説明

下地コーティング方法及び装置並びに印刷物

印刷面を形成するために下地(7)上にコーティング剤(9)を塗布し、前記コーティング剤(9)を前記下地(7)に80%を超える固形分で接触させ、前記コーティング剤(9)を前記下地(7)に固着させる下地コーティング方法及び装置において、コーティングは、印刷機における印刷処理中に、下地(7)の入力と印刷物(1)の出力の間で、本来の情報(2,3,4)が印刷される前に、実行される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面を形成するために下地上にコーティング剤を塗布し、前記コーティング剤を前記下地に80%を超える固形分で接触させ、前記コーティング剤を前記下地に固着させる下地コーティング方法に関する。
【0002】
また、本発明は、印刷面を形成するためにコーティング剤を下地上に80%を超える固形分で塗布し、前記コーティング剤を下地に固着させる下地コーティング用装置に関する。
【0003】
また、本発明は、印刷されたピクチャ情報及び文字情報を含む印刷物であって、前記ピクチャ情報が印刷下地の表面領域全体の有意な割合、即ち10−90%を占め、当該印刷物が、少なくとも下地と、実質的な炭酸カルシウム濃度を含むコーティング層と、少なくとも1つの印刷インク層とを含む、印刷物に関する。
【0004】
本発明に関して、下地(substrate)とは、シートへと分割されてもよい、紙、板紙若しくは他の繊維ウェブを指す。紙ウェブの坪量は、典型的には、25から150g/mのオーダーであり、板紙ウェブは、これよりも大きい値を有する。低坪量を有する紙グレードは、例えば多様なメモ紙であり、平均的な坪量を有する紙グレードは、80g/mのオーダーの、例えば通常の印刷紙であり、重量のある紙グレードは、例えば多様なアート紙である。板紙の場合、用途が、必要な厚みと坪量を決め、非常に典型的な坪量は、梱包用板紙に関しては240g/mである。
【0005】
本発明に関して、印刷面とは、コーティング剤でコーティングされた下地を含意する。本発明の内容におけるピクチャ情報とは、写真及びその派生物、グラフ、印若しくは図等、残りの文字に対して差別化された強調された文字、及び、それに類する目立つ節を指す。本発明の内容における文字情報とは、単一の色で通常的に印刷されるか暗い影や色の影無しで印刷される、通常の文字、ライン、正方形パターン及びその類のパターンのような、他の印刷情報を指す。本発明の内容における印刷下地とは、一般的に、文字のような一般情報がその上に印刷されることができる表面であり、コーティングされないことやコーティングされることができる表面を指す。
【背景技術】
【0006】
従来では、印刷面は、コーティング装置において、下地、即ち紙若しくは板紙ウェブを、コーティング剤、即ちコーティングペーストで、コーティングすることにより生成されてきた。このコーティング処理は、製紙装置と協調して、オンライン処理で若しくは別のオフライン処理で実行されてきた。オンライン処理では、製紙装置で作成された連続するウェブは、コーティング装置に直接的に走行し、ウェブは、コーティング処理ステップ後にのみ巻き取られる。オフラインコーティングでは、ウェブは、製紙装置の後段で巻き取られ、当該ウェブは、新たなロールを、先行するロールから各ウェブが巻き出される後に継ぎ合わせることにより、別のコーティング装置においてコーティングされる。本来のコーティングに対して一定範囲の異なる選択肢、即ちブレードコータ、サイズプレスコータ、スプレイコータ、カーテンコータ等が利用可能である。これらのコータの全てに対して共通の特徴は、乾燥したウェブの幅全体に亘って液体のコーティングペーストを塗布することであり、赤外線照射器やブロー乾燥機やシリンダドライヤのようなドライヤによるコーティングペースト及び部分的に濡れたウェブの乾燥が後続することである。コーティングペーストは、典型的には、40から60%のオーダーの固形分を有する。典型的な固形物は、例えばカオリンや炭酸カルシウムを含む。十分な回数コーティング処理を繰り返すことによって、原理上、印刷された画像をきれいに再現する印刷面が達成される。かかる組み合わせは、例えば、先ずサイズプレスコータにより次いでブレードコータで両面のコーティングを行うウェブの両面のコーティングを含む。実際には、これは、ウェブが4回濡らされ乾燥されることを意味する。コーティングは、通常的には、適切な光沢及び平滑性を有する印刷面を達成するためにカレンダ処理が後続する。このとき、ウェブは、“マシーンロール”として形成され、次いで、印刷機に適合したより小さい幅及びウェブ長さを持つロールへと巻き取り機において分割される。
【0007】
上述の印刷面の生成処理は、不安定である。製造処理の効率の観点から、製造が可能な限り長く不変で継続されることが効果的であろう。実際には、印刷面を購入する顧客は、しばしば、例えば多様な坪量及びコーティング剤厚さの製品を望み、これは、製造処理のシフト、即ちグレード変化を必要とする。稼動パラメータのかかる変更は、生産品質を悪化させる摂動を引き起こす。製品品質は、生産処理がシフト後しばらく稼動されるまで復活することは無いだろう。かかる調整の間に製造される製品は、たいていの場合、リサイクルされる、即ち繊維形態に再度パルプ化される。
【0008】
特許文献1は、乾燥した処理剤であって、少なくとも上昇した温度で状態を変えることができるバインダを含む処理剤を用いて、該処理剤によりウェブを処理するために、紙若しくは板紙の少なくとも片面をコーティングし、次いで、バインダが変形可能な状態になるようにこれらの温度を上昇させ、その後、温度を再び下降させて、バインダを処理剤及びウェブに結合させる方法を開示する。処理剤は、電荷によりウェブの表面上に付与され、上昇した温度は、例えば熱ロールにより生成される。
【0009】
特許文献2には、粉末の粒子が一時的な下地上に配置され、そこから離脱されて本来の下地へと転写される方法が開示される。この発明の好ましい実施例では、一時的な下地は、無限ベルトであり、そこから、粉末の粒子は、電気的力により、離脱されて本来の下地へと転写される。
【0010】
特許文献3は、乾燥コーティング用の多様な選択的なコーティング剤及びその処理方法を開示する。
【特許文献1】WO02/01001A1
【特許文献2】WO03/076719A1
【特許文献3】WO03/076717A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
印刷機においては、印刷インクは、用途に適した高い印刷品質を製造する目的で印刷面に転写される。新聞紙の印刷は、長時間の保管やある程度の頻度での鑑賞が予定される絵本や雑誌と同一の高い印刷品質を必要としない。当然ながら、新聞紙は、より多色での印刷への傾向を示しており、これは、読者及び公庫蔵を購入するものにとってより魅力的となる製品を達成するからである。多様な広告の印刷物において、非常に高い印刷品質を生成する印刷技術を用いて、できるだけ自然に且つ人目を引くように広告の印刷物が印刷ピクチャにおいて再現されるようにすることは効果的である。他方、印刷物は、また、他の価値をもメッセージとして送り、それは、常に、主観的なイメージを有する。リサイクルされた僅かに漂白された紙は、しばしば、環境にやさしく且つ経済的なアプローチというサインである一方、何回も再コーティングされた紙は、環境に対して考慮が足りない無駄な態度として受け止められる場合がある。かかる部分的に主観的な問題は、依然として、印刷物にメッセージが目標となる公衆に如何にうまく伝達されているかの観点から重要である。印刷面の特性は、非常に重要であり、印刷品質の観点から重要である。印刷面のかかる特性は、例えば平滑性、光沢、色、不透明度、多孔度、インク吸収性、色再現性、表面強度等である。勿論、正確に再現された写真や他のピクチャの印刷に対する印刷面や、一般的にコンパクトな表面、即ち連続的な被覆印刷インク層を生成することは、文字に対する下地としてしか機能しない表面よりも困難である。文字の印刷の観点からは、主要な特徴の1つは、整然とした印刷品質を維持し、且つ、汚い印象を与えうる制御不能な印刷文字の下地への吸収を防止するために、インク吸収性を制御することである。それにも拘らず、たいていの人々は、実際に、印刷されるピクチャを非常に自然な形態で再現する艶のある表面上よりもマットな表面上の文字を読むことの方が快適であることがわかる。今日では、多数の異なる印刷方法があり、これらは、とりわけ、グラビア印刷、オフセット印刷、フレスコ印刷、及び、インクジェット印刷のような、異なるデジタル印刷方法の現在の流行を含む。
【0012】
たいていの印刷方法では、カラーのピクチャは、4色印刷により生成され、この際、3色、即ちシアン(青みがかった緑)、マジェンタ(青みがかった赤)及び黄色は、カラーのピクチャを生成するために用いられ、黒は背景色として用いられる。例えばハーフトーンドットサイズ及び密度を変化させることによる、これらの適切な組み合わせにより、略無限の数の異なる色が生成される。ピクチャ品質の観点から、これらのハーフトーンドットを互いに正確に位置合わせすることは最重要である。印刷機は、通常、一の印刷ユニットが単一のカラーを生成して、これらの異なる色を連続的に印刷する。ハーフトーンドットの相互の位置合わせは、レジスタプリンティングと呼ばれ、満足できる位置合わせを補償するために、“位置合わせ印”が、しばしば、印刷物の予約に印刷され、満足できる位置合わせの容易な検出を可能とする。
【0013】
本発明の目的は、印刷面を製造するより効率的で経済的な態様を達成し、ピクチャの形態で正確に印刷される情報を再現できる一方、印刷される文字情報に対して経済的な印刷下地を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、従前よりも少ないリソース、即ち従前よりも少ない材料及び低いエネルギコストを用いて、高い印刷品質を提供するように印刷面の材料効率を改善することである。また、本発明の目的は、印刷物の製造中のピクチャ情報の印刷品質や再現精度を妥協することなく適切なイメージ価値を有する印刷物の製造を可能とすることである。
【0015】
また、本発明の目的は、印刷面若しくは印刷される下地の製造者が製造されるグレードの数を低減しえ、それに伴い、グレード変更が減少することからより少ない処理制御しか必要とせずに、一の特定のグレードを製造するのに用いる時間を最大限延長しえる、即ち、製造ロットを拡大しえる状況を可能とすることである。これは、グレード変更による製造損失が低減されるので製造処理の効率を高める。
【0016】
また、本発明の目的は、高品質の印刷面を達成するのに必要とされる装置を簡易化し低減し、それに伴い、印刷面を提供するための全体としての投資コストを低減することである。その他の目的は、製紙装置及びコーティング装置で必要とされる化学物質を減らし、これらの処理による環境的な負荷を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の方法は、コーティングが、印刷機における印刷処理中に、下地の入力と印刷物の出力の間で、実際の情報の印刷前に、実行されることを特徴とする。かかる態様で実行されることにより、印刷面は、相当な効率及び経済性で製造され、ピクチャ情報を正確に再現できる一方で、文字情報に対して経済的な印刷下地を提供する。
【0018】
本発明の好ましい実施例では、印刷面は、ピクチャ情報が印刷される下地の場所のみで形成される。かくして形成される下地は、不必要にコーティングされず、コーティングが本当に必要な場所だけ、即ちピクチャ情報の下方だけがコーティングされる。
【0019】
第2の好ましい実施例では、コーティングは、印刷されるべき情報の少なくとも一部と同一の位置合わせで実行される。即ち、ピクチャ若しくは文字情報の少なくとも一部は、必要ならば、コーティングされない下地上に印刷されることができ、従って、ピクチャ若しくは文字情報の少なくとも一部は、高いピクチャ品質を可能とするコーティングされた面、即ち印刷面上に印刷されることができる。これは、製品イメージが変化される印刷物の容易な製造を可能としつつ、ピクチャ情報のスマートな外観及び良好な再現精度を達成する。
【0020】
本発明の装置は、情報印刷装置と同一の処理工程に組み込まれ、情報印刷装置よりも前記下地の移動方向で前段に配置され、コーティングされるべき印刷面及び印刷されるべき情報を互いに位置合わせできる制御ユニットと、該位置合わせを実行する手段とを含むことを特徴とする。
【0021】
好ましい実施例では、装置は、前記印刷面の一部、前記印刷面の全体、印刷下地の一部、前記印刷下地の全体若しくは下地の全体を、コーティング及び/又は選択的に形成する手段を含む。
【0022】
本発明の印刷物は、コーティング層の表面領域が、ピクチャ情報の表面領域と略同一であり、前記コーティング層は、前記ピクチャ情報を印刷するために用いられる印刷インク層の下方に主に位置するように、前記下地の表面と平行に位置付けられることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【0024】
図1は、雑誌のような、印刷物1の典型的なページを示す。印刷物1は、印刷されたピクチャ情報2,3、及び印刷された文字情報4を含む。印刷面5は、ピクチャに位置合わせされて形成されており、即ち、実質的にピクチャの位置だけに形成される。実際のところ、この位置合わせコーティングの精度は、実際のピクチャを印刷する精度よりも僅かに低い精度でなされてもよいが、可視的にもっともスマートな結果は、コーティングが実際の印刷と略同一の精度で実行された場合に得られ、コーティングされた印刷面は、インターフェース周辺の如何なる余白や枠を形成しない。第2の選択肢として、ピクチャのフォーマットよりも僅かに小さいフォーマットを備える印刷面を残すことができるが、この場合も同様、ピクチャ品質は、中央よりも境界領域で悪くなり、ピクチャは、おそらく、可視的な検査で正確に見えないだろう。これらは、効果及びスタイルに関する印刷物の外観を変化させる非常に有用な手段となりうる。
【0025】
望まれる場合、下地7の全体を自然にコーティングすることもでき、或いは、少なくとも印刷下地として用いられる範囲でコーティングすることもできる。実際には、この選択肢は、抄紙機若しくはコーティング装置における従来的なコーティングと同等であるが、乾燥とグレードシフトの低減という形態で節約を達成する。
【0026】
図1に示す印刷物1は、例えばリサイクルされた繊維を豊富に含んだ僅かに漂白された下地7であって、その印刷下地6が、印刷されるピクチャ情報の下方に位置することになる印刷面5の位置だけコーティングされた、下地7上に形成されることができる。かかるアプリケーションは、印刷物1の一般的な局面に比べて、印刷されたピクチャ情報2,3に対して驚くほどのコントラスト、特にピクチャの解像度及び印刷品質を達成し、控えめな印象を与えることができ、経済的、無駄防止、非常に環境にやさしいアプローチのメッセージを送る。この場合、印刷面は、例えばコーティング剤が固着され熱ロールで研磨された後に6μmの厚さを有し、炭酸カルシウム及びラテックスを主成分とするコーティング剤層から形成されてもよい。文字情報4の下方の印刷下地6は、コーティングされないままでよく、従って幾分普通の外観を有する。文字情報を印刷するのに用いられる印刷インク8は、文字が整然として鮮鋭な境界で再現されるように、下地7の特性に応じて選択される。
【0027】
好ましい実施例では、コーティングは、実際のピクチャ印刷と最大限同一の位置合わせ精度で実行される。ピクチャを形成するハーフトーンドット及びコーティングは、かくして、互いに高い精度で位置合わせされることができ、従って、非常に鮮鋭な境界で高品質な印刷ピクチャを達成する。
【0028】
他の選択的な実施例は、文字情報だけが印刷されるか印刷されないままの印刷下地がコーティングされない方法や、コーティングが、印刷下地若しくは下地の幅と部分的若しくは全体的に同一の幅を持つ印刷下地を形成するために下地の表面上に実行される方法を含む。この手順によると、下地は、各場合で必要に応じて自由に選択される態様でコーティングされるか若しくはコーティングされないことができる。
【0029】
図示の目的のため、図2は、本発明の装置及び印刷機10の一部を示す。下地7は、ウェブ状の形状を有し、その移動方向は矢印で示されている。下地の移動方向での1つ目は、コーティング剤を塗布する装置16である。コーティング剤9の塗布は、検出器31からデータを受け取る制御及び位置合わせシステム30により制御される。コーティング剤を固着させる装置17は、コーティング剤を塗布する装置16と同一の装置に接続される態様で示されている。コーティング剤を塗布する装置16は、カウンタロールと協働してニップNを形成する支持ベース20を含む。乾燥した粉末状のコーティング剤9は、容器91に収容される。コーティングされた表面を仕上げる装置18は、2つのロールとその間に形成されるニップNとからなる。印刷機10は、それぞれ、各色8、即ち黄、シアン、マジェンタ及びブラック用の4つの印刷ユニット11,12,13,14を有する。ガイドロール19は、ウェブの移動をガイドする役割を果たす。
【0030】
図2に示すように、本発明の方法は、次の動作を有する。ウェブ状の下地7は、矢印で示すように、印刷機10を通って走行する。下地17は、必要な場所にてコーティングユニット25によりコーティングすることにより印刷面5として形成される。これらの必要な場所は、特には、続くステージにてピクチャ情報が印刷されることになる場所である。コーティング剤を塗布する装置16は、乾燥した粉末状のコーティング剤9を下地上に拡散する。実際には、塗布は、印刷インクが印刷されるのと同様の態様で実行され、他言すると、コーティング剤9は、先ず、支持ベース(支持基板)20として機能する表面上に拡散され、そから、下地7上に転写される。これは、支持ベース20の化学的及び電気的特性の利用を可能とし、かかる特性は、後段で印刷されるピクチャに正確に位置合わせされたコーティング剤9の塗布を可能とする。ピクチャ下方の印刷面のみがコーティングされる場合、本処理のこのステージにて、乾燥したコーティング剤が、支持ベースの表面に対して高い精度で位置合わせされることが重要である。これは、実際には円筒状若しくはベルト状であり塗布装置16として機能する支持ベース20の表面の化学的な準備により印刷機の態様で実行されることができ、この場合、コーティング剤9は、下地7と接触する前に、表面の所望の場所だけに、一時的に付着し、コーティング剤が不要な場所では支持ベース20の表面がコーティング剤を拒絶する。かかる支持ベース20の化学的な準備は、例えばインクジェットプリンタの種の解決策のような、適切な手段により例えば別の準備装置において実行されることができる。必要ならば、この準備装置は、コーティングユニット25に関連せしめることもできる。これらの異なる選択肢は、別の装置が多数の異なる支持ベースの準備に対して利用可能であるという長所を有する一方、コーティングユニットにおける準備装置は、シリンダ若しくは塗布装置16の類を取り外すことなく新たな表面の形成を可能とする。選択的に、コーティング剤の塗布は、従来的な写真複写の解決策、いわゆるゼロックス法を用いて実行されることもでき、これも、コーティング剤の転写のために支持ベースを用いる。この方法では、支持ベース20の表面は、初期的に静電処理を受け、次いで、コーティングされるべき対象のピクチャは、支持ベース20の表面上に例えば投射若しくはレーザーにより形成され、これにより、電荷の一部は放電され、一部は維持され、その後、コーティング剤9は、支持ベース20の表面上に拡散され、支持ベース20の表面における依然として帯電された場所だけに付着し、次いで、コーティング剤及び下地は、同一のニップNを通過し、コーティング剤パターンが、支持ベース20から下地の表面へと転写され、最終的には、コーティング剤の固着が、コーティング剤を固着させる装置17若しくはコーティングされた表面を仕上げる装置18を用いた加熱により準備される。イオンブラスタイプの方法も、支持ベースへのコーティング剤の転写のために用いられてよく、これは、下地7の全表面をコーティングしたい場合に潜在的に非常に効果的な方法である。
【0031】
第2の選択肢は、下地の表面内に直接的に電気的改変を生成し、下地の正確な位置でコーティング剤が位置合わせされることを可能とすることである。この方法は、第1の方法よりも実行が僅かに困難である、というのは、接着特性は、下地の特性に大きく依存し、下地は、印刷する家庭の顧客に応じて変化するからである。即ち、標準的な処理を提供することが、上述の支持ベースを用いる実施例に比べて幾分困難である。
【0032】
コーティングが塗布された後、コーティング剤は、コーティング剤を固着させる装置17により固着される。図2は、コーティング剤を固着させる装置17は、コーティング剤を塗布する装置と同一の装置に接続されている。即ち、コーティング剤は、下地7に、支持ベース20として機能する熱ロールとそのカウンタロール21とにより形成されるニップの圧の下で固着される。一般的には、コーティング剤は、熱により下地に固着され、熱は、加熱されたシリンダとの接触により、放射熱による非接触により、若しくは、他の任意の熱生成方法により生成され、熱は、下地にコーティングを固着させる以外の印刷面の他の特性に関して作用するのに有用である。
【0033】
コーティング剤を塗布し固着させる装置16,17の後段に、コーティングされた表面を仕上げる装置が、ウェブの移動方向で示されており、この装置は、ここでは、ニップを形成する対のロールとしても示されている。ニップを通過するとき、印刷面は、熱及び圧力の下で僅かに変形され、これは、実際には、印刷面が僅かにカレンダ処理を受け、印刷面の平滑度が増加することを意味する。これには、実際の印刷ステップが後続する。ウェブは、シリンダ15の表面に沿って走行し、各印刷ユニット11,12,13,14は、各特定の印刷インク8を、印刷面若しくは印刷下地上に印刷する。印刷ユニットの位置合わせは、好ましくは、検出器31により監視され、必要な場合には、制御及び調整機構30は、例えばロールの回転速度の瞬時的な変化や軸方向の位置の修正により、制御動作の修正を実行する。動作の実施例では、検出器31は、例えば印刷ロールの回転に対応するサンプリング周波数で位置合わせ印を監視し、位置合わせ印の可視的な検査を可能とする。続くステップは、必要ならば、ピクチャ品質を高めるだけでなく乾燥からピクチャを保護するグロスのような、ピクチャ上に艶のある表面を付与する。これは、ニスや任意の他のクリアな透明コーティング剤、若しくは、艶のある表面を達成するための任意の他の既知の手段により実現される。
【0034】
コーティングは、当然ながら、下地の片面若しくは両面に付与されることができる。コーティングユニット25は、連続的に若しくは同一のユニット内に配置されることができ、それぞれの場合において必要ならば、下地の両面は、同一の処理でコーティングされる。必要ならば、これらの処理は、下地全体上の事前コーティングの種のようなコーティングを含む一のステップと、印刷されるピクチャに位置合わせされたコーティングを含む第2のステップを備える。望ましい場合には、これは、僅かに異なるタイプのコーティングユニットを用いて実行されることができ、例えば事前コーティングはイオンブラストタイプの帯電された粒子の転写に基づく手順を用い、位置合わせコーティングは、レーザータイプの位置合わせ方法を用いる。
【0035】
満足のいく結果を達成するために、使用される材料は、適切な相互関係でガラス遷移温度Tgxを備えるものが選択される。下地7が、コーティング剤9により処理され、コーティングが下地7への熱により固着されるとき、コーティング剤9のガラス遷移温度Tgcは、良好な付着と熱の所望の作用を達成するために、下地7のガラス遷移温度Tgsよりも低くあるべきである。従って、印刷インク8のガラス遷移温度Tgpは、コーティング9のガラス遷移温度Tgcよりも低くあるべきである。他言すると、温度は、Tgp<Tgc<Tgsの不等式となる。このような態様で選択されると、熱は、常に、正しい層に所望の作用を有し、下層に悪影響を与えることがない。使用されるコーティング剤の粒子サイズも、好ましくは、下地の孔サイズよりも小さく、下地よりも平滑な印刷面をもたらす。
【符号の説明】
【0036】
1 印刷物
2 印刷されたピクチャ情報
3 印刷されたピクチャ情報
4 印刷された文字情報
5 印刷面
6 印刷下地
7 下地
8 印刷インク
9 コーティング剤
91 リザーバ
10 印刷機
11 印刷ユニット、黄
12 印刷ユニット、シアン
13 印刷ユニット、マジェンタ
14 印刷ユニット、黒
15 シリンダ
16 コーティング剤塗布装置
17 コーティング剤固着装置
18 コーティング表面仕上げ装置
19 ガイドロール
20 支持ベース(支持基板)
21 カウンタロール
25 コーティングユニット
30 制御及び調整システム
31 検出器
N ニップ
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例により製造される印刷物の簡略された例を示す図である。
【図2】本発明の装置の原理図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面を形成するために下地(7)上にコーティング剤(9)を塗布し、前記コーティング剤(9)を前記下地(7)に80%を超える固形分で接触させ、前記コーティング剤(9)を前記下地(7)に固着させる下地コーティング方法であって、
コーティングは、印刷機における印刷処理中に、下地(7)の入力と印刷物(1)の出力の間で、本来の情報(2,3,4)が印刷される前に、実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記印刷面(5)は、下地(7)におけるピクチャ情報(2,3)が印刷されることになる場所だけに形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティングは、印刷されるべき前記情報(2,3,4)の少なくとも一部に対して位置合わせして実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コーティングは、高くともピクチャ情報(2,3)の実際の印刷時と同じ位置合わせ精度で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
文字情報(4)のみが印刷されるか若しくは印刷されない印刷下地(6)はコーティングしない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コーティングは、印刷下地(6)若しくは下地(7)と同一の幅を部分的若しくは全体的に有する印刷面(5)を形成するために下地(7)の表面上で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング剤(9)は、熱により下地に固着され、該熱は、熱シリンダによる接触式で、放射熱による非接触式で、若しくは、他の任意の熱生成手段により生成され、該熱は、下地(7)への前記コーティング剤(9)の接着性以外の他の印刷面(5)の特性に影響を及ぼすように作用する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
使用される印刷インク(8)のガラス遷移温度(Tgp)は、使用される一以上のコーティング剤(9)のガラス遷移温度(Tgc)よりも低く、該ガラス遷移温度(Tgc)は、前記下地(7)のガラス遷移温度(Tgs)よりも低く、不等式で表すと、Tgp<Tgc<Tgsである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記コーティング剤(9)は、前記下地(7)の孔サイズよりも小さい粒子サイズを有し、その結果として、前記下地(7)よりも平滑な印刷面(5)をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1のステップで、前記下地(7)全体の予備コーティングが実行され、第2のステップで、コーティングが、印刷されるべきピクチャ情報(2,3)に対して位置合わせして実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コーティングは、前記下地(7)の片面若しくは両面上に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コーティング及び印刷後、少なくともピクチャ情報(2,3)が、ニス若しくはその類の透明層のような、ピクチャの品質を高める若しくはピクチャの品質の保護に寄与するコーティング剤でコーティングされることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング剤は、移動するベース上に付与され、該ベースから前記下地へ転写される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
印刷面を形成するためにコーティング剤(9)を下地(7)上に80%を超える固形分で塗布し、前記コーティング剤(9)を前記下地(7)に固着させる下地コーティング用装置であって、
情報印刷装置と同一の処理に組み込まれ、情報印刷装置よりも前記下地の移動方向で前段に配置され、コーティングされるべき印刷面(5)及び印刷されるべき情報を互いに位置合わせできる制御ユニット(30)と、該位置合わせを実行する手段(30)とを含むことを特徴とする、装置。
【請求項15】
前記印刷面(5)の一部、前記印刷面(5)の全体、印刷下地(6)の一部、前記印刷下地(6)の全体若しくは下地(7)の全体を、コーティング及び/又は選択的に形成する手段を少なくとも含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記コーティングされ及び印刷された表面を、ニス若しくはその類の透明層のような、ピクチャの品質を高める若しくはピクチャの品質の保護に寄与するコーティング剤で仕上げる装置を更に含む、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
印刷されたピクチャ情報(2,3)及び文字情報(4)を含む印刷物であって、前記ピクチャ情報(2,3)が印刷下地(6)の表面領域全体の有意な割合、即ち10−90%を占め、当該印刷物が、少なくとも下地(7)と、実質的な炭酸カルシウム濃度を含むコーティング層(9)と、少なくとも1つの印刷インク層(8)とを含む、印刷物において、
前記コーティング層(9)の表面領域は、前記ピクチャ情報(2,3)の表面領域と略同一であり、前記コーティング層(9)は、前記ピクチャ情報(2,3)を印刷するために用いられる前記印刷インク層(8)の下方に主に位置するように、前記下地の表面と平行に位置付けられることを特徴とする、印刷物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−504949(P2008−504949A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518627(P2007−518627)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000307
【国際公開番号】WO2006/003242
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】