説明

不揮発性記憶装置

【課題】プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する記憶層7と、記憶層の第1主面に設けられた複数の第1電極8と、記憶層の第1主面とは反対の側の第2主面に設けられた第2電極6と、前記複数の第1電極に対向して設置され前記第1電極との相対的な位置関係が可変のプローブ電極9と、駆動部10と、を備えた不揮発性記憶装置が提供される。駆動部は、前記プローブ電極と前記第2電極とに接続され、前記プローブ電極を介して前記複数の第1電極のうちの少なくともいずれかと前記第2電極との間で、前記記憶層に電界を印加及び電流の通電の少なくともいずれかを生じさせることによって前記記憶層に情報の記録を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記憶容量の増大と価格の低下により市場が急速に拡大しているNAND型フラッシュメモリは、微細化の限界及び最小線幅の縮小によるプロセスコストの増大という問題を抱えている。この問題を解決する新規な不揮発性メモリの開発が期待されている。
【0003】
例えば、抵抗値が変化する抵抗変化材料から構成される記録媒体とプローブアレイと組み合わせたにメモリ装置が提案されている。
このようなプローブ型のメモリにおいては、記録媒体の背面の電極と記録媒体の表面に接触されるプローブ電極との間において、記録媒体に電圧を印加して抵抗を変化させて情報を記録し、また、情報の読み出しを行う。この時、記録媒体の表面に平行な平面内における抵抗の変化が高精度で制御されていない場合には、情報の記憶ビットの分離が不十分となり、情報の高密度化ができず、または、書き込み/読み出しのエラーが発生する。
【0004】
これに対し、記録媒体の表面に対して垂直方向に電気伝導度が高い異方性導電材料の層を付与して、誤読み出しを抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この場合においても、記録媒体の記憶ビットの位置とプローブ電極の位置とにずれがあった場合には、書き込み/読み出しのエラーが生じる。
【0005】
このため、従来の技術においては、プローブ電極は、記録媒体の記憶ビットに対して非常に高精度に位置制御されることが要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−273618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する記憶層と、前記記憶層の第1主面に設けられた複数の第1電極と、前記記憶層の前記第1主面とは反対の側の第2主面に設けられた第2電極と、前記複数の第1電極に対向して設置され前記第1電極との相対的な位置関係が可変のプローブ電極と、前記プローブ電極と前記第2電極とに接続され、前記プローブ電極を介して前記複数の第1電極のうちの少なくともいずれかと前記第2電極との間で、前記記憶層に電界を印加及び電流の通電の少なくともいずれかを生じさせることによって前記記憶層に情報の記録を行う駆動部と、を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置における特性を例示する模式的グラフ図である。
【図3】本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A’線断面図である。
図1に表したように、本発明の実施形態の不揮発性記憶装置210は、抵抗が変化する記憶層7と、その記憶層7の第1主面7aに設けられた複数の第1電極8と、記憶層7の第1主面7aとは反対の側の第2主面7bに設けられた第2電極6と、プローブ電極9と、駆動部10と、を備える。なお、図1(a)においては、プローブ電極9及び駆動部10は省略されている。
【0013】
第2電極6は、例えば基板5の上に設けられる。第2電極6には、例えばタングステンや白金などが用いられる。ただし、本発明は、これに限らず第2電極6には任意の導電材料を用いることができる。また、第2電極6は連続的な1つの導電層としても良く、また、後述するように、記憶層7の第2主面7bの側において、複数設けても良い。
【0014】
記憶層7は、第2電極6の上に設けられる。後述するように、記憶層7は、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する層である。
【0015】
記憶層7には、例えば、NiO、TiO、CoO、TaO、MnO、WO、Al、FeO、HfO、ZnMn、ZnFe、ZnCo、ZnCr、ZnAl、CuCoO、CuAlO、NiWO4、NiTiO、CoAl、MnAl、ZnNiTiO、及び、PrCa1−xMnOなどを用いることができる。
また、記憶層7には、上記の各種の金属化合物にドーパントを添加したものを用いても良い。
【0016】
ただし、本発明は、これに限らず、記憶層7には、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する任意の材料を用いることができる。また、記憶層7には、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって相状態が変化し、この相状態の変化に伴って抵抗が変化するいわゆる相変化材料を用いても良い。このように、相変化に伴って抵抗が変化する材料も抵抗変化材料とする。
【0017】
第1電極8には、例えばタングステンや白金などが用いられる。ただし、本発明は、これに限らず第1電極8には任意の導電材料を用いることができる。本具体例では、第1電極8は、記憶層7に埋め込まれており、記憶層7の第1主面7aと第1電極8の上の面は実質的に同じ平面内にあるが、本発明はこれに限らず、第1電極8の上の面は、記憶層7の第1主面7aよりも後退していても良く、また、突出していても良い。また、第1電極8の平面形状(第1主面7aに対して垂直な方向からみたときの平面形状)は、円形であるが、扁平円でも良く、また、後述するように各種の変形が可能である。
【0018】
プローブ電極9は、第1電極8に対向設置され、例えばプローブ基板9sに設けられ、プローブ基板9sによって保持される。プローブ電極9は、第1電極8との相対的な位置関係が可変とされている。プローブ電極9には、例えば原子間力顕微鏡に用いられるプローブを用いることができ、プローブ電極9の全体が導電性でも良く、またプローブ電極9の記憶層7に対向する側の先端の表面が導電性の薄膜で被覆されているものでも良い。プローブ電極9には、例えばシリコン、カーボンナノチューブ、タングステンなどの材料が用いられ、その先端が細く加工されたものが用いられる。
後述するように、プローブ電極9は複数設けても良く、その数は任意である。
【0019】
駆動部10は、プローブ電極9及び第2電極6に接続されている。そして、駆動部10は、複数のプローブ電極9を介して、複数の第1電極8のうちのいずれかと第2電極6との間で、記憶層7に電界E2を印加及び電流I2の通電の少なくともいずれかを生じさせることによって記憶層7に情報の記録を行う。
【0020】
ここで、本願明細書において、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、記憶層7の第1主面7aに平行な平面内における1つの方向をX軸方向(第1方向)とし、第1主面7aに平行な平面内においてX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向(第2方向)とし、X軸方向とY軸方向とに垂直な方向をZ軸方向(第3方向)とする。すなわち、第1主面7aはX−Y平面に対して平行であり、第1主面7aはZ軸方向に対して垂直である。
【0021】
本具体例では、第1電極8は、X−Y平面において、X軸方向及びY軸方向のマトリクス状に配列している。ただし、本発明は、これに限らず、第1電極8は第1主面7aにおいて複数設けられれば良く、その数、及びその配置に関しては任意である。以下では、第1電極8がX軸方向とY軸方向とにおいてマトリクス状に配列される場合として説明する。
【0022】
そして、例えばプローブ電極9は記憶層7の上方において、X−Y平面内を可動でき、プローブ電極9は、任意の第1電極8と接触できる。なお、この時、プローブ電極9は、さらにZ軸方向に可動でき、すなわち記憶層7及び第1電極8の上で上下するように構成することもできる。これにより、第1電極8とプローブ電極9との接触及び非接触を制御できる。ただし、プローブ電極9は、Z軸方向の位置に関して固定され、常に記憶層7または第1電極8と接触するように構成しても良い。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置における特性を例示する模式的グラフ図である。
すなわち、同図は、不揮発性記憶装置210における記憶層7の特性を例示しており、横軸は記憶層7に印加される電圧Vであり、縦軸は記憶層7に流れる電流Iである。なお、縦軸は、電流Iを対数で表している。
【0024】
図2に表したように、記憶層7の初期の状態が高抵抗状態HRSであるとする。記憶層7に印加される電圧Vを上昇させたときに、第2遷移電圧V2において、高抵抗状態HRSから相対的に低い抵抗状態である低抵抗状態LRSに遷移する。
【0025】
そして、この低抵抗状態LRSは、印加されている電圧Vを取り除いても維持されている。そして、低抵抗状態LRSにおいて、電圧Vを0Vから上昇させると、第1遷移電圧V1において、高抵抗状態HRSに遷移する。
【0026】
このように、記憶層7においては、抵抗の異なる複数の状態を有する。例えば、記憶層7の低抵抗状態LRSを「1」とし、高抵抗状態HRSを「0」としてデータを記録する。例えば、駆動部10において、記憶層7に流れる制限電流を1種類に規定し、データとしては、「0」と「1」の2値を取り扱う。
【0027】
なお、例えば、制限電流値を2種類以上設定することで、データを多値化することもできる。すなわち、本具体例では、記憶層7は、高抵抗状態HRSと低抵抗状態LRSの2つの状態を有しているが、3つ以上の異なる抵抗を有しても良い。
【0028】
なお、図2においては、直流の電圧を記憶層7に印加した場合の特性を例示しているが、不揮発性記憶装置110においては、記憶層7に非常に短いパルス電圧を印加して動作させても良い。
【0029】
不揮発性記憶装置210においては、例えば、書き込み時には、プローブ電極9を上げた状態でXY平面内を移動させ、所望の記憶ビットに対応する位置でプローブ電極9を下ろし、第1電極8と接触させ、第1電極8と第2電極6との間に電圧を印加し、書き込みを行う。その後、書き込んだ記憶ビットを読み込みまたは消去を行う際には、再度、書き込みを行った場所までプローブ電極9を移動させ、読み込みまたは消去を行う。
【0030】
第2電極6、記憶層7及び第1電極8は、例えば以下のようにして作製される。
基板5の上に、第2電極6となる導電性材料のPt(白金)の膜を形成し、その上に、記憶層7となる抵抗変化膜(例えばNiO)を成膜し、リソグラフィとドライエッチングにより、抵抗変化膜に穴パターンを形成する。その後、穴の中に、第1電極8となる導電性材料のWを、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により埋め込み、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化する。これにより、図1に例示した構造を形成できる。この構造においては、第1電極8が記憶層7に埋め込まれている。
【0031】
以上のような構成を有する不揮発性記憶装置210においては、記憶層7への電界E2の印加及び電流I2の通電は、所定の形状にパターニングされた第1電極8と第2電極6とによって行われる。このため、プローブ電極9は、所望の記憶ビットに対応する所定の第1電極8のどこかに接触すれば良く、プローブ電極9の位置制御の精度は比較的緩和される。
【0032】
すなわち、第1電極8を有さない従来型の比較例のプローブ型のメモリにおいては、記憶層7の第1主面7aの上にプローブ電極9が接触するため、プローブ電極9の記憶層7に対しての位置がずれると、所望とする記憶ビットとは別の記憶ビットの影響を受け、書き込みエラーまたは読み出しエラーが発生し易い。
【0033】
例えば、単位面積当たりの記憶密度を増大するために、プローブ電極9の曲率半径は小さくされ、例えば、プローブ電極9の曲率半径は数10nm(ナノメートル)程度とされる。この時、比較例の場合は、記憶層7の記憶ビットの面積は、プローブ電極9と記憶層7とが接触する面積以下であり、非常に小さい。このため、再度、この記憶ビットにプローブ電極9を移動し、読み込みまたは消去を行う時に、プローブ電極9の高精度の位置制御が必要となる。また、プローブ電極9と記憶層7とを何度も接触させるため、例えば、記憶層7の形状等が経時的に変化し、接触面積、接触位置及び接触抵抗等を一定に保つことは困難であり、安定した動作を確保し難い。そして、プローブ電極9の形状等も経時的に変化し、同様に、安定した動作を確保し難い。
また、例えば、短時間で複数の記憶ビットに書き込むためには、プローブ電極9をアレイ状に複数設けることがあるが、この場合には、プローブ電極9の位置制御はさらに高い精度が要求される。
【0034】
これに対し、本実施形態に係る不揮発性記憶装置210においては、記憶層7の記憶ビットは、第1電極8によって決まるため、記憶層7の記憶ビットの面積は一定の大きさに制御される。そして、プローブ電極9はそれぞれの第1電極8に対して位置合わせされれば良く、これにより、プローブ電極9の位置合わせ精度が緩和される。そして、プローブ電極9と記憶層7とは直接接触することがなく、記憶層7の形状等が経時的に変化することがない。また、プローブ電極9の形状が変化した場合においても、記憶層7の記憶ビットの面積は第1電極8によって変化しない。このため、安定した動作を確保できる。さらに、プローブ電極9をアレイ状に複数設けた場合においても、プローブ電極9の位置制御の精度は緩和される。
【0035】
このように、不揮発性記憶装置210によれば、プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置が提供できる。
【0036】
例えば、第1電極8のそれぞれの面積(第1主面7aに平行な平面内における面積)は、プローブ電極9の面積(第1主面7aに対向する側の先端の面積)よりも大きく設定することができる。
【0037】
例えば、単位面積当たりの記憶密度を増大し、第1電極8とプローブ電極9との接触を良好に実現するために、プローブ電極9の先端の曲率半径は、例えば約15nmである。なお、この時、プローブ電極9の先端の平面の形状は、直径が実質的に約15nmとなる。一方、第1電極8を形成する際に記憶層7に設ける穴パターンの径は、例えば、50nmとされる。このように、第1電極8のそれぞれの面積よりも、プローブ電極9の先端のそれぞれの面積は小さくされる。
【0038】
これにより、プローブ電極9の位置が、第1電極8の中心から数nmずれたとしても、第1電極8とプローブ電極9とを導通させることができ、第1電極8で規定される記憶ビットに所定の電圧を印加して情報を記録し、また、所定の電流を通電して記録された情報を読み出すことができる。これにより、高精度なステージの位置制御を必要とせず、高密度の情報の記録及び読み出しが可能となる。
【0039】
図3は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図3に表したように、本実施形態に係る別の不揮発性記憶装置211においては、XYスキャナ4の上に、第2電極6、記憶層7及び第1電極8の積層体が配置される。なお、同図では、基板5は省略されている。
【0040】
例えば、記憶層7には、データを格納するデータエリア7dと、データエリアの外側に設けられ、プローブ電極9の動作を制御するためのサーボエリア7sが設けられる。
【0041】
例えば、記憶層7のデータエリア7dに対応して、複数の第1電極8が設けられる。
【0042】
そして、この記憶層7の上の第1電極8に対向してプローブアレイ9mが配置される。 プローブアレイ9mは、プローブ基板9sと、プローブ基板9sの主面にアレイ状に配置された複数のプローブ電極9と、を有する。複数のプローブ電極9の各々は、例えば、カンチレバーを有し、マルチプレクスドライバ9x及び9yにより駆動される。
複数のプローブ電極9は、それぞれ、プローブ基板9s内のマイクロアクチュエータを用いて個別に動作可能であるが、全てをまとめて同じ動作をさせて記憶層7のデータエリア7dに対してアクセスを行っても良い。
【0043】
マルチプレクスドライバ9x及び9yを用いて、各プローブ電極9を例えばX軸方向及びY軸方向に移動させ、記憶層7のサーボエリア7sからX軸方向及びY軸方向の位置情報を読み出す。X軸方向及びY軸方向の位置情報は、ドライバ20に転送される。
ドライバ20は、この位置情報に基づいてXYスキャナ4を駆動し、記憶層7をX軸方向及びY軸方向に移動させ、記憶層7の第1電極8とプローブ電極9との位置を決めることができる。
【0044】
例えば、プローブ電極9が第1電極8の上方に離間して上げた状態で、プローブ電極9を記憶層7の上方を所望の位置まで移動させ、その後、所望の第1電極8の位置でプローブ電極9を下ろし、第1電極8と接触させた後に、複数の第1電極8に電圧を印加し、書き込みを行う。その後、書き込んだ記憶ビットを読み込み、あるいは消去する際には、再度、書き込みを行った場所まで、プローブ電極9を移動させる。
【0045】
すなわち、所望の第1電極8にプローブ電極9が接触した状態で、駆動部10から出力された電気信号がプローブ電極9を介して第1電極8に印加され、第1電極8と第2電極6との間に所定の電圧が印加される。これにより、所望のメモリセル(記憶ビット)におけるデータの書き込み、読み出し、及び消去が行われる。
【0046】
例えば、図2に例示した特性において、第2遷移電圧V2よりも高い電圧を記憶層7に印加することで、データの書き込みが行われる。そして、第1遷移電圧V1よりも高く第2遷移電圧V2よりも低い電圧を印加することで消去が行われる。そして、読み出しには、第1遷移電圧V1よりも低い電圧を印加して、記憶層7の抵抗が高抵抗状態HRSであるか低抵抗状態LRSであるかを読み出す。
【0047】
不揮発性記憶装置211においても、記憶層7の第1主面7aの第1電極8と、第2主面7bの第2電極6との間において、電界E2の印加または電流I2の通電が行われる。これにより、プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置が提供できる。
【0048】
図4は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図(a)及び(b)は、本実施形態に係る不揮発性記憶装置における第1電極8の構成の変形例を例示しており、図1(a)のA−A’線断面に相当する断面図である。なお、これらの図においては、プローブ電極9及び駆動部10は省略されている。
【0049】
図4(a)に表したように、変形例の不揮発性記憶装置212においては、第1電極8の一部が記憶層7に埋め込まれつつ、第1電極8は記憶層7よりも突出している。
【0050】
また、図4(b)に表したように、別の変形例の不揮発性記憶装置213においては、第1電極8は記憶層7に埋め込まれず、記憶層7の主面7aの上に設けられている。なお、この場合も第1電極8は記憶層7よりも突出している。
【0051】
不揮発性記憶装置212及び213のように、第1電極8が記憶層7よりも突出していることで、プローブ電極9のZ軸方向の位置のばらつきが大きい場合においても、第1電極8とプローブ電極9との接触を確実に行うことができる。
【0052】
図5は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図(a)及び(b)は、本実施形態に係る不揮発性記憶装置における第1電極8の構成の変形例を例示しており、図1(a)のA−A’線断面に相当する断面図である。なお、これらの図においては、プローブ電極9及び駆動部10は省略されている。
【0053】
図5(a)に表したように、変形例の不揮発性記憶装置214においては、第1電極8のそれぞれの上面(プローブ電極9に対向する側の面)の中心部が周辺部よりも後退している。すなわち、第1電極8の上面の中心部を窪んだ形状とすることができる。これにより、プローブ電極9との位置合わせがより容易になり、また、プローブ電極9と第1電極8との接触面積を拡大することができ、より特性が安定する。なお、上記のように、第1電極8の上面の中心部を窪ませる形状は、既に説明した第1電極8の構造の全てにおいて適用可能である。
【0054】
また、図5(b)に表したように、変形例の不揮発性記憶装置215においては、第1電極8の上面が丸みを帯びた凸形状とされている。これにより、プローブ電極9と第1電極8との接触によって、第1電極8の上面のコーナー部が損傷を受け第1電極8が破損されることを抑制できる。このように、第1電極8の上面を、丸みを帯びた凸形状とする構造は、第1電極8が第1主面7aよりも突出する不揮発性記憶装置212及び213において適用することが特に好ましい。
【0055】
図6は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的平面図である。
すなわち、同図(a)、(b)及び(c)は、本実施形態に係る不揮発性記憶装置における第1電極8の各種の平面形状を例示している。
【0056】
図6(a)に表したように、本実施形態に係る変形例の不揮発性記憶装置216においては、第1電極8の平面形状(第1主面7aに対して垂直な方向からみたときの平面形状)は、丸みを帯びた角C1を有する四角形である。なお、角C1の丸みは、第1電極8の製造の際に形成されるものであり、角C1に実質的に丸みを有しない四角形であっても良い。そして、四角形の対角線は、X軸方向とY軸方向とに沿って配置されている。
【0057】
また、図6(b)に表したように、別の変形例の不揮発性記憶装置217においては、第1電極8の平面形状は、(丸みを帯びた)角C1を有する四角形であり、この場合は、四角形の辺が、X軸方向及びY軸方向に沿って配置されている。
【0058】
さらに、図6(c)に表したように、別の変形例の不揮発性記憶装置218においては、第1電極8の平面形状は、X軸方向及びY軸方向に設けられた角C2、並びに、X軸方向及びY軸方向に対して斜めの方向に設けられた角C3、を有する形状を有している。
【0059】
以上のように、第1電極8の平面形状は、各種の変形が可能である。
【0060】
図7は、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図は図1(a)のA−A’線断面に相当する断面図である。
図7に表したように、本発明の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置219においては、第2電極6が複数設けられている。これに以外は不揮発性記憶装置210と同様とすることができるので説明を省略する。
【0061】
本具体例においては、第2電極6は、X軸方向に沿って分断され、Y軸方向に延在する帯状に複数設けられている。本具体例では、第2電極6は、基板5に埋め込まれるように設けられているが、第2電極6は、記憶層7の第2主面7bの側において、記憶層7に埋め込まれるように設けられても良い。
【0062】
すなわち、不揮発性記憶装置219においては、第2電極6は、第2主面7bにおいて複数設けられ、駆動部10は、プローブ電極9を介して、複数の第1電極8の少なくともいずれかと、複数の第2電極6の少なくともいずれかと、の間において電界E2の印加及び電流I2の通電の少なくともいずれかを行う。
【0063】
不揮発性記憶装置219において、例えば、プローブ電極9を複数X軸方向に並べ、複数の第2電極6をY軸方向に延在する帯状に設けることで、各記憶ビットに対する選択性が向上し、特性を向上させ、また、記憶密度を向上させることができる。
【0064】
不揮発性記憶装置219によっても、プローブ電極の位置精度を緩和して書き込み及び読み出し不良を低減したプローブ型の不揮発性記憶装置が提供できる。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、不揮発性記憶装置を構成する基板、記憶層、電極、プローブ電極、駆動部など各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した不揮発性記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての不揮発性記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
4 XYスキャナ
5 基板
6 第2電極
7 記録層
7a 第1主面
7b 第2主面
7d データエリア
7s サーボエリア
8 第1電極
9 プローブ電極
9m プローブアレイ
9s プローブ基板
9x、9y マルチプレクスドライバ
10 駆動部
20 ドライバ
210〜219 不揮発性記憶装置
C1、C2、C3 角
E2 電界
HRS 高抵抗状態
I2 電流
LRS 低抵抗状態
V1 第1遷移電圧
V2 第2遷移電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する記憶層と、
前記記憶層の第1主面に設けられた複数の第1電極と、
前記記憶層の前記第1主面とは反対の側の第2主面に設けられた第2電極と、
前記複数の第1電極に対向して設置され前記第1電極との相対的な位置関係が可変のプローブ電極と、
前記プローブ電極と前記第2電極とに接続され、前記プローブ電極を介して前記複数の第1電極のうちの少なくともいずれかと前記第2電極との間で、前記記憶層に電界を印加及び電流の通電の少なくともいずれかを生じさせることによって前記記憶層に情報の記録を行う駆動部と、
を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記プローブ電極は、前記第1主面に対して平行な平面内で可動であることを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記複数の第1電極の前記第1主面に平行な平面内における面積は、前記プローブ電極の前記第1主面に対向する側の先端の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項4】
前記複数の第1電極は、前記記憶層に埋め込まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
【請求項5】
前記第1電極の前記プローブ電極に対向する側の面の中心部は、周辺部よりも後退していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
【請求項6】
前記第1電極の前記プローブ電極に対向する側の面の中心部は、周辺部よりも突出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
【請求項7】
前記記憶層は、抵抗変化材料及び相変化材料の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−218642(P2010−218642A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65538(P2009−65538)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】