説明

下水処理装置

【課題】低運転コストで効率的に膜モジュールを構成する固液分離平膜の膜表面の目詰まりを低減できるようにすることを目的とする。
【解決手段】流入する下水3を活性汚泥により処理する反応槽1と、該反応槽1内に浸漬して鉛直に設置され、懸濁液と処理水とを分離する膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜4と、該複数の固液分離平膜の固液分離平膜4と固液分離平膜4との間の水面上に設置した浮き10と、該浮き10の下部より鉛直方向に取り付けられたブラシ11とを有する下水処理装置において、この反応槽1の水位制御を行うために流出口6にゲート13を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬型の膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜を用いた下水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浸漬型の膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜を用いた下水処理装置が提案されている。この浸漬型の膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜を用いた下水処理装置としては、例えば反応槽内に懸濁液と処理水とを分離する膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜を膜面が鉛直(垂直)に設置されたものが使用されている。
【0003】
このような下水処理装置では、反応槽内の複数の固液分離平膜の下部に設置された散気管から空気気泡を散気している。この空気気泡の散気の目的は、反応槽内の活性汚泥へ酸素を供給すると同時に、空気気泡の上昇に伴って生成される水流により固液分離平膜の膜表面を洗浄して膜面の付着物を除去し、目詰まりを抑制することであった。
【0004】
このような下水処理装置では、濁質成分の流出を防ぐことが可能であるため活性汚泥の濃度を高くして運転することが可能である。その結果、膜モジュールを用いない下水処理装置に比べて装置が小型化でき、さらに発生汚泥を低減可能とされている。しかし、空気気泡の散気量が従来の下水処理装置に比べて多く必要であるため、ブロワで多量の電気エネルギーを消費し、その結果運転コストが高価となっていた。
【0005】
また、固液分離平膜のろ過運転を継続していると固液分離平膜の膜面の目詰まり現象が徐々に進行する。この固液分離平膜の目詰まりを除去するため、数ヶ月あるいは数年に1回の頻度で固液分離平膜の薬液洗浄が実施される。固液分離平膜の薬液洗浄に際しては、浸漬されていた固液分離平膜を反応槽から一度取り出し、薬液洗浄槽に含浸し、洗浄する方法が一般的であるが、この方法では手数を要し、さらに固液分離平膜の取り出し装置が必要となる問題があった。このため、この固液分離平膜を反応槽内に浸漬した状態のままで洗浄することが望ましい。
【0006】
これらの問題点を解決するため、従来特許文献1、2及び3に開示の対策技術が提案されている。
【0007】
この特許文献1には、反応槽内で膜モジュールを構成する固液分離平膜と散気空気する散気管との間に撹拌手段を設け、膜モジュールの膜面へ向かう上昇撹拌流を増強させることによって、膜表面の洗浄作用の安定化を図るようにしたものが開示されている。
【0008】
この特許文献2には、膜エレメントを超音波洗浄しながら被処理水をろ過する膜分離方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献3に開示のものは、摺動ブラシを用いて金属膜の目詰まりを防止するようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−251386号公報
【特許文献2】特開平11−319517号公報
【特許文献3】特開平11−267472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
然しながら、特許文献1に開示のものでは、上昇撹拌流を生成するため気泡の上昇速度が大きくなるため、反応槽内での気泡滞留時間が減少し、酸素の溶解率が低下する。これにより活性汚泥の酸素供給量が不足し、活性汚泥の処理能力を確保するために、散気空気量を増やす必要がでてくる。散気空気量を増やすには、電力エネルギーが必要なため、運転コストの増大につながる不都合があった。
【0011】
また、特許文献2の超音波洗浄の超音波の特性として、気体中に比べ水中や固体中では減衰が小さい、波長が短く回折作用が小さい、の2点がある。これに対し、膜モジュールを用いた下水処理装置の反応槽内には複数の固液分離平膜や散気管が備えられて構造が複雑であり、また、液体とともに気泡や活性汚泥が存在する。この結果として、固液分離平膜の膜面まで超音波が十分に伝わらない箇所や振動子からの距離が遠いためその間に存在する気泡や活性汚泥によりエネルギーが減衰して洗浄効果が小さくなる膜面の箇所が生じる不都合があった。
【0012】
また、特許文献3に開示のものでは、膜モジュールを構成する固液分離平膜は、摺動ブラシと一体化した構造となっており、仮に摺動ブラシの点検や洗浄のために反応槽内から取り出すときは、膜モジュールを構成する固液分離平膜も反応槽から取り出さなければならない不都合があった。
【0013】
本発明は、斯かる点に鑑み、低運転コストで効率的に膜モジュールを構成する固液分離平膜の膜表面の目詰まりを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明下水処理装置は、流入する下水を活性汚泥により処理する反応槽と、該反応槽内に浸漬して鉛直に設置され、懸濁液と処理水とを分離する膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜と、該複数の固液分離平膜の固液分離平膜と固液分離平膜との間の水面上に設置した浮きと、該浮きの下部より鉛直方向に取り付けられたブラシとを有する下水処理装置において、この反応槽の水位制御を行うために流出口にゲートを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反応槽の水位制御を行うために流出口に設けたゲートを制御することにより反応槽の水面が上下動し、この上下動に従がって浮きと共にブラシが上下運動して膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜の膜表面の付着物を掻き取り、低運転コストで効率的に膜モジュールの膜表面の目詰まりを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1、図2を参照して、本発明下水処理装置を実施するための最良の形態の例につき説明する。
【0017】
図1は、本例による下水処理装置の斜視図を示し、図2Aは、その断面図、図2Bは、その上面図を示す。図1及び図2において、1は流入管2から流入する下水(汚水)3を活性汚泥法により処理する反応槽を示し、この反応槽1内にこの下水3に浸漬して水平方向直列に膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜4を設置する。
【0018】
この膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜4は、例えば長方形状の支持枠の前面側及び後面側に下水(汚水)3の固形分をろ過する膜を固定し、この長方形状の支持枠と前面側膜及び後面側膜とによって、反応槽1内の下水(汚水)3から分離空間を形成したもので、この支持枠の上部に全て固液分離平膜4の分離空間と連通した処理水取り出し管5を設け、この処理水取り出し管5から処理水5aが吸引されるようになされたものである。
【0019】
この複数の固液分離平膜4は、反応槽1内において被処理下水3の流れ方向と平行になるように設置する。この固液分離平膜4は、この反応槽1内の懸濁物と処理水5aとを分離する機能を有し、吸引ろ過により濁質を含まない処理水5aを得るようにしたものである。
【0020】
この反応槽1の流出口6からは、濁質成分の濃度が高くなった濃縮水7を流出するようにする。この濃縮水7は、次段の下水処理装置で処理しても良く、あるいは流入管2から再度反応槽1の中に循環しても良い。
【0021】
この反応槽1内の複数の固液分離平膜4の下部に散気管8を設け、この散気管8より空気気泡を散気するようにする。この空気気泡の散気は、反応槽1内の活性汚泥への酸素供給と同時に上昇する気泡による固液分離平膜4の膜面洗浄を目的としている。
【0022】
本例においては、反応槽1内の複数の固液分離平膜4、4、…の固液分離平膜4と固液分離平膜4との間の夫々の水面上に複数個の円盤状の浮き10を設置し、この浮き10から水中に向かって鉛直(垂直)方向にブラシ11を配設する。
【0023】
このブラシ11としては、例えば図3A及びBに側面図及び正面図を示すように、円盤状の浮き10の下側にこの浮き10の直径と同じ幅で所定長さ(固液分離平膜4に対応)の基板11aを植立し、この基板11aの両面にシリコンゴム等の固液分離平膜4に損傷を与えない材質の所定長さの毛11bを植毛したものである。このブラシ11の外形は上から見て四角形をなすものである。
【0024】
この場合、ブラシ11は、両側において固液分離平膜4に接触するようにし、固液分離平膜4の膜面に付着した懸濁物を取り除く機能を有するようにし、気泡による洗浄効果をさらに高める。また、このブラシ11は、動力を必要とせず、図4A及びBに示すようにこのブラシ11の上部に設けた浮き10の浮力によって水面12の変動とともにこのブラシ11も上下運動し、固液分離平膜4と固液分離平膜4との間を上下運動することで膜面洗浄を効果的に行うことができる。
【0025】
また、本例においては、このブラシ11の上下運動を制御するため、濃縮水7を流出する流出口6に水位制御用のゲート13を設け、このゲート13を上下動して反応槽1内の水位を制御する。このゲート13の上下動は、電動で行っても良いし、手動で行うようにしても良い。このゲート13の上下動を所定周期で行うようにしても良い。
【0026】
この場合、水位制御用のゲート13が上昇しているときは、図5Aに示すように流入管2よりの被処理下水3の流入とともに反応槽1内の水位は、上昇する。この水位の上昇に伴って、浮き10と浮き10に取り付けられたブラシ11は浮力により上昇し、固液分離平膜4の膜面洗浄を行う。また、反対に、水位制御用のゲート13が下降しているときは、反応槽1内に溜まっている濃縮水7が流出口6から流出することになる。この濃縮水7の流出に伴って、反応槽1内の水位は下降し、反応槽1内に設置された浮き10と浮き10に取り付けられたブラシ11は下降し、固液分離平膜4の膜面洗浄を行う。
【0027】
以上述べたように、本例によれば、反応槽1内の水位制御を行うために流出口6に設けたゲート13を制御することにより反応槽1内の水面が上下動し、この上下動に従がって浮き10とともにブラシ11が上下運動して膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜4の膜表面の付着物を掻き取ることができ、膜表面の目詰まりを低減することができる。
【0028】
また、本例によれば、反応槽1内の水位制御を行うために流出口6に設けたゲート13を制御することにより反応槽1内の水面が上下動し、この上下動に従がって浮き10とともにブラシ11が上下運動するので、このブラシ11の上下運動に動力を必要とせず、低運転コストで効率的に安定な膜面の維持管理ができる。
【0029】
また、本例によれば、反応槽1内の水位制御を行うために流出口6に設けたゲート13を制御することにより反応槽1内の水面が上下動し、この上下動に従がって浮き10とともにブラシ11が上下運動して膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜4の膜表面の付着物を掻き取り、膜表面の目詰まりを低減するようにしているので、その分だけ気泡による膜面洗浄を目的とした散気量を低減することができ、この散気量の低減は、ブロワで消費される電気量の低減に直結するため、動力費を低減することができる。
【0030】
尚、上述例では、反応槽1内の水位制御を行うために流出口6に設けたゲート13を上下動する如く述べたが、この代りに図6に示すように、このゲート13により流出口6を開閉するようにしても良い。
【0031】
また、浮き10及びブラシ11の構成は、上述例に限らず必要に応じて種々の構成が採り得る。
【0032】
また、本発明は、上述例に限ることなく本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成が採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明下水処理装置を実施するための最良の形態の例を示す斜視図である。
【図2】Aは図1の断面図、Bは図1の上面図である。
【図3】ブラシの例を示し、Aは側面図、Bは正面図である。
【図4】ブラシの上下運動の説明に供する線図である。
【図5】本発明の説明に供する下水処理装置の例の断面図である。
【図6】本発明下水処理装置を実施するための最良の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…反応槽、2…流入管、3…下水、4…固液分離平膜、5…処理水取り出し管、6…流出口、7…濃縮水、8…散気管、10…浮き、11…ブラシ、13…ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する下水を活性汚泥により処理する反応槽と、該反応槽内に浸漬して鉛直に設置され、懸濁液と処理水とを分離する膜モジュールを構成する複数の固液分離平膜と、該複数の固液分離平膜の固液分離平膜と固液分離平膜との間の水面上に設置した浮きと、該浮きの下部より鉛直方向に取り付けられたブラシとを有する下水処理装置において、
前記反応槽の水位制御を行うために流出口にゲートを備えたことを特徴とする下水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−142603(P2008−142603A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330981(P2006−330981)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】