説明

不透過性カプセル

中心部および中心部を取り巻き封入するシェルを含むカプセルであって、シェルが次のものを含むカプセル:第1の水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第1ポリマー、および第1の水溶性パラメーターよりも高い水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第2ポリマー、ここで、第2ポリマーは架橋されており、および/または少なくとも1種類の第2ポリマーの全ては、少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在する。水性の媒体にさらされると、第1ポリマーが膨潤し始め、水がカプセルの中に漏入し始める。また、第2ポリマーが入り込む水に引き寄せられる。第2ポリマーが水を吸収して膨潤するにつれ、シェルの中の平均空き空間が減少し、壁の境界を越える物質のための曲がりくねった経路が増大する。結果として、カプセル壁を越える漏れの速度は減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] カプセル化(Encapsulation)の技術は、多くの用途の領域で広く用いられている。例えば、マイクロカプセル化は、使用の際に成分が混合されるまで2種類の成分を分ける必要がある配合物において、例えば一方をカプセル中の保護壁の内側に配合することにより用いられている。カプセルは、様々な有効成分をより容易に配合される形で提供するのにも有用である。油性、吸湿性(hydroscopic)、反応性、および同様のものである有効成分を含む流動性の(flowable)カプセルが例に含まれる。
【0002】
[0002] 口腔ケアの領域では、配合物の多くの成分をカプセルの形で提供することができる。限定的で無い例には、香味料(flavouring)、着色剤、酸化剤、および有効成分が含まれる。一部の領域において、口腔ケア製品、特に歯磨剤配合物におけるカプセル化技術の使用は、加工および保管の期間の間の歯磨剤母材中でのカプセルの乏しい不透過性のため制限される。すなわち、そのカプセルは加工および保管の間にすぐに水性条件により冒されすぎる傾向がある。これは結果として、マイクロカプセル化された成分の早すぎる放出をもたらす。
【0003】
[0003] 歯磨剤の用途のためのカプセルを作るための技法には、スプレー乾燥、複合コアセルベーション(complex coacervation)、および乳濁液の技法が含まれる。その方法には、沈殿、重合、または合体プロセス(coalescent processes)によりカプセルを形成するためのポリマーの使用が含まれる。カプセルが形成されて歯磨剤配合物中に配合された後、カプセルのシェルを形成しているポリマー分子は水の存在下で膨潤現象を示す。塩類の存在、pHの変化、および界面活性剤の存在のような、膨潤作用を増進することができる多くの要素が知られている。ポリマーが膨潤するにつれて、結果としてカプセルの漏れが起こる点に達し、その結果カプセルの中心部の中に保持されていた有効物質が放出される。
【0004】
[0004] 多くの用途が有効成分の早すぎる放出を遅らせる、妨げる、または抑制することに依存しているため、カプセル、カプセル、およびそれらを作るための、結果としてより透過性の低い(より不透過性の高い)カプセル壁をもたらすであろうプロセスを提供するのが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 中心部および中心部を取り巻き封入するシェルを含むカプセルであって、シェルは次のものを含む:
a)第1の水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第1ポリマー、および
b)第1の水溶性パラメーターよりも高い水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第2ポリマー、ここで次のことの少なくとも一方
i)第2ポリマーの少なくとも1種類は架橋されており、および/または
ii)少なくとも1種類の第2ポリマーの全ては、少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在する。
【0006】
[0006] より高いヒルデブラント溶解度パラメーターを有する第2ポリマーを戦略的に選択することにより、カプセルを水に対してより不透過性にすることができる。水性の媒体にさらされると、カプセル壁中の少なくとも1種類の第1ポリマーが膨潤し始め、水がカプセルの中に漏入し始める。同時に、より速く膨潤する第2ポリマーが、入り込む水に引き寄せられる。第2ポリマーが水を吸収して膨潤するにつれ、シェルの壁の中の平均空き空間が減少し、従って壁の境界を越える物質のための曲がりくねった経路が増進されるであろう。結果として、カプセルの壁を越える漏れの速度は減少する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0007] 至る所で用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための簡略表現として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。
【0008】
[0008] 1態様において、カプセルは中心部および中心部を取り巻き封入するシェルを含む。シェルは、第1の溶解度パラメーターを有する少なくとも1種類の第1ポリマーおよび、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも高い溶解度パラメーターを有する少なくとも1種類の第2ポリマーを含む。様々な態様において、少なくとも1種類の第2ポリマーは架橋されており、および/または少なくとも1種類の第2ポリマーは少なくとも1種類の第1ポリマーよりも少ない量で存在する。シェルは連続的または不連続であることができる。
【0009】
[0009] 様々な観点において、溶解度パラメーターはヒルデブラント単位またはδ/MPa1/2により与えられる。周知であるように、これらはヒルデブラント溶解度パラメーターに関するSI単位を示す。様々な態様において、第2ポリマーの溶解度パラメーターは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも0.5ヒルデブラント単位大きい。他の態様において、第2ポリマーの溶解度パラメーターは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも1ヒルデブラント単位大きい。
【0010】
[0010] 様々な態様において、少なくとも1種類の第1ポリマーよりも膨潤性の高い(more swellable)少なくとも1種類の第2ポリマーが、カプセル中により少ない量で存在する。すなわち、カプセル中のポリマーの総重量に基づいて、第2ポリマーは総重量の50%未満である。様々な態様において、第2ポリマーはカプセル中のポリマー全体の重量により約0.01〜50%未満、約1〜約40%、約1〜約30%、約1〜約20%、または約1〜約10%を構成している。百分率はカプセル中の第1および第2ポリマーの総量、第1および第2ポリマーが両方ともシェルの壁の中に見出されるかどうか、または第2ポリマーが中心部の中に見出されるかどうかに基づく。限定的で無い例において、シェルは少なくとも1種類の第1ポリマーの100部につき少なくとも1種類の第2ポリマーの約1〜40部を含む。
【0011】
[0011] 他の観点において、カプセルシェルの水透過性を減少させる方法を提供する。シェルは少なくとも1種類の第1ポリマーで作られており、その方法には、カプセルを少なくとも1種類の第1ポリマーおよび少なくとも1種類の第2ポリマーの混合物から形成することが含まれる。
【0012】
[0012] 様々な態様において、カプセルはスプレー乾燥、複合コアセルベーション、および/または乳濁液の技法により形成される。
[0013] 許容できるキャリヤー系中にカプセルを含む適切な組成物も提供する。特に、口腔において許容できるキャリヤー中にカプセルを含む口腔ケア組成物を提供する。
【0013】
[0014] 様々な態様において、その方法は、シェルを形成するポリマーよりもおおきな膨潤速度を有するポリマーを利用することにより、カプセルの増進した不透過性を提供する。少なくとも1種類の第2ポリマーは、それがシェル構造に付着する、またはそれと絡まることができるように、シェル構造に隣接している、またはその内部にある。シェルが水にさらされる際に、少なくとも1種類の第2ポリマーは少なくとも1種類の第1ポリマーと競合して入り込む水を吸収するであろう。水を吸収すると、膨潤するポリマーは水和して膨潤すると考えられ、それがシェルの壁の中の平均空き空間を低減させる。ポリマーが水を吸収して膨潤するにつれ、シェルの壁の中の平均空き空間は減少する。結果として、境界を越える物質からの曲がりくねった経路はかなり増大する。カプセルの中心部および外側の間の経路は第2ポリマーの膨潤によりさらに曲がりくねるようになるため、水が曲がりくねった経路に沿って中心部の中へと進む速度、および同様に有効物質が曲がりくねった経路に沿って壁を通りカプセルの外側へと進む速度は減少するであろう。巨視的には、これは有効物質のカプセルからのより遅い、遅延した、または延長された放出の形で観察される。
【0014】
[0015] 言及したように、少なくとも1種類の第2ポリマー(膨潤性がより高い)は、カプセルの中に中心部の構成物質の構成要素として組み込まれることができる。シェルが膨潤し水がカプセルに漏入するにつれて、中心部の中の少なくとも1種類の第2ポリマー分子が、入り込む水に引き寄せられる。水はポリマーの膨潤およびシェルの内側表面への付着を引き起こす。別の態様において、少なくとも1種類の第2ポリマーは特定のレベルで、好ましくは少なくとも1種類の第1ポリマーと比較してより低いレベルでシェルポリマー混合物の一部である。少なくとも1種類の第2ポリマーは、シェルの少なくとも1種類の第1ポリマーと物理的に混合する、または絡ませることができる。別の態様において、少なくとも1種類の第1ポリマーは側鎖を化学的に修飾することができ、それは速い膨潤のふるまいを示す。水がカプセルシェルを通って浸透するにつれ、ポリマーの側鎖は膨潤し、膨張する。
【0015】
[0016] 全ての場合において、シェルの壁の中の平均空き空間は膨潤するポリマーの結果として減少するであろう。境界を越える物質のための曲がりくねった経路はかなり増大し、その結果、シェルの壁を越える漏れの速度はシェルの壁の厚さを変えること無しに減少するであろう。
【0016】
[0017] 本明細書で記述した態様において、第2ポリマー(”より大きく膨潤する”ポリマーとも呼ばれる)は、少なくとも1種類の第1ポリマーよりも水中でより高い膨潤性があることにより特性づけられる。水中での膨潤性の基準は、溶解度パラメーターである。下記で詳しく説明するように、溶解度パラメーターの尺度は、ポリマーが溶媒の水の溶解度パラメーターにより近い程、それが水中でより膨潤するように設定される。水での膨潤はしばしば溶解につながる;これを防ぐため、少なくとも1種類の第2ポリマーは、使用の際にそれを溶解させないために架橋された形で提供することができる。様々な態様において、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターは少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも溶媒の水のそのパラメーターに近い。実際問題として、水はあらゆる溶媒の内でおおよそ最も高い溶解度パラメーターを有しており、それはその比較的高い蒸発熱と関係している。従って、様々な態様において、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも”より高い”ものとして特性づけられる。このように、少なくとも1種類の第2ポリマーは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも高いその溶解度パラメーターが溶媒の水の溶解度パラメーターにより近いため、より膨潤する。
【0017】
[0018] 少なくとも1種類の第2ポリマーは、そのより高い(水により近い)溶解度パラメーターにより示されるように、より大きな程度まで膨潤する。例え厳密に言えば溶解度パラメーターが膨潤の程度または平衡の指標でありその速度の指標ではないとしても、便宜上この特性を”より速く膨潤する”と呼ぶ。溶解度パラメーターが水の溶解度パラメーターに近いためにより大きな程度まで膨潤するポリマーがより速い速度でも膨潤して本明細書で記述される利点を提供することは普通に観察される。
【0018】
ヒルデブラント溶解度パラメーター
[0019] ヒルデブラント溶解度パラメーターは特定の溶媒の相対的な溶解力のふるまいを示す数値である。それは溶媒の凝集エネルギー密度から得られ、さらにそれは蒸発熱から得られる。凝集エネルギー密度SIは次の式から得られる:
【0019】
【化1】

【0020】
ここでcは凝集エネルギー密度であり;ΔHは蒸発熱であり;Rは気体定数であり;Tは温度であり:Vはモル体積である。ヒルデブラント溶解度パラメーターは次の式に従って凝集エネルギー密度の平方根として得られる:
【0021】
【化2】

【0022】

[0020] 用語”ヒルデブラント”を、溶解度パラメーターの単位として採用した。説明として、表1はいくつかの溶媒をヒルデブラントパラメーターが増大する順に示す。ヒルデブラントパラメーターは標準国際単位(SI単位)に従う値で与えられる。ヒルデブラントパラメーターのSI単位はδ/MPa1/2として与えられる。
【0023】
表1
選ばれた溶媒のヒルデブラント溶解度パラメーター
【0024】
【表1】

【0025】
[0021] ポリマーに関するヒルデブラントパラメーターは、ある範囲のヒルデブラントパラメーターを有する液体の”スペクトル”中でのポリマーの膨潤の程度を観察することにより実験的に決定することができる。例えば、わずかに架橋したポリマーを一連の液体にさらす。ポリマーは膨潤するが、架橋のため溶解しない。膨潤の程度を液体のヒルデブラントパラメーターに対してプロットする。実験的に、データにいくらかのばらつき(scatter)が観察されるが、全体的な傾向は通常は明らかであり、膨潤対溶媒の曲線の最大値の位置からヒルデブラント値の適切な単一の値または範囲を得ることができる。このようにして、広い範囲のポリマーに関するヒルデブラント溶解度パラメーターが文献で報告されている。そのポリマーには、ポリアクリレート類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリエーテル類(ポリエチレン酸化物およびポリプロピレン酸化物を含む)、エチレンプロピレンコポリマー類およびターポリマー類、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、シリコン類、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、およびポリビニルピロリドンが含まれる。膨潤方法およびポリマーに関する溶解度パラメーターを測定する他の方法は、Allan Barton,CRC PressによるHandbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters(1991)の14章およびそこで引用されている参考文献に示されており、その完全な開示を援用する。また、今日ではその計算をより容易にするためのソフトウェアが利用可能であり、例えば、構造に基づいたモデル(structured base model)を用いてヒルデブラント溶解度パラメーターを計算するためにSybyl Molecular Modeling Program 6(Tripos Associatesから入手可能)を用いる。ヒルデブラント溶解度パラメーターについての他の論考は、例えばGuenin et al.(米国特許第6,036,964号)において、特に第5および6欄で示されており、その開示を本明細書に援用する。
【0026】
膨潤性ポリマー
[0022] カプセルのシェルは、構造ポリマーとして機能する少なくとも1種類の第1ポリマーを含む。カプセルはさらに、水中で少なくとも1種類の第1ポリマーよりも大きな膨潤を示す少なくとも1種類の第2ポリマーを含む。様々な態様において、水中でのより大きな膨潤は、ヒルデブラント溶解度パラメーターのより高い値として表される。様々な観点において、より溶けやすい少なくとも1種類の第2ポリマーは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも0.5ヒルデブラント大きい溶解度パラメーターを有する。他の態様において、より膨潤性の高い少なくとも1種類の第2ポリマーは、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも1ヒルデブラント大きい溶解度パラメーターを有する。
【0027】
[0023] 少なくとも1種類の第1ポリマーとして利用できる可能性のあるポリマーの限定的で無い例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(polylactic−co−glycolic acid)、ポリカプロラクトン、ポリホスホエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリグルコサミン、ゼラチン、およびアラビアゴムが含まれる。これらの物質の全ては、文献中で報告されている、または本明細書で記述されている実験法を用いて評価することができるヒルデブラント溶解度パラメーターを有する。
【0028】
[0024] 少なくとも1種類の第2ポリマーとして利用できる可能性のある膨潤性の物質の限定的で無い例には、ポリエチレン酸化物、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリグルコサミン、ポリビニルメチルエーテル−コ−マレイン酸(polyvinyl methyl ether−co−maleic acid)、ヒアルロン酸、および多糖類が含まれる。多糖類の例には、アラビアゴム、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、および同様のものが含まれる。
【0029】
[0025] 少なくとも1種類の第2ポリマーとして選ばれたものが水中でより高い程度で膨潤する限り、少なくとも1種類の第1ポリマーは少なくとも1種類の第2ポリマーとして可能であるものから選択することができ、その逆も同じである。
【0030】
[0026] カプセル中の少なくとも1種類の第2ポリマーは水を吸収して少なくとも1種類の第1ポリマーよりも大きい程度まで膨潤するため、様々な態様において、それらは一種の”包帯”として機能して、壁を通る外側から中心部への水、または中心部から外側への有効物質の通過から壁の物質を効果的に封鎖する。上記のように、それらは水を吸収して膨潤し、それによりシェルの壁の中の平均空き空間を減少させ、シェルの壁の境界を越える物質のための曲がりくねった経路の長さを増大させることにより、包帯として機能する。
【0031】
[0027] 様々な態様において、第2ポリマーは、例えそれが少なくとも1種類の第1ポリマーよりも大きな程度まで水で膨潤してもそれが水に溶解しないように架橋されている。様々な態様において、架橋は照射架橋および化学的架橋を含む一般的に行われている手段により実施される。照射架橋には、電子ビーム、紫外線、γ線照射、x線、および他の手段による架橋が含まれる。化学的架橋は、ポリマーをポリマー上の官能基と反応する複数の官能基を含む架橋組成物または分子にさらすことにより実施される。例えると、ヒドロキシル官能基を有するポリマーは、複数のヒドロキシル反応基、例えばカルボキシル類、アルデヒド類、メチロール基、またはイソシアネート類を含む架橋組成物により架橋することができる。例えば、グルタルアルデヒドは第2ポリマーを架橋するのに用いることができる。
【0032】
カプセル
[0028] 第1および第2ポリマーを含むカプセルは、水に対してより不透過性が高い傾向がある。結果として、壁を通る水の通過が第2の”包帯”ポリマーの存在により抑制されるため、カプセル化した有効物質は水性の環境においてより安定である。このようにカプセルは一種の”延長”または”遅延”放出組成物であり、ここで有効物質は一般的な手段により作られたカプセルと比較して長い期間に渡って放出される。有効物質のカプセルからの遅延した、または長引く放出の程度は、本明細書で記述されるカプセル中の少なくとも1種類の第2ポリマーの性質およびレベルにより制御、または調節することができる。あるいは、有効成分を含む延長放出組成物は、比較的早い有効物質の放出を示す一般的に用いられるカプセルと本明細書に記述される方法により作られた他のカプセルを組み合わせることにより配合することができる。このように、一般的に用いられるカプセルは有効物質のより速い、または即時の放出を提供することができ、一方で本明細書で記述される”包帯された”カプセルは、有効物質のより遅い、またはより遅延した放出を提供することができる。本明細書で記述されるカプセルは、多種多様な用途で用いることができる。限定的で無い例には、口腔ケア、例えば水性口腔ケア組成物、練り歯磨きおよび口内洗浄剤;個人用ケア、例えば制汗剤および体臭防止剤;シャンプー;コンディショナー;ボディーウォッシュ;固形石鹸;髭剃りクリーム;化粧品;ローション;ならびに家庭用ケア、例えば硬い表面の洗浄剤、皿洗い用の液体、光美容用の液体、オートディッシュ(auto dish)、洗濯用洗剤、重質洗剤(heavy duty detergent)、および柔軟剤が含まれる。
【0033】
[0029] これらおよび他の用途において、組成物の配合を助けるために様々な有効物質をカプセル化することができる。有効物質の限定的で無い例には、香味および着色剤、抗微生物剤、反応性物質、例えば過酸化物、および例えば酵素のような化学的に感受性のある物質が含まれる。その有効物質は、一般的に用いられる手段により、本明細書で記述される第1および第2ポリマーを用いてカプセルの中に組み込むことができる。カプセルの中心部に含まれる有効成分の限定的で無い例には、食用油、パラフィン油、シリコン油、タンパク質、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、レシチン、ソルビトール、抗酸化剤、フェノール誘導体、抗微生物剤、抗炎症物質、齲歯抑制物質、ビタミン類、酵素、植物の抽出物、保存剤、pH調節剤、甘味料、香味料、および香料が含まれる。香味料および香料には、限定では無いが、精油および抽出物、チンキ類およびバルサム類、例えば、アニス種子油(anise seed oil)、バジル油、樟脳油(camphor oil)、シトロネラ油(citronella oil)、ユーカリ油(eucalyptus oil)、カモミール油(chamomile oil)、ミント油、ライム油、チョウジ油(clove oil)、ペパーミント油、セージ油(sage oil)、タイム油(thyme oil)、バニラ抽出物、桂皮油、および同様のものが含まれる。追加の有効物質には、口、喉、または鼻腔の中で冷却または清涼効果を有する物質が含まれる。限定的で無い例には、メントール、ユーカリプトール、チモール、サリチル酸メチル、および同様のものが含まれる。
【0034】
[0030] 有効成分を含むカプセルは、クリーム、ゲル、泡状物質、分散物、チューインガム、香錠、およびロゼンジを含む多くの物質の形の中に配合することができる。口腔ケアの領域において、カプセルは限定では無いが練り歯磨き、歯用クリーム、および歯用ゲルの中に配合することができる。
【0035】
マイクロカプセル化
[0031] 中心部の中の有効物質ならびに水に対する増進された不透過性を提供する第1および第2ポリマーを含むカプセルは、本明細書で記述される第1および第2ポリマーの両方を組み込む一般的な手段により作られる。例えば、コアセルベーションは、中心部の材料が油性または極性物質のどちらであるかに依存して、水相の分離(水中油カプセル化)または有機相の分離(油中水カプセル化)のどちらかを用いて実施することができる。有機相の分離のプロセスに関して説明すると、極性の中心部を油性または非極性の連続的な媒体の中に分散させる。次いで壁の材料を連続的な媒体中で溶解させる。壁の材料は上記の少なくとも1種類の第1ポリマーを含み、さらに第2ポリマーを含んでいてよい。あるいは、第2ポリマーは極性の中心部の中に提供される。高い温度まで加熱して適切な時間、例えば1時間それを保った後、系を急冷させる。冷却するとカプセルが形成される。
【0036】
キャリヤー
[0032] 様々な態様において、カプセルは許容できるキャリヤーと一緒に配合されて様々な用途で有用な組成物を提供する。組成物の形に依存して、許容できるキャリヤーは液体キャリヤー、粉末キャリヤー、溶解可能な固体キャリヤー、ガム基礎剤、フィルム形成ポリマーまたはポリマー類、などであることができる。
【0037】
[0033] 口腔ケアの領域において、組成物はカプセルに加えて口に許容できるキャリヤーを含むと言われている。本明細書で用いられる”キャリヤー”は、カプセルが有効成分として配合される個々の経口組成物の構成要素を指す。様々な態様において、キャリヤーは経口組成物の、カプセル中の構成要素以外の構成要素の全てを含む。他の観点において、その用語は、当業者にキャリヤー、増量剤、または他の比較的不活性な成分として機能すると一般的に理解されている不活性な成分、キャリヤー、ビヒクル、および同様のもののような構成要素を指す。言い換えると、キャリヤーという用語は文脈によって異なる言い方で用いられる。文脈によって、経口組成物はカプセルおよびキャリヤーに加えて他の構成要素も含んでいてよい。しかし、全ての文脈において、本発明の経口組成物の構成要素はキャリヤーの構成要素およびカプセルに分けることができる。
【0038】
[0034] 練り歯磨きの場合に関する限定的でない例において説明すると、キャリヤーは組成物の重量による大きな割合を提供する水/湿潤剤系であると言うことができる。あるいは、練り歯磨きの組成物のキャリヤーの構成要素はカプセル以外の水、湿潤剤、および他の機能的構成要素であると考えてよい。どのような文脈でも、当業者には練り歯磨きの組成物がカプセルおよび口に許容できるキャリヤーの両方を含むことが分かる。
【0039】
[0035] さらに説明すると、洗口剤において、キャリヤーは一般に、その中に有効成分が溶解または分散している水/アルコールの液体の構成要素であると考えられる。溶解可能なロゼンジにおいて、キャリヤーは一般に、口の中でゆっくりと溶解して口の中の口腔表面へと至る固体の母材物質を含むと理解されている。チューインガムにおいて、キャリヤーはガム基礎剤を含み、一方食用のストリップ(strip)において、キャリヤーは1種類以上のフィルム形成ポリマーを含む。
【0040】
[0036] 上記の例の全てにおいて、経口組成物はどんな形であれ、カプセル、ふさわしい形での適切なキャリヤー、および経口組成物に望ましい特性を与えるのに必要な他の有効物質または機能物質を含む。追加の有効物質および機能物質を下記で記述する。
【0041】
[0037] カプセルに加え、多くの有効成分および機能物質が本発明の様々な組成物に含まれる。その物質には、限定ではないが、研磨剤、湿潤剤、界面活性剤、抗歯石剤(anticalculus agents)、増粘剤、粘性調節剤、抗齲歯剤(anticaries agents)、風味料(flavorant)、着色剤、追加の抗菌剤、抗酸化剤、抗炎症の構成要素、などが含まれる。それらは既知の方法に従って本発明の経口組成物のペースト、すすぎ剤(rinses)、ガム、ロゼンジ、ストリップ、および他の形に添加される。
【実施例】
【0042】
[0038] 下記の限定的でない実施例は、成分の混合により調製することができる。量は組成物全体の重量パーセントに基づく。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部および中心部を取り巻き封入するシェルを含むカプセルであって、シェルが次のものを含むカプセル:
a)第1の水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第1ポリマー、および
b)第1の水溶性パラメーターよりも高い水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第2ポリマー、
ここで、
i)第2ポリマーの少なくとも1種類は架橋されており、および/または
ii)少なくとも1種類の第2ポリマーの全ては、少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在する。
【請求項2】
請求項1に記載のカプセルであって、第2ポリマーが架橋されているカプセル。
【請求項3】
請求項1に記載のカプセルであって、少なくとも1種類の第2ポリマーの全てが少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在するカプセル。
【請求項4】
請求項1に記載のカプセルであって、中心部が第1および第2ポリマーの合計の100部につき重量により1〜40部の第2ポリマーを含むカプセル。
【請求項5】
請求項1に記載のカプセルであって、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターが、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも0.5ヒルデブラント単位大きいカプセル。
【請求項6】
請求項1に記載のカプセルであって、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターが、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも1ヒルデブラント単位大きいカプセル。
【請求項7】
請求項1に記載のカプセルであって、さらに有効物質を含むカプセル。
【請求項8】
請求項7に記載のカプセルであって、有効物質が口腔ケアの成分であるカプセル。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、さらに口腔ケア組成物のためのキャリヤーを含む組成物。
【請求項10】
カプセルシェルの水の透過性を減少させる方法であって、次のものの混合物からカプセルを形成することを含む方法:
a)第1の水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第1ポリマー、および
b)第1の水溶性パラメーターよりも高い水溶性パラメーターを有する少なくとも1種類の第2ポリマー、
ここで、
i)第2ポリマーの少なくとも1種類は架橋されており、および/または
ii)少なくとも1種類の第2ポリマーの全ては、少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在する。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、第2ポリマーが架橋されている方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、少なくとも1種類の第2ポリマーの全てが少なくとも1種類の第1ポリマーの全てよりも少ない量で存在する方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、中心部が第1および第2ポリマーの合計の100部につき重量により1〜40部の第2ポリマーを含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターが、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも0.5ヒルデブラント単位大きい方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、少なくとも1種類の第2ポリマーの溶解度パラメーターが、少なくとも1種類の第1ポリマーの溶解度パラメーターよりも少なくとも1ヒルデブラント単位大きい方法。

【公表番号】特表2010−528020(P2010−528020A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509423(P2010−509423)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/061927
【国際公開番号】WO2008/147619
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】