説明

下枠の排水構造および建具

【課題】下枠の腐食を防止して耐久性を向上させることができる下枠の排水構造および建具を提供すること。
【解決手段】モルタル8を通った雨水等が下枠5の中空部17に入ることなく、第1溝部13および集水溝部16から第2溝部19に導かれて排水されるので、アルマイト処理などが困難な中空部17にアルカリ性の水が浸入するのが防止でき、下枠5の腐食を防止して耐久性を向上させることができる。そして、屋内側の結露水は、第1連通孔25から中空部17を通って第2排水孔24から排水されるので、雨水等とは別経路で結露水を排水することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠の排水構造および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属枠で囲まれた内部に複数のガラスブロックを並設して構成されるガラスブロックパネルが知られており、その排水構造として、下枠に排水孔を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたガラスブロックパネルでは、全体中空状の下枠において、その上面にガラスブロックを支持する溝部が形成され、この溝部には水抜き孔が設けられ、溝部に入った雨水等が排水孔から下枠中空部に流れ落ちるようになっている。さらに、下枠の室外側の側面にも排水孔が設けられ、この排水孔を介して下枠中空部の水が室外側に排水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3682787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の排水構造では、溝部に入った雨水等が下枠中空部に流れ落ちるようになっているため、中空部の内面が腐食する可能性がある。すなわち、金属枠において、中空部の内面には、防蝕加工が施しにくく、このような中空部に雨水等が浸入すると金属枠が腐食する可能性がある。特に、ガラスブロックをモルタルで固定するガラスブロックパネルにおいて、モルタルを通過して下枠の溝部に浸入する雨水等は、モルタルのセメント質によってアルカリ性となることから、金属枠を腐食させやすいため、枠材の耐久性の点で問題である。
【0005】
本発明の目的は、下枠の腐食を防止して耐久性を向上させることができる下枠の排水構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の下枠の排水構造は、一方の空間と他方の空間とを区画する面状体を支持する下枠の排水構造であって、前記下枠は、上方に開口して前記面状体を支持する第1溝部と、この第1溝部よりも下側にて前記一方の空間に開口する第2溝部と、これら第1および第2の溝部を仕切る仕切り面部とを備え、前記仕切り面部には、前記第1溝部と第2溝部とを連通させる排水孔が形成され、前記第1溝部に入った水が前記排水孔を介して前記第2溝部に導かれて前記一方の空間側に排水されることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、第1溝部に入った水を排水孔から第2溝部に導いて排水することで、下枠に中空部があったとしても中空部を介さずに排水することができる。ここで、それぞれ外向きに開口した第1溝部および第2溝部には、防蝕加工(下枠がアルミ合金製であれば、アルマイト処理など)を施すことができるので、アルカリ性の水に対しても腐食しにくくなっている。従って、面状体としてモルタルによって互いに連結されるガラスブロックを用いた場合や、セメント質を含むコンクリート板(PCa版)やセメント成形板、ALC板等を用いた場合であっても、下枠の腐食を防止して耐久性を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の下枠の排水構造では、前記下枠は、前記第1溝部よりも下側にて閉断面となる中空部を有して形成され、前記中空部は、第1連通孔を介して前記他方の空間と連通されるとともに、第2連通孔を介して前記第2溝部と連通され、前記他方の空間側の水が前記第1連通孔を介して前記中空部に導かれるとともに、前記第2連通孔を介して前記第2溝部に導かれて前記一方の空間側に排水されることが好ましい。
このような構成によれば、下枠が中空部を有する場合に、他方の空間側の水を第1連通孔から中空部に通して第2連通孔から第2溝部に導いて排水することで、前記第1溝部の水とは別経路で他方の空間側の水を排水することができる。このように別経路としたことで、第1溝部の水が下枠の中空部に浸入するのを防止しつつ、他方の空間(例えば、屋内空間)の結露水などを一方の空間(例えば、屋外空間)に排水することができる。ここで、結露水などは、アルカリ性となる可能性が低いため、中空部内を通しても腐食性の点で問題となることがなく、下枠の耐久性も確保することができる。
【0009】
さらに、本発明の下枠の排水構造では、前記排水孔と前記第2連通孔とは、前記下枠の長手方向に沿って互いに位置ずれして設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、排水孔と第2連通孔とが位置ずれしていることで、排水孔から第2溝部に導かれた水が第2連通孔を介して中空部に逆流することが防止でき、下枠の腐食をより一層確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明の下枠の排水構造では、前記第2溝部は、前記下枠における前記一方の空間側の見付け面よりも他方側に延びる上面部と、この上面部の他方側に連続して立ち下がる立下り面部と、この立下り面部の下部に連続して一方側に延びる底面部とを有して形成され、前記排水孔が前記上面部に形成されるとともに、前記第2連通孔が前記立下り面部に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、見付け面から他方に向かって凹んだ形状で第2溝部を形成し、その奥まった位置である上面部および立下り面部に排水孔および第2連通孔を設けることで、これらの排水孔および第2連通孔が目立たなくできる。さらに、第2溝部の奥まった位置に排水孔および第2連通孔を設けることで、風雨による雨水等の吹き込みが防止でき、他方の空間側への水の逆流を防止することができる。
【0011】
また、本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を四周枠組みした枠体と、この枠体の内側に支持される面状体とを備え、前記下枠は、前記いずれかの排水構造を有して構成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、前述の排水構造と同様に、下枠の腐食が防止でき、建具の耐久性を向上させることができる。
この際、本発明の建具では、前記面状体は、上下左右に並設される複数のブロック材で構成され、これらのブロック材同士およびブロック材と枠体とは、それぞれモルタルを介して互いに連結されていてもよい。
このようにモルタルを介して互いに連結されるブロック材によって面状体を構成した場合であっても、モルタルを通ったアルカリ性の水が下枠の中空部に入らないことから、下枠の耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明の下枠の排水構造および建具によれば、面状体を支持する第1溝部の水を排水孔から第2溝部に導いて排水することで、面状体の構成に関わらずに下枠の腐食を防止して耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す正面図である。
【図2】前記建具を示す縦断面図である。
【図3】前記建具の一部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の建具としてのガラスブロックパネル1は、一方側の空間としての屋外空間と、他方側の空間としての屋内空間とを仕切る採光窓であって、建物躯体等に固定される枠体2と、この枠体2の内側に支持されて上下左右に並設される複数のブロック材であるガラスブロック3とを備えて構成されている。枠体2は、それぞれアルミ形材製の枠材である上枠4、下枠5および左右の縦枠6を四周枠組みして構成され、これらの内側に複数のガラスブロック3からなる面状体7が支持されている。複数のガラスブロック3は、互いにモルタル8および図示しない鉄筋を介して連結されるとともに、枠体2との間にシール材9が介挿され、これにより屋内外の空間を気密かつ水密に区画できるように構成されている。
【0015】
下枠5は、屋内側に面した屋内側見付け面部11と、屋外側に面した屋外側見付け面部12と、これら屋内外の見付け面部11,12間にて上方に開口する第1溝部13と、第1溝部13の底面を構成する第1底面部14および突出片部15と、これらの第1底面部14および突出片部15よりも下側にて上方に開口する集水溝部16と、第1溝部13の下側にて閉断面となる中空部17およびその底面である中空底面部18と、集水溝部16よりも下方かつ中空部17よりも屋外側にて屋外空間に開口する第2溝部19とを有して形成されている。第1溝部13には、長尺板状で下面に突条を有した支持板材5Aが第1底面部14および突出片部15に載置されるとともに、この支持板材5Aの上側には、下方に開口した断面コ字状の支持金物5Bが設けられ、これらの支持板材5Aおよび支持金物5Bの上側にモルタル8を介してガラスブロック3が支持されるようになっている。
【0016】
第2溝部19は、屋外側見付け面部12から屋内側に延びる上面部であり当該第2溝部19と集水溝部16および第1溝部13とを仕切る仕切り面部20と、この仕切り面部20の屋内側に連続して立ち下がり当該第2溝部19と中空部17とを仕切る立下り面部21と、この立下り面部21の下部に連続しかつ中空底面部18に連続して屋外側に延びる第2底面部22とを有して形成されている。仕切り面部20には、集水溝部16および第1溝部13と第2溝部19とを連通させる第1排水孔23が形成され、立下り面部21には、中空部17と第2溝部19とを連通させる第2連通孔としての第2排水孔24が形成されている。第1排水孔23と第2排水孔24とは、それぞれ左右の縦枠6から所定距離だけ離れた下枠5の両端部近傍において、下枠5の長手方向(左右方向)に位置ずれして設けられている。
【0017】
また、下枠5の屋内側見付け面部11には、屋内空間と中空部17とを連通させる第1連通孔25が形成されるとともに、この第1連通孔25を含んで屋内側見付け面部11の屋内側上部を覆う結露水受け部材26が取り付けられている。第1連通孔25は、下枠5の左右両端部近傍に形成されるとともに、図示しない排水弁が取り付けられており、屋内外の空気が直接連通されず、また結露水や雨水等が第1連通孔25を介して屋内側に逆流しないようになっている。
【0018】
以上のガラスブロックパネル1によれば、面状体7のモルタル8に浸透した雨水等がモルタル8内部を通って下枠5の第1溝部13に浸入したとしても、この雨水等は、第1底面部14で受け止められてから集水溝部16に集められ、第1排水孔23を介して第2溝部19に導かれてから、第2底面部22を流れて屋外空間に排水されるようになっている。一方、ガラスブロック3の屋内面などに結露した結露水は、結露水受け部材26で受け止められてから第1連通孔25を介して中空部17に導かれるとともに、中空底面部18の上面を屋外側に流れ、第2排水孔24を介して第2溝部19に導かれてから、第2底面部22を流れて屋外空間に排水されるようになっている。
【0019】
このような本実施形態によれば、モルタル8を通った雨水等が下枠5の中空部17に入ることなく、第1溝部13および集水溝部16から第2溝部19に導かれて排水されるので、アルマイト処理などが困難な中空部17にアルカリ性の水が浸入するのが防止でき、下枠5の腐食を防止して耐久性を向上させることができる。そして、屋内側の結露水は、第1連通孔25から中空部17を通って第2排水孔24から排水されるので、雨水等とは別経路で結露水を排水することができる。そして、第1排水孔23と第2排水孔24とが位置ずれして設けられているので、第1排水孔23から排水された雨水等が第2排水孔24から中空部17に逆流しないようにでき、中空部17内部の腐食を確実に防止することができる。さらに、第2溝部19の奥まった位置である仕切り面部20および立下り面部21に第1および第2の排水孔23,24が形成されているので、これらの排水孔23,24が目立たなくできるとともに、風雨による雨水等の吹き込みを防止することができる。
【0020】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、面状体7を複数のガラスブロック3で構成したが、これに限らず、面状体としては、樹脂製ブロックや木製ブロックなどで構成されてもよく、さらにはコンクリートブロックやモルタルブロックなどで構成されてもよい。また、面状体としては、複数のブロックで構成されるものに限らず、コンクリート板(PCa版)やセメント成形板、ALC板等の面材で構成されてもよい。
【0021】
また、前記実施形態では、屋内空間と屋外空間とを区画する建具としてのガラスブロックパネル1を例示したが、本発明の面状体で区画する一方および他方の空間としては、屋内外の空間に限定されず、屋外側の空間同士を区画するものであってもよいし、屋内側の空間同士を区画するものであってもよい。
また、前記実施形態では、第1排水孔23と第2排水孔24に排水弁を設けない例を説明したが、第1排水孔23や第2排水孔24に排水弁を設けてもよい。
【0022】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0023】
1…ガラスブロックパネル、2…枠体、3…ガラスブロック(ブロック材)、4…上枠、5…下枠、6…縦枠、7…面状体、8…モルタル、12…屋外側見付け面部、13…第1溝部、17…中空部、19…第2溝部、20…仕切り面部(上面部)、21…立下り面部、22…第2底面部、23…第1排水孔(排水孔)、24…第2排水孔(第2連通孔)、25…第1連通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の空間と他方の空間とを区画する面状体を支持する下枠の排水構造であって、
前記下枠は、上方に開口して前記面状体を支持する第1溝部と、この第1溝部よりも下側にて前記一方の空間に開口する第2溝部と、これら第1および第2の溝部を仕切る仕切り面部とを備え、
前記仕切り面部には、前記第1溝部と第2溝部とを連通させる排水孔が形成され、前記第1溝部に入った水が前記排水孔を介して前記第2溝部に導かれて前記一方の空間側に排水される下枠の排水構造。
【請求項2】
前記下枠は、前記第1溝部よりも下側にて閉断面となる中空部を有して形成され、
前記中空部は、第1連通孔を介して前記他方の空間と連通されるとともに、第2連通孔を介して前記第2溝部と連通され、前記他方の空間側の水が前記第1連通孔を介して前記中空部に導かれるとともに、前記第2連通孔を介して前記第2溝部に導かれて前記一方の空間側に排水される請求項1に記載の下枠の排水構造。
【請求項3】
前記排水孔と前記第2連通孔とは、前記下枠の長手方向に沿って互いに位置ずれして設けられている請求項2に記載の下枠の排水構造。
【請求項4】
前記第2溝部は、前記下枠における前記一方の空間側の見付け面よりも他方側に延びる上面部と、この上面部の他方側に連続して立ち下がる立下り面部と、この立下り面部の下部に連続して一方側に延びる底面部とを有して形成され、
前記排水孔が前記上面部に形成されるとともに、前記第2連通孔が前記立下り面部に形成されている請求項2または請求項3に記載の下枠の排水構造。
【請求項5】
上枠、下枠および左右の縦枠を四周枠組みした枠体と、この枠体の内側に支持される面状体とを備え、前記下枠は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の排水構造を有して構成されている建具。
【請求項6】
前記面状体は、上下左右に並設される複数のブロック材で構成され、これらのブロック材同士およびブロック材と枠体とは、それぞれモルタルを介して互いに連結されている請求項5に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248699(P2010−248699A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96255(P2009−96255)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】