説明

三次元測定装置

【課題】 ある点の測定後のスタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)への復帰を瞬時に自動的に正確に行える三次元測定装置を提供すること。
【解決手段】 スタイラス(測定ヘッド)を原位置に復帰せしめるべくプローブユニット内に配設される、スタイラスと同軸上に延在するセンターピンと同一部材から製造されるとともにセンターピンと平行に延在する一対のストッパーピンを挟持して前記センターピンの外径と同一間隔を規定する、相対向し水平移動する一対のリミッタと、該リミッタをその背面から押圧付勢する圧縮ばねからなるセンターピンX方向復帰機構およびY方向復帰機構をZ軸方向に二層に配設したセンターピン復帰機構を有してなる三次元測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定範囲内における任意点或いは点群の三次元座標を測定できるとともに、測定対象の形状測定ができる三次元測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば機械加工部品の形状、寸法を検査、測定すべく、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸それぞれの方向への直線移動機構をもつ駆動軸を有し、これらの軸によって任意の空間に移動できるプローブで測定対象表面の三次元座標をμm単位で測定できるようにした三次元測定器が知られている。
【0003】
一方、門型のフレームで構成される触針式三次元測定装置におけるコラムの静的および動的な回転運動によって発生する測定誤差をリアルタイムに補正すべく、コラムの回転運動をコラムの上部に設けたジャイロセンサで検出し、この角度から補正量ベクトルを求め、測定座標をリアルタイムに補正するようにした三次元測定機における測定誤差補正装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、測定環境温度変動によるZステージおよびプローブユニット構成部材の熱膨張に起因する誤差を補正すべく、X−Y平面で走査しつつ被測定面のZ軸方向の高さを逐次測定し、測定対象の形状を出力する三次元測定補法において、第1の軌跡(直線軌跡)と第2〜第nの軌跡とが交叉するよう面形状を測定する座標データ取得工程と、第i(i=2〜n)の軌跡について、第1の軌跡とのX−Y平面における交点を求める交点算出工程と、全ての交点における第1の軌跡と第i軌跡のZ座標の差を求めるZ座標の算出工程と、このZ座標の差算出工程で求めた各Z座標の差から第i軌跡座標データを補正するようにした三次元形状測定方法が提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の触針式三次元測定装置は何れも1μm単位での高精度測定を実現するために測定装置の構成部品がきわめて高い精度で製作されておりまた、熱膨張を低く抑えるべくセラミックスなどの特殊な材質の構成部品を用いさらに、測定環境の温度変動に起因する測定精度の低下を回避すべく恒温室内での測定を要する等の問題があった。
【0006】
而して、測定装置は高価となるのみならず、特許文献2に開示の先行技術によるときは、第1の方向の少なくとも1本の軌跡とX−Y平面で前記第1の軌跡と交叉する方向の複数本の軌跡とを測定すべく走査手段を動作させる軌跡制御手段や、座標測定手段の出力とプローブ装置の出力と時計が出力する時刻とから、被測定面の座標と時刻を複数記録する記録手段、記録手段に記録された座標データから第1の軌跡と、第1の軌跡に交叉する全ての軌跡との交点のX−Y平面内での座標を求める交点算出手段、前記交点の全てにおける各軌跡のZ座標を求め、第1の軌跡とこれに交叉する全ての軌跡のZ方向の差を求める交点算出手段、各交点のZ軸座標の差から第1の軌跡と交叉する全ての軌跡のZ方向座標を補正する座標補正手段を要する等、装置および測定操作が複雑精緻となる問題がある。
【0007】
また、一般的な工業部品等の加工にあっては、三次元測定装置は10μm単位での測定精度で十分であるにも拘わらず、その測定精度に対応する装置がない。さらに、迅速かつ能率的な三次元測定を遂行するには、スタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)への復帰が瞬時に自動的に行える三次元測定装置である必要がある。
【0008】
本発明は、簡単な装置構成で一般的な工業部品等の三次元測定に好適な、ある点の測定後のスタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)への復帰を瞬時に自動的に正確に行える三次元測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、ある点の測定後のスタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)への復帰を瞬時に自動的に正確に行えるとともに、装置の構成部品の幾何学的誤差や組み立て誤差を補正できさらに、測定環境の温度変化に起因する誤差を補正できる、10μm単位の精度の三次元測定装置を提供することである。また、用途に合わせた自社専用プログラムの開発や拡張に対応しやすい実用的で安価な三次元測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、スタイラス(測定ヘッド)を具備するプローブユニットと、該プローブユニットをX方向、Y方向、およびZ方向に変位せしめるXステージ、Yステージ、およびZステージからなる移動ステージと、マシンベース上に載置される定盤とからなる三次元測定装置であって、スタイラス(測定ヘッド)を原位置に復帰せしめるべく前記プローブユニット内に配設される、スタイラスと同軸上に延在するセンターピンと同一部材から製造されるとともにセンターピンと平行に延在する一対のストッパーピンを挟持して前記センターピンの外径と同一間隔を規定する、相対向し水平移動する一対のリミッタと、該リミッタをその背面から押圧付勢する圧縮ばねからなるセンターピンX方向復帰機構およびY方向復帰機構をZ軸方向に二層に配設したセンターピン復帰機構を有してなる三次元測定装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、スタイラス(測定ヘッド)を具備するプローブユニットと、該プローブユニットをX方向、Y方向、およびZ方向に変位せしめるXステージ、Yステージ、およびZステージからなる移動ステージと、マシンベース上に載置される定盤とからなる三次元測定装置であって、
a.スタイラス(測定ヘッド)を原位置に復帰せしめるべく前記プローブユニット内に配設される、スタイラスと同軸上に延在するセンターピンと同一部材から製造されるとともにセンターピンと平行に延在する一対のストッパーピンを挟持して前記センターピンの外径と同一間隔を規定する、相対向し水平移動する一対のリミッタと、該リミッタをその背面から押圧付勢する圧縮ばねからなるセンターピンX方向復帰機構およびY方向復帰機構をZ軸方向に二層に配設したセンターピン復帰機構と、
b.前記Xステージ、Yステージ、およびZステージの変位方向と前記定盤面との平行度を調整すべく前記マシンベース上の4本の支柱それぞれの上部に配設される、ベアリングユニットのフレームに螺合され手動またはモータによって回転駆動されて昇降するとともにその上部に逆円錐形のボール受け座を有する調整スクリューと、該調整スクリュー上に載置されるとともにXステージおよびYステージのガイドロッドの端部が水平方向に挿通されており、その上面から前記ベアリングユニットのフレームに収蔵されている圧縮ばねによって下方に付勢されているボールとからなるステージ平行度調整機構と、
c.測定環境温度変化に起因する誤差を補正する演算処理手段
とを有してなる三次元測定装置である。
請求項2に記載の発明におけるステージ平行度調整機構によれば、その組み立ての際或いは平行度調整の際に応力を発生することがない。
【0012】
請求項3に記載の発明は、プローブユニットが、下部フレームに回転自在に水平な周方向上等間隔に固定、支承される少なくとも3箇のサポートボール上にその球体下部を支持されるとともに、押圧ロッドを介して圧縮ばねによって下方に付勢される回転半球中心Z軸方向にセンターピンおよびスタイラス(測定ヘッド)を同軸上に固定しさらに、前記回転半球の上水平面上にスタイラス(測定ヘッド)と一体的なタッチプレートを載置し、スタイラス先端の測定対象表面への接触によって前記回転半球のサポートボール上での傾動に対応してタッチプレートを傾斜せしめる如く構成し、タッチプレートの傾斜を接触式高精度変位センサで測定し、該接触式高精度変位センサの変位量が設定値となった時点でのスタイラス(測定ヘッド)先端部球体中心の三次元座標をX、Y、Zステージの移動量から計測可能に構成したものである請求項1または請求項2に記載の三次元測定装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般的な工業部品等の三次元測定に好適で実用的な、スタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)復帰を迅速かつ正確に行える、10μm単位の精度の三次元測定装置を安価に提供できる。また、構造が簡単である処からメインテナンスが容易でありまた、自社製品の測定の特徴に合わせて機能拡張等が可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明によるときは上記効果に加え、部品の製作誤差、組み立て誤差、装置の動的誤差を補正できるとともに、測定環境の温度変化に起因する誤差をも補正でき、恒温室を要することのない実用的な三次元測定を可能にする。この発明のベアリングユニットを用いたステージ平行度調整機構によれば、三次元測定装置の組立てや調整による応力の発生がない長所を有するとともに、自動制御対応ができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、一定の範囲内即ち、接触式高精度変位センサの変位量の設定値以下の範囲内でスタイラス(測定ヘッド)先端部球体中心の三次元座標を連続的に計測可能となり測定対象の連続的な三次元測定ができる。而して、X、Y、Z空間において、測定範囲内における任意点或いは点群の三次元座標値を測定でき、それを拡張して形状測定や指定した形式の出力もできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る三次元測定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるプローブユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるプローブユニットの内部構造を示す縦断面斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるスタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)復帰機構を示す斜視図である。 (a)スタイラス(測定ヘッド)のセンター(原位置)復帰機構を示す全体斜視図 (b)内部構造を示す縦断面斜視図(c)内部構造を示す縦断面斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるステージ平行度調整機構の配置を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるステージ平行度調整機構のベアリングユニットを示す斜視図である。 (a)外観斜視図 (b)内部構造を示す縦断面斜視図
【図7】本発明の一実施例に係る三次元測定装置を用いて三次元測定を行うときのアルゴリズムを示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施例に係る三次元測定装置を用いて三次元測定を行うに際し測定環境の温度変化に対する補正のアルゴリズムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態をその好ましい実施例に則して説明する。本発明の三次元測定装置は、主に、プローブユニット、移動ステージ、マシンベース、およびコントローラシステムから構成される。プローブユニットには接触式の高精度変位センサが組込まれ、その先端部のスタイラス(測定ヘッド)が測定対象に接触してその位置を感知し、三次元座標を読み取るタイミングを決定する。移動ステージ(X、Y、Zステージ)はプローブユニットの搬送機能を有する。
【0018】
マシンベースは、測定テーブルとなる定盤および移動ステージを載せる構造体である。マシンベースの4つの柱の上に、高さ調整可能なベアリングユニットを固定し、このベアリングユニットによって、移動ステージの定盤に対する平行度を調整する。また、X、Y、Z方向の各移動ステージには高精度の非接触式のレーザ変位センサが配設され、各移動ステージの移動距離を正確に測定する。
【0019】
コントローラシステムは、主に、各移動ステージを作動させるコントローラおよびデータ処理用コンピュータから構成される。三次元測定装置の動作指令および処理プログラムは、コントローラシステムによって供給される。
【実施例】
【0020】
図1に、本発明の一実施例に係る三次元測定装置を示す。図1において、は三次元測定装置、2は基台、3は支柱、4は連結部材、6はフレームであって、これら基台2、支柱3、連結部材4、およびフレーム6でマシンベースを構成し、基台2およびフレーム6によって定盤5を載置、固定している。7はXステージであって、その一端が図1に示すように、Yステージ17のボールねじ20に螺合しY軸方向に変位せしめられる。8はレーザ変位センサであり、レーザ反射プレート9との間の距離を測定する。10はボールねじであって、モータ12によって回転駆動され、Zステージ27をX軸方向へ変位せしめる。11はガイドロッドであり、その両端をベアリングユニット50に支承され、Xステージ7のY軸方向への変位を案内すべく機能する。而して、Xステージ7は、ベアリングユニット50にその両端を支承されるガイドロッド11にその一端を支持され、応力を発生することがなく、自動制御に対応できる。
【0021】
Yステージ17は、モータ22によるボールねじ20の回転駆動によってXステージ7をY軸方向へ変位せしめる。18はレーザ変位センサであって、レーザ反射プレート19との間の距離を測定する。11はガイドロッドであり、その両端をベアリングユニット50に支承され、Yステージ17を支持している。
【0022】
Zステージ27は、モータ32によるボールねじ30の回転駆動によってヨーク支持フレーム34をZ軸方向に変位せしめる。28はレーザ変位センサであって、レーザ反射プレート29との間の距離を測定する。ヨーク支持フレーム34はヨーク35を固定、把持しており、このヨーク35にプローブユニット36が固設されている。37は接触式高精度変位センサ、38はスタイラス(測定ヘッド)である。33はウエイトブロック台であり、Zステージ27の鉛直方向の荷重が偏倚することなくXステージ7に負荷されるように、プローブユニット36とバランスさせるべく、図示しないウエイトブロックが固定される。
【0023】
図2に、プローブユニット36の外観を示す。図2において、37は接触式高精度変位センサ、38はスタイラス(測定ヘッド)であって、この実施例においては、その先端球形部はルビーで形成されている。39はタッチプレートである。
【0024】
図3に、プローブユニット36の内部構造を示す。図3に示すように、接触式高精度変位センサ37の下部はタッチプレート39に接しており、タッチプレート39の傾動に対応して接触式高精度変位センサ37がその軸方向に変位する。接触式高精度変位センサ37は、この実施例においては、図3に示すように、X軸方向に2箇、Y軸方向に2箇の計4箇配設されているが、X軸方向において1箇、Y軸方向において1箇の計2箇の配設であってもタッチプレート39の傾動を計測することができる。その場合は、タッチプレート39のバランスをとるために押さえが必要となる。また、接触式高精度変位センサ37は、図3に示すように、ヨーク35の水平アーム部および接触式高精度変位センサ支持フレーム41に把持されている。
【0025】
タッチプレート39は、図3および図4(a)に示すように、スタイラス38とセンターピン46の結合部材と一体的に固定され、前記結合部材が回転半球42の上部水平面における中心部の孔に摺動自在に嵌合されており、而して回転半球42の傾動のX軸方向成分およびY軸方向成分に対応してタッチプレート39が傾動するとともに、スタイラス(測定ヘッド)38と一体的に構成されているタッチプレート39は回転半球42に対し回転半球42上面中心に穿設されている貫通孔の軸方向に変位自在である。回転半球42はその下部が球面状を呈しており、この球面部分は、図3に示すように、プローブユニット36の下部フレームに回転自在に、水平な周方向上等間隔に固定、支承される少なくとも3箇のサポートボール43に転動自在に支承される。
【0026】
回転半球42は、図3に示すように、その上部から回転半球押圧ロッド44を介して圧縮ばね45によって下方に付勢され、サポートボール43上に載置されている。而して、スタイラス(測定ヘッド)38の先端が測定対象表面上を接触、変位すると、スタイラス(測定ヘッド)38が傾き、これによって回転半球42がサポートボール43上である角度転動する。その結果、タッチプレート39が傾動し、これを接触式高精度変位センサ37で検出する。
【0027】
スタイラス(測定ヘッド)38のZ軸方向の変位はZステージ27におけるレーザ変位センサ28で検出され、上記接触式高精度変位センサ37の設定変位量(たとえば20μm)以上でプローブユニットがコントローラから移動停止指令を受け、この時点のスタイラス(測定ヘッド)38の先端部球体(ルビー)の中心点の空間座標をXステージ、Yステージ、およびZステージの移動量から読み取る。図3において、40はセンター復帰ユニットである。
【0028】
本発明の三次元測定装置において、スタイラス(測定ヘッド)38の先端部球体(ルビー)のZ方向における座標値の測定は、以下の動作手順になる。
1)スタイラス(測定ヘッド)38が測定対象表面に接触する前に、スタイラス(測定ヘッド)38と一体になっているタッチプレート39は、この実施例においては、4箇の接触式高精度変位センサ37の初期圧力および図4に示すセンター復帰機構によって、水平かつ最下限を保っている。
2)プローブユニット36が下降してスタイラス(測定ヘッド)38の先端が測定対象表面に接触する際にタッチプレート39が回転半球42に対して持ち上げられ、接触式高精度変位センサ37にさらなる変位を生ぜしめる。同時に、図4(a)、(b)、(c)に示すセンター復帰機構によって、各接触式高精度変位センサ37の変位による反力に微小な差が存在していてもスタイラス(測定ヘッド)38の鉛直方向移動を確保する。
【0029】
3)タッチプレート39が回転半球42に対して上昇する際、回転半球42の上部水平面における中心部の孔の軸方向のみの相対移動となる。回転半球42は、図3に示すように、その上部から回転半球押圧ロッド44を介して圧縮ばね45によって下方に付勢され、サポートボール43上に載置されている。
4)スタイラス(測定ヘッド)38および連動するタッチプレート39がの移動量が、設定値、たとえば5μmとなった瞬間にレーザ変位センサ28が測定した値をオフセット等の変換処理を行って、被測定点の三次元座標値を割り出す。
5)Z方向の測定停止の指令を出す。信号伝達の遅れや慣性などによる一定量の移動が継続した後、スタイラス(測定ヘッド)38が被測定点から離れ、一点においての測定動作が終了する。
【0030】
図4(a)、(b)、および(c)に、本発明の一実施例に係るスタイラス(測定ヘッド)38のセンター復帰機構を示す。図4(a)、(b)、および(c)において、40はセンター復帰ユニット、38はスタイラス(測定ヘッド)、39はタッチプレート、42は回転半球である。46はセンターピンであって、図3に示すように、スタイラス(測定ヘッド)38と同軸上に回転半球42中心部にZ軸方向に延在する如く、嵌装、固定されている。
【0031】
センター復帰ユニット40は、図4(b)、(c)に示すように、ストッパーピン47、リミッタ49、圧縮ばね45から構成されている。ストッパーピン47はセンターピン46と同一部材で製造されており、同一の外径を有している。而して、スタイラス(測定ヘッド)38が測定対象表面から離脱すると、圧縮ばね45によって押圧されているリミッタ49がセンターピン46の軸心を指向して水平に変位し、ストッパーピン47を挟持する。
【0032】
圧縮ばね45、ストッパーピン47,リミッタ49の組は、X軸方向およびY軸方向とでZ軸方向において重層構造となっており、X軸方向およびY軸方向においてそれぞれ独立に一対のストッパーピン47をリミッタ49の対で挟持する。而して、スタイラス(測定ヘッド)38がフリーな状態になると、瞬時に、X軸方向およびY軸方向においてそれぞれ独立に一対のストッパーピン47を挟持した2組のリミッタ49の対によって、センターピン46の外径に合致する、水平方向における正方形が現出する。この正方形にセンターピン46が拘束されることによって、スタイラス(測定ヘッド)38のセンター(原位置)復帰が瞬時にかつ正確になされる。
【0033】
図5に、本発明の一実施例に係る三次元測定装置におけるステージ平行度調整機構を示す。既に説明した、図1におけると同一の符号の構成要素の説明は省略する。図5において、50はベアリングユニット、55はボール、57は圧縮ばねである。ステージ平行度調整機構は、図1に示す定盤5の上面とXステージ7,Yステージ17を平行にすべく機能する。
【0034】
図6(a)、(b)に、ステージ平行度調整機構におけるベアリングユニット50の構造を示す。図6(a)はベアリングユニット50の外観を示す斜視図、図6(b)は内部構造を示す縦断面図である。 図6(a)、(b)において、51はフレーム、52は調整スクリュー、53は調整スクリュー回転用六角孔、54はボール受け座であって、調整スクリュー52の上部に形成される。55はボール、56は固定用ねじ孔、57は圧縮ばねである。図6(a)、(b)において、11はXステージ7のガイドロッド、21はYステージ17のガイドロッドである。
【0035】
図6(b)に示すように、ボール55には、球心をガイドロッド11,21の軸心が通るように、水平にガイドロッド11,21の端部が挿通されている。ボール55は、フレーム51にその上端を固定される圧縮ばね57によって、調整スクリュー52の上部に形成されている逆円錐状(擂り鉢状)のボール受け座54に押圧されている。而して、Xステージ7およびYステージ17の、定盤5上面との間の平行度を所望の精度たとえば3μm以内に収めるには、調整スクリュー回転用六角孔53に断面六角形のドライバ(棒レンチ)を挿入し、手動またはモータ駆動で回転し、ボール55を昇降させて調整を行う。ベアリングユニット50は、マシンベースの上部4箇所に配設され、それぞれ独立に昇降され得る。
【0036】
図7に、本発明の一実施例に係る三次元測定装置を用いて三次元測定を行うときのアルゴリズムを示す。本発明の三次元測定装置は、通常の室温の環境や生産現場において用いられることを前提にしている。測定開始後、先ず、温度や測定範囲などのパラメータを初期値として入力する。次いで、XY方向の基準となる定盤5の上平面に対してXステージ、Yステージ稼働平面の平行度をテストする。その結果、設定した許容値ε(たとえば3μm)以内であれば、XYZ方向の幾何学的誤差の補正手順に進む。Xステージ、Yステージ稼働平面の平行度がεを超えていれば、支柱3の上部に取り付けられている4つのベアリングユニットにおける調整スクリュー52を回転させることによって、順次、繰り返し調整を行ってε以内となるようにキャリブレーションを行う。
【0037】
次いで、三次元測定装置が稼働するときの空間的誤差を補正する。基準となるブロックゲージを定盤5の上に載置する。その寸法および幾何学的形状を参照し、三次元測定装置のスケールを校正する。
【0038】
三次元測定装置のキャリブレーションを遂行した後に、実際のワーク(測定対象)の三次元測定が可能となる。プローブユニット36は、スタイラス(測定ヘッド)38の先端球形部が被測定点に接触するまで移動を続ける。接触を始めると、タッチプレート39に微小な傾きが生じ始める。設定した変位量ε(たとえば20μm)以上になるとプローブユニット36が移動停止の指令を受け、この瞬間におけるスタイラス(測定ヘッド)38の先端球形部中心の空間位置をXステージ、Yステージ、およびZステージの移動量から読み取る。ステージが移動し、スタイラス(測定ヘッド)38の先端球形部が被測定点から離れると、センター復帰ユニット40が作動し、スタイラス(測定ヘッド)38は瞬時にセンター復帰を行う。次の測定点があれば、その点までの移動を行う。複数点を測定する場合、上記と同様な繰り返しを遂行する。
【0039】
得られた空間座標のデータをADボートを経由してデータ処理用パソコンに送る。寸法或いは幾何学的形状、たとえば長さ、平面度、真円度等によって対応する計算や座標変換を行い、必要な結果を指定された形式で出力する。
【0040】
図8に、本発明の一実施例に係る三次元測定装置を用いて三次元測定を行うときの、環境の温度変化による誤差を補正するアルゴリズムを示す。本発明の三次元測定装置にあっては、指定した基準温度たとえば23℃における座標システムを基準座標システムとして設定し、環境の温度が変化した場合、温度差によって発生する誤差を補正する。三次元測定装置の構成によって、単純な線形的な熱膨張(収縮)量ではなく、システム組み立て状態の複合変化量をデータベース化し、使用現場の温度に応じて動的に補正する。
【符号の説明】
【0041】
三次元測定装置
2 基台
3 支柱
4 連結部材
5 定盤
6 フレーム
7 Xステージ
8 レーザ変位センサ
9 レーザ光反射プレート
10 ボールねじ
11 ガイドロッド
12 モータ
17 Yステージ
18 レーザ変位センサ
19 レーザ光反射プレート
20 ボールねじ
21 ガイドロッド
22 モータ
27 Zステージ
28 レーザ変位センサ
29 レーザ光反射プレート
30 ボールねじ
31 ガイドロッド
32 モータ
33 ウエイトブロック台
34 ヨーク支持フレーム
35 ヨーク
36 プローブユニット
37 接触式高精度変位センサ
38 スタイラス(測定ヘッド)
39 タッチプレート
40 センター復帰ユニット
41 支持フレーム
42 回転半球
43 サポートボール
44 回転半球押圧ロッド
45 圧縮ばね
46 センターピン
47 ストッパーピン
48 圧縮ばね
49 リミッタ
50 ベアリングユニット
51 フレーム
52 調整スクリュー
53 調整スクリュー回転用六角孔
54 ボール受け座
55 ボール
56 固定用ねじ
57 圧縮ばね
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開平08−247756号公報
【特許文献2】特開2004−286507号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイラス(測定ヘッド)を具備するプローブユニットと、該プローブユニットをX方向、Y方向、およびZ方向に変位せしめるXステージ、Yステージ、およびZステージからなる移動ステージと、マシンベース上に載置される定盤とからなる三次元測定装置であって、
スタイラス(測定ヘッド)を原位置に復帰せしめるべく前記プローブユニット内に配設される、スタイラスと同軸上に延在するセンターピンと同一部材から製造されるとともにセンターピンと平行に延在する一対のストッパーピンを挟持して前記センターピンの外径と同一間隔を規定する、相対向し水平移動する一対のリミッタと、該リミッタをその背面から押圧付勢する圧縮ばねからなるセンターピンX方向復帰機構およびY方向復帰機構をZ軸方向に二層に配設したセンターピン復帰機構を有してなる三次元測定装置。
【請求項2】
スタイラス(測定ヘッド)を具備するプローブユニットと、該プローブユニットをX方向、Y方向、およびZ方向に変位せしめるXステージ、Yステージ、およびZステージからなる移動ステージと、マシンベース上に載置される定盤とからなる三次元測定装置であって、
a.スタイラス(測定ヘッド)を原位置に復帰せしめるべく前記プローブユニット内に配設される、スタイラスと同軸上に延在するセンターピンと同一部材から製造されるとともにセンターピンと平行に延在する一対のストッパーピンを挟持して前記センターピンの外径と同一間隔を規定する、相対向し水平移動する一対のリミッタと、該リミッタをその背面から押圧付勢する圧縮ばねからなるセンターピンX方向復帰機構およびY方向復帰機構をZ軸方向に二層に配設したセンターピン復帰機構と、
b.前記Xステージ、Yステージ、およびZステージの変位方向と前記定盤面との平行度を調整すべく前記マシンベース上の4本の支柱それぞれの上部に配設される、ベアリングユニットのフレームに螺合され手動またはモータによって回転駆動されて昇降するとともにその上部に逆円錐形のボール受け座を有する調整スクリューと、該調整スクリュー上に載置されるとともにXステージおよびYステージのガイドロッドの端部が水平方向に挿通されており、その上面から前記ベアリングユニットのフレームに収蔵されている圧縮ばねによって下方に付勢されているボールとからなるステージの定盤面に対する平行度調整機構と、
c.測定環境温度変化に起因する誤差を補正する演算処理手段
とを有してなる三次元測定装置。
【請求項3】
プローブユニットが、下部フレームに回転自在に水平な周方向上等間隔に固定、支承される少なくとも3箇のサポートボール上にその球体下部を支持されるとともに、押圧ロッドを介して圧縮ばねによって下方に付勢される回転半球中心Z軸方向にセンターピンおよびスタイラス(測定ヘッド)を同軸上に固定しさらに、前記回転半球の上水平面上にスタイラス(測定ヘッド)と一体的なタッチプレートを載置し、スタイラス先端の測定対象表面への接触によって前記回転半球のサポートボール上での傾動に対応してタッチプレートを傾斜せしめる如く構成し、タッチプレートの傾斜を接触式高精度変位センサで測定し、該接触式高精度変位センサの変位量が設定値となった時点でのスタイラス(測定ヘッド)先端部球体中心の三次元座標をX、Y、Zステージの移動量から計測可能に構成したものである請求項1または請求項2に記載の三次元測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate