説明

不干渉型分子足場内に相変化物質を含有している温度変化組成物を含むティッシュ製品

ティッシュペーパー(フェイシャルティッシュ)などのワイプ製品は、ユーザの皮膚と接触したときに冷却感を与えることができる温度変化組成物を含んでいる。前記温度変化組成物は、相変化物質と、不干渉型分子足場とを含んでいる。前記相変化物質は、一実施形態では、比較的高い融解熱を有することができる。相変化を起こしたときに、前記温度変化組成物が熱を吸収することにより、ユーザの皮膚に冷却感またはひんやり感を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの皮膚に冷却感を与える温度変化組成物及びそれを用いたティッシュ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な利点を提供するために、種々のヘルスケア製品または化粧品が皮膚に塗布される。そのような製品には、例えば、ローション、クリーム、保湿剤などが含まれ得る。或る場合では、上記製品は、皮膚に塗布したときに冷却感やひんやり感を与えることを目的としている。既存の製品は、通常、皮膚冷却物質を他の物質と組み合わせることによって皮膚に冷却感を与えている。
【0003】
皮膚に冷却感を与える方法には様々なものがあり、そのような方法には、蒸発、神経感覚成分または熱力学的物質(物理的変化を生じさせるもの。例えば相変化物質など)を使用する方法が挙げられる。冷却物質の一例はメントールである。メントールは、身体の温度知覚神経終末に対して生理的または神経感覚的な影響を及ぼすことにより冷却感を与える。メントールによる冷却感は、蒸発潜熱によってもたらされるものではなく、神経終末の冷受容体(冷点)を直接刺激した結果だと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT国際公開第WO2006/007564
【特許文献2】PCT特許出願第IB2009/051515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却感を与えるための相変化物質の使用については、例えば、「化粧品組成物および感覚的冷却方法」という標題のPCT国際公開第WO2006/007564号(特許文献1)に記載されている(特許文献1の内容は参照により本明細書に援用されるものとする)。特許文献1には、日焼け後に使用する製品、髭剃り後に使用する製品、または肌を保湿する製品として使用するためのローション形態のスキンケア化粧品組成物が記載されている。皮膚に冷却感を与えるために、皮膚から熱を吸収する成分が前記ローション中に含まれている。具体的には、皮膚から熱を吸収して融解する成分が前記ローション中に含まれている。前記成分は比較的高い融解熱を有している。融解熱は、特許文献1において、或る固体化学元素を同一温度で固体から液体に変換するために前記元素の融点において吸収される熱を単位質量当たりの数値で表したものと定義されている。特許文献1の記載には、比較的高い融解熱が皮膚からの熱吸収を促進し、皮膚に塗布された固体成分を融解させ、それにより皮膚温度を冷却するとされている。しかし、上記の技術には、スキンケア化粧品がユーザの皮膚と直接的に接触して、相変化物質が皮膚刺激を引き起こす恐れがあるという問題があった。
【0006】
冷却感を与えるためにティッシュ製品に相変化物質を使用することは、例えば、「皮膚と接触したときに冷却感を与えるティッシュ製品」という標題のPCT特許出願第IB2009/051515号(特許文献2)に記載されている。この特許文献2には、冷却感を与えるために、ドライティッシュウェブの複数の層の間に配された相変化物質を、ティッシュ製品の外面に形成された別個の疎水性ローション層と共に使用することが開示されている。しかし、上記の技術には、前記疎水性ローション層の成分が前記疎水性相変化物質へ移動して、前記相変化物質の冷却能力を損なわせるおそがあるという問題があった。また、前記相変化物質が、ティッシュ外面の前記ローション層へ移動して、皮膚を刺激するおそれもあった。
【0007】
上記の製品は、皮膚に直接的に接触させることが意図されている。そのため、ティッシュなどの基材上または基材中に相変化物質を効果的に、つまり皮膚に冷却感を与えることができ、かつ皮膚を刺激しないように保持することができる手段が求められている。また、相変化物質を、炎症が生じた鼻を湿潤、冷却または鎮痛するために鼻へ送達させることができ、かつ皮膚を刺激しないように保持することができるティッシュなどの基材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、概してドライワイプ製品に関し、特に、皮膚に押し当てたときに冷却感を与えることができるドライティッシュ製品に関する。例えば、一実施形態では、前記ドライ基材はティッシュペーパー(フェイシャルティッシュ)であり得る。ティッシュペーパーは、ユーザの鼻に対して快適さを提供するために使用することができる。例えば、風邪をひいたときに、人の鼻は炎症を起こして痛むことがある。一実施形態では、本発明は、人の鼻をかむためだけに使用されるのではなく、鼻に冷却感を与え、それにより快適さや鎮痛効果をもたらすことができるティッシュ製品に関する。
【0009】
本発明のドライ基材は、単独のまたは合成繊維と組み合わせたパルプ繊維などの少なくとも1つの繊維ウェブから製造された製品であり得る。相変化成分と不干渉型分子足場(non-interfering molecular scaffold)とを含んでなる温度変化組成物が、前記ウェブの少なくとも1つの面上に配される。前記相変化成分は、ドライティッシュまたは同様のドライワイパ製品の使用中にユーザの皮膚を冷やすために、約20℃ないし約32℃の温度で相変化を起こす。
【0010】
本発明の温度変化組成物に含まれる相変化物質は、具体的用途または所望する結果に応じて様々であり得る。前記相変化物質は、例えば、油溶性及び疎水性を有する材料であり得る。前記相変化物質の例としては、炭化水素、ワックス、油、天然バター、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基エステル、1−ハロゲン化物、第1級アルコール、芳香族化合物、無水物、炭酸エチレン、多価アルコール、またはそれらの混合物が挙げられる。例えば、一実施形態では、本発明の温度変化組成物は複数の相変化物質を含むことができる。本発明への使用に好適な相変化物質の具体的な例には、トリカプリン、パラフィン、ナノデカン、オクタデカン、ヘプタン酸ステアリル、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ババス油脂肪酸セチル、マニフィーラ・インディカ(マンゴー)シードバター、テオブロ・マカカオ(カカオ)シードバター、ブチロスパーマム・パーキー・バター、Di−C12−15フマル酸アルキル、カプリル酸ステアリル、乳酸セチル、酢酸セチル、C24−28アルキルメチコン、ジラウリン酸グリセリル、ステアルアミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸、ホホバエステル、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0011】
前記相変化物質は、本発明の温度変化組成物の約1重量%ないし約99.9重量%、より望ましくは約20重量%ないし約90重量%、さらに望ましくは約50重量%ないし約90重量%の量で含まれ得る。
【0012】
例示的な実施形態では、前記不干渉型分子足場は、6個ないし約50個、より望ましくは10個ないし約30個の炭素原子鎖長を有する脂肪アルコール及び脂肪酸から選択される結晶質希釈剤(crystalline diluent)であり得る。前記脂肪酸の適切な一例には、ヒドロキシステアリン酸が含まれる。
【0013】
他の実施形態では、前記不干渉型分子足場は、ポリエチエン、ポリC10−30アクリル酸アルキル、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸クロスポリマー、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸ブチルジメチコンクロスポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーである。別の実施形態では、前記不干渉型分子足場は、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロックコポリマー、水素化ラジアルブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるブロックコポリマーであり得る。
【0014】
前記不干渉型分子足場は、前記温度変化組成物の約1重量%ないし約50重量%、望ましくは約2重量%ないし約45重量%、より望ましくは約5重量%ないし約40重量%の量で含まれ得る。
【0015】
本発明の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)は、以下の添付図面の参照を含む本明細書の残りの部分により詳しく示されている。
【0017】
【図1】本発明により作製されたワイプ製品の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示したワイプ製品の断面図である。
【図3】本発明より作製されたワイプ製品の別の実施形態の断面図である。
【図4】本発明より作製されたロール状に巻かれたトイレットペーパー製品の一実施形態の斜視図である。
【0018】
本明細書及び図面において繰り返し用いられている参照符号は、本発明の同一または類似の機構または要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中の記載が例示的な実施形態を説明しているに過ぎず、本発明のより広範な態様の制限を意図していないことは、当業者には理解できるであろう。
【0020】
本明細書においてティッシュまたはワイプ製品を説明するために用いられる「ドライ(乾燥)」は、前記製品に一般的に関連する平衡水分を超えるいかなる水分も前記製品に供給されないことを意味する。「平衡水分」は、大気条件に長時間曝されたときに前記シートが含む水分である。前記シートに含まれる平衡水分は、相対湿度及び温度が同一であれば経時的に変化しない。本発明のドライ製品は、日常的な使用中に遭遇するほとんどの大気条件下で、一般的に15%未満、例えば10%未満、あるいは例えば約3%ないし約8%の平衡水分含量を有するであろう。
【0021】
本明細書において用いられる熱吸収量(J/m)は、冷却組成物の融解熱(J/g)と、前記冷却組成物のティッシュ製品への塗布率(g/m)との積として定義される。
【0022】
融解潜熱及び融点は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される。本明細書において定義される融点は、DSC法によって測定されたピーク融解温度を指す。複数のサンプルを、下記の実験手順を用いて、TAインスツルメンツ社(TA Instruments)製のDSC 2920 Modulated DSC(標準セル)で分析した。それぞれの材料約5mgを0.1mg単位まで秤量した。前記サンプルを、不活性ガス(N)雰囲気中で、−50℃ないし100℃の温度範囲で、10℃/分の加熱/冷却速度で試験した。それぞれの融解ピークでの積分から融解熱(△H)を計算した。報告された結果は、3回の加熱/冷却サイクルの平均値である。
【0023】
本発明は一般的に、肌が受け取る利益を向上させたドライティッシュ製品などのドライワイプ製品に関する。具体的には、本発明に従って作製されたワイプ製品は、皮膚と接触したときに冷却感あるいはひんやり感を与えることができる。冷却感は、例えば、荒れた皮膚に対して、快適さと痛みを和らげる感覚とを与えることができる。また、トイレットペーパーに用いた場合、冷却感が濡れた感覚を引き起こし、それにより清拭感が向上することも分かっている。一実施形態では、本発明のワイプ製品は、冷却組成物が皮膚に移行することができるが、相変化物質がユーザの皮膚に接触することを抑制または阻止するようにして、冷却感を与えるように設計することができる。
【0024】
一実施形態では、例えば、本発明は、温度変化組成物を含む、ティッシュペーパー製品などのドライワイプ製品に関する。温度変化組成物には、温度が上昇したときに相変化を起こす少なくとも1つの相変化物質が含まれる。相変化物質は、例えば、該相変化物質が大量の熱エネルギーを吸収して周囲よりも低温にすることを可能にする、比較的高い融解熱を有することができる。具体的には、例えばユーザの皮膚と接触してワイプ製品が加熱されると、相変化物質はその融点まで急速に昇温する。融解熱は高い温度なので、相変化物質が融解するまで、大量の熱を吸収することができる。その結果、ユーザの皮膚に冷却感が与えられる。
【0025】
図1を参照すると、本発明に従って作製されたティッシュ製品10の一実施形態が示されている。ティッシュ製品10は、様々な繊維製品から作製された任意の適切なベースシートであり得る。ティッシュ製品10は、単プライの製品であり得るか、あるいは互いに積層された複数のティッシュウェブを含み得る。
【0026】
ティッシュ製品10の作製に使用され得るティッシュウェブは一般的に、パルプ繊維を単独でまたは他の繊維と組み合わせて含み得る。各ティッシュウェブは一般的に、少なくとも2cc/g、例えば少なくとも3cc/gのバルク密度を有し得る。
【0027】
ティッシュウェブの作製に適した繊維には、あらゆる天然または合成セルロース繊維が含まれ、そのようなものには、これらに限定しないが、例えば、繊維コットン、アバカ、ケナフ、サバイグラス、亜麻、アフリカハネガヤ、わら、ジュートヘンプ、バガス、トウワタフロス繊維、パイナップル葉繊維などの非木質繊維;北方及び南方針葉樹クラフト繊維などの針葉樹繊維を含む、針葉樹及び落葉樹から得られる木質繊維またはパルプ繊維などの木質繊維またはパルプ繊維;ユーカリ、カエデ、バーチ、ポプラなどの広葉樹繊維が含まれる。パルプ繊維は、高収率または低収率の形態で作製されることができ、かつ、クラフトパルプ化法、サルファイト法、高収率パルプ化法及び他の既知のパルプ化法を含む任意の既知の方法によってパルプ化することができる。オルガノソルブパルプ化法によって作製した繊維を使用することもでき、そのような繊維及び方法には、米国特許第4,793,898号、同第4,594,130号、同第3,585,104号に開示されている繊維及び方法が含まれる。有用な繊維は、米国特許第5,595,628号に例示されているアントラキノンパルプ化法によって作製することもできる。
【0028】
前記繊維の一部、例えば、乾燥重量で最大で50%以下、または乾燥重量で約5%ないし約30%は、レーヨン、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、鞘芯型複合繊維、多成分バインダー繊維などの合成繊維であり得る。例示的なポリエチレン繊維は、米国デラウエア州ウィルミントン所在のハーキュリーズ社(Hercules, Inc.)製のPulpex(登録商標)である。任意の既知の漂白方法を用いることができる。合成セルロース繊維の種類には、あらゆる種類のレーヨン及び他のビスコースまたは化学修飾セルロース由来の繊維が含まれる。マーセル化パルプ、化学的に補強または架橋された繊維、またはスルホン化繊維などの、化学的に処理された天然セルロース繊維を使用することもできる。製紙用繊維を使用することもできる。製紙繊維を用いるときに良好な機械的特性を得るために、繊維は、比較的無傷で大部分は叩解されていないかあるいは軽く叩解されているだけであることが望ましい場合がある。再生繊維を用いることもできるが、一般的にはバージン繊維が機械的特性に優れかつ汚染物質を含有しないので有用である。マーセル化繊維、再生セルロース繊維、微生物産生セルロース、レーヨン、並びに、他のセルロース材料またはセルロース誘導体を使用することもできる。適切な製紙繊維には、再生繊維、バージン繊維、またはこれらの混合物を含めることもできる。高いバルク及び良好な圧縮特性が可能な特定の実施形態では、高いバルク及び良好な圧縮性を得ることが可能ないくつかの実施形態では、前記繊維は、少なくとも200、具体的には少なくとも300、より具体的には少なくとも400、さらに具体的には少なくとも500のカナダ標準ろ水度を有し得る。
【0029】
本発明に使用することができる他の製紙用繊維には、損紙または再生繊維、並びに高収率繊維が含まれる。高収率パルプ繊維は、約65%以上、具体的には約75%以上、より具体的には約75%ないし約95%の収率を提供するパルプ化工程によって生産される製紙用繊維である。収率は、最初の木材質量に対する割合として表される、実際に生産された繊維の量である。そのようなパルプ化工程には、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧力/圧力サーモメカニカルパルプ(PTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、サーモメカニカルケミカルパルプ(TMCP)、高収率亜硫酸パルプ、高収率クラフトパルプが含まれ、これらは全て、最終的に得られた繊維に高濃度のリグニンを残す。高収率繊維は、乾燥及び湿潤の両状態において、典型的な化学的にパルプ化した繊維と比べてこわさが高いことでよく知られている。
【0030】
一般的に、ティッシュウェブを形成することができる任意の工程を本発明に用いることもできる。例えば、本発明の製紙工程は、クレープ加工、湿式クレープ加工、ダブルクレープ加工、エンボス加工、湿式加圧、空気加圧、通気乾燥、クレープ加工ありの通気乾燥、クレープ加工なしの通気乾燥、水流交絡、エアレイ法、または当分野で既知の他のステップを利用することができる。
【0031】
ティッシュウェブは、少なくとも約50重量%、例えば少なくとも約60重量%、例えば少なくとも約70重量%、例えば少なくとも約80重量%、例えば少なくとも約90重量%、例えば100重量%の量のパルプ繊維を含む繊維製品から形成され得る。
【0032】
また、パターンが高密度化または刻印されたティッシュシートも本発明の製品に適しており、そのようなものとしては、例えば、米国特許第4,514,345号、同第4,528,239号、同第5,098,522号、同第5,260,171号、同第5,275,700号、同第5,328,565号、同第5,334,289号、同第5,431,786号、同第5,496,624号、同第5,500,277号、同第5,514,523号、同第5,554,467号、同第5,566,724号、同第5,624,790号、同第5,628,876号に開示されているティッシュシートがある(これらの特許文献の内容は、本明細書と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に援用されるものとする)。このような刻印されたティッシュシートは、インプリンティングファブリックimprinting fabric)によってドラムドライヤーに刻印された高密度化領域と、インプリンティングファブリックのデフレクションコンジット(deflection conduit)に対応する比較的高密度化されていない領域(例えば、ティッシュシート内の「ドーム」)とを含む網状構造を有し得る。デフレクションコンジット上に置かれたティッシュシートは、デフレクションコンジットの空気圧差によって偏向させられ、より低密度の枕のような領域またはドームがティッシュシート内に形成される。
【0033】
ティッシュウェブは、相当量の内部繊維間結合強度を持たないように形成することもできる。この関連で、ベースウェブを形成するために使用される繊維製品を、化学剥離剤で処理することもできる。前記剥離剤は、パルプ化工程中に繊維スラリーに添加するか、またはヘッドボックスに直接的に添加することができる。本発明で使用され得る適切な剥離剤には、カチオン性剥離剤、例えば、脂肪族ジアルキル第4級アミン塩、モノ脂肪族アルキル第3級アミン塩、第1級アミン塩、イミダゾリン第4級塩、シリコン第4級塩、及び不飽和脂肪アルキルアミン塩が含まれる。他の適切な剥離剤は米国特許第5,529,665号に開示されている(この特許文献の内容は、参照により本明細書に援用されるものとする)。具体的には、この特許文献には、剥離剤としてのカチオン性シリコン組成物の使用が開示されている。
【0034】
一実施形態では、本発明の工程において使用される剥離剤は、有機第4級塩化アンモニウム、とりわけ第4級塩化アンモニウムのシリコンベースのアミン塩である。例えば、剥離剤は、ハーキュリーズ社(Hercules Corporation)から販売されているPROSOFT(登録商標)TQ1003であり得る。前記剥離剤は、繊維スラリーに、該スラリー中に存在する繊維1メトリックトン当たり約1kgないし約10kg添加され得る。
【0035】
別の実施形態では、前記剥離剤は、イミダゾリンベースの薬剤であり得る。イミダゾリンベースの剥離剤は、例えば、米国コネチカット州グリニッジ所在のウイト社(Witco Corporation)から入手可能である。イミダゾリンベースの剥離剤は、1メトリックトン当たり2.0ないし約15kg添加されることができる。
【0036】
一実施形態では、前記剥離剤は、PCT出願国際公開第WO99/34057号または同第00/66835号に開示されている工程に従って繊維製品に添加することができる(前記両文献の内容は、参照により本明細書に援用されるものとする)。上記の両文献には、剥離剤などの化学添加物を、製紙用セルロース繊維上に高濃度で吸収させる工程が開示されている。この工程は、繊維スラリーを過剰な化学添加物で処理するステップと、十分な滞留時間をかけて、吸収を行わせるステップと、スラリーをろ過して未吸収の化学添加物を除去するステップと、不織ウェブを形成する前に、ろ過したパルプをきれいな水に再分散させるステップとを含む。
【0037】
製品及び工程にさらなる利益を与えるために、任意選択の化学添加物が、含水製紙完成紙料または形成された初期ウェブに添加されることもあるが、このことは、本発明のドライ基材の所望の利益とは対立しない。本発明の温度変化組成物と共に前記ウェブに適用され得る追加的な化学薬品の例としては、次の物質が含まれる。前記化学物質は、例として含まれるものであり、本発明の範囲の制限を意図するものではない。このような化学物質は、パルプ作製工程中に前記添加組成物に同時に添加することを含めて、製紙工程の任意の時点で添加され得る。このとき、上記の1若しくは複数の添加物は、前記追加的組成物と直接的に混合される。
【0038】
前記紙ウェブに添加され得る化学物質のさらなる例には、これらに限定しないが、通常はカチオン性、アニオン性または非イオン性の界面活性剤の形態を取る吸収助剤、低分子量ポリエチレングリコールなどの保湿剤または可塑剤、並びにグリセリンまたはプロピレングリコールなどのポリヒドロキシ化合物が含まれる。スキンヘルス効果を与える材料、例えば、鉱油、アロエ抽出物、ビタミンE、シリコン、ローションなどを最終製品に含めることもできる。
【0039】
一般的に、本発明の製品は、その使用目的と対立しない任意の既知の物質または化学物質と共に使用することができる。このような物質の例には、これらに限定しないが、臭気制御剤、例えば、臭気吸収剤、活性炭繊維及び粒子、ベビーパウダー、ベーキングソーダ、キレート剤、ゼオライト、香水または他の臭気マスキング剤、シクロデキストリン化合物、酸化剤などが含まれる。また、超吸収性粒子、合成繊維、またはフィルムも使用され得る。さらなる選択肢には、カチオン染料、光学的光沢剤、保湿剤、皮膚軟化剤などが含まれる。
【0040】
本発明の温度変化組成物で処理され得るティッシュウェブは、1つの均質な繊維層を含むか、または層状構造を含み得る。例えば、前記ティッシュウェブプライは、2層または3層の繊維層を含み得る。各層は、互いに異なる繊維組成物を有し得る。
【0041】
各繊維層は、製紙用繊維の希釈水性懸濁液を含む。各層に含まれる特定の繊維は、一般的に、作製する製品または所望する結果によって異なる。一実施形態では、例えば、中間層は、南方針葉樹クラフト繊維を単独でまたは高収率繊維などの他の繊維と組み合わせて含む。一方、外側層は、北方針葉樹クラフトなどの針葉樹繊維を含み得る。
【0042】
別の実施形態では、前記中間層は強度を高めるために針葉樹繊維を含み得るが、外側層は柔らい肌触りが得られるようにユーカリ繊維などの広葉樹繊維を含み得る。
【0043】
本発明に従って作製されるティッシュウェブの坪量は、最終製品によって異なり得る。例えば、前記工程は、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル、産業用タオルなどを作製するために用いられ得る。一般的に、ティッシュ製品の坪量は、約10gsmないし約80gsm、例えば約20gsmないし約60gsmであり得る。例えば、トイレットペーパー及びティッシュペーパーの場合、坪量は約10gsmないし約60gsmであり得る。一方、ペーパータオルの場合、坪量は約25gsmないし約80gsmであり得る。
【0044】
前記ティッシュウェブのバルク(嵩)は、約2cc/gないし20cc/g、例えば約5cc/gないし15cc/gであり得る。シート「バルク」は、ミクロンで表されるドライティッシュシートの厚さ(キャリパー)を、g/mで表される乾燥坪量で除した商として計算される。その結果、シートバルクは、cm/gで表される。より具体的には、前記厚さを10枚の代表的なシートのスタックの全厚として測定し、束の全厚を10で割る。ここで、スタック内の各シートは同じ面を上にして置く。前記厚さは、スタックシートのための注釈3(Note 3)付きのTAPPI試験方法T411 om−89「紙、板紙及び合紙の厚さ(キャリパー)(Thickness (caliper) of Paper, Paperboard, and Combined Board)」に従って測定する。T411 om−89を実施するために使用されるマイクロメータは、米国オレゴン州ニューバーグ所在のエンベコ社(Emveco, Inc.)製のEmveco 200-Aティッシュキャリパー試験機である。このマイクロメータは、200キロパスカル(1インチ当たり132グラム)の負荷、2500平方ミリメートルのプレッシャーフット面積、56.42ミリメートルのプレッシャーフット径、3秒のドウェル時間、毎秒0.8ミリメートルの下降速度を有する。
【0045】
多プライ製品では、該製品中に含まれる各ティッシュウェブの坪量は様々であり得る。一般的に、多プライ製品の総坪量は、上記した量と概ね同じであり、例えば約20gsmないし約80gsmである。したがって、各プライの坪量は、約5gsmないし約60gsm、例えば約10gsmないし約40gsmであり得る。
【0046】
本発明によれば、ティッシュ製品10は、ユーザの皮膚に冷却感を与えるための温度変化組成物を含む。冷却感を与えるために、温度変化組成物は、不干渉型分子足場(non-interfering molecular scaffold)と、該不干渉型分子足場に組み込まれる相変化成分とを含む。
【0047】
本発明の温度変化組成物は、加熱されたときに相変化を起こしてユーザの皮膚に冷却感を与える、少なくとも1つの相変化物質を含む。本発明の温度変化組成物は、任意の適切な方法または技術を用いてティッシュ製品10に組み込むことができる。例えば、本発明の温度変化組成物は、ティッシュ製品上に吹き付けるか、ティッシュ製品上に押し出すか、あるいは、フレキソ印刷、直接グラビア印刷または間接グラビア印刷などの印刷方法を用いてティッシュ製品上に印刷することができる。さらに別の実施形態では、本発明の温度変化組成物は、ナイフコータ、UFDコータまたはスロットコータなどの任意の適切な塗布器具を用いてティッシュ製品に塗布することができる。一実施形態では、本発明の温度変化組成物は室温では固形なので、ティッシュウェブに塗布する前に該組成物を融解させることが望ましい。そのような融解状態の材料の完成品の最終ティッシュウェブへの塗布は当該技術分野では公知である。また或る場合には、特に、処理済みの製品を最終製品またはさらなる処理のためにロール状に巻き取る場合は、融解させた相変化物質を塗布した直後にウェブを冷却させることが効果的である。前記ウェブを相変化物質の融点以下に冷却させると、ロール状に巻き取られたウェブが「ブロッキング」を起こす可能性が低くなる。本明細書において用いられる「ブロッキング」は、ロール状に巻き取られたウェブにおける互いに隣接するシート同士が互いに付着し、ロール状に巻き取られた状態からのウェブの引き出しを妨げることを指す。
【0048】
一般的に、相変化物質は、温度安定範囲または該範囲内で熱エネルギーを吸収または放出することにより、熱流量を減少させるかまたはゼロにする能力を有する任意の物質を含む。前記温度安定範囲には、特定の転移温度または転移温度範囲が含まれ得る。好適に使用される相変化物質は、該相変化物質が熱を吸収または放出するときに、典型的には該相変化物質が2つの状態(例えば、液体状態と固体状態、液体状態と気体状態、固体状態と気体状態、または2つの固体状態)の間で転移するときに、熱エネルギーの流量を変化させることができる。この作用は通常は一時的なものであり、加熱または冷却過程中に相変化物質の潜熱が吸収または放出されるまで行われる。熱エネルギーは、相変化物質に蓄積されるかまたは相変化物質から除去され得、また、熱源または冷却源によって相変化物質に効果的に再蓄積させることができる。本発明の温度変化組成物は、例えば皮膚の冷却用に適するように、約23℃ないし約35℃の温度で相変化を起こす。本発明の他の実施形態では、約23℃ないし約32℃、約26℃ないし約32℃、または任意の他の適切な範囲内の転移温度を有する材料が選択され得る。前記相変化温度は、前記製品の周囲温度とユーザの皮膚表面温度との間で相変化が起こるように選択される。
【0049】
本発明の温度変化組成物は、転移温度が互いに異なる複数の相変化物質の混合物を含み得る。このような相変化物質の混合物を用いる場合、各相変化物質は、前記混合物の融点が上述の温度範囲内になるように選択する。或る場合には、本発明の温度変化組成物に含まれる個々の相変化物質の融点が、本発明の温度変化組成物の相変化温度の融点を超えていることもある。しかし、相変化物質の混合物は、所望の温度範囲内で相変化を呈することになる。本発明の温度変化組成物を皮膚に直接または間接的に押し当てたとき、本発明の温度変化組成物は、室温から皮膚の温度へ昇温する。その後、特定の相変化温度で、相変化物質が融解する。融解は熱を必要とするため、皮膚から熱が奪われ、それにより冷却感が与えられる。相変化物質が融解すると、冷却感は消える。各相変化物質が所定の範囲内の相変化温度(この場合は融点)を有することにより、冷却感が得られる温度範囲を拡大することができる。例えば、18℃、26℃または35℃の相変化温度をそれぞれ有する相変化物質を組み合せることにより、23℃ないし32℃の融点を有する温度変化組成物を作り出すことができる。
【0050】
適切な相変化物質の例には、これらに限定しないが、カプセル化された相変化粉末(例えば、BASF社から入手可能な精製されたカプセル化パラフィンであるLURAPRET、またはマイクロテック・ラボラトリーズ(Microtek Laboratories)社から入手可能なMPCM 43-D)、炭化水素(例えば、直鎖アルカン系またはパラフィン系炭化水素、分枝鎖アルカン、不飽和炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂環式炭化水素)、ワックス、天然バター、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基エステル、1−ハロゲン化物、第1級アルコール、芳香族化合物、無水物(例えば、ステアリン酸無水物)、炭酸エチレン、多価アルコール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタグリセリン、テトラメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、モノアミノペンタエリスリトール、ジアミノペンタエリスリトール、またはトリス(ヒドロキシメチル)酢酸)、重合体(例えば、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール。アルキル炭化水素側鎖またはポリエチレングリコール側鎖を有するポリアクリル酸塩またはポリメタクリル酸などの共重合体。あるいは、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、またはポリテトラメチレングリコールなどの共重合体)、またはそれらの混合物が挙げられる。特に好適な相変化物質は、トリカプリン、パラフィン、ナノデカン、オクタデカン、ヘプタン酸ステアリル、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ババス油脂肪酸セチル、マニフィーラ・インディカ(マンゴー)シードバター、テオブロ・マカカオ(カカオ)シードバター、ブチロスパーマム・パーキー・バター、Di−C12−15フマル酸アルキル、カプリル酸ステアリル、乳酸セチル、酢酸セチル、C24−28アルキルメチコン、ジラウリン酸グリセリル、ステアルアミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸、ホホバエステル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
上述したように、一実施形態では、本発明の温度変化組成物は、2若しくはそれ以上の相変化物質の混合物を含み得る。特定の一実施形態では、本発明の温度変化組成物は、ヘプタン酸ステアリルとn−オクタデカンとの混合物を含む。
【0052】
相変化物質は、非カプセル化形態の相変化物質またはカプセル化形態の相変化物質を含み得る。非カプセル化形態の相変化物質は、様々な形態の固体(例えば、バルク形態、粉末、ペレット、顆粒、フレーク、ペーストなど)として、または様々な形態の液体(例えば、融解形態、溶媒に溶解させた形態など)として提供され得る。
【0053】
本発明の温度変化組成物の別の態様は、相変化物質を含んでいる温度変化組成物の融解熱である。本発明の温度変化組成物は、少なくとも約100J/gの融解熱を有し得る。例えば、一実施形態では、温度変化組成物は、相変化物質として直鎖炭化水素などの炭化水素を含む。例えば、炭化水素は、その炭素鎖内に、約10個以上の炭素原子、例えば約10個の炭素原子ないし約30個の炭素原子を含み得る。相変化物質の具体的な例には、例えば、オクタデカン(融解熱は約213J/g)、ノナデカン、ヘプタン酸ステアリル、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
相変化物質は、本発明の温度変化組成物中に、約1重量%ないし約99重量%、例えば約5重量%ないし約95重量%の量で含まれ得る。例えば、特定の実施形態では、相変化物質は、本発明の温度変化組成物中に、約10重量%ないし約90重量%の量で含まれ得る。
【0055】
上述したように、本発明の温度変化組成物は、不干渉型分子足場(non-interfering molecular scaffold)を含む。本発明の不干渉型分子足場は、相変化組成物と混合させたときに、均一な混合物を得ることができ、かつ皮膚温度を超える温度(約40℃)においてゲル様の稠度(gel-like consistency)を維持することができる混合物を形成することができる任意の成分と定義される。加えて、不干渉型分子足場は、相変化組成物と混合させることができ、かつ得られた混合物が純粋な相変化組成物のエンタルピーの少なくとも75%を保つことができる任意の成分と定義される。特定の理論に拘束されないが、本発明の不干渉型分子足場は、相変化組成物の結晶の大きさが純粋な相変化材料と同様の効果的な冷却感を提供するのに十分な大きさになるように、相変化組成物をその内部あるいは周囲に集合させるためのネットワークを形成すると考えられる。予期せぬことに、相変化組成物の量を少なくしても効果的な冷却が可能であり、かつ、相変化組成物は不干渉型分子足場内に維持され、皮膚に浸透して刺激を引き起こしたり、前記ティッシュ内に再分布されたりしない。
【0056】
不干渉型分子足場を使用することにより、相変化物質がユーザの皮膚と実質的に接触することや、相変化物質が皮膚へ移行して刺激を引き起こすることや、あるいは、前記製品の使用前に相変化物質が前記製品から失われることを防止することができる。したがって、本発明の不干渉型分子足場は、ユーザの皮膚への刺激を軽減させることができ、かつ前記製品の使用前に該製品に含まれている相変化物質が失われることを防ぐことができる。例えば特許文献2に開示されているような従来の温度変化組成物は、相変化物質が皮膚へ移行して刺激を引き起こす。
【0057】
加えて、不干渉型分子足場は、熱可逆的であり得る。熱可逆的な温度変化組成物を持つことにより、該組成物を含んでいる製品の輸送中に該製品が極端な温度に曝された場合でも、消費者が家庭で使用するときに依然として効果を発揮することを可能にする。本発明の熱可逆的な温度変化組成物は、固体状態から液体状態への変化後、温度が変化したときに固体に戻ることができる。そのため、冷却感を与えるための相変化物質は、長期間の貯蔵後や様々な温度で輸送した後でも依然として使用可能である。例えば特許文献2に開示されているような従来の温度変化組成物は、熱可逆的ではないため、上記のような利点は提供しない。
【0058】
例示的な実施形態では、本発明の不干渉型分子足場は、脂肪アルコールまたは脂肪酸から選択される結晶質希釈剤であり得る。結晶質希釈剤として使用される例示的な脂肪アルコールまたは脂肪酸は、約6個ないし60個、望ましくは約8個ないし40個、より望ましくは約10個ないし30個の炭素原子鎖長を有する。
【0059】
別の実施形態では、本発明の不干渉型分子足場は、ポリマーを含み得る。望ましくは、本発明の不干渉型分子足場には、これらに限定しないが、ポリエチエン、ポリC10−30アクリル酸アルキル、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸クロスポリマー、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸ブチルジメチコンクロスポリマーなどのポリマーが含まれる。特に望ましい不干渉型分子足場は、ハネウェル(Honeywell)社から市販されているポリエチエン、Asensa PR200である。
【0060】
加えて、本発明の不干渉型分子足場は、これに限定しないが、ブロックコポリマーを含むことができる。ブロックコポリマーの作製方法は当該技術分野では公知であり、様々な水素化ブロックコポリマーが市販されている。例示的な市販の水素化ブロックコポリマーには、クラトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)社からKraton G1701及びG1702として入手可能なポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー、クラトン・ポリマーズ社からKraton G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP-6598、RP-6924、MD-6932M、MD-6933及びMD-6939として入手可能なポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、クラトン・ポリマーズ社からKraton RP-6935及びRP-6936として入手可能なポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロックコポリマー、クラトン・ポリマーズ社からKraton G1730として入手可能なポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、クラトン・ポリマーズ社からKraton G1901、G1924及びMD-6684として入手可能な無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、クラトン・ポリマーズ社からKraton MD-6670として入手可能な無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、旭化成エラストマー(Asahi Kasei Elastomer)社からTUFTEC H1043として入手可能な、67重量%のポリスチレンを含有しているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、旭化成エラストマー社からTUFTEC H1051として入手可能な、42重量%のポリスチレンを含有しているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、旭化成エラストマー社からTUFTEC P1000及びP2000として入手可能な、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、旭化成エラストマー社からS.O.E.-SS L601として入手可能な、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロックコポリマー、シェブロン・フィリップ・ケミカル(Chevron Phillips Chemical Company)社からK-Resin KK38、KR01、KR03及びKR05として入手可能な水素化ラジアルブロックコポリマー、クラレ(Kuraray)社からSEPTON S8104として入手可能な、約60重量%のポリスチレンを含有しているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、クラレ社からSEPTON S4044、4055、S4077及びS4099として入手可能な、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、並びに、クラレ社からSEPTON S2104として入手可能な、約65重量%のポリスチレンを含有しているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーが含まれる。特に好適なブロックコポリマーは、クラレ社から市販されているRP-6935及びRP-6936である。2若しくはそれ以上のブロックコポリマーの混合物も、不干渉型分子足場として使用することができる。
【0061】
加えて、本発明の不干渉型分子足場は、上記した、結晶質希釈剤、ポリマー、ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択され得る。例えば、或る望ましい不干渉型分子足場は、ステアリルアルコール及びポリエチレンの両方を含み得る。
【0062】
一般的に、本発明の温度変化組成物は、本発明の不干渉型分子足場を、該温度変化組成物の約1重量%ないし約50重量%、一般的には約2重量%ないし約45重量%、より一般的には約5重量%ないし約40重量%の量で含む。
【0063】
しかし、おそらくより重要であるのは、本発明の製品の熱吸収量である。J/mで表される熱吸収量は、温度変化組成物の融解熱(J/g)と、ティッシュ製品への温度変化組成物の塗布率(g/m)との積である。本発明の製品の熱吸収量は、少なくとも約500J/m、例えば少なくとも約1000J/m、例えば約1000J/mないし約4000J/mまたはそれ以上であり得る。多くの用途では、温度変化組成物はティッシュウェブに、相変化物質がティッシュウェブに約4〜40gsmの量で含まれるように塗布され得る。
【0064】
本発明の温度変化組成物は、1若しくは複数の相変化成分に加えて、様々な成分または組成物を含むことができる。本発明の温度変化組成物に含まれ得る他のスキンヘルス成分の例としては、皮膚軟化剤、ステロールまたはステロール誘導体、天然または合成の脂肪または油、増粘剤、レオロジー調整剤、ポリオール、界面活性剤、アルコール、エステル、シリコン、クレイ、デンプン、セルロース、微粒子、保湿剤、被膜形成剤、滑り調整剤、表面調整剤、皮膚保護剤、湿潤剤、日焼け止め剤、抗しわ活性剤、鎮痛剤、抗酸化剤などが挙げられる。
【0065】
このように、本発明の温度変化組成物は、随意的に、1若しくは複数の皮膚軟化剤をさらに含み得る。皮膚軟化剤は、一般的に、皮膚を軟化させるか、鎮痛するか、滑らかにするか、あるいは潤いを与える。本発明の組成物に含めることができる好適な皮膚軟化剤には油が含まれ、そのようなものには、例えば、天然油(ホホバ、ひまわり、サフラワーなど)、合成基油(ペトロラタムなど)、鉱油、アルキルジメチコン、アルキルメチコン、アルキルジメチコンコポリオール、フェニルシリコン、アルキルトリメチシラン、ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー、シクロメチコン、ラノリン及びその誘導体、グリセロールエステル及びその誘導体、プロピレングリコールエステル及びその誘導体、脂肪酸エステル及びその誘導体、アルコキシ化カルボン酸、アルコキシ化アルコール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
エーテルも皮膚軟化剤として好適に使用することができ、そのようなものとしては、例えば、オイカリプトール、セテアリルグルコシド、ジメチルイソソルビックポリグリセリル−3セチルエーテル、ポリグリセリル−3デシルテトラデカノール、プロピレングリコールミリスチルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
本発明の温度変化組成物は、1若しくは複数の皮膚軟化剤を、該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約70重量%、より望ましくは約0.05重量%ないし約50重量%、さらに望ましくは約0.1重量%ないし約40重量%の量で含み得る。
【0068】
本発明の温度変化組成物は、1若しくは複数の増粘剤を、該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約25重量%、より望ましくは約0.05重量%ないし約10重量%、さらに望ましくは約0.1重量%ないし約10重量%の量で含み得る。
【0069】
温度変化組成物は、随意的に、レオロジー調整剤をさらに含み得る。レオロジー調整剤は、本発明の温度変化組成物をパーソナルケア製品の表面上に容易にとどまらせるために、本発明の温度変化組成物の融点粘度を増加させることができる。
【0070】
温度変化組成物は、随意的に、保湿剤をさらに含み得る。好適な保湿剤の例としては、グリセリン、グリセリン誘導体、1,3−プロパンジオール、ヒアルロン酸ナトリウム、ベタイン、アミノ酸、グリコサミノグリカン、蜂蜜、糖アルコール、ソルビトール、グリコール、ポリオール、糖、加水分解水添デンプン、PCA塩、乳酸、乳酸塩、または尿素が挙げられる。特に好適な保湿剤は、グリセリンである。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の保湿剤を該温度変化組成物の約0.05重量%ないし約25重量%の量で含み得る。
【0071】
温度変化組成物は、随意的に、被膜形成剤をさらに含み得る。好適な被膜形成剤の例としては、ラノリン誘導体(例えば、アセチル化ラノリン)、過脂肪油、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、合成または生体ポリマー、タンパク質、第4級アンモニウム材料、デンプン、ガム、セルロース誘導体、多糖、卵白、アクリレート誘導体、IPDI誘導体などが挙げられる。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の被膜形成剤を該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約20重量%の量で含み得る。
【0072】
温度変化組成物は、随意的に、滑り調整剤をさらに含み得る。好適な滑り調整剤の例としては、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄、マイカ、表面処理マイカ、ZnO、ZrO、シリカ、シリカシリエート、コロイド状シリカ、アタパルジャイト、セピオライト、デンプン(すなわち、とうもろこし、タピオカ、米)、セルロース誘導体、ナイロン12、ナイロン6、ポリエチレン、タルク、スチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸コポリマー、アクリレート、アクリレートコポリマー(メチルメタアクリル樹脂クロスポリマー)、絹雲母、二酸化チタン、参加アルミニウム、シリコン樹脂、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酢酸セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサ、タルク、テトラフルオロエチレン、シルク粉末、窒化ホウ素、ラウロイルリシン、合成油、天然油、エステル、シリコン、グリコールなどが挙げられる。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の滑り調整剤を該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約20重量%の量で含み得る。
【0073】
本発明の温度変化組成物はまた、随意的に、表面調整剤を含み得る。好適な表面調整剤としては、シリコン、クアテルニウム(Quaternium)物質、粉末、塩、ペプチド、ポリマー、クレイ、またはグリセリルエステルが挙げられる。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の表面調整剤を該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約20重量%の量で含み得る。
【0074】
本発明の温度変化組成物は、随意的に、皮膚保護剤をさらに含み得る。好適な皮膚保護剤の例としては、「SP Monograph (21 CFR part 347)」に記載されている成分が挙げられる。好適な皮膚保護剤及びそれの含有量は、「SP Monograph, Subpart B - Active Ingredients Sec 347.10」に記載されている。(a)アラントイン、0.5〜2%。(b)水酸化アルミニウムゲル、0.15〜5%。(c)カラミン、1〜25%。(d)ココアバター、50〜100%。(e)タラの肝油、5〜13.56%。§347.20(a)(1)または(a)(2)によれば、24時間以内の使用量が10.000USP単位ビタミンA及び400USP単位コレカルシフェロールを超えないように、提供された前記製品は標識化される。(f)コロイド状オートミール、最小値0.007%。§347.20(a)(4)によれば、鉱油と組み合わせた場合の最小値は0.003%である。(g)ジメチコーン、1〜30%。(h)グリセリン、20〜45%。(i)固い脂肪、50〜100%。(j)カオリン、4〜20%。(k)ラノリン、12.5〜50%。(l)鉱油、1〜30%。§347.20(a)(4)によれば、コロイド状オートミールと組み合わせた場合は30〜35%である。(m)ペトロラタム、30〜100%。(n)重炭酸ナトリウム。(o)局所用でんぷん、10〜98%。(p)白色ワセリン、30〜100%。(q)酢酸亜鉛、0.1〜2%。(r)炭酸亜鉛、0.2〜2%。(s)酸化亜鉛、1〜25%。
【0075】
本発明の温度変化組成物は、随意的に、第4級アンモニウム物質をさらに含み得る。好適な第4級アンモニウム物質の例としては、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、塩化ベンザルコニウム、ベヘントリモニウムメトサルフェート、塩化セトリモニウム、塩化コカミドプロピルPG−ジモノニウム、塩化グアーヒドロキシプロピルトリモニウム、乳酸イソステアラミドプロピルモルホリン、ポリクオタニウム−33、ポリクオタニウム−60、ポリクオタニウム−79、クオタニウム−18ヘクトライト、クオタニウム−79加水分解シルク、クオタニウム−79加水分解大豆タンパク質、菜種アミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、シリコンクオタニウム−7、塩化ステアラルコニウム、塩化パルミトアミドプロピルトリモニウム、ブチルグルコシド、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウム、塩化ラウルジモニウムヒドロキシプロピルデシルグルコシドなどが挙げられる。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の第4級アンモニウム物質を該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約20重量%の量で含み得る。
【0076】
本発明の温度変化組成物は、随意的に、追加的な乳化剤をさらに含み得る。上述したように、天然脂肪酸、エステルまたはアルコール及びそれらの誘導体、あるいはそれらの組み合わせは、本発明の組成物において乳化剤としての役割を果たす。随意的に、本発明の組成物は、天然脂肪酸、エステルまたはアルコール及びそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせ以外の追加的な乳化剤をさらに含み得る。好適な追加的な乳化剤の例としては、非イオン性のもの(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、アニオン性のもの(例えば、リン酸DEA)、カチオン性のもの(例えば、ベヘントトリモニウムメトスルホネート)などが挙げられる。本発明の温度変化組成物は、好適には、1若しくは複数の追加的な乳化剤を該温度変化組成物の約0.01重量%ないし約20重量%の量で含み得る。
【0077】
本発明の温度変化組成物は、従来の医薬組成物に含まれている補助成分を、当該技術分野において確立された方法及び量で追加的に含み得る。例えば、本発明の温度変化組成物は、併用療法のための追加的な適合する医薬活性物質を含み得、そのようなものとしては、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、抗寄生虫剤、生活性剤、収斂剤、角質溶解剤、局部麻酔薬、抗刺痛剤、抗発赤剤、皮膚鎮痛剤、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。本発明の温度変化組成物に含まれ得る他の適切な添加剤としては、着色剤、脱臭剤、芳香剤、香料、乳化剤、消泡剤、潤滑剤、天然保湿剤、整肌剤、皮膚保護剤または他の皮膚に有益な物質(例えば、アロエなどの抽出物や、ペプチドなどの抗老化剤)、溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、湿潤剤、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、緩衝剤、染料または顔料、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
一実施形態では、本発明の温度変化組成物は、図1に示すティッシュ製品10の外面上に配することができるが、ティッシュ製品の外面上に温度変化組成物が実質的に存在しないように、本発明の温度変化組成物をティッシュ製品中に組み込むこともできる。例えば、図2を参照すると、第1のティッシュウェブ22及び第2のティッシュウェブ24を互いに積層させて構成したティッシュ製品20が示されている。図示のように、第1のティッシュウェブ22と第2のティッシュウェブ24の間に、本発明の温度変化組成物26が配されている。2つのティッシュウェブ間に温度変化組成物26を配することによって、温度変化組成物26がユーザの皮膚へ移行するのを実質的に防止することができる。ティッシュ製品20を皮膚に押し当てたとき、ティッシュウェブを介して体温が温度変化組成物26に吸収されるので、温度変化組成物26の温度が上昇する。この温度上昇によって相変化物質の相変化が引き起こされ、それにより、ユーザの皮膚に冷却感が与えられる。
【0079】
特定の一実施形態では、本発明の冷却ティッシュ製品は、3若しくはそれ以上のプライ(2つの外側プライ及び1若しくは複数の内側プライ)からなるティッシュペーパーである。本発明の温度変化組成物は、1若しくは複数の内側層のうちの少なくとも1つの層に適用される。別の実施形態では、本発明の冷却ティッシュ製品は、2プライからなるティッシュペーパーであり、2つの外面と2つの互いに対向する内面とを有する。相変化組成物は、前記2つの互いに対向する内面の一方または両方に適用される。別の実施形態では、本発明の冷却ティッシュ製品は多プライティッシュ製品であり、相変化組成物は、ブロッキングを最小にするために該多プライ製品の内部に選択的に適用される。
【0080】
このように、他の有益な組成物をティッシュ製品の外面に適用して、温度変化組成物26と共に使用することができる。例えば、一実施形態では、皮膚を潤いを与えるためのローションをティッシュ製品の少なくとも1つの外面上に配し、本発明の温度変化組成物と共に機能させることができる。このように、ティッシュ製品20は、ユーザに冷却感を与えるだけでなく、ユーザの皮膚に保湿剤を移行させることもできる。
【0081】
ローションに加えて、任意の他の適切な組成物をティッシュ製品の外面に適用することもできる。例えば、一実施形態では、ティッシュ製品の外面上に様々な軟化剤を配することができる。軟化剤の一例としては、ポリシロキサンが挙げられる。
【0082】
図2に示すような2プライの製品に加えて、本発明の温度変化組成物を含み得る他のティッシュ製品は、3以上のプライを含むことができる。例えば、3プライのティッシュ製品30が図3に示されている。図示のように、ティッシュ製品30は、外側ティッシュウェブ32及び36に対して積層された中間ティッシュウェブ34を含む。本発明によれば、本発明の温度変化組成物40は、第1のティッシュウェブ32と中間ティッシュウェブ34との間に配される。温度変化組成物40はまた、中間ティッシュウェブ34と第2の外側ティッシュウェブ36との間に配することもできる。
【0083】
別の実施形態では、本発明の温度変化組成物は、ティッシュ製品の1若しくは複数の外面上にも配することができる。例えば、図4を参照して、一実施形態では、温度変化組成物はトイレットペーパー製品50の外面上に適用することができる。図示のように、トイレットペーパー製品50は、ミシン目54によって互いに分離される個々のティッシュシート52を含むロール状に巻かれた製品を含む。ティッシュシート52は、第1の外面56及び第2の外面58を含み得る。各ティッシュシートは、単プライ製品または多プライ製品を含み得る。本発明によれば、温度変化組成物は、第1の外面56上、第2の外面58上、または両外面上に配され得る。
【0084】
図4に示すようなトイレットペーパー製品に本発明の温度変化組成物を適用することにより、様々な予期せぬ利益及び利点が提供される。例えば、本発明の温度変化組成物は、トイレットペーパーシートを使用したユーザに濡れの感覚を引き起こすような冷却感を提供することができる。濡れの感覚は、清拭感の向上をもたらし得る。
【0085】
図4に示すトイレットペーパーに適用される場合、本発明の温度変化組成物は、ユーザに対してさらなる利益を与えるために上述したような保湿剤を含み得る。
【0086】
疎水性の相変化物質を用いる場合、疎水性の相変化物質が存在するために生じ得る何らかの影響を減少させる方法を用いることが有利であり得る。疎水性添加物を含むティッシュシートの疎水性を低下させるための様々な方法が当分野では公知である。例えば、米国特許第6,428,794B1号に教示されているように、4より大きいHLBを有する親水性の界面活性剤を温度変化組成物に混ぜ合わせることができる。ティッシュシートの疎水性を低下させるための他の例示的な手段には、これらに限定しないが、米国特許第6,949,167B2号、米国特許出願公開第2005/0274470A1号、米国特許第6,896,766B2号及び米国特許第7,008,507B2号に教示されている手段が含まれる(これらの特許文献の内容は、参照により本明細書に援用されるものとする)。
【実施例】
【0087】
実施例1〜13
【0088】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【0089】
相変化組成物及び不干渉型分子足場を含んでいる好適な13の温度変化組成物のリストを以下に示す。比較例1は、不干渉型分子足場を含んでいない。
【0090】
相変化組成物としては、ヘプタン酸ステアリルが用いられる。
ヘプタン酸ステアリルは、27〜27℃の融点と、174J/gの融解潜熱を有する。ヘプタン酸ステアリルは、ステアリルアルコール及びヘプタン酸(エナント酸)のエステルである。マッコウクジラの油または植物源から得たステアリルアルコールを用いることが好ましい。ヘプタン酸ステアリルは、23〜27℃で皮膚上で急速に融解し、皮膚を冷却する。不干渉型分子足場としては、様々な結晶質希釈剤が用いられる。
【0091】
【表1】

【0092】
様々な組成物の融解潜熱及び融点は、様々な示差走査熱量計によって測定される。複数のサンプルを、下記の実験手順を用いて、TAインスツルメンツ社(TA Instruments)製のDSC 2920 Modulated DSC(標準セル)で分析した。それぞれの材料約5mgを0.1mg単位まで秤量した。前記サンプルを、不活性ガス(N)雰囲気中で、−50℃ないし100℃の温度範囲で、10℃/分の加熱/冷却速度で試験した。それぞれの融解ピークでの積分から融解熱(ΔH)を計算した。3回の加熱/冷却サイクルの平均値を結果として示す。この例の計算値を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
例1〜13は、結晶質希釈剤物質を用いることにより、温度変化組成物が、冷却感を与えるのに十分なエンタルピーを依然として提供することを示す。もし、相変化物質の濃度が冷却能力(エンタルピー)と直接的に比例するならば、相変化物質の量を10%減らした場合のエンタルピーは、159.39J/gとなるはずである(相変化物質が100%の場合のエンタルピーは177.1J/g)。しかし、表2から明らかなように、いくつかの例示的な組成物は、相変化物質の量を10〜20%を減少させても、ヘプタン酸ステアリル(相変化物質)が100%の場合と同様の高いエンタルピーが維持される。特に良好な性能を発揮する組成物は、ヘプタン酸ステアリルを相変化物質として含み、かつステアリルアルコールを結晶質希釈剤として含んでいる。
【0095】
特定の理論に拘束されないが、本発明の希釈剤物質の自己集合性結晶構造が、相変化物質のための不干渉型分子足場を提供すると考えられる。したがって、相変化物質が不干渉型分子足場の内部または周りに集合することにより、相変化物質の結晶サイズが、純粋な相変化材料と同等の冷却感を提供するのに十分な大きさとなる。
【0096】
実施例14
【0097】
実施例14は、冷却感を与えることができるティッシュペーパー(フェイシャルティッシュ)製品を製造するために、ティッシュ基材に本発明の温度変化組成物を適用した場合である。65%の広葉樹繊維と35%の針葉樹繊維とから構成され、44gsmの最終坪量を有する3プライのティッシュシートが使用される。各プライは、2つの外面と1つの中間層を含む層状の繊維製品から作製されている。70重量%のヘプタン酸ステアリルと、25重量%のステアリルアルコールと、5重量%のポリエチレンとを含む組成物を実験室で作製し、作製した組成物をティッシュ上にコーティングし、改良された繰り返し使えるノーズワイプまたは適用可能な方法論パネル(methodology panel)を形成した。この実験の結果データは、100%のヘプタン酸ステアリルまたは化粧用ワックスを10%の割合で含むヘプタン酸ステアリルについて行った同様の試験よりも、審美性の向上、低いTEWL、低い発赤スコア、低い脱落率のデータを示した。また、このティッシュシートを手または顔に押し付けたときに、顕著な冷却感を与えることが認められた。
【0098】
実施例15
【0099】
実施例15は、温度変化組成物の別の実施形態であり、該温度変化組成物は、90重量%のヘプタン酸ステアリルと、10重量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロックコポリマー(Kraton RP-6936)とを含んでいる。
【0100】
実施例15は、ヘプタン酸ステアリルを100〜120℃まで加熱することにより実験室内で作製した。前記ポリマーを加えた後、20分間または完全に湿潤され分離されるまで撹拌混合して均質化させた(7000rpm)。前記ポリマー溶液が完全に透明になり均質化されたら、前記混合物を室温まで冷却した。このゲルは、灰色がかった白色または白色であり、柔軟であり室温で融解する。このゲルの溶解時は、このゲルに接触した人間は、この温度変化組成物から提供される高程度の冷却を経験する。実施例15の組成物をティッシュ上にコーティングし、改良された繰り返し使えるノーズワイプまたは適用可能な方法論パネル(methodology panel)を形成した。この実験の結果は、100%のヘプタン酸ステアリルまたはヘプタン酸ステアリルと化粧用ワックスとを90:10%の割合で含む混合物について行った同様の試験よりも、審美性の向上、低いTEWL、低い発赤スコア、低い脱落率のデータを示した。また、このティッシュシートを手または顔に押し付けたときに、顕著な冷却感を与えることが認められた。
【0101】
本発明に対するこれらの及び他の変更形態及び変形形態は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で、当業者によって実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的にも部分的にも置換可能であることを理解されたい。さらに、上述の説明が例示に過ぎず、本発明の限定を意図していないことは、当業者には理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライ基材であって、
繊維からなり、第1の面及び第2の反対面を含む第1のティッシュウェブと、
前記ティッシュウェブの少なくとも前記第1の面上に配される温度変化組成物とを含み、
前記温度変化組成物が、
約20℃ないし約35℃の温度で相変化を起こし、少なくとも約100J/gの融解熱を有し、かつ該温度変化組成物の約1重量%ないし約99.9重量%の量で含まれる相変化物質と、
該温度変化組成物の約1重量%ないし約50重量%の量で含まれる不干渉型分子足場とを含むことを特徴とする基材。
【請求項2】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、6個ないし約50個の炭素原子鎖長を有する脂肪アルコール及び脂肪酸から選択される結晶質希釈剤を含むことを特徴とする基材。
【請求項3】
請求項2に記載のドライ基材であって、
前記脂肪アルコール及び脂肪酸が、10個ないし約30個の炭素原子鎖長を有することを特徴とする基材。
【請求項4】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、ポリエチエン、ポリC10−30アクリル酸アルキル、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸クロスポリマー、C8−22アクリル酸アルキル/メタクリル酸ブチルジメチコンクロスポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含むことを特徴とする基材。
【請求項5】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロックコポリマー、水素化ラジアルブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるブロックコポリマーを含むことを特徴とする基材。
【請求項6】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、前記温度変化組成物の約20重量%ないし約95重量%の量で含まれることを特徴とする基材。
【請求項7】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、前記温度変化組成物の約50重量%ないし約90重量%の量で含まれることを特徴とする基材。
【請求項8】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、前記温度変化組成物の約1重量%ないし約50重量%の量で含まれることを特徴とする基材。
【請求項9】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、前記温度変化組成物の約5重量%ないし約40重量%の量で含まれることを特徴とする基材。
【請求項10】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、油溶性及び疎水性を有することを特徴とする基材。
【請求項11】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、トリカプリン、パラフィン、ナノデカン、オクタデカン、ヘプタン酸ステアリル、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ババス油脂肪酸セチル、マニフィーラ・インディカ(マンゴー)シードバター、テオブロ・マカカオ(カカオ)シードバター、ブチロスパーマム・パーキー・バター、Di−C12−15フマル酸アルキル、カプリル酸ステアリル、乳酸セチル、酢酸セチル、C24−28アルキルメチコン、ジラウリン酸グリセリル、ステアルアミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸、ホホバエステル、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする基材。
【請求項12】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、少なくとも約100J/gの融解熱を有することを特徴とする基材。
【請求項13】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記ティッシュウェブの外面上に配されるローション組成物をさらに含むことを特徴とする基材。
【請求項14】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記温度変化組成物が、前記ティッシュウェブに約4gsmないし約40gsmの量で含まれることを特徴とする基材。
【請求項15】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、炭化水素、ワックス、油、天然バター、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基エステル、1−ハロゲン化物、第1級アルコール、芳香族化合物、無水物、エチレンカーボネート、多価アルコール、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする基材。
【請求項16】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記相変化物質が、ヘプタン酸ステアリルを含み、
前記不干渉型分子足場が、ステアリルアルコールを含むことを特徴とする基材。
【請求項17】
請求項16に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、ポリエチレンをさらに含むことを特徴とする基材。
【請求項18】
請求項1に記載のドライ基材であって、
前記不干渉型分子足場が、結晶質希釈剤、ポリマー、ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511626(P2013−511626A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539442(P2012−539442)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054569
【国際公開番号】WO2011/061643
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】