両ワークW1・W2はダイヤフラム膜6によって中央部から周縁部へと貼合され、しかも、ごく短時間で両ワークW1・W2の貼合が終了するので、通気口18から噴出する空気が両ワークW1・W2の間に入り込む余地はない。
【0038】
上記の実施例では、第2ワークW2がフィルムである場合について説明したが、第2ワークW2がガラス基板やプラスチック基板である場合にも、同様にして両ワークW1・W2を適正にしかも迅速に貼合することができる。また、上記の実施例では、第1ワークW1と第2ワークW2の対向隙間を所定の値に設定したのち、真空チャンバー2の内部の空気を排気したが、逆に真空チャンバー2の内部の空気を排気したのちに、第1ワークW1と第2ワークW2の対向隙間を所定の値に設定することができる。
【0039】
以上の説明から明らかな通り、本発明のワーク貼合方法は、固定チャンバー体2Aの内部に配置されて駆動構造11で昇降操作される固定貼合台4と、固定チャンバー体2Aに対して開閉可能に設けられる可動チャンバー体2Bの内部に配置される可動貼合台5と、可動貼合台5に設けられる通気可能なダイヤフラム膜6とを用いて第1ワークW1と第2ワークW2を貼合するものであって、以下の過程を経て第1ワークW1と第2ワークW2を好適に貼合することができる。
【0040】
固定貼合台4と、可動貼合台5のダイヤフラム膜6のそれぞれに、第1ワークW1および第2ワークW2を装着する工程と、
ダイヤフラム膜6に真空圧を作用させて第2ワークW2を吸着固定した状態で、可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに接合して真空チャンバー2を閉鎖する工程と、 固定貼合台4を可動貼合台5に接近移動させて、第1ワークW1と第2ワークW2を所定の隙間を介して正対させ、真空チャンバー2内の空気を排気する工程と、
ダイヤフラム膜6に対する真空圧の供給を遮断して第2ワークW2の吸着状態を解除したのち、ダイヤフラム膜6に加圧空気を作用させて、第2ワークW2を中央部から周縁部へと押圧して第1ワークW1に貼合する工程を経て、両ワークW1・W2を貼合する。
【0041】
真空チャンバー2内の空気を排気する工程においては、真空チャンバー2およびダイヤフラム膜6に同一真空源3の真空圧を作用させて、第2ワークW2の内外に均等な真空圧を作用させる。真空チャンバー2内の空気を排気する工程における、第1ワークW1と第2ワークW2の正対隙間は0.1〜1mmに設定する。
【0042】
上記の実施例では、可動チャンバー体2Bを水平な揺動軸9の周りに揺動開閉したが、可動チャンバー体2Bは垂直の揺動軸9の周りに揺動開閉でき、あるいは、固定チャンバー体2Aに対して連結されていない可動チャンバー体2Bを、蓋合わせ状に接合して真空チャンバー2を閉鎖することができる。また、空圧凹部14は、四角形渦巻状に形成する必要はなく、縦横に交差して連続する格子状の溝や、通気口18と同様の一群の凹部と、凹部を連通する溝とで形成することができる。要は、真空圧や加圧空気をダイヤフラム膜6に対して同時に作用できる構造であればよい。
【0043】
ダイヤフラム膜6の通気口18は、角穴やスリット状の穴で形成することができ、あるいは、丸穴と角穴とスリット状の穴が混在する状態で形成することができる。必要があれば、固定貼合台4を可動チャンバー体2Bの内面に設け、可動貼合体5およびダイヤフラム膜6を固定チャンバー体2Aの内部に設けることができる。その場合には、固定貼合台4に空圧凹部14および通気口18に相当する構造を設け、空圧凹部14に相当する構造に真空圧を作用させて、第1ワークW1を固定貼合台4に吸着固定するとよい。
【0044】
可動貼合台5は、固定貼合台4または固定チャンバー体2Aに対して開閉揺動可能に連結することができる。その場合には、第2ワークW2をダイヤフラム膜6で吸着保持したのち、可動貼合台5を閉じ揺動して固定貼合台4と正対させ、可動チャンバー体2Bを固定チャンバー体2Aに接合して真空チャンバー2を閉鎖するとよい。また、固定チャンバー体2Aの内部にアライメント台を設け、アライメント台で固定貼合台4を支持して、両者の間にアライメント装置を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ワーク貼合装置の縦断正面図である。
【図2】可動チャンバー体を半ば開放した状態のワーク貼合装置の縦断正面図である。
【図3】可動貼合台の貼合面の平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】真空チャンバーを閉鎖した状態のワーク貼合装置の縦断正面図である。
【図6】固定貼合台を上昇させた状態のワーク貼合装置の縦断正面図である。
【図7】ダイヤフラム膜を膨張させた状態のワーク貼合装置の縦断正面図である。
【図8】ダイヤフラム膜の膨張状態の詳細を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 真空チャンバー
2A 固定チャンバー体
2B 可動チャンバー体
3 真空源(真空ポンプ)
4 固定貼合台
5 可動貼合台
6 ダイヤフラム膜
7 加圧源(加圧ポンプ)
11 駆動構造
12 出力部
14 空圧凹部
18 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定チャンバー体(2A)の内部に配置される固定貼合台(4)と、可動チャンバー体(2B)の内部に配置される可動貼合台(5)と、可動貼合台(5)に設けられる通気可能なダイヤフラム膜(6)とを用いて第1ワーク(W1)と第2ワーク(W2)を貼合するワーク貼合方法であって、
固定貼合台(4)と、可動貼合台(5)のダイヤフラム膜(6)のそれぞれに、第1ワーク(W1)および第2ワーク(W2)を装着する工程と、
ダイヤフラム膜(6)に真空圧を作用させて第2ワーク(W2)を吸着固定した状態で、可動チャンバー体(2B)を固定チャンバー体(2A)に接合して真空チャンバー(2)を閉鎖する工程と、
第1ワーク(W1)と第2ワーク(W2)を所定の隙間を介して正対させ、真空チャンバー(2)内の空気を排気する工程と、
ダイヤフラム膜(6)に対する真空圧の供給を遮断して第2ワーク(W2)の吸着状態を解除したのち、ダイヤフラム膜(6)に加圧空気を作用させて、第2ワーク(W2)を中央部から周縁部へと押圧して第1ワーク(W1)に貼合することを特徴とするワーク貼合方法。
【請求項2】
真空チャンバー(2)内の空気を排気する工程において、真空チャンバー(2)およびダイヤフラム膜(6)に同一真空源(3)の真空圧を作用させて、第2ワーク(W2)の内外に均等な真空圧を作用させる請求項1記載のワーク貼合方法。
【請求項3】
真空チャンバー(2)内の空気を排気する工程において、第1ワーク(W1)と第2ワーク(W2)の正対隙間が0.1〜1mmに設定してある請求項1または2に記載のワーク貼合方法。
【請求項4】
真空チャンバー(2)と、真空チャンバー(2)の内部の空気を排気する真空源(3)とを備えており、
真空チャンバー(2)の内部に、第1ワーク(W1)が装着される固定貼合台(4)と、第2ワーク(W2)が装着されるダイヤフラム膜(6)を備えた可動貼合台(5)とが設けられており、
ダイヤフラム膜(6)は、一群の通気口(18)が形成されたゴム板で形成されて、可動貼合台(5)に設けた空圧凹部(14)の開口面の全体を覆う状態で固定されており、
空圧凹部(14)は、真空源(3)、および圧力源(7)に対して通路(21・22・23)および切換弁(28・31)を介して接続されて、真空源(3)と圧力源(7)とに択一的に連通できるように構成されており、
下記条件下でダイヤフラム膜(6)に加圧空気を作用させて、第2ワーク(W2)を中央部から周縁部へと押圧して第1ワーク(W1)に貼合することを特徴とするワーク貼合装置。
固定貼合台(4)に装着した第1ワーク(W1)が、ダイヤフラム膜(6)に装着した第2ワーク(W2)に所定の隙間を隔てて正対していること。
真空チャンバー(2)内の空気が真空源(3)によって排気されていること。
ダイヤフラム膜(6)に対する真空圧の供給を遮断して第2ワーク(W2)の吸着状態が解除されていること。
【請求項5】
空圧凹部(14)が可動貼合台(5)に凹み形成した渦巻状の溝で構成されており、
渦巻中心に通路(22)が接続してある請求項4記載のワーク貼合装置。
【請求項6】
真空チャンバー(2)が固定チャンバー体(2A)と可動チャンバー体(2B)とで構成されており、
固定チャンバー体(2A)の内部に、固定貼合台(4)と、固定貼合台(4)をダイヤフラム膜(6)へ向かって昇降操作する駆動構造(11)の出力部(12)とが設けられており、
可動チャンバー体(2B)の内部にダイヤフラム膜(6)を備えた可動貼合台(5)が設けられており、
可動チャンバー体(2B)が固定チャンバー体(2A)に対して揺動軸(9)を介して揺動開閉可能に連結してある請求項4または5に記載のワーク貼合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−49048(P2010−49048A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213582(P2008−213582)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(596149604)クライムプロダクツ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】