説明

不良記録素子の検出装置及び方法、画像形成装置及び方法、並びにプログラム

【課題】記録解像度よりも低解像度の読取装置を用いた場合であっても、記録ヘッドにおける不良記録素子(特に、記録位置誤差が大きいもの)を精度良く検出する。
【解決手段】記録ピッチWPの記録素子のうち検出ピッチ数PP間隔の記録素子を動作させて記録したライン状のテストパターンを読み取り、読取画像信号を得る。読取画素ピッチWS、解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|>3とする。読取画素番号を解析ピッチ数PSで除算した剰余によって、読取画像信号を複数の系列に分解し、各系列において予測される規則的な信号を計算する。この予測信号に基づいて検出距離条件に相当する閾値を決定する。各系列において原信号から予測信号を減じた変動信号を計算し、変動信号と閾値を比較して不良記録素子を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録素子を有する記録ヘッド(例えば、インクジェットヘッド)によるテストパターンの記録結果から不良記録素子を特定するための検出技術、並びにこれを適用した画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙などの記録媒体に画像を記録する方法として、画像信号に応じて記録ヘッドからインク滴を吐出させ、そのインク滴を記録媒体上に着弾させるインクジェット描画方式がある。このようなインクジェット描画方式を用いた画像描画装置としては、インク滴を吐出する吐出部(複数のノズル)を記録媒体の1辺の全域に対応するようにライン状に配置し、記録媒体を吐出部に直交する方向に搬送することで、記録媒体の全域に画像を記録可能なフルラインヘッド型の画像描画装置がある。フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を移動させることなく記録媒体を搬送することで、記録媒体の全域に画像を描画することができるため、記録速度を高速化するのに適している。
【0003】
しかしながら、フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を構成する記録素子(ノズル)の製造バラツキや経時劣化など、様々な原因で、記録媒体上に記録される実際のドット位置が理想的なドット位置からずれてしまい、記録位置誤差(着弾位置誤差)を生じることがある。その結果、記録媒体に記録した画像にスジ状のアーティファクトが発生するという問題がある。このような記録位置誤差に起因するアーティファクトの他にも、液滴が吐出しない異常(不吐出)、吐出体積の異常、吐出形状の異常(スプラッシュ)など、記録素子の不良によって、記録媒体上の記録画像にスジ状のアーティファクトが発生する現象がある。このような記録品質の低下の原因になる記録素子を総称して「不良吐出ノズル」或いは「不良記録素子」と呼ぶ。
【0004】
フルラインヘッド型の記録ヘッドは記録用紙幅に等しい長さがあるため、例えば、記録解像度が1200DPIの場合、菊半裁(636mm×469mm)程度の用紙幅を持つ記録用紙に対応する装置においては、およそ3万ノズル/インク程度の記録素子がある。このような多数の記録素子の中で不良吐出ノズルが発生する時期は様々である。すなわち、記録ヘッド製造時に不良となったもの、経時変化によって不良となったもの、メンテナンス時に不良となったもの(メンテナンス起因の場合、しばしば次のメンテナンスで正常ノズルに復帰する場合も多い)、連続印刷途中から不良吐出ノズル化したもの、などがあり得る。
【0005】
不良吐出ノズルが発生した場合には、その不良吐出ノズルを使用停止(不吐化処理)して、他の周辺ノズル(正常な吐出が可能なノズル)を使用して画像を補正する技術が知られている。かかる補正技術を適用する上で不良吐出ノズルを正確に特定することが重要である。
【0006】
不良吐出ノズルを特定する技術として、不良吐出ノズルの検出を目的とした所定のテストパターンを印字して、その印字結果を画像読取装置によって読み取り、得られた読取画像データを解析して不良吐出ノズルを特定する方法が、特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−009474号公報
【特許文献2】特開2006−069027号公報
【特許文献3】特開2007−054970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、いわゆる1オンNオフの検出テストパターンを使用する構成が開示されている。読取装置(スキャナ)は、印字解像度と同等もしくはそれ以上の解像度を有し、読取結果を2値化して不吐出ノズルを検出している。
【0009】
また、特許文献2には、テストパターンのうち注目する1列の読取結果の平均値と、注目列の左右m列の読取結果の平均値に基づいて、不良ノズル位置を検出する技術が開示されている。ここでは、画像読取部の読取解像度はラインヘッドの解像度のn倍(nは、2以上の自然数)であることが好ましいとされている。
【0010】
しかし、特許文献1、2には、ラインヘッドの印字解像度より低解像度の読取装置を用いるという課題に対する検出技術は開示されていない。
【0011】
この課題に対し、特許文献3には、記録ヘッドの解像度より低い解像度で読み取るスキャナを使用し、読取データを補間処理して不良ノズルを検出する技術が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献3の技術では、テストパターン上のドットで形成されたライン幅がサンプリング定理を満たさない条件下においては、ライン位置には誤差(ドットで形成されたラインプロファイルの推定誤差)が一定量残るため、それほど高精度にならないという問題点がある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録解像度よりも低解像度の読取装置を用いた場合であっても、記録ヘッドにおける不良記録素子(特に、記録位置誤差が所定量を超えて大きいもの)を精度良く特定することができる不良記録素子の検出装置及び方法を提供することを目的とする。また、その検出技術を用いた画像形成装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記目的を達成するために、複数の記録素子が配列された記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に記録したテストパターンの読取画像信号を取得する読取画像信号取得手段と、前記読取画像信号を解析して前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する処理を行う信号処理手段と、を備えた不良記録素子の検出装置であって、前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、前記信号処理手段は、前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解手段と、前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成手段と、前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出手段と、前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、を備えることを特徴とする不良記録素子の検出装置を提供する。
【0015】
本発明の他の態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テストパターンを読み取って得られる読取画像信号から予測信号を計算し、ライン状のパターンの規則性(周期性)を利用して、その予測信号から記録位置の誤差(距離)と信号変化の関係を把握して判定用の閾値を決定している。これにより、記録ヘッドの記録解像度よりも低い解像度の読取画像信号から、不良記録素子を精度良く特定することができる。
【0017】
また、読取画像信号から計算される予測信号から判定用の閾値を決定しているため、読取装置の特性やテストパターンの記録条件等に影響されにくい、ロバスト性に優れた高精度の検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図
【図2】記録紙に記録されるテストパターンの基本形を示す図
【図3】テストパターンの一具体例を示す図
【図4】テストパターンを読み取って得られる理想的な読取画像の例を示す図
【図5】図4中のA部の拡大図
【図6】低解像度(477DPI)の読取装置を用いてテストパターンを読み取った実際の読取画像の例を示す図
【図7】図6中のB部の拡大図
【図8】ノズル、ライン、読取画素との関係を模式的に表した図
【図9】図8に示す各読取画素のプロファイルを示すグラフ
【図10】着弾位置誤差がある場合のノズル、ライン、読取画素との関係を模式的に表した図
【図11】図10に示す各読取画素のプロファイルを示すグラフ
【図12】検出ピッチと解析ピッチとのピッチ差ΔPが負の場合のノズル、ライン、読取画素との関係を模式的に表した図
【図13】ピッチ差ΔPが正の場合のノズル、ライン、読取画素との関係を模式的に表した図
【図14】ラインと読取画素の相対位置を示す図
【図15】検出ピッチ数と解析ピッチ数との各組合せのピッチ差と周期を示す図表
【図16】検出ピッチ数と解析ピッチ数との各組合せのピッチ差と周期を示す図表
【図17】不良吐出ノズル検出の処理全体の流れを示すフローチャート
【図18】不良吐出ノズル検出処理のフローチャート
【図19】全体位置検出処理のフローチャート
【図20】読取画像から基準位置(上端位置、下端位置)を検出する処理の説明図
【図21】読取画像から基準位置(左端位置、右端位置)を検出する処理の説明図
【図22】ラインブロック・トラック設定処理のフローチャート
【図23】基準位置に基づくラインブロック及びトラックの切り出し方法の説明図
【図24】ラインブロックの読取画像プロファイルの一例を示すグラフ
【図25】MOD系列毎のプロファイルIsq(q=0,1,2,3)を示すグラフ
【図26】シェーディング補正を実施していない状態のMOD系列毎の画像プロファイルを示すグラフ
【図27】画像プロファイルに基づく不良吐出ノズル検出処理のフローチャート
【図28】各トラックの画像プロファイルに基づく処理のフローチャート
【図29】画像プロファイル初期解析処理のフローチャート
【図30】各読取画素、読取画素のまとまり(解析ピッチ)及びラインパターンの関係を表した図
【図31】プレフィルタ処理のフローチャート
【図32】画像プロファイル分割処理のフローチャート
【図33】画像プロファイル分割処理のフローチャート
【図34】MOD系列毎のプレフィルタ処理と最小値に基づくプロファイル分割処理の説明図
【図35】画像プロファイル補正処理のフローチャート
【図36】画像プロファイル補正処理のフローチャート
【図37】画像プロファイル補正処理のフローチャート
【図38】画像プロファイル補正処理と平均プロファイル計算範囲の説明図
【図39】平均プロファイル計算処理のフローチャート
【図40】平均プロファイルの系列別の要素を示す図
【図41】検出閾値設定処理のフローチャート
【図42】MOD系列期待値プロファイルと検出オフセット画素数の説明図
【図43】画像プロファイル期待値計算処理のフローチャート
【図44】不良ノズル判定処理のフローチャート
【図45】不良ノズル判定サブルーチンのフローチャート
【図46】着弾位置に対応する閾値の説明図
【図47】同じラインブロックに属するトラック間の統計処理のフローチャート
【図48】距離計算の処理のフローチャート
【図49】距離計算サブルーチンのフローチャート
【図50】インクジェット記録装置における画像補正プロセスの例を示すフローチャート
【図51】不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図
【図52】不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウト図
【図53】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図54】インクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図55】複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの例を示す図
【図56】図54中のA−A線に沿う断面図
【図57】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図58】本実施形態による画像印刷の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(着弾位置誤差の説明)
はじめに、インクジェットヘッドにおける不良吐出ノズルの一例として、着弾位置(記録位置)の誤差について説明する。図1(a)〜図1(c)は、ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図である。図1(a)は、ヘッド50における複数のノズル51のライン配列を示す平面図である。図1(b)は、ノズル51から記録紙(記録媒体)16に向かってインク滴を吐出する状態を横方向から見た図であり、図中の矢印Aによってノズル51からのインク滴の吐出方向が概略的に示されている。また図1(c)は、ノズル51から吐出されるインク滴によって記録紙16上に形成されるテストパターン102の例を示す図であり、理想的な着弾位置(符号104)が点線で示され、実際の着弾位置(符号102)が太い黒線で示されている。
【0021】
なお、図1(a)及び図1(b)では、図示の簡略化のために、複数のノズル51が1列に並んだヘッド50を示すが、複数のノズルが二次元配列されて成るマトリクスヘッドに対しても当然に適用できる。即ち、2次元配列のノズル群は、ヘッドと記録媒体との相対移動方向と直交する方向に沿う直線上に正射影される実質的なノズル列を考慮することにより、1列のノズル列と実質的に同等のものとして取り扱うことができる。例えば、ラインヘッドに対する記録紙の搬送方向が「相対移動方向」に相当し、この用紙搬送方向を「副走査方向」とすると、これに直交する用紙幅方向が「主走査方向」となり、主走査方向と平行な直線上に正射影されたノズル列(投影ノズル列)は実質的に1列のノズル列として取り扱うことができる。
【0022】
図1(a)〜図1(c)に示されるように、ヘッド50の複数のノズル51には、通常の吐出特性を示す正常ノズルとともに、吐出されるインク滴の飛翔軌道が本来の軌道から過大に外れてしまう不良吐出ノズルが含まれる。この不良吐出ノズルから吐出され記録紙16上の着弾したインク滴により形成されるライン状のドットパターン(テストパターン)102は、理想的な着弾位置104からずれて、画像品質の劣化の一因となる。
【0023】
高速記録技術であるシングルパス記録方式のインクジェット記録装置(画像形成装置)では、記録紙16の用紙幅に対応するノズル数は1インク当たり数万個に及び、またフルカラー記録ではさらにインク色数(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色)の分だけ記録素子が存在する。
【0024】
このように多数の記録素子を備えるシングルパス記録方式の画像形成装置において、不良記録素子(不良吐出ノズル)を精度よく検出する技術、記録素子の記録位置誤差(吐出液滴の着弾位置誤差)を測定する技術を開示する。
【0025】
(検出用テストパターンの例)
図2は、不良吐出ノズルを検出するために記録紙(記録媒体)に記録されるパターン(以下「テストパターン」、或いは「検出パターン」と呼ぶ。)の基本形を示す図である。
【0026】
記録ヘッドに対して記録紙16を搬送するとともに記録ヘッドの複数のノズルを一定間隔で選択して駆動することにより、記録紙16上にライン状のテストパターン102の基本部分が作成される。すなわち、記録ヘッドの複数のノズルのうち所定間隔を有するノズル群から構成されるノズルブロック毎にインク滴が吐出されてライン状のテストパターン102が形成され、記録紙16の搬送と共にインク滴を吐出するノズルブロックを順次変えることによって、図2に示されるようにテストパターン102が千鳥状に形成される。
【0027】
図2のテストパターン102は、いわゆる「1オンnオフ」型のラインパターンである(nは自然数)。1つのラインヘッドにおいて、実質的に用紙幅方向(x方向)に沿って1列に並ぶノズル列(正射影によって得られる実質的なノズル列)を構成するノズルの並びについて、そのx方向の端から順番にノズル番号を付与したとき、ノズル番号を2以上の整数「A」で除算したときの剰余数「B」(B=0,1・・A−1)によって同時吐出するノズル群をグループ分けし、AN+0、AN+1、・・・AN+Bのノズル番号のグループ毎に打滴タイミングを変えて(ただし、Nは0以上の整数)、それぞれ各ノズルからの連続打滴によるライン群を形成することにより、図2のような1オンnオフ型のラインパターンが得られる。
【0028】
つまり、x方向に並ぶように正射影された実質的なノズル列の連続する(n+1)個のノズル並びのうち1ノズルから吐出し、他のn個のノズルを非駆動とすることによってライン状の図形を描いたものである。
【0029】
図2は、「1オン11オフ」(A=12、B=0〜11)の例である。ここでは、A=12を例示するが、一般にAN+B(B=0、1、…A−1)、Aは2以上の整数について適応可能である。
【0030】
このような1オンnオフ型のテストパターンを用いることにより、各ラインブロック内で隣接ライン同士が重なり合わず、全ノズルについてそれぞれ他のノズルと区別可能な独立した(ノズル別の)ラインを形成できる。テストパターン102を構成する各ラインはそれぞれ各ノズルからのインク吐出に対応しているため、それぞれのラインが適切に形成されているか否かを判定することによって、対応のノズルからインク滴が適切に吐出されているか否かを検出することが可能である。
【0031】
なお、テストパターンには、上述したいわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターン以外に、他のラインブロック(例えば、ラインブロック相互間の位置誤差確認用のブロック)やラインブロック間を区切る横線(仕切り線)、基準位置検出ラインなど、他のパターン要素を含んでも良い。
【0032】
図3は、不良吐出ノズルを検出するためのテストパターンの実例を示す図である。ここでは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクに対応した各色別の記録ヘッドを備えたインクジェット印刷機によって、全色全ノズルの1オンnオフ型のパターンを形成したものである。
【0033】
記録紙16の先端部分には、シェーディング補正領域18が設けられている。シェーディング補正領域18は、記録紙16の白地を読み取ってシェーディング補正用のデータを取得するための非印字領域である。シェーディング補正領域18に続いて、Kインクによるテストパターン102K、Cインクによるテストパターン102C、Mインクによるテストパターン102M、Yインクによるテストパターン102Yが形成される。
【0034】
このように記録紙16の紙面内にシェーディング補正領域18を設け、インクジェット記録装置で使用する各色のインク(ここでは、CMYK)によるパターンを用紙内に複数配置する。図3に例示したように、1枚の用紙に4色全てのパターンを形成してもよいし、複数枚の用紙に分けて形成してもよい。
【0035】
<テストパターンの読取画像について>
図4は、テストパターンの理想的な読取画像の例である。ここでは、参考のために、印刷解像度よりも高解像度のスキャナを用いた例を示す。図4には、1200DPI(dots per inch)の記録解像度をもつインクジェット印刷機によって、1オン10オフのテストパターンを出力し、これを2400DPIの読取解像度(水平方向の解像度)をもつフラットベットスキャナで読み取って得られた読取画像の例を示した。図4中の符号Aで示した矩形で囲った部分の拡大図を図5に示す。
【0036】
図5において、縦の直線は、読取画素の1画素相当の境界を示す線であり、2本の縦線と上下の横線で区画される細長い矩形領域が読取1画素相当となる。つまり、横方向について2400DPIの読取解像度を有する場合、1画素の幅は約10.6μmとなる。
【0037】
このテストパターン読取画像から、各ノズルの着弾位置誤差(記録位置誤差)が所定距離(例えば、約15μm)より大きいか否かを検知・判定することが望まれる。2400DPIの読取解像度であれば、15μmの着弾位置誤差を判定できる。
【0038】
これに対し、インクジェット記録装置の用紙搬送路中に設置される実際の読取装置(インラインセンサ)などは、印刷解像度よりもさらに低解像度の読取解像度のものが用いられることが多い。
【0039】
図6は、低解像度の読取装置を用いてテストパターンを読み取った実際の読取画像の例である。ここでは、1200DPIの記録解像度をもつインクジェット印刷機によって、1オン10オフのテストパターンを出力し、これを477DPIの読取解像度(水平方向の解像度)をもつスキャナで読み取って得られた読取画像の例を示した。図6中の符号Bで示した矩形で囲った部分の拡大図を図7に示す。
【0040】
数量的な説明を簡単にするために、1オン9オフの場合に置き換えて説明すると、印刷解像度1200DPI、1オン9オフのとき、1ブロックのラインピッチは211.6μmである。読取画像の1画素の幅は約53.2μmとなる。本実施形態による検出技術は、約15μm程度の記録位置誤差を対比することが必要であるが、このままでは読取画素の1画素よりも小さい誤差を判定できない。
【0041】
そこで、このような低解像度の読取画像から記録位置誤差を高精度に測定し、不良吐出ノズルを精度良く特定する方法の一例を以下に示す。
【0042】
(不良吐出ノズル検出の原理)
図8は、ヘッド50のノズル51のうち、1オンnオフのルールで選択された所定のノズル51によって形成した各ライン103を読取装置によって読み取る場合の、ノズル51、ライン103、及び読取画素138との関係を模式的に表した図である。ここで、ノズル51の配列によるX方向の記録画素ピッチ(X方向印字解像度が定まるピッチ、すなわち、印字画素サイズ)をWP[μm]、X方向に連続して並ぶ所定個数の印字画素の画素列をひとまとまりの検出単位としたライン103の検出ピッチ数(印字画素の単位で表す画素数)をPP、読取画素138のX方向の読取画素ピッチ(読取画素サイズ)をWS[μm]、X方向に連続して並ぶ所定個数の読取画素138の画素列をひとまとまりの解析単位とした解析ピッチ数(読取画素の単位で表す画素数)をPSとすると、検出ピッチLPは、LP=PP×WP[μm]、解析ピッチLSは、LS=PS×WS[μm]と表すことができる。また、検出ピッチLPと解析ピッチLSとのピッチ差ΔPは、ΔP=LS−LP[μm]と表される。
【0043】
ここでは記録解像度よりも低解像度の読取装置(スキャナ)を用いており、読取画素ピッチWSは、記録画素ピッチWPより大きい(WS>WP)。
【0044】
図8は、ΔP=0の場合を示しており、ここでは一例として、PP=6、WP=25400/1200[μm]、PS=3、WS=25400/600[μm]とする。
【0045】
図9(a)は、図8に示す各読取画素138による読取結果(読取画像信号)を示すグラフである。
【0046】
この読取画像信号について、解析ピッチ方向(図8のX方向)の読取画素位置(読取画素番号)を端から順にx=0、1、2、3、・・・とする。ここでは、不良吐出ノズルを特定するために、読取画素位置xを解析ピッチ数PSで除算して剰余qを求め、この剰余q毎に読取画像信号のプロファイルを分割して解析する。
【0047】
なお、読取画像を一方向(X方向)に切断した際の画像濃度(濃淡)分布をプロファイルと呼ぶ。このプロファイルは必ずしも1画素だけの濃度(濃淡)分布を指すものではなく、例えばY方向に平均化した濃度(濃淡)を用いてX方向に関する濃度(濃淡)分布をプロファイルとして採用してもよい。
【0048】
図9(a)に示す読取画像信号のプロファイルをIs(x)とすると、剰余q毎に分割されたプロファイルIsq(但し、q≡xmodPS)は、以下のように表すことができる。
【0049】
Is0(k)=Is(PS×k+0)(q=0のとき) …(式1)
Is1(k)=Is(PS×k+1)(q=1のとき) …(式2)
Is2(k)=Is(PS×k+2)(q=2のとき) …(式3)
図8に示すように、上記の剰余qは、解析ピッチ数PS内における各読取画素の位置(解析ピッチ内位置)に該当する。また本明細書では、剰余qについて、MOD系列と呼ぶ場合がある。
【0050】
図9(b)〜(d)は、図9(a)に示す読取画像信号についてMOD系列毎に分解したプロファイルIsqをそれぞれプロットしたグラフであり、図9(b)はIs0のプロファイル、図9(c)はIs1のプロファイル、図9(d)はIs2のプロファイルを示している。図9(e)は、図9(b)〜(d)に示したMOD系列毎のプロファイルIsqを重ねて示したグラフである。図9(e)では、(式1)〜(式3)におけるkが一致するqの横軸の位置を一致させて示している。
【0051】
ここでは、ΔP=0、即ち検出ピッチLPと解析ピッチLSの位相が一致しているので、解析ピッチ内位置(q≡xmodPS)と検出対象ノズルによって形成されたラインとの相対的な位置関係は、着弾位置誤差が無ければ一致する。即ち、MOD系列毎のプロファイルIsqは、理想的には読取画素位置xに関わらず一定の濃度(信号値)となる。
【0052】
図10は、図8と同様にノズル51、ライン103、及び読取画素138との関係を模式的に表した図であり、ここでは各ライン103a〜103fのうち、ライン103bとライン103dに着弾位置誤差がある場合について示している。
【0053】
図11(a)は、図10に示す各読取画素138の読取結果を示すグラフであり、図11(b)〜(d)は、図11(a)に示す読取画像信号についてMOD系列毎に分解したプロファイルをプロットしたグラフである。図11(b)はIs0のプロファイル、図11(c)はIs1のプロファイル、図11(d)はIs2のプロファイルを示している。図11(e)は、図11(b)〜(d)に示したMOD系列毎のプロファイルIsqを重ねて示したグラフである。
【0054】
図11に示すように、MOD系列毎に取り出したプロファイルIsqに注目すると、着弾位置エラーが発生したノズルに相当する読取画素位置で、Isqが変動していることがわかる。即ち、ライン103bの位置とライン103dの位置におけるプロファイルが変動している。このように、MOD系列毎のプロファイルから変動信号を抽出することで、不良吐出ノズルを特定することができる。
【0055】
(位相が異なる場合の検出原理)
上記の例では、検出ピッチLPと解析ピッチLSの位相が一致している(ΔP=0)場合について説明したが、位相が異なっている場合(ΔP≠0)であっても、処理としては同様である。
【0056】
図12(a)は、ピッチ差ΔPが負の値の場合のノズル51、ライン103、及び読取画素138との関係を模式的に表した図である。図12(b)は、図12(a)に示す各読取画素138の読取結果を示すグラフであり、図12(c)は、検出ピッチ数PPと解析ピッチ数PSのセットが増加する毎に、ピッチ差ΔPが線形に累積する様子を説明するための図である。
【0057】
同様に、図13(a)は、ピッチ差ΔPが正の値の場合のノズル51、ライン103、及び読取画素138との関係を模式的に表した図、図13(b)は、図13(a)に示す関係における各読取画素138の読取結果を示すグラフ、図13(c)は、検出ピッチ数PPと解析ピッチ数PSのセットが増加する毎に、ピッチ差ΔPが線形に累積する様子を説明するための図である。
【0058】
また、図14は、解析ピッチLSと検出ピッチLPのズレ(ΔP)が解析ピッチ毎に増大する結果、ラインと読取画素の相対位置が規則的に変化する様子を示す図であり、図14(a)はピッチ差ΔPが負の場合、図14(b)はピッチ差ΔPが正の場合を示している。
【0059】
図12〜図14に示すように、検出ピッチLPと解析ピッチLSの位相が一致していないため、解析ピッチ内位置と検出対象ノズルによって形成されたラインとの相対的な位置関係は、検出ピッチ数PPと解析ピッチ数PSのセットが増加する毎にΔPずつずれていく。
【0060】
このとき、MOD系列毎のプロファイルは、ΔPのずれが検出ピッチLP分だけ累積するまでを1周期として変化する。即ち、ピッチ差ΔPがゼロではなく絶対値として小さいときは、非常に長い周期でMOD系列毎のプロファイルIsqが変化し、この周期Tは、以下の(式4)から求められる。
【0061】
T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP| …(式4)
周期Tは、MOD系列毎のプロファイルIsqの画素数(k)を示している。
【0062】
この周期Tが大きな値であれば、位相が一致している場合(ΔP=0の場合)と同様の原理によって変動信号を抽出し、不良吐出ノズルを特定することが可能である。したがって、周期Tが大きな値となるように、解析ピッチ数PSを決定すればよい。
【0063】
図15(a)は、印字解像度が1200[DPI]、読取解像度が500[DPI]の場合における、検出ピッチ数PP(縦軸)と解析ピッチ数PS(横軸)との各組合せのピッチ差ΔP[単位:μm]を示す表であり、図15(b)は、図15(a)に示した各組み合わせにおけるMOD系列毎のプロファイルの周期T[単位:画素]を示す表である。また、図16(a)、(b)は、印字解像度が1200[DPI]、読取解像度が477[DPI]の場合の、それぞれピッチ差ΔP[単位:μm]とMOD系列毎のプロファイルの周期T[単位:画素]を示す表である。
【0064】
周期Tが非常に大きいとき(ΔP=0は無限大)には検出精度が高く、周期Tが短くなるに伴い、ΔPのずれにより発生する信号変化を正確に演算することが困難になる。特に、Tが3以下では非常に条件が悪くなる。したがって、周期Tは3より大きいことが好ましい。図15(b)、図16(b)におけるグレー部分は、T>3となる組み合わせを示している。
【0065】
<実施形態に係る具体的な処理アルゴリズムの説明>
上述した検出原理を利用した具体的な処理アルゴリズムの例を説明する。
【0066】
図17は、処理全体の流れを示すフローチャートである。まず、検出パターンを印字する(ステップS12)。次に、その印字された検出パターンを読取装置によって読み取る(ステップS14)。そして、得られた読取画像のデータを基に不良吐出ノズルを検出する処理を行う(ステップS16)。
【0067】
図18は、図17のステップS16に示した不良吐出ノズル検出処理のフローチャートである。図18のフローがスタートすると、テストパターンの全体位置を把握するための全体位置検出処理が行われる(ステップS22)。次に、読取画像の中から解析対象の位置を決めるために、ラインブロックとトラックの設定処理が行われる(ステップS24)。そして、設定した解析領域について、画像プロファイルに基づいて不良ノズルを検出する処理が行われる(ステップS26)。
【0068】
図19は、全体位置検出処理(図18のステップS22)のフローチャートである。まず、読取画像からテストパターンの上端位置と下端位置を検出する(図19のステップS32)。さらに、左サイド位置と右サイド位置を検出する処理を行う(ステップS34)。そして、パターンの位置を規定する四隅の4点を決定する(ステップS36)。
【0069】
図20は、図19のステップS32における上端位置検出と下端位置検出の処理内容の説明図である。本例の読取装置には、RGBの色分解カラーフィルターを備えた撮像素子(例えば、RGBラインセンサ)が用いられ、描画されたテストパターンを読み取ることによって、当該パターンのカラー画像信号が得られる。テストパターンの読取画像(RGBのカラー画像データ)のうち、テストパターン領域の位置検出に使用するチャンネルは予め把握されているものとする。例えば、図3で説明したように、記録紙16の先端側から(上から)順番に、描画インクと配置順が決まっている場合、シアンインクのパターンについてはRチャンネル、マゼンタインクのパターンについてはGチャンネル、イエローインクのパターンについてはBチャンネル、黒インクのパターンについてはGチャンネルを位置検出に使用する。
【0070】
本例における読取画像の画像信号は白地が「255」に近い値、黒が「0」に近い値で表される8ビット階調のデジタル画像データであるものとして説明する。読取画像中のX方向は、図20の横方向であり、このX方向解像度は477DPIとする。Y方向は、図20の縦方向である。Y方向解像度は特に規定しないが、一例として、100DPI、或いは、200DPIである。Y方向解像度は、X方向解像度よりも低い解像度とすることが可能である。なお、Y軸の原点は図20中の上の方にあり、図20の下に向かって、Y軸の座標値が増加するものとする。
【0071】
ここでは、読取画像全体から、図3のMインクによるテストパターンの位置検出を例に説明する。既述のとおり、テストパターンの設計上の配置から、読取画像全体における各色インクのパターン(色別のパターン)のおおよその位置は予め判っている。この予め把握されている位置情報から、最初に、Mインクのテストパターンの大体のY方向中心位置とX方向中心位置とに基づいて、図20の符号T1〜T4の矩形で示したような上端解析領域T1〜T4と、符号B1〜B4の矩形で示したような下端解析領域B1〜B4を設定する。
【0072】
上端解析領域T1〜T4は、パターンを構成するライン群の上端部の一部を含むような領域に設定される。上端解析領域T1〜T4は、X方向に複数箇所(ここでは4箇所を例示)設定される。下端解析領域B1〜B4は、パターンの下端部の一部を含むような範囲に設定される。下端解析領域B1〜B4もX方向に複数箇所(ここでは4箇所を例示)設定される。解析領域T1〜T4、B1〜B4をX方向に複数設定する理由は、読取画像が傾いている場合への対策である。
【0073】
各領域T1〜T4、B1〜B4のX方向の幅は、1オンnオフのラインブロックについて複数本のラインが含まれることが想定される幅であることが好ましい。ここでは、2〜3本のラインが含まれ得る幅に設定されている。
【0074】
上端解析領域T1〜T4において、上端部位置を決定するため、それぞれの領域内で、Y方向に1画素、X方向は所定画素数(ここでは、少なくとも2本のラインが含まれると想定される画素数)の解析ウインドウWTを図の上向き矢印方向(−Y方向)に順次移動しながら上端部の位置を決定する。
【0075】
下端解析領域B1〜B4についても、同様に、下端部位置を決定するため、それぞれの領域内で、Y方向に1画素、X方向に所定画素数、(ここでは、少なくとも2本のラインが含まれると想定される画素数)の解析ウインドウWBを図20の下向き矢印方向(+Y方向)に順次移動しながら下端部を決定する。
【0076】
<<端部決定原理>>
端部決定の原理は次のとおりである。
【0077】
解析ウインドウWT、WB中のヒストグラムを計算する。解析ウインドウの初期位置(WTの初期位置は各領域T1〜T4の下端、WBの初期位置は各領域B1〜B4の上端)は、パターン領域の中に必ず在るため、ラインと白地が所定割合で存在する。したがって、累積ヒストグラム10%点は黒に近い階調値になり、累積ヒストグラム90%点は白に近い値になる。
【0078】
なお、累積ヒストグラム10%点とは、所定領域(ここでは、解析ウインドウ内)のヒストグラムを作成し、信号が小さい方から数え上げて、画素数がその所定領域内全画素の19%に達する信号値を示す。解析ウインドウを移動させながらヒストグラムを計算し、累積ヒストグラム10%点が白に近い階調値に変化した直前の解析ウインドウ位置(Y軸方向の位置)が、その解析領域における「端部」と判定される。
【0079】
各上端解析領域T1〜T4について、それぞれ端部位置(決定位置TE1〜TE4)が決定される。また、各下端解析領域B1〜B4について、それぞれ端部位置(決定位置BE1〜BE4)が決定される。
【0080】
上記の端部決定原理を使用して、各上端解析領域T1〜T4の「端部」(決定位置TE1〜TE4)を求め、これらの点からテストパターンの上端位置を表す直線「近似直線TL」を決定する。同様に、下端解析領域B1〜B4の「端部」(決定位置BE1〜BE4)を求め、これらの点からテストパターンの下端位置を表す直線「近似直線BL」を決定する。
【0081】
すなわち、複数の解析領域T1〜T4で求めたX方向中心位置(解析領域TiのX方向中心位置Xi)と、各解析領域Tiについて端部決定原理で求めたY位置(Yi)の座標(Xi,Yi)を用いて最小自乗法によって直線方程式を求め(ただし、本例の場合i=1,2,3,4)、図20に示すような、上端線(近似直線TL)を計算する。
【0082】
同様に、複数の解析領域B1〜B4で求めたX方向中心位置(解析領域TiのX方向中心位置Xi)と、各解析領域Tiについて端部決定原理で求めたY位置(Yi)の座標(Xi,Yi)を用いて最小自乗法によって直線方程式を求め、図20に示すような下端線(近似直線BL)を計算する。
【0083】
次に、テストパターンの左右端を決定する方法について説明する。
【0084】
図21は、図19のステップS34における右サイド位置検出と左サイド位置検出の処理内容の説明図である。図21に示したように、テストパターンの左右端を検出するために、テストパターンの左端部を含む領域に符号S1の矩形で示したような左端解析領域S1を設定する一方、テストパターンの右端部を含む領域に符号S2の矩形で示したような右端解析領域S2を設定する。
【0085】
各解析領域S1,S2は、1オンnオフの全ブロック(n+1段のラインブロック)のラインを含むようなY方向高さを有する。テストパターンの左右端部を決定するヒストグラム解析領域としての解析ウインドウWL、WRは、テストパターンの設計に基づき、(n+1)段からなる階段状のライン群の配列に沿った傾きを持つ連続矩形を使用する。すなわち、解析ウインドウWL、WRは、各ラインブロックのラインに対応する(n+1)個の矩形を各段のラインの配列に沿って並べたものとなっている。また、解析ウインドウWL、WRのX方向は、均等に1ラインを含むようにするために、各段のラインピッチと読取画像解像度に基づいて決定する。本例ではX方向4画素とする。
【0086】
均等に1ラインを含むようにする理由は、既述した端部決定原理を使用するためである。解析ウインドウWL、WRをそれぞれ矢印の方向に(両サイドの外側に向かって)順次移動しながらヒストグラムを計算し、端部を決定する。
【0087】
解析ウインドウWL、WRの初期位置では、テストパターンの中に必ず在るため、ウインドウ内にラインと白地が所定割合で存在する。ウインドウのX方向幅を「均等に1ラインを含む」ように決定しているので、テストパターン内では上記ラインと白地の所定割合は一定である。したがって、累積ヒストグラム10%点は黒に近い階調値、累積ヒストグラム90%点は白に近い値になる。
【0088】
ウインドウを順次移動させテストパターンの外に出ると、テストパターン外にはラインが存在しないため、累積ヒストグラム10%点は白に近い階調値、累積ヒストグラム90%点は白に近い値になる。
【0089】
ウインドウを移動させながらヒストグラムを計算し、累積ヒストグラム10%点が白に近い階調値に変化した直前の解析ウインドウ位置(X軸方向の位置)が、その解析領域における「端部」と判定される。
【0090】
こうして左右端ではX方向位置がそれぞれ決定される。そして、テストパターンの設計に沿った傾きに基づいて、左右端に相当する直線RL、LLを決定する。なお、左右端の決定方法については、上記の例の他に、X方向1画素の連続矩形を解析ウインドウとして用いて、ウインドウを移動させながらヒストグラムを計算し、累積ヒストグラム10%点の周期的な変化が途切れた位置を「端部」として決定することも可能である。
【0091】
上述の方法によりテストパターンの上下端と左右端を示す直線(TL、BL、LL、RL)を決定したので、これら直線の交点を計算して、読取パターンを囲む四隅の4点を決定する。
【0092】
図22は、図18のステップS24に示したラインブロック・トラック設定処理のフローチャートであり、図23はその説明図である。図22の処理がスタートすると、上記求めた4点の座標とテストパターンに含まれるラインブロック数に基づいて、各段のラインブロックのY方向中心位置を通る直線を計算する(ステップS42)。つまり、四隅の4点で囲まれる領域(パターン領域)の中を均等に分け、ここでは、10個のラインブロックのそれぞれ真ん中を通るように割合を定めて、内分して各ラインブロックのY方向中心位置の直線を計算する。こうして、各ラインブロックのY方向中心位置を決定する。
【0093】
次に、各ラインブロックのY方向中心位置の直線に沿って平行な複数のトラック位置を計算する(ステップS44)。ステップS42で各ラインブロックのY方向中心位置を通る直線を決めたため、この直線を基準にしてさらに細かい平行なラインを引く。ラインのY方向長さはおよそ判っているので、設定するトラックの本数(2以上、適宜の数)に応じてY方向の長さを均等に分割する。
【0094】
図23では、1オン9オフによる10段からなる各ラインブロックLBiについて、それぞれ4つのトラックTRijが設定された例が示されている。なお、添字iはラインブロックを区別する数字であり、ここでは0から9のいずれかの整数とする。添字jはトラック位置を区別する数字であり、ここでは0から3のいずれかの整数とする。
【0095】
各トラックTij(i=0,1,2・・・9、j=0,1,2,3)はY方向に複数画素、X方向にはラインブロック内の全ラインを含むように、左右端を超える幅となる所定画素数に設定される。各トラックTijでは、Y方向に読取値を平均化した画像プロファイルを作成する。
【0096】
なお、図3で説明したように、記録紙16内にテストパターン102K、102C、102M、102Yの形成領域とは別にシェーディング補正領域18を設けている場合、シェーディング補正を実施してから、画像プロファイルを作成する。
【0097】
図3のようなチャート形態で、テストパターンの上端位置から所定画素Y方向上にシェーディング補正領域18が存在する場合においては、次のような手順でシェーディング補正を行う。すなわち、まず、図20で説明した方法で計算したテストパターンの上端位置に基づいて、その上端位置を基準にシェーディング補正領域18を決定する。そして、シェーディング補正領域18においてY方向にRGB信号を夫々X位置毎に平均値を計算し、その平均値が所定値(白規定レベル)になるようにRGBチャンネル毎にゲイン補正値(乗算係数)をX位置毎に計算する。読取画像全体にシェーディング補正(ゲイン補正値をX画素位置毎に乗じる)を実施してから、画像プロファイルを計算する。
【0098】
ここでいう画像プロファイルの作成は、必ずしもテストパターン位置決定(図20〜23)に使用したチャンネルに限定されない。Cインクのパターンに対してはR又はGチャンネル、Mインクのパターンに対してはR又はGチャンネル、YインクのパターンではBチャンネル、KインクのパターンではR又はG又はBチャンネルを使用することができ、複数チャンネルの処理結果を組み合わせて使用することもできる。なお、ここでは、説明を簡単にするために、1チャンネルのみを使用する例を説明する。
【0099】
図24は、1トラックから得られる画像プロファイルの実例である。図24は、印字解像度が1200[DPI]のノズル51を有するヘッド50によって印字した1オン9オフのラインパターンを、読取解像度477[DPI]の読取装置によって読み取った結果を示す図であり、読取画素位置が3500〜4000における読取階調値の原信号を示している。また、図24には、各ノズルの実際の着弾位置誤差を同時に表示している。
【0100】
図24によれば、画像プロファイルは、変化に周期性がある。着弾位置誤差の大きいところでは、画像プロファイルの規則性が乱れており、プロファイルの規則性の乱れと着弾位置誤差の大きさが比例関係にあることが推量される。
【0101】
図25は、図24に示した読取結果(パターンの読取画像)について、読取画素4画素毎に表示した図(MOD系列の画像プロファイル)である。すなわち、図25は、PP=10、PS=4としたときのMOD系列毎のプロファイルIsq(q=0,1,2,3)を示すグラフである。図25は、WS=25400/477[μm]、ΔP=1.33の例を示しており、同図からからわかるように、MOD系列毎のプロファイルIsqは、大きな周期性を持って変化している。この周期Tは、図16(b)に示すように、159[画素]である。
【0102】
図26は、シェーディング補正領域18によるシェーディング補正が未実施の場合の画像プロファイルである。図26の上側にMOD系列毎の原信号のプロファイルを示した。図26はシェーディング補正がかかっていないため白地の階調値が変動している。また、図26に示したデータは、読取装置としてフラットベットスキャナではなく、インクジェット印刷機の用紙搬送経路に設置したインラインセンサを用いて読み取った読取画像から得られたものである。インラインセンサは、記録媒体(用紙)を保持・搬送する手段としてのドラムの周面に対向して配置されており、ドラム上にグリッパー(咥え爪)で用紙先端部を拘束し、用紙下部は固定せずに(後端側はフリーな状態で)、当該用紙上のテストパターンを読み取る。こうして得られる読取画像の画像プロファイル(図26)は、白地相当の階調値がX方向の画素位置で変動し、さらに、読取装置側の特性(レンズ特性など)によってCTF(contrast transfer function)がX方向内で変化しているため、白地と黒の階調差が変動している。このような変動成分は、後述の補正処理(図35〜図37)によって補正される。
【0103】
図27は、図18のステップS26に示した「画像プロファイルに基づく不良吐出ノズル検出処理」のフローチャートである。図27の処理がスタートすると、まず、各トラックの画像プロファイルに基づく処理を行い、各トラック毎に同じノズルから吐出したテストパターン(同じライン)を解析する(ステップS52)。次に、同じラインブロックに属する各トラック間の結果を統合(統計処理)し(ステップS54)、ラインブロック内の相対ノズル番号を印字ヘッド上のノズル番号(絶対ノズル番号)に変換する(ステップS56)。
【0104】
同じラインパターンを複数トラック(Y方向に位置が異なる複数のトラック、図23では4つのトラック)で計算する理由は、印字時及び/又は読取時時の用紙送りに蛇行が発生すると、画像内のラインに歪みが生じてラインをY方向に平均化(1ブロックにわたってY方向に平均した画像プロファイルを作成)すると、検出精度が低下するためである。
【0105】
図23で説明したように、ラインブロックをY方向に複数分割したトラック単位で、短冊状に細かく処理することで、蛇行の影響を低減し、同時に読取ノズル等の外乱を低下させることができるため、複数トラックによる検出を実行することが望ましい。
【0106】
また、Kインクのように、複数チャンネルの使用が可能な場合、RGB各チャンネルで処理した結果をさらにRGB間で統計処理することにより、一層外乱に強い検出が可能になる。
【0107】
図28は、図27のステップS52で示した「各トラックの画像プロファイルに基づく処理」のフローチャートである。図28のフローは、画像プロファイル初期解析処理(ステップS61)、プレフィルタ処理(ステップS62)、画像プロファイル分割処理(ステップS63)、画像プロファイル補正処理(ステップS64)、平均プロファイル計算処理(ステップS65)、検出閾値設定処理(ステップS66)、画像プロファイル期待値計算処理(ステップS67)、不良ノズル判定処理(ステップS68)を有する。
【0108】
各処理工程(ステップS61〜S68)の詳細を図29〜47で説明する。
【0109】
(画像プロファイル初期解析処理)
図29は、画像プロファイル初期解析処理のフローチャートである。この処理は、不吐出や着弾位置誤差が過度に大きいノズルの読取結果を取り除き、画像プロファル補正や画像プロファイル期待値を精度よく求めるための前処理である。
【0110】
処理の説明に用いる記号の定義は次のとおりである。画像プロファイル原データをIP(X)とする。Xは画像上のX座標と同じピッチである。読取画像の解析ピッチをn_mod(読取画素単位)とする。画像プロファイルをn_modおきに解析する場合はSで表記する。n_mod内の相対順序をQで表すと(ただし、Qは0からn_mod−1までの整数)、X=n_mod×S+Qの関係がある。例えば、n_mod=4[画素]のときQは{0,1,2,3}のいずれかである。
【0111】
図30は、テストパターンとMOD系列の関係を示す模式図である。解析ピッチn_mod[画素]内の画像プロファイルをみると、1解析ピッチ内(n_mod)に必ず白地と黒(ライン)が一組含まれている。
【0112】
したがって、このn_mod内の最小値と最大値の値から大雑把に不吐出を見つけることができる。例えば、最小値と最大値の差が所定の判定基準値よりも小さい場合、黒(ライン)が欠落している(不吐出である)と判断される。或いはまた、n_mod内の平均値(すなわち、同じSのQ=0,1,2・・・n_mod−1の範囲の平均値)を用いても、上記同様に、大雑把に不吐出を見つけることができる。
【0113】
図29のフローでは、プロファイルIP(X)について(ただし、X=0,…,Xn−1、n=n_mod×m、mは0以上の整数)、n_modを1組とするIP(n_mod×S+0),・・・,IP(n_mod×S+n_mod−1)(S=0,1・・・,Sm−1)内で、最大値IPmax(S),最小値IPmin(S),平均値IPave(S)を計算して、最大値と最小値の差IPdrange1(S)並びに、最大値と平均値の差IPdrange2(S)を、すべてのSについて求める(ステップS72)。
【0114】
そして、IPdrange1(S)の平均値に所定比率1を乗算して閾値ThDrange1を決定し、IPdrange2(S)の平均値に所定比率2を乗算して閾値ThDrange2を決定する(ステップS74)。ここでいう「所定比率1」、「所定比率2」の値は、平均値に対して、どの程度の値を閾値として設定するかを定めるための係数である。
【0115】
これら閾値ThDrange1、ThDrange2とIPdrange1(S)、IPdrange2(S)を比較して、IPdrange1(S)<ThDrange1、IPdrange2(S)<ThDrange2のうち少なくとも一方を満たすことになるSについて(n_modを1組とする単位で不吐出と推定される位置に)、プロファイルフラグIPFlag(S)にフラグを立てる(ステップS76)。このフラグは次のプレフィルタ処理(図28のステップS62、図31のフローチャート)で利用される。
【0116】
なお、本例では、IPdrange1(S)<ThDrange1とIPdrange2(S)<ThDrange2の両不等式の観点で判断しているが、いずれか一方のみを用いて簡易に判定することも可能である。
【0117】
(プレフィルタ処理)
図31はプレフィルタ処理(図28のステップS62)のフローチャートである。プレフィルタ処理は、不吐出又は着弾位置誤差が大きいノズルの読取結果を取り除き、画像プロファイル補正や画像プロファイル期待値を精度良く求めるための処理である。画像プロファイル初期解析でフラグを立てたデータを取り除き、さらに周辺の平均値と再度比較して平均値と大きくずれたものについてデータの置き換えを行い、位置誤差が大きいノズルの影響を取り除く。処理はMOD系列毎に実行する。処理内容は、フラグの立っているデータを取り除いて、注目画素を中心にして所定幅でデータを解析するものである。
まず、プロファイルIP(X)のうち、それぞれn_modおきのプロファイルを取り出し、MOD系列ごとのプロファイルIPQ(S)=IP(n_mod×S+Q)(ただし、Q=0,・・・,n_mod−1)に分け、Sについて所定幅の範囲をIPFlag(S)にフラグが立っていない部分の和Spと、フラグが立っていないデータ数Np(正常なものの数)を求める(ステップS81)。フラグが立っていないデータ数Npを所定数と比較し(ステップS82)、Npが所定数よりも大きい場合は(ステップS82でNO判定時)、フラグが立っていない部分の平均値AvEp=Sp/Npを計算する(ステップS83)。注目画素Sにフラグが立っているか否かを判定し(ステップS84)、フラグが立っている場合は、当該注目画素の値を平均値AvEpに置き換える(ステップS87)。つまり、本プレフィルタ処理後のプロファイルIPPre(S)をAVEpとする。
【0118】
一方、ステップS84にて、注目画素にフラグが立っていない場合、平均値AvEpとIPQ(S)の差分の絶対値Dpを求め(ステップS85)、この絶対値Dp=|AvEp−IPQ(S)|が所定閾値よりも大きい場合(ステップS86でNO判定時)、同様に、平均値に置き換える(ステップS87)。
【0119】
つまり、平均値への置き換えは、注目画素のフラグが立っている(画像プロファイル初期解析で不吐出と推定されている)場合、又は、注目画素の周辺で計算された平均値から大きくずれている(位置誤差が大きいか、ノイズ等の影響がある)場合に行われる(ステップS84〜S87)。
【0120】
ステップS82でフラグが立っていないデータ数Npが所定数よりも小さい場合、周囲に不吐出他のデータが多いため、データの置き換えをしない(ステップS88)。つまり、n_modおきのプロファイルのプレフィルタ処理後のプロファイルIPPre(S)をIPPre(S)=IP(S)とする(ステップS88)。
【0121】
(画像プロファイル分割処理)
図32は画像プロファイル分割処理(図28のステップS63)のフローチャートである。画像プロファイル分割処理は、図25で説明したMOD系列(4系列)のうち最も小さな値となる系列が一定の順番で入れ替わっていくときの系列が切り替わる範囲を特定する処理である。つまり、MOD系列のなかでどの系列の読取画素が実際のライン(ラインの実体)にもっとも近いものであるかを特定する。4つの画素の並び(n_mod)のうち、最も濃いところが実体の線に最も近いので、それは4つの画素のうち何番目であるかを特定することに相当する。こうして、各系列が最小値となる範囲を特定し、同時に、最小値を決定できない位置(例えば、不吐出、位置誤差が大きい、ノイズの影響など、プレフィルタ処理で除去しきれないものが残っている可能性がある)を特定する。
【0122】
図32の処理がスタートすると、まず、プレフィルタ処理後の画像プロファイルIPPre(X)について(ただし、X=0,…,Xn−1、n=n_mod×m、mは0以上の整数)、n_modを1組とするIPPre(n_mod×S+0),・・・,IPPre(n_mod×S+n_mod−1)(S=0,1・・・,Sm−1)内で、最大値IPPmax(S)、最小値IPPmin(S)、平均値IPPave(S)を計算して、最大値と最小値の差IPPdrange1(S)並びに、最大値と平均値の差IPPdrange2(S)を、すべてのSについて求める(ステップS91)。
【0123】
そして、下記判定式1にしたがって、IPPdrange1(S),IPPdrange2(S)をそれぞれ閾値ThDrange1,ThDrange2とを比較する(ステップS94)。
【0124】
判定式1={IPPdrange1(S)<ThDrange1
またはIPPdrange2(S)<ThDrange2}
判定式1中の不等式のいずも満たさない場合(ステップS94にてNO判定時)、IPPre(n_mod×S+Q)(Q=0,1・・・,n_mod−1)のなかで最小値となるQを求め(ステップS96)、このQの値を画像分割インデックスIPPreIndex(S)に格納する(ステップS96)。
【0125】
ステップS94にて、判定式1中の不等式のうち少なくとも1つを満たす場合(ステップS94にてYES判定時)、画像分割インデックスIPPreIndex(S)に不定値Invalid_levelを格納する(ステップS97)。
【0126】
こうして判定式1による判定結果を格納したインデックスIPPreIndex(S)を得る。その後、図33の処理に進み、このIPPreIndex(S)上で最小値の系列が一定画素連続した後で変化する特性に基づいて、多数決処理を行う(ステップS98)。すなわち、注目画素を中心にして所定幅内(あるウインドウ内)で多数を占める最小値を決定し、注目画素の値を、当該多数を占める最小値で置き換える処理を行う。この処理により、既述のプレフィルタ処理で取りきれなかった、不吐出、位置誤差が大きいデータ、ノイズの影響など(不定値または最小値が突発的に入れ替わることが起きる孤立データ)を取り除き、画像プロファイルの最小値(分割位置)を正確に求めることができる。なお、ステップS98における多数決処理では不定値Invalid_levelを除いて行う。
【0127】
こうして、MOD系列別の最小値に注目して画像プロファイルを分割することで、画像解析のセット(n_mod)内で、どの位置(Qで表わされる位置)が最もライン中心に近いかが容易に把握できる。この最もライン中心に近い画素位置を順次追いかけることで1ブロック内のノズル番号と画素位置の関係を正確に求めることができる(図30参照)。
【0128】
図34は、画像プロファイルを分割した結果を示す図である。同図には、最小値となるMOD系列のQの値(左側の縦軸)が同時に表示されている。最小値となるMOD系列の変化点(Qの値が変化する点)が分割位置を示している。
【0129】
(画像プロファイル補正処理)
図35〜図37は、画像プロファイル補正処理のフローチャートである。この処理は読取画像内のX方向の白地階調値の変化とX方向のCTF変化(白地階調値と黒階調との差分)を補正する。
【0130】
最初にX方向内の黒階調の分布を求める。画像プロファイルを分割した1つの範囲では最小値の系列内の階調値の最小値がCTFと相関している。図35のステップS102では、画像分割インデックスIPPreIndex(S)の変化点(図34にて階段状に変化するMOD系列Qの変化点)から画像プロファイル分割範囲を求める。つまり、IPPreIndex(S)に格納されている最小値系列Qが変化する位置Sxを画像分割位置IPPreIndexPosition(V)に格納する(ステップS102)。ただし、Invalid_levelへの変化は除いて処理する。
【0131】
次に、ステップS104では、分割範囲内の最小値系列Qを求める。このとき、単純にプレフィルタ処理後の画像プロファイル上で最小値を求めると、その部分に不吐出等があると補正精度が低くなるので、分割範囲内のヒストグラムを計算して、黒階調に近い累積パーセント点を最小値に対応する階調値として扱う。つまり、黒に対応する代表点を決めている。具体的には、前記分割範囲内の中心(Sv=(Si+Sk)/2)に前記累積パーセント点に対応する階調値を対応させ(ステップS104)、X方向分布を求めるために他の位置は補間処理で黒階調値相当を計算する(ステップS106)。黒階調の変化は光量分布とセンサCTF(主としてレンズ起因)が原因なので低周波分布である。したがって更にスムージング処理を行う(ステップS108)。
【0132】
別の見方をすると、ライン濃度が一定にして作成したテストパターンを読み取ることで読取装置のCTF分布を測定することも可能である。
【0133】
ステップS104では、画像分割位置IPPreIndexPosition(Vi)(=Si)からIPPreIndexPosition(Vi+1)(=Sk)の範囲について、当該範囲に対応する最小値をQとすると、最小値Qに対応するプレフィルタ処理後のIPPre(n_mod×S+Q)(=IPPre(S))の累積ヒストグラムを計算し(S=Si,・・・,Si+1)、累積ヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値を求めて、黒ポイントデータIPPreBlack(S)へ格納する。
【0134】
このとき、分割位置SiからSkの範囲の中心Sv=(Si+Sk)/2の黒ポイントデータIPPreBlack(Sv)に対して累積ヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値(黒に相当する代表値)を格納する。
【0135】
ステップS106では、黒ポイントデータのIPPreBlack(S)のうち、データが格納されていない部分を所定の補間法によって補間データを作成して各位置Sに対応づけて格納する。
【0136】
ステップS108では、上記得られたIPPreBlack(S)を所定幅でスムージング処理して滑らかな分布にする。
【0137】
次に、X方向の白地階調の分布を求める。図36は、白地階調の分布を求める処理のフローチャートである。画像プロファイル分割処理(図32)のステップS92で先に計算しておいたプレフィルタ処理後のn_mod単位の最大値データIPPmax(S)は白地読取結果を反映しているので、これを所定幅でスムージング処理を行って白地分布とする(図36のステップS110)。すなわち、スムージング処理の結果を白ポイントデータIPPreWhite(S)へ格納する。
【0138】
図37は、図35の処理で得られた黒ポイントデータと図36の処理で得られた白ポイントデータを用いて画像プロファイルを補正する処理のフローチャートである。図37のフローチャートでは、各位置の白地階調値と黒階調値に対して、補正処理後にそれぞれが一定値になるように目標値ImaxCorrectionLevel、IminCorrectionLevelを設定して階調値を線形補正する補正係数Gain(S)とOffset(S)を計算して(ステップS112)、プレフィルタ処理後の画像プロファイルIPPre(X)と原画像プロファイルIP(X)を補正する(ステップS114、S116)。
【0139】
ステップS112では、白ポイントテータIPPreWhite(S)と黒ポイントデータIPPreBlack(S)から、次式にしたがって、プロファイル補正としてのプロファイル補正ゲインGain(S)(掛け算係数)と、プロファイル補正オフセットOffset(S)(足し算する定数成分)とを計算する。
【0140】
Gain(S)=(ImaxCorrectionLevel−IminCorrectionLevel)/(IPPreWhite(S)−IPPreBlack(S))
Offset(S)=−IPPreBlack(S)×Gain(S)+IminCorrectionLevel
ステップS114では、ステップS112で求めたプロファイル補正係数(Gain(S)、Offset(S))を用いて、プレフィルタ処理後のプロファイルIPPre(n_mod×S+Q)(Q=0,・・・,n_mod−1)を次式にしたがって補正する。
【0141】
IPPreCorrected(n_mod×S+Q)=IPPre(n_mod×S+Q)×Gain(S)+Offset(S)
ステップS116では、原画像プロファイルIP(n_mod×S+Q)(Q=0,・・・,n_mod−1)を次式にしたがって補正する。
【0142】
IPCorrected(n_mod×S+Q)=IP(n_mod×S+Q)×Gain(S)+Offset(S)
図37の補正処理を行うことにより、図38に示すように、白レベルと黒レベルが概ね一定に揃ったプロファイルが得られる。
【0143】
(平均プロファイル計算処理)
図39は、平均プロファイル計算処理のフローチャートである。本処理の目的は、最終的に「期待値曲線」とよばれる滑らかなプロファイルを得ることにある。
【0144】
プレフィルタ処理で不吐出等に対応して定められた不定値Invalid_levelは、画像プロファイル期待値を計算するときに精度低下を引き起こすため、代替値を求める必要がある。また、画像プロファイルの端部で期待値を計算するときに、その先のデータが存在しないため代用値が必要になる。この代替値や代用値を求める基データとして平均プロファイルを用いる。平均プロファイルは画像プロファイルの平均的な特性として計算される。
【0145】
図39は平均プロファイルを得るための処理である。画像プロファイル分割した分割範囲においては、MOD系列は順次交代しながらほぼ同じ特性変化が連続している。この性質を利用して順次画像プロファイル分割単位(分割範囲内)のn_mod種の補正後のプレフィルタ処理後プロファイルを累積していく。
【0146】
図40は、図39のフローによって得られる平均プロファイルの例を示したものである。
【0147】
一つの系列(図40においてMOD0系列と表示)は、最小値を示す極小点を持つ下に凸の曲線(凹状の曲線)である。他の一つの系列(MOD1系列と表示)は右下がり、他の一つの系列(MOD2系列と表示)は右上がり、残りの一つの系列(MOD3系列と表示)は、変化の少ない概ね平らな曲線である。
【0148】
図38を見ると判るように、MOD系列ごとのプロファイルは、図40で示した4種の平均プロファイルが順番に並んで系列が順番に入れ替わっていくものであり、基本的なプロファイルの波形(形)は共通している。つまり、図40で表示したMOD0系列→MOD3系列→MOD2系列→MOD1系列→MOD0系列・・・の順で系列が入れ替わりながらつながっていくプロファイル波形となっている。
【0149】
ただし、X方向の長さ(振れ幅)に関しては、それぞれローカリティがある。ローカリティの原因は、読取解像度の面内ローカリティがあるためである。その分だけ多少X方向に伸び縮みするところを一致させるようにして、累積して平均値(平均プロファイル)を計算する。
【0150】
すなわち、X方向内では画像プロファイル分割単位(分割範囲)の画素数は一定ではない。読取解像度がX方向で変化しなければ画像プロファイル分割単位の画素数は一定であるが、実際の読取装置はレンズ設計や読取時の条件(用紙の浮きなど)が原因で画像プロファイル分割単位の画素数がバラツキを持つ。
【0151】
別の見方をすると、画像プロファイルの分割単位画素数はX方向の解像度分布を反映しているので、用紙浮きなど外乱要因を低減した読み取りを行うことで、読取装置の真の解像度分布を検査することが容易に可能になる。画像プロファイルの分割単位画素数は読取側と印字側のピッチ差に逆比例するので面内の解像度変化の分布を容易に求めることができる。また印字側のピッチが正確であれば非常に正確な解像度を求めることもできる。
【0152】
前記画像プロファイル分割単位の画素数と平均プロファイルの分割周期との差を吸収するために補間処理を行ってから累積を行う。
【0153】
図38、図40では読取ピッチの方が印字ピッチより大きいために、最小値系列Qは順次1小さくなっていく(MOD系列として3→2→1→0→3→2・・・の順で変化する)。これは、読取ピッチが大きいために相対的に印字ライン位置がX方向負の方向にずれるためである。
【0154】
また、プロファイル特性は、図40で説明した平均プロファイルを「0」(MOD4)→「3」(MOD4)→「2」(MOD4)→「1」(MOD4)の順につないで並べた1周期分のプロファイル特性変化を構成している。以上の特性から最小値系列Qに基づいて各プロファイル特性を分類して累積することができる。
【0155】
具体的には、各系列P(P=0、…、n_mod-1 )において(P−Q)MOD(n_mod)を計算すると、最小値系列Qは0、Q+1は1、・・・となり、同じ特性に対してインデックスとなる数字が計算できるため容易に分類できる。平均プロファイルを連結して平均化することで滑らかな平均プロファイルが得られる。
【0156】
図39のフローに沿って説明すると、ステップS122では、平均的なプロファイルの分割周期を所定値n1_ave_profileとする。
【0157】
ステップS124では、画像分割位置IPPreIndexPosition(V)(=Si)から画像分割位置IPPreIndexPosition(Vi+1)(=Sk)の範囲について、この範囲内(nx=Sk−Si)をn_mod種のプロファイル特性(変数Qで異なる)に対して、IPPreCorrected(n_mod×S+Q)(Q=0,・・・,n_mod−1)(S=0,・・・,Sm−1)をn_mod種プロファイル特性として抽出分類する。そして、この分類したn_mod種のプロファイル特性について、データ長を平均的な分割周期n1_ave_profileと等しくなるように、所定の補間法によって補間処理を行い、分割周期n1_ave_profileのプロファイルとして累積する。
【0158】
ステップS126では、ステップS124で得た累積プロファイルを累積数で平均化して、n_mod種のプロファイル特性毎に平均したプロファイルを計算する。この処理によって図40のようなn_mod種の平均プロファイルが得られる。
【0159】
図39のステップS128では、ステップS126で得たn_mod種の平均プロファイルプロファイル特性の連続性に基づいて順番に繋ぎ合わせ、周期n_ave_profile(=n1_ave_profile×n_mod)の連続したプロファイルを作成する。この連続したプロファイルを所定幅でスムージング処理して、平均プロファイルIPAveraged(n_mod×S+Q)を求める。
【0160】
(検出閾値設定処理)
図41は検出閾値設定処理のフローチャートである。この処理の考え方をまず説明する。
【0161】
[1]最小値系列Qが循環して再び同じQに戻るとき、読取解析ピッチと印字ピッチの差が累積して丁度印字ピッチと等しくなったことに対応する。画像プロファイルを分割した単位をn_mod分(本例の場合、4つのMOD系列分)まとめると、丁度1サイクルする。この1周期は実施例では印字ピッチに相当する(1オン9オフの場合、211.6μm)。
【0162】
[2]同じ系列内でSに沿って画像プロファイルは変化するが、この変化は印字ピッチで並ぶ印字ライン(実施例では10ノズル置き)を略ピッチ差分(本例では、1.33μm、ただし、実際には読取装置の解像度がX方向に変化するので一定の精度しかない)だけズラして読み取った結果の変化に対応する。
【0163】
つまり、実際には、略一定間隔で規則的に並ぶラインからなるラインブロックを53.2μmの読取画素で読み取っているが、あるMOD系列のプロファイルに注目して、その中で最も暗い(最小値を与える)画素の隣の画素は、別のラインについて、約1.33μm相当ずれたところを1画素として読み取っている。その隣の画素は、さらに別のラインについて、約1.33μm×2相当ずれたところを1画素として読み取っている。そして、丁度1周期めぐったとき、元の最小値に戻る、という関係にある。すなわち、ラインブロックのデータを取り込んでいるが、MOD系列の繰り返し周期に注目すると、1本のラインのプロファイルに相当するものを取得できていることを意味する。
【0164】
[3]印字側が正確であることを仮定すると、[1]の1周期に相当する画素数は印字ピッチに相当するので(1オン9オフの場合、211.6μm)、検出距離(一例として15μm)に置き換えることができる。
【0165】
換算式: 換算画素数=1周期画素数×検出距離/印字ピッチ
ここでいう、「換算画素数」はプロファイル上の距離(画素数)である。
【0166】
つまり、1周期211.6μmを1周期画素数(本例では159画素)と対応づけ、例えば、本来の位置から15μm(検出距離)だけずれた場合の読取信号の期待値を平均プロファイルから求めることができる。逆に言えば、読取信号の値が輝度値である量だけ変化していたら、平均プロファイルの値から、何μmずれている、ということが判る。
【0167】
[4]換算した画素数分だけX方向にずれた画像プロファイル(実際の読取結果ではなく理想的な読取結果)の階調値は、正確に検出距離分だけ印字ライン上ずれた読み取りに相当する階調値と見なせる。
【0168】
[5]以上から注目画素位置の階調値(理想的な読み取り結果)と換算した画素数分だけずれた位置の階調値(理想的な読み取り結果)に注目すると、注目画素位置の位置誤差によって階調値が変化した実際の読み取り階調値と、理想的な階調値の差がどの程度であれば検出距離に相当するかが判断できる。
【0169】
要するに、1周期分の平均プロファイルを1ライン分のプロファイルの期待値として取り扱い、輝度値(階調値)の変化とライン位置のずれ(着弾位置誤差)を対応づけている。このように期待値のプロファイルから検出閾値を決定することで、読取装置のX方向の解像度変化(ローカリティ、個体差)に影響されない、印字インク特性(インク濃度やインク広がり、また用紙との組合せで生じる光学的ドットゲイン)に影響されない、非常にロバスト性に優れた、精度の高い検出閾値決定が可能になる。
【0170】
既に説明した画像プロファイル補正を行うことで読取装置のCTF変化(ローカリティ、個体差)や読取装置の階調特性にもロバストな検出が可能になる。
【0171】
また平均プロファイル特性(1周期分のプロファイル変化)は印字インク特性(インク濃度やインク広がり、また用紙との組合せで生じる光学的ドットゲイン)を反映しているので、極めて低い解像度で印字ラインのプロファイルを正確に測定することも可能である。
【0172】
処理内容としては、画像プロファイル分割位置と分割範囲を求めて、分割範囲をn_mod倍して分割範囲の中心位置の1周期相当からオフセット画素数を計算する(ステップS132、S134)。そして他の位置Sについては補間とスムージング処理によって滑らかなオフセット画素数分を得る(ステップS136、S138)。
【0173】
図41のフローチャートの各工程に沿って詳細に説明する。
【0174】
ステップS132では、検出しようとする距離(検出距離)の閾値detect_distance[μm]、テストパターンブロック内ピッチpattern_pitch、印字解像度print_dpi[dpi]に基づいて、プロファイル周期に対応する距離profile_lambda_distanceを次式にて求める。
【0175】
profile_lambda_distance=25.4×1000×pattern_pitch/print_dpi
ステップS134では、画像分割位置IPPreIndexPosition(V)(=Si)から画像分割位置IPPreIndexPosition(Vi+1)(=Sk)の範囲について、この範囲に対応するローカルな周期local_lambdaを計算する。そして、このローカルな周期local_lambda=(Sk−Si)×n_modの各Sについて、次式を計算する。
【0176】
IPLocalLambda(S)=local_lambda
このとき、当該範囲の中心位置Sv=(Si+Sk)/2の値に対応させて、local_lambda=(Sk−Si)×n_modの計算結果が格納される。つまり、IPLocalLambda(Sv)=local_lambda (S=Si,・・・,Si+1)とする。
【0177】
また、上記のローカルな周期local_lambdaに基づいて、検出閾値に対応する周期内距離local_detect_distanceを次式にて計算する。
【0178】
local_detect_distance
=local_lambda×detect_distance/profile_lambda_distance
この計算結果を検出比較距離画素数IPDetectDistance(S)(S=Si,・・・,Si+1)へ格納する。このとき、当該範囲の中心位置Sv=(Si+Sk)/2の値として格納する。つまり、IPDetectDistance(Sv)=local_detect_distanceとする。
【0179】
ステップS136では、検出比較距離画素数IPDetectDistance(S)のうち、データが格納されていない部分(Sv以外の部分)を所定の補間法によって補間データを作成して、各位置Sへ格納する。同様に、ローカル周期IPLocalLambda(S)(S=Si,・・・,Si+1)についても、データが格納されていない部分を所定の補間法によって補間データを作成して各位置Sへ格納する。
【0180】
ステップS138では、ステップS136で得た検出比較距離画素数IPDetectDistance(S)を所定幅でスムージング処理する(図42参照)。同様に、ローカル周期IPLocalLambda(S)についても所定幅でスムージング処理を行う。
【0181】
図42は、MOD系列画像プロファイル期待値とオフセット画素数を示している。オフセット画素数の分布が一定値にならないのは、読取装置の解像度のローカリティがあるためである。このオフセット画素数は、何画素ぐらいオフセットした位置の値を参照するかというものであり、ローカリティに対応して、オフセット画素数が変化している。
【0182】
(画像プロファイル期待値計算処理)
図43は画像プロファイル期待値計算処理のフローチャートである。プレフィルタ処理した補正後の画像プロファイルのうち、不定値となっている部分と端部については平均プロファイル特性に基づいて代替値を求める(ステップS142、S144、S146)。
【0183】
代替値を代入した後でスムージング処理して画像プロファイル特性の期待値分布を得る(ステップS148)。なお、スムージング処理の一例として、例えば、係数重み分布が−EXP((S−S0)/λ)に比例したローパスフィルタを用いることができる。
【0184】
他に画像プロファイルの期待値の計算方法としては、適切な画素数(1例として画像プロファイル分割範囲)で区切り、前記範囲を最小自乗近似(次数は2や3など)するなど他の方法も適用可能である。なお、連続性を担保するために切り替え位置ではオーバーラップして計算し、オーバーラップ範囲では所定の重み付き平均を併用する。
【0185】
図43のフローチャートの各工程を説明すると、ステップS142では、プレフィルタ処理した補正後の画像プロファイルIPPreCorrected(n_mod×S+Q)を期待値プロファイルIPExpectation(n_mod×S+Q)(S=−Ne,−Ne+1,・・・,0,・・・,Sm−1,・・・,Sm+Ne−1)へ代入する。
【0186】
ここでいう「Ne」は、次のとおりである。すなわち、後述するステップS148の処理では、スムージング処理をローパスフィルタ(LPF)で実装した場合、データ列の両端に、プレフィルタ処理では存在しないデータの参照が必要になる。
【0187】
そのために、Ne個のデータを、平均プロファイル(図39のステップS128で求めたIPAveraged(n_mod×S+Q))と端部の情報に基づいて外挿する。外挿は両端で実施する。Neの内訳は、期待値プロファイル上で参照する最大画素数(S上の画素数)とスムージング処理で参照する画素数の和になる。
【0188】
期待値プロファイル上で参照する最大画素数は、最大でも近接する1周期分の(S上の画素数)とする。その理由は、1周期以上は位置誤差換算で211.6μm以上(実施例の477DPIで1オン9オフの場合)になるので、実用上意味がないからである。
【0189】
ステップS144では、画像分割インデックスIPPreIndex(S)で不定値となっているSについて、平均プロファイルIPAveraged(n_mod×S+Q)(S=0,・・・,n_ave_profile−1)上の対応するデータを所定の補間計算で求めて、期待値プロファイルIPExpectation(n_mod×S+Q)に代入する。このときの補間計算では、ローカル周期IPLocalLambda(S)に対して、平均プロファイル周期n_ave_profileに一致させる。
【0190】
ステップS146では、期待値プロファイルIPExpectation(n_mod×S+Q)(Q=0,…,n_mod−1)(S=−Ne,−Ne+1,・・・,0,・・・,Sm−1,・・・,Sm+Ne−1)のS<0とS>Sm−1の範囲について、平均プロファイルIPAveraged(n_mod×S+Q)(Q=0,…,n_mod−1)(S=0,・・・,n_ave_profile−1)上の対応するデータを所定の補間計算で求めて、期待値プロファイルIPExpectation(n_mod×S+Q)に代入する。このときの補間計算では、ローカル周期IPLocalLambda(S)に対して、平均プロファイル周期n_ave_profileに一致させる。
【0191】
ステップS148では、ステップS146で得た期待値プロファイルIPExpectation(n_mod×S+Q)を所定のスムージング処理する。
【0192】
(不良ノズル判定処理)
図44は不良ノズル判定処理のフローチャートである。一つのプロファイルの中で、初期値(例えば0番)からノズル番号を順次増加させながら、最小値系列Qを追跡していく(ステップS151〜156)。基本的には、n_modずつ番号をずらしていくが、Qが変化したところでは、プロファイルの切替点に相当しているため、Q=0からQ=n_mod−1へ変化する場合はSを1増加させる(n_mod=4画素増やすと)とノズルとの対応がずれるため補正する(補正のためSを1減少する。)。逆に、仮に、Q=n_mod−1からQ=0へ変化する場合は、Sを1増加するだけではノズルとの対応がずれるため補正する(補正のため更に1増加する)(ステップS154)。
【0193】
図44のフローチャートの各工程を説明すると、ステップS151では、初期値S0(=0)に対応するノズル番号NZを初期値(=0)とする。
【0194】
ステップS152では、ノズル番号の割り当てが終了したか否かの判定を行う。ステップS152で未終了であれば(NO判定時)、ステップS153に進み、ノズル番号NZを1増加、位置Sを1増加する。
【0195】
ステップS154では、画像分割インデックルIPPreIndex(S)と画像分割位置IPPreIndexPositon(Vi)に基づいて、位置Sに対応する最小値となるQ(Q=0,・・・、n_mod−1)を求める。ただし、直前のQであるQbについて(位置S−1で最小値としたQbについて)、Q−Qb<−n_mod/2ならば位置Sをさらに1増加する。また、Q−Qb>n_mod/2ならば位置Sをさらに1減少する。
【0196】
ステップS155では、後述の不良ノズル判定サブルーチンの処理(図45)を行う。
【0197】
ステップS156では、ステップS154の工程で用いるQbの値を「Q」に更新し、ステップS152へ戻る。ノズル番号が終了するまで、ステップS152〜S156の工程が繰り返され、ノズル番号が終了すると、ステップS152でYES判定となって、終了する。
【0198】
図45は不良ノズル判定サブルーチン(図44のステップS155)のフローチャートである。最小値系列Qが印字ラインの中心に相当し、且つn_mod画素分が1つの印字ライン(1ノズル)に相当するので、Qを中心にn_mod/2の範囲(n_mod=4の場合、中心から±1の範囲)の画像プロファイルが1ノズルに対応する。補正処理後の画像プロファイルの実際の値と期待値との差分HPF(X)を計算し(ステップS162)、着弾位置ずれがX方向プラス側にずれた場合とマイナス側にずれた場合に分類して検出を行う(ステップS166、S168)。
【0199】
また、不良ノズルとしては不吐出ノズルも検出対象なので、所定閾値とHPF(X)とを比較する(ステップS164)。
【0200】
図45の各工程を説明すると、ステップS162では、X=S+Qを中心にして、−n_mod/2+S+Q≦X,X<S+Q+n_mod/2の範囲において、期待値プロファイルIPExpectation(X)と補正後プロファイルIPCorrected(X)に基づいて、期待値差分HPF(X)=IPCorrected(X)−IPExpectation(X)、検出オフセット画素数detect_offset=IPDetectDistance(S)、判定プラス側閾値ThPlus(X)=IPExpectation(X+detect_offset)−IPExpectation(X)、判定マイナス側閾値ThMinus(X)=IPExpectation(X−detect_offset)−IPExpectation(X)をそれぞれ求める。
【0201】
判定プラス側閾値ThPlus(X)と、判定マイナス側閾値ThMinus(X)は、期待値プロファイル上で検出オフセット画素数だけずらした値と、期待値プロファイルとの差分を計算して求めている(図46参照)。
【0202】
ステップS164では、X=S+Qを中心にして、−n_mod/2+S+Q≦X,X<S+Q+n_mod/2の範囲において、HPF(X)と所定閾値とを比較して、HPF(X)が所定閾値よりも大きければ(HPF(X)>所定閾値の判定式1を満たす場合に)、ノズルNZを不良と判定する。
【0203】
ステップS164で不良と判定されなかった場合に限り、次のステップS166に進む。
【0204】
ステップS166では、プラス側の閾値について判定を行う。すなわち、X=S+Qを中心にして、−n_mod/2+S+Q≦X,X<S+Q+n_mod/2の範囲において、本例では、Qを中心にして、Qと、Q−1、Q+1の3つの画素の強度を評価するが、それぞれ3つの閾値が存在することになる。ノイズ等の外乱の影響を低減するために、これら3つの閾値を累積する。具体的には、プラス側の判断については、プラス側を全て累積する。このとき各閾値が全てプラスになるように、符号を変えながら、3つのデータを累積する。その結果、累積した閾値と、累積したHPF(X)の大小関係で判断する。
【0205】
つまり、判定プラス側閾値ThPlus(X)が正のときは、SumThPlusにThPlus(X)の値を足し、判定プラス側閾値ThPlus(X)が非正のとき(マイナスのとき)は、ThPlus(X)の符号を反転して、(−ThPlus(X))として、SumThPlusに足し込む。こうして、符号を揃えながらすべて正の値として累積する。
【0206】
期待値差分HPF(X)についても、同様に符号を揃えて累積し、SumHPFPulsを計算する。そして、「SumHPFPlus>SumThPlus」の不等式(判定式2)を満たす場合に、ノズルNZを不良と判定する。
【0207】
ステップS166で不良と判定されなかった場合に限り、次のステップS168に進む。
【0208】
ステップS168では、マイナス側の閾値についての判定を行う。マイナス側についてもステップS166と同様に、判定マイナス側閾値ThMinusが正のときは、SumThMinusにそのまま累積し、判定マイナス側閾値ThMinusが非正のときは、符号を反転して(−ThMinus(X))として累積する。このとき、HPF(X)の符号も同時に反転して、SumHPFMinusに累積する。
【0209】
こうして、累積した閾値SumThMinusと、累積した値SumHPFMinusの大小関係でノズル不良を判断する。すなわち、「SumHPFMinus>SumThMinus」の不等式(判定式3)を満たす場合に、ノズルNZを不良と判定する。
【0210】
図45のフローチャートでは、ステップS164→S166→S168の順番に沿って、段階的に判定を行う例を示した。判定の順番は特に限定されない。いずれかの判定でノズル不良と判定したら、以後の判定を省略することができるが、全ての判定を行うことも可能である。
【0211】
また、本例のフローチャートでは、検出閾値のプラス側最大値、検出閾値のマイナス側最大値、並びにHPF(X)の最大値の3つの指標を組み合わせて、段階的に不良ノズルを判定するが、n_modあるデータのうち最大値(検出閾値のプラス側最大値、検出閾値のマイナス側最大値、HPF(X)の最大値)の1データで比較して判定することも可能である。
【0212】
なお、図45の処理において、読取画像並びに周辺の着弾位置ずれ(プレフィルタで影響は低減しているが完全にはなくならない)の影響で検出精度が低下することがある。図45のフローチャート上ではn_mod個の各データで判定を累積して外乱の影響を低減している。また、同フローでは不等式(判定式1〜3のいずれか)を満たした場合に不良判定を実施している。これはトラック数が1の場合に相当する説明である。トラックが複数の場合やRGBのうち複数チャンネルで計算する場合には、不等式で判断する代わりに、下記のようなプラス側閾値評価値、マイナス側閾値評価値、強度評価値を計算してもよい。
【0213】
プラス側閾値評価値=(SumHPFPlus / SumThPlus)×100[%]
マイナス側閾値評価値=(SumHPFMinus/ SumThMinus)×100[%]
強度評価値={max(|HPF(X)|)/所定閾値}×100[%]
すなわち、プラス側閾値評価値として、累積合計したHPF(X)の結果SumHPFPlusを累積合計した閾値SumThPlusで割り算して(さらに、必要に応じて、百分率で表し)、閾値に対して何%ぐらい満たしているかという観点の値を計算してもよい。マイナス側閾値評価値も同様に定めることができる。
【0214】
また、プラス側閾値評価値、マイナス側閾値評価値の他に、もうひとつ、強度評価値として、HPF(X)の絶対値が最も大きいものmax( | HPF(X)| ) を所定閾値で割って、何%くらい満たしているかという観点の値を計算する。これら3つの評価値を計算してノズル番号と対応付けて記憶する。
【0215】
上記ノズル番号はラインブロック内では初期値から1だけ増加する相対的なノズル番号である。
【0216】
この後で、それぞれのトラックごとに、各相対ノズルごとに、3つの評価値の何%という値が求まっているので、トラック間でこれらの平均値をとって、最終的に、100%を超えたものがあるか否か、という観点で判定をする。
【0217】
このように、複数トラックを計算する場合、トラック毎に、プラス側閾値評価値、マイナス側閾値評価値、強度評価値の3つの評価値を並列に計算し、それらの結果を統計処理して判定することができる。
【0218】
(トラック間の統計処理)
図47は、同じラインブロックに属するトラック間の統計処理(図27のステップS54)のフローチャートである。図47では、複数トラック間の検出結果を統計処理する。ここでは、既述したプラス側閾値評価値、マイナス側閾値評価値、強度評価値の3つの評価指標を各検出トラック内で計算し、その結果を平均化して再判定を行う(ステップS202、S204)。
【0219】
すなわち、ステップS202では、プラス側評価指標(プラス側閾値評価値)、マイナス側評価指標(マイナス側閾値評価値)、強度評価指標(強度評価値)をそれぞれ相対ノズルごとにトラック間で平均化する処理を行う。
【0220】
そして、ステップS204では、各相対ノズルについて、下記判定式1〜3のうち、数なくとも1つの条件を満たすノズルを不良ノズルと判定する。
【0221】
(判定式1):プラス側評価指標平均値>プラス側評価閾値
(判定式2):マイナス側評価指標平均値>マイナス側評価閾値
(判定式3):強度評価指標平均値>強度指標閾値
なお、「プラス側」、「マイナス側」の概念については注意を要する。実際の印字パーン上のプラス方向、マイナス方向とは必ずしも一致しない。図46に示したように、プロファイルの傾きの中での「画素数」の観点でプラス側、マイナス側を表す。実際の実パターン上で見ると、「プラス」、「マイナス」が逆の関係になりうる。例えば、読取ピッチが長い場合は、実際の読取画像上のX座標とは符号関係が違っている。逆に、読取解像度が484DPIなど、読取ピッチの方が短くなると、その符号関係がまた逆になって、実際のパターンのX座標の符号関係が一致するようになる、という特殊な関係がある。このように、図47でいう「プラス側」、「マイナス側」とはアルゴリズム上でいう「プラス側」、「マイナス側」という概念であり、この点は実座標との関係で注意を要する。
【0222】
(相対ノズル番号から絶対ノズル番号への変換処理)
上述した各ラインブロックの処理における「ノズル番号」はラインブロック内では初期値から1だけ増加する相対的なノズル番号(相対ノズル番号)である。図47で説明したトラック間の統計処理(図27のステップS54)の後、図27のステップS56にて、各ラインブロック上の相対ノズル番号を絶対ノズル番号に変換する処理が行われる。各ラインブロックのレイアウトパターンと1オンNオフの情報から、各ラインブロック上の相対ノズル番号をヘッド上のノズル番号(絶対ノズル番号)に換算する。
例えば、1オン10オフで、記録紙の上から下へ向かって1ノズルだけX方向にずれたテストパターンである場合、上からJ番目のラインブロックには、「ヘッド上のノズル番号=先頭ノズル番号+J+10×相対ノズル番号」の換算式にしたがって、ノズル番号が付与される。
【0223】
<距離計算のフロー>
上述の実施形態では、不吐出ノズル、あるいは、着弾位置誤差が所定の判定基準よりも大きいか否かを判断して、不良ノズルを検出する例を述べた。ここでは、上記の検出技術を応用して、着弾位置の誤差(距離)を測定する実施形態について説明する。
【0224】
図48〜図49は、距離計算の処理のフローチャートである。この処理は、不良ノズル判定とは異なり、各ノズルの着弾位置誤差を距離として測定するフローである。図28のステップS68に代えて、「ノズル着弾位置誤差測定処理」の工程を設け、当該「ノズル着弾位置誤差測定処理」の処理内容として、図48〜図49のフローが採用される(図44〜図45に代えて、図48〜図49を採用する)。
【0225】
距離計算の原理としては、上述した不良ノズル判定のアルゴリズムにおいて、複数の閾値を用意しておき、どの閾値を超えたのか、を判定することによって、閾値の刻みの範囲でそのノズルの距離(着弾位置誤差)を測定する。
【0226】
図48のフローチャートにおけるステップS301〜S304、S306は、図44のステップS151〜S154、S156とそれぞれ共通するため、説明は省略する。
【0227】
図49は、距離計算サブルーチン(図48のステップS305)のフローチャートである。図49に示した計算フローは、距離判定オフセット画素数distance_offsetの値を、距離distanceを変数にして順次変更して判定し、最も近いdistanceを印字着弾位置のずれ距離として計算する例である。
【0228】
距離distanceが最も大きい距離候補を選択するのは(図49のステップS318)、着弾位置ずれが近いものほど外乱の影響(階調値が変化する)を受けやすいので、その影響を回避するためである。位置誤差が近い(distanceが小さい)ほど階調値差は小さい。
【0229】
図49の各工程を説明すると、ステップS312では、X=S+Qを中心にして、−n_mod/2+S+Q≦X,X<S+Q+n_mod/2の範囲において、期待値プロファイルIPExpectation(X)と補正後プロファイルIPCorrected(X)に基づいて、期待値差分HPF(X)=IPCorrected(X)−IPExpectation(X)、距離判定オフセット画素数distance_offset(distance)=IPLocalLambda(S)×distance/profile_lambada_distance、距離プラス側閾値DistancePlus(X,distance)=IPExpectation(X+distance_offset(distance))−IPExpectation(X)、距離マイナス側閾値DistanceMinus(X,distance)=IPExpectation(X−distance_offset(distance))−IPExpectation(X)をそれぞれ求める。
【0230】
ステップS314では、X=S+Qを中心にして、−n_mod/2+S+Q≦X,X<S+Q+n_mod/2の範囲において、距離プラス側閾値DistancePlus(X,distance)が正のときは、DistancePlus(X,distance)の値を足してSumDistancePlus(distance)を計算し、距離プラス側閾値DistancePlus(X,distance)が非正のときは、符号を反転して、(−DistancePlus(X,distance))として、SumDistancePlus(distance)に足し込む。こうして、符号を揃えながらすべて正の値として累積する。
【0231】
期待値差分HPF(X)についても、同様に符号を揃えて累積し、SumHPFPlusを計算する。そして、SumDistancePlus(distance)とSumHPFPulsが略等しくなる(両者の値が最も近くなる)、distanceをノズルNZのプラス側距離候補とする。
【0232】
ステップS316では、マイナス側について同様の処理を行い、SumDistanceMinus(distance)とSumHPFMinusが略等しくなるdistanceをノズルNZのマイナス側距離候補とする。
【0233】
ステップS318では、ステップS314で求めたプラス側距離候補と、ステップS136で求めたマイナス側距離候補のうち、絶対値の大きい方をノズルNZの距離として決定する。
【0234】
<インクジェット印刷機への適用例>
次に上記の不良吐出ノズル検出技術を利用したシングルパス記録方式のインクジェット記録装置(画像形成装置)における画像補正の例を説明する。図50は、多数の記録素子の中から不良記録素子(不良吐出ノズル)を検知し、不良記録素子による描画不良を他の正常な記録素子によって補正する画像補正プロセスの例である。
【0235】
まず、各ノズルの吐出特性を把握するために、各ノズル51から記録紙16に向かってインク滴を吐出させて、テストパターン102を記録紙16に印刷する(図50のステップS410)。
【0236】
このテストパターン102は、インクジェット記録装置に備え付けられている撮像ユニット(インラインセンサ)や、外部のスキャナー(オフラインスキャナー)などの画像読取装置によって読み取られ、テストパターン102の記録結果を示す電子画像データ(読取画像データ)が生成される。この読取画像データが所定の検出アルゴリズムに従って解析処理されることにより、不吐出ノズルの位置やテストパターン102の理想的な着弾位置104からの着弾位置誤差が求められる。このとき、所定値(所定の許容範囲を規定する値)以上の過大な位置誤差を有するノズルや不吐出ノズルは、不良吐出ノズルとして検出特定される(ステップS412)。この不良吐出ノズルの検出の具体的なフローについては、図17〜図47で説明したとおりである。
【0237】
このようにして特定された不良吐出ノズルはマスク処理が施されて、画像形成時にインク滴を吐出しない(記録に使用しない)不吐出ノズルとして扱われる(図50のステップS414)。そして、この不吐出ノズル(不吐出化処理されたノズル)による描画欠陥を他の吐出ノズル(例えば、隣接ノズル)から吐出されるインク滴により補償するように考慮された画像処理によって、入力画像データが補正される(ステップS416)。この補正後の入力画像データに基づいて記録紙16上に所望の画像が良好な品質で記録される。
【0238】
図51は、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図である。
【0239】
プリント対象のプリント画像データは、色変換処理部110において所定の色変換処理が施され、記録インク(本例ではCMYKインク)に対応する各版の画像データが得られる。このようにして得られるインク色別の画像データは、色変換処理部110から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0240】
不良吐出補正判断部122では、不良ノズル補正情報が総合的に取得され、画像位置(画像ドット位置)とノズル位置との対応関係から、本来であれば不良吐出ノズルによってドットの記録が行われる画像上の位置である補正画像位置が特定される。なお、ここでいう「位置」とは、記録ヘッドのノズル並び方向(主走査方向)の位置を意味している。
【0241】
不良吐出ノズルでは、補正画像位置の画像部分を適切には記録することができない。したがって、不良吐出補正判断部122において、この不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録情報が、当該不良吐出ノズルの両隣のノズルを含む近隣の単数又は複数の正常ノズルに振り分けられる。ここでいう不良吐出ノズルに対応する記録情報の振り分けとは、不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録が他のノズルからのインク吐出により補償されるように、他のノズルからインクを吐出させるためのデータ処理(補正処理)を意味する。さらに、不良吐出補正判断部122は、このようにして振り分けられた画像情報を記録特性に応じて補正する。
【0242】
なお、不良吐出補正判断部122は、画像解析部124からの情報(画像位置情報データ)と不良吐出ノズル判断部130からの不良吐出ノズル情報とを照合して、不良吐出ノズルで記録する画像部分のみに対して補正情報を作成する。このとき不良吐出補正判断部122は、補正情報設定部120から提供される補正の必要性を示すデータ(例えばプリント画像上において設定される補正領域を示すデータや、ヘッド50の印字部において設定される補正領域(ノズル単位)を示すデータ)を参照することによって、より高度に、必要性の高い領域のみに対して補正情報を作成することもできる。このようにして作成される補正情報は、不良吐出補正判断部122から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0243】
不吐出ノズル補正画像処理部112では、色変換処理部110から送られてくる画像データに対し、不良吐出補正判断部122から送られてくる不良吐出ノズルに関する補正情報に基づく補正処理が行われる。このようにして不良吐出ノズルからの不吐出の情報が反映された補正処理後の画像データは、不吐出ノズル補正画像処理部112からハーフトーン処理部114に送られる。
【0244】
ハーフトーン処理部114では、不吐出ノズル補正画像処理部112から送られてくる画像データに対してハーフトーン処理が行われ、ヘッド50を駆動するための多値の画像データを生成する。このとき、生成される多値の画像データ(記録ヘッド駆動多値)が画像階調値数よりも少なくなるように(すなわち、画像階調値数>記録ヘッド駆動多値を満たすように)、ハーフトーン処理が行われる。
【0245】
ハーフトーン処理が施された画像データは、ハーフトーン処理部114から画像メモリ116に送られる。また画像メモリ116に送られるハーフトーン処理済みの画像データは、画像解析部124にも送られる。そして、ハーフトーン処理が施された画像データは、画像メモリ116に記憶されるとともに、画像解析部124により解析されて画像情報が存在する位置(画像位置)と存在しない位置に関する情報(画像位置情報データ)が生成される。このようにして生成された画像位置情報データは、画像解析部124から不良吐出補正判断部122に送られ、不良吐出補正判断部122における不良吐出ノズルに対する補正情報の作成に供される。
【0246】
ハーフトーン処理が施された画像データ(ハーフトーン画像データ)は、画像メモリ116からテストパターン合成部118にも送られる。
【0247】
テストパターン合成部118では、画像メモリ116から送られてくるハーフトーン画像データとテストパターンに関する画像データ(テストパターン画像データ)とが合成され、合成後の画像データがヘッドドライバ128に送られる。テストパターンは、詳細については後述するが、不良吐出ノズルの検出を目的として各ノズルにより記録紙上に形成されるドットパターンのことである。このテストパターンが記録紙端部に印刷されるように、テストパターン画像データとハーフトーン画像データとがテストパターン合成部118で合成される。
【0248】
ハーフトーン画像データとテストパターン画像データとが合成された画像データは、テストパターン合成部118からヘッドドライバ128に送られる。ヘッドドライバ128は、テストパターン合成部118から送られてくる画像データに基づきヘッド50を駆動し、記録紙に対して所望画像及びテストパターンの記録を行う。このように、ノズルから吐出されるインク滴によって、当該ノズルの各々に対応する複数のテストパターンを記録紙に形成するパターン形成手段は、テストパターン合成部118及びヘッドドライバ128を含んで構成されることとなる。
【0249】
画像及びテストパターンが記録された記録紙は、搬送路に沿って排紙部に向けて送られる(図51の矢印B参照)。このとき、搬送路の途中に設置されたテストパターン読取り部(画像読取手段)136によって、記録紙に記録されたテストパターンが読み取られてテストパターン読取画像のデータが生成される。
【0250】
テストパターン読取り部136には、例えば、RGB3色のカラーフィルターを備えた色別の光電変換素子(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能なカラーCCDラインセンサが用いられる。テストパターン読取り部136は、テストパターン102が形成された記録紙16を、所定の読取画素ピッチでヘッド50の長手方向(ノズル列方向、主走査方向、X方向)に読み取って、読取画素ピッチに基づくテストパターン読取画像データを取得する。このテストパターン読取画像のデータは、テストパターン読取り部136から不良吐出ノズル検出部132に送られる。
【0251】
なお、テストパターン読取り部136はラインセンサでなくてもよい。例えば、テストパターンが記録された記録紙の幅より小さい読取り幅であっても、記録紙に対して相対的にXY方向に走査しながらテストパターンを読み取るように構成されていてもよい。
【0252】
不良吐出ノズル検出部132では、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン読取画像のデータから、不良吐出ノズル(吐出するインク滴の記録紙上における着弾位置誤差が所定値より大きい不良ノズル、体積不良、及びインク滴を吐出しない不吐出ノズルを含む)が検出される。検出された不良吐出ノズルに関する情報データ(不良吐出ノズル情報)は、不良吐出ノズル検出部132から不良吐出ノズル判断部130に送られる。
【0253】
不良吐出ノズル判断部130は、不良吐出ノズル検出部132から送られてくる不良吐出ノズル情報を所定回数分記憶することができる図示しないメモリを備える。この不良吐出ノズル判断部130では、メモリに蓄えられている過去の不良吐出ノズル情報が参照されて、過去に所定回数以上不良吐出ノズルとして検出されたかどうかで、不良吐出ノズルの確定が行われる。また過去に所定回数以上不良吐出ノズルではない正常ノズルであると判断されている場合は、例えそれまで不良吐出ノズルとして扱われていたノズルであっても扱いを変更し、正常ノズルとして扱われるように不良吐出ノズル情報が修正される。
【0254】
このようにして確定した不良吐出ノズル情報は、不良吐出ノズル判断部130からヘッドドライバ128及び不良吐出補正判断部122に送られる。また所定の条件を満たす場合(例えば所定枚数を印刷後、JOB後、ユーザー指示時、等)には、確定した不良吐出ノズル情報が不良吐出ノズル判断部130から不良ノズル情報蓄積部126にも送られる。
【0255】
ヘッドドライバ128は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報に基づいて、不良吐出ノズルに対応するノズルを非駆動とする。
【0256】
また、不良ノズル情報蓄積部126に送られる不良吐出ノズル情報は、不良ノズル情報蓄積部126に蓄積記憶され、不良吐出ノズルの統計的な情報として利用される。なお、不良ノズル情報蓄積部126に蓄えられている不良吐出ノズル情報は、初期不良ノズル情報として適当なタイミングで不良吐出ノズル判断部130に送られる。ここでいう初期不良ノズル情報は、どのノズル(CMYKインクに対応)が不良ノズルであるかを示す情報であり、ヘッド出荷時の検査情報を初期不良ノズル情報の初期値とし、特定周期で不良ノズル情報蓄積部126に蓄積される不良吐出ノズル情報に基づいて、初期不良ノズル情報は適時更新される。不良吐出ノズル判断部130は、この初期不良ノズル情報のうち必要分の不良吐出ノズル情報を、印刷開始時等に図示しないメモリに蓄えて、不良吐出ノズルの確定処理に使用する。
【0257】
不良吐出補正判断部122は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報から補正すべき画像部分(不良吐出ノズルで記録する画像部分)に対する補正情報を生成し、当該補正情報を不吐出ノズル補正画像処理部112に送る。
【0258】
また不良吐出補正判断部122は、このようにして生成される補正情報と直前の補正情報とを比較して、新規に不良吐出ノズルが発生(好ましくは所定数以上発生)して補正情報が増加しているか否かを検出する。補正情報が増加していると認められる場合には、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に所定の指示が送られる。
【0259】
この所定の指示を受け取った不良吐出検出表示部134は、新規の不良吐出ノズルによる記録が行われている不良吐出印刷物(すなわち新規の不良吐出ノズルに対する補正が行われずに印刷された印刷物)を識別可能にする処理を行う。具体的には、不良を検出した印刷物(記録用紙)から補正が完了した印刷が開始されるまでの印刷物に付箋を着けること等が不良吐出検出表示部134により行われる。そして、新規の不良吐出ノズルに対する補正処理が完了した後の印刷時(補正処理完了後の画像データ(ハーフトーン画像データ)に基づく印刷時)には、上記所定の指示が無効化されるように、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に指示信号が送られ、不良吐出検出表示部134は通常動作(通常表示)を行う。
【0260】
上述の一連の処理フローに基づいて、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理が適切に行われる。なおヘッド50の安定性によっては、上記の検出及び補正処理を、印刷開始時の最初の所定枚数の記録紙に対してだけ実施する(オフラインスキャナーを使用する構成もあり得る)ことや、ユーザーが指示した時だけ実施する構成も可能である。
【0261】
<<印刷レイアウトの説明>>
次に、記録紙16上の印刷レイアウトの例について説明する。図52は、不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウトを示す図である。図52の上側が記録紙16の先端側であり、記録紙16は図52の下から上に向かって(矢印Cで示す搬送方向に)搬送される。例えば、図示せぬドラムの周面に記録紙16を固定して、ドラムの回転によって記録紙16を搬送するドラム搬送方式の場合、ドラムに設けられたグリッパーによって記録紙16の先端部分を保持する構成が採用される。
【0262】
記録紙16は、用紙端部に設けられる検出用駆動波形区域150と通常駆動波形区域152とに分けられる。検出用駆動波形区域150は、上述のテストパターン102を印刷するためのテストパターン領域154と余白領域156とを含み、通常駆動波形区域152は、所望の画像を印刷するためのユーザー領域158を含んで構成される。
【0263】
テストパターン領域154とユーザー領域158との間に設けられる余白領域156は、テストパターン印刷から通常印刷への切り換えのための遷移区間であり、記録紙16の搬送速度に基づいて当該切り換えに必要な領域が余白領域156として確保されることになる。特に、特別な駆動波形信号を使用してテストパターン領域154に対しテストパターンを形成する場合には、この特別な駆動波形信号から通常の駆動波形信号に切り換えるのに必要な時間に相当する余白領域が確保される。この余白領域156は、記録紙16の搬送方向Cに関して、少なくともヘッド50のノズル領域160に相当する分を設けることが好ましい。なお、テストパターン102を印刷するための特別な駆動波形信号は、不良吐出ノズルと正常吐出ノズルを区別しやすくするために用いられ、位置誤差を増幅するような駆動波形信号や、不良吐出ノズルが不吐出ノズルとして機能しやすくするような駆動波形信号を特別に設計して使用することもできる。
【0264】
次に、上述した不良吐出ノズルの検出機能及びその検出結果を利用した画像補正機能を具備した画像形成装置の例を説明する。
【0265】
<インクジェット記録装置の説明>
図53は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置200の構成例を示す図である。インクジェット記録装置200は、主として、給紙部212、処理液付与部214、描画部216、乾燥部218、定着部220、及び排紙部222を備えて構成される。このインクジェット記録装置200は、描画部216の圧胴(描画ドラム270)に保持された記録媒体224(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド(「描画ヘッドに相当」)272M,272K,272C,272Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するオンデマンドドロップ方式の画像形成装置である。
【0266】
(給紙部)
給紙部212には、枚葉紙である記録媒体224が積層されている。給紙部212の給紙トレイ250から記録媒体224が一枚ずつ処理液付与部214に給紙される。本例では、記録媒体224として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0267】
(処理液付与部)
処理液付与部214は、記録媒体224の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部216で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0268】
処理液付与部214は、給紙胴252、処理液ドラム254、及び処理液塗布装置256を備えている。処理液ドラム254は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)255を備え、この保持手段255の爪と処理液ドラム254の周面の間に記録媒体224を挟み込むことによって記録媒体224の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム254は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体224を処理液ドラム254の周面に密着保持することができる。
【0269】
処理液ドラム254の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置256が設けられる。処理液塗布装置256は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム254上の記録媒体224に圧接されて計量後の処理液を記録媒体224に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置256によれば、処理液を計量しながら記録媒体224に塗布することができる。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0270】
処理液付与部214で処理液が付与された記録媒体224は、処理液ドラム254から中間搬送部226を介して描画部216の描画ドラム270へ受け渡される。
【0271】
(描画部)
描画部216は、描画ドラム270、用紙抑えローラ274、及びインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを備えている。描画ドラム270は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)271を備える。本例の描画ドラム270では、回転方向について180度の間隔で周面の2箇所にグリッパー271が設けられ、1回転で2枚の記録媒体224が搬送できるように構成されている。
【0272】
描画ドラム270の周面には、図示しない吸着穴が所定のパターンで多数形成されており、この吸着穴からエアが吸引されることにより、記録媒体224が描画ドラム270の周面に吸着保持される。なお、負圧吸引によって記録媒体224を吸引吸着する構成に限らず、例えば、静電吸着により、記録媒体224を吸着保持する構成とすることもできる。
【0273】
インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yはそれぞれ、記録媒体224における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の描画ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yは、記録媒体224の搬送方向(描画ドラム270の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0274】
描画ドラム270上に密着保持された記録媒体224の記録面に向かって各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部214で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体224上での色材流れなどが防止され、記録媒体224の記録面に画像が形成される。
【0275】
描画ドラム270によって記録媒体224を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体224と各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体224の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0276】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0277】
描画部216で画像が形成された記録媒体224は、描画ドラム270から中間搬送部228を介して乾燥部218の乾燥ドラム276へ受け渡される。
【0278】
(乾燥部)
乾燥部218は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム276、及び溶媒乾燥装置278を備えている。乾燥ドラム276は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)277を備える。溶媒乾燥装置278は、乾燥ドラム276の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ280と、各ハロゲンヒータ280の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル282とで構成される。各温風噴出しノズル282から記録媒体224に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ280の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0279】
乾燥部218で乾燥処理が行われた記録媒体224は、乾燥ドラム276から中間搬送部230を介して定着部220の定着ドラム284へ受け渡される。
【0280】
(定着部)
定着部220は、定着ドラム284、ハロゲンヒータ286、定着ローラ288、及びインラインセンサ290から構成される。定着ドラム284は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)285を備える。
【0281】
定着ドラム284の回転により、記録媒体224は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ286による予備加熱と、定着ローラ288による定着処理と、インラインセンサ290による検査が行われる。
【0282】
定着ローラ288は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体224を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ288は、定着ドラム284に対して圧接するように配置されており、定着ドラム284との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体224は、定着ローラ288と定着ドラム284との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0283】
また、定着ローラ288は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体224を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体224の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0284】
一方、インラインセンサ290は、記録媒体224に形成された画像(不吐出検出用のテストパターンや濃度補正用のテストパターン、印刷画像なども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。このインラインセンサ290は、図51の符号136で説明したテストパターン読取り部に相当する。
【0285】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置200は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ288)の代わりに、記録媒体224上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ288に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0286】
(排紙部)
定着部220に続いて排紙部222が設けられている。排紙部222は、排出トレイ292を備えており、この排出トレイ292と定着部220の定着ドラム284との間に、これらに対接するように渡し胴294、搬送ベルト296、張架ローラ298が設けられている。記録媒体224は、渡し胴294により搬送ベルト296に送られ、排出トレイ292に排出される。搬送ベルト296による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体224は無端状の搬送ベルト296間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト296の回転によって排出トレイ292の上方に運ばれてくる。
【0287】
また、図53には示されていないが、本例のインクジェット記録装置200には、上記構成の他、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部214に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引、ノズル洗浄等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体224の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0288】
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、インクジェットヘッドの構造について説明する。各色に対応するインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号350によってヘッドを示すものとする。
【0289】
図54(a) はヘッド350の構造例を示す平面透視図であり、図54(b) はその一部の拡大図である。図55はヘッド350を構成する複数のヘッドモジュールの配置例を示す図である。また、図56は記録素子単位(吐出素子単位)となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル351に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図54中のA−A線に沿う断面図)である。
【0290】
図54に示したように、本例のヘッド350は、インク吐出口であるノズル351と、各ノズル351に対応する圧力室352等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)353をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。即ち、各ノズル351を主走査方向と平行な直線上に投影したときの各投影ノズルの間隔P(図54(b)参照)は、図8を用いて説明した記録画素ピッチWPと等価的に取り扱うことができる。
【0291】
なお、ヘッド350のようにノズルが二次元配置されたヘッドの場合、図8を用いて説明した検出ピッチ数PPは、上記の各投影ノズルに対して連続して並ぶ所定個数の印字画素の画素列をひとまとまりの検出単位としたものを指すことになる。例えば、図8のように検出ピッチ数PP=6としてライン103を形成する場合であれば、各投影ノズルから検出ピッチ数PP=6毎の投影ノズル(検出ピッチ数PP間隔の投影ノズル)を選択し、選択された投影ノズルに対応するノズル(投影元のノズル)を用いて形成すればよい。
【0292】
記録媒体224の送り方向(矢印S方向;「y方向」に相当)と略直交する方向(矢印M方向;「x方向」に相当)に記録媒体224の描画領域の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成するために、例えば、図55(a)に示すように、複数のノズル351が二次元に配列された短尺のヘッドモジュール350’を千鳥状に配置して、長尺のライン型ヘッドを構成する。或いはまた、図55(b)に示すように、ヘッドモジュール350”を1列に並べて繋ぎ合わせる態様も可能である。
【0293】
なお、シングルパス印字用のフルライン型プリントヘッドは、記録媒体224の全面を描画範囲とする場合に限らず、記録媒体224の面上の一部が描画領域となっている場合には、所定の描画領域内の描画に必要なノズル列が形成されていればよい。
【0294】
各ノズル351に対応して設けられている圧力室352は、その平面形状が概略正方形となっており(図54(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル351への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)354が設けられている。なお、圧力室352の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0295】
図56に示すように、ヘッド350は、ノズル351が形成されたノズルプレート351Aと圧力室352や共通流路355等の流路が形成された流路板352P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート351Aは、ヘッド350のノズル面(インク吐出面)350Aを構成し、各圧力室352にそれぞれ連通する複数のノズル351が二次元的に形成されている。
【0296】
流路板352Pは、圧力室352の側壁部を構成するとともに、共通流路355から圧力室352にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口354を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図56では簡略的に図示しているが、流路板352Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0297】
ノズルプレート351A及び流路板352Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0298】
共通流路355はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路355を介して各圧力室352に供給される。
【0299】
圧力室352の一部の面(図56において天面)を構成する振動板356には、個別電極357を備えたピエゾアクチュエータ(圧電素子)358が接合されている。本例の振動板356は、ピエゾアクチュエータ358の下部電極に相当する共通電極359として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室352に対応して配置されるピエゾアクチュエータ358の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0300】
個別電極357に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ358が変形して圧力室352の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル351からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ358が元の状態に戻る際、共通流路355から供給口354を通って新しいインクが圧力室352に再充填される。
【0301】
かかる構造を有するインク室ユニット353を図54(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル351が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0302】
また、本発明の実施に際してヘッド350におけるノズル351の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図54で説明したマトリクス配列に代えて、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
【0303】
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や、静電アクチュエータ、その他の方式による各種アクチュエータなど、様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0304】
<制御系の説明>
図57は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示すブロック図である。図57に示すように、インクジェット記録装置200は、通信インターフェース370、システムコントローラ372、画像メモリ374、ROM375、モータドライバ376、ヒータドライバ378、プリント制御部380、画像バッファメモリ382、ヘッドドライバ384等を備えている。
【0305】
通信インターフェース370は、ホストコンピュータ386から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース370にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0306】
ホストコンピュータ386から送出された画像データは通信インターフェース370を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦画像メモリ374に記憶される。画像メモリ374は、通信インターフェース370を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ372を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ374は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0307】
システムコントローラ372は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ372は、通信インターフェース370、画像メモリ374、モータドライバ376、ヒータドライバ378等の各部を制御し、ホストコンピュータ386との間の通信制御、画像メモリ374及びROM375の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ388やヒータ389を制御する制御信号を生成する。
【0308】
また、システムコントローラ372は、インラインセンサ(インライン検出部)290から読み込んだテストチャートの読取画像データから、不吐出ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部372Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部372Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部372A及び濃度補正係数算出部372Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。さらに、システムコントローラ372は、図17〜図49で説明した読取画像の解析処理手段として機能する。濃度補正係数算出部372Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部390に記憶される。
【0309】
ROM375には、システムコントローラ372のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不良吐出ノズルを検出するためのテストチャートを打滴するためのデータ、不良吐出ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM375には、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることができる。また、このROM375の記憶領域を活用することで、ROM375を濃度補正係数記憶部390として兼用する構成も可能である。
【0310】
画像メモリ374は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0311】
モータドライバ376は、システムコントローラ372からの指示に従って搬送系のモータ388を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ378は、システムコントローラ372からの指示に従って乾燥部218等のヒータ389を駆動するドライバである。
【0312】
プリント制御部380は、システムコントローラ372の制御に従い、画像メモリ374内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ384に供給してヘッド350の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0313】
すなわち、プリント制御部380は、濃度データ生成部380Aと、補正処理部380Bと、インク吐出データ生成部380Cと、駆動波形生成部380Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(380A〜380D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0314】
濃度データ生成部380Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0315】
補正処理部380Bは、濃度補正係数記憶部390に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、不良吐出ノズル等に起因する画像欠陥を改善するためのムラ補正処理を行う。
【0316】
インク吐出データ生成部380Cは、補正処理部380Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、画像データの2値(多値)化処理を行う。
【0317】
インク吐出データ生成部380Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ384に与えられ、ヘッド350のインク吐出動作が制御される。
【0318】
駆動波形生成部380Dは、ヘッド350の各ノズル351に対応したピエゾアクチュエータ358(図56参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部380Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ384に供給される。なお、駆動波形生成部380Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0319】
駆動波形生成部380Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM375に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。本例に示すインクジェット記録装置200は、ヘッド350を構成するモジュールの各ピエゾアクチュエータ358に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ノズル351の吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータ358の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータ358に対応するノズル351からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0320】
プリント制御部380には画像バッファメモリ382が備えられており、プリント制御部380における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ382に一時的に格納される。なお、図57において画像バッファメモリ382はプリント制御部380に付随する態様で示されているが、画像メモリ374と兼用することも可能である。また、プリント制御部380とシステムコントローラ372とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0321】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース370を介して外部から入力され、画像メモリ374に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ374に記憶される。
【0322】
インクジェット記録装置200では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ374に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ372を介してプリント制御部380に送られ、該プリント制御部380の濃度データ生成部380A、補正処理部380B、インク吐出データ生成部380Cを経てインク色毎のドットデータに変換される。
【0323】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0324】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス法等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0325】
すなわち、プリント制御部380は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。このドットデータへの変換処理に際して、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補正する不吐出補正処理が行われる。
【0326】
こうして、プリント制御部380で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ382に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド350のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0327】
ヘッドドライバ384は、アンプ回路(電力増幅回路)を含み、プリント制御部380から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド350の各ノズル351に対応するピエゾアクチュエータ358を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ384にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0328】
こうして、ヘッドドライバ384から出力された駆動信号がヘッド350に加えられることによって、該当するノズル351からインクが吐出される。記録媒体224の搬送速度に同期してヘッド350からのインク吐出を制御することにより、記録媒体224上に画像が形成される。
【0329】
上記のように、プリント制御部380における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ384を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0330】
インラインセンサ(検出部)290は、図53で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体224に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部380及びシステムコントローラ372に提供する。
【0331】
プリント制御部380は、必要に応じてインラインセンサ(検出部)290から得られる情報に基づいてヘッド350に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0332】
図中のメンテナンス機構394は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
【0333】
また、ユーザインターフェースとしての操作部396は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置397と表示部(ディスプレイ)398を含んで構成される。入力装置397には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置397を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部398の表示を通じて確認することができる。この表示部398はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
【0334】
なお、図51で説明した色変換処理部110、不吐出ノズル補正画像処理部112、ハーフトーン処理部114、画像メモリ116、画像解析部124、テストパターン合成部118、ヘッドドライバ128、不良吐出ノズル判断部130、不良吐出ノズル検出部132、不良ノズル情報蓄積部126、不良吐出補正判断部122、補正情報設定部120等は、図57に示した制御系の構成要素が単独で、又は複数組み合わされて構成される。
【0335】
図51の画像メモリ116、ヘッドドライバ128、ヘッド50は、図57における画像メモリ374、ヘッドドライバ384、ヘッド350に対応している。
【0336】
図57のシステムコントローラ372及びプリント制御部380の組み合わせが、「信号処理手段」、「分解手段」、「予測信号生成手段」、「閾値決定手段」、「変動信号算出手段」、「不良記録素子判定手段」、「テストパターン出力制御手段」、「画像補正手段」、「記録制御手段」として機能する。
【0337】
なお、図57で説明した着弾誤差測定演算部372A、濃度補正係数算出部372B、濃度データ生成部380A、補正処理部380Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ386側に搭載する態様も可能である。
【0338】
上述のように、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、テストパターンの読取画像を解析することによって、各ノズルから吐出されるインク滴の記録紙上の着弾位置を正確に把握することができるため、不良吐出ノズルの位置を精度よく特定することができる。これにより、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補償する緻密な補正処理を入力画像データに施すことが可能である。上述の各種処理に基づく全体の処理の流れについて、以下説明する。
【0339】
(画像印刷プロセスの説明)
図58は、画像印刷全体の流れを示すフローチャートである。ホストコンピュータ386(図57参照)から送られてくる所望画像の入力画像データが通信インターフェース(受信手段)370を介して受信されると(図58のS480に示す受信ステップ)、色変換処理(図51の色変換処理部110)、不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)、ハーフトーン処理(ハーフトーン処理部114)、テストパターン合成処理(テストパターン合成部118)等によって入力画像データが補正される(図58のS482に示す補正ステップ)。
【0340】
そして、補正された入力画像データに基づき、ヘッドドライバ384(図51の128)によって、各ヘッド350のノズル351からインク滴を記録媒体224に向かって吐出させることにより(図58のS484に示す吐出ステップ)、所望の画像を鮮明に記録媒体224に印刷することができる。
【0341】
上記の補正ステップ(S482)では、不良吐出ノズルからのインク滴の吐出を他の正常なノズルによって補償するとともに、不良吐出ノズルからインク滴が吐出されないようにするための不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)が、入力画像データに対して行われる。不良吐出ノズル補正処理は、不良吐出ノズル検出部132(図51参照)において、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン102の読取画像データに基づいて行われる。
【0342】
なお、不良吐出ノズルを不吐出化処理して、他のノズルによってその描画欠陥を補償する補正技術としては、例えば、(1)出力画像を矯正する方法、(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きめに矯正する方法など、様々な手段がある。
【0343】
(1)出力画像を矯正する方法
周囲の描画における画像濃度をDdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルにおける画像濃度をDNo Print(>Ddefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらの画像濃度間の比率を不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensityと定義できる。
【0344】
(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きくする方法
周囲の描画におけるドット径をRdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルのドット径をRNo Print(>Rdefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらのドット径間の比率を不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotと定義できる。
【0345】
前記2つの代表例における不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensity、不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotのような、不吐出補正ノズルによる描画の強め量、或いはそれに類する補償量を総じて不吐出補正パラメータPと定義すると、この不吐出補正パラメータPを用いて、画像補正を行う。
【0346】
<変形例>
テストパターン102として、1オンnオフ型のラインパターンを例示したが、1ノズルに対応したラインに限らず、複数本(例えば、2〜3本)のラインが一体に組み合わされた帯状のブロックなどが概ね規則的に並ぶパターンであってもよい。
【0347】
<オフラインスキャナーを用いる構成例について>
図53から図58では、インクジェット記録装置200に内蔵されたインラインセンサ290を用いてテストパターンを読み取り、その読取画像の解析処理装置もインクジェット記録装置200に搭載されている例を説明したが、本発明の実施に際しては、インクジェット記録装置200とは別体のオフラインスキャナー等を用いてテストパターンの印刷結果を読み取り、その読取画像のデータをパソコン等の装置によって解析する構成も可能である。
【0348】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、被記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0349】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して被記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した被記録媒体に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、被記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0350】
<ヘッド構成の変形例について>
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。なお、インクジェット方式の印字ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0351】
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
【0352】
<インクジェット方式以外の記録ヘッドの利用形態について>
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
【0353】
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0354】
(発明1):複数の記録素子が配列された記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に記録したテストパターンの読取画像信号を取得する読取画像信号取得手段と、前記読取画像信号を解析して前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する処理を行う信号処理手段と、を備えた不良記録素子の検出装置であって、前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、前記信号処理手段は、前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解手段と、前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成手段と、前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出手段と、前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、を備えることを特徴とする不良記録素子の検出装置。
【0355】
この発明によれば、記録ピッチWPの記録素子のうち検出ピッチ数PP間隔の記録素子を動作させて記録したライン状のテストパターンがWSピッチで読み取られた読取画像信号が得られる。この読取画像信号を複数の系列に分解し、系列において予測される規則的な信号を計算する。テストパターンは、概ね規則的に並んでいるため、系列毎の信号は周期的な変化を示す。この規則的なパターンの配列に対応した読取画像信号の周期性(規則性)を利用して予測信号を求める。系列別の予測信号の1周期分は、1ライン分の画像プロファイルと対応付けることができ、この予測信号における信号値の変化量と記録位置誤差の関係から検出用の閾値が定められる。
【0356】
また、各系列において、原信号と予測信号の差を示す変動信号を計算し、各系列で観測される変動信号と閾値に基づいて、所定位置誤差以上の記録素子(不良記録素子)を決定する。これにより、低解像度の読取画像信号であっても、不良記録素子を精度良く特定することができる。
【0357】
なお、ライン状のパターンが規則的に(周期性をもって)並んでいるというときの「規則的」という用語の解釈については、全記録素子が正常で理想的なテストパターンである場合に、規則的なパターン(例えば、一定のライン間隔)として描かれるはずのテストパターンであっても(例えば、一定のライン間隔で描かれるラインパターン)、実際に記録されるテストパターンは不良記録素子などの影響により、その規則性が崩れることがある。しかし、全体としては、概ね規則性を有している。ここでいう「規則的」とは、そのような規則性の崩れは容認して、概ね規則性を有しているものを包含するものである。
【0358】
テストパターンの一例として、記録ヘッドと記録媒体を相対的に移動させながら、記録素子によってドットを連続して記録することにより、記録媒体上に各記録素子に対応したドット列によって形成された複数のラインを含んだパターンとすることができる。このときの各ラインは、記録ヘッドに対する記録媒体の相対移動方向(第2方向)に平行な線分として描画される。テストパターンの好適な例として、いわゆる1オンnオフ型のラインパターンを採用することができる。
【0359】
「読取画像信号取得手段」としては、記録媒体上に記録されたテストパターンを読み取って電子画像データに変換することによって読取画像信号を生成する画像読取手段を採用することができる。また、画像読取手段によって生成された読取画像データをメモリカードなどの外部記憶媒体を介して取得したり、USBやLANその他の通信インターフェース(有線、無線を問わない)を介して取得したりする構成も可能である。この場合、メディアインターフェースや通信インターフェースが「読取画像信号取得手段」に該当する。
【0360】
(発明2):発明1に記載の不良記録素子の検出装置において、前記予測信号生成手段は、前記各系列に分解された画像信号から、各系列の平均的な特性を示す平均プロファイルを作成し、この平均プロファイルから前記予測信号を生成することを特徴とする。
【0361】
平均プロファイルの作成に際しては、ローパスフィルタ処理、スムージング処理などを用いて良い。
【0362】
(発明3):発明1又は2に記載の不良記録素子の検出装置において、前記閾値決定手段は、前記予測信号の1周期分を前記ライン状のパターンの1ライン分のプロファイルと対応づけて、前記閾値を決定することを特徴とする。
【0363】
解析ピッチ(WS×PS)と検出ピッチ(WP×PP)とのピッチ差ΔPと、規則的に並ぶライン状のパターンの周期性から、1周期分の予測信号を1ライン分の画像プロファイルに置き換えて考えることができる。
【0364】
(発明4):発明1から3のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置において、前記読取画素ピッチWSは、前記記録画素ピッチWPよりも大きいことを特徴とする。
【0365】
この発明は、テストパターンを読み取る画像読取手段の読取解像度が記録ヘッドの記録解像度より低い場合であっても、適切に不良記録素子を特定することができる。
【0366】
(発明5):複数の記録素子が配列された記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に記録したテストパターンの読取画像信号を取得する読取画像信号取得工程と、前記読取画像信号を解析して前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する処理を行う信号処理工程と、を有する不良記録素子の検出方法であって、前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、前記信号処理工程は、前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解工程と、前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成工程と、前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出工程と、前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、を含むことを特徴とする不良記録素子の検出方法。
【0367】
(発明6):発明5に記載の不良記録素子の検出方法において、前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像信号を生成する画像読取工程と、を含むことを特徴とする。
【0368】
なお、発明5,6の方法発明において、発明2から4に記載の特徴を組み合わせる態様も可能である。
【0369】
(発明7):複数の記録素子が配列された記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを形成するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、読取画像信号を生成する画像読取手段と、を備えた画像形成装置であって、前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解手段と、前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成手段と、前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出手段と、前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0370】
かかる態様によれば、画像読取手段とその読取画像の解析処理機能とを具備した画像形成装置の構成を採用することにより、テストチャートの出力と共に、その出力結果の読み取りが可能である。これにより、効率的な解析と、その解析に基づく不良記録素子の特定、並びにその特定結果に基づく画像補正が可能となる。
【0371】
ある1つの不良記録素子の描画不良を補償するために、その近傍の画素の記録を担う1つ又は複数個の記録素子の出力を補正するが、その出力補正の対象となる記録素子(不良記録補正記録素子)の範囲は、少なくとも当該不良記録素子による非記録位置の両側に隣接する記録位置(画素)の描画を担う2つの記録素子を含むことが好ましい。
【0372】
画像形成装置に用いるプリントヘッド(記録ヘッド)の構成例として、複数個のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて、被描画媒体の全幅以上の長さにわたる複数の吐出口(ノズル)を配列させたノズル列を有するフルライン型ヘッド(ページワイドヘッド)を用いることができる。このようなフルライン型のヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(媒体搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0373】
(発明8):発明7に記載の画像形成装置において、前記記録素子は、ノズルから液滴を吐出して、その吐出した液滴を前記記録媒体上に付着させることによってドットを記録する液滴吐出素子であり、前記不良記録素子は、記録位置誤差が大きいもの、及び不吐出のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0374】
記録ヘッドの一例として、インクジェットヘッドを採用することができる。インクジェットヘッドにおける不良記録素子、すなわち不良吐出ノズルとしては、記録位置誤差異常、不吐出などがあり得る。
【0375】
(発明9):発明7又は8に記載の画像形成装置において、前記画像読取手段は、複数の光電変換素子が前記第1方向に前記読取画素ピッチWSで配列されたラインセンサであることを特徴とする。
【0376】
記録ヘッドの記録解像度よりも低解像度のラインセンサを用いて装置を構成することができる。
【0377】
なお、発明7から9の画像形成装置において、発明2から4に記載した特徴を組み合わせることができる。
【0378】
(発明10):複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを形成するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、読取画像信号を生成する画像読取工程と、を有し、前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解工程と、前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成工程と、前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出工程と、前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶する記憶工程と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【0379】
発明10において、さらに、発明2〜4、8、9に記載の特徴を組み合わせることができる。
【0380】
(発明11):コンピュータを、発明1から4の何れか1項に記載の不良記録素子の検出装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【0381】
発明1から4の検出装置における各手段(読取画像信号取得手段、信号処理手段、分割手段、予測信号生成手段、閾値決定手段、変動信号算出手段、不良記録素子判定手段)は、コンピュータによって実現することが可能である。かかる読取画像の解析機能をコンピュータによって実現するためのプログラムは、画像形成装置などに組み込まれる中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能であるし、パソコンなどのコンピュータシステムに適用することも可能である。このような解析処理用のプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他の情報記憶媒体(外部記憶装置)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供したり、インターネットなどの通信回線を通じて当該プログラムのダウンロードサービスを提供したり、ASP(Application Service Provider)サービスとして提供したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0382】
16…記録紙、50…ヘッド、51…ノズル、102…テストパターン、103…ライン、112…不吐出ノズル補正画像処理部、122…不良吐出補正判断部、124…画像解析部、126…不良ノズル情報蓄積部、130…不良吐出ノズル判断部、132…不良吐出ノズル検出部、136…テストパターン読取り部、154…テストパターン領域、200…インクジェット記録装置、224…記録媒体、270…描画ドラム、272M,272K,272C,272Y…インクジェットヘッド、290…インラインセンサ、350…ヘッド、351…ノズル、358…ピエゾアクチュエータ、372…システムコントローラ、380…プリント制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子が配列された記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に記録したテストパターンの読取画像信号を取得する読取画像信号取得手段と、
前記読取画像信号を解析して前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する処理を行う信号処理手段と、を備えた不良記録素子の検出装置であって、
前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、
前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、
T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|
から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、
前記信号処理手段は、
前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解手段と、
前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成手段と、
前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、
前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出手段と、
前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
を備えることを特徴とする不良記録素子の検出装置。
【請求項2】
前記予測信号生成手段は、前記各系列に分解された画像信号から、各系列の平均的な特性を示す平均プロファイルを作成し、この平均プロファイルから前記予測信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、前記予測信号の1周期分を前記ライン状のパターンの1ライン分のプロファイルと対応づけて、前記閾値を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項4】
前記読取画素ピッチWSは、前記記録画素ピッチWPよりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項5】
複数の記録素子が配列された記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させ、前記記録素子により前記記録媒体上に記録したテストパターンの読取画像信号を取得する読取画像信号取得工程と、
前記読取画像信号を解析して前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する処理を行う信号処理工程と、を有する不良記録素子の検出方法であって、
前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、
前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、
T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|
から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、
前記信号処理工程は、
前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解工程と、
前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成工程と、
前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、
前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出工程と、
前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
を含むことを特徴とする不良記録素子の検出方法。
【請求項6】
前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、
前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像信号を生成する画像読取工程と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の不良記録素子の検出方法。
【請求項7】
複数の記録素子が配列された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを形成するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、読取画像信号を生成する画像読取手段と、を備えた画像形成装置であって、
前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、
前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、
T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|
から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、
前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解手段と、
前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成手段と、
前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、
前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出手段と、
前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、
前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記記録素子は、ノズルから液滴を吐出して、その吐出した液滴を前記記録媒体上に付着させることによってドットを記録する液滴吐出素子であり、
前記不良記録素子は、記録位置誤差が大きいもの、及び不吐出のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像読取手段は、複数の光電変換素子が前記第1方向に前記読取画素ピッチWSで配列されたラインセンサであることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させて前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを形成するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、読取画像信号を生成する画像読取工程と、を有し、
前記テストパターンは、前記記録ヘッドの前記複数の記録素子を前記相対移動方向と直交する第1方向と平行な直線上に投影したときの投影記録素子の並びのうち、一定の検出ピッチ数PPの間隔で選択される前記投影記録素子に対応する記録素子を動作させて記録したライン状のパターンを含み、
前記第1方向に並ぶ前記各投影記録素子の間隔を記録画素ピッチWP、前記読取画像データの前記第1方向の画素サイズを読取画素ピッチWS、前記読取画像信号を解析する際の解析単位として前記第1方向に連続して並ぶ複数個の読取画素のまとまりを解析ピッチ数PSとするとき、
T=WP×PP÷|WS×PS−WP×PP|
から求められる周期Tが前記読取画像信号の画素単位で3以上であり、
前記取得した読取画像信号について、前記第1の方向に並ぶ各画素に対してその並び順に、連続する整数で読取画素番号を付与したとき、その読取画素番号を前記解析ピッチ数PSで除算した剰余の値により、前記読取画像信号の画素列を前記剰余が異なる複数の系列に分解し、系列毎の画像信号を生成する分解工程と、
前記読取画像信号に基づき前記各系列において予測される規則的な予測信号を計算する予測信号生成工程と、
前記予測信号から記録位置誤差の検出距離条件に相当する階調値差を求め、この階調値差から、記録位置誤差が大きいと判定する条件に相当する閾値を決定する閾値決定手段と、
前記各系列の画像信号と前記予測信号との差を示す変動信号を算出する変動信号算出工程と、
前記変動信号と前記閾値との比較に基づいて前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶する記憶工程と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、
前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から4の何れか1項に記載の不良記録素子の検出装置における各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図15】
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【図16】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−206322(P2012−206322A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72573(P2011−72573)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】