説明

三相交流回転電機

【課題】三相交流回転電機において、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和する。
【解決手段】各相のコイル20,30,40をY結線としたステータ15において、各相コイル20,30,40との間に静電容量を持つように各相コイル20,30,40の表面近傍に各電極板27,37,47を取り付け、各電極板27,37,47と、各相の入力点25,35,45と中性点50のうちの各電極板27,37,47から遠い方の点と、を各バイパス線38,38,48で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流回転電機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする電気車両や、エンジンと共にモータを駆動源とするハイブリッド車両などの電動車両が多く用いられている。このような電動車両では、モータと発電機の双方の機能を併せ持つモータジェネレータを搭載し、車両の減速の際或いは坂路を下る際にモータジェネレータを発電機として機能させ、動力を電力として回収する電力回生を行い燃費の向上を図っているものがある。また、モータジェネレータの速度制御等を効率的に行うために、インバータによる周波数変換によってモータジェネレータを駆動しているものが多い。
【0003】
しかし、インバータはスイッチング素子のスイッチング動作によって周波数を変換するものであることから、スイッチング素子のオン、オフのタイミングでモータジェネレータの巻線間に通常の交流電流で駆動する際の電圧よりも高い急峻なサージ電圧が発生することがある。そして、急峻なサージ電圧により特定のコイルに電圧が集中し、隣接するコイルとの間の電位差が大きくなり、コイル間の絶縁が劣化する場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、モータの複数の巻線をそれぞれ二分割し、二分割された各巻線の各巻き始めと各巻き終わりとを接続するとともに各接続部の間にコンデンサを接続することによって、各巻線間の分担電圧を緩和し、巻線間の絶縁劣化を防止する方法が提案されている。また、特許文献1には、従来技術として、直列に接続された複数の巻線の各巻き始めと各巻き終わりとの間に各巻線と並列にコンデンサを接続する方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005―65363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来技術は、同一コイル内の分担電圧は緩和されるものの隣接するコイル群間の分担電圧の低減効果が少ないという問題があった。また、特許文献1に記載された従来技術は、複数のコイルを直列に接続した回転電機のコイルの接続部分にコンデンサを接続して各コイル間の分担電圧を緩和しようとするものであるので、コンデンサを接続することができる各コイルの接続部分の導体が必要であることから、コイルに接続部分のない集中巻きのコイルや各コイルの接続部分の導体を回転電機の外部に取り出せない場合には各コイル間の分担電圧を緩和できないという問題があった。また、巻き始めと巻き終わりの電線を取り出して溶接するという工程が必要なため、製造に手間がかかること及び、並列に巻かれたコイル全てにコンデンサを設置することが必要となるため、回転電機が大型となってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の三相交流回転電機は、各相のコイルをY結線としたステータを備える三相交流回転電機であって、ステータの各相コイルの表面近傍に取り付けられ、各相コイルとの間に静電容量を持つ各電極と、各電極と、各相の入力点または中性点または接地接続部または同相のコイルの1点と、を電気的に接続する各バイパス線と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の三相交流回転電機において、各バイパス線は、各電極と、各相の入力点と中性点のうちの各電極から遠い方の点と、を接続すること、としても好適である。
【0010】
本発明の三相交流回転電機において、各電極は各コイルの中性点側に取り付けられ、各バイパス線は、各電極と、各相の入力点と、を接続すること、としても好適であるし、各電極は各コイルの各入力点側に取り付けられ、各バイパス線は、各電極と中性点とを接続すること、としても好適である。
【0011】
本発明の三相交流回転電機において、各電極は、各誘電部材を介して各コイル表面近傍に取り付けられること、としても好適であるし、各誘電部材は、絶縁紙であること、としても好適であるし、各電極は、各入力点と中性点との間にあるスリーブ線を介して各コイル表面近傍に取り付けられること、としても好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の三相交流回転電機10は、ステータ15と、ステータ15が組み込まれるケーシングと、ステータ15の内部に配置されるロータとを備えている。図1においては、ケーシング、ロータの図示は省略してある。図1に示すステータ15は、円筒状で内径側にコイルが巻かれる複数のティースが設けられたステータコア71と、ステータコア71に巻かれたU相コイル20、V相コイル30、W相コイル40とを備えている。各相のコイル20,30,40はエナメルで絶縁被覆されたエナメル電線をステータコア71のティースに巻くことによって形成される。各相のコイル20,30,40はY結線となっているので、ステータ15は、U,V,Wの各相の電力が入力される各相の入力点25,35,45と、各相のコイル20,30,40が一点に接続された中性点50とを有している。各コイル20,30,40の入力点25,35,45の端部と各入力点25,35,45との間は外面を樹脂などの絶縁体で被覆されたスリーブ線29,39,49で接続され、各相のコイル20,30,40の中性点50側の各端部と中性点50との間も各スリーブ線51,52,53で接続されている。中性点50はコイルエンド部72にボルト等によって固定されている。
【0014】
U相コイル20のコイルエンド部72の外表面には、金属製の電極板27が取り付けられている。また、図1には示していないが、V相、W相の各コイル30,40のコイルエンド部72の外表面にもそれぞれ金属製の電極板37,47が取り付けられている。各電極板27,37,47には電線であるバイパス線28,38,48が接続され、各バイパス線28,38,48はそれぞれ各相の入力点25,35,45に接続されている。
【0015】
図2に示すように、各コイル20,30,40は銅線20a,30a,40aの周囲をエナメル20b,30b,40bで絶縁被覆されたエナメル線20c,30c,40cによって構成されている。エナメル線20c,30c,40cはステータコア71のティースに巻きつけられて、各相のコイル20,30,40を構成した後、その外面にワニス26,36,46が塗布され、ワニス26,36,46の外面には各電極板27,37,47が密着して取り付けられている。そして、各電極板27,37,47は各コイル20,30,40の各銅線20a,30a,40aとの間に静電容量Cを有するように構成されている。
【0016】
以上説明したステータ15の等価回路である図3を参照しながら、本実施形態の電気的な接続状態について説明する。先に図1を参照して説明したように、ステータ15はU,V,Wの各相のコイル20,30,40がY結線され、中性点50と各相の入力点25,35,45とを備えている。U相コイル20はU相の入力点25側から中性点50に向かって直列に接続されたU相第1コイル21からU相第4コイル24までの4つのコイルを備えている。同様にV相、W相の各相コイル30,40も、それぞれV相の入力点35から中性点50に向かって直列に接続されたV相第1コイル31からV相第4コイル34と、W相の入力点45から中性点50に向かって直列に接続されたW相第1コイル41からW相第4コイル44を備えている。
【0017】
U相第1コイル21からU相第4コイル24はそれぞれ静電容量Cの対地容量61を有しており、隣接する各コイル間には静電容量Cの浮遊容量62を有している。V相、W相の各第1コイル31,41から第4コイル34,44も同様に対地容量61と隣接する各コイル間の浮遊容量62とを有している。
【0018】
図3に示すように、直列に接続された各相の4つのコイルのうち、各相の中性点50側にある各相の第4コイル24,34,44の外面にはワニス26,36,46を介して各相の電極板27,37,47が取り付けられている。各電極板27,37,47に接続された各バイパス線28,38,48は、各電極板27,37,47から中性点50よりも遠い方にある各相の入力点25,35,45に接続されている。各電極板27,37,47と各コイル20,30,40との間の静電容量はCである。各電極板27,37,47と各第4コイル24,34,44との間の静電容量Cは対地容量61の静電容量C、浮遊容量62の静電容量Cの数倍から10倍の容量である。各電極板27,37,47は各コイル20,30,40との間に静電容量Cを持つように各コイル20,30,40の表面近傍に取り付けられていればよく、ワニス26,36,46と共にまたはワニス26,36,46の代わりに絶縁紙などの誘電部材を介して各コイル20,30,40に取り付けられていてもよい。
【0019】
以上のように構成された三相交流回転電機10の動作について説明する。ここではU相の入力点25に電圧が入力された場合について説明する。インバータのスイッチング素子のスイッチング動作の瞬間に、U相の入力点25にはインバータから急峻なサージ電圧が入力される。そして、急峻なサージ電圧に伴う高周波電流はU相第1コイル21に流れこんだ後、U相第1コイル21よりも高周波電流に対するインピーダンスの小さい対地容量61及び浮遊容量62に流れ込み、再び対地容量61を介してV相の第1コイル31、W相の第1コイル41に流れこもうとする。また、高周波電流は対地容量61からケーシングまたはステータコア71に流れ、コモンモード電流としてインバータ側に流れようとする。U相の入力点25に入力された高周波電流がU相第1コイル21から対地容量61或いは浮遊容量62に向かって電流Iとして流れた場合には、U相第1コイル21には高周波電流が集中し、U相第1コイル21の分担電圧Vが上昇し、隣接するU相第2コイル22との間に高い電位差を生じる。
【0020】
しかし、図3に示すように、本実施形態では、中性点50の側にあるU相第4コイル24の表面に対地容量61、浮遊容量62の数倍から10倍の静電容量Cを持つように電極板27が取り付けられ、電極板27とU相の入力点25とはバイパス線28によって接続されている。コンデンサは静電容量が大きいほど高周波数でのインピーダンスが小さく、電流が流れこみやすい特性を持っている。このため、U相の入力点25にかかった高周波電流は、対地容量61、浮遊容量62よりも静電容量が大きく、インピーダンスの小さい電極板27に向かって電流Iのように流れる。そして、電極板27に流れこんだ電流Iは、U相第4コイル24からスリーブ線51を通って中性点50に流れ込む。
【0021】
このように、本実施形態では、U相の入力点25からU相の入力点側にあるU相第1コイル21を通過して対地容量61或いは浮遊容量62に向かう高周波の電流Iを抑制し、U相の入力点25からバイパス線28を通して中性点50に流れ込む高周波の電流Iを大きくするように構成しているので、U相第1コイル21の分担電圧Vの上昇を緩和することができる。そして、U相第1コイル21の分担電圧Vの上昇を抑えることができるので、隣接するU相第2コイル22との間の電位差を緩和することができ、隣接コイル間の絶縁低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0022】
V相の入力点35、W相の入力点45にインバータのスイッチング素子による高周波電流が入力された場合も、U相の場合と同様に、V相、W相の入力点35,45からV相、W相の入力点35,45側にあるV相、W相第1コイル31,41を通過して対地容量61或いは浮遊容量62に向かう高周波の電流Iを抑制し、V相、W相の入力点35,45から各バイパス線38,48を通して中性点50に流れ込む高周波の電流Iを大きくするように構成しているので、V相、W相第1コイル31,41の分担電圧Vの上昇を緩和することができる。そして、V相、W相第1コイル31,41の分担電圧Vの上昇を抑えることができるので、隣接するV相、W相第2コイル32,42との間の電位差を緩和することができ、隣接コイル間の絶縁低下を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態では、各相のコイル20,30,40の表面近傍に金属製の電極板27,37,47を取り付けることによって各コイル20,30,40との間に対地容量61,浮遊容量62よりも大きい静電容量Cを持たせる構造としていることから、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和することができるという効果を奏する。更に、電極板27,37,47の大きさ、位置を変更することによって簡便に各相コイル20,30,40のターン間の分担電圧を緩和するようにすることができる。
【0024】
上記の本実施形態の説明においては、各相の第1コイル21,31,41の分担電圧が緩和されることについて説明したが、分担電圧の緩和は各相の入力点25,35,45に近い各相の第1コイル21,31,41のみではなく、各相の第1コイル21,31,41から各相の第3コイル23,33,43の間の連続コイルの分担電圧も緩和できる。図4に示すように、各相の第1コイル21,31,41から各相の第3コイル23,33,43の間の連続コイルの分担電圧V13は、各電極板27,37,47と各バイパス線28,38,48を設けない場合の変化を示す曲線aから、各電極板27,37,47と各バイパス線28,38,48を設けた場合の変化を示す曲線bのように低減される。これによって各相の第1コイル21,31,41から各相の第3コイル23,33,43の間の連続コイルと隣接する各相の第4コイル24,34,44との間の電位差を緩和することができ、隣接コイル間の絶縁低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0025】
以上説明した本実施形態では、各電極板27,37,47に接続されたバイパス線28,38,48を各相の入力点25,35,45に接続することとして説明したが、各バイパス線28,38,48を同相のコイルの一点に接続するように構成してもよい。この場合の効果は本実施形態と同様である。また、本実施形態では、各電極板27,37,47を各コイル20,30,40の表面にワニス26,36,46を介して取り付けることとして説明したが、ステータ15の各スリーブ線29,39,49が各相の第4コイル24,34,44を渡って配置されているような場合には、各電極板27,37,47を各スリーブ線29,39,49の表面に取り付けるように構成してもよい。
【0026】
図5及び図6を参照しながら、他の実施形態について説明する。図1から図4を参照して説明した部分には同様の符号を付して説明は省略する。図5に示すように本実施形態の三相交流回転電機10のステータ15は、各コイル20,30,40のコイルエンド部72の表面近傍に取り付けられた各電極板27,37,47に接続された各バイパス線28,38,48を中性点50に接続するように構成したものである。
【0027】
図6に示すように、本実施形態では、直列に接続された各相の4つのコイルのうち、各相の入力点25,35,45側にある各相の第1コイル21,31,41の外面にワニス26,36,46を介して各相の電極板27,37,47が取り付けられている。各電極板27,37,47に接続された各バイパス線28,38,48は各相の電極板27,37,47から各相の入力点25,35,45よりも遠い方にある中性点50に接続されている。
【0028】
以上のように構成された三相交流回転電機10の動作について説明する。本実施形態では、U相の入力点25の側にあるU相第1コイル21の表面に対地容量61、浮遊容量62の数倍から10倍の静電容量Cを持つように電極板27が取り付けられ、電極板27と中性点50とはバイパス線28によって接続されている。U相の入力点25に入力された高周波電流は、対地容量61、浮遊容量62よりも静電容量が大きく、インピーダンスの小さい電極板27からバイパス線28を通って中性点50に向かって電流Iのように流れこむ。一方、電極板27よりも静電容量の小さい対地容量61,浮遊容量62には電流がほとんど流れなくなるので電流Iは抑制される。
【0029】
このように、本実施形態では、U相の入力点25からU相の入力点25側にあるU相第1コイル21を通過して対地容量61或いは浮遊容量62に向かう高周波の電流Iを抑制し、U相のU相第1コイル21からバイパス線28を通して中性点50に流れ込む高周波の電流Iを大きくするように構成しているので、U相第1コイル21の分担電圧の上昇を緩和することができる。そして、隣接するU相第2コイル22との間の電位差を緩和することができるので、隣接コイル間の絶縁低下を抑制することができるという効果を奏する。また、先に説明した実施形態と同様、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和することができるという効果を奏する。
【0030】
以上説明した本実施形態では、各電極板27,37,47に接続されたバイパス線28,38,48を中性点50に接続することとして説明したが、各バイパス線28,38,48を同相のコイルの一点に接続するように構成してもよい。この場合の効果は本実施形態と同様である。また、本実施形態では、各電極板27,37,47を各コイル20,30,40の表面にワニス26,36,46を介して取り付けることとして説明したが、ステータ15の各スリーブ線29,39,49が各相の第1コイル21,31,41を渡って配置されているような場合には、各電極板27,37,47を各スリーブ線29,39,49の表面に取り付けるように構成してもよい。
【0031】
図7及び図8を参照しながら、他の実施形態について説明する。図1から図4を参照して説明した部分には同様の符号を付して説明は省略する。図7に示すように本実施形態の三相交流回転電機10のステータ15は、各コイル20,30,40のコイルエンド部72の表面近傍に取り付けられた各電極板27,37,47に接続された各バイパス線28,38,48を接地接続部であるステータコア71に接続するように構成したものである。
【0032】
図8に示すように、本実施形態では、直列に接続された各相の4つのコイルのうち、各相の入力点25,35,45と中性点50との中間にある各相の第2コイル22,32,42の外面にワニス26,36,46を介して各相の電極板27,37,47が取り付けられている。各電極板27,37,47に接続された各バイパス線28,38,48は接地接続部であるステータコア71に接続されている。
【0033】
以上のように構成された三相交流回転電機10の動作について説明する。インバータのスイッチング素子のスイッチング動作の瞬間に、U相の入力点25にはインバータから急峻なサージ電圧が入力される。そして、急峻なサージ電圧に伴う高周波電流はU相第1コイル21に流れこんだ後、U相第1コイル21よりも高周波電流に対するインピーダンスの小さい対地容量61及び浮遊容量62に流れ込み、再び対地容量61を介してV相第1コイル31、W相第1コイル41に流れこもうとする。また、高周波電流は対地容量61からケーシングまたはステータコア71に流れコモンモード電流としてインバータ側に流れようとする。U相の入力点25にかかった高周波の電流がU相第1コイル21から対地容量61或いは浮遊容量62に向かって電流Iとして流れた場合には、U相第1コイル21には高周波電流が集中し、U相第1コイル21の分担電圧が上昇し、隣接するU相第2コイル22との間に高い電位差を生じる。
【0034】
しかし、図8に示すように、本実施形態では、U相第2コイル22の表面に対地容量61、浮遊容量62の数倍から10倍の静電容量Cを持つように電極板27が取り付けられ、電極板27はステータコア71を介して接地接続されている。コンデンサは静電容量が大きいほど高周波数でのインピーダンスが小さく、電流が流れこみやすい特性を持っている。このため、U相の入力点25に入力された高周波電流は、対地容量61、浮遊容量62よりもインピーダンスの小さい電極板27から接地されているステータコア71に向かって電流Iのように流れる。そして、電極板27からステータコア71に流れこんだ電流Iは、対地容量61を介してU相第1コイル21、第3コイル23、第4コイル24に流れ、各コイル21,23,24から対地容量61を通して接地されているステータコア71に流れようとする電流Iを抑制する。
【0035】
このように、本実施形態では、U相第2コイル22からステータコア71に流れる電流Iによって、U相の入力点25からU相第1コイル21を通過して対地容量61或いは浮遊容量62に向かう高周波の電流Iを抑制しているので、U相第1コイル21の分担電圧Vの上昇を緩和することができる。そして、隣接する各2コイル間の電位差を緩和することができ、隣接コイル間の絶縁低下を抑制することができるという効果を奏する。また、先に説明した実施形態と同様、簡便な構造で隣接コイル間の分担電圧を緩和することができるという効果を奏する。本実施形態では、接地接続部をステータコア71として説明したが、ステータコア71ではなくケーシングに接続するように構成してもよい。
【0036】
本実施形態では、各電極板27,37,47を各コイル20,30,40の表面にワニス26,36,46を介して取り付けることとして説明したが、ステータ15の各スリーブ線29,39,49が各相の第2コイル22,32,42を渡って配置されているような場合には、各電極板27,37,47を各スリーブ線29,39,49の表面に取り付けるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態における三相交流回転電機のステータを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における三相交流回転電機のステータへの電極板の取付を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における三相交流回転電機のステータの等価回路図である。
【図4】本発明の実施形態における三相交流回転電機のステータの分担電圧の変化を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態における三相交流回転電機のステータを示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態における三相交流回転電機のステータの等価回路図である。
【図7】本発明の他の実施形態における三相交流回転電機のステータを示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態における三相交流回転電機のステータの等価回路図である。
【符号の説明】
【0038】
10 三相交流回転電機、15 ステータ、20,30,40 コイル、20a,30a,40a 銅線、20b,30b,40b エナメル、20c,30c,40c エナメル線、21,31,41 第1コイル、22,32,42 第2コイル、23,33,43 第3コイル、24,34,44 第4コイル、25,35,45 入力点、26,36,46 ワニス、27,37,47 電極板、28,38,48 バイパス線、29,39,49,51,52,53 スリーブ線、50 中性点、61 対地容量、62 浮遊容量、71 ステータコア、72 コイルエンド部、C,C,C, 静電容量、I,I,I,I 電流、V,V13 分担電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各相のコイルをY結線としたステータを備える三相交流回転電機であって、
ステータの各相コイルの表面近傍に取り付けられ、各相コイルとの間に静電容量を持つ各電極と、
各電極と、各相の入力点または中性点または接地接続部または同相のコイルの1点と、を電気的に接続する各バイパス線と、を有すること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の三相交流回転電機であって、
各バイパス線は、各電極と、各相の入力点と中性点のうちの各電極から遠い方の点と、を接続すること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の三相交流回転電機であって、
各電極は各コイルの中性点側に取り付けられ、
各バイパス線は、各電極と、各相の入力点と、を接続すること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の三相交流回転電機であって、
各電極は各コイルの各入力点側に取り付けられ、
各バイパス線は、各電極と中性点とを接続すること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の三相交流回転電機において、
各電極は、各誘電部材を介して各コイル表面近傍に取り付けられること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の三相交流回転電機において、
各誘電部材は、絶縁紙であること、
を特徴とする三相交流回転電機。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の三相交流回転電機において、
各電極は、各入力点と中性点との間にあるスリーブ線を介して各コイル表面近傍に取り付けられること、
を特徴とする三相交流回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−219234(P2009−219234A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59640(P2008−59640)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】