説明

不活性ガスの回収システム及び回収方法

真空炉や他の用途等のプロセスから出る不活性ガス、特に希ガスの回収及びリサイクル方法。不活性ガスと被酸化性不純物とを含有する第1ガス流を、金属酸化物を有する酸化塔に供給する。塔内では、金属酸化物の存在下、第1ガス流の不純物が酸化され、二酸化炭素と水とを含む第2ガス流が形成される。第2ガス流を再生可能な二酸化炭素除去塔に供給する。塔内で、第2ガス流から二酸化炭素が除去され、第3ガス流が形成される。吸収塔内で第3ガス流から水分が除去される。排出された精製後の不活性ガスは、不活性ガスを利用するプロセスに送り込むために、吸収塔から回収される。回収されたガス流は、純度が約6N(純度99.9999%)、即ち、汚染物の合計が約1ppmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の処理に関して、とりわけガス流から不活性ガスを回収する方法及び装置に関する。実施形態の1つとして、本発明はガス混合物からのアルゴン等の不活性ガス(希ガス)の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー源への需要が高まっているが、近年、太陽電池セル用にシリコンウェハーの製造が増大している。太陽電池セルのモジュールは、全体として電気的接続がなされ太陽電池アレイを形成することからソーラーパネルと呼ばれるが、太陽からのエネルギーを電気に変換することにより発電を可能にしている。ソーラーパネルは多数配置することで一般家屋又はオフィスビルに十分な電力を供給することができる。近年、太陽光発電装置への要求は劇的に高まっており、製造工程の簡易化と製造及び加工の低コスト化が目下の重要な課題である。
真空炉を不活性アルゴン雰囲気で使用し、シリコンインゴット及びウェハーを結晶化及び再結晶化して所望の太陽電池用構造体の出発物質を形成する製造技術が利用できる。真空炉を用いたこのタイプの方法では、長さ1.8mまでのシリコンインゴットを次の加工のために製造する、40時間以上にわたる工程サイクルに100,000リットルを超えるアルゴンが必要とされる。一般的な施設(例えば、真空炉を40基有する施設)におけるアルゴンの年間使用量の見積り原価は、1,000,000ポンド(時価)を上回ることになる。
ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノン等の希ガスを大量に使用する製造分野として、他には以下が挙げられる。真空冶金(アルゴン)、電灯の封入(アルゴン、ネオン、キセノン)、半導体製造及びプラズマディスプレイの製造(ネオン、キセノン)。キセノンは医療用途も多数あり、神経系プロテクター、臨床での麻酔剤及びMRI走査での造影剤として作用する。
【0003】
少なくとも真空炉用途では希ガスの純度が重要である。アルゴン生成不活性雰囲気及び炉のアルゴンパージでは、酸素が存在しないことと、6Nほどの非常に高い純度、即ち、異物の合計が約1ppmである99.9999%の純度が必要であり、炉内で加工中のシリコンウェハーやインゴットの反応(酸化)や損傷を防がなければならない。
アルゴン等の希ガスは大気中に低濃度で存在しているが、抽出と精製には相当なエネルギーと金銭的コストがかかる。そのため、上記のような希ガスを使用するシステム及びプロセスでは、流出する排気流から希ガスを回収して再生使用することが非常に望ましい。また、廃棄物からの希ガスを再生できれば、希ガスを使用しているプラント又は施設の所有者にとっては、供給の自立と安全確保が得られる。
希ガスの回収に使用されてきた従来のシステムでは、排ガスから汚染物の化学種を効果的に除去するために触媒燃焼反応器又は低温トラッピングが利用されている。実際のところ、低温分離及び低温トラッピングは、そこに関連するコストの点から、システム全体が最大級の設備以外では不可能である。即ち、このような方法はその魅力に限界があることを意味する。使用時点で部分的に回収及びリサイクルするには、従来のこの技術では、触媒燃焼反応器を約600℃で運転して可燃性不純物を二酸化炭素と水に変換する前に、分子状態の酸素を過剰に添加する必要がある。その後、過剰な酸素は、ニッケル等の金属微分散層を使って取り除かれる。酸素除去に使う金属層は能力に限界があるので、純粋な水素ガスのオフラインを使って頻繁に再生する必要があり、実質的にはシステムを複雑化することになる。このようなシステムでは、プロセス条件の変化や、真空炉からの排出流に見られるように真空ポンプで使用のオイル等が頻繁に侵入するため、様々な濃度の可燃性物質の化学種を効率的に除去することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の少なくとも好適な実施形態の目的は、不活性ガスと被酸化性不純物とを含むガス混合物から、不活性ガス、例えばアルゴン等の希ガスを回収するための簡単で費用効果のある技術を提供することである。効率的で信頼性のある不活性ガス回収方法を提供することがのぞましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、不活性ガスと被酸化性不純物(特には有機不純物、より具体的には炭化水素不純物)とを含む第1ガス流から不活性ガスを回収する方法であって、固体状酸素担体を含む酸化反応器に第1ガス流を供給して、第1ガス流中の不純物を固体状酸素担体の存在下で酸化して、二酸化炭素及び水を含む第2ガス流を形成する工程と、前記第2ガス流を二酸化炭素除去塔に導入して、二酸化炭素除去塔内で第2ガス流から二酸化炭素を除去して第3ガス流を形成する工程と、吸収塔内で第3ガス流から水分を除去して精製不活性ガスを生成する工程と、不活性ガスを利用するプロセスに搬送するために吸収塔から精製不活性ガスを回収する工程とを含む、回収方法が提供される。
第1ガス流の被酸化性不純物には、通常、弁装置等に存在する潤滑油から誘導される極微量の炭化水素化合物等が含まれる。本発明では、第1ガス流中の揮発性炭化水素化合物、メタンも酸化させて二酸化炭素と水にすることができ、低温分離等に頼らなくてもメタンの除去ができるところが有利である。
【0006】
成分を分離させて、固体状酸素担体の存在下で酸化が起きるようにして精製するので、精製を目的としてガス流中に酸素を注入する必要がなくなる。
そのため、最も高価な希ガス類、ヘリウム、クリプトン、キセノン以外の回収には非経済的である従来のシステムに比べて、ここに提案する本方法は有利である。更に、現行のシステムで必要とされる、汚染物化学種を完全に燃焼させるための比較的高濃度、1000sppm程度の酸素の導入は、本発明の方法及び装置で説明する酸素を含まない回収ガスという必要条件とはうまく合わない。
固体状酸素担体、好ましくは金属酸化物であるが、処理最中にこの固体状酸素担体の再生が可能である点も、更なる利点である。
本発明の方法における酸化塔での工程は、通常、ケミカルルーピング燃焼(CLC)プロセスを採用する。このCLCプロセスでは、第1ガス流を酸化するための層材料(bed material)として、金属酸化物が提供された後、更なるガス流が供給される前に、前記金属酸化物が再酸化される。本発明の方法におけるCLCプロセスでは、燃焼用の酸素を供給する空気の替わりに、おもに金属酸化物の形態である酸素担体を使用する。二価の金属酸化物(MO)の基本的なケミカルルーピング燃焼過程は以下のとおりである。
燃料の燃焼:
(2x+0.5y)MO(s) + CxHy(g) → (2x+0.5y)M(s) + xCO2(g) + 0.5yH2O(g) (1)
酸素担体の再生:
(2x+0.5y)M(s) + (x+0.25y)O2(g) → (2x+0.5)MO(s) (2)
これにより、全体として以下の燃焼反応と同等になる。
CxHy + (x+0,25y/)O2 → xCO2 + 0.5yH2O (3)
【0007】
酸素担体のMOは、通常、周期表のVIIIb族の遷移金属、Cu、Ni、Co等(或いは、Mn又はFe等の他の遷移金属)の酸化物が挙げられる。金属が二価以外のMである場合、当該分野の当業者には明らかであるように、それに応じて上記の式は調整される。酸化物(固体の状態)は、一般に遷移金属の酸化物であり、例えば、シリカ及び/又はアルミナ或いはケイ酸塩及び/又はアルミン酸塩を含む支持体に担持されている。
括弧内のラベルs及びgは、成分が気体状態(g)であるか、固体状態(s)であるかを示す。様々な組成の金属酸化物粒子を用いて、また、粉体や複合材料を様々な配置にしてCLCプロセスを行うことは公知であるが、今までのところ、温度は高くても600℃まで、プラス600度が採用されてきた。
好適な実施形態では、本発明の方法はケミカルルーピング燃焼プロセスを提供して、プロセスからの排出ガス流に含まれる可燃性化学種である、例えばCO、H2、炭化水素化合物、真空ポンプのオイル等をCO2及び水に変換した後、再生可能な反応器の層でCO2及びH2Oを効率的に除去する。真空炉用途で見うけられる汚染物濃度の大きな変動も、この方法は許容できる。
【0008】
成分を分離し、固体状酸素担体の存在下でケミカルルーピング燃焼により酸化が起きるように、CO2及びH2Oへの酸化変換後、再生を行う。そのため、精製を目的としてガス流に酸素を注入する必要がない。また、固体状酸素担体を提供することで、その後の酸素除去反応器の再生中も気体状の水素を使う必要がなくなる。
実施形態の1つは、固体状酸素担体が少なくとも1種の遷移金属酸化物を含む。周期表分類のVIIA族、VIIIA族、IB族又はIIB族からが好ましく、酸化銅等の銅の酸化物がより好ましい。
好ましくは、遷移金属酸化物は、周期表分類のIIIA族、IVA族、IIIB族、IVB族及びランタン系列元素から選択される元素の酸化物を含む不活性支持体と組合せるとよい。
実施形態の1つは、本発明の方法が、酸化工程に引き続き固体状酸素担体の再生工程を含み、この再生工程は、 気相の酸素担持混合物、好ましくは空気の存在下で行われる。前記再生工程は、好ましくは現場で行われ、CLCプロセスを含むことが好ましい。
本発明の方法は、純度約6N(即ち、純度99.9999%又は汚染物の合計が約1ppm)の不活性ガス流の回収が可能になる。
本方法は、第1ガス流を酸化反応器に供給する前に、第1ガス流を濾過する最初の工程を更に含むことが好ましい。実施形態の1つは、本方法が、排出された不活性ガス流を高温金属ゲッターで清浄する工程を含む。好ましくは、高温金属ゲッターが、チタン、ジルコニウム及びこれらの合金から選択される金属を含む。空気の入り口から残留空気が過剰に炉又は真空ライン内に入ることがある。残留空気には窒素がかなり含まれるが、これは、好ましくないことにシステム内部に蓄積する可能性がある。高温金属ゲッターを配置して、残留空気、好ましくは窒素を取り除くことができる。
【0009】
実施形態の1つでは、好ましくは、ガス損失の原因を明らかにして検討するトップアップファシリティー(top up facility)を有する、回収精製ガスの集合装置に精製したガスを送り込む工程を含んでもよい。実施形態の1つは、プロセスに戻る送達ラインがあってもよい。好適な方法は、ガスの品質を監視する監視工程を有してもよい。
固体状酸素担体の量は、燃焼出力(第1ガス流の不純物の量及び濃度)にほぼ釣り合っているため、不活性ガスを利用したプロセスの1サイクルの中で、可燃性(酸化性)の化学種が二酸化炭素と水に変換され、不活性ガスが回収される。そのため、CLC反応器の再生は、真空炉への充填に関わるプロセスの不動時間中に起こり、効率的なプロセスになる。
第2の態様によると、本発明は、不活性ガスと被酸化性不純物とを含む第1ガス流から不活性ガスを回収する装置であって、
被酸化性不純物を酸化して二酸化炭素と水にするための、固体状酸素担体を有する酸化反応器と、第1ガス流を前記酸化反応器に供給し、酸化後の第1ガス流を第2ガス流として酸化反応器から二酸化炭素除去塔へ供給するための手段と、
第2ガス流から二酸化炭素を除去して第3ガス流を形成するための二酸化炭素除去塔と、第3ガス流から水分を除去するために第3ガス流を吸収塔に供給し、精製不活性ガスを回収及び排出する手段と、
不活性ガスを利用するプロセスに搬送するために、吸収塔から精製不活性ガスを回収する手段とを有する装置を提供する。
【0010】
実施形態の1つは、酸化反応器がCLC反応器を包含する。好適な実施形態は、CLC反応器の運転温度が250〜450℃の範囲、好ましくは約400℃で、これはメタンなどの揮発性炭化水素化合物を酸化させる必要がない場合である。温度を低くすれば、効率的かつ低コストな変換及び精製のシステムになる。メタンなどの揮発性炭化水素化合物の酸化を所望する場合は、さらに高温の650℃くらいまでの温度を用いることが好ましい。
この装置において、固体状酸素担体は、周期表分類VIIA族、VIII族、IB族及びIIB族から好ましくは選択される遷移金属の酸化物、より好ましくは銅の酸化物を含むとよい。
実施形態の1つは、本装置が、第1ガス流を濾過するための濾過器を有する。二酸化炭素除去塔及び水分吸収塔は、二酸化炭素、水及び窒素などの成分を1種以上取り除くことができる分子篩を有していてもよい。より好ましくは、二酸化炭素除去及び水分吸収塔が第1分子篩と第2分子篩とを有し、第1分子篩は窒素よりも二酸化炭素の除去に高い能力を有し、第2分子篩は窒素の除去により高い能力を有する。
分子篩の材料としては、ゼオライト又は活性炭素を含むことが好ましく、或いは、二酸化炭素と水を取り込むよう設計された他の化学物質、例えば、浄化が可能な多孔質性構造の炭素又は金属フレーム構造体を有する金属有機フレーム構造体を含むことが好ましい。
【0011】
実施形態の1つは、本装置が、不活性ガス混合物を清浄するための高温金属ゲッターを有する。好ましくは、高温金属ゲッターがチタン、ジルコニウム及び/又はこれらの合金を含む。更に、第1ガス流及び排出された精製不活性ガスを監視するための監視装置があってもよい。監視段階で不活性ガスの回収とプロセスの他のパラメータにフィードバックをかけることができ、それに応じて、プロセスの作業を調整及び変更することができる。
単一のユニット(CLC及び回収ユニット)を用いて、更なる不活性ガスを回収することができる。例えば、アルゴンとヘリウムの両方の不活性ガスをプロセスから回収することができる。
本発明の更なる好適な特徴は添付の請求の範囲に規定する。
例示を意図するにすぎないが、添付の図面を参照しながら、本発明を更に詳細に説明する。添付の図面において、各図は以下の内容を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の不活性ガスのための再循環及び再生システムの概略図を示す。
【図2】図2は、第2の不活性ガスのための再循環及び再生システムの簡単な概略図を示す。
【図3】図3は、システムの効果の試験に使用された実験的装置を示す。
【図4】図4は、例示の実験的装置の分光計による結果と本発明のアルゴンの再循環を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、回収及びリサイクルシステム1は、集めて引き出されるガス混合物のソース、例えば、真空ポンプ10により排気管12を介した真空炉100を有する。更に、この装置は、システム1の周りの気体の経路を作り誘導する弁/単離装置80及びコンプレッサー18を有する。フィルター14は、粒子や著しい濃度の(gross levels)油蒸気を除去するために設けられている。好適な実施形態では、フィルター14が活性炭素を含有していてもよい。CLC反応器22は、コンプレッサー18と二酸化炭素除去塔26と連続して設けられる。CLC反応器22は、進入するガス流と排出するガス流のそれぞれのための入り口と出口を備えた真空の中空カラム構造を有する。CLC反応器22は、適切な固体状酸素担体材料、ここでは酸化銅を多量に(a volume of)含む。固体状酸素担体材料はカラムの中に充填され、カラムは充填層反応器装置の中に配置されている。支持体が設けられているが、支持体はシリカ及び/又はアルミナを含む。ケイ酸塩又はアルミン酸塩又はアルミノケイ酸塩は、使用可能な代替の支持体材料である。CLC反応器22は、1プロセスサイクルに匹敵する量を上回る容量、好適な実施形態ではプロセスサイクル約1.5倍分の容量を有する大きさに作られている。
【0014】
本発明の好適な実施形態によると、除去塔26の大きさは、CLC反応器22に釣り合う大きさにするとよい。除去塔26には、CO2及びH20除去用の再生可能な材料が含まれる。この材料は、金属酸化物/金属炭酸塩の組合せを基準としたケミカルルーピング反応材料であってもよく、通常金属はCu、Ni、Co、Mn又はFeから選択される。この材料は、分子篩又はゼオライト等の吸収体でもよい。除去塔26が分子篩を有することが好ましい。リサイクルシステム1の好適な実施形態は、水分除去塔30を含む。この除去塔30は、水分と、理想的には窒素とをシステムから優先的に吸収することが可能で、かつ、CO2はそれほど吸収しなくてもよい材料を有し、この材料が例えば分子篩又はゼオライト層であってもよい。窒素がガス混合物と一緒に真空炉や回収システムに侵入することがあるが、微量の窒素もシステムから除去及び吸収することができるところがこの実施形態の利点である。窒素は、例えば、弁もしくは真空ポンプ又はシステムのシールにおける小さな空気の漏れ口を通って侵入することがある。除去塔30にはガス出口33があり、再循環される精製ガス混合物の純度及び品質を検出するためのフーリエ変換赤外分光光度計FTIR(図示せず)のような監視及び感知装置を有していてもよい。リサイクルシステム1は、更に背圧レギュレータ77及び圧力調整弁35を有する。圧力調整弁35は、二次的ガス供給源に連結して配置されるが、この例では二次的供給源はアルゴン供給源36である。二次的アルゴン供給源36は、圧力の低下が検出されなければ、ガスはリサイクルシステム1から優先的に供給されるといった方法で制御される。反対に、圧力低下が検出されると、二次的供給源36からのガスの供給が可能である。ガス送達ライン44は、ガスを真空炉100に運ぶために、リサイクルシステム1と二次的供給源36をつなぐように配置されている。
【0015】
リサイクルシステム1は、再生モード(その動作については更に詳細に後述する)で使用される下記の要素を更に含む。引き続き図1を参照すると、不純物の入っていない乾燥した空気(CDA)の供給源101が、弁61と流量調整制流子63を介し、再生という反応段階のためと、反応器22のために設けられている。逆止め弁装置81と三方弁65により、反応器塔22と除去塔26、30との切り替え、及び、反応器塔22を除去塔26、30から隔離することができる。除去塔26、30には、発熱体H(図1中、詳細ではないが概略的に示す)又は除去塔26、30を加熱する他の手段が設けられている。除去塔26、30の温度を監視及び評価するために、温度読み取り装置、例えば1個以上のサーモカップルを備えていてもよい。真空ポンプ71が弁70を介してシステムに通じるように、反応器22及び除去塔26、30をパージするための、不純物のないアルゴンのパージ供給源103が設けられている。
リサイクル装置は、二酸化炭素除去塔26及び水分除去塔30に関わる供給ライン、コンプレッサー、弁等を更に含むが、これらは更に詳細に以下に説明する。
【0016】
作動中、およそ大気圧において、真空炉の排気管12の真空ポンプ10から、回収すべきガスがリサイクルシステム1に入り込み、弁80を通り、フィルター14を通過して粒子及び著しい濃度の油蒸気を除去する。フィルターを通過したガスは、コンプレッサー18によりゲージ圧およそ1〜5bar、好ましくは約2barに圧縮される。ガスは、好適な実施形態ではアルゴンが主であるが、ライン20を通ってCLC反応器22に入る。CLC反応器22の工程温度は、好ましくは250〜450℃、およそ400℃が好ましい。CLC反応器22は、プロセスサイクル1回に匹敵する量を上回る容量、好ましくはプロセスサイクルの約1.5倍の容量を有する大きさに作られている。CLC反応器は、ガスに含まれる実質的にすべての可燃性物質をCO2及びH2Oに変換する。その後、ガスはライン24を介して除去塔26に入るが、除去塔26はCLC反応器22に釣り合う大きさに作られ、二酸化炭素を除去する再生可能な材料を備えている。ガスは更にライン28を経由して水分除去塔30に入り、残留水分とCO2ならびに窒素を吸収する。ライン32を経由して除去塔30を出たガスは、ほぼ必要とされる純度であり、およそ6N(即ち、純度99.9999%)を有し、背圧レギュレータ77の作動により約2barで保持される。再循環したガスは、弁34及び圧力調整弁35を介してシステムから二次的アルゴン供給源36へ排出される。ガスはリサイクルシステム1から(即ち、塔30から)優先的に供給されるので、なんらかの理由で圧力が低下しなければ、ガスは二次的アルゴン供給源36から供給されるといった方法で二次的アルゴン供給源36は好ましくは制御される。つまり、ガスは、ライン38を経由してツールへ、ライン44を経由して真空炉100へと、適切な使用のために動かす。
【0017】
真空炉100では、約2〜4時間の冷却によりそのプロセスサイクルが終了する。冷却後、真空炉が十分に低温になると、ライン44からのパージ用ガスで真空ポンプ10は止まる。この時点で、後述のごとく、炉が作業温度に戻るまでは回収システムは再生モードに入り、最終的には待機モードになる。
コンプレッサー18が止まり、プロセス排気ライン12が弁80により隔絶される。不純物を含まない乾燥した空気、CDA101が弁61を通ってシステム1に入り、CLC反応器22の再生を行う。再生反応は極めて発熱するのでCLC反応器22自体が発熱する。反応器22内の温度は500〜800℃、好ましくはおよそ600℃である。実際の温度は、流量調整制流子63を介した反応器内へのガスの流れによって決まる。再生モード中にCLC反応器22から排出する高温の気体は、三方弁65を介して大気中に発散されるが、三方弁65はCO2及びH2O吸収塔26、30の隔絶も行っている。この状態は、63、61、22の空気流路を通って十分な量の空気が反応してCLC反応器22の材料を完全に再生するまで続く。このとき、CDA供給弁61はスイッチが切られ、アルゴンパージ弁50からのアルゴン及び流量制流子53のスイッチが入り、CLC反応器22から残留窒素を取り除く。
【0018】
電気的加熱と、流量制流子66及び弁67を介して不純物のないアルゴンでパージすること、弁70を介して真空ポンプ71で真空にすることを組み合わせて、塔26、30は再生される。三方弁28及び33の作動により、塔26、30を残りのシステムから隔絶し、除去塔26及び30の加熱、パージ、真空化を行うと、吸収されていたCO2及びH2O、更にN2が脱着し、発散され真空ポンプ71を介して除去される。吸収されていたCO2、H2O及びN2 が本質的にすべて発散されるまで、除去塔26及び30の加熱、パージ、真空化は続けられる。プロセスにおいてその段階で熱源が切断され、除去塔26及び30は塔の工程温度まで放冷される。アルゴンによるパージと真空排気で冷却が起こるが、この時点において、弁50、67及び70は閉じられ、三方弁65、28及び33が切り替わり、コンプレッサー18のスイッチが入る。システムは待機状態である。真空炉から適切な信号を受けると、弁81及び34が開かれ、リサイクルシステム1が新たなガス回収の準備にはいる。
次に図2を参照しながら、本発明の実施形態の1つによるところの2種の不活性ガスを組み合わせて回収するための回収及びリサイクルシステム2を説明する。記載の実施形態では、不活性ガスはアルゴンとヘリウムである。図2では、同じ参照番号は図1で説明した特徴と同じものに相当する。この実施形態では、塔26、30の再生は、回収プロセスの最中か又は「他のことをしながら」行われる。反応器及び除去塔の22、26、30等の前記図1の装置やシステムに加えて、回収システム2は、流動的な流れの方向づけをして経路をつくるための更なるバイパス弁72、73及び37を含む。更には、少なくとも1個の切替弁35、39があり、第1不活性ガスの流れをプロセスツール(process tool)及び真空炉100に、又は、パージ供給源に導くことと、第2不活性ガスをプロセスツール及び真空炉100に向けて誘導する役目をする。切替弁39は第2不活性ガスの二次的供給源(例えばヘリウム)に接続している。通常の運転中はガス流が吸収塔26か30のどちらかを通るように経路が作られ、他方の塔は再生中であるか待機モードになるように、バイパス弁28、38、72は除去塔26、30と流動的に連携する。
【0019】
作動中、第1ガス(ここではアルゴン)又は混合ガスが、塔26を通りガスライン連結部44に沿ってプロセスツールまで流れるようにするには、弁28、72及び37を一緒に開けて、除去塔26に向かう流動的な流路にガス流を方向転換させる。アルゴンガスが連結部44に沿ってプロセスツール及び真空炉100に流れるように、切替弁3は選択する。
この構成において、パージ供給源103からのアルゴンは、バイパス弁38を通り塔30の中に流れ、バイパス弁73及び真空ポンプ71を通って排出するように経路がつくられる。この動作を通して、吸収塔30を電気的に加熱し、吸収したCO2、H2O、N2等の処理を加速させ、完全に脱着させてシステムから抜ける。この時点で電気ヒーターは止まり、塔30の温度が工程温度まで下がる。こうして塔30は再生され、再度、CO2、H2O、N2等の除去に利用できるようになる。不活性ガスはこのようにしてバイパス弁38及び73を介して塔30を通りぬけ、さらに弁37を介し、切替弁35、39を適切に介して、ライン連結部44を経由してプロセスツールへ送り込まれるよう経路を作ることができる。塔30について上記で説明したように、次は塔26の再生が行われる。
先に説明したように、このような流れのしくみは、ガス混合物における混入物の含有量が高い場合に有用である。そのため、除去塔26及び30の大きさを、CLC反応器の大きさや、1回のプロセスサイクルに合わせることは実用的ではない。
【0020】
別の構成として、図1を参照しながら前記で説明したリサイクルシステム1を、(図2に示すように)第2の不活性パージガスのリサイクルを可能にすることができる。そのためには、好適な実施形態での変更は、パージガスのヘリウムをリサイクルして炉の冷却の一助として使用できるように、回収システム1における遮断弁34を、第2のガス切替弁39とともに回収システム2のバイパス弁37に替えることが挙げられる。
作動中、流動的な流れがガス切替弁39を通り、連結部44を経由してプロセスツール及び真空炉100に流れるよう方向転換したという指示を受け取ると、バイパス弁37が切り替わる。好適な実施形態において、プロセスシステムが第2の不活性パージガスを選択して切り替えを行ってから、バイパス弁37が切り替わるまでの時間の遅れは、回収システム2を流れるガスが通過する時間と同等である。
第2の不活性ガスを回収してリサイクルした後、第2の不活性パージガスのスイッチは切られ、弁37はアルゴンのデリバリーに戻り、回収システムは、リサイクルシステム1で説明したように、再生モードに入る。
第三の実施形態は、図示はしないがバイパス弁と第2のCLC反応器塔を増やすことにより、CLC反応器22による「他のことをしながら」の再生が実行できる。
更に、精製した不活性ガスを真空炉に戻すことができる出口34に、ガス特性センサー(図示せず)を任意で取り付けてもよい。例えば、プロセスガスクロマトグラフ、プロセス赤外分光計又はこの分野で公知である別のセンサーであってもよい。
【0021】
前記の実施形態において、分子篩(又は各分子篩)の真空再生は、例えば、直接的な発熱体又は間接的な熱源やファンを使った外部からの電気加熱により行われる。別の実施形態では、CLC反応器から通常発散される排気を回収し、この排気を1個以上の分子篩へ再度向けることによって、分子篩(又は各分子篩)を加熱する。真空状態を利用して再生を行う実施形態では、篩塔が同じ方向につながるように1個以上の更なる弁を設け、真空ポンプにより篩塔を真空にすることができる。例えば、別々の真空ポンプを使ってもよいし、コンプレッサーと真空ポンプを組合せてもよい。或いは、装置ツールへの充填に関わる時間、即ち、「プロセスの不動時間」としても知られている時間に、プロセスツール装置マスター真空ポンプ(the process tool apparatus master vacuum pump)を利用してもよい。選択した真空ポンプの配置を組合せることにより、不純物のないアルゴンのパージ流を使い、分子篩の再生の促進、及び/又は、システムの圧力をおよそ10〜100mbarに制御することができる。使用する真空ポンプのタイプに応じて、小さなパージ流の圧力を正確に決める。
高濃度の異物を精製するための別の実施形態では、分子篩塔をおよそ10時間ごとに再生工程にかける必要があるかもしれない。この実施形態では、再生サイクルの途中で塔から塔へ切り替えて再生を行ってもよい。異物が格別高濃度である場合の精製は、更なる非再生型CO2除去塔を利用して、分子篩に到達するCO2 を「拭いとる」ことにより達成できる。このやり方の場合、非再生型塔は6〜12ヵ月ごとに交換するとよい。例えば、基本的なシステムサービス期間中に交換すればよい。
例えば、処理及び除去の対象となるガス混合物及びガス流が異なれば、工程温度や圧力範囲等のシステムパラメータにおける変更が必要となろう。汚染物質の範囲や種類が違う場合、また、より高度な精製が必要とされる場合も、このシステムパラメータの変更は可能である。
【0022】
実施例
以下の実施例の結果は本発明を更に説明するものであるが、本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。
下記実施例のガス混合物は、一酸化炭素と水素の両方を混合して含み、アルゴンリサイクルシステムにより処理を行った。
具体的には、5,082ppmのCOと507ppmのH2を含むアルゴンマトリックスを、CLC反応器と分子篩13X吸収塔に連続的に供給した。図面の図3に示すように、高感度赤外分光光度計にガス試料を抜き出すことができる。以下の制御条件下でこのプロセスを実行した。ゲージ圧1bar、CLC反応器温度は400℃、分子篩吸収塔の21℃でのガス流量は1.2slm(スタンダードリットル/分)
実験中、図3のプロセスポイントA〜Cからガスのサンプルを抽出した。CLC反応器直前のA点、CLC反応器直後のB点、分子篩吸収塔を過ぎたC点である。結果を図4にグラフで描き、下記表1に示す。COとH2がCO2とH2Oに完全に変換されたのは、CLC反応器の後のBと明示した領域で見られる。分子篩吸収塔の後、領域Cでは、CO2及びH2Oは約1ppmに至るまで除去されている。
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスと被酸化性不純物とを含む第1ガス流から前記不活性ガスを回収する方法であって、
固体状酸素担体を含む酸化反応器に前記第1ガス流を供給して、前記第1ガス流中の前記不純物を前記固体状酸素担体の存在下で酸化させて、
二酸化炭素及び水を含む第2ガス流を形成する工程と、
前記第2ガス流を二酸化炭素除去塔に供給し、前記二酸化炭素除去塔内で前記第2ガス流から二酸化炭素を除去して第3ガス流を形成し、吸収塔内で前記第3ガス流から水分を除去して精製不活性ガスを生成する工程と、
前記不活性ガスを利用するプロセスに搬送するために前記吸収塔から前記精製不活性ガスを回収する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記固体状酸素担体が少なくとも1種の遷移金属酸化物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属酸化物が、周期表分類IIIA族、IVA族、IIIB族、IVB族及びランタン系列元素から選択される元素の酸化物を含む不活性支持体上に担持されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記酸化工程に続き、空気等の酸素を含む気体を使って前記固体状酸素担体を再生する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記再生工程がケミカルルーピング燃焼(CLC)プロセスを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記CLCプロセスの作業温度が250〜650℃の範囲である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記第1ガス流を前記酸化反応器に供給する前に濾過にかける、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記精製不活性ガスが、
(a)チタン、ジルコニウム及び/又はこれらの合金等の高温金属ゲッターを使って清浄され、
(b)回収装置に運ばれ、及び/又は、(c)その品質を連続的に監視させる、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記固体状酸素担体によって供給される酸素の量が、前記被酸化性不純物に対して少なくとも理論量である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素塔及び水分吸収塔を、前記酸化反応器からの熱を使って再生する工程を更に含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
不活性ガスと被酸化性不純物とを含む第1ガス流から前記不活性ガスを回収する装置であって、
前記被酸化性不純物を酸化して二酸化炭素と水にするための、固体状酸素担体を含む酸化反応器と、第1ガス流を前記酸化反応器へ供給し、酸化後の第1ガス流を第2ガス流として前記酸化反応器から二酸化炭素除去塔へ供給するための手段と、
前記第2ガス流から二酸化炭素を除去して第3ガス流を形成するための二酸化炭素除去塔と、前記第3ガス流から水分を除去するために第3ガス流を吸収塔に供給し、精製不活性ガスを回収及び排出する手段と、
前記不活性ガスを利用するプロセスに搬送するために、前記吸収塔から前記精製不活性ガスを回収する手段とを有する、装置。
【請求項12】
前記酸化反応器がケミカルルーピング燃焼(CLC)反応器を含む、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記固体状酸素担体が、周期表分類VIIA族、VIIIA族、IB族及びIIB族から選択される元素の酸化物を少なくとも1種、好ましくは遷移金属酸化物、より好ましくは酸化銅を含む、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1ガス流を濾過するための濾過器を更に含む、請求項11〜13のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記二酸化炭素除去及び水分吸収塔の段が、二酸化炭素、水及び窒素の群から選択される1種以上の成分を除去することができる、ゼオライト又は活性炭素等の分子篩を含む、請求項11〜14のいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−517944(P2013−517944A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551679(P2012−551679)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050142
【国際公開番号】WO2011/092507
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512201476)ガス リカバリー アンド リサイクル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】