説明

不純物濃度センサ、フローセンサおよびこれらを用いた計測・制御システム

【課題】ドープドガス中の不純物量とそのガス流量を計測できる不純物濃度センサとフローセンサとを同一基板上に集積化した小型で高速応答のデバイスを提供すると共に、このデバイスを利用して不純物濃度とガス流量などを計測して、不純物量を所定の濃度を維持するなどの計測・制御システムを提供する。
【解決手段】純流体Aの流路と被測定特定不純物が含まれた流体Bの流路とバルブを有すること、基板1の各流路にヒータと温度センサとを設けたこと、各ヒータで純流体Aと流体Bとを加熱し、純流体Aと流体Bとの熱伝導率の違いに基づく温度変化等を計測すること、バルブを閉じて流路で流れがない状態での温度変化等から不純物濃度を計測する不純物濃度センサと、バルブを開放状態にして流れを発生させて、その流れを不純物濃度センサに用いたヒータとセンサを用いて計測するフローセンサを提供すると共に、これらのセンサの信号出力をバブラーにフィードバック制御して所定の不純物濃度を達成する計測・制御システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体である流体中の不純物濃度を計測する不純物濃度センサとその流体の流れを計測するフローセンサに関し、ヒータと温度センサとを利用して熱伝導型のセンサを構成して、同一基板にこれらの不純物濃度センサとフローセンサのセンシング部を設けるが、バルブ操作により不純物濃度センサとフローセンサとに切り替えることができるようにした高速応答の小型で簡便なセンサと、これらの計測・制御に必要な回路部を具備した計測・制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人は、これまで宙に浮いた薄膜に、白金薄膜などの抵抗体を形成してヒータとする「電熱器」(特願昭54−027559;特許第1398241号)を発明し、現在では、フローセンサや真空センサなどのマイクロヒータとして応用されている。更に本出願人は、半導体ダイオードをヒータとする「加熱ダイオード温度測定装置とこれを用いた赤外線温度測定装置および流量測定装置ならびに流量センシング部の製作方法」(特願2005-68266;特開2006−250736)を発明した。そして、半導体ダイオードは温度センサとしても利用できるので、ヒータ兼温度センサとして利用することを提案した。その後、本出願人は、「温度差の検出方法、温度センサおよびこれを用いた赤外線センサ」(特願2004-026247;特開2005−221238)や「電流検出型熱電対等の校正方法、電流検出型熱電対、赤外線センサおよび赤外線検出装置」(特願2005−332341;特願2006−58260;特願2006−262343;特願2006-300301)を発明して、一対の熱電対を用いて、従来の開放電圧を計測して温度差を計測するのではなく、熱電対の熱起電力に基づく短絡電流を計測した方がサーモパイルよりも感度が大きくなることを理論的にも示し、電流検出型熱電対と名づけた。また、熱電対を温度差センサとして利用するばかりでなく、ヒータとしても利用できる熱電対ヒータも発明した(特願2007-248520)。
【0003】
一般に、基板に形成しているが、その基板から宙に浮いた薄膜(基板から熱分離した薄膜)において、加熱された薄膜は、加熱を止めるとニュートンの冷却の法則により、周囲環境温度Tcである基板の温度(加熱される前の周囲温度)と加熱された薄膜の温度Tとの温度差(T-Tc)に比例して放熱・冷却され、最終的には基板の温度に等しくなる。このように、加熱された物体の温度が周囲媒体へ熱伝導して、周囲媒体のそのときの熱伝導率に関係して温度上昇したり、温度降下したりするときの温度センサの温度変化を計測して周囲媒体の被測定物理量、例えば、流速、真空度、不純物濃度、エンタルピ変化などを計測するために用いる熱伝導型センサでは、絶対温度センサよりも周囲環境温度Tcである基板の温度と加熱された薄膜の温度Tとの温度差が重要である。
【0004】
従来、基板に形成した溝状流路を橋架する、この基板から熱分離した薄膜橋(宙に浮いた薄膜の橋)を3個溝に沿って対称に形成し、それぞれには白金薄膜が形成してあり、中央の薄膜橋をヒータとして利用し、両側の薄膜橋を温度センサとして利用するガスフローセンサがあった(USP4478077)。これは、流路に沿ったガスの流れがないときには、中央のヒータを中心に対称にある両側の薄膜橋の温度は等しいが、ガスの流れがあると、上流側の薄膜橋では、冷たいガスが流れるので冷え、下流側では、中央のヒータ薄膜橋からの熱を受けて温度上昇する。このようにガスの流れにより、ヒータの両側の薄膜橋に温度差が生じるので、これを利用してガス流を計測する方法である。
【0005】
また、従来、水素などのキャリアガス中にサンプルガスを混入させて、カラム中でサンプルガス中の不純物の種類に基づくカラム出口での遅れ時間から不純物を特定するガスクロマトグラフィがあり、そこでは、不純物の量を検出するのに、加熱したニッケル薄膜などの温度センサの温度が不純物の量により熱の逃げが異なり変化することを利用していた。
【0006】
集積回路製造の現場では、ドライプロセスの中で不純物を含むドープドガス中の不純物量とガス流量をほぼ同時計測して、制御することが必要であり、コンパクトな不純物量とガス流量との計測および制御できる高感度な高速応答デバイスが望まれていた。
【特許文献1】特許第1398241号
【特許文献2】特開2006−250736号公報
【特許文献3】特開2005−221238号公報
【特許文献4】USP4478077
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の要望を満たすためになされたもので、キャリアガス中に不純物を含む、いわゆるドープドガス中の不純物量とそのガス流量を計測できる不純物濃度センサとフローセンサとを同一基板上に集積化した小型で高感度で、かつ高速応答のデバイスを提供すると共に、このデバイスを利用して不純物濃度とガス流量などを計測して、不純物量を所定の濃度を維持するようにする、などの計測・制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる不純物濃度センサは、純流体Aの流路と該純流体Aに被測定特定不純物が含まれた流体Bの流路との各流路に、それぞれの流れを止めて静的状態を作るバルブを有すること、各流路の静的状態領域にそれぞれ同等な構造のヒータと温度センサとを設けたこと、前記純流体Aと流体Bとの静的状態で、前記各ヒータで純流体Aと流体Bとを加熱し、前記純流体Aと流体Bとの熱伝導率の違いに基づく温度変化もしくは該温度変化が所定の値になるまでの時間変化を計測できるようにしたこと、該温度変化もしくは該時間変化から被測定特定不純物の濃度を計測できるように構成したこと、を特徴とするものである。
【0009】
純流体Aとして、純粋の水素ガスを用いると、水素ガス以外の物質である不純物ガスは一般に熱容量が大きく、熱伝導率も小さい。したがって、水素ガスを純流体Aとしてのキャリアガスにした場合を考えると、不純物ガスの濃度により、ヒータからの熱の奪われ方が異なる。すなわち、例えば、不純物の濃度が大きいと、一定電力駆動のヒータでは、ヒータ温度が大きくなる。しかし、不純物の濃度が大きい媒質中で、このヒータから熱をもらい温度上昇する温度センサでは、不純物の濃度が大きいと、熱伝導率が小さいので温度上昇が小さくなる。このように、不純物濃度(量)により温度センサの温度変化が異なるので、この温度変化情報から不純物濃度(量)を計測する不純物濃度センサである。
【0010】
純流体Aのキャリアガス中の不純物濃度(量)により温度センサの温度変化は、極めて小さく、ガスの流れが存在するとこの流れによる温度センサの温度変化が大きく、測定の大きな誤差を伴う。このために流れを止めて不純物濃度計測をする必要が生じる。計測のために、キャリアガスの本流を止めることは許されないので、本流の流路からバイパスした微流量の細い流路を形成しておき、この細い流路中にバルブとヒータおよび温度センサとを設けてあり、このバルブの開閉により本流の影響が無視できる程度にする方が良い。
【0011】
この純流体Aのキャリアガスの流れの細い流路と不純物が含まれた流体Bの流路中に同等に設けたバルブを閉状態にすることにより、純流体Aのキャリアガスと不純物が含まれた流体Bの流れが阻止され、流れがない静的な状態で、二つの細い流路に設けてあるそれぞれのヒータと温度センサとの対から、例えば、差動動作により不純物濃度の計測ができる。この差動動作は、両者の温度差を求めても良いし、ヒータの冷却過程におけるヒータの温度差や、ヒータ又は温度センサの温度が所定の温度になるまでの時間経過の差(時間変化)を求めても良い。
【0012】
本発明の請求項2に係わる不純物濃度センサは、各流路のうちの少なくとも一部は、基板やカバーに形成した溝からなる溝流路部とした場合である。
【0013】
純流体Aとしてのキャリアガスや被測定特定不純物が含まれた流体Bの流路を、本流からバイパスした上述の細い流路を、基板やカバーに形成した溝構造にした場合で、バルブやヒータおよび温度センサをこの溝流路部に形成するのに好適である。基板として、シリコン単結晶を利用すると異方性エッチングなどにより高精度の溝形成が可能になる。
【0014】
本発明の請求項3に係わる不純物濃度センサは、各ヒータと温度センサとは、同一の基板に設けた各溝流路部に設けてあり、更に、この基板から熱分離した薄膜状に形成してある場合である。
【0015】
ヒータと温度センサとは、共に薄膜構造で基板から熱分離してあることにより、低消費電力のヒータとなり、温度センサとしても流体に接触する面積も大きくなるので、高速応答で、かつ高感度となる。
【0016】
本発明の請求項4に係わる不純物濃度センサは、ヒータを、絶対温度センサもしくは温度差センサとしての温度センサと兼用できるようにした場合である。
【0017】
絶対温度センサとしては、pn接合ダイオードやトランジスタを利用することもできるし、これを加熱してヒータとして利用する。また、温度差センサとしては、薄膜熱電対を利用し、これを電流検出型熱電対として動作させると高感度センサとなり、これに電流を流しジュール熱によるヒータとして用いることもできる。
【0018】
本発明の請求項5に係わる不純物濃度センサは、バルブを薄膜状となし、各ヒータと各温度センサと共に、各溝流路部に設けた場合である。
【0019】
バルブを薄膜状とすることにより、バルブの開閉に静電駆動に好適である。もちろん、薄膜のバイメタルのような熱膨張係数の異なる材料を利用することで、熱駆動をすることもできるし、圧電体を用いることにより、電圧駆動することも可能である。
【0020】
本発明の請求項6に係わる不純物濃度センサは、純流体Aと流体Bとを気体とした場合である。
【0021】
流体として、液体でも良いが、液体の場合は流体の運動量が大きくなるので、バルブの開閉が困難となりやすいので、気体の方がデバイスの設計と製作が楽である。
【0022】
本発明の請求項7に係わるフローセンサは、請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサの構造を有し、この不純物濃度センサと同一の流体を計測対象とするフローセンサであって、バルブを開放状態にして、各流路に設置してあるヒータと温度センサを用いて、このヒータでは純流体Aと流体Bとを独立に加熱し、それぞれの温度センサでこの加熱による温度変化が計測できるようにしたこと、各流路に設置してあるヒータや温度センサの純流体Aと流体Bのそれぞれの流れに基づく放熱の違いを利用して、各ヒータの温度もしくは各温度センサの温度変化を計測できるようにしたこと、この温度変化もしくは所定の温度変化になるまでの時間経過としての時間変化から、純流体Aと流体Bのうちの少なくとも一方の流速もしくは流量を算出できるようにしたこと、を特徴とするものである。
【0023】
不純物濃度センサとしての動作は、バルブを閉状態にして流体の流れを止めて行っているが、フローセンサとしては、バルブを開放状態にして、流体が流れた状態で計測する。一般に、本流からバイパスしても受けてある細い流路での計測となるから、流量や流速の計測としては、本流の流れに換算して算出することになる。
【0024】
本発明の請求項8に係わるフローセンサは、請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサを、必要に応じて、流体の流れを計測するフローセンサとして動作するように切り替えることができるようにしたものである。なお、不純物濃度センサとフローセンサとを兼用または一体化することにより、コンパクトなデバイスが提供できる。
【0025】
本発明の請求項9に係わる計測・制御システムは、請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサと、請求項7から8のいずれかに記載のフローセンサとを用いた計測・制御システムであって、少なくともこの不純物濃度センサおよびフローセンサとを動作させるのに必要な増幅回路、演算回路、制御回路を具備したことを特徴とするものである。この計測・制御システムは、ハンディなモジュールとして提供することもできる。
【0026】
本発明の請求項10に係わる計測・制御システムは、不純物濃度センサとフローセンサとの出力信号を、不純物供給器(バブラー)にフィードバックし、バブラーの温度制御やキャリアである純流体Aの流量を調整して流体B中に含まれる被測定特定不純物を所定の濃度になるように制御するようにした場合である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の不純物濃度センサでは、同一基板上に薄膜状のヒータ、温度センサおよびバルブを集積化できるので、極めて小型で高速応答、かつ高感度の不純物濃度センサが提供できるという利点がある。
【0028】
本発明の不純物濃度センサでは、純流体Aおよび被測定特定不純物が含まれた流体Bの流路として、本流からバイパスした細い溝状の流路に、上述の薄膜状のヒータ、温度センサおよびバルブを集積化するので、本流の流れの変動を極めて小さくできるという利点がる。
【0029】
本発明の不純物濃度センサでは、ヒータを温度センサと兼用にすることもできるので、極めて単純構造で小型の不純物濃度センサが提供できる。このときの温度センサとして、ダイオードを用い、これをダイオードサーミスタとして用いれば、極めて高感度の絶対温度センサとなるし、ジュール加熱すれば加熱ダイオードとしてマイクロヒータとして利用できる。また、このときの温度センサとして、熱電対を形成し、これを電流検出型熱電対として用いると、高感度な温度差センサとして利用できる。
【0030】
本発明の不純物濃度センサでは、バルブを薄膜状態にすることにより、消費電力が極めて少ない静電駆動が可能で、単純構造で高速応答となるという利点がある。バルブをカンチレバ構造にすることにより、大きなバルブの開閉ストロークが達成できる。
【0031】
不純物濃度センサと流体のフローセンサとを兼用できるので、半導体基板を利用したMEMS技術で極めて小型で、しかも高速応答可能でハンディなデバイスが提供できるという利点がある。
【0032】
本発明の計測・制御システムでは、同一基板に形成した不純物濃度センサと流体のフローセンサとを利用して、これに必要な回路を集積化して、その検出信号のフィードバック系により、不純物濃度の制御、流体の流れの制御を極めて高速に、しかも微細に達成できる極めてコンパクトな計測・制御システムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の不純物濃度センサとフローセンサとは、成熟した半導体集積化技術とMEMS技術を用いて、シリコン(Si)基板で形成できる。このシリコン(Si)基板を用いて製作した場合の図面を参照して、実施例に基づき詳細に説明する。また、本発明の計測・制御システムは、そのブロック図を用いて説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明の不純物濃度センサのうち、不純物濃度のセンシング部となる主要部の一実施例の概略図であり、対となる純流体A用流路301と流体B用流路302との溝流路部41に、それぞれカンチレバ15からなる薄膜のヒータ25と2個の温度センサ20とを形成した基板1の構造の概略図である。図1の上部図面は、その平面図、下部図面は、上部図面のX−Xにおける横断面の概略図を示している。基板1としてSOI層11を有するSOI基板を用いた場合である。
【0035】
ここでは、純流体Aとして水素ガス(Hガス)を用い、これをキャリアガスとして使用し、TCS(トリクロルシラン)などの液体材料のバブリング気化制御供給装置(不純物供給器またはバブラー)(ここでは図を省略している)を通して、このTCSなどの被測定特定不純物を不純物ガスとしてキャリアガスに混入した気体である流体B中のTCSなどの不純物ガス濃度を計測する場合に適用した一実施例を示めす。一般に、最も質量の小さい気体であるHガスは、熱伝導率が極めて高く、これに質量の大きい不純物ガスを混入するとその熱伝導率が不純物ガスの濃度にほぼ比例して減少する。そこで、Hガスである純流体Aの純流体A用流路301と、不純物ガスを混入した純流体Aの流体である流体B用流路302とを基板1に形成して、更に、これらの流路に同等なヒータ25と温度センサ20とをそれぞれ形成しておき、ヒータ25でこれらの純流体Aと流体Bとを同等に加熱したときのそれぞれの温度センサ20の温度変化などから、TCSなどの被測定特定不純物濃度を計測するものである。なお、不純物濃度に基づく温度変化は、極めて小さいので、これらのガスの流体の流れがない状態、すなわち、流れを止めた状態で計測すると共に、純流体A用流路301と流体B用流路302とに形成した温度センサ20の出力信号の差動動作をする必要がある。
【0036】
図2は、本発明の不純物濃度センサに用いる図1における基板1に接合するカバー2の概略図であり、その上部図面は平面概略図であり、下部図面は、上部図面のX−Xにおける断面概略図を示している。本実施例の純流体Aと流体Bの流体の流れを止めた状態で純流体Aにバブリング気化制御供給装置(不純物供給器またはバブラー)から発生させて混入した被測定特定不純物のガス濃度を計測するために、図2に示す基板1のカバー2にも純流体A用流路301と流体B用流路302とを設けると共に、それらにバルブ8をそれぞれ2個ずつ設けている。ここでは、カバー2も基板1と同様にSOI基板を用いて純流体A用流路301と流体B用流路302やバルブ8を形成した場合を示している。なお、カバー2と基板1とは、外部にリークがないように接着剤等で接合して用いる。バルブ8は、応答速度が大きく、かつ小型に形成するために、SOI層11からなるようにしている。バルブ8の開閉は、次のようにする。シリコン単結晶薄膜であるSOI層11(ここでは、厚み約10マイクロメートルのp型半導体を使用)に、オーム性電極パッド72bを形成すると電気的にバルブ8の薄膜可動部18と導通しているので、このカバー2に設けたオーム性電極パッド72bと基板1の下地基板12に導通する基板1に設けた電極パッド72aとの間に電圧を印加し、静電駆動によりバルブ8の薄膜可動部18を吸引し、バルブ8の閉状態を実現し、また、その電圧をオフにすると静電駆動が働かなくなり、カンチレバ構造の薄膜可動部18や架橋構造の薄膜可動部18の復元力により、バルブ8の開状態を実現するようにしている。なお、薄膜可動部18の復元力が弱いときには、カバー2のSOI基板の下地基板12にも電極(ここでは、図示せず)を形成し、カバー2のSOI層11からなる薄膜可動部18とカバー2のSOI基板の下地基板に設けた電極との間に電圧を印加したときの静電力で復元を助長させるようにする。本発明の不純物濃度センサとして動作させるには、流体の流れがない状態で計測するので、純流体A用流路301と流体B用流路302とに設けたすべてのバルブ8の薄膜可動部18を、電極パッド72aと電極パッド72bとに電圧を印加して吸引し、孔43を閉じて閉状態にして純流体Aと流体Bの流れを遮断する。
【0037】
純流体A用流路301と流体B用流路302とに形成してあるヒータ25として、カンチレバ型の熱電対を利用した場合をこの実施例では示してある。熱電対といえどもジュール加熱によりヒータ25として利用することができるからである。n型不純物で縮退するほど高濃度ドープして低抵抗にしたSOI層11のn型拡散領域21を一方の熱電対導体薄膜として用い、他方の熱電対導体薄膜として金属熱電対導体22を使用し、コバルト(Co)薄膜やニッケル(Ni)薄膜を用いてSOI層11に形成したシリコン酸化膜50を介して、カンチレバ型の熱電対を利用した場合である。また、温度センサ20としても、やはりヒータ25と同じくSOI層11のn型拡散領域21を一方の熱電対導体薄膜とし、他方の熱電対導体薄膜として金属熱電対導体22を使用している。ヒータ25も温度センサ20も同一工程で形成できるので、製造工程が簡単になり、また、温度センサ20として、温度差センサとなるので、被検出ガスの熱伝導率が同一であれば、ヒータ25を定電力駆動すれば周囲温度に依らず一定の温度上昇分になるので、微量の不純物混入による熱伝導率の変化を検出するには好都合である。
【0038】
図1および図2に示した本発明の不純物濃度センサの構造は、フローセンサの構造としても利用できる。また、この製作工程は、基板1やカバー2のSOI層11を用いて、温度差センサとしての熱電対である温度センサ20兼ヒータ25、カンチレバ15、バルブ8、溝流路部41、貫通孔45などは、公知のMAEMS用の半導体微細加工技術により容易に形成できるので、詳細説明は省略する。
【0039】
図3は、上述の基板1とカバー2とを位置合わせして接合した半導体デバイスチップ500を更に支持するための支持板5の概略図で、その上部図面は半導体デバイスチップ500との接合面とは逆の面(裏面)の平面概略図であり、下部図面はその横断面概略図である。本実施例では、支持板5としてステンレススチールを用いて形成した場合で、さらに、純流体A用流路301と流体B用流路302の流入出となるパイプ80もすべてステンレススチールで形成した場合を示している。支持板5には、貫通孔45が設けられてあり、これらの貫通孔45は、接合した基板1の貫通孔45とも繋がるように設計してある。図4には、半導体デバイスチップ500を支持板5に接合して作成した本発明の不純物濃度センサの横断面概略図を示している。なお、図4は、次の実施例であるフローセンサとしても利用できるものである。
【0040】
本発明の不純物濃度センサの動作に関して、カンチレバ15型の薄膜熱電対をヒータ25として利用する場合の実施例を述べる。このためには大きく分けて2種類の使用方法がある。一つは、熱電対のヒータ25を利用して、これとは別に設けた温度センサ20を利用して被検出流体の温度を検出する方法と、もう一つは、1個の熱電対のヒータ25をヒータ動作としての終了後、今度はこれを温度センサ20として利用する、すなわち、ヒータ25兼温度センサ20として利用する方法である。先ず、前者の熱電対のヒータ25と、これとは別に設けた温度センサ20を独立に使用する場合は、図1から図4までに示す図面を参照して説明すると、純流体A用流路301と流体B用流路302に設けてあるバルブ8を閉じ、純流体Aと流体Bとの流れを止め、カンチレバ型の薄膜熱電対のヒータ25(例えば、800μm長、200μm幅、10μm厚)に所定の電力、例えば、10mW供給し、ヒータ25を温度上昇させる。このとき周囲環境温度Tcよりほぼ10℃温度上昇する。このヒータ25から等間隔(例えば500μm)に、このヒータ25と同一形状の熱電対温度センサ20がそれぞれの流路に配置されているので、ヒータ25からの熱を主に被検出ガス(純流体Aと流体B)の熱伝導で受けて、温度上昇する。バルブ8を閉じてあるから流体の流れがないので、本来、ヒータ25の両側の温度センサ20は同一の温度になるはずである(形状などの違いによりずれていたら、これを同一温度として取り扱えるように補正しておく)。本来、ヒータ25と温度センサ20とは同一形状であるので、その熱時定数はほぼ同一で、50ミリ秒程度であった。ヒータ25を、例えば、5Hzで周期的に加熱し、両側の温度センサ20のうち、少なくとも一方の温度センサ20の周期的な温度上昇を観測する。熱伝導率が良い純流体A側の温度センサ20は速く温度上昇を始めるのに対して、不純物を含む流体B側の温度センサ20は少し遅れて温度上昇が生じる。これらの純流体A側の温度センサ20と流体B側の温度センサ20とが所定の温度になるまでの時間の差又は、位相差を検出して、校正してある流体Bに混入している不純物ガス濃度との関係から被測定特定不純物の濃度を算出することができる。
【0041】
もちろん、両方のヒータ25を一定電力、一定電流、一定電圧駆動、更には、一定温度上昇になるような駆動の方式により、所定の周期でヒータ25を矩形波的に加熱し、両側にある温度差センサ20のうちの少なくとも一方の温度差センサ20を利用して、純流体A側の温度センサ20と不純物を含む流体B側の温度センサ20との温度上昇の差を同時計測して、校正してある流体Bに混入している不純物ガス濃度との関係から被測定特定不純物の濃度を算出しても良い。
【0042】
一方、後者の熱電対をヒータ25兼温度センサ20として利用する方法では、純流体A側と不純物を含む流体B側の両方の熱電対のヒータ25への一定電力、例えば、10mWの電力供給を同時に止め、ヒータ25の薄膜熱電対を温度センサ20として動作させる。そして、その電力供給停止のスイッチ動作から、例えば、丁度、t=50ms経過後の両方の熱電対である温度センサ20の温度差ΔTを計測する。そのときの予め用意してある校正曲線を用いて被測定特定不純物の濃度を算出して計測する。校正曲線は半導体メモリに入れておき、これを利用して演算回路で算出すると良い。
【0043】
ヒータ部25への所定の一定電力供給、例えば、P=10mW一定時の純流体Aと流体B中で、十分加熱されて飽和状態になった後に加熱を止めて、その直後の基板1の温度(周囲環境温度Tcとなっている)と、ヒータ25として用いていたカンチレバ15状のそれぞれの温度センサ20の先端の温度との温度差ΔT(流体Bでの温度差ΔTB0、純流体Aでの温度差ΔTA0)と、その後のそれぞれの冷却されて行く状態の概要を示す冷却曲線を図5に示す。熱電対のヒータ25への所定の一定電力供給で加熱されたヒータ25は、純流体Aでは、周囲温度に対して一定の温度上昇ΔTを示すが、純流体Aが水素ガスであるから熱伝導率が大きいために、加熱停止直後では、他のガス中に比べ低い温度上昇ΔTA0となっている。また、加熱停止後は熱伝導率が大きいから急速に放熱して速い熱時定数τで冷却して行く。また、被測定特定不純物を含む流体Bでは、キャリアガスである純流体Aの水素ガスに不純物が混入しているので、その濃度が多ければ多いほど、その熱伝導率が小さくなるので、加熱停止直後の温度上昇分ΔTB0が大きく、かつ、その熱時定数τも長くなりゆっくり冷却して行く。したがって、t=50ms経過後の両方の熱電対である温度センサ20の温度差ΔTである(ΔT―ΔT)を計測する。この温度差ΔT=(ΔT―ΔT)は、ほぼ流体Bに含まれる被測定特定不純物の濃度に比例する。これを予め用意してある校正曲線を利用して被測定特定不純物の濃度を算出することになる。
【0044】
前述では、加熱停止直後の所定の時間t経過後の両方の熱電対である温度センサ20の温度差ΔTを計測する場合であったが、ここでは図示しないが、純流体Aと流体Bを計測するためのそれぞれに設けたヒータ兼温度センサで、所定の温度差ΔTになるまでのそれぞれの経過時間を計測しても良い。この経過時間の違いから、予め用意した校正曲線を利用して被測定特定不純物の濃度を算出しても良い。
【実施例2】
【0045】
本発明の不純物濃度センサの構造を有する不純物濃度センサを用いたフローセンサの一実施例について、図1から図5を用いて述べる。
【0046】
例えば、純流体A用流路301であるパイプ80を流れている純流体Aの流量を計測する場合で、図4に示す不純物濃度センサをフローセンサとして用いる場合は、バルブ8を開放状態にして、半導体デバイスチップ500の両側の貫通孔45間の純流体Aの流れに基づく圧力差を利用して、両方のバルブ8を通して流れる純流体Aの流れ(フロー)を基板1に搭載してある熱伝導型センサとしての熱電対の温度センサ20で計測する。なお、貫通孔45間の純流体Aの流れに基づく圧力差は、図3に示す絞り310の大きさにより調整することができる。
【0047】
本発明のフローセンサでは、上述の不純物濃度センサでの不純物濃度の計測と同様に、カンチレバ15型の薄膜熱電対をヒータ25として利用する。このためには、上述の不純物濃度センサと同様に、大きく分けて2種類の使用方法があり、一つは、熱電対のヒータ25と、これとは別に設けた温度センサ20とを利用して、被検出流体の温度を検出する方法と、もう一つは、熱電対のヒータ25をヒータ動作として終了させた後、今度は温度センサ20として利用する、すなわち、ヒータ25兼温度センサ20として利用する方法とである。
【0048】
先ず、前者の熱電対のヒータ25とは、別に設けた温度センサ20を利用して被検出流体の温度を検出する方法について述べると次のようである。図1に示すフローセンサとしての実施例において、例えば、純流体A用流路301もしくは流体B用流路302において、基板1の溝流路部41に設けた3個のカンチレバ15のうち、中央のカンチレバ15に搭載した熱電対の温度センサ20をヒータ25として動作させ、ジュール加熱して、純流体Aの流れ(フロー)がない状態で周囲環境温度Tcよりも10℃だけ温度上昇させるように一定電力の供給制御をする。中央の熱電対のヒータ25に対して対称な位置に、同等な2個のカンチレバ15に熱電対の温度センサ20がそれぞれ形成してあるので、この流れがないときには、ヒータ25の両側の熱電対の温度センサ20は温度上昇が等しいが、ヒータ25から離れているので、10℃よりも小さい温度上昇をしている。流れを発生させると、中央のヒータ25に対して上流側の熱電対の温度センサ20は、周囲環境温度Tcの純流体Aが流れてくるので、その温度は低められるが、ヒータ25の熱を少しは受けているので、周囲環境温度Tcよりは高い温度になっている。しかし、下流側の熱電対の温度センサ20は、ヒータ25の熱を貰うので、流れがないときに比べて温度上昇する傾向にある。したがって、上流側の熱電対の温度センサ20と下流側の温度センサ20とを温度差の出力が得られるように配線すると、これらの出力は、流体の流れ(フロー)の速度、又は、質量流量との関数となり、校正曲線を用いて流体の流れ(フロー)の速度、又は、質量流量に換算計測することができる。
【0049】
上述では、流体の流れ(フロー)の速度、又は、質量流量を計測するときに、熱電対兼ヒータ部としたヒータ25の加熱に基づく流体の温度上昇の変化を、上流側と下流側のそれぞれの温度差センサ20である熱電対で計測するという、流れに伴うそれら温度差を計測するものであったが、熱電対兼ヒータ部としたヒータ25のジュール加熱を周期的に行い、上流側と下流側のそれぞれの温度差センサ20に到達する時間差を利用しても良い。また、更に微細な流量を検出するには、上流側と下流側の温度差センサ20に到達する温度上昇又は降下の位相差を検出するようにしても良い。なお、上述において、熱電対の温度センサ20を電流検出型熱電対として熱電対の短絡電流の計測を用いると、高感度の温度差センサとなるので、好都合である。
【0050】
次に、後者の基板1の溝流路部41に設けた3個のカンチレバ15のうち、1個のカンチレバ15に搭載した熱電対型の温度センサ20兼ヒータ25だけを利用して流体の流れ(フロー)の速度、又は、質量流量を計測する場合について述べると次のようである。これは、基本的には加熱したヒータからの熱の逃げ量は、流速の二分の一乗に比例するというキングの法則を利用するものである。これは周囲環境温度Tcとヒータ温度Tとの差が一定に保たれるように制御した場合であり、そうでないときには流速の二分の一乗に比例するというキングの法則からずれるが、決められた構造の中で、例えば、一定消費電力になるようにヒータ25を駆動するなど、条件を整えれば、校正曲線を利用して流体の流れ(フロー)の速度、又は、質量流量を計測することができる。
【0051】
純流体Aの流体の速度などを計測するには、この純流体A用流路301に設けたバルブ8を開放状態にしておき、被計測の純流体Aの流れを発生させた後、3個のカンチレバ15の中央のカンチレバ15に搭載した熱電対の温度センサ20をヒータ25として動作させ、このヒータ25への一定電力、例えば、10mWの電力供給を行う。その後、ヒータ25の温度が定常状態の温度ΔTA0(図5参照)になった後、電力供給を止めると同時に、ヒータ25の薄膜熱電対を温度センサ20として動作させる。そして、その電力供給停止のスイッチ動作から、例えば、丁度、t=50ms経過後のこの熱電対である温度センサ20の周囲環境温度Tcからの温度差ΔT(図5参照)を計測する。そのときの予め用意してある校正曲線を用いて純流体Aの流体の速度や質量流量を算出して計測する。校正曲線は半導体メモリに入れておき、これを利用して演算回路で算出すると良い。
【0052】
また、前述では、加熱停止直後の所定の時間t経過後の両方の熱電対である温度センサ20の温度差ΔTを計測する場合であったが、ここでは図示しないが、純流体A計測用のヒータ兼温度センサで、所定の温度差ΔTになるまでのそれぞれの経過時間を計測しても良い。この経過時間もしくは経過時間の変化分の違いから、校正曲線を利用して純流体Aの流体の速度や質量流量を算出して計測しても良い。
【0053】
上述では、純流体Aの流量などの計測の例を示したが、同様にして、流体B計測用のヒータ兼温度センサを用いれば流体Bの流量などを計測することができる。
【0054】
上述では、一定電力供給によるジュール加熱の例を示したが、ヒータ25が周囲環境温度Tcに対して、一定温度差になるような制御をするとか、一定の電流や電圧の印加によるジュール加熱の方法を用いても良い。
【0055】
また、上述では、基板1の温度を計測する温度センサを実施例の図の中に煩雑になるので図示していないが、基板1に絶対温度センサであるpn接合ダイオードやショットキダイオード、更には、トランジスタなどを形成しておき、これを周囲環境温度Tcの計測用として利用することができる。
【実施例3】
【0056】
図6に、本発明の不純物濃度センサとフローセンサとを用いた計測・制御システムの一実施例のブロック概略図を示す。ここには、計測・制御システムの不純物濃度センサおよびフローセンサを動作させるのに必要な増幅回路、演算回路と制御回路を少なくとも具備した計測・制御システムの基本部を破線で囲った部分に示し、電源回路や被測定物理量である不純物濃度や純流体Aの流量などの表示部をも含む場合の計測・制御システムの全体のブロック概略図をも示している。これらの増幅回路、制御回路、演算回路、電源回路や表示部は、従来の技術で達成されるので、ここでは、その詳細は省略した。
【0057】
この図6に示した計測・制御システムの全体の一実施例のブロック概略図について説明すると次のようである。先ず、破線の枠に囲まれた計測・制御システムの基本部内の制御回路により、被測定物理量である不純物濃度や純流体Aの流量が所定の値になるように、予め測定してあるデータに基づき調整し、本発明の不純物濃度センサとフローセンサからの信号出力を増幅回路で増幅して、これをメモリも含む演算回路で、必要なフィードバック信号や表示用信号などを発生させる。これらの信号のうちの1つは、制御回路にフィードバックして、不純物濃度センサとフローセンサが所定の動作をするようにする。また、演算回路からの他の信号の1つは、制御回路1を通して不純物供給器であるバブラーにフィードバックして、流体B中に含まれる被測定特定不純物が所定の濃度になるように制御する。図6中のバブラーからの不純物濃度センサとフローセンサへ向かう点線の矢印は、バブラーの温度制御などによりバブラーからのキャリアである純流体Aに混入している不純物濃度や純流体Aの流量の制御した結果、不純物濃度センサとフローセンサの信号出力が変化し、結果として被測定特定不純物量が所定の濃度になるようにフィードバック制御されることを表している。
【0058】
本発明の不純物濃度センサ、フローセンサおよびこれらを用いた計測・制御システムは、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の不純物濃度センサとフローセンサは、半導体デバイスの製作プロセスの中で、所定の不純物濃度の供給・制御をする場合に用いられ、例えば、キャリアガスの純流体Aである水素ガス中に、TCS(トリクロルシラン)などの被測定特定不純物が含まれた流体B中のTCSなどの不純物量と、純流体Aの流速や流量を計測し、更には制御するのに用いられる。また、本発明の不純物濃度センサとフローセンサを用いた計測・制御システムでは、高速制御可能で、更に小型で安価な不純物濃度センサとフローセンサを用いるので、バブラーの制御と組み合わせて、木目細かな不純物制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の不純物濃度センサとフローセンサの主要部の一実施例の概略図で、上部図面はその平面図、下部図面は上部図面のX−Xにおける横断面の概略図である。(実施例1、実施例2)
【図2】本発明の不純物濃度センサとフローセンサにおける基板1のカバー2の一実施例を示す概略図であり、その上部図面は平面概略図で、下部図面は上部図面のX−Xにおける断面概略図である。(実施例1、実施例2)
【図3】本発明の不純物濃度センサとフローセンサにおける半導体デバイスチップ500を支持するための支持板5の一実施例を示す概略図で、その上部図面は平面概略図で、下部図面はその横断面概略図である。(実施例1、実施例2)
【図4】本発明の不純物濃度センサとフローセンサの一実施例を示す横断面概略図である。(実施例1、実施例2)
【図5】本発明の不純物濃度センサやフローセンサにおけるヒータ25が冷却されて行く状態の概要を示す冷却曲線である。(実施例1、実施例2)
【図6】本発明の不純物濃度センサとフローセンサとを用いた計測・制御システムの一実施例を示すブロック概略図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0061】
1 基板
2 カバー
5 支持板
8 バルブ
11 SOI層
12 下地基板
15 カンチレバ
18 薄膜可動部
20 温度センサ
21 n型拡散領域
22 金属熱電対導体
25 ヒータ
40 空洞
41 溝流路部
43 孔
45 貫通孔
50 シリコン酸化膜
51 BOX層
70a、70b 電極パッド
71a、71b 電極パッド
72a、72b 電極パッド
80 パイプ
301 純流体A用流路
302 流体B用流路
310 絞り
500 半導体デバイスチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純流体中の特定不純物濃度を計測する不純物濃度センサにおいて、純流体Aの流路と該純流体Aに被測定特定不純物が含まれた流体Bの流路との各流路に、それぞれの流れを止めて静的状態を作るバルブを有すること、各流路の静的状態領域にそれぞれ同等な構造のヒータと温度センサとを設けたこと、前記純流体Aと流体Bとの静的状態で、前記各ヒータで純流体Aと流体Bとを加熱し、前記純流体Aと流体Bとの熱伝導率の違いに基づく温度変化もしくは該温度変化が所定の値になるまでの時間変化を計測できるようにしたこと、該温度変化もしくは該時間変化から被測定特定不純物の濃度を計測できるように構成したこと、を特徴とする不純物濃度センサ。
【請求項2】
各流路のうちの少なくとも一部は、基板やカバーに形成した溝からなる溝流路部とした請求項1記載の不純物濃度センサ。
【請求項3】
各ヒータと温度センサとは、同一の基板に設けた各溝流路部に設けてあり、更に、該基板から熱分離した薄膜状に形成してある請求項2記載の不純物濃度センサ。
【請求項4】
ヒータを、絶対温度センサもしくは温度差センサとしての温度センサと兼用できるようにした請求項1から3のいずれかに記載の不純物濃度センサ。
【請求項5】
バルブを薄膜状となし、各ヒータと各温度センサと共に、各溝流路部に設けた請求項2から4のいずれかに記載の不純物濃度センサ。
【請求項6】
純流体Aと流体Bとを気体とした請求項1から5のいずれかに記載の不純物濃度センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサの構造を有し、該不純物濃度センサと同一の流体を計測対象とするフローセンサであって、バルブを開放状態にして、各流路に設置してあるヒータと温度センサを用いて、該ヒータでは純流体Aと流体Bとを独立に加熱し、それぞれの温度センサで該加熱による温度変化が計測できるようにしたこと、各流路に設置してあるヒータや温度センサの純流体Aと流体Bのそれぞれの流れに基づく放熱の違いを利用して、前記各ヒータの温度もしくは各温度センサの温度変化を計測できるようにしたこと、該温度変化もしくは所定の該温度変化になるまでの時間変化から、純流体Aと流体Bのうちの少なくとも一方の流速もしくは流量を算出できるようにしたこと、を特徴とするフローセンサ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサを、必要に応じて、流体の流れを計測するフローセンサとして動作するように切り替えることができるようにした請求項7記載のフローセンサ。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の不純物濃度センサと、請求項7から8のいずれかに記載のフローセンサとを用いた計測・制御システムであって、少なくとも該不純物濃度センサおよび該フローセンサを動作させるのに必要な増幅回路、演算回路、制御回路を具備したことを特徴とする計測・制御システム。
【請求項10】
不純物濃度センサとフローセンサとの出力信号を、不純物供給器にフィードバックして、流体B中に含まれる被測定特定不純物を所定の濃度になるように制御するようにした請求項9記載の計測・制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−128254(P2009−128254A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305099(P2007−305099)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(391025741)
【出願人】(507389277)
【Fターム(参考)】