説明

三次元レリーフ作成装置

【課題】レリーフ材料を用いて三次元レリーフを作成するに当たり、レリーフ材料の取り付け取り外しの作業を軽減し、高精度の三次元レリーフを作成すること。
【解決手段】基台11と、基台11によって支持されており、レリーフ材料RZをその上に載置するための材料載置台12と、材料載置台12に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された彫刻装置TSと、材料載置台12に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された印刷装置PSとを有し、材料載置台12の上に載置されたレリーフ材料RZに対して、彫刻装置TSによる彫刻と印刷装置PSによる印刷とを、当該レリーフ材料RZを取り外すことなく行えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レリーフ材料に対して彫刻と印刷とを行って三次元レリーフを作成する三次元レリーフ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、美術品である絵画、彫刻などを三次元レリーフとして複製したものがある。また、人物や風景、または山や谷などの自然の地形の2次元画像に基づいて三次元レリーフを復元したものも知られている。
【0003】
このような三次元レリーフを自動的に製造する加工装置が提案されている(特許文献1)。つまり、特許文献1によると、デジタルカメラなどによってレリーフのモチーフとなる画像を入力すると、各画素の色調データに基づいて算出された階調データに基づきレリーフの高さを表すZ座標データが設定され、各画素の二次元位置データD(x,y)に基づきレリーフの平面位置を表すX−Y座標データが設定される。そして、これらをXYZ座標とする三次元形状データに基づいて工具のカッターパスが算出され、算出されたカッターパスに基づいて、レリーフ材料である被加工物の表面がNC加工機により研削加工される。
【0004】
NC加工機で表面を研削された被加工物をプリンタに移動させた後、その被加工物に対し、画素情報の二次元位置データと対応する位置に、色調データで表された色乃至明るさのインクを噴霧して印刷を行う。
【0005】
また、プリントヘッドの走査の間にプリントヘッドから立体物のプリント面までの距離を各吐出地点毎に測定し、この吐出地点間の間隔に対する測定距離の変位量を求め、これに基づいてインク吐出量を変化させる装置が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−311707
【特許文献2】特開平9−193368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上に述べた従来の装置においては、レリーフ材料である被加工物をNC加工機などにより加工した後、印刷装置に移して印刷を行うようになっている。そのため、NC加工機(彫刻装置)において一旦位置決めして固定した被加工物を印刷装置に移すために取り外し、印刷装置において再度レリーフ材料をZ位置決めして固定しなければならず、取り付け取り外しの作業が容易ではない。
【0007】
しかも、レリーフ材料の位置決めに際して彫刻と印刷との間で僅かではあっても位置ずれが生じるので、それによって出来上がった三次元レリーフの精度が低下することとなる。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、レリーフ材料を用いて三次元レリーフを作成するに当たり、レリーフ材料の取り付け取り外しの作業を軽減し、高精度の三次元レリーフを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る装置は、三次元レリーフを作成する装置であって、基台と、前記基台によって支持されており、レリーフ材料をその上に載置するための材料載置台と、前記材料載置台に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された彫刻装置と、前記材料載置台に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された印刷装置と、を有し、前記材料載置台の上に載置されたレリーフ材料に対して、前記彫刻装置による彫刻と、前記印刷装置による印刷とを、当該レリーフ材料を取り外すことなく行えるように構成される。
【0010】
好ましくは、前記材料載置台には、載置された前記レリーフ材料を負圧により吸着して固定するための多数の穴が設けられてなる。
【0011】
また、前記材料載置台の両辺の外側にはガイドが設けられており、前記彫刻装置は、前記ガイドに沿って第1の方向に走行する彫刻走行フレーム、および前記彫刻走行フレームに沿って前記第1の方向と直交する第2の方向に走行する彫刻ヘッドを有しており、前記印刷装置は、前記ガイドに沿って第1の方向に走行するプリンタ走行フレーム、および前記プリンタ走行フレームに沿って前記第1の方向と直交する第2の方向に走行するプリンタヘッドを有しており、前記基台上には、前記彫刻装置または前記印刷装置の一方がスキャンを行っているときに他方が待機するための待機スペースが設けられている。
【0012】
また、前記印刷装置に設けられたプリンタヘッドはインクジェット方式のプリンタヘッドであり、前記プリンタヘッドによる前記レリーフ材料への印刷に際して、前記彫刻装置において前記レリーフ材料の彫刻に用いた距離データを用いて前記プリンタヘッドの制御を行うための制御装置が設けられている。
【0013】
また、前記制御装置は、前記プリンタヘッドから前記レリーフ材料に印刷を施す表面である印刷表面までの距離を複数の高さレベルに区分し、それぞれの高さレベルごとに前記スキャンを実行するとともに、それぞれのスキャンごとに、そのスキャンにおける前記高さレベルに含まれる前記印刷表面の領域に対して前記プリンタヘッドによる画像の印刷を行うように制御する。
【0014】
また、前記制御装置は、前記スキャンごとに、前記プリンタヘッドによる印刷条件をそのスキャンの前記高さレベルに対して最適となるように設定して印刷を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、レリーフ材料を用いて三次元レリーフを作成するに当たり、レリーフ材料の取り付け取り外しの作業が軽減され、高精度の三次元レリーフを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る三次元レリーフ作成装置1の平面図、図2には三次元レリーフ作成装置1の正面図、図3は三次元レリーフ作成装置1の側面図、図4は制御装置18の機能を示すブロック図である。
【0017】
図1〜図3において、三次元レリーフ作成装置1は、基台11、材料載置台12、走行ガイド13、彫刻走行フレーム14、プリンタ走行フレーム15、彫刻ヘッド16、プリンタヘッド17、および制御装置18などからなっている。
【0018】
基台11は、4本の脚部および補強ビームなどからなり、三次元レリーフ作成装置1を床面上に安定して設置するとともに、他の部材を十分な剛性で支持するためのものである。また、適当な高さを有することにより、操作者によるレリーフ材料RZの着脱が容易に行える。
【0019】
材料載置台12は、その上面の載置面にレリーフ材料RZを載置し、負圧でレリーフ材料RZを吸着することによりレリーフ材料RZを固定するためのものである。レリーフ材料RZの載置面は、平面視で矩形であり、水平に設けられている。載置面には多数の穴ANが設けられており、図示しない真空ポンプによってそれらの穴ANから空気が吸引され、レリーフ材料RZが載置された場合にはその裏面に負圧が作用してレリーフ材料RZが材料載置台12に吸着して固定されるようになっている。
【0020】
また、負圧による吸着に代えて、またはそれとともに、ネジなどを締めつけることによってレリーフ材料を挟み込んで固定するためのクランプ装置を設けてもよい。
【0021】
なお、レリーフ材料RZは、合成樹脂材料、石膏、大理石などからなる板状のものであり、材料載置台12により吸着される面とは反対側の表面が彫刻ヘッド16によって彫刻される。彫刻によって表面に凹凸が形成されるが、凹凸が形成された後の表面に、プリンタヘッド17によって印刷が行われ、これによって彫刻に応じた画像が形成される。
【0022】
走行ガイド13は、材料載置台12の両辺の外側に設けられ、彫刻走行フレーム14およびプリンタ走行フレーム15がそれぞれX方向に直線状に走行するためのガイドである。
【0023】
彫刻走行フレーム14は、それ自身が走行ガイド13に沿ってX方向に走行するが、彫刻ヘッド16は彫刻走行フレーム14に沿ってY方向に走行する。これによって、彫刻ヘッド16はX方向およびY方向に走行可能であり、材料載置台12に載置されたレリーフ材料RZの表面をスキャン可能となっている。
【0024】
プリンタ走行フレーム15は、それ自身が走行ガイド13に沿ってX方向に走行するが、プリンタヘッド17はプリンタ走行フレーム15に沿ってY方向に走行する。これによって、プリンタヘッド17はX方向およびY方向に走行可能であり、材料載置台12に載置されたレリーフ材料RZの表面をスキャン可能となっている。
【0025】
このように、彫刻ヘッド16およびプリンタヘッド17は、レリーフ材料RZの表面を互いに独立してスキャン可能である。なお、それらの一方がレリーフ材料RZの表面をスキャンしている間は、他方は走行フレームとともに待機スペースTP1,2において待機するよう制御される。
【0026】
なお、彫刻走行フレーム14、プリンタ走行フレーム15、彫刻ヘッド16、およびプリンタヘッド17の走行のために、図示しないステップモータまたはサーボモータなどを含んだ公知の駆動装置が用いられ、その走行速度、加速度、停止位置などが制御装置18によって制御される。
【0027】
彫刻ヘッド16は、回転ドリルなどの刃物を備えており、刃物は、Z方向つまりレリーフ材料RZの表面に対して垂直方向に移動することが可能である。刃物のZ方向の位置は彫刻の内容に対応した距離データに基づき、制御装置18によって制御される。
【0028】
プリンタヘッド17は、YMCKの各色に対応する複数のノズルを備え、ノズルからそれぞれの色のインクを噴射してレリーフ材料RZの表面(印刷表面)に画像形成する。プリンタヘッド17それ自体は、Z方向には移動しない。したがって、プリンタヘッド17と材料載置台12の表面との間の距離は一定であり、レリーフ材料RZが載置された場合でもプリンタヘッド17とレリーフ材料RZとが接触することはないが、レリーフ材料RZに彫刻が施された状態では、プリンタヘッド17と印刷表面との間の距離が彫刻の形状によって変化する。つまり、プリンタヘッド17のノズルから噴射されたインクがレリーフ材料RZの表面に到達するまでの距離は、印刷表面の彫刻形状に応じて変化する。
【0029】
したがって、プリンタヘッド17は、印刷表面までの距離に応じて種々の制御を行うことが可能となっている。例えば、
(1) プリンタヘッド17から印刷表面までの距離が大きくなるほどスキャンの移動速度が遅くなるように制御する。
【0030】
つまり、プリンタヘッド17はスキャンのために走行しているので、ノズルから噴射されたインクは、印刷表面に到達したときは走行方向に沿ってズレたり拡散したりすることになるが、印刷表面までの距離が遠くなるほどそのズレが大きくなる。そこで、印刷表面までの距離が遠い場合にはプリンタヘッド17のスキャンの速度を遅くしてインクのズレを少なくする。これによって、画像がぼけるのをできるだけ抑える。
(2) プリンタヘッド17から印刷表面までの距離が大きくなるほど噴射するインクの速度が速くなるように制御する。
【0031】
これによって、インクのズレを少なくし、画像がぼけるのをできるだけ抑える。
(3) 噴射するインクの速度を速くするために、プリンタヘッド17に印加される電圧が高くなるように制御する。つまり、プリンタヘッド17の圧電素子により高い電圧を印加することによって、インクの噴射速度が速くなる。
(4) プリンタヘッド17から印刷表面までの距離が大きくなるほど噴射するインクの粒子単位の質量が大きくなるように制御する。例えば、ノズルからインクを連続的に噴射することにより、噴射したインクの水滴粒子がつながって大きくなり、粒子の質量が大きくなる。
【0032】
このように、三次元レリーフ作成装置1は、1つの材料載置台12に載置されるレリーフ材料RZの表面に対して、彫刻走行フレーム14および彫刻ヘッド16からなる彫刻装置TSと、プリンタ走行フレーム15およびプリンタヘッド17からなる印刷装置(プリンタ)PSとが、それぞれ独立してスキャンし、彫刻しまたは印刷することが可能である。したがって、材料載置台12上に板状のレリーフ材料RZをセットすることによって、その表面に彫刻を施し、さらにその表面に印刷を行って画像を形成することができ、レリーフ材料RZを移動することなく三次元レリーフを作成することができる。
【0033】
したがって、レリーフ材料RZの位置決めを最初に1回すればよいので、位置合わせが容易であり作業が簡単であるとともに、彫刻と印刷との間で位置ずれが生じることがなく、高精度の三次元レリーフを作成することができる。また、彫刻装置TSの刃物の制御に用いた距離データ(彫刻データ)を、そのまま印刷装置PSにおけるプリンタヘッド17と印刷表面との距離に応じた制御に用いることができ、制御データの生成が容易でありかつ高精度のものとすることができる。また、距離データまたはそれを生成するためのデータの入力が容易である。
【0034】
また、同様に、レリーフ材料RZが同じ位置に固定された状態で彫刻と印刷とを行うことができるので、上のように同じ距離データを用いることが可能であるとともに、彫刻装置TSおよび印刷装置PSを制御するプログラムまたはソフトウエアなどについても一部共通に用いることが可能である。
【0035】
図4に示すように、制御装置18は、スキャン制御部21、領域画像制御部22、および印刷条件制御部23などを備える。
【0036】
制御装置18により制御されるスキャン機構SKは、プリンタヘッド17を、印刷表面PHに接触しない状態で、印刷表面PHに対して相対的に直線的に移動させて印刷表面PHの全体をスキャンさせる。スキャン機構SKは、上に述べた彫刻走行フレーム14、プリンタ走行フレーム15、および、彫刻ヘッド16とプリンタヘッド17を移動駆動する部分などによって構成される。
【0037】
スキャン制御部21は、プリンタヘッド17から印刷表面PHまでの距離に応じて複数の高さレベルTLに区分されたそれぞれの高さレベルTLごとにスキャンを実行するように制御する。
【0038】
領域画像制御部22は、それぞれのスキャンごとに、そのスキャンにおける高さレベルTLに含まれる印刷表面PHの領域に対して、プリンタヘッド17によって画像の印刷を行う。
【0039】
印刷条件制御部23は、スキャンごとに、プリンタヘッド17による印刷条件をそのスキャンの高さレベルTLに対して最適となるように設定する。
【0040】
また、制御装置18は、プリンタヘッド17によるレリーフ材料RZへの印刷に際して、彫刻装置TSにおいてレリーフ材料RZの彫刻に用いた距離データを用いて、プリンタヘッド17による印刷条件の設定およびプリンタヘッド17の制御を行う。つまり、彫刻装置TSにおいて、工具または刃物の奥行き方向の位置(Z方向の位置)を決めるために、距離データ(Z軸データ)が用いられるが、その距離データを、印刷装置PSによって印刷を行う際にプリンタヘッド17の印刷条件の設定および制御のために用いるのである。
【0041】
なお、彫刻ヘッド16またはプリンタヘッド17のそれぞれの部分に制御部またはコンソールボックスを設け、それぞれの制御部などに制御装置18の機能を設けるように構成してもよい。
【0042】
さて、三次元レリーフ作成装置1においては、上に述べたように、印刷装置PSによる印刷を行う際に、プリンタヘッド17を、レリーフ材料RZの印刷表面に接触しない状態で、印刷表面に対して相対的に直線的に移動して印刷表面の全体をスキャンすることが可能である。
【0043】
そして、本実施形態においては、三次元レリーフ作成装置1は、プリンタヘッド17から印刷表面までの距離を複数の段階レベルに区分し、それぞれの段階レベルごとにスキャンを実行するとともに、それぞれのスキャンごとに、そのスキャンにおける段階レベルに含まれる印刷表面の領域に対して、プリンタヘッド17による画像の印刷を行う。つまり、画像の全体を、その高さレベルTLに応じて分割し、それぞれの画像を1回ごとのスキャンによって印刷する。
【0044】
次に、三次元レリーフ作成装置1における印刷装置PSによる印刷方法について説明する。
【0045】
図5は彫刻が施された後のレリーフ材料RZの上面図、図6は図5のレリーフ材料RZの正面図、図7は図6を拡大して示す図、図8はそれぞれのスキャンにおいて印刷を行う領域ERを示す図、図9は領域ERの境界部分における画像の印刷濃度の変化の例を示す図である。
【0046】
図5〜図8において、レリーフ材料RZには、その表面の中央に彫刻によって円錐台EDが形成されている。円錐台EDが形成されたレリーフ材料RZの全表面に印刷装置PSによって印刷を行う。
【0047】
図6および図7に示すように、プリンタヘッド17のノズルの先端からレリーフ材料RZの印刷表面PHの最遠面までの間が、その距離に応じて、3段階の高さレベル(段階レベル)TL1〜3に区分されている。
【0048】
つまり、高さレベルTL1は、プリンタヘッド17のノズルに最も接近した位置KL1から所定距離だけ離れた位置KL2までである。高さレベルTL2は、位置KL2から所定距離だけ離れた位置KL3までであり、高さレベルTL3は、位置KL3から最遠面である位置KL4までである。
【0049】
3段階の高さレベルTL1〜3に区分したことにより、印刷表面PHは、それぞれの高さレベルTL1〜3に含まれる3種類の領域ER1〜3に区分される。それぞれの領域ER1〜3が、図8(A)〜(C)に斜線で示されている。
【0050】
つまり、図8(A)に示す領域ER1は高さレベルTL1の範囲にある領域であり、図8(B)に示す領域ER2は高さレベルTL2の範囲にある領域であり、図8(C)に示す領域ER3は高さレベルTL3の範囲にある領域である。
【0051】
なお、これらTL1〜3のそれぞれの範囲(間隙の幅)は、互いに同じでもよく、また互いに異なるものでもよい。また、プリンタヘッド17のノズルに最も接近した位置KL1、および最遠面である位置KL4は、三次元レリーフ作成装置1の構造および印刷装置PSの仕様に応じて種々設定することが可能である。また、本実施形態では3段階の高さレベルTL1〜3に区分したが、2段階、または4段階以上、例えば、8段階、10段階、16段階…などであってもよい。
【0052】
さて、ここでは3段階の高さレベルTL1〜3に区分したので、印刷時におけるプリンタヘッド17のスキャンは3回行われることとなる。
【0053】
スキャンの1回目においては、高さレベルTL1に対応する領域ER1のみに対して画像の印刷を行う。その結果、図8(A)に斜線を付した領域ER1について印刷が行われる。スキャンの2回目においては、高さレベルTL2に対応する領域ER2のみに対して画像の印刷を行う。その結果、図8(B)に斜線を付した領域ER2について印刷が行われる。スキャンの3回目においては、高さレベルTL3に対応する領域ER3のみに対して画像の印刷を行う。その結果、図8(C)に斜線を付した領域ER3について印刷が行われる。3回のスキャンによって、印刷表面PHの全面についての画像の印刷が完了する。
【0054】
なお、それぞれのスキャンにおいて印刷される画像は、それぞれの領域ER1〜3に対応した画像であり、印刷を3回に分けて行うとしても全体の画像の内容が変更される訳ではない。なお、それぞれのスキャンにおいて画像を印刷する際には、そのスキャンでは印刷しない領域ERの画像をマスクしておけばよい。マスクの方法として、画像データをマスクする方法、印刷表面PH上においてマスクのためのシートを覆い被せる方法などがある。
【0055】
画像としては、例えば、円錐台EDが例えば地形図における山であった場合には、その山の画像、またはその画像をモディファイした画像である。
【0056】
そして、スキャンごとに、プリンタヘッド17による印刷条件をそのスキャンの高さレベルTLに対して最適となるように設定して印刷を行う。例えば、それぞれのスキャンごとに、高さレベルTL1〜3に応じて、上の(1)〜(4)に記載したように印刷装置PSを制御する。
【0057】
例えば、高さレベルTL1では通常の設定で印刷を行い、高さレベルTL2では上の(1)の制御、または(1)と(2)と(3)とを組み合わせた制御を行い、高さレベルTL3では上の(1)の制御、または(1)と(2)と(3)とを組み合わせた制御、または(1)〜(4)を組み合わせた制御を行う。
【0058】
なお、スキャンを行う順番は、距離の近い領域ER1から順に、または距離の遠い領域ER3から順に、またはランダムに行うことでもよい。
【0059】
また、各スキャンにおいてそれぞれの領域ERに対する印刷を行う場合に、それぞれの領域ERの境界の近辺において、当該境界の両側の所定範囲において、それぞれのスキャンにおいて画像の印刷を行って画像を合成するようにしてもよい。その合成に際して、各スキャンにおいて、画像の濃度が領域の外側へいくにしたがって低下するように変化させればよい。
【0060】
例えば図9に示すように、領域ER1および領域ER2のそれぞれの境界の近辺において、YMCKの各色についてそれぞれの画像の濃度を100%から徐々に低下させていき、他の領域ER2,1に入った後の近辺において画像の濃度が0%となるように制御する。こうすると、境界の近辺における画像が滑らかに合成され、印刷の繋ぎ目が目立たない。
【0061】
なお、上の説明では、領域ERの境界の近辺において濃度を徐々に低下させてグラデーション(ぼかし)を入れていったが、これに代えて、色彩を徐々に淡いものに低下させてもよい。
【0062】
また、画像または彫刻の内容によっては、印刷表面PHに高さレベルTLに対応した領域ERがない場合がある。そのような場合には、その高さレベルTLに対応するスキャンを行わないように制御することによって、印刷に要する時間を短縮することができる。
【0063】
なお、原画像GFは、X方向およびX方向に直交するY方向にマトリックス状に配列された多数の画素からなる2次元画像である。各画素は色情報を持つ。色情報は濃度情報を含む。例えば、各画素がRGBまたはCMYKなどで表現されている場合は、各原色の濃度情報によって各画素の色、つまり、色相、彩度、および明度が決定される。画素は他の表色系のデータによって表現されていてもよい。
【0064】
このような原画像GFを得るために、それらの実物をデジタルカメラやビデオカメラなどによって撮影してもよい。また、既に撮影された写真や印刷物などをスキャナなどで読み取ってデジタル化してもよい。また、既にデジタル化されて画像データとなった原画像GFを、CD−ROMやメモリチップなどの記憶媒体を介して、またはネットワークからダウンロードして取得することも可能である。また、コンピュータの内部において、種々のアプリケーションを用いて原画像GFを生成してもよい。
【0065】
なお、原画像GFは、ビットマップ状のデータとして格納しておいてもよいが、適当な圧縮方法によって圧縮された圧縮データとして格納しておいてもよい。原画像GFは、通常、フルカラー画像であるが、モノクロ画像でもよい。
【0066】
プリンタヘッド17のノズルの先端からレリーフ材料RZの印刷表面PHまでの距離を示す高さデータは、種々の方法で測定しまたは決定することができる。例えば、原画像GFに基づいて、ユーザがその距離を決定してもよい。つまり、この場合には、原画像GFに基づいて、その凹凸の状態をユーザが決定することになる。
【0067】
また、モデルとなる実物がある場合には、その実物を三次元測定機などによって測定し、距離データを取得して高さデータとすればよい。通常、距離データとともに二次元画像データが得られるので、これらのデータを用いて彫刻と印刷を行うことができる。
【0068】
高さデータは、例えば、X方向およびY方向にマトリックス状に配列された多数の各画素について、X方向およびY方向に直交するZ方向のデータを記録したものである。高さデータの画素のピッチまたは個数は、原画像GFの画素のピッチまたは個数と同じであってもよく、また原画像GFの画素を間引いたものであってもよい。
【0069】
高さデータとして、例えば、256階調(8ビット)、64階調(6ビット)などのデータが用いられる。高さデータTDは、例えば、最も低い位置(例えば背景位置)から最も高い位置までの間における位置を示す。また、高さデータが、最も低い位置からの距離を直接的に示すようにしてもよい。高さデータは、原画像GFにおいては高さを示すものであるが、プリンタヘッド17や切削工具からから見れば奥行きまたは深さを示すものとも言えるので、奥行きデータまたは深さデータと言うこともできる。高さデータは、各部の高さをグレースケールを用いて示す濃淡画像とすることも可能である。
【0070】
高さデータに基づいて、彫刻装置TSを制御するための制御データを生成する。なお、そのような制御データを生成するに際して、原画像GFのデータをも用いてもよい。また、制御データの生成をコンピュータの内部で行い、制御データを適当なインタフェースを介して彫刻装置TSに出力するようにしてもよい。
【0071】
彫刻装置(ルーター)TSは、制御データに基づいて、レリーフ材料RZに対して加工を施し、原画像GFについての三次元レリーフ原形を作成する。彫刻装置TSとして、種々のNC旋盤、マシニングセンター、レーザ加工機、サンドブラスト、ルーターなどと同様の機構または機能のものを用いることが可能である。なお、レリーフ材料RZには、材木、石膏、合成樹脂、または金属など、種々の材料が用いられ、また、その形状として、直方体状、板状、円柱状、各柱状、球状など、種々の形状のものが用いられる。
【0072】
印刷装置PSは、三次元レリーフ原形に対して三次元レリーフ原形の表面に、原画像GFに基づく画像印刷を行うことによって着色を行う。印刷装置PSは、例えば、Y,M,C,Kの各色のインクを保持し、原画像GFの色データに応じて、高速でパルス状に微量のそれぞれのインクを噴射し、三次元レリーフ原形RGの凹凸の表面にフルカラーの画像を生成する。印刷装置PSの基本的な機能としては、上に述べた特許文献2の装置を始めとして、従来から存在する種々の公知のインクジェットプリンタの機能を備えることができる。
【0073】
次に、三次元レリーフ作成装置1の全体的な動作の例について、フローチャートを参照して説明する。
【0074】
図10は三次元レリーフ作成装置1の全体の動作の流れを示すフローチャート、図11は高さデータ作成処理の手順を示すフローチャート、図12は加工処理の手順を示すフローチャート、図13は印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【0075】
図10において、原画像GFを取得し(#1)、原画像GFに基づいて高さデータを生成する(#2)。高さデータに基づく制御データを用いて彫刻装置TSを制御し、レリーフ材料RZを加工して三次元レリーフ原形を作成する(#3)。高さデータまたはそれに基づく高さ変化データを用いて印刷装置PSを制御し、三次元レリーフ原形に印刷を行って着色する(#4)。
【0076】
図11において、高さデータ作成処理においては、原画像GFを領域に区画し、区画されたそれぞれの領域に対して高さレベルTLを付与する(#11)。このとき、それぞれの領域について適用すべきパターンを指定する。それぞれの領域について濃淡画像を生成し、それを表示する(#12)。ユーザは、濃淡画像に対し、必要に応じて修正を行う(#13)。そのようにして得られた濃淡画像は、高さデータを示すことになる。または、得られた濃淡画像を階調データに変換して高さデータとする(#14)。
【0077】
図12において、高さデータを制御用データとして出力する(#21)。高さデータに基づいて、制御データを生成する(#22)。制御データを用いて彫刻装置TSを運転し、レリーフ材料RZを加工して三次元レリーフ原形を作成する(#23)。
【0078】
図13において、プリンタヘッド17から印刷表面PHまでの距離を高さデータから取得し、これを複数の高さレベルTLに区分する(#31)。1つの高さレベルTLについてスキャンを実行し、それに対応する領域ERに対して対応する画像を印刷する(#32)。その際に、上に述べたように、プリンタヘッド17による印刷条件をそのスキャンの高さレベルTLに対して最適となるように設定して印刷を行う。印刷表面PHの全ての領域ERに印刷が行われるまでスキャンを行い、印刷表面PHの全ての領域ERに印刷が行われると終了する(#33)。これによって三次元レリーフが完成する。
【0079】
上の実施形態において、彫刻走行フレーム14、プリンタ走行フレーム15、彫刻ヘッド16、およびプリンタヘッド17の走行のための装置または機構として、上に述べた以外の種々の公知のものを採用することが可能である。
【0080】
その他、印刷装置PS、彫刻装置TS、制御装置18、または三次元レリーフ作成装置1の全体または各部の構成、形状、寸法、個数、材質、画像の内容、制御装置18における処理内容、処理順序などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態の三次元レリーフ作成装置の平面図である。
【図2】三次元レリーフ作成装置の正面図である。
【図3】三次元レリーフ作成装置の側面図である。
【図4】制御装置の機能を示すブロック図である。
【図5】彫刻が施された後のレリーフ材料の上面図である。
【図6】図5のレリーフ材料の正面図である。
【図7】図6を拡大して示す図である。
【図8】それぞれのスキャンにおいて印刷を行う領域を示す図である。
【図9】領域の境界部分における画像濃度の変化を示す図である。
【図10】三次元レリーフ作成装置の全体の動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】高さデータ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】加工処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1 三次元レリーフ作成装置
PS 印刷装置
TS 彫刻装置
SK スキャン機構
11 基台
12 材料載置台
13 走行ガイド
14 彫刻走行フレーム
15 プリンタ走行フレーム
16 彫刻ヘッド
17 プリンタヘッド
18 制御装置
21 スキャン制御部
22 領域画像制御部
23 印刷条件制御部
TL 高さレベル
PH 印刷表面
AN 穴
RZ レリーフ材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元レリーフを作成する装置であって、
基台と、
前記基台によって支持されており、レリーフ材料をその上に載置するための材料載置台と、
前記材料載置台に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された彫刻装置と、
前記材料載置台に載置されたレリーフ材料の表面上をスキャン可能に配置された印刷装置と、を有し、
前記材料載置台の上に載置されたレリーフ材料に対して、前記彫刻装置による彫刻と、前記印刷装置による印刷とを、当該レリーフ材料を取り外すことなく行えるように構成された、
ことを特徴とする三次元レリーフ作成装置。
【請求項2】
前記材料載置台には、載置された前記レリーフ材料を負圧により吸着して固定するための多数の穴が設けられてなる、
請求項1記載の三次元レリーフ作成装置。
【請求項3】
前記材料載置台の両辺の外側にはガイドが設けられており、
前記彫刻装置は、前記ガイドに沿って第1の方向に走行する彫刻走行フレーム、および前記彫刻走行フレームに沿って前記第1の方向と直交する第2の方向に走行する彫刻ヘッドを有しており、
前記印刷装置は、前記ガイドに沿って第1の方向に走行するプリンタ走行フレーム、および前記プリンタ走行フレームに沿って前記第1の方向と直交する第2の方向に走行するプリンタヘッドを有しており、
前記基台上には、前記彫刻装置または前記印刷装置の一方がスキャンを行っているときに他方が待機するための待機スペースが設けられている、
請求項1または2記載の三次元レリーフ作成装置。
【請求項4】
前記印刷装置に設けられたプリンタヘッドはインクジェット方式のプリンタヘッドであり、
前記プリンタヘッドによる前記レリーフ材料への印刷に際して、前記彫刻装置において前記レリーフ材料の彫刻に用いた距離データを用いて前記プリンタヘッドの制御を行うための制御装置が設けられている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の三次元レリーフ作成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記プリンタヘッドから前記レリーフ材料に印刷を施す表面である印刷表面までの距離を複数の高さレベルに区分し、
それぞれの高さレベルごとに前記スキャンを実行するとともに、それぞれのスキャンごとに、そのスキャンにおける前記高さレベルに含まれる前記印刷表面の領域に対して前記プリンタヘッドによる画像の印刷を行うように制御する、
請求項4記載の三次元レリーフ作成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記スキャンごとに、前記プリンタヘッドによる印刷条件をそのスキャンの前記高さレベルに対して最適となるように設定して印刷を行う、
請求項5記載の三次元レリーフ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−119842(P2008−119842A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302927(P2006−302927)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】