説明

下部構造カバー

【課題】免震建物の下部構造を極めて簡単な構造で覆うようにする。
【解決手段】下部構造カバーBは、免震建物に於ける下部構造Aの上部建物3から突出した部位の形状に対応した形状を有し、上部建物3を含む上部構造の移動に応じて移動し得るように下部構造Aの上部建物から突出した部位に載置されて該部位を覆う。下部構造カバーBの上部建物3側の辺に立上片21を設け、上部建物3から突出した側の辺に立下片22を設ける。上部建物3との間に着脱自在な連結部25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物における地盤の動きに追従して地盤に対し相対的に移動しない基礎等の下部構造の要部を覆う下部構造カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
滑り支承型の免震建物は、基礎等の下部構造に摺動子と受板とからなる支承材や復元材等の免震材を配置し、該免震材上部に架台(非免震建物における基礎立上り部に相当する機能を有し、柱土台1階床等を支持する部位)と上部建物(一般的な非免震建物における基礎よりも上の部分)とからなる上部構造体を構築して構成される。このように構成された免震建物では、上部建物と下部構造との間の架台付近に外壁や基礎では覆われず開放された空間が形成される。
【0003】
また滑り支承型の免震建物では地震時には上部構造体は下部構造に対し相対的に水平方向に大きく移動する。このため、支承材が上部建物の外周部の近傍に配置されるような場合、下部構造における受板を載置する部分が上部建物の1階部分における外壁等で囲まれた領域からはみ出してしまい屋外に平面的に露出することとなる。
【0004】
上記の如く、建物として上部建物と下部構造との間に形成された開放された空間が形成されたり、下部構造が屋外に平面的に露出したままとなることは、床下空間下への小動物の進入や風雨の吹き込み等を招き、免震材等が屋外暴露状態となるため性能を低下させる虞もあり、また意匠的にみても安全面の上でも好ましくはない。
【0005】
このため、特許文献1では、基礎の外周に立ち上がり部を設けるとともに上部建物側から垂下するカバーを構成して高さ方向の隙間を極力閉塞する技術が提案されている。この技術では、建物本体が地盤面から浮き上がって支承されていても、コンクリート基礎の立ち上がり部で支持された一般の住宅と同じような外観が得られ、見る者に違和感を与えることが少ない。
【0006】
また特許文献2では、地震時における上部構造体と基礎との相対的な移動量を見込んだ基礎の外周に沿って立ち上がり部を形成し、上部建物の外壁から立ち上がり部の上端部に至る庇状の犬走りを構成し、この犬走りによって上部建物から屋外に平面的に突出した基礎を覆う技術が提案されている。
【特許文献1】特開2000−225942号公報
【特許文献2】特開平11−256874号公報
【特許文献3】特開2002−219845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では上部建物の外壁の下端側に外壁とは異なる材質のカバーを垂れ下げるため、外壁の意匠との関連がはかりにくく、外観意匠上の問題が生じる虞がある。
【0008】
また、特許文献2の技術はビル建築のような大掛かりな建物を対象としたものであるが、上部建物の外壁に庇状のカバーを突出して形成するため、住宅等の小規模な建物に適用する場合、大掛かりになってコスト上の問題が生じる虞がある。また地震時に突出したカバーを格納し得るようにした技術(例えば特許文献3参照)も存在するが、このような機構を持った免震建物は高コストとなりやすく、特に住宅等の小規模建物への展開する場合の障害となっていた。
【0009】
本発明の目的は、極めて簡単な構造で免震建物の下部構造を覆うことができる下部構造カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る下部構造カバーは、免震建物における下部構造が上部建物から屋外に平面的に突出した部位の形状に対応した形状を有し、上部建物を含む上部構造体の相対的な移動に応じて移動し得るように前記下部構造の上部建物から突出した部位に載置されて該部位を覆うようにしたものである。
【0011】
上記下部構造カバーにおいて、上部建物側の辺に立上片を設けることが好ましく、且つ上部建物から突出した側の辺に立下片を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る下部構造カバーは、下部構造が上部建物から突出した部位の形状に対応させた形状を有して単に突出した部位に載置され、上部構造の相対的な移動に応じて移動し得るように構成されており、従来技術のように上部建物の外壁から垂れ下がって構成されたり、庇状に突出して構成されたものではない。従って、構造や施工方法が単純でありコストを抑制することができる。
【0013】
また上部建物側の辺に立上片を設けることで、下部構造カバーの上面に降りかかった雨水や散水が下部構造の内部に進入することを防止できる。また上部建物から突出した側の辺に立下片を設けた場合には、雨水や散水が下部構造カバーの突出した側から下部構造の突出部に浸入することを防止できる。
【0014】
また上部建物との間に着脱可能な連結部を設けることで、通常時のカバーの移動を防止することができ、免震材のメンテナンス等の際には取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る下部構造カバーの実施の形態について説明する。本発明の下部構造カバーは、下部構造における上部建物から突出した部位の形状に対応させた形状を有し、該突出した部位に載置されて覆い、上部構造が移動したとき、この移動に応じて移動し得るように構成されたものである。
【0016】
本発明において、免震建物は、地震時に地盤の動きに追従し相対的に移動しない基礎等の下部構造の上に複数の免震材(例えば滑り支承型免震材における摺動子や摺動子が載置される受板)を載置し、更にこの免震材の上に架台を載置し、この架台に上部建物を建築して構成されている。そして地震時に上部建物と架台とからなる上部構造体が地盤や下部構造の動きに追従せず下部構造に対して相対的に移動するように構成されている。
【0017】
基礎は免震材の配置に応じて適切な形状や規模を持って設定される。本発明において、基礎に立ち上がり部を構成するか否かは限定するものではなく、基礎の外周に沿って立ち上がり部を設けても良く、平坦なままの基礎であっても良い。基礎の外周に立ち上がり部を構成した場合、この立ち上がり部の高さは上部構造を構成する架台の下面よりも低いことが必要である。何れの基礎であっても、本発明の下部構造カバーを適用して目的の部位を覆うことが可能である。
【0018】
免震材の構造は特に限定するものではなく、基礎の上面に固定した受板と、該受板の上面を摺動し上部構造を構成する架台に固定された摺動子と、によって構成された支承材と、上部構造を初期位置に復帰させる復元材とによって構成された滑り支承型の免震材や、ゴム板等を積層して構成した積層ゴム型の免震材等を利用することが可能である。
【0019】
上部建物から屋外に平面的に突出した下部構造とは、一義的に限定し得るものではなく、目的の免震建物の平面形状や設備仕様、或いは免震材の配置位置等の条件に応じて適宜設定される。
【0020】
上部建物から屋外に平面的に突出した下部構造の代表的な構成は、上部建物の外周部近傍に配置された摺動子の摺動領域に設置される受板の載置部、或いは受板の載置部を形成するために拡張され上部建物から突出した基礎である。
【0021】
また、上部建物の外周部近傍に設置されたエレベーターのピットのようにエレベーター本体が移動し、基礎の立上り部を有する下部構造の領域に達する場合、地震時にエレベーター本体と立上り部の衝突を防止するためにピットの領域を上部建物(エレベーター)の移動量を想定して広く形成しておく必要があり、このような場合の上部建物から屋外に平面的に突出するピットの領域も上部建物から屋外に平面的に突出した下部構造の一例である。
【0022】
本発明の下部構造カバーは材質や構造を限定するものではなく、鋼板や弾性と可撓性を持ったゴム板や合成樹脂板等があり、これらの材料を選択的に利用することが可能である。特に、ゴム板等の可撓性を有する材質とした場合、建物外部に障害物が存在して地震時に下部構造カバーと衝突しても、下部構造カバーが一時的に変形することで障害物や下部構造カバー自体の破損を防止し、更に地震動の収束によって下部構造カバーは当初の形状に復元することができる。
【0023】
本発明において、下部構造カバーの形状は、上部建物から突出した下部構造の形状に対応して設定されている。しかし、下部構造カバーの形状が上部建物から突出した下部構造の形状と同一である必要はなく、複数に分割した下部構造カバーによって上部建物から突出した下部構造を覆うようにしても良い。
【実施例1】
【0024】
次に、第1実施例に係る下部構造カバーの構成について図を用いて説明する。図1は下部構造としての受板載置のための基礎の拡張部分をカバーした状態を説明する図である。図2は下部構造カバーの形状の例を説明する図である。図3は下部構造カバーに設けた連結部の構成を説明する図である。
【0025】
図1に示すように、下部構造Aは鉄筋コンクリート造の基礎2で構成されている。免震材1は滑り支承型であり、所定の寸法を持った平板状の受板1aと、受板1aの上面と接触して摺動する摺動子1bと、を有して構成されている。受板1aは基礎2に支持されており、摺動子1bは上部建物3を支持する架台に接続されている。
【0026】
基礎2の上面2aは地盤4の地盤面4aと略同じか高くなるように構成されており、基礎2の外周部には立ち上がり部2bが形成されいる。また、基礎2の上面の摺動子1bに対応する位置には摺動子1bの摺動領域に対応する大きさを有する受板1aを載置する載置部2dが形成されており、受板1aの載置部2dは立ち上がり部2bの上端面2cよりも若干高いレベルに設定されている。
【0027】
本実施例において、免震材1は上部建物3の外周部の近傍、即ち、上部建物3の外壁に接近した位置に配置されており、免震材1の受板1aの一部が上部建物3の外壁部分から屋外に平面的に突出するように構成されている。即ち、下部構造Aは、免震材1を構成する受板1aの一部が上部建物3から屋外に平面的に突出しており、この受板1aの載置部2dがカバーすべき下部構造Aを構成している。従って、上部建物3から屋外に平面的に突出した受板1aの載置部2dを下部構造カバーBによってカバーしている。
【0028】
尚、受板1aの上面には不織布等からなる保護シート5が設けられており、下部構造カバーBは、保護シート5の更に上面に配置されている。
【0029】
下部構造カバーBはカバーすべき下部構造の寸法と形状に対応した寸法と形状を有している。即ち、本実施例では、カバーすべき下部構造が受板1aの載置部2dであるため、該受板1aの載置部2dの上部建物3の外壁に沿った方向(下部構造カバーの幅方向、以下同じ)の寸法よりも大きい幅寸法と、上部建物3が基礎1に対して変位を生じていない初期位置における摺動子1bの端部から受板1aの載置部2dの端部まで(下部構造カバーの奥行方向、以下同じ)の寸法よりも大きい奥行寸法を有して形成されている。
【0030】
図1に示すように、免震材1が上部建物3における外壁の直線部近傍に配置されている場合、カバーすべき下部構造Aとなる受板1aの載置部2dが上部建物3から突出した部分の平面形状は長方形となる。このため、下部構造カバーBは図2(a)に示すように、長方形の板部材10によって構成されている。
【0031】
また、免震材1が上部建物3における外壁の出隅部近傍に配置されている場合、受板1aの載置部2dの上部建物3から突出した部分の平面形状は、L字型となり且つL字を構成する二つの辺の長さは略等しい。このため、下部構造カバーBは、図2(b)に示すように、等辺L字型の板部材11によって構成されている。
【0032】
更に、免震材1が上部建物3における入隅部分に配置されている場合、受板1aの載置部2dの上部建物3から突出した部分の平面形状は略正方形となる。このため、下部構造カバーBは、図2(c)に示すように、正方形の板部材12によって構成されている。
【0033】
下部構造カバーBの上部建物3側の辺(免震材1の摺動子1bに近い方の辺)には、全長にわたって上向きに立ち上げた立上片21が、上部建物3を構成する外壁パネル下端面から突出した水切部3aよりも低く設定されて上部建物3の下部に入り込むようような状態で形成されており、この立上片21によって、上部建物3の下端部と下部構造Aとの隙間から降りかかった雨水や散水が奥に入り込むことを防ぐと共に、この水を下部構造カバーBの上面から上部建物3の外側に流すことが可能である。
【0034】
また下部構造カバーBの上部建物3から突出した側の辺(免震材1の摺動子1bから離隔した方の辺)には、全長にわたって下向きに垂下した立下片22が形成されており、この立下片22によって下部構造カバーBに降りかかった雨水や散水が該下部構造カバーBと受板1aとの間に入り込むことを防ぐと共に、下部構造カバーBの上面を流下してきた水が下部構造カバーBの下側の面に回り込むことを防ぐことが可能である。
【0035】
更に、下部構造カバーBの上面所定位置には連結部25が設けられている。この連結部25は上部建物3の下端面における所定部位、例えば、上部建物3の外壁を構成する外壁パネルの下端面から突出して形成されている水切部3aと係合して上部建物3と下部構造カバーBとを連結している。
【0036】
連結部25の構造は特に限定するものではないが、後述する三つの構造の中から選択するのが有利である。
【0037】
図3(a)に示す連結部25は、下部構造カバーBを構成する板部材10の所定位置(立上片21を免震材1の摺動子1bに接近させたとき、上部建物の水切部3aの内側の面と対向する位置)に1枚の係止片25aを配置すると共に、該1枚の係止片25aをねじ25b、ナット25cによって固定して構成されている。係止片25aは水切片3aの建物内部側の形状に対応させて断面が「へ」字状に形成されている。
【0038】
上記した1枚の係止片25aを有する連結部25では、上部建物3が上部建物3の内側方向に移動したとき、係止片25aが水切部3aに係止されることによって下部構造カバーBを同方向に移動させることが可能である。また、上部建物3が上部建物3の外側方向に移動したとき、下部構造カバーBは水切部3aによって移動させられることはないが、立上片21が免震材1の摺動子1bに隣接しておりこの摺動子1bに接触して押されることによって上部建物3と同じ方向に移動する。そして、地震の収束後上部建物3がダンパー等の復元材によって当初の位置に復帰すると同時に下部構造カバーBも当初の位置に復帰する。
【0039】
図3(b)に示す連結部25は、所定位置に2枚の挟持片25d、25eを配置すると共にねじ25b、ナット25cによって固定して構成されている。挟持片25d、25eは水切片3aの建物内部側の形状に対応させて断面が夫々「へ」字状、L字状に形成されている。
【0040】
この場合、連結部25の挟持片25d、25eにて水切部3aを挟持するので下部構造カバーBは上部建物がいずれの方向に移動した場合でも上部建物3の移動に追従して移動することになる。そして、図3(a)の場合と同様に、地震の収束後上部建物3がダンパー等の復元材によって当初の位置に復帰すると同時に下部構造カバーBも当初の位置に復帰する。
【0041】
更に、図1、2に示す連結部25は、断面が略クランク形状で一端が下部構造カバーBを構成する板部材10に固定されて形成されたばねクリップであり、中央の凹部と上部建物3の水切部3aとが噛み合うように位置が設定されている。そして地震時には、図3(b)に示す連結部25の場合と同様に、下部構造カバーBは上部建物3の移動に追従して移動し、地震の収束後は上部建物3がダンパー等の復元材によって当初の位置に復帰すると同時に下部構造カバーBも当初の位置に復帰する。
【0042】
このように連結部25をばねクリップで構成した場合、下部構造カバーBに対し連結部25による上部建物3への把持力に勝る力を作用させることで、その連結を解除したり再度連結したりすることが可能である。従って、ボルトやビス等を緩める或いは締結するといった煩雑な作業をすることなく容易に下部構造カバーBを脱着することができる。
【0043】
下部構造カバーBに立下片22を設けた場合、地震時に上部建物3が内側方向に移動して立下片22と下部構造Aとが衝突し、下部構造カバーBや下部構造Aが破損する虞があるが、破損を防止するためには、(1)下部構造カバーBの先端部を図2(d)に示すような形状とする、(2)下部構造カバーBの先端部の折り曲げ角度を緩くする、(3)下部構造Aの先端部を垂直に立ち上げずに傾斜させる、等の方法で、下部構造カバーBと下部構造Aが接触した際に下部構造カバーBの先端側が持ち上がるように構成するのが好ましい。特に上記(1)の方法によれば、下部構造カバーBの先端が鋭利にならないので安全で見栄えもよく好ましい。
【0044】
但し、外壁の直線部近傍に配置される下部構造カバーBの短辺部については、上記のような構成とすると、水切部3aと連結部25との摩擦力に応じて追従のしかたが変化してしまい上部建物3の外壁面と平行方向の移動に対して完全には追従しないので、地震動の収束時に下部構造カバーBが当初の位置からずれてしまう虞がある。従って、両短辺部の立下片22が下部構造Aに係止し、下部構造カバーBの外壁面と平行方向の移動が生じないように構成するのが好ましい。
【実施例2】
【0045】
次に第2実施例に係る下部構造カバーについて図を用いて説明する。図4は免震材の周囲に形成された高い立ち上がり部を有する基礎を含む下部構造を説明する図である。図5は下部構造カバーの例を説明する図である。図6は図4の斜視図である。尚、図において、前述の第1実施例と同一の部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図4に示すように、下部構造Aを構成する基礎2の立ち上がり部2bは、免震材1の受板1aの上面のレベルよりも高く、且つ上部建物3の下端部よりも低く構成されている。この場合、上部建物3の外周部に沿って、且つ受板1aを載置する載置部2dが建物外周部よりも屋外に平面的に突出した部分においては突出部に沿って基礎2の立ち上がり部2bが形成される。
【0047】
下部構造カバーCは、基礎2の立ち上がり部2bの上部建物3からの屋外に平面的な突出形状に対応させて、図5に示すように、一般部に対応する板部材10、出隅部に対応する板部材11、入隅部に対応する板部材12によって夫々構成されている。各板部材10〜12の幅寸法は、基礎2の立ち上がり部2bと上部建物3の下端部の所定位置までの距離に対応して設定され、上部建物3の壁面側以外の端縁部が基礎2の立ち上がり部2bの上端面2cで支持されている。
【0048】
この場合、地震時には上部建物3の外側方向(図における左側方向)への移動に伴って下部構造も移動するが、所定の距離移動した時点で基礎2の立ち上がり部2bの上端面2cが下部構造カバーCの端部を支持する支持面となることは第2実施例と同じである。そして、このようにコ字状に形成された立ち上がり部2bによって下部構造カバーCの外周三辺を支持した場合、立上辺21によりカバーCの撓みを抑え、安定した支持を実現することが可能となる。
【実施例3】
【0049】
次に、上部建物の下端部分の一部が基礎の立ち上がり部よりも低い場合の例を図7により説明する。本実施例では、上部建物3の外壁の近傍に例えばエレベーター3bが配置されており、このエレベーター3bが上部建物3の下端面よりも下方に突出した場合を想定している。
【0050】
このように構成された上部建物3では、地震時に上部建物3が下部構造Aを構成する基礎2に対して移動したとき、下方に突出したエレベーター3b部分が立ち上がり部2bと衝突する虞があるため、この移動を見越してエレベーターピットを大きく確保し(すなわちエレベーターピットの底面をなす基礎2のスラブを上部建物3よりも屋外に平面的に突出させ)エレベーターピットに沿って立ち上がり部2bを形成する必要が生じる。
【0051】
このような場合であっても、第2実施例と同様に、下部構造カバーCの上部建物3側以外の端縁部を基礎2の立ち上がり部2bの上端面2cに載置して支持することで、上部建物3の外周部から突出した下部構造をカバーすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る下部構造カバーでは、下部構造Aを構成する基礎2の立ち上がり部2bと上部建物3の外周部との間に形成された平面空間をカバーすることが可能であり、該平万空間を通って上部建物の下側に入り込む雨水や散水、或いは埃や泥を防ぐことが可能となる。このため、基礎と上部建物との間に免震材を配置して構成した免震建物に利用して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】下部構造としての免震材の受板をカバーした状態を説明する図である。
【図2】下部構造カバーの形状の例を説明する図である。
【図3】下部構造カバーに設けた連結部の構成を説明する図である。
【図4】免震材の周囲に形成された高い立ち上がり部を有する基礎を含む下部構造を説明する図である。
【図5】下部構造カバーの例を説明する図である。
【図6】図4の斜視図である。
【図7】上部建物の下端部分の一部が基礎の立ち上がり部よりも低い場合の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
A 下部構造
B、C 下部構造カバー
1 免震材
1a 受板
1b 摺動子
2 基礎
2a 上面
2b 立ち上がり部
2c 上端面
2d 載置部
3 上部建物
3a 水切部
4 地盤
4a 地盤面
5 保護シート
10〜12 板部材
21 立上片
22 立下片
25 連結部
25a 係止片
25b ねじ
25c ナット
25d、25e 挟持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震建物に於ける下部構造の上部建物から突出した部位の形状に対応した形状を有し、上部建物を含む上部構造の移動に応じて移動し得るように前記下部構造の上部建物から突出した部位に載置されて該部位を覆うことを特徴とする下部構造カバー。
【請求項2】
上部建物側の辺に立上片を設けたことを特徴とする請求項1に記載した下部構造カバー。
【請求項3】
上部建物から突出した側の辺に立下片を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載した下部構造カバー。
【請求項4】
上部建物との間に着脱自在な連結部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した下部構造カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−266898(P2008−266898A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107904(P2007−107904)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】