説明

不均一系触媒存在下でのアミノアルキレンホスホン酸化合物の製造方法

アミノポリアルキレンホスホン酸を、実質的にハロゲン化水素酸の非存在下で製造する有益な方法が開示されている。方法は、要するに、亜リン酸、アミン及びホルムアルデヒドを、不均一系のブレンステッド酸触媒の存在下、狭く限定された比率で反応させることに基づいている。本発明の方法は、経済的及び品質的に、操作上/生産能力上の利益をもたらし、特に、意義のあるのは、腐食問題を排除し、1段階工程サイクル経過時間を短縮し、そして、また、ほんの僅かの資本的支出も必要せず、環境にも優しいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキレンホスホン酸化合物の製造方法に関し、詳しくは、大半のアミン又はアンモニア原材料において、利用可能な全てのN−H官能基が、実質的にハロゲン化水素酸副生成物及び中間体を排除する条件下で、アルキレンホスホン酸化されている化合物の製造方法に関する。より詳しくは、アミノアルキレンホスホン酸化合物は、反応媒質に対して不均一系の酸触媒の存在下、亜リン酸、アミン/アンモニア、及びホルムアルデヒドを狭く限定された反応比で反応させることにより、有利に製造することができる。
【背景技術】
【0002】
アミノアルキレンホスホン酸化合物は、一般には、技術的には古いものであり、水処理、スケール防止、清浄添加剤、金属イオン封鎖剤、海上石油掘削補助剤を含む様々な適用に対して、及び医薬品成分として商業的に幅広く受け入れられて来た。その様な工業的適用は、好ましくは、アンモニア/アミン原材料中のN−H官能基の大半を、対応するアルキレンホスホン酸に転換しているアミノアルキレンホスホン酸を必要とすることは良く知られていることである。従って、誰もが予想する様に、当該技術は、多数存在し、その様な化合物の製造方法もある。アミノアルキレンホスホン酸の最新の製造技術は、三塩化リンの加水分解から生成する亜リン酸の転換、又は塩酸の添加を経由した亜リン酸の転換を前提としている。ここで、塩酸は、その一部又は全部を、アミン塩酸塩の形で加えることができる。
【0003】
アミノアルキレンホスホン酸の製造は、英国特許第1142294号に記載されている。この技術は、亜リン酸反応物の供給源として三ハロゲン化リン、通常は三塩化リンのみを使用することを前提としている。反応は、実際には、かなりの量の水の存在、しばしば、三ハロゲン化リン1モル当り7モルまでの量を必要とする。水は、三塩化リンを加水分解するため供給され、その結果、亜リン酸及び塩酸が生成する。30℃〜60℃の範囲内の穏やかな温度条件下、次いで、短時間100℃〜120℃の加熱工程で実施される反応の間、ホルムアルデヒドが失われる。アミノメチルホスホン酸の合成は、Moedritzer and Irani, J. Org. Chem., 1966, 5, pages 1603-1607 に記載されている。Mannich−タイプの反応及びその他学術的反応メカニズムが、実際に記載されている。最適Mannich条件は、アミン塩酸塩の1モル当り濃塩酸2〜3モルを使用することになる低pH値を必要とする。この高い酸性度は収率を高め、そしてホスファイトのホスフェートへの酸化を阻止する。ホルムアルデヒド成分は、還流温度下で、アミン塩酸塩、亜リン酸及び濃塩酸の反応溶液混合物に滴下しながら加える。WO第96/40698号は、反応混合水中に、イミノ二酢酸、ホルムアルデヒド、亜リン酸供給源及び強酸供給源を同時に注入することによるN−ホスホノメチルイミノ二酢酸の製造に関する。亜リン酸及び強酸の供給源は、三塩化リンで代表される。
【0004】
アミノポリアルキレンホスホン酸製造のための三塩化リンの使用は、更に、それぞれ、Long et al. and Tang et al. in Huaxue Yu Nianhe, 1993 (1), 27-9 及び 1993 34(3),
111-14の様な、多くの著者により明らかにされ、強調されている。類似の技術としては、またハンガリー国特許出願公開第36825号、及びハンガリー国特許第199488号が知られている。欧州特許第125766号は、同様に、塩酸の存在下、その様な化合物の合成を記述しており、同様に、日本国特許出願公開57075990号は、亜リン酸から出発して、濃塩酸の存在下、アミンと反応させることによるその様な化合物を製造することを推奨している。
【0005】
米国特許第3459793号は、アンモニアの3つのN−H官能基の内2つを、アンモニア、ホルムアルデヒド及びオルソ亜リン酸と反応させて、メチレンホスホン酸基へ転換させることによるメチルアミノジ(メチレンホスホン酸)の高収率製造方法を記載している。三番目のN−H官能基は、N−メチル基を生成する。反応は、場合により、アルカリ金属硫酸塩又はアルカリ金属亜硫酸塩などの水溶性の硫酸塩又は亜硫酸塩触媒の存在下で行われる。触媒は亜リン酸のリン酸への酸化を阻止する働きをする。アルカリ金属イオンは、メチルアミノジ(メチレンホスホン酸)の生成を促進する。メチルアミノジ(メチレンホスホン酸)及びアミノトリ(メチレンホスホン酸)の混合物が受容可能でない限り、換言すれば、塩化物イオンが、全ての利用可能なN−H官能基のメチレンホスホン酸置換を促進しない限り、塩化物イオンレベルは、0.5%未満に維持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主目的は、アミノアルキレンホスホン酸(AAP)を、ハロゲン化水素酸、特に塩酸、酸副生成物及び中間体が実質的に存在しない条件下で、製造する方法を提供することである。本発明の別の目的は、アンモニア又はアミン原材料から出発するアミノアルキレンホスホン酸の製造であって、それにより、全ての利用可能なN−H官能基を、主として対応するアルキレンホスホン酸誘導体へ転換することに関する。特に、50%又はそれ以上のアンモニア又はアミン原材料中の全てのN−H官能基を反応させ、アルキレンホスホン酸誘導体を得る。
【0007】
全てのN−H官能基がアルキレンホスホン酸へ転換している(100%)アミン原材料との関連で表わして、60%以下の量、好ましくは40%以下の量の反応した原材料アミンは、アミノアルキレンホスホン酸誘導体へ転換しなかった少なくとも1つのN−H官能基を有する。本発明の別の目的は、AAPの製造中、ホルムアルデヒド蒸留液中にハロゲン化水素酸が存在すると損なわれるホルムアルデヒド反応物を、より効率良く使用することにある。また、本発明の別の目的は、塩化メチルの様な環境上より好ましくない副生成物の、大気中への放出を実質的に完全に排除し、又は例えば熱酸化により減少させる、AAPの製造にある。本発明の別の目的は、AAP製造技術で、実質的に腐食問題で影響されない技術を作り出すことにある。また、本発明の別の目的は、効率良く、多くの資本を必要としないAAP製造技術を提供することにある。本発明のなお別の目的は、ハロゲン化水素酸又はその前駆体の実質的な非存在下でAAPを製造するための酸触媒を作り出すことにある。本発明の望ましいなお別の目的は、効果的な酸触媒の提供を追求することであり、それは再生で又は再生なしでリサイクルが可能であり、不必要な分離及び/又は精製の対策なしで、反応生成物の取得を可能にするものである。前述の及び他の目的は、本明細書で以下に示す発明技術により達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に示される、「パーセンテージ」又は「%」は、異なって定義されない限り、「質量%」を意味する。用語「ホスホン酸」及び「ホスホネート」は、本明細書及び特許請求範囲の全体で、互いに互換性を持って用いることができる。反応物の名称「亜リン酸」及び「アミン」は、個々の反応物、それ自体及びその前駆体を定義する。用語「ホルムアルデヒド」は、狭義の意味でのホルムアルデヒド、アルデヒド及びケトンを互換性を持って称する。用語「アミン原材料」は、「アンモニア」及び/又は「アミン」と互換性を持って称することが出来る。
【0009】
ハロゲン化水素酸が、亜リン酸成分(100%)との関連で表して0.4質量%以下しか存在しない条件下のアミノアルキレンホスホン酸化合物の製造方法であって、50%又はそれ以上のアミン原材料中のすべての利用可能なN−H官能基を、以下:
(a):亜リン酸;
(b):アミン;及び
(c):ホルムアルデヒド;
を、以下の反応物比率;
(c):(a)=5:1〜0.25:1であり;
(a):(b)=0.05:1〜2:1であり;そして
(c):(b)=0.05:1〜5:1である;
(ここで、(a)及び(c)は、使用しようとするモル数を意味し、かつ(b)はアミン中のN−H官能基数を掛けたモル数を表す)で;
酸触媒(該酸触媒(d)は反応媒質に対して不均一系のブレンステッド酸触媒で、そのブレンステッド酸触媒は以下:
(1)固体の酸性金属オキシドそれ自体又は担体物質上に担持されたものとしての、固体酸性金属オキシドの組合せ;
(2)芳香族基上にSO3H基をグラフトするように官能化されたスチレン、エチルビニルベンゼン及びジビニルベンゼンの共重合体、並びにペルフルオロ樹脂を含むグループから選択されるカチオン交換樹脂;
(3)反応温度で反応媒質に実質的に非混和性の有機スルホン酸及びカルボン酸のブレンステッド酸;
(4)以下:
(i)その上に有機ブレンステッド酸を析出させる孤立電子対を有する固体支持体の相互作用;又は
(ii)ルイス(Lewis)酸サイトを有し、その上に化合物を析出させる孤立電子対を有する固体支持体の相互作用;
(iii)ブレンステッド酸基又はその前駆体で化学グラフトすることにより官能化された不均一系固体;
から誘導される酸触媒;
(5)一般式HxPMyz(式中、Pはリン及びケイ素から選択され、MはW及びMo、並びにその組合せから選択される)の不均一系のヘテロポリ酸;
のグループから選択される)の存在下、反応させ、対応するアルキレンホスホン酸に転換し:
次いで、自体公知の方法で、生成されたアミノアルキレンホスホン酸を回収する;
ことによりアミノアルキレンスルホン酸化合物が製造可能であることを今回発見した。
【0010】
亜リン酸成分は、それ自体として使用でき、又はPオキシド形になっていてもよい。亜リン酸及び対応するPオキシドは、公知の方法で元素リンに転換し次いでPオキシドへ可能なら亜リン酸へ酸化することが可能な天然産出のリン含有岩石を含む、任意の好適な前駆体から誘導することが可能である。亜リン酸反応物は、またPCl3の加水分解から出発して、そして塩酸及び加水分解から生成した他の塩化物中間体を排除することによって得られた亜リン酸を精製することで製造できる。
【0011】
好ましい実施態様において、亜リン酸の精製は、塩化物のレベルを、亜リン酸(100%)との関連で表して0.4%未満に減少させるために、好ましくは、2000百万分率(ppm)未満又はそれより低く、より好ましくは200ppm又はそれより低くに減少させるために適用される。
【0012】
一般的には、本明細書における方法は、亜リン酸成分との関連で表して、0.4%以下の、好ましくは2000ppm又はそれ未満、より好ましくは200ppm又はそれ未満の塩酸の存在下において実施される。
【0013】
元素リンの直接酸化及び生成したPオキシドの加水分解による亜リン酸の製造は、困難であることが知られている一方で、種々の技術が、その観点で経済的に許容可能である。カナダ国特許出願公開第2070949号には、亜リン酸又はその対応するP23オキシドの製造方法であって、ガス状のリン及び水蒸気を、ガスプラズマ反応ゾーンへ、1500°K〜2500°Kの温度範囲内で導入し、それにより、P23へ転換させ、次いで1500°K以上の温度のそのリンオキシドを水で1100°K以下の温度へ急速にクエンチし、それにより、高純度のH3PO3を得る製造方法が記載されている。別のアプローチでは、米国特許第6440380号に記載の通り、リン(I)及び(III)オキシドは、リン(V)オキシドの接触還元により製造可能である。それらのオキシドは、加水分解されて亜リン酸を生成する。欧州特許出願公開第1008552号には、元素リンをアルコールの存在下で酸化して、P(III)及びP(V)エステルを得、次いで亜リン酸エステルの亜リン酸への選択的加水分解による亜リン酸の製造方法が記載されている。WO第99/43612号には、P(III)オキシ酸の高選択的な、触媒による製造方法が記載されている。元素リンの亜リン酸までの酸化レベルへの接触的酸化は、また米国特許第6476256号及び第6238637号から知られている。
【0014】
他のアプローチにおいて、亜リン酸は、三塩化リンをカルボン酸若しくはスルホン酸、又はアルコールのいずれかの反応試剤と反応させることにより有利に製造できる。PCl3は、酸反応試剤又はクロリド(例えば、PCl3と対応するアルコールの反応から生成するアルキルクロリド)の場合、亜リン酸及び酸クロリドの形成下でその反応試剤と反応する。塩素を含む生成物(例えば、アルキルクロリド及び/又は酸クロリド)は、亜リン酸から、当業者に公知の方法(例えば、蒸留又は層分離)により都合良く分離できる。その様に製造した亜リン酸は、特許請求の範囲に記載の組み合わせでそれ自体使用できる一方、生成物に含まれる塩素及び未反応の原材料を実質的に排除し、又はそれらのレベルを減少させることにより、生成した亜リン酸を精製することは望ましく、またしばしば、好ましいものである。その様な精製は良く知られており、そしてその関連する製造技術分野においては、ほとんど標準的となっている。その様な技術の好適な実例としては、有機不純物の活性炭上での選択的吸着、又は亜リン酸成分単離のための水相分離の使用が挙げられる。三塩化リンのカルボン酸又はアルコールなどの反応試剤との反応に関連する情報は、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, in chapter Phosphorous Compounds, December 4, 2000, John Wiley & Sons Inc. において見い出すことができる。
【0015】
本明細書中の1つの好ましい実施において、本発明の方法で用いられる亜リン酸反応物質は、ハロゲンを実質的に排除することによって製造した化学種で表わされる。ハロゲン排除下での亜リン酸の製造方法は、その技術分野において良く知られている。その様な亜リン酸反応物を製造するために使用可能な方法の具体例は以降に要約されている。
【0016】
1つの方法(i)において、亜リン酸は、元素リンを、好ましくは四リンを水と、200℃より低い温度で、水と貴金属触媒との反応、例えば、Pdとの反応によるリンの酸化を促進するに効果的な触媒の存在下で、接触させることにより、高選択的に亜リン酸を製造することが可能である。この方法は、米国特許第6238637号B1に記載されている。実質的に同一の記載が、WO第99/43612号及び米国特許第6476256号B1からも得ることができる。別のアプローチ(ii)において、亜リン酸の様な、大半のP(III)化学種は、P(V)化学種を、水素の様な還元剤と還元触媒の存在下で、接触させることにより製造可能である。この方法は、米国特許第6440380号B1に詳細が記載されている。更に、別の方法(iii)において、亜リン酸は、亜リン酸エステルの選択的加水分解により製造可能である。亜リン酸エステル及びリン酸エステルを含む、加水分解供給混合物を液体の水及び蒸気と接触させ、亜リン酸エステルを亜リン酸へ選択的に加水分解させる。欧州特許第1008552号A1により、この技術の実施を可能にする記載が与えられる。
【0017】
必須のアミン成分は、通常の窒素含有反応物により、幅広く表すことが可能である。より具体的には、アミン成分は:
−アンモニア;
−炭化水素基を含有する第一級、及び、第二級アミンであって、個々の炭化水素基が1〜100個の、好ましくは1〜50個の炭素原子を有し、該炭化水素基は、直鎖若しくは分枝した線状アルキル基、若しくは環状アルキル基、若しくは芳香族基、若しくは多環芳香族基、又はそれらの組み合わせで表わすことができ;
−ポリアミン;並びに
−第一級及び第二級アミン、及びポリアミンであって、トリアルキルシリルなどの官能化シリル基、ヒドロキシル、カルボン酸若しくはスルホン酸、若しくはそれらの酸のエステル、又はそれらの組み合わせを含むアルコキシ化された、若しくは、チオアルコキシ化された及び/又は官能基を包含する;
からなるグループより選択できる。
【0018】
アルキルアミンの具体的な実例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、アニリン及びシクロヘキシルアミンがある。また、置換アルキル基を含む第一級又は第二級脂肪族アミンも使用することができる。
【0019】
好適なポリアミン化学種としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(プロピレン)エチレンテトラミン、ジ(ヘキサメチレン)トリアミン、ヘキサメチレンジアミン、並びにポリエチレンイミン及びポリアリルアミンの様な高分子アミンが含まれる。
【0020】
アミンは遊離の形態で使用しても良いが、硫酸塩の様な塩の形態で使用するのが、しばしば好ましい。
【0021】
必須のホルムアルデヒド成分は、良く知られた汎用原料である。一般的にホルムアルデヒドは、可変量ながら、しばしば少量の、例えば0.3%〜3%のメタノールを含有する水溶液として製造され、販売されており、37%ホルムアルデヒドベースのもので報告される。ホルムアルデヒド溶液は、オリゴマーの混合物として存在する。ホルムアルデヒドの前駆体は、例えば、通常はかなり鎖長が短い、n=8〜100の線状のポリ(オキシメチレングリコール)の固体混合物であるパラホルムアルデヒド、並びにトリオキサン及びテトラオキサンの用語でそれぞれ命名されているホルムアルデヒドの環状三量体及び四量体により代表される。
【0022】
このホルムアルデヒド成分はまた、式R12C=Oを有するアルデヒド及びケトンで表わすこともあり、ここで、R1及びR2は、同一か又は異なっても良く、そして水素及び有機基のグループから選択される。R1が水素である場合、物質はアルデヒドである。R1及びR2の両方が有機基である場合、物質はケトンである。有用なアルデヒドの化学種は、ホルムアルデヒドに加えて、アセトアルデヒド、カプロアルデヒド、ニコチンアルデヒド、クロトンアルデヒド、グルタルアルデヒド、p−トルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド及び3−アミノベンズアルデヒドである。本明細書で使用される好適なケトン化学種としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、ブチロン、アセトフェノン及び2−アセトニルシクロヘキサノンがある。
【0023】
本発明における技術は、必須成分としての不均一系のブレンステッド酸触媒の存在を必要とする。ブレンステッド特性は、プロトン供給能力で表わされる。用語「不均一系」は、酸触媒が、反応条件において反応媒質に実質的に不溶性であること又は反応条件において反応媒質に実質的に非混和性(従って液体)であることを意味する。触媒の不溶性及び/又は非混和性の性質は、例えば目視観察に基づいて、型どおりに確認することができる。ブレンステッド酸性度はまた、配位パートナー(例えば水)において孤立電子対を有する触媒上のルイスサイトの配位後のルイス酸特性に由来し得る。ブレンステッド酸性度はまた、孤立電子対を有し、ルイス酸(例えば、シリカ)と配位可能なブレンステッド酸触媒前駆体へ、ルイス酸(例えば、BF3)を添加することにより誘導できる。
【0024】
任意に与えられる酸触媒のブレンステッド特性は、容易に、そして型どおりに確認可能である。一例として、ブレンステッド酸性度は、熱的に安定な無機生成物に対しては、例えば、イソプロピルアミンの熱脱着、それに続く、R.J. Gorte et al., J.Catal. 129, 88, (1991) 及び 138, 714, (1992)の方法に基づくミクロバランスを用いて分析可能である。
【0025】
ブレンステッド酸特性を有する不均一系の触媒は、例えとして、任意に選択されたサブクラスの化学種によって表わすことができ、即ち:
(1)酸性金属酸化物の組合せとして表わされる固体触媒であり、それは、シリカ、カーボン、シリカ−アルミナの組合せ、又はアルミナなどの通常の担体物質上に担持可能である。これらの酸性金属酸化物の組合せは、それ自体又は無機若しくは有機酸ドーピングと一緒に使用できる。このクラスの触媒の好適な実例は、通常はプロトン形態にある非晶性のシリカ−アルミナ、スメクタイトの様な酸クレイ、無機又は有機酸処理クレイ、柱状粘土、ゼオライト、並びにZrO2−TiO2のような、約1:1のモルの組合わせの金属酸化物、及び硫酸化金属酸化物、例えば硫酸化ZrO2である。他の金属酸化物の組合せの好適な例は、モル比で表わして、TiO2−SiO2(1:1);及びZrO2−SiO2(1:1)である。
【0026】
(2)数種のカチオン交換樹脂は、アミン、亜リン酸及びホルムアルデヒドの反応を実施するための酸触媒として使うことができる。最も一般的には、その様な樹脂としては、SO3H基を芳香族基上にグラフトするように官能化された、スチレン、エチルビニルベンゼン及びジビニルベンゼンの共重合体が含まれる。その様な樹脂は、多くの工業生産、例えば、メタノール及びイソブテンからのメチルt−ブチルエーテルの製造、又はアセトン及びフェノールから始まるビスフェノールAの製造における酸性触媒として使用される。これらの酸性樹脂は、ゲル形態、マクロ網目状構造の様な種々の物理的構造において使用でき、又はシリカ若しくはカーボン若しくはカーボンナノチューブなどの担体物質への担持も可能である。他のタイプの樹脂としては、カルボン酸若しくはスルホン酸基、又はカルボン酸及びスルホン酸基の両方を有するペルフルオロ化樹脂が挙げられる。その様な樹脂の公知の実例としては、NAFION(TM)、FLEMION(TM)、及びNEOSEPTA-F(TM)がある。
フッ素化樹脂は、それ自体で使用可能で、並びにシリカ、カーボン、金属酸化物及び/又はシリカの高度に分散したネットワークに捕捉されたカーボンナノチューブの様な不活性物質上に担持させることが出来る。
FLEMIONは、日本、旭硝子の商標名;
NEOSEPTAは、日本、徳山ソーダの商標名;
NAFIONは、米国、DuPontの商標名;
【0027】
(3)有機ブレンステッド酸の様な、ブレンステッド酸触媒、それは反応媒質に対して、実質的に不溶性又は非混和性である。触媒は反応条件において、特に、反応温度において、第二液相を形成し、そして反応の終わりで、濾過又は相分離などの通常の技術により回収可能である。好適な酸性反応試剤の例としては、炭素原子に結合した50%又はそれ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する高度にフッ素化した、ペルフルオロ化ウンデカン酸の様な長鎖のスルホン酸若しくはカルボン酸、又はより具体的には炭素原子6〜24個有するペルフルオロ化カルボン酸及びペルフルオロ化スルホン酸が挙げられる。その様なペルフルオロ化酸触媒は、実質的に、反応媒質に非混和性である。反応は、反応器内で酸相の水相への適切な分散を確保するための連続撹拌により起こる。酸性反応試剤は、それ自体、水不溶相、例えば、水不溶イオン性液体に希釈される。
【0028】
(4)シリカ、シリカ−アルミナの組合せ、アルミナ、ゼオライト、シリカ、活性炭、砂及び/又はシリカゲルの様な、通常は、孤立電子対を有する不均一系の固体は、メタンスルンホン酸若しくはパラトルエンスルホン酸の様なブレンステッド酸触媒用、又はSbF5の様なルイス酸サイトを有する化合物用の支持体として使用出来、かくして、相互作用により、強いブレンステッド酸性度をもたらす。ゼオライト、シリカ又はメソ多孔質シリカ、例えば、MCM−41若しくはMCM−48の様な不均一系の固体、又は例えば、ポリシロキサンの様な重合体は、ブレンステッド酸基又はその前駆体で化学グラフトすることにより官能化出来、スルホン酸及び/若しくはカルボン酸、又はその前駆体の様な酸性基を生成する。官能化は、当分野で知られた種々の方法、例えば、シリカのSiOH基とクロロスルホン酸との反応による固体上への直接グラフト化により導入可能であり、又は例えばペルフルオロアルキルシラン誘導体であり得る有機スペーサによって固体へ結合させることが可能である。ブレンステッド酸で官能化されたシリカは、また、例えば、Si(OR)4と、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの、中性又はイオン性テンプレーティング法それに引き続くチオールの対応するスルホン酸への、例えば、H22による酸化を用いる共縮合による、例えば、チオール官能化シリカへ導くゾル−ゲル法を介して製造することができる。官能化固体はそのまま、即ち、粉末状形態、ゼオライト膜の形態、又は膜における他の重合体との混合、又は固体押出物の形態、又は例えば、コーディエライトのモノリスの様な、例えば構造的無機支持体のコーティングなどにおける多くのその他の方法において使用可能である。
【0029】
(5)最も一般的には、式HxPMyzを有する不均一系のヘテロポリ酸。この式において、Pは中心原子、典型的にはケイ素又はリンを意味する。周辺原子は、中心原子を一般的には対称的に取り囲む。最も共通した周辺原子、M、は、V、Nb及びTaはまた、その目的のために好適ではあるが、通常は、Mo又はWである。指数XYZは、公知の手法で、分子中の原子の割合を定量化し、そして、型どおりに決定できる。これらのポリ酸は、良く知られている様に、多くの結晶形態中に見られるが、しかし、不均一系の化学種に対する最も多い共通の結晶形態はKeggin構造である。その様なヘテロポリ酸は、高い熱安定性を示し、非腐食性である。不均一系のヘテロポリ酸は、好ましくは、シリカゲル、珪藻土、カーボン、カーボンナノチューブ及びイオン交換樹脂から選択された支持体上で使われている。本発明で使われる好ましい不均一系のヘテロポリ酸は、式 H3PM1240で表すことができ、ここで、Mは、W及び/又はMoを意味する。好ましいPM部分の実例は、PW12、PMo12、PW12/SiO2、PW12/炭素及びSiW12で表すことができる。
【0030】
本発明で使われる不均一系の触媒は、一般には、本技術領域で、よく知られたレベルで使用される。触媒レベル決定のための最終的な基準は、もちろん、反応、即ち、亜リン酸のホスホン酸化合物への転換の完結にある。定量的な触媒レベルは、この点に関して、ごく普通に最適化できる。触媒は全ての反応媒質の全体で(例えば、分散した非混和性触媒)、又は局部的に(例えば固定床に、又は膜若しくは同等の構造に)、使用可能であることを考慮すれば、その様な場合、触媒量は共反応物質との関連で定義することができない。アミン及び触媒などの反応物の相対レベルの間の相関関係に関わらず、非常に低レベルの触媒で、本発明技術内において、ホスホン酸への高転換を有利に達成できることが実験的に確立された。特に、バッチプロセスの装置において、例えば、連続的に撹拌するタンク反応器(CSTR)において、不均一系触媒(d)との直接接触(CSTR)におけるアミン(b)の比は、一般的には、40:1〜1:5であり、(b)はアミン中のN−H官能基の数を掛けたモル数を表す。触媒(d)は、触媒プロトン当量を表す。固定床構造においては、不均一系触媒(d)と直接接触するアミン(b)のみが考慮されることになろう。固定床構造において、アミン(b)の触媒(d)との比率は、CSTR用として示されているように表して、しばしば、10:1〜1:40の範囲内である。
【0031】
不均一系のブレンステッド酸触媒は、本技術領域でよく知られた多くの製造運転装置において、使うことができる。触媒は、例えば、固定床構造で、又は連続撹拌タンク反応器(CSTR)で、又は膜装置で、又は反応混合物中に懸濁して、又は反応混合物との混合で使用可能である。不均一系触媒は、重要な操作上の及び経済上の利点をもたらすことは特に注目に値する。触媒は、例えば、一般に、それ自体でリサイクル及び再使用可能であるが、最低限の非破壊的な処理、例えば水又は酸でのすすぎで整えることもできる。
【0032】
本発明に従う反応は、本技術領域においてごく普通に知られた方法で行われる。実験の部で説明する様に、本方法は、必須の反応物質を組み合わせ、この反応混合物を、通常は45℃から200℃の範囲内の温度、圧力が上昇したらより高い温度で、より好ましくは70℃〜150℃の温度に加熱される。高い方の温度は、亜リン酸反応物の実質的に不必要な熱分解を防ぐことを実際上目的とする。亜リン酸反応物及び一般的に多くのその他の個々の反応物の分解温度は、例えば圧力及び反応混合物中の共反応物の質的及び量的パラメータなどのさらなる物理的パラメータに依存して変動し得ることは当然であり、かつ良く知られている。
【0033】
本発明の反応は、反応温度に依存するが、水の蒸留下で、常圧で行うことができ、それにより、極くわずかな非反応性ホルムアルデヒドをも排除することができる。反応の持続時間は、比較的短時間、例えば、30分から、例えば約4時間の長時間まで変動し得る。この持続時間には、一般的に、ホルムアルデヒド及び他の可能性のある反応物を反応中に徐々に添加することが含まれる。設定した1つの方法において、亜リン酸、アミン及び酸触媒は、反応器に加えられ、次いで、この混合物を、ホルムアルデヒド成分を徐々に添加しつつ、例えば70℃〜150℃の範囲内の温度で開始して加熱する。この反応は、常圧で、通常、水及び幾分かの未反応のホルムアルデヒドの蒸留又は蒸留することなしに実施できる。
【0034】
別の操作態様において、反応は密閉容器内で、蓄積される自生圧力(aoutogeneous pressure)の下で行うことができる。この方法において、全体又は一部の反応物は、反応開始時に反応容器に加えられる。一部の反応混合物の場合、追加の反応物は、効果的な反応温度に到達したら直ちに、単品で、又は他の反応物の何れか1つ又はそれ以上と一緒に徐々に加えることができる。ホルムアルデヒドを、効果的な反応中に、徐々に加えることは、実施例において説明されている。ホルムアルデヒド反応物は、例えば、それ単品、又はアミン若しくは亜リン酸の一部と一緒に、反応の間に徐々に加えることができる
【0035】
さらにもう一つの操作手順において、反応は蒸留と圧力調整を組み合わせて行うことができる。具体的には、反応混合物を含む反応容器は、常圧下、選択された反応温度において維持される。その後、混合物は、蓄積される自生圧力(オートクレーブの原理)下で操作する反応器を通して、できる限り継続的に、循環し、それによりホルムルデヒド又は追加の反応物を必要に応じて徐々に添加する。好ましい実施においては、密閉された反応器は、想定される反応に対してどんな構造が好適であろうとも、不均一系のブレンステッド酸触媒を含む。反応は実質的に圧力下で完了し、そして反応混合物はその後、密閉容器から出され、反応容器内へ、再還流され、ここで水及び他の未反応成分の蒸留が、反応変数、特に温度に依存して起こり得る。
【0036】
前述のプロセス変数は、それ故、反応が実質的に補完的な多様な態様により行えることを示している。反応は、かくして、初めの反応物、通常は、亜リン酸、アミン及び酸触媒を、(1)密閉容器中、蓄積自生圧力下で、又は(2)還流条件下で、又は(3)水及び極くわずかな未反応のホルムアルデヒドの蒸留下で、好ましくは、70℃〜150℃の温度範囲内に加熱することによってバッチプロセスとして行うことができ、それにより、ホルムアルデヒド成分が、実施例において示す様に、反応の間に徐々に加えられる。特に好ましい実施態様において、反応は、密閉容器中、100℃〜150℃の範囲内の温度で、特にホルムアルデヒドの漸進的な添加と同時に行なうことにより、反応を進めることができる。
【0037】
別のアプローチにおいて、反応は、できる限り、自生圧力下において、連続的な方法として行われ、それにより反応物は、好ましくは70℃〜150℃の範囲内の温度で、反応混合物に連続的に注入され、そして、ホスホン酸反応生成物は継続的に回収される。
【0038】
また、さらにもう一つの態様において、本方法は、半連続的構成として表すことができ、ホスホン酸反応は継続的に行われるが、一方、一部の成分間の予備的反応は、バッチ方式で行なうことができる。
【0039】
以下の実施例は、請求項記載の技術を説明し、その理解を助けるものである。
【0040】
〔実施例1〕
アミノポリメチレンホスホン酸化合物は、リストされた成分を記載された割合で反応させることにより製造した。
【表1】

【0041】
亜リン酸、アンバーリスト(Amberlyst)−36及びアンモニアの混合物を、撹拌しつつ、105℃に加熱し、この温度でホルムアルデヒドを徐々に加え始め、蒸留下、4時間20分に亘って加熱した。
【0042】
反応生成物を31P−NMRスペクトル法で分析した。反応生成物中に存在する、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)及びN−メチレンイミノビス(メチレンホスホン酸)(N−MeIBMPA)の主要なレベルは、以下の通り:
ATMP 67.5%;
N−MeIBMPA 6.3%;
3PO3 15.9%;
であることが分かった。
【0043】
〔実施例2〕
更に、アミノポリメチレンホスホン酸を、ホルムアルデヒドの添加持続時間、リストされた物質が、以下の通りであることを除いて、実施例1の操作手順で反応させることにより製造した。
【表2】

【0044】
ホルムアルデヒドを、105℃から始め、2時間30分間に亘たる蒸留下に加えた。
反応生成物を実施例1の方法を用いて分析し、次の主要な成分レベル:
ATMP 62.7%;
N−MeIBMPA 8.4%;
3PO3 21.1%;
を示した。
【0045】
〔実施例3〕
ATMP組成物は、リストされた成分を記載された割合で反応させることにより、製造された。
【表3】

【0046】
ペルフルオロウンデカン酸触媒は、反応条件下では、反応媒質に非混和性である。全ての反応物は、ホルムアルデヒドを除いて、加熱を始める前に、加圧オートクレーブに充填した。ホルムアルデヒドを120℃の温度で始めて、2時間の間に加えた。
【0047】
反応生成物を実施例1に従って分析し、次の主要生成物が含まれていた。
ATMP 58.6%
N−MeIBMPA 14.6%
3PO3 14.4%
3PO4 5.6%
【0048】
更に、アミノポリメチレンホスホン酸組成物を、以下に提示したリスト成分を反応させて製造した。
【表4】

【0049】
亜リン酸、ペルフルオロウンデカン酸及びアンモニアを、反応容器に、周囲条件下で加えることにより反応混合物を調製した。反応混合物はその後、120℃に加熱し、そして、ホルムアルデヒドを、120℃から加え始め、120分間に亘って徐々に加えた。
【0050】
反応生成物を実施例1の方法に従って分析し、以下の通りのホスホン酸成分の主要レベルの生成を確認した。
【表5】

【0051】
分析結果より、実質的にかなりのレベルの未反応の亜リン酸が生成し、そして同時にリン酸の生成の減少が示されたことから、その反応条件では最適化のために十分な余地があることのさらなる観察も伴ってハイレベルの所望のホスホン酸化合物の生成が確認された。
【0052】
さらなるアミノポリメチレンホスホン酸組成物は、次の通りに製造した。
【0053】
〔実施例7〕
平均56%の水を含有する市販の湿潤アンバーリスト36樹脂(114g)を、水中の亜リン酸(87.14%、100g)溶液に数回浸し、各回で、浸した樹脂を15分間かき回し、次いで、水相を分離させ、そしてそれを新たな亜リン酸溶液で置換した。この浸漬工程は3回繰り返し、そして得られたアンバーリスト樹脂には、亜リン酸(52.37g)及び水(11.46g)を含むことが分かった。この方法なので、67.80gの亜リン酸が必要で、15.43gのH3PO3を加え、従って触媒中に存在する量を補完した。亜リン酸成分をアンバーライト触媒に加え、次いで混合物を室温でアンモニア(14.34g、32%溶液)を添加しながら撹拌した。この混合物に、引き続いて、加圧オートクレーブ中において、かき回しながら、125℃で加え始めて、60分間に亘って、ホルムアルデヒド(69.70g、0.8505mole:36.6%溶液)を加えた。樹脂をその後反応混合物から濾過により分離し、そして次の実施例における触媒としてそのまま使うことができた。
【0054】
〔実施例8〕
実施例8のリサイクルした触媒を、室温で、亜リン酸(67.8g、0.8268mole)、アンモニア(14.34g、0.8505mole:32%溶液)と混合した。ホルムアルデヒド(69.70g、0.8505mole:36.6%溶液)をその混合物に、加圧オートクレーブ中、125℃から加え始め、60分に亘って加えた。
【0055】
実施例7及び8の反応生成物を実施例1に準じて分析し、ホスホン酸の主レベルが次の通りに生成されたことを示した。
【表6】

【0056】
アミノメチレンホスホン酸の合成において、触媒のリサイクルが有効であることがデータで示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化水素酸が、亜リン酸成分(100%)のレベルとの関連で表して、0.4質量%以下しか存在しない条件下のアミノアルキレンホスホン酸の製造方法であって、50%又はそれ以上のアミン原材料中の、全ての利用可能なN−H官能基を、以下:
(a)亜リン酸;
(b)アミン;及び
(c)ホルムアルデヒド;
を、以下の反応物比率:
(a):(b)は0.05:1〜2:1であり;
(c):(b)は0.05:1〜5:1であり;そして
(c):(a)は5:1〜0.25:1である;
(ここで、(a)及び(c)は使用しようとするモル数を意味し、かつ(b)はアミン中のN−H官能基の数を掛けたモル数を表す)で、反応媒質に対して不均一系のブレンステッド酸触媒[該ブレンステッド酸触媒は、以下:
(1)固体酸性金属オキシド組合せそれ自体、又はその担体物質上へ坦持されたもの;
(2)SO3H部分を芳香族基上にグラフトするように官能化された、スチレン、エチルビニルベンゼン及びジビニルベンゼンの共重合体、並びにカルボン酸基及び/又はスルホン酸基を有するペルフルオロ化された樹脂を含むグループから選択されるカチオン交換樹脂;
(3)反応温度で反応媒質に実質的に非混和性である有機スルホン酸及びカルボン酸のブレンステッド酸;
(4)以下:
(i)その上に有機ブレンステッド酸を析出させる孤立電子対を有する固体支持体の相互作用;又は
(ii)その上に化合物を析出させる孤立電子対を有し、ルイス酸サイトを有する固体支持体の相互作用:
(iii)ブレンステッド酸基又はその前駆体で化学グラフトすることにより官能化された不均一系固体:
から誘導される酸触媒;
(5)一般式HxPMyz(式中Pはリン及びケイ素から選択され、MはW及びMo並びにその組合せから選択される)の不均一系へテロポリ酸;
のグループから選択される]
の存在下で反応させて、対応するアルキレンホスホン酸に転換し、次いで、自体既知の方法で生成されたアミノアルキレンホスホン酸を回収することによる、アミノアルキレンホスホン酸の製造方法。
【請求項2】
反応物比率が、
(a):(b)は0.1:1〜1.50:1であり、
(c):(b)は0.2:1〜2:1であり、そして
(c):(a)は3:1〜0.5:1である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応が、45℃〜200℃の範囲内の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項4】
反応物比率が、
(a):(b)は0.4:1〜1.0:1.0であり、
(c):(b)は0.4:1〜1.5:1であり、そして
(c):(a)は2:1〜1.0:1である、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
反応が、70℃〜150℃の範囲内の温度で、以下:
−常圧下、水及び未反応のホルムアルデヒドの蒸留下又は蒸留なしで反応を行い;
−蓄積された自生圧力下の密閉容器内で;
−蒸留と圧力調整の組み合わせで、それにより反応混合物を含む反応容器を反応温度で常圧下に維持し、次いで反応混合物を蓄積された自生圧力下で操作される反応器を通して循環させ、それによりホルムアルデヒド及び必要に応じて選択された他の反応物を徐々に加え;そして
−できる限り、蓄積された自生圧力下の連続したプロセス調整で、それにより、反応物を反応混合物へ連続的に注入させ、そしてホスホン酸反応生成物を継続的に回収する;
から選択されるアプローチと組み合わせて行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アミンが、
−アンモニア;
−1〜100の炭素原子を有する個々の炭化水素基を含む、第一級及び第二級アミン(ここで、該炭化水素部分は、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル部分若しくは環状アルキル部分、又は、芳香族若しくは多環芳香族部分、又は、それらの組み合わせで表わされる);
−ポリアミン;及び
−アルコキシ化された若しくはチオアルコキシ化された基、及び/又はトリアルキルシリル、ヒドロキシル、カルボン酸若しくはスルホン酸若しくはそれらの酸のエステル、若しくはそれらの組合せを含む官能基を含有する第一級及び第二級アミン又はポリアミン;のグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
アミンが、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、アニリン及びシクロヘキシルアミンから選択される請求項1または6記載の方法。
【請求項8】
アミンが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(プロピレン)エチレンテトラミン、ジ(ヘキシレン)トリアミン、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミンのグループから選択されるポリアミンである請求項1または6記載の方法。
【請求項9】
亜リン酸反応物が、既知の手法で、2000百万分率(ppm)以下しかハロゲン化水素酸が存在しない条件下で製造される請求項1記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化水素酸が亜リン酸(100%)のレベルとの関連で表して0.2質量%以下しか存在しない条件下で、
(i)元素リンを水と、200℃未満の温度で、水との反応によりリンの酸化を促進させるのに効果的な触媒の存在下で接触させ;又は、
(ii)P(V)化学種を、水素の様な還元剤と、還元触媒の存在下で接触させ;
又は、
(iii)亜リン酸エステル及びリン酸エステルを含む加水分解供給混合物を液状の水及び蒸気と接触させ、それにより、亜リン酸エステルを亜リン酸に加水分解させる;
ことによって、亜リン酸を製造する請求項9記載の方法。
【請求項11】
元素リンが、四リンである請求項10記載の方法。
【請求項12】
三塩化リンを、カルボン酸;スルホン酸;及びアルコールのグループからの反応試剤と反応させ、次いで塩素含有生成物及び未反応の原材料を、蒸留又は相分離で排除することによって亜リン酸を製造する請求項1記載の方法。
【請求項13】
塩素含有生成物を、亜リン酸成分(100%)のレベルとの関連で表して、2000百分率(ppm)の又はそれ以下まで実質的に排除する請求項12記載の方法。
【請求項14】
三塩化リンの加水分解、次いで塩酸及びその他塩化物中間体を、亜リン酸(100%)のレベルとの関連で表して、2000ppm以下のレベルまで排除することによって亜リン酸を製造する請求項1記載の方法。
【請求項15】
有機ブレンステッド酸が、6個〜24個の炭素原子を炭化水素鎖に有するフッ素化カルボン酸及びフッ素化スルホン酸から選択される請求項1記載の方法。
【請求項16】
ブレンステッド酸触媒がペルフルオロウンデカン酸で表わされる請求項15記載の方法。
【請求項17】
不均一系のヘテロポリ酸におけるPM部分が、PW12、PMo12、PW12/SiO2、PW12/カーボン及びSiW12のグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項18】
反応が、連続的に撹拌するタンク型反応器(CSTR)及び固定床から選択される装置内で行われ、ここで、アミン(b)が不均一系触媒との直接接触では、アミン(b)の不均一系触媒(d)に対する比は、CSTRにおいては、40:1〜1:5の範囲内であり、固定床においては、10:1〜1:40の範囲内[(d)は触媒のプロトン当量数で表した数である]である、
請求項1記載の方法。
【請求項19】
第一級及び第二級アミンにおける個々の炭化水素基が、1〜50個の炭素原子を有する請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2008−526901(P2008−526901A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550687(P2007−550687)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011968
【国際公開番号】WO2006/074730
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507239570)サームフォス・トレイディング・ゲー・エム・ベー・ハー (9)
【Fターム(参考)】