説明

三次元測定装置及び該装置を用いた測定方法

【課題】測定精度を低下させることなく測定時間を短縮した三次元測定装置及び該測定装置を用いた測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の三次元測定装置1は、被測定物を撮像する撮像手段と、撮像結果から被測定物に付着した異物3の有無を検知する異物検知手段と、被測定物に測定子161を接触させて測定する測定手段と、検知された異物3を低減・除去する異物除去手段と、を備えている。そして、異物3検知時には測定手段での測定前に異物除去手段で異物3を除去・低減するものである。これにより、異物3の検知時間を短縮できて、全体の測定時間を短縮することができ、且つ測定子161を用いて測定するため被測定物を正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定装置及び該装置を用いた測定方法に関し、殊に、放電加工用電極を被測定物とした3次元測定装置及び該装置を用いた測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から放電加工用電極は被加工物を正確に型彫放電加工するために高い寸法精度が必要であった。そして、上記電極の寸法形状を測定する三次元測定装置として、被測定物に測定プローブ等に備えた測定子を接触させることで形状を測定する接触式のものと、被測定物を撮像手段で撮像して画像から形状を測定する非接触式のものと、があった。
【0003】
上記非接触式の三次元測定装置では、例えば、特許文献1に示すように、CCDカメラ(Charge Coupled Device カメラ)等の撮像手段と、撮像した画像情報から形状を測定する画像処理手段と、を備えたものであった。そして、測定方法は、撮像手段で被測定物を撮影して画像情報を生成して画像処理手段に出力し、画像処理手段が画像情報から被測定物の輪郭形状を抽出し、抽出した輪郭形状の形状を測定していた。そのため、付着した塵埃や切削屑、バリ等の異物による測定誤差は低減したものであった。
【0004】
また、接触式の三次元測定装置では被測定物の形状を構成する輪郭線全てに測定子を接触させて形状検出及び測定を行っており、深い段差や穴底等でも測定子を接触させることで測定可能であった。しかし、測定子を被測定物に接触させて形状を測定するため、被測定物に異物が付着していると測定子が異物を介して形状を測定してしまい、測定結果に異物による誤差を生じてしまうものであった。
【0005】
そのため、例えば、特許文献2に示すように、被測定物に付着した異物を吹き飛ばすエアーブロワーを有したものがあり、設計情報に一致するまで形状検出及び異物の吹き飛ばしを繰り返し行い、測定誤差を低減したものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−351827号公報
【特許文献2】特開2007−33349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1等の非接触式では被測定物に測定子を接触させる接触式に比べて測定時間が短いものの、深い段差や穴底に形成された形状を正確に測定することができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2等の接触式では測定子を被測定物に何度も位置を変えて接触させるため、全体の測定時間が長いという問題があった。更に、異物が完全に除去されるまで形状検出と異物の吹き飛ばしを繰り返すため、長い測定時間が更に延びてしまい、作業性及び生産性が悪いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みて発明したものであり、形状を正確に測定することができると共に、従来の接触式より測定時間を短縮することができる三次元測定装置及び該装置を用いた測定方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の三次元測定装置1は、被測定物を撮像する撮像手段と、撮像手段の撮像結果から被測定物に付着した異物3の有無を検知する異物検知手段と、被測定物に測定子161を接触させて形状を測定する測定手段と、異物検知手段で検知された異物3を除去または低減する異物除去手段と、を備えている。そして、異物検知手段が異物3を検知した際には測定手段で被測定物の形状を測定する前に異物除去手段で上記異物3を除去または低減するものであることを特徴としている。
【0011】
このような構成としたことで、測定子161を用いて異物3検知用の情報を得るものより上記情報を得るために要する時間を短縮でき、且つ異物3を低減・除去したことで、測定子161が異物3に接触することによる測定誤差の発生を防止することができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の特徴に加えて、測定手段は、異物検知手段の検知結果または前記撮像結果と上記検知結果を用いて、測定子161を被測定物に接触させる測定位置及び順序を決定するものであることを特徴としている。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の特徴に加えて、異物除去手段による異物3の除去または低減後、異物検知手段は再度異物3の有無を検知するものであり、再度異物3が検知されると、測定手段は検知された異物3に測定子161が接触しない位置に測定位置を決定するものであることを特徴としている。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3に記載の特徴に加えて、異物検知手段は、前記撮像結果から抽出した被測定物の輪郭形状51を被測定物の設計情報4の輪郭形状41に比較して、異物3の有無を検知するものであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4に記載の特徴に加えて、異物除去手段は気体または液体、あるいは気体と固体または液体と固体の混合物、あるいは気体と液体の混合物を被測定物に噴射して異物3を除去または低減するものであることを特徴としている。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5に記載の特徴に加えて、異物除去手段は被測定物をブラシ毛159で擦ることで該被測定物に付着した異物3を除去または低減する回転ブラシ157を有したものであることを特徴としている。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の特徴に加えて、被測定物は測定手段により測定される被測定部位を所定の一面上に有している。そして、回転ブラシ157は上記面の端辺に沿って回転軸芯158を有した円柱状で且つ周面に砥粒の付与されたブラシ毛159を有すると共に、上記回転軸芯158に直交し且つ上記面に沿って移動するものであり、上記回転及び移動により上記被測定部位に付着した異物3をブラシ毛159で除去または低減するものであることを特徴としている。
【0018】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜7に記載の特徴に加えて、異物除去手段を複数備えたものであることを特徴としている。
【0019】
また、請求項9に係る発明は、請求項1〜8に記載の三次元測定装置1を用いた測定方法である。そして、撮像手段で被測定物を撮像して、異物検知手段で撮像手段の撮像結果から異物3の有無を検知した後、測定手段で上記被測定物の形状を測定し、異物検知手段が異物3を検知した際には測定手段による被測定物の形状の測定前に異物除去手段により検知した異物3を除去または低減することを特徴としている。
【0020】
このような方法で被測定物を測定したことで、測定子161を用いずに異物3を検知でき、異物3検知に要する時間を短くすることができる。そして、被測定物に付着した異物3を低減したことで、測定手段での測定時に異物3の付着による測定誤差を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明の三次元測定装置は被測定物の異物検知のための形状検出を撮像手段により行ったことで、異物検知用の形状検出を接触式三次元測定装置で行ったものより、検出時間を短縮することができるものとなっている。そして、異物検知手段で検知した異物を異物除去手段で除去・低減したことで、異物を除去・低減した被測定物の形状を測定することができる。更に、異物の除去・低減後に測定子を接触させて測定したことで、接触式三次元測定装置で測定したものと略同様に被測定物の形状を正確に測定することができる。
【0022】
また、画像情報や異物の検知結果を用いて測定子を接触させる測定位置及び測定順序を決定したことで、異物の有無や付着位置に応じて測定位置及び測定順序を作業者を介さずに調整でき、被測定物の測定の操作を単純化することができる。
【0023】
また、異物の低減・除去後に再度異物検知を行うと共に、異物除去手段で除去されなかった異物を避けて測定手段が被測定物を測定したことで、異物による測定誤差を回避でき、測定精度をより向上することができる。
【0024】
また、画像情報から抽出した輪郭形状と設計情報から抽出した輪郭形状を比較して異物の付着の有無を判断したことで、付着した異物を確実に検知でき、異物の検知精度を向上することができる。
【0025】
また、異物除去手段を、気体や液体等を被測定物に吹き付けて異物を低減・除去するものや、被測定物から異物を擦り取る回転ブラシを有したものを用いたことで、被測定物に付着した異物を容易に低減したり除去したりことができる。そして、ブラシ毛に砥粒を付与したことで、バリ等の異物をより容易に取り去ることができる。
【0026】
また、上記本発明の三次元測定装置を用いて被測定物の形状を測定したことで、従来の測定方法より全体の測定時間を短縮し且つ測定精度を低下させることなく正確に被測定物の形状を測定できる測定方法となっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の三次元測定装置の説明図である。
【図2】同上の装置を用いた測定方法のフロー図である。
【図3】被測定物の設計情報の斜視図である。
【図4】電極に付着した異物の説明図であり、異物の付着した放電部を拡大した平面図(a)と側面図(b)である。
【図5】画像情報と画像情報から抽出した輪郭形状とを重ねた平面図である。
【図6】異物検知の判断方法の基本構成である。
【図7】同上の異物検知の判断方法の例の説明図であり、(a)が不一致、(b)が一致である。
【図8】同上の異物検知の判断方法の他例の説明図である。
【図9】本発明の装置で生成された測定経路プログラムの説明図であり、放電部を拡大した平面図(a)と側面図(b)であり、(c)が測定経路プログラムを連結したものである。
【図10】図1の異物除去手段の一方の拡大図である。
【図11】同上の噴射物を噴射する異物除去手段の他例である。
【図12】図1の異物除去手段の他方の拡大図である。
【図13】同上の回転ブラシ式の異物除去手段の他例である。
【図14】異物の寸法の算出方法の説明図であり、(a)が端部に異物の付着した輪郭線であり、(b)端部以外に異物の付着した輪郭線である。
【図15】測定位置の決定方法の説明図であり、(a)と(b)が測定点を決定可能な例であり、(c)が測定点を決定不可能な例である。
【図16】同上で決定方法に高さ方向を加えた例の説明図である。
【図17】決定された測定位置及び測定順序が図9と異なる測定経路プログラムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0029】
本発明の三次元測定装置1は、図1に示すように、被測定物を撮影して画像情報5を生成する撮像部11と、画像情報5から被測定物の輪郭形状51を抽出する画像処理部12と、被測定物の設計情報4を記憶した記憶部14と、被測定物に測定子161を接触させて形状を測定する測定部16と、被測定物に付着した異物3を除去する異物除去部15と、被測定物の設計情報4と画像情報5の輪郭形状41、51の誤差から異物3の有無を判断する異物検知部である判断部13と、測定部16による測定点61及び順序を算出し決定する演算部17と、を有している。そして、上記演算部17は撮像部11、異物除去部15、測定部16等の各動作を制御する制御部も兼ねている。なお、画像処理部12、記憶部14、判断部13、演算部17の各機能を一つのコンピュータ等の情報処理機器で兼ねてもよく、撮像部11と画像処理部12が一体のものであってもよい。符号23は被測定物を載置固定する測定台であり、撮像部11や測定部16等の各部による動作が行われる位置に被測定物を移動させて配置するものである。
【0030】
以下、図2のフローチャートに示す被測定物の測定処理の流れに沿って、各部の動作説明を行う。なお、本例における被測定物は型彫放電加工に用いる放電加工用電極であり、被測定物の被測定部位は、図3に示すように、所定の一面上に突出して配列された電極形状である複数の放電部22である。以下、説明の便宜上、放電部22が突出した上記面を電極面21と記す。そして、上記輪郭形状41、51とは電極面21を平面視した際の各放電部22の輪郭線411、511及び電極面21の端辺の輪郭線を抽出したものである。更に、本例における平面視とは放電部22の突出した高さ方向Zの先端側から上記放電部22の底部側である電極面21に向かった撮像方向Aで視た平面像である。もちろん、被測定物は上記放電加工用電極のみに限らず、且つ各放電部22の形や数、配列は例示にすぎない。また、上記電極2に付着した異物3とは、図4に示すように、放電部22の形成時に生じて電極面21上に付着し残ったバリや切削屑、塵埃等であるが例示にすぎず特に限定しない。
【0031】
撮像部11は上記電極面21に直交する向きに撮像方向Aを有し、被測定物である電極2の全体を撮影して、撮像方向Aから視た平面像の画像情報5を生成するものである。撮影された画像情報5は画像処理部12に出力されて、図5に示すように、画像処理部12により電極面21上の輪郭形状51が抽出されて記憶部14及び判断部13に出力される。なお、各放電部22は行列番号等により夫々識別可能である。もちろん、画像情報5は二次元の平面画像に限らず三次元の立体画像であってもよく、立体画像であれば撮像方向Aも適宜変更されるものである。
【0032】
画像処理部12による画像情報5の輪郭抽出が済むと、判断部13が記憶部14に予め記憶されている電極2の三次元CADデータ等の設計情報4から輪郭形状41を抽出する。そして、図6に示すように、判断部13は上記画像情報5から抽出した輪郭形状51を設計情報4から抽出した輪郭形状41と比較して一致するか否かの判断を行う。このとき、判断部13は、例えば図7に示すように、二つの輪郭形状41、51を同一平面上で重ね合わせて、相違する部位の有無を判断する。そして、判断部13は相違する部位が有ると、該部位を有する放電部22に異物3が付着して輪郭線511に差異を生じていると判断する。設計情報4に付与された符号42の領域は電極2形成時に生じる寸法誤差の許容値から決定された許容範囲であり、該範囲内であれば一致すると判断されるものである。
【0033】
また、判断部13は、他の判断方法として図8に示すように、輪郭形状41、51に電極2の基準球(特に図示しない)等の所定の位置を基準として各輪郭線411、511の位置座標を所定の間隔毎に算出する。そして、各点における位置座標の差分値52が許容値42内に収まるか否かを判断して、各輪郭線511における異物3の有無を検知するものもある。なお、設計情報4が輪郭形状41及び位置座標を抽出、算出せずに得られるものであれば、設計情報4からの抽出や算出の動作が省略されて測定時間をより短縮でき好ましい。もちろん、異物3の付着の有無の判断は上記二つの判断方法に限定するものではなく、撮像部11の画像情報5を設計情報4に比較することで異物3の有無を検知可能な方法であれば適宜採用可能である。
【0034】
つまり、撮像部11で異物3検知用の形状検出が行われているため、電極2上に配置された複数の放電部22の形状を一度に検出可能となっている。
【0035】
また、判断部13により設計情報4と画像情報5の輪郭形状41、51が一致したと判断されると、演算部17は画像情報5から放電部22毎の輪郭線511を抽出する。そして、演算部17は抽出した輪郭線511から放電部22の各測定位置である測定点61及び測定点61の測定時の順番である測定順序62を算出して、放電部22毎の測定経路プログラム6を生成する。
【0036】
詳しくは、測定子161を放電部22に接触させて測定する電極2上の位置座標である測定点61と、各測定点61の測定順序62と、を有した測定部16の測定時の制御用の動作プログラム情報である。例えば、判断部13の判断結果が異物3の付着無しのものでは、図9に示すように、測定点61が輪郭線511毎に夫々一つ以上配置されており、各測定点61には測定時の測定順序62が付与されている。このとき、測定点61の数は輪郭線511の全長S1に基づいて夫々決定されており、同じ輪郭線511上に測定点61が複数ある場合は互いに所定の間隔S3離れて配置されている。もちろん、本例の測定順序62である丸囲みの数字は説明の便宜上用いたものにすぎず、各測定点61に測定順序62を対応させた表やフロー図等でもよく、測定部16の制御手段である演算部17が測定時に各測定点61の測定順序62を認識でき測定部16を制御可能なものであればよい。
【0037】
なお、各測定点61の高さ方法Zにおける位置座標である測定高さは最低高さS2より所定の閾値低くしたものである。そして、放電部22の最低高さS2は、画像情報5が立体画像等で高さ方向Zの寸法を算出可能なものであれば画像情報5から算出され、画像情報5から高さ方向Zの寸法を算出不可能であれば設計情報4から算出されている。
【0038】
上記測定経路プログラム6が全ての放電部22に生成されると、各放電部22を測定する順番である測定順位(特に図示しない)に応じて各測定経路プログラム6の終点64と次に用いる測定経路プログラム6の始点63が連結される。そして、図9(c)に示すように、各放電部22の測定経路プログラム6が全て連結されることで、該電極2用の測定時の制御用の動作プログラム情報である測定プログラムとなり、上記電極2に割り付けられる。更に、割り付けられた上記測定プログラムに沿って演算部17が測定部16を制御することで、測定子161による上記電極2の測定が行われて、電極2の正確な形状が測定され測定処理が完了となる。
【0039】
また、上記判断部13の判断結果に設計情報4と一致しない部位があると該電極2が異物3の付着した放電部22を有すると判断して、異物除去部15によって上記電極2に付着した異物3の除去動作が行われる。このとき、異物除去部15は、気体や液体等の噴射物を吹き付けて異物3を被測定物から剥離させるものや、回転ブラシ157で被測定部位を擦り異物3の一部または全部を取り去るもの等がある。特に、噴射物や回転ブラシ157に、油脂等を分解洗浄できる洗浄剤やバリを削れる砥粒を加えて用いることで、異物3をより低減・除去できて好ましい。
【0040】
上記異物3を吹き飛ばす異物除去部15として、例えば、図10に示すように、油脂成分に対する分解性を有した脱脂洗浄剤入りの液体を噴射部151から霧状にして被測定物に噴射して、付着した異物3を低減・除去するものがある。詳しくは、脱脂洗浄剤を溶解させた混合液体を蓄えたタンクを有した本体部153と、混合液体をミスト化して噴射する噴射部151と、噴霧された混合液体及び異物3を吸引する吸引部152と、を有している。そして、上記洗浄剤入りのミストにより分解された油脂及び油脂を介して付着していた異物3はもちろん、混合液体の付着した重み等で剥れた異物3等も吸引部152に吸引されて除去されている。
【0041】
また、他例として、例えば、図11に示すような砥粒入りの圧縮空気を被測定物に向けて噴射して被測定物に付着した異物3を吹き飛ばすものもある。詳しくは、圧縮空気を生成するコンプレッサー154と、砥粒を蓄えた砥粒貯蔵部155と、圧縮空気に砥粒を混合する混合部156と、砥粒入り圧縮空気を電極面21に向けて噴射する噴射部151と、圧縮空気によって吹き飛ばされた異物3等を吸引する吸引部152と、を有している。そして、噴射部151からの砥粒入り圧縮空気で異物3を削るまたは砕く等で粉砕・剥離し、粉砕・剥離された異物3を圧縮空気で吹き飛ばし吸引部152で吸引することで、電極2に付着した異物3を低減したり除去したりするものである。もちろん、噴射物により異物3を低減・除去する異物除去部15は上記二つに限らず、砥粒を混合した有機溶剤やイオン化させた液体を混合した気体を噴射してもよく、噴射物を噴射することで被測定物に付着した異物3を低減・除去可能なものであれば、適宜採用してもよい。
【0042】
そして、回転するブラシ毛159で異物3を擦り取る回転ブラシ157を用いたものとして、例えば、図12に示すような電極面21全面を覆い且つ電極面21に直交する回転軸芯158を有した回転ブラシ157と、擦り落とされた異物3等を吸引する吸引部152と、を備えたものがある。詳しくは、回転軸芯158の軸周りの方向Tに回転する回転ブラシ157のブラシ毛159で被測定物の被測定部位である放電部22の表面を擦り、剥れた異物3を吸引部152で吸引することで、異物を低減したり除去したりするものである。特に、回転ブラシ157を用いたものはブラシ毛159で被測定物の被測定部位を直に擦るため、バリ等の被測定物と一体で形成された異物3に対して好適に除去・低減できるものとなっている。
【0043】
また、回転ブラシ157が電極面21全面を覆うものではなく、回転ブラシ157が移動して電極面21全面を擦ることで異物3を低減または除去するものもある。例えば、図13に示すように、回転ブラシ157が電極面21の一辺に沿って中心軸を有し且つ該軸を回転軸芯158とした円柱形状で外周にブラシ毛159を備えたものがある。そして、回転ブラシ157は中心軸に直交する方向Dで電極面21上に沿って電極面21全面を往復移動することで、電極面21上をブラッシングして電極2に付着した異物3を擦り取るものもある。なお、回転ブラシ157は上記砥粒を付与させたものや上記脱脂洗浄剤を含んだもの等を用いることで、異物3をより容易に低減または除去できて好ましい。
【0044】
特に、脱脂洗浄剤入りミストで洗浄した後、砥粒入り回転ブラシ157で擦り取るもの等の異なる動作で異物3を低減または除去する異物除去部15を複数備えることで、より多くの異物3を除去できるものとなり好ましい。もちろん、回転ブラシ157で異物3を擦り取った後、砥粒入り圧縮空気で異物3を吹き飛ばすものであってもよく、異物除去部15の組み合わせや動作順序等は、異物除去部15に応じて適宜設定するものであり特に限定しない。
【0045】
異物除去部15で異物3を低減・除去された電極2は撮像部11により再度撮像されて画像情報5を生成されて、画像処理部12で異物3除去後の新たな輪郭形状51を抽出された後、判断部13により再度の異物3の付着の有無の判断が行われる。このとき、異物3の付着が無いと判断されると、演算部17は前述と同様に放電部22毎に測定経路プログラム6を決定すると共に、決定した各測定経路プログラム6を連結した測定プログラムを該電極2に割り付ける。そして、測定部16によって測定プログラムに沿った電極2の正確な形状が測定されることで、該被測定物の測定処理が完了となる。
【0046】
また、判断部13による再度の異物3検知で異物3の付着が検知された場合、演算部17は測定部16による測定時に測定子161が異物3に接触することを回避した測定点61及び測定順序62を決定する。
【0047】
詳しくは、再度異物3の検知された放電部22に対して演算部17は異物3の付着した輪郭線511の全長S1から測定点61の数を決定すると共に、画像情報5及び輪郭形状51から付着した異物3の輪郭線511上の位置座標を算出する。そして、上記測定点61が同じ輪郭線511上に複数配置される場合、演算部17は、図14に示すように、輪郭形状51から付着した輪郭線511に沿った異物3の長さ寸法S4及び長さ寸法S4に直交する幅寸法S5を算出すると共に、異物3の長さ寸法S4の両端から上記輪郭線511の近い側の端部までの距離S6を夫々算出する。このとき、上記距離S6の少なくとも一方が測定点61間の所定の間隔S3より長い場合、図15(a)に示すように、上記距離S6を有する輪郭線511の部位に各測定点61の位置を決定する。
【0048】
また、上記距離S6の両方が所定の間隔S3より短い場合、演算部17は異物3の長さ寸法S4が上記所定の間隔S3より短いか否かを比較する。そして、異物3の長さ寸法S4が上記間隔S3未満であった場合、判断部13は異物3を上記間隔S3内に位置させることで異物3を回避可能と判断して、図15(b)に示すように、異物3の長さ方向の各端部の外方の位置に測定点61を夫々決定する。
【0049】
また、異物3の長さ寸法S4が上記間隔S3以上であった場合、図15(c)に示すように、異物3を避けて測定点61を配置できないため、演算部17は該電極2が形状不良を有していると判断して、該形状不良を外部に報知または出力した後、測定処理を中止する。もちろん、演算部17は放電部22を測定不可能と判断した際に該放電部22のみを形状不良として、形状不良の放電部22が所定数以上になるまで他の放電部22に対する測定処理を継続して行うことが好ましい。このとき、該放電部22を有する電極2の測定結果には測定不可能な放電部22を有した電極2である旨の情報を付与して出力することで、測定不可能な放電部22を有したことで放電加工に使用不可能と判断される電極2の数が低減することができる。つまり、放電加工に使用可能な電極2の数が増えることとなり、電極2の生産性を向上することができる。
【0050】
なお、測定点61が輪郭線511上に一つ配置するものでは該輪郭線511上の異物3の付着していない部位に上記測定点61の位置を決定すればよい。ましてや、演算部17が異物3の高さ寸法S7も算出可能であった場合、図16に示すように、異物3と測定子161との接触を高さ方向Zで回避した位置に測定点61を決定してもよい。
【0051】
そして、異物3の付着した放電部22の各輪郭線511の測定点61が全て決定されると、各測定点61に測定順序62を付与して測定経路プログラム6を生成する。このとき、演算部17は例えば、図17に示すように、測定子161の移動距離を短縮する等の付着した異物3に応じて測定順序62を決定して測定経路プログラム6を生成する。演算部17によって全ての放電部22に測定経路プログラム6が生成されると、各測定経路プログラム6の終点64と次の測定経路プログラム6の始点63を繋ぎ、測定プログラムが生成されて、該測定プログラムに沿って測定部16が電極2の形状を測定する。
【0052】
つまり、演算部17は各放電部22における異物3の有無により測定点61及び測定順序62を決定するため、測定経路プログラム6が放電部22毎に夫々生成されており、測定子161の測定プログラムに沿った動作経路も異物3の付着状況に応じて電極2毎に異なるものとなっている。
【0053】
このように、異物3検知用の形状検出に撮像部11を用いて複数の放電部22から一度に異物3の有無を検知可能としたことで、各放電部22の形状を夫々測定子161で検出していた従来のものに比べて、形状検出に要する時間を短縮している。そして、異物3の付着を検知した際に異物除去部15により異物3を低減したり除去したりしたことで、付着した異物3を介して測定したことによる計測誤差の発生を防止している。更に、異物除去部15が付着した異物3の除去・低減を行うため、作業者による異物3の除去作業を不要にできて、全体の測定時間を短縮している。もちろん、異物3が付着してない際には異物除去部15が除去・低減作業を行わないため、異物3の付着の有無に依らずに測定前に毎回異物除去部15を動作させるものより、全体の測定時間を短縮している。
【0054】
そして、付着した異物3の形状及び位置に応じて演算部17が測定部16による測定点61及び測定順序62を決定するため、被測定物に異物3が付着した状態でも、測定部16による測定が行える三次元測定装置1及び該装置を用いた測定方法となっている。更に、異物3が付着していても測定子161による被測定物を測定できるため、測定前に異物3を除去する追加工や測定プログラムの変更等を作業者による操作を不要としており、容易に測定可能な三次元測定装置1及び測定方法となっている。もちろん、測定部16の測定後に、演算部17が異物3の寸法や付着位置等を外部に出力可能であれば、異物3の付着した放電部22を被加工物の荒加工に用いる等の型彫放電加工に使用可能なものとすることができる。そのため、放電加工に使用可能な放電部22が増えることとなり、三次元測定装置1で不良品と判断される電極2の数を低減できて、放電加工に使用可能な電極2の生産性を向上することができる。
【0055】
即ち、従来の測定装置及び測定方法より異物3の付着の有無の検知に要する時間を短縮し、且つ形状の測定時に異物3と測定子161の接触を回避したことで、正確で且つ短時間で被測定物を測定でき、被測定物に対する生産性及び測定時の作業性が向上している。そして、異物3の付着に伴う測定点61及び測定順序62の調整を作業者を介することなく演算部17が行うため、作業者に測定点61の調整経験等の熟練した技術を要求せずに済み、三次元測定装置1の操作を単純にできて、容易に測定可能なものとなっている。
【符号の説明】
【0056】
1三次元測定装置
11撮像部
12 画像処理部
13 判断部
14 記憶部
15 異物除去部
16 測定部
161 測定子
17 演算部
2 電極
3 異物
6 測定経路プログラム
61 測定点
62 測定順序

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を撮像する撮像手段と、上記撮像手段の撮像結果から上記被測定物に付着した異物の有無を検知する異物検知手段と、上記被測定物に測定子を接触させて形状を測定する測定手段と、上記異物検知手段で検知された異物を除去または低減する異物除去手段と、を備えており、上記異物検知手段が異物を検知した際には上記測定手段で被測定物の形状を測定する前に上記異物除去手段で上記異物を除去または低減するものであることを特徴とする三次元測定装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記異物検知手段の検知結果または前記撮像結果と上記検知結果を用いて、前記測定子を前記被測定物に接触させる測定位置及び順序を決定するものであることを特徴とする請求項1に記載の三次元測定装置。
【請求項3】
前記異物除去手段による異物の除去または低減後、前記異物検知手段は再度異物の有無を検知するものであり、再度異物が検知されると、前記測定手段は検知された異物に前記測定子が接触しない位置に測定位置を決定するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の三次元測定装置。
【請求項4】
前記異物検知手段は、前記撮像結果から抽出した前記被測定物の輪郭形状を上記被測定物の設計情報の輪郭形状に比較して、異物の有無を検知するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元測定装置。
【請求項5】
前記異物除去手段は気体または液体、あるいは気体と固体または液体と固体の混合物、あるいは気体と液体の混合物を前記被測定物に噴射して異物を除去または低減するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の三次元測定装置。
【請求項6】
前記異物除去手段は前記被測定物をブラシ毛で擦ることで該被測定物に付着した異物を除去または低減する回転ブラシを有したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の三次元測定装置。
【請求項7】
前記被測定物は前記測定手段により測定される被測定部位を所定の一面上に有しており、前記回転ブラシは上記面の端辺に沿って回転軸芯を有した円柱状で且つ周面に砥粒の付与されたブラシ毛を有すると共に、上記回転軸芯に直交し且つ上記面に沿って移動するものであり、上記回転及び移動により上記被測定部位に付着した異物をブラシ毛で除去または低減するものであることを特徴とする請求項6に記載の三次元測定装置。
【請求項8】
前記異物除去手段を複数備えたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の三次元測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の三次元測定装置を用いて、前記撮像手段で前記被測定物を撮像して、前記異物検知手段で上記撮像手段の撮像結果から異物の有無を検知した後、前記測定手段で上記被測定物の形状を測定し、前記異物検知手段が異物を検知した際には前記測定手段による被測定物の形状の測定前に前記異物除去手段により検知した異物を除去または低減することを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−7635(P2011−7635A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151619(P2009−151619)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】