説明

不連続用量の薬剤を投与するためのモジュラー型薬品送達デバイス

ユーザーによって装着されるように適応されかつ送達される薬剤を保持するためのリザーバー(10b)と、経皮薬品送達のために適応される注入部材(22)と、薬剤を汲み出してリザーバー(10b)から注入部材(22)に向けて輸送するように適応されるポンプ(12)とを含む使い捨ての送達ユニット(2)、及び、ポンプ(12)を駆動するための駆動モジュールを含む、別個の再使用可能なベースユニット(4)を含む、複数の不連続用量の薬剤を供給するように適応される薬品送達デバイスが提供される。ベースユニットを送達ユニットと一時的に通じ合う状態に置くことにより、使い捨ての送達ユニット中のポンプは活性化されて、ある用量の薬剤を送達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品送達デバイス、特に、不連続用量の薬剤を送達するのに好適な薬品送達デバイスに関する。薬剤は、特に、糖尿病患者のためのインスリンであってもよい。
【背景技術】
【0002】
糖尿病、成長ホルモン欠乏症などの多くの病態のコントロール又は治療、疼痛治療、及び化学療法では、複数用量の薬剤を規則的に経皮投与することが必要である。例えば、糖尿病患者は、1日当たり数回インスリンの注入を必要とする場合がある。糖尿病患者のために必要とされるインスリン投与処方は、例えば、糖尿病のタイプ、投与されるインスリンのタイプ、病態の実際の重度、患者のライフスタイル、患者の日常習慣及び食事などいくつかの要因に応じて変動する。従って、糖尿病患者は、1日当たり数回、病院又は保健センター以外の場所で、自分で複数用量のインスリンを投与しなければならないことがよくある。
【0003】
複数用量の薬剤の自己投与を促進するためにこれまでいくつかのデバイスが提案されている。このようなデバイスのうちの一つのタイプは、よくパッチデバイスと呼ばれる。パッチデバイスは、患者の皮膚に直接付着される。
【0004】
特許文献1は、製剤投与のためのモジュラー型輸液ポンプを開示する。この輸液ポンプは、ともに注入部位に近接して配置される、注入モジュール及びポンプモジュールを含む。ポンプモジュールは、リザーバー、モーター、及びポンプユニットを含む。ポンプユニットは、製剤を、リザーバーから、ポンプモジュールに接続される注入モジュールへ輸送するように構成される。第3モジュールは、エネルギー源を含み、これは、ポンプモジュールに、このポンプモジュールにエネルギーを供給するように接続される。
【0005】
特許文献2は、ポンプモジュールとモーターセクションを有する、液状薬剤の皮下送達のためのポンプシステムを開示する。ポンプモジュールとモーターセクションを含む、このポンプシステムはコンパクトであり、従って、例えば、パッチ状として注入部位に直接固定することが可能である。
【0006】
特許文献3は、薬品送達システムを操作するためのユーザー入力デバイスを開示する。このユーザー入力デバイスは、パッチデバイスと通じ合う。パッチデバイスは、リザーバー、及び、このリザーバーから薬品を吐出するための吐出アッセンブリを含む。
【0007】
特許文献4は、医学応用のための、エネルギー最適化データ送信システムを開示する。生体の中又は上に置かれる一つのユニットは活性化スイッチを含み、これは、第2外部ユニットから活性化信号が受信されると、スイッチがオンされる。第1ユニットは、活性化信号が受信されるまで非動作状態を持続し、そのためエネルギー消費を最適化することが可能である。
【0008】
特許文献5は、2つの部分の筐体を含む、パッチ状の、通院患者用薬品送達デバイスを開示する。ポンプモジュールを含む第1部分は、再使用可能なユニットであり、螺旋形液体リザーバー、フィルター、及び半ば軸回転するカニューレを含む第2部分は、使い捨てのユニットである。
【0009】
従来、インスリンなどの薬剤の自己投与をやり易くするために、パッチデバイスの外にいくつかのペン型注入デバイスが開発されている。通常、このようなペン型注入デバイスは、インスリンなどの薬剤を含むバイアル(vial)を装填することが可能な、長いチューブ状のバイアルホルダーを含む。このバイアルホルダーの一端には、二重先端を持つ針アッセンブリが搭載され、バイアルホルダーの対向末端には、プランジャーが搭載され、プランジャーは、このプランジャーを駆動するためのピストンロッドに接続される。バイアルホルダーは、ペン本体の中に搭載され、この本体は、送達される用量を設定するための用量設定手段、及び、この用量設定に対応する距離だけプランジャーを押し込むための駆動手段を含む。使用時、薬剤を含むバイアルは、バイアルホルダー中に挿入され、そのため、薬剤バイアル上の、弾性シーリング膜の形状を持つ中隔は針アッセンブリによって刺突される。次に、ペン本体が、バイアルホルダーに接続され、患者は、プランジャーを前方に押し出すように駆動手段を操作して、あらかじめ設定された用量の薬剤を送達する。各使用後、患者は二重先端付き針アッセンブリを廃棄し、ペンを、次の用量投与のために保持する。各使用毎に、新規二重先端付き針アッセンブリがペンに搭載され、患者は、新たな注入を行う。何回かの用量投与後、バイアルは空になるので、廃棄しなければならない。患者は、バイアルホルダーからバイアルを外し、新規バイアルを挿入し、ペンを再び組み立ててその後の使用に備える。
【0010】
このような注入ペンのおかげで、患者は、複数用量の、インスリンなどの薬剤を、標準的皮下用シリンジ及びバイアルを使ってするよりも、もっと簡単に、もっと快適に自己投与することが可能となる。しかしながら、このペン型注入デバイスはいくつかの欠点を有する。
【0011】
このような注入ペンデバイスを使用する患者は、使用毎に、ペンデバイスを組み立て直し、各使用のために新規針アッセンブリをペンの中に搭載することを強制される。バイアルが空になる度毎に、薬剤バイアルを外し、交換しなければならない。このような操作は不便であり、かつ、汚染リスク源を導入する。
【0012】
更に、患者の必要とする各用量の薬剤毎に、患者は、新たに注射を行うことを強制される。従って、患者は、一日の経過において数回の注射を行うことを強制される。反復注射を行う必要は、患者にとっては、特に、公的な場所で薬剤を投与する必要のある場合は、不都合であり、患者において、自分の薬剤投与に対する恐怖感を引き起こす可能性がある。患者の身体に複数の注射の箇所を集中させることも問題であり、これは、以後の注射の実行をより困難にする。
【0013】
公知の注入ペンデバイスは、一般に、ごく基本的な、機械的用量測定設備は有するが、投与量を正確に測定し、調整するための効果的手段、又は、ある期間に亘って投与間の時間及び/又は投与数又は量を監視するための効果的手段を欠く。
【0014】
従って、患者が使用するのに便利であり、必要とされる複数用量の、インスリンなどの薬剤の、安全、効率的で、不連続な投与を可能とする、従来品に取って代わる薬品送達デバイスの提供が現に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 2004/110526 A1
【特許文献2】EP 1527793 A1
【特許文献3】WO 2007/000427 A1
【特許文献4】WO 2006/114297 A1
【特許文献5】US 4,734,092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記に鑑み、本発明の目的は、現今のペン型注入器の、上述の欠点を克服する、薬剤の不連続投与を実行するための薬品送達デバイスを提供することである。
【0017】
携帯が可能で、使用が簡単であり、ユーザーによる複雑な操作を要しない薬品送達デバイスを提供するのが本発明の目的である。
【0018】
正確で、信頼性が高く、コンパクトで、使用するのに極めて安全な薬品送達デバイスを提供することができたならば、それは有利であろう。
【0019】
製造する費用に対して効果が高く、そのため、少なくとも部分的に、使い捨てのデバイスとして製造が可能である、薬品送達デバイスを提供することができたならば、それは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、請求項1に記載の薬品送達デバイスによって実現される。
この請求項において開示されるものは、特に、複数の、不連続用量の薬剤を供給するように適応され、かつ、ユーザーによって装着されるように適応される使い捨ての送達ユニット、及び別個の、再使用可能なベースユニットを含む、薬品送達デバイスである。この使い捨ての送達ユニットは、送達される薬剤を保持するためのリザーバー、薬剤の経皮送達のために適応される注入部材、及び、送達される薬剤をリザーバーから注入部材へ汲み出すように適応されるポンプを含む。別個の、再使用可能なベースユニットは、ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む。ベースユニットを送達ユニットに一時的にドッキングし、それによってベースユニットが送達ユニットとパワーを通じてポンプを駆動すると、使い捨ての送達ユニット中のポンプが活性化されて、ある用量の薬剤を送達する。本明細書では、「経皮」という用語は、もっとも広い意味で理解しなければならず、皮膚の中に浸透するか、又は横断する薬品送達であるならばいずれのタイプの薬品送達でも、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、脊髄性、動脈内、及び皮内を含む薬品送達も含むことが意図される。
【0021】
本送達ユニットは、コンパクトであり、ユーザーによって快適に装着される。使い捨ての送達ユニットは、ユーザーの皮膚に対し、この送達ユニットを取り外し可能に接着的に搭載するように適応される接着性ベースを含むと有利である。注入部材は、針、取り外し可能な針によって挿入されるカニューレ、又は、経皮的薬品送達に好適なカテーテルの形状であってもよい。送達ユニットは、廃棄するのに好都合で、環境に優しくなるよう、バッテリー無しで提供されてもよい。
【0022】
本発明の送達ユニットは、ユーザーによって、ある期間、例えば、数日間、例えば、1から7日、好適には2から3日間装着されてもよい。本発明の薬品送達ユニットによって、ユーザーが、薬剤の複数の不連続用量を、例えば、インスリンの、複数のボーラス(bolus)用量を、薬剤投与が必要とされる度毎に新たに注射を実行することなく、自己投与可能とされると好都合である。従って、本薬品送達デバイスは、使用が不連続的で、便利である。
【0023】
ポンプ部分、薬剤リザーバー部分、及び注入部材部分は、全て、送達デバイスの中に含まれる。送達ユニットは、単純な構造を持ち、ポンプ用電源をまったく含まず、使い捨てのユニットとして製造することを可能とするものであれば、簡単に入手が可能な、安価な材料及び方法を用いて製造してよい。この使い捨ての送達ユニットは、針ユニット及び/又は薬剤バイアルの交換を実行する際、ユーザーによる複雑な操作の必要性、及び関連する汚染リスクが回避されるので、使用後廃棄される閉鎖ユニットとして提供されると好都合である。それとは別に、使い捨ての送達ユニットは、針によって中隔を貫通する使用の直前に、薬剤又は賦形剤によって充填することも可能である。後者の実施態様は、成長ホルモンなどの薬剤のために用いることが可能である。これらの薬剤は、有効期限を延長するために送達ユニット中に粉末状で保存され、使用前に、患者がそれに賦形剤を加えるものである。
【0024】
好ましい実施態様では、ポンプは、ベースユニットを、送達ユニットの駆動モジュールの上に持って行って、それに対して、直接又は、一層の布を介して押し付けることによって活性化される。本発明の薬品送達デバイスによれば、ポンプを活性化するのに、ベースユニットと送達ユニットの間にどのような機械的接続又は取り付けも必要とされない。従って、本送達デバイスは、極めて便利で、簡単であり、使用が安全である。ベースユニットは、患者による安易な輸送に好適な大きさであると有利であり、例えば、ポケット又はハンドバックにおいて運ばれると好都合である。ベースユニットは、監視及び調節目的のために送達ユニットと情報を交信してもよい。
【0025】
好ましい実施態様によれば、ポンプを駆動するための駆動力は、ポンプのローターと、駆動モジュールのステーターとの間における電磁的なパワー伝達によって供給されてもよい。駆動力は、駆動モジュールのステーター上の電磁石によって供給され、これがポンプローターに配置される永久磁石を駆動すると有利である。好適なポンプシステムが、国際特許出願WO 2005 039674に記載されるマイクロポンプによって提供される。なお、本出願の内容を引用により本明細書に含める。WO 2005 039674に記載されるマイクロポンプは、インスリンなどの液状薬剤の皮下送達によく適応される。このポンプは、その構造の単純性、及びその特定の機能原理によって、正確、コンパクト、ポータブルで、信頼性が高い。それとは別に、駆動力は、ベースユニット中の永久磁石を回転することによって、或いは、コイルによって創出される回転磁場によって供給されてもよく、これが、ポンプローター中の永久磁石を駆動する。それとは別に、可動磁石又はコイルによってベースユニット中に生起される交番磁場が、送達ユニットのコイル中に電力を誘起することによってポンプを駆動するようになっていてもよい。この電力は、ポンプには駆動力を、送達ユニットの電子成分には電力を供給する。
【0026】
好ましくは、ベースユニットは、電源及び、ポンプの動作を制御、監視するための電子回路を含む。ベースユニットは、ユーザーが、薬剤の必要用量を設定し、及び/又は、血糖レベルに関する情報を取得し、及び/又は、警告レベル又は時間予告を設定できるようにするために、一つ以上のボタン及びディスプレイの形状を取るユーザーインターフェイスを含むと有利である。
【0027】
好ましい実施態様では、ベースユニットは、少なくとも最終送達投与以後に経過した時間、少なくとも最終送達投与の量、及び/又は、ある期間、例えば、1日に投与された投与の数及び/又は量、のうちの一つ以上を監視するように適応されるメモリーデバイス、好適に電子メモリーチップを含むデバイスを含む。このようにすれば、ユーザーは簡単に、都合よく、自分の薬剤の投与を、例えば、インスリンのボーラス投与を監視することが可能となる。
【0028】
メモリーデバイスは、送達ユニットが、あまりに高頻度に、又はあまりに低頻度に薬剤用量を送達するように活性化された場合、ベースユニットに含まれる視覚的、振動性、又は聴覚的警告によってユーザーへの告知が可能となるように、アラーム機能を必要に応じて提供してもよい。ユーザーインターフェイスは、ユーザーによるアラーム機能の設定及び調整のための機能を提供すると有利である。
【0029】
更に、不連続用量の薬剤の投与を必要とする病態又は疾患の治療法であって、送達される薬剤を保持するためのリザーバー、経皮的薬剤送達のために適応される注入部材、及び、薬剤を汲み出してリザーバーから注入部材に向けて輸送するように適応されるポンプを含む、使い捨ての送達ユニットを、この治療を要する患者の皮膚に取り外し可能的に固定すること;及び、ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む、別個の、再使用可能なベースユニットを、この送達ユニットに対し一時的にパワーが通じ合う状態に置き、それによって、ポンプを活性化して患者に対しある用量の薬剤を送達すること、を含む治療法が提供される。
【0030】
更に本明細書に開示されるのは、薬剤のボーラス投与を、それを必要とする患者に対して実施する方法であって、患者によって装着されるように適応され、かつ、送達される薬剤を保持するためのリザーバー、経皮的薬品送達のために適応される注入部材、及び、薬剤を汲み出してリザーバーから注入部材に向けて輸送するように適応されるポンプを含む、使い捨ての送達ユニットを準備すること、ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む、別個の、再使用可能なベースユニットを準備すること、前記送達ユニットを患者の皮膚に取り外し可能的に固定すること、及び、一時的にベースユニットを送達ユニットにごく近接して配置し、それによって、患者に対しある用量の薬剤を送達するようにポンプを活性化すること、を含む方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法は、経皮投与を必要とする薬剤、例えば、インスリンのボーラス注入の、複数の不連続投与において、患者に対し、便利、安全で、不連続な自己投与を可能とする。
【0032】
更に、複数の不連続用量の薬剤を供給するように適応される薬品送達デバイスを操作する方法であって、送達される薬剤を保持するためのリザーバー、経皮的薬品送達のために適応される注入部材、及び、薬剤を汲み出してリザーバーから注入部材に輸送するように適応されるポンプを含む、使い捨ての送達ユニットを、ユーザーの皮膚に取り外し可能的に固定すること;及び、
ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む、別個の、再使用可能なベースユニットを一時的に送達ユニットと通じ合う状態に置き、それによって、ポンプを活性化してある用量の薬剤をリザーバーから注入部材に輸送すること、を含む方法が提供される。
【0033】
本発明の更に別の目的及び有利局面は、下記の図面と組み合わせて参照される、特許請求項、及び本発明の実施態様に関する下記の詳細な説明から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】再使用可能なベースユニット、及び使い捨ての送達ユニットを備える、本発明の実施態様による薬品送達デバイスの断面図を示す。
【図2】本発明の実施態様による送達デバイスのベースユニットの平面図を示す。
【図3】本発明による薬品送達デバイスの、筐体部分が無い部分の実施態様の斜視図を示す。
【図4】本発明による薬品送達デバイスの、筐体部分が無い部分の別の実施態様の斜視図を示す。
【図5】送達ユニット実施態様の、ポンプ及びコイル型リザーバー(巻き解かされた状態を示す)の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、本発明による薬品送達デバイスの実施態様は、使い捨ての送達ユニット2及び再使用可能なベースユニット4を含む。
【0036】
送達ユニット2は、その中に、液状薬剤を保持するためのリザーバー10a、10b、及びポンプ12を含むチャンバー8を定める筐体6を含む。リザーバーは、単一ユニットとしてポンプモジュール12に搭載されると有利である。好適であれば、いずれのタイプのリザーバーであっても考慮の対象としてよい。
【0037】
リザーバーは、潰すことができるリザーバー10a、又はコイル型リザーバー10bであってもよい。本発明の実施態様によれば、図5に示すように、コイル型リザーバー10bは、シリンジによって充填されてもよいポンプ12に付着される。リザーバー中に存在する空気の離脱を可能とするように、リザーバーセクションの末端には、空気は通過させるが、液状薬剤にはそうさせない疎水膜9が設けられる。更に、リザーバー10bが満たされると、その中において気体が圧縮される閉鎖チャンバー7を設けることが可能である。次に、この圧縮気体は、液状薬品をポンプ12の方に運ぶ。チャンバー7の壁は屈曲性材料で与えられ、そのため、リザーバー10bが満たされるとチャンバーが膨張するようになっていてもよい。チャンバー7の壁が非屈曲性材料で与えられる場合、ポンプ12に対する液体圧を、ポンプバルブに漏洩を誘起しない範囲に留めるためには、チャンバー7の体積は、リザーバー10bの体積と少なくとも同じ大きさとしなければならない。
【0038】
それとは別に、コイル型リザーバー10bは、疎水性膜を備えずに提供されてもよい。この実施態様では、リザーバーは閉鎖され、かつ、気泡が、毛管作用のために自由に動き回ることがない直径を有し、この直径の測定値は、通常、1〜5mmの間にあってもよい。
【0039】
ポンプは、経皮送達のために正確な量の薬剤を送達するのに好適であるならば、いかなるタイプのポンプであってもよい。ポンプは、上述の国際特許出願WO 2005 039674に記載されるマイクロポンプであってもよい。なお、この出願を引用により本明細書に含める。
【0040】
送達ユニット2は、この送達ユニット2のパラメータが指定の範囲を逸脱した場合、アラームを起動するように適応されるコンデンサー(図示せず)を含んでもよい。このコンデンサーは、送達ユニット2が電池を含まなくともよいように、再使用可能なベースユニット4から電気エネルギーが供給されてもよい。送達ユニットの典型的パラメータは、リザーバー10a、10bの充填レベル、ポンプ12の漏洩又は閉塞、又はリザーバーにおける気泡であってもよい。
【0041】
再使用可能なベースユニット4は、筐体23、電源24、駆動モジュール18、及び、ポンプ操作用の駆動モジュールを調節、操作するための電子回路26を含む。駆動モジュールは、これらのユニット2、4が互いに近接して配置されるとき、使い捨ての送達ユニット中のポンプモジュール12のモーター部分に作用する(即ち、この部分にパワーを伝達する)、変動性又は可動性磁場を発生するように構成される、変動性磁場発生システム18a、18b、19を含む。ベースユニットは、相補的ドッキング界面17を形成する、送達ユニット2の非搭載上面に対し、本質的に相補的な形状を持つドッキング界面11を形成する陥凹部分を有する、密着性下面13を含み、そのため、ベースユニットが、送達ユニットの上にガイドされ、位置付け可能とされると有利である。このため、陥凹部分には、それが送達ユニットの上にガイドされ、ベースユニットを位置付けするのを補佐するように、漏斗形状の進入部分15が設けられていてもよい。シャツなどの衣服繊維の層がこれらのユニットの間に納まるのを可能とするように、陥凹部分の全体径D2は、送達ユニットの外径D1よりもやや大きくなっていてもよい。こうすると、患者は、最終層の衣服を脱ぎ去ることなく、行儀よく送達ユニットの上に不連続にベースユニットを納めることができるので好都合であり、更に、若干の余分なスペースがあるので、送達ユニットの上にベースユニットを好適にドッキングさせることが可能となる。
【0042】
図示の実施態様では、使い捨ての送達ユニット2のポンプ12は、全体として円筒円板形状で、その周囲に複数の磁極を与える1個以上の永久磁石が搭載される、モーター部分を有するローター14を含む。図4に示される実施態様では、ポンプローター上の永久磁石は、再使用可能なベースユニット4の駆動モジュール18a中に配置される電磁石16aによって駆動、回転される。図3に示される実施態様では、ポンプローター上の永久磁石は、再使用可能なベースユニット4の駆動モジュール18bにおいて、ギア変換機構21を介してモーター19によって駆動回転されるローター27上に配置される磁石16bによって駆動回転される。
【0043】
使用の際は、ポンプを活性化してある用量の薬剤を送達するために、ユーザーは、例えば、ベースユニットを送達ユニットに対してドッキングさせることによって、ベースユニットを送達ユニットに近づけ、駆動モジュール中の電磁石16a、又は磁石16bを、ローター上の永久磁石に対し、電磁又は磁気パワーが通じ合う状態(即ち、無接触パワーの通じ合う状態)となるようにし、そうすることによってローターを駆動回転させる。ベースユニットは、直接接触において、又は、衣服を介してなどの間接的接触において、送達ユニットの上、及びこのユニットに対向して設置されてもよい。
【0044】
ローターの磁極、及び駆動モジュールの電磁石又は永久磁石は、ポンプを介する薬剤の正確な投与を可能とするために、ローターの、正確な角度停止、起動、及び順行又は逆行運動を可能とするパルスモーターとして動作すると有利である。
【0045】
別の実施態様では、駆動モジュールによって生起される変動性磁場が、送達ユニット中に搭載される、コイル、又は複数のコイル、又はその他の変換デバイス(図示せず)に作用し、それによって、変換作用を介して上記コイル中に電力を誘起するようにしてもよい。この誘起される電力を用いて、送達ユニットに含まれるポンプモーターを駆動してもよい。
【0046】
筐体6は、患者の皮膚に対して送達デバイスを直接搭載するように、接着層を付着させた搭載下面20を有する。
【0047】
針又はカニューレ22は、ポンプ12の出口24から延びて、送達デバイスの搭載下面20から出る。カニューレは、取り外し可能な針(図示せず)によって刺入することが可能である。それとは別に、ポンプの出口は、薬剤の経皮送達に好適なカテーテルに付着させることも可能であり、その場合、注入又は進入部位を、使い捨ての送達ユニットから隔てることが可能となる。後者の実施態様では、ポンプの出口は、搭載下面を介してではなく、送達ユニットの側面から延びてもよい。
【0048】
送達ユニットの搭載面上の接着層は、使用前は、保護ストリップ(図示せず)によって保護され、使用直前に剥離される。針又はカニューレは、患者の皮膚中に挿入され、送達ユニットは、接着性基層によって患者の皮膚上に固定される。
【0049】
送達ユニットは、閉鎖ユニットとして提供され、一旦リザーバー中の液体が消費されるか、又は、他の理由で、例えば、一定期間の使用後、注入点の変更が必要とされるなどの際、全体として廃棄されると有利である。
【0050】
単一の閉鎖性使い捨てのユニットの中に、ポンプ、リザーバー、及び注入部材を組み込むことは特に有利である。なぜなら、そうすることによって、ポンプを薬剤を含むリザーバーに、及び/又は、注入部材をポンプモジュールに接続する際、操作のリスクが排除され、及び、リザーバーの再充填及びポンプの再使用が阻止され、送達ユニットが、単一の要素として廃棄されるからである。
【0051】
ベースユニットは、ユーザーが、必要用量の薬剤を設定し、必要に応じて調節機能を設定、調整することが可能となるように、一つ以上のボタン28a、28b、及び一つ以上のディスプレイ30a、30b、又はタッチ感受性ディスプレイの形状を取るユーザーインターフェイスを含むと有利である。ベースユニットは、ユーザーが、投与情報、例えば、ユーザーによる投与量設定の際、投与容量、少なくとも最後に送達された薬剤投与量、及び/又は、最終薬剤投与後の経過時間を視覚的に感受することを可能とするように、視覚的ディスプレイ画面、例えば、LED、又はその他のディジタルディスプレイ画面を含むと好適である。
【0052】
好ましい実施態様では、ベースユニットの電子回路26は、少なくとも最終送達投与以後に経過した時間、少なくとも最終送達投与の量、及び/又は、ある期間、例えば、1日に投与された投与の数及び/又は量、のうちの一つ以上を監視するように適応されるメモリーデバイス、好適に電子メモリーチップを含むか、又は電子メモリーチップ中に含まれるデバイスを含む。メモリーデバイスに記録される情報は、ユーザーインターフェイス及びディスプレイ画面を介してユーザーによって監視されると好都合である。このようにすれば、ユーザーは簡単に、都合よく、自分の薬剤の投与を、例えば、インスリンのボーラス投与を監視することが可能となる。
【0053】
メモリーデバイスは、送達ユニットが、あまりに高頻度に、又はあまりに低頻度に薬剤用量を送達するように活性化された場合、ユーザーの注意を喚起するために、必要に応じてアラーム機能を提供してもよい。ベースユニットは、ユーザーの注意を喚起するために、視覚的、振動性、又は聴覚的アラーム、例えば、閃光又はブザーを含んでもよい。それとは別に、このような情報は、ディスプレイ画面に表示されてもよい。ユーザーインターフェイスは、ユーザーがアラーム機能を設定及び調整するための機能を提供すると有利である。
【0054】
ベースユニットは更に、従来技術で公知のグルコース測定センサーを含む、グルコース測定デバイス32を、ベースユニットの電子回路26に接続させて含むと有利である。このデバイスは、投与すべき薬剤用量の計算、及び/又は、埋設された、第2の、グルコース連続センサーの較正に、このグルコースレベル情報を用いてもよい。
【0055】
本発明による薬品送達デバイスは、治療を要する患者に対する、複数の、不連続用量の薬剤の経皮投与において、例えば、糖尿病の治療におけるインスリンのボーラス投与において使用されると有利である。
【0056】
図示の薬品送達デバイスは、本発明の一実施態様によれば、ユーザーの皮膚に使い捨ての送達ユニットを固定し、ベースユニット上においてユーザーインターフェイスを介して薬剤の所望用量を設定し、別個の、再使用可能なベースユニットを装着される送達ユニットの近傍に設置することによって、例えば、直接接触として又は衣服を介して、ベースユニットを送達ユニットの上にドッキングさせることによって、このベースユニットを一時的にこの送達ユニットとパワー及び情報交信状態とし、それによって、ポンプを活性化して、ある用量の薬剤をリザーバーから注入部材に向けて汲み出すことによって操作されてもよい。
【0057】
投与と投与の間、ベースユニットは、ユーザーによって、例えば、ポケット又はハンドバッグの中に携帯されると好都合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の不連続用量の薬剤を供給するための薬品送達デバイスであって、
送達される薬剤を保持するためのリザーバーと、経皮薬剤輸送のために適応される注入部材と、前記送達される薬剤を汲み出して前記リザーバーから前記注入部材に向けて輸送するためのポンプと、外方ドッキング界面とを含む、ユーザーによって装着されるように構成された使い捨ての送達ユニットと;
前記送達ユニットと一時的に無接触パワーが通じ合う状態に設置されるように構成される別個の再使用可能なベースユニットとを含み、
前記ベースユニットが、前記ポンプを駆動してある用量の薬剤を送達するための駆動モジュールと、前記送達ユニットの外方ドッキング界面に対して設置されるように構成される相補的外方ドッキング界面とを有し、前記設置は、前記ベースユニットが前記送達ユニットに対し無接触パワーが通じ合う状態となるように前記ベースユニットを前記送達ユニットの上に一時的に位置づける際に前記ベースユニットがガイドされるように行われる
ことを特徴とする薬品送達デバイス。
【請求項2】
前記使い捨ての送達ユニットが、ユーザーの皮膚に対し前記送達ユニットを接着的に搭載するように適応される接着性ベースを含む請求項1記載の薬品送達デバイス。
【請求項3】
前記ベースユニットが、電源と、前記ポンプ及びユーザーインターフェイスの操作を調節するための電子回路とを含む請求項1又は2記載の薬品送達デバイス。
【請求項5】
前記ベースユニットが、少なくとも最終送達投与の量、1回以上の投与以後に経過した時間、及び/又は、ある期間に投与された投与の数及び/又は量、のうちの一つ以上を監視するように適応されるメモリーデバイスを含む請求項2又は3記載の薬品送達デバイス。
【請求項6】
前記メモリーデバイスがアラーム機能を含む請求項5記載の薬品送達デバイス。
【請求項7】
前記メモリーデバイスが想起機能を含む請求項5又は6記載の薬品送達デバイス。
【請求項8】
前記注入部材が、注射針又はカニューレである請求項1ないし7いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項9】
前記送達ユニットは、この送達ユニットのパラメータが指定の範囲を逸脱した場合、アラームを活性化するように適応されるコンデンサーを含む請求項1ないし8いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項10】
前記ポンプが、永久磁石付きのローターを含む請求項1ないし9いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項11】
前記送達ユニットが、前記ベースユニットによって生起される変動性磁場からのパワーを受容するように構成される一つ又は複数の変換コイルを含む請求項1ないし10いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項12】
前記駆動モジュールが、前記送達ユニットポンプのローター上に配される永久磁石を駆動するための、又は前記送達ユニット中の1個以上のコイルに電流を誘起するための電磁石を含む請求項10記載の薬品送達デバイス。
【請求項13】
前記駆動モジュールが、前記送達ユニットポンプのローター上に配される永久磁石を駆動するために、又は前記送達ユニット中の1個以上のコイルに電流を誘起するために、前記ローター上に永久磁石と、前記ローターを駆動し回転させるように構成されるモーターとを含む請求項10記載の薬品送達デバイス。
【請求項14】
前記ローター及び前記駆動モジュールが、パルスモーターとして動作する請求項10記載の薬品送達デバイス。
【請求項15】
前記ベースユニットは、前記送達ユニットの非搭載上面に対し本質的に相補的形状を持つ陥凹部分を有する密着下面を含み、そのために前記ベースユニットを前記送達ユニットの上に位置づけかつガイドすることが可能とされる請求項1ないし14いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項16】
前記リザーバーが、潰すことができるリザーバーか、又はコイル型リザーバーである請求項1ないし15いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項17】
前記薬剤がインスリンである請求項1ないし16いずれか1項に記載の薬品送達デバイス。
【請求項18】
不連続用量の薬剤を汲み出すように適応される薬品送達デバイスを操作する方法であって、
− 送達される薬剤を保持するためのリザーバーと経皮薬品送達のために適応される注入部材と前記送達される薬剤を汲み出して前記リザーバーから前記注入部材に向けて輸送するように適応されるポンプとを含む使い捨ての送達ユニットを、ユーザーの皮膚に取り外し可能的に固定し;
− 電源及び前記ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む別個の再使用可能なベースユニットを、前記前記ポンプを活性化してある用量の薬剤を汲み出すように、前記送達ユニットに対して一時的に設置し、
− 前記不連続用量の薬剤を汲み出した後、前記送達ユニットから前記別個の再使用可能なベースユニットを外す
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
不連続用量の薬剤の投与を必要とする病態又は疾患の治療法であって、
− 送達される薬剤を保持するためのリザーバーと経皮薬剤送達のために適応される注入部材と前記送達される薬剤を汲み出して前記リザーバーから前記注入部材に向けて輸送するように適応されるポンプとを含む使い捨ての送達ユニットを、前記治療を要する患者の皮膚に固定し;
− 電源及び前記ポンプを駆動してある用量の薬剤を患者に送達するための駆動モジュールを有するベースユニットを、前記送達ユニットに対して一時的にドッキングさせ;
− 前記ベースユニットから前記送達ユニットへ無接触的にパワーを送り、前記ポンプを活性化してある不連続用量の薬剤を送達し;
− 前記用量の薬剤の送達後、前記送達ユニットから前記別個の再使用可能なベースユニットを外す
ことを特徴とする治療法。
【請求項20】
薬剤のボーラス投与をそれを必要とする患者に対して実施する方法であって、
− 患者によって装着されるように適応されかつ送達される薬剤を保持するためのリザーバーと経皮薬品送達のために適応される注入部材と前記薬剤を汲み出して前記リザーバーから前記注入部材に向けて輸送するように適応されるポンプとを含む使い捨ての送達ユニットを準備し、
− 前記ポンプを駆動するための駆動モジュールを含む別個の再使用可能なベースユニットを準備し、
− 前記使い捨ての送達ユニットを前記患者の皮膚に取り外し可能的に固定し、
− 前記ベースユニットを前記送達ユニットに対し一時的にドッキングさせ、
− 前記ポンプを活性化してある用量の薬剤を前記患者に送達し、
− 前記用量の薬剤の送達後、前記送達ユニットから前記別個の再使用可能なベースユニットを外す
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
少なくとも最終投与の投与用量及び投与時刻を監視する工程と、前記ベースユニットのメモリーに監視数値を保存する工程とを更に含む請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤がインスリンである請求項19又は20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535569(P2010−535569A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519555(P2010−519555)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053113
【国際公開番号】WO2009/019648
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510028512)ゼンズィーレ パット アーゲー (3)
【Fターム(参考)】