説明

不揮発性メモリ・データの完全性の検証

本開示内容は、交換式プリンティング部品を受容するように構成されたプリント機構部を備えるプリンティング・システム内で使用するための交換式プリンティング部品に関する。交換式プリンティング部品は、プリント機構部から受け取った情報を選択的に記憶するプリンティング・システム用制御信号に応答する電気記憶装置を備えており、この電気記憶装置が、交換式プリンティング部品に関連したデータを含む記憶部分と、データが有効かどうかを判断するために、記憶部分に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを記憶するように構成された第1及び第2の検証フィールドとを備えている。ここで、この電気記憶装置は、プリント機構部から記憶部分への第1のデータ転送の前に、記憶部分の中に現在含まれているデータに関連したエラー検出コードを受信し、第1及び第2の検証フィールドのうちの一方の中に記憶するように構成され、電気記憶装置が、第1の転送の後で、記憶部分の中に含まれることになるデータに関連したエラー検出コードを受信し、第1及び第2の検証フィールドのうちの他方の中に記憶するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、交換式プリンティング部品を利用するプリンティング・システムに関する。さらに詳細には、本開示内容は、プリンティング・システムの中でプリント機構部に情報を提供する電気記憶装置を含む交換式プリンティング部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、その寿命を伸ばすために、交換式部品を利用することが多い。例えば、インクジェット・プリンタは、多くの場合、紙などのプリント媒体の全体にわたって前後に移動するカートリッジ内に装着されたインクジェット用プリントヘッドを利用している。プリントヘッドがプリント媒体の全体にわたって移動するため、制御システムは、プリント媒体上にインク小滴を付着形成するすなわち吐出するように、プリントヘッドを動作させる。インクは、カートリッジによって運ばれるか又はプリント機構部のどこかに装着されたインクを供給することによって、プリントヘッドに与えられる。インク・コンテナやプリントヘッドなどの幾つかのプリンティング部品は、定期的に交換する必要がある。インク・コンテナは、無くなったときに交換される。プリントヘッドは、その寿命が尽きたときに交換される。
【0003】
本発明の譲受人に譲渡された「Replaceable Part With Integral Memory For Usage, Calibration And Other Data」という名称の米国特許第5,699,091号明細書の中で記述されているように、プリンタのパラメータをプリンタ部品の交換と同時に変更することが望ましい。この米国特許第5,699,091号明細書は、交換式部品に関連したパラメータを含むメモリ装置を使用することを開示している。交換式部品を取り付けることにより、プリンタは、交換式部品のパラメータにアクセスして高いプリント品質を確実に維持することができる。メモリ装置を交換式部品の中に組み込み、そして交換式部品のパラメータを交換式部品の中のメモリ装置の中に記憶することによって、プリンティング・システムは、これらのパラメータをプリント機構部に設定するときに確認することができる。このプリンタ・パラメータの自動更新により、ユーザは、交換式部品を新たに取り付けるたびにプリンタ・パラメータを更新する必要がなくなる。プリンタ・パラメータを交換式部品のパラメータを用いて自動的に更新することによって、高いプリント品質が保証される。さらに、このように自動的にパラメータを更新することにより、インクが供給されなくなった後で動作させること又は間違ったあるいは互換性がないプリンタ部品を用いて動作させることなどの不適当な操作により不注意でプリンタが損傷されることがないことが保証される。
【0004】
本開示内容の譲受人に譲渡された米国特許第6,267,463号明細書及び米国特許第6,264,301号明細書は、交換式プリンティング部品上のメモリを信頼性高く更新するシステム及び方法と、交換式プリンティング部品内のパラメータを確認するための方法及びシステムとを開示している。前述された特許の全ての開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0005】
プリンタと交換式プリンティング部品との間の情報交換は、極めて正確な方法により行われなければならない。この情報交換は、ユーザの介入を要求すべきではない。さらに、情報の完全性が維持されることが重要である。何らかの理由で交換式部品に関する情報が損なわれた場合、プリンタは、このデータが損なわれたことを認識できなければならない。さらに、そのような破損が生じた場合、プリンティング・システムは、プリンタが損傷されないように、その部品を取り除くように構成される必要がある。最後に、プリンティング・システムは、改良やこの改良を支援するために必要な付加的なプリンタのパラメータを受け入れるに十分な柔軟性を有する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】カバーを除いて示されたプリンティング・システムの実施例の斜視図であり、このプリンティング・システムは本発明による交換式プリンティング部品を搭載している。
【図2】図2Aおよび図2Bは、2つとも図1に示されているプリンティング・システムの概略図であり、それぞれが本発明による電気記憶装置を含む交換式インク・コンテナとプリントヘッドを例示している。
【図3】ホストに接続されているように示された、図1のプリンティング・システムの概略ブロック図である。
【図4】記憶部分と2つの検証領域を有する電気記憶装置の実施例を示す図である。
【図5】図4に示されている記憶部分と検証領域を更新するために使用される処理の実施例である。
【図6】プリント機構部と交換式プリンティング部品との間のデータ・トランザクションの実施例を例示するタイミング図である。
【図7】図4に示されている記憶部分の妥当性を調査するために使用される処理の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、カバーを除いた状態で示されているプリンティング・システム10を例示する斜視図である。この実施例では、プリンティング・システム10は、インクジェット式プリンティング・システムである。レーザ又はサーマル・プリンティング・システムなどの他の種類のプリンティング・システムも、交換式部品を含むことができ、及び/又は開示された方法を使用することができる
【0008】
この実施例では、インクジェット式プリンティング・システム10は、プリンティング部品の中に組み込まれた複数の交換式プリンティング部品14を有するプリント機構部12を備えている。プリンティング部品は、制御信号に応答して選択的にインクを付着形成させるプリントヘッド16と、それぞれのプリントヘッドにインクを与えるためのインク・コンテナ18とを備えている。図示されているように、可撓導管20によって対応するインク・コンテナ18に、各プリントヘッドを流体的に連結することができる。
【0009】
プリントヘッド16は、スキャニング・キャリッジ(scanning carriage)22内に装着されている。このスキャニング・キャリッジは、プリント媒体がプリント領域を通ってステップされるときに、プリント媒体を越えてスキャンされる。プリントヘッドがプリント媒体に対して移動されると、インクがプリントヘッド16内のオリフィスから選択的に吐出されて、イメージやテキストが形成される。
【0010】
本発明の1つの態様は、プリント機構部12の動作パラメータを更新するために、交換式プリンティング部品14に関する情報を記憶するように構成された方法及び装置に関する。(図2A及び図2Bに見られる)電気記憶装置38が、それぞれの交換式プリンティング部品14に関連付けられている。電気記憶装置38は、特定の交換式プリンタ部品14に関連した情報を含んでいる。交換式プリンティング部品14をプリント機構部12に取り付けることにより、電気記憶装置38とプリント機構部12との間に情報が転送されることが可能にされ、高いプリント品質が確実にされると共に、互換性がない交換式プリンティング部品14を装着することが回避される。交換式プリンティング部品14からプリンティング部分12に与えられる情報は、プリンティング・システムの何らかの部品を損傷する、又はプリント品質を損なうような方法によりプリンティング・システム10が動作することを防止することもできる。
【0011】
(図1に示されている)プリンティング・システム10は、スキャニング・キャリッジ22から離れて搭載されているインク・コンテナ18を使用するが、開示された部品や方法は他の種類のプリンティング・システムの構成にも良く適合する。そのような1つの構成では、交換式インク・コンテナ18がスキャニング・キャリッジ22上に搭載される。プリントヘッド16とインク・コンテナ18を、スキャニング・キャリッジ22に搭載された集積形プリンティング・カートリッジ内に組み込むこともできる。最後に、プリンティング・システム10は、ファクシミリ装置や、郵便フランク装置(postal franking machine)や、コピー機や、ディスプレイや、屋外看板で使用するのに好適な大型プリンティング・システムなどの広範囲の用途に使用できる。
【0012】
図2A及び図2Bは、図1に示されているプリンティング・システムの単純化した概略図を示している。図2A及び図2Bは、単色のプリンティングを行うように、1つのプリントヘッド16と1つのインク・コンテナ18を例示するように単純化されている。2色以上が必要な場合は、図1に示されているように、それぞれが関連するインク・コンテナ18を有する複数のプリントヘッド16を使用することができる。
【0013】
プリント機構部12は、インク・コンテナ受入れステーション24とコントローラ26とを備えている。インク・コンテナ18がインク・コンテナ受入れステーション24に正しく挿入されると、インク・コンテナとプリント機構部との間に電気的で流体的な結合が達成される。流体的な結合により、インク・コンテナ18の中に保存されたインクをプリントヘッド16に提供することができる。電気的な結合により、情報がインク・コンテナ18とプリント機構部12との間に送られて、プリント機構部12の動作がインク・コンテナ18の中に含まれたインクに確実に対応することができ、これによりプリンティング・システムの高いプリント品質と信頼できる動作が実現される。
【0014】
コントローラ26は、プリント機構部12と交換式プリンティング部品14との間の情報の転送を制御することができる。例えば、コントローラ26は、プリントヘッド16と、インク・コンテナ18と、コントローラ26との間の情報の転送を制御することができる。このコントローラは、プリントヘッド16とプリント媒体の相対的な動き、及びプリントヘッドを選択的に動作させてインクをプリント媒体上に付着形成させることも制御する。
【0015】
インク・コンテナ18は、中にインクを蓄えるためのリザーバ28を備えている。流体リザーバ28と流体連通している流体放出口(fluid outlet)30が設けられている。この流体放出口30は、インク・コンテナ受入れステーション24に関連付けられた相補形流体注入口(complimentary fluid inlet)32と連結するように構成されている。
【0016】
プリントヘッド16は、プリント機構部12に関連付けられた相補形流体放出口36と連結するように構成された流体注入口34を備えている。プリントヘッドが(図1に示されている)スキャニング・キャリッジ22の中に適切に挿入されると、プリントヘッドとインク・コンテナ18との間に、可撓性流体管20によって流体連通が確立される。
【0017】
(プリントヘッド16やインク・コンテナ18などの)各交換式プリンティング部品は、電気記憶装置38を含みうる。これらの電気記憶装置38は、情報記憶装置すなわちメモリと呼ばれることもあり、それぞれの交換式プリンタ部品に関する情報を記憶するために使用することができる。複数の電気接点40が各交換式プリンティング部品14上に設けられて、各接点は電気記憶装置38に電気的に接続されている。
【0018】
インク・コンテナ18がインク・コンテナ受入れステーション24に正しく挿入されると、各電気接点40がインク・コンテナ受入れステーション24に関連した対応する電気接点と係合することができる。そして、電気接点42は、1つ以上の電気導体44によってコントローラ26に電気的に接続される。インク・コンテナ18がインク・コンテナ受入れステーション24に正しく挿入されると、(インク・コンテナ18に関連した)電気記憶装置38がコントローラ26に電気的に接続されて、インク・コンテナ18とプリント機構部12との間で情報を転送することができる。
【0019】
同様に、プリントヘッド16上の複数の電気接点40は、電気記憶装置38に電気的に接続される。プリントヘッド16がプリント機構部12に正しく挿入されると、電気接点40が対応する(プリンタ本体12に関連付けられた)電気接点42に係合することができる。係合すると、電気記憶装置38はコントローラ26に1つ以上の電気導体46によって電気的に接続される。
【0020】
各インク・コンテナ18とプリントヘッド16に関連した電気記憶装置38は、同じ機能を示すように同じ識別子が与えられるが、インク・コンテナ18に関連した電気記憶装置(38)の中に記憶された情報は、プリントヘッド16に関連した電気記憶装置(38)の中に記憶された情報とは異なっている。同様に、複数のインク・コンテナ18の各インク・コンテナに関連した電気記憶装置38の中に記憶された情報は、一般的に、その特定のインク・コンテナに対して固有のものである。各電気記憶装置38上に記憶された特定の情報については、以下でより詳細に説明する。
【0021】
図3は、情報源すなわちホストコンピュータ48に接続された状態で示されたプリンティング・システム10の実施例のブロック図を示している。ホスト48は、ディスプレイ装置50に接続されているように示されている。このホストは、コントローラ26にデータリンク52を介して画像情報を提供する種々の情報源(2〜3の例を挙げると、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、又はサーバなど)のいずれかとすることができる。ホスト48とプリンティング・システム10との間に情報を転送するためのデータリンク52は、(電気的リンク、赤外線リンク、ワイドエリアネットワーク・リンク又はローカルエリアネットワーク・リンク、又は他の任意のよく知られているデータリンクなどの)種々の従来のデータリンクのいずれかとすることができる。
【0022】
交換式プリンティング部品14に関連した電気記憶装置38に電気的にリンクされているのに加えて、コントローラ26は、媒体の移送とキャリッジ22の動きを制御するために、プリンタ機構部54に電気的にリンクされる。このリンクは、情報転送を支援する電気的又は光学的なリンケージなどの様々なリンケージとすることができる。コントローラ26は、プリントを実行するためにホスト48及びメモリ38によって与えられたパラメータや情報を利用することができる。
【0023】
ホスト48は、プリント媒体上に画像を形成するために、画像描写情報すなわち画像データをプリンティング・システム10に提供する。さらに、ホスト48は、一般的に「プリント・ドライバ」と呼ばれるプリンタ制御ソフトウェアによってプリンティング・システムの動作を制御するために、種々のパラメータを提供することができる。プリンティング・システムが最高品質の画像を確実に提供するために、コントローラ26は、プリンティング・システムの中に取り付けられた特定の交換式プリンタ部品14を補正することができる。電気記憶装置38は、関連した交換式プリンタ部品14に特有のパラメータをコントローラ26に提供して、コントローラがこれらのパラメータを使用して、プリンティング・システムが信頼できる動作を確実に行うことができるように、そして高品質のプリント画像が確実に得られるようにする。
【0024】
交換式プリンティング部品14に関連しかつ電気記憶装置38の中に蓄えられたパラメータは、次の情報を含む、すなわち、2〜3例を挙げると、インク・コンテナに送られたインクの量、インク・コンテナに残っているインク、プリントヘッドから放射されたインク・ドロップの実際のカウント、インク・コンテナに関連したデータコード、インク・コンテナの初期装着に関するデータコード、システム係数、インクの種類/色、インク・コンテナの寸法、インクの有効期間、プリンタの型式番号又は識別番号、カートリッジの取扱い情報、を含む。レーザ・プリンティング・システムなどの他の種類のプリント機構部を備えているプリンティング・システムでは、これらのパラメータは他の種類の交換式プリンティング部品に関連付けられている。従って、そのようなシステムでは、パラメータは、トナー・カートリッジ又は他の適当な交換式プリンティング部品に関連した情報を含む。
【0025】
図4は、データを電気記憶装置38に転送するときにデータの完全性を確実にするために、プリンティング・システム10のコントローラ26と組み合わせて使用することができる電気記憶装置38を示している。この電気記憶装置38は、MxNビットのメモリとして構成することができる。ここで、Mはビット数を示し、Nはメモリ装置の大きさを表す。幾つかのシステムでは、電気記憶装置38は8ビット(すなわち、1バイト)の装置とすることができる。
【0026】
各個別にアドレス可能なMビットのメモリ位置には、0からN−1にわたるアドレス値が示される。図4は、電気記憶装置38の中に記憶することができる幾つかの情報を例示するように使用されているが、この電気記憶装置38は、図示されていない付加的な情報を含みうることは理解されよう。さらに、電気記憶装置38の中の情報の位置は、図4に示された位置とは異なっていても良い。プリンティング・システム10内のコントローラ26は、少なくとも幾つかの情報がどこに記憶されているかを知ることが要求される。
【0027】
メモリ・アドレス値0〜N−3は、記憶部分60を定義する。このメモリの部分は、前述された実施例に関するパラメータなどの、交換式プリンティング部品14に関する種々のパラメータを含みうる。
【0028】
これらのパラメータは、対応する交換式プリンティング部品14に関連した複数のパラメータ・フィールド64として記憶部分60内に編成される。各パラメータ・フィールド64は、(例えば、インクの色、プリントされたページ、又は前述された他の実施例の値などの)複数のパラメータ値66を含みうる。パラメータ・フィールド64は、記憶部分60の中のパラメータ値66のブロックの中で編成される。パラメータ・フィールド64を形成するパラメータ値66のブロックは、あらかじめ選択された大きさを有するように構成される。あらかじめ選択されたこれらのブロックの大きさは、プリント機構部12と電気記憶装置38との間でパラメータ・フィールド64を転送することがパラメータ値66の1つのブロックの中で確実に行われるように選択される。プリンティング・システム10は、プリント機構部12から電気記憶装置38へパラメータ値66の1つのブロックを、1回の書込みしか要求しない1回の動作で、ごく短時間に転送することが確実に行われるように構成される。パラメータ値66は、第1のメモリ・アドレス0にしか示されていないが、0からN−3の各パラメータ・フィールドを同様に編成することができることは理解されたい。
【0029】
記憶部分60へのデータ転送が妨害される場合、データの破損が発生することがある。例えば、交換式プリンティング部品がインク・コンテナ18である場合、コントローラ26がデータを電気記憶装置38に転送している間に、インク・コンテナを取り外すことは可能である。このデータ転送が妨害されると、データの完全性が損なわれる可能性がある。このような場合、記憶部分60が有効データを有しているかどうかを確認するために、交換式プリンティング部品を検査する必要がある。
【0030】
そのような問題に対処するために、メモリ・アドレス値N−2〜N−1を検証フィールド62とすることができる。これらのフィールドは、エラー検出コードを記憶するために使用することができ、このエラー検出コードはデータの破損を検出するために使用できる。これらのエラー検出コードは、記憶部分60内のデータに関係付けることができるコンピュータが読取り可能な文字(例えば、数字、文字、記号)の任意のストリングとすることができる。記憶部分60内のデータに数学的に関係付けられるエラー検出コードを検証フィールド62に記憶するように、電気記憶装置38及び/又はコントローラ26を構成することができる。例えば、検証フィールド62の中に記憶されたエラー検出コードは、記憶部分60に含まれたデータ上で実行される所定のハッシュ関数の結果とすることができる。使用することができる他の種類のエラー検出コードは、パリティ・データの変形物である。特に、記憶部分60内のデータに数学的に関連付けられたパリティ・データは、計算されて検証フィールド62の中に記憶される。適当なエラー検出コードの他の実施例は、巡回冗長検査、チェックサム(例えば、MD5)、又は記憶部分60内のデータに関係付けることができるコンピュータが読取り可能な文字の他の任意のストリングを含むが、これらに限定されない。
【0031】
電気記憶装置38及び/又はコントローラ26は、検証フィールド62の中に「ピンポン」形式(すなわち、3つ以上の検証フィールドを有する実施形態の中で循環する形式)でエラー検出コードを記憶するように構成されることができる。言い換えると、電気記憶装置38及び/又はコントローラ26は、エラー検出コードを記憶する場合、検証フィールド62の間で交互に行う。
【0032】
ここで、図5を参照する。100において、データの第1のブロックが電気記憶装置38に転送される状態にあるとき、この第1のデータ転送の後で記憶部分60の中に記憶されることになるデータに関連付けることができる第1のエラー検出コードが102で計算される。
【0033】
幾つかのシステムでは、プリンティング・システムのコントローラ26又は他の部品は、記憶部分60内に記憶されたデータのキャッシュを保持することができる。このキャッシュを用いて、コントローラ26(又は他の部品)は、データの第1のブロックの追加を反映するためにキャッシュデータを更新して、次に更新されたキャッシュデータに対してエラー検出コードを計算することができる。
【0034】
第1のエラー検出コードが計算されると、104において、そのコードは検証フィールド62に書き込まれる。第1の検証フィールドは、現在記憶部分60にあるデータに対応するエラー検出コードを有している。このため、この第1のエラー検出コードは、第2の未使用の検証フィールドに記憶される。
【0035】
この時点で更新されたフィールドは第2の検証フィールドと呼ばれるが、これが任意の分類であることが当業者には理解されるであろう。更新される検証フィールドが、記憶部分60に現在記憶されているデータに関連付けられるエラー検出コードを含まない限り、検証フィールドはいつでもエラー検出コードで更新されることができる。2つ以上の検証フィールドが、現在記憶部分60の中にあるデータに関連付けられたエラー検出コードを含む場合に、この規定に対する例外が発生する。そのような場合、第1のエラー検出コードは任意の検証フィールド62に書き込まれる。
【0036】
104において、第1のエラー検出コードが書き込まれると、106において、データの第1のブロックか記憶部分60に転送されて記憶される。
【0037】
この工程は、データをさらに転送するために繰り返される。上記の実施例に続いて、電気記憶装置38に対して第2の転送を行う前に(矢印108に沿って100に戻る)、第2のエラー検出コードが102で計算される。この第2のエラー検出コードは、第2の転送の後で記憶部分60に記憶されることになるデータに関連付けられる。この第2のエラー検出コードは、104において、第1の検証フィールドに書き込まれる(前述したように、第2の検証フィールドには、現時点では、現在記憶部分にあるデータに関係付けられる第1のエラー検出コードが入っている)。第2のエラー検出コードが第1の検証フィールドに書き込まれると、106において、第2のデータ転送が行われる。
【0038】
図6では、2つの実施例を更新する間の記憶部分60と2つの検証フィールド62の状態が示されている。時間は矢印Tで示されているように、右に向かって進行する。記憶部分はOLD DATAを有している状態で始まり、検証フィールド2はOLD DATAに関係付けられるエラー検出コードを含んでいる。フィールド1の内容は、この時点では無関係である。しかしながら、記憶部分60がDATA 1を含むように更新される前は、検証フィールド1はDATA 1に関係付けられるエラー検出コードを含むように更新される。従って、Xで示された時間に対して、検証フィールド1は次に記憶部分60に記憶されることになるデータに関連付けられたエラー検出コードを含み、また検証フィールド2は、記憶部分60に現在含まれているデータに関連付けられたエラー検出コードを含んでいる。
【0039】
検証フィールド1が更新されると、記憶部分60がDATA 1を含むように更新される。このように、Yでマークされた時間に対して、検証フィールド1は記憶部分60に現在記憶されているデータに関係付けられるエラー検出コードを含み、検証フィールド2は直前に記憶部分60に記憶されているデータに関係付けられるエラー検出コードを含んでいる。
【0040】
図6の参照を続けると、DATA 2を記憶部分60に記憶する前に、検証フィールド2は、DATA 2に関係付けられるエラー検出コードを含むように更新される。検証フィールド2が更新されると、記憶部分60がDATA 2を含むように更新される。
【0041】
図6及び前の説明から分かるように、データを記憶部分60に転送する直前に、マークされたX及びXの時点で、1つの検証フィールド62は、現在記憶部分60にあるデータに関係付けられるエラー検出コードを含みうる。別の検証フィールド62は、転送の後に記憶部分60内に記憶されることになるデータに関係付けられるエラー検出コードを含みうる。
【0042】
図6でY及びYとマークされた別の時点では、1つの検証フィールドは、現在記憶部分60内にあるデータに関係付けられるエラー検出コードを含み、別の検証フィールドは、現在のデータの直前に記憶部分60内に記憶されたデータに関係付けられるエラー検出コードを含んでいる。
【0043】
本発明の別の態様には、エラー検出が含まれる。図7に示されているように、検証フィールド62の内容を記憶部分60内のデータに1つずつ関係付けることによって、データの完全性が検証される。検証フィールド62の中に含まれたエラー検出コードが記憶部分60内のデータに一致する場合、そのデータは有効であり、交換式プリンティング部品は拒否されない。しかしながら、検証フィールド62がデータに一致するエラー検出コードを含まない場合は、記憶部分60内のデータは破損しており、交換式プリンティング部品は不合格にされる。
【0044】
図7では処理が200で開始され、202において、第1の検証フィールドの内容が記憶部分に含まれたデータと比較される。この比較は、使用されるエラー検出コードの種類に対応する。例えば、エラー検出コードがハッシュ合計の場合、この比較は、検証フィールド62をポピュレートする前に使用された同じハッシュ関数を使用して、記憶部分60内のデータのハッシュ合計を計算するステップを含む。
【0045】
第1の検証フィールド62の内容が記憶部分内のデータに関係付けられる場合、208において、記憶部分60内のデータは損なわれていない、また交換式プリンティング部品はプリンティング・システム10によって受け入れられる。第1の検証フィールド62の内容が記憶部分60内のデータに関係付けられない場合は、工程は204に進む。この工程では、第2の検証フィールド62の内容が記憶部分60内のデータと比較される。比較が一致されると、工程は208に進み、交換式プリンティング部品が容認される。しかしながら、一致しない場合、記憶部分60の中のデータは破損しており、206において、プリンティング・システム10は交換式プリンティング部品を拒絶する。
【0046】
図7に示された工程が(204及び206において)2つの検証フィールドの内容を記憶部分60内のデータと比較しているが、別の検証フィールドの内容も記憶部分60内のデータと比較されうることは、当業者には理解されるであろう。そのような付加的な比較は、検証フィールドが幾つ特定の電気記憶装置38の中に構成されるかによって行われる。
【0047】
前述された開示内容は、本発明の複数の別個の実施形態を含んでいると確信されている。これらの実施形態のそれぞれは特定の形態で開示されたが、本願で開示及び例示された特定の実施形態は、多数の変形例が可能であるため、これに限定されると考えてはならない。従って、この開示内容は、全ての新規な組合せや明確でない組合せ、及び本願で開示された種々の部品、機構、機能及び/又は特性のサブコンビネーションを含んでいる。同様に、クレームが「1つの」又は「第1の」要素又はそれと等価なものを説明する場合、そのようなクレームは、2つ以上のそのような要素を要求したり除外するのではなく、1つ以上のそのような要素を含むものと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換式プリンティング部品を受容するように構成されたプリント機構部を備えるプリンティング・システムの中で使用するための交換式プリンティング部品であって、
前記交換式プリンティング部品が、前記プリント機構部から受け取った情報を選択的に記憶するプリンティング・システム用制御信号に応答する電気記憶装置を備えており、
前記電気記憶装置が、前記交換式プリンティング部品に関連したデータを含む記憶部分と、データが有効かどうかを判断するために、前記記憶部分に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを記憶するように構成された第1及び第2の検証フィールドと を備えており、
前記電気記憶装置が、前記プリント機構部から前記記憶部分への第1のデータ転送の前に、前記記憶部分の中に現在含まれているデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの一方の中に記憶するように構成され、前記電気記憶装置が、前記第1の転送の後で、前記記憶部分の中に含まれることになるデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの他方の中に記憶するように構成されている、交換式プリンティング部品。
【請求項2】
前記プリント機構部から前記記憶部分への次に来る転送の前に、前記電気記憶装置が、前記次に来る転送の後で前記記憶部分の中に含まれることになるデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記次に来るデータ転送の直前に前記記憶部分に含まれたデータに関連するデータを含まない前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成されている、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項3】
前記電気記憶装置が、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算されたパリティ・データを受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの一方に記憶するように構成され、前記電気記憶装置が、前記第1の転送の後で前記記憶部分に含まれることになるデータから計算されたパリティ・データを受信し、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算されたパリティ・データを含んでいない前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成されている、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項4】
前記電気記憶装置が、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算された巡回冗長検査を受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成され、前記電気記憶装置が、前記第1の転送の後で前記記憶部分に含まれることになるデータから計算された巡回冗長検査を受信し、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算された巡回冗長検査を含んでいない前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成されている、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項5】
前記電気記憶装置が、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算されたハッシュ合計を受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成され、前記電気記憶装置が、前記第1の転送の後で前記記憶部分に含まれることになるデータから計算されたハッシュ合計を受信し、前記記憶部分に現在含まれているデータから計算されたハッシュ合計を含んでいない前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成されている、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項6】
前記記憶部分が、前記交換式プリンティング部品に関連した複数のパラメータ・フィールドを有し、前記複数のパラメータ・フィールドのそれぞれが、複数のパラメータ値を含み、前記記憶部分の中の前記パラメータ値のブロックの中でサイズ変更された前記複数のパラメータ・フィールドが、前記複数のパラメータ・フィールドのそれぞれが、プリンティング・システムと記憶部分との間でパラメータ値の1つのブロックの中で確実に転送されるようにあらかじめ選択されたサイズを有している、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項7】
前記プリンティング・システムがインクジェット式プリンティング・システムであり、前記プリント機構部がインクジェット・プリンタであり、前記交換式プリンティング部品が多量のインクを含む交換式インク・コンテナをさらに含み、前記交換式インク・コンテナがインクを前記プリント機構部に供給するものである、請求項1に記載の交換式プリンティング部品。
【請求項8】
プリンタと交換式プリンティング部品との間にデータを転送する方法であって、
交換式プリンティング部品と関連した電気記憶装置を有する前記交換式プリンティング部品を提供するステップと、
第1のデータブロックを前記電気記憶装置に転送した後で、記憶部分の中に記憶されることになるデータに関係付けられる第2のエラー検出コードを計算するステップと、
前記第2のエラー検出コードを、第1のエラー検出コードを含まない2つの検証フィールドのうちの1つに記憶するステップと、
前記第1のデータブロックを前記プリンタから前記電気記憶装置に転送するステップと
を含んでなり、
前記電気記憶装置が、前記プリンタから転送された前記第1のデータブロックを受け取るように構成され、前記交換式プリンティング部品に関係付けられるデータを含む記憶部分と、前記記憶部分の中に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを記憶するように構成された2つの検証フィールドを有し、前記1つの検証フィールドが前記記憶部分の中に含まれたデータに関係付けられる前記第1のエラー検出コードを含むものである、データを転送する方法。
【請求項9】
前記プリンタから前記電気記憶装置へと第2のデータブロックを転送した後に、前記記憶部分に記憶されることになるデータに関係付けられる第3のエラー検出コードを計算するステップと、
前記第2のエラー検出コードを含まない前記2つの検証フィールドのうちの1つに前記第3のエラー検出コードを記憶するステップと、
前記第2のデータブロックを前記プリンタから前記電気記憶装置に転送するステップと
をさらに含む、請求項8に記載のデータを転送する方法。
【請求項10】
前記第1のデータブロックを前記プリンタから前記電気記憶装置に転送するステップが失敗した場合、前記データを転送する方法が、
各検証フィールドの中に記憶されたエラー検出コードを前記記憶部分に含まれたデータに関連付けるステップと、
前記検証フィールドが前記記憶部分の中に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを含まない場合、前記交換式プリンティング部品を拒絶するステップと、
少なくとも1つの検証フィールドが前記記憶部分の中に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを含む場合、前記交換式プリンティング部品を容認するステップと
を含むものである、請求項8に記載のデータを転送する方法。
【請求項11】
前記第1のエラー検出コードが前記記憶部分の中に含まれたデータから計算された第1のパリティ・データであり、前記第2のエラー検出コードを計算するステップが、前記第1のデータブロックを前記電気記憶装置に転送した後に前記記憶部分の中に含まれることになるデータから第2のパリティ・データを計算することを含み、前記第2のエラー検出コードを記憶するステップが、前記第1のパリティ・データを含まない前記2つの検証フィールドのうちの1つの中に前記第2のパリティ・データを記憶することを含むものである、請求項8に記載のデータを転送する方法。
【請求項12】
前記第1のエラー検出コードが前記記憶部分の中に含まれたデータから計算された第1の巡回冗長検査であり、前記第2のエラー検出コードを計算するステップが、前記第1のデータブロックを前記電気記憶装置に転送した後に前記記憶部分の中に含まれることになるデータから第2の巡回冗長検査を計算することを含み、また前記第2のエラー検出コードを記憶するステップが、前記第1の巡回冗長検査を含まない前記2つの検証フィールドのうちの1つの中に前記第2の巡回冗長検査を記憶することを含むものである、請求項8に記載のデータを転送する方法。
【請求項13】
前記第1のエラー検出コードが、所定のハッシュ関数を用いて前記記憶部分の中に含まれたデータから計算された第1のハッシュ合計であり、前記第2のエラー検出コードを計算するステップが、前記第1のデータブロックを前記電気記憶装置に転送した後に前記記憶部分の中に含まれることになるデータの第2のハッシュ合計を計算するためにハッシュ関数を用いることを含み、前記第2のエラー検出コードを記憶するステップが、前記第1のハッシュ合計を含まない前記2つの検証フィールドのうちの1つの中に前記第2のハッシュ合計を記憶することを含むものである、請求項8に記載のデータを転送する方法。
【請求項14】
プリント媒体上に可視材料を選択的に付着形成するためのプリンティング・システムであって、
交換式プリンティング部品を受容するように構成され、プリント機構部と前記交換式プリンティング部品との間でデータを転送するための制御部を含むプリント機構部と、
前記プリント機構部から受信された情報を選択的に記憶するためのプリンティング・システム用制御信号に応答する電気記憶装置を含む交換式プリンティング部品と
を備えてなり、
前記電気記憶装置は、前記交換式プリンティング部品に関連したデータを含む記憶部分と、データが有効かどうかを判断するために、前記記憶部分に含まれたデータに関係付けられるエラー検出コードを記憶するように構成された第1及び第2の検証フィールドとを備えており、
前記電気記憶装置が、前記プリント機構部から前記記憶部分への第1のデータ転送を行う前に、前記記憶部分の中に現在含まれているデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの一方の中に記憶するように構成され、前記電気記憶装置が、前記第1の転送の後で、前記記憶部分の中に含まれることになるデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記第1及び第2の検証フィールドのうちの他方の中に記憶するように構成されている、プリンティング・システム。
【請求項15】
前記プリント機構部から前記記憶部分への次に来る転送の前に、前記電気記憶装置が、前記次に来る転送の後で前記記憶部分の中に含まれることになるデータに関連したエラー検出コードを受信し、前記次に来るデータ転送の直前に前記記憶部分に含まれたデータに関連するデータを含まない前記第1及び第2の検証フィールドのうちの1つに記憶するように構成されている、請求項14に記載のプリント媒体上に可視材料を選択的に付着形成するためのプリンティング・システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−534578(P2010−534578A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518354(P2010−518354)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/070890
【国際公開番号】WO2009/018054
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】