説明

両性高分子凝集剤及びこれを用いた汚泥の処理方法

【課題】汚泥の性状変化に影響を受けず、低濃度の汚泥を処理する場合であっても濾過速度を飛躍的に向上させ、脱水ケーキの含水率を低減し、活性汚泥や余剰汚泥の濃縮処理及び脱水処理に優れた濾過性能を発揮する両性高分子凝集剤及びこれを用いた汚泥の処理方法の提供。
【解決手段】カチオン性単量体とアニオン性単量体とを含有する構成成分を共重合した共重合体からなる両性高分子凝集剤であって、1%ηs/1%ηBの値が0.02〜0.10であることを特徴とする両性高分子凝集剤。1%ηsとは、両性高分子凝集剤を0.2N−塩化ナトリウム水溶液に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。1%ηBとは、両性高分子凝集剤をイオン交換水に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両性高分子凝集剤及びこれを用いた汚泥の処理方法に関し、特にベルトプレス型の濃縮機または脱水機に対して優れた濾過性能を示す両性高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場や、製紙工業、食品工業等の排水処理施設では、沈降分離、生物処理等の方法により廃水の浄化処理を行っている。かかる浄化処理の際に発生する汚泥は、通常、スクリュウデカンター、ベルトプレス等で脱水処理して含水率の低い脱水ケーキとした後に焼却処分している。
また、汚泥の脱水処理を効率的に行う目的で、予め汚泥に高分子凝集剤を添加混合して汚泥粒子をフロック化する方法が広く用いられている。なお、高分子凝集剤としては、従来よりカチオン性高分子凝集剤が知られている。
【0003】
さらに、近年では、浄化処理水の水質向上や富栄養化対策を目的として、生物学的脱窒、脱リン処理方法を導入する施設が増加している。
窒素は生物学的脱窒処理の過程において、最終的に窒素ガスに変換され系外に排出される。一方、リンは活性汚泥に取り込まれた後、余剰汚泥として系外に排出される。該余剰汚泥は初沈汚泥と混合し、濃縮・貯槽後、脱水処理するのが一般的である。
しかし、濃縮・貯槽時の時間経過により、汚泥中からリンが再放出され系内に戻ることがあった。そこで、リンの再放出を防止するため、活性汚泥または余剰汚泥を直接脱水する方法や、濃縮後に続けて脱水する方法等が提案されている。
【0004】
ところが、従来のカチオン性高分子凝集剤では、十分な処理効果が得らなかった。この原因の一つとして、濃度が低い、強熱減量(以下、「VTS」という。)が高い、コロイド荷電量が少ない、といった汚泥の性状により、カチオン性高分子凝集剤では、濃縮及び脱水に適した大きく且つ緻密な凝集フロックの生成が困難であることが挙げられる。
また、汚泥発生量の増加、汚泥性状の悪化等により、カチオン性高分子凝集剤では、汚泥の処理量や濾過速度に限界があり、含水率が十分に低い脱水ケーキが得られにくくなった。
【0005】
そこで、これら従来のカチオン性高分子凝集剤の欠点を改良し、カチオン性とアニオン性の双方を兼ね備えた、両性高分子凝集剤が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特許文献1には、3級アミンを有する両性高分子凝集剤が提案されている。
特許文献2には、4級アンモニウム塩を有する両性高分子凝集剤が提案されている。
特許文献1、2に記載の両性高分子凝集剤は、従来のカチオン性高分子凝集剤に比べて凝集性に優れ、大きなフロックを形成できる。特に特許文献2の両性高分子凝集剤は、粉末製品とした際の保存安定性にも優れていた。
特許文献3には、2種類の4級アンモニウム塩を有する両性高分子凝集剤が提案されている。該両性高分子凝集剤は、凝集剤添加量、凝集性、粉末製品の保存安定性、溶解性等に優れていた。
【特許文献1】特開昭62−205112号公報
【特許文献2】特開昭53−149292号公報
【特許文献3】特開平7−256299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の両性高分子凝集剤では、汚泥のpH値や汚泥濃度等の性状変化の影響を受けやすく、安定した処理が困難であった。
また、特許文献2に記載の両性高分子凝集剤では、必要とする両性高分子凝集剤の添加量が多く、汚泥の濾過速度が遅かった。
さらに、特許文献3に記載の両性高分子凝集剤では、活性汚泥や余剰汚泥等、濃度の低い汚泥を処理する場合、濾過速度が遅く、脱水ケーキの含水率が高くなることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、汚泥の性状変化に影響を受けず、低濃度の汚泥を処理する場合であっても濾過速度を飛躍的に向上させ、脱水ケーキの含水率を低減し、活性汚泥や余剰汚泥の濃縮処理及び脱水処理に優れた濾過性能を発揮する両性高分子凝集剤及びこれを用いた汚泥の処理方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、両性高分子凝集剤の粘度が濾過速度の向上や脱水ケーキの含水率の低減に関与していることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の両性高分子凝集剤は、カチオン性単量体とアニオン性単量体とを含有する構成成分を共重合した共重合体からなる両性高分子凝集剤であって、1%ηs/1%ηBの値が0.02〜0.10であることを特徴とする両性高分子凝集剤。
1%ηsとは、両性高分子凝集剤を0.2N−塩化ナトリウム水溶液に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
1%ηBとは、両性高分子凝集剤をイオン交換水に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
また、前記カチオン性単量体が、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート単量体の4級アンモニウム塩を有し、ジアルキルアミノアルキルアクリレート単量体の4級アンモニウム塩の含有量が構成成分100モル%中、5モル%未満であることが好ましい。
さらに、本発明の汚泥の処理方法は、前記両性高分子凝集剤を汚泥に添加して調質し、ベルトプレス型の濃縮機または脱水機を用いて濃縮処理または脱水処理することを特徴とする。
また、前記汚泥が活性汚泥または余剰汚泥であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、汚泥の性状変化に影響を受けず、低濃度の汚泥を処理する場合であっても濾過速度を飛躍的に向上させ、脱水ケーキの含水率を低減し、活性汚泥や余剰汚泥の濃縮処理及び脱水処理に優れた濾過性能を発揮する両性高分子凝集剤及びこれを用いた汚泥の処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の両性高分子凝集剤は、カチオン性単量体とアニオン性単量体とを含有する構成成分を共重合した共重合体からなる。
【0011】
カチオン性単量体は、下記一般式(1)で表される、ジアルキルアミノアルキルメタクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級アンモニウム塩を有するのが好ましい。ジアルキルアミノアルキルメタクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。これらのうちではジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)中、Rは炭素数2〜3のアルキレン基である。R、Rは炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。Rは炭素数1〜2のアルキル基またはベンジル基である。Xはハロゲン化物などの陰イオンである。
【0014】
また、カチオン性単量体は下記一般式(2)で表される、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級アンモニウム塩を含んでもよい。ジアルキルアミノアルキルアクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらのうちではジメチルアミノエチルアクリレートが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(2)中、Rは炭素数2〜3のアルキレン基である。R、Rは炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。Rは炭素数1〜2のアルキル基またはベンジル基である。Xはハロゲン化物などの陰イオンである。
【0017】
さらに、カチオン性単量体は他の成分を含んでもよい。他の成分としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩、硫酸塩等の3級塩;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩、硫酸塩等の3級塩や、塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0018】
これらカチオン性単量体は、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。カチオン性単量体の含有量は、構成成分100モル%中、20〜80モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましい。カチオン性単量体の含有量が上記範囲より少ないと大きな凝集フロックを生成するものの、脱水ケーキの含水率が高くなる。一方、含有量が上記範囲より多いと小さな凝集フロックが生成され、濾過速度が劣る結果となる。
【0019】
なお、カチオン性単量体がジアルキルアミノアルキルアクリレートの4級アンモニウム塩を含む場合、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの4級アンモニウム塩の含有量は構成成分100モル%中、5モル%未満が好ましく、より好ましい含有量は0.1〜2モル%である。ジアルキルアミノアルキルアクリレートの4級アンモニウム塩の含有量が上記範囲より多いと、汚泥に添加した際に粗大な凝集フロックを生成し、優れた凝集性を示すものの、濾過速度が不十分となる。
また、カチオン性単量体が他の成分を含む場合は、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの4級アンモニウム塩と他の成分の合計含有量が、構成成分100モル%中、5モル%未満となるのが望ましい。
【0020】
アニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びこのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;マレイン酸等及びこのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;ビニルスルホン酸及びこのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。これらのうちでは、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
これらアニオン性単量体は、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。アニオン性単量体の含有量は、構成成分100モル%中、1〜15モル%が好ましく、3〜10モル%がより好ましい。アニオン性単量体の含有量が上記範囲より少ないと小さな凝集フロックが生成され、濾過速度が劣る結果となる。一方、含有量が上記範囲より多いと両性高分子凝集剤の添加量が多くなり、また、脱水ケーキの含水率が高くなる。
【0023】
本発明においては、共重合体の共重合には、ノニオン性単量体を用いてもよい。ノニオン性単量体を用いることにより、カチオン性、アニオン性のイオン強度を調整することができる。
ノニオン性単量体としては(メタ)アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸アルキル等が挙げられる。これらのうちでは、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
これらノニオン性単量体は、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。ノニオン性単量体を構成成分に含む場合の含有量は、構成成分100モル%中、5〜80モル%が好ましく、35〜65モル%がより好ましい。ノニオン性単量体の含有量が上記範囲より少ないと小さな凝集フロックが生成され、濾過速度が劣る結果となる。一方、含有量が上記範囲より多いと脱水ケーキの含水率が高くなる。
【0026】
本発明の両性高分子凝集剤は、上述した構成成分を共重合した共重合体からなる。重合方法としては、例えば、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
両性高分子凝集剤は、1%ηs/1%ηBの値が0.02〜0.10であり、0.03〜0.08が好ましく、0.03〜0.06がより好ましい。1%ηs/1%ηBの値を上記範囲内とすることにより、低濃度の汚泥を処理する場合であっても、大きく且つ緻密な凝集フロックを形成させるので、濾過速度の向上や、脱水ケーキの含水率の低減に優れた効果を発揮できる。特に、後述するベルトプレス型の脱水機にて汚泥を脱水処理する場合、1%ηs/1%ηBの値が上記範囲より大きくなると、大きな凝集フロックが得られるものの、密度が粗くなる(粗大となる)。一方、1%ηs/1%ηBの値が上記範囲より小さくなると、凝集フロックが小さくなり、濾過速度が遅くなる。なお、凝集フロックは粗大となった場合でも、濾過速度は遅くなる傾向にある。
ここで、1%ηsとは、両性高分子凝集剤を0.2N−塩化ナトリウム水溶液に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
また、1%ηBとは、両性高分子凝集剤をイオン交換水に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
【0028】
なお、両性高分子凝集剤の1%ηs及び1%ηBの値は、両性高分子凝集剤の分子量、イオン性の割合、分子量分布、製造方法、組成分布、親水性・疎水性度合い等の調整によって制御できる。
例えば、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの4級アンモニウム塩の共重合割合を多くすると、1%ηs及び1%ηBの値が増加する傾向になる。一方、両性高分子凝集剤の分子量を小さくすると、1%ηs及び1%ηBの値が減少する傾向になる。
【0029】
本発明の汚泥の処理方法としては、公知の濃縮処理方法および脱水処理方法を用いることができる。すなわち、上述した両性高分子凝集剤を汚泥に添加して凝集フロックを形成させ、濃縮装置にて汚泥を濃縮処理した後に脱水処理し、または直接脱水装置にて脱水処理して脱水ケーキを作成することにより、汚泥の処理を完了することができる。さらに、得られた脱水ケーキを焼却する等により、汚泥を最終処分することができる。
【0030】
両性高分子凝集剤の添加量は、汚泥の質、濃度等により異なり一概には言えないが大まかな目安として、汚泥固形物に対して0.1%以上が好ましく、0.2%以上がより好ましい。本発明において、両性高分子凝集剤の過剰添加による濾過性への悪影響は少なく、両性高分子凝集剤の添加量の上限は特に制限されないが、処理コストの点からは、汚泥固形物に対して1.0%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。
なお、両性高分子凝集剤は、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明においては、両性高分子凝集剤を使用するに際して、水溶解性を向上させるために固体酸を適宜併用してもよい。固体酸としてはスルファミン酸、酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0031】
前記濃縮装置としては、ベルトプレス型濃縮機及びスクリューデカンター等を例示することができるが、濾過速度の特性によりベルトプレス型濃縮機が好ましい。
また、脱水装置としては、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリューデカンター等を例示することができるが、濾過速度、圧搾脱水性の特性によりベルトプレス型脱水機が好ましい。
【0032】
本発明で処理できる汚泥としては、下水処理施設や、化学、食品工業等で生じる有機性排水の生物処理施設から発生する活性汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、凝集汚泥またはそれらの混合汚泥等を例示できる。特に、汚泥濃度が低く、脱水性が困難な活性汚泥や余剰汚泥に効果的である。
【0033】
このように本発明によれば、両性高分子凝集剤の1%ηs/1%ηBの値を特定することにより、従来の方法では濃縮及び脱水処理が困難であった低濃度の活性汚泥や余剰汚泥の処理においても、濾過速度に優れ、濃縮性、脱水性が向上し、効率的な汚泥処理が可能になる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例及び比較例において、両性高分子凝集剤及びカチオン性高分子凝集剤(以下、「高分子凝集剤」という場合がある。)は、表1に示す重合体を水に溶解して、0.3質量%の水溶液としたものを使用した。
なお、各高分子凝集剤の各粘度は、以下のようにして求めた。結果を表1に示す。
【0036】
(1%ηBの測定)
500mlのガラスビーカーにイオン交換水495.0gを採取した。次いで、図1に示すような溶解装置10を用いて、280rpmの回転数で攪拌しながら高分子凝集剤5.00gを、ママコを作らないよう少量ずつ投入した。高分子凝集剤投入後4時間攪拌を続け、1質量%凝集剤溶液を作成した。
得られた1質量%凝集剤溶液の粘度はB型粘度計((株)東京計器製)を用い、6rpmの回転速度で測定した。
なお、溶解装置10は可変式攪拌機11と伸縮架台12を有し、可変式攪拌機11には、例えば、直径が7.5〜7.9Φの攪拌軸11aと、幅Wが45mm、厚さTが15mmの2つの攪拌翼11b(撹拌翼11b同士の距離Dは35mm)が備わっている。
【0037】
(1%ηsの測定)
先に得られた1質量%凝集剤溶液に塩化ナトリウム5.84gを加え、溶解装置10にて280rpmの回転数で30分間攪拌し、塩化ナトリウムを溶解させた際の粘度を、B型粘度計を用い、6rpmの回転速度で測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1において、構成成分の略号はそれぞれ下記に示す単量体を表す。
DMC:ジメチルアミノエチルメタクリレート・メチルクロライド4級塩。
DME:ジメチルアミノエチルアクリレート・メチルクロライド4級塩。
DMZ:ジメチルアミノエチルメタクリレート・硫酸塩。
AAm:アクリルアミド。
AA:アクリル酸。
なお、上記DMC、DMEはカチオン性単量体の4級アンモニウム塩、DMZはカチオン性単量体の3級塩、AAmはノニオン性単量体、AAはアニオン性単量体である。
【0040】
<測定方法>
以下の実施例及び比較例において、各特性の測定は以下の方法で行った。
TS濃度(蒸発残留物):定法に基づき測定した((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」p296−297)。
VTS値(強熱減量):定法に基づき測定した((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」p297)。
凝集フロック平均粒径:目視により測定した。
濾過速度:攪拌後の汚泥を、ろ布を敷いたヌッチュにて濾過を行う際の、濾過開始後5秒間のろ液の量を濾過速度として測定した。
脱水ケーキ含水率:定法に基づき測定した((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」p296−297)。
濃縮汚泥濃度:TS濃度(蒸発残留物)と同様にして、定法に基づき測定した。
【0041】
<実施例1〜6>
下水余剰汚泥1(pH:6.8、TS濃度:0.60%、VTS:67.7%)を用いて脱水処理の試験を行った。
まず、500mlのビーカーに上記下水余剰汚泥1を300ml採取し、表2に示す種類の両性高分子凝集剤を表2に示す量を添加し、スパチュラを用いて1分間当たり100回程度の割合で20秒間攪拌混合し、凝集フロックを形成させた。
凝集フロックの平均粒径及び濾過速度を測定した。
濾過開始から1分経過した後、ろ布上の残渣(濃縮汚泥)をろ布に挟み、0.1Mapの圧力でプレス脱水して脱水ケーキを作成し、脱水ケーキの含水率を求めた。試験結果を表2に示す。
【0042】
<比較例1〜5>
両性高分子凝集剤を、表2に示す種類の高分子凝集剤に変更した以外は実施例1〜6と同様にして脱水処理の試験を実施し、各特性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から明らかなように、実施例1〜5ではいずれも、平均粒径が大きく、濾過速度に優れた凝集フロックが形成され、脱水ケーキの含水率が低く、良好な結果が得られた。また、DMEの含有量が8モル%である実施例6では、やや粗大な凝集フロックが形成さ、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例1〜5に比べるとわずかに不十分であった。
一方、1%ηs/1%ηBの値が0.18の両性高分子凝集剤を使用した比較例1、2では、粗大な凝集フロックが形成され、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例1〜6に比べていずれも劣っていた。また、1%ηs/1%ηBの値が0.018の両性高分子凝集剤を使用した比較例3では、凝集フロックの平均粒径が小さく、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例1〜6に比べて劣っていた。さらに、カチオン性高分子凝集剤を用いた比較例4、5では、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例1〜6に比べて劣っていた。
【0045】
<実施例7〜9>
下水余剰汚泥2(pH:6.5、TS濃度:1.03%、VTS:39.8%)を用いて脱水処理の試験を行った。
500mlのビーカーに上記下水余剰汚泥2を300ml採取し、表3に示す種類の両性高分子凝集剤を表3に示す量を添加した以外は、実施例1〜6と同様にして脱水処理の試験を実施し、各特性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0046】
<比較例6、7>
両性高分子凝集剤を、表3に示す種類の高分子凝集剤に変更した以外は実施例1〜6と同様にして脱水処理の試験を実施し、各特性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3から明らかなように、実施例7〜9ではいずれも、平均粒径が大きく、濾過速度に優れた凝集フロックが形成され、脱水ケーキの含水率が低く、良好な結果が得られた。
一方、1%ηs/1%ηBの値が0.18の両性高分子凝集剤を使用した比較例6では、粗大な凝集フロックが形成され、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例7〜9に比べていずれも劣っていた。また、カチオン性高分子凝集剤を用いた比較例7では、濾過速度や脱水ケーキの含水率が実施例1〜6に比べて劣っていた。
【0049】
<実施例10、11>
食品余剰汚泥(pH:6.8、TS濃度:0.52%、VTS:76.7%)を用いて濃縮処理の試験を行った。
まず、500mlのビーカーに上記食品余剰汚泥を300ml採取し、表4に示す種類の両性高分子凝集剤を表4に示す量を添加し、スパチュラを用いて1分間当たり100回程度の割合で20秒間攪拌混合し、凝集フロックを形成させた。
凝集フロックの平均粒径及び濾過速度を測定した。
濾過開始から1分経過した後、ろ布上の残渣(濃縮汚泥)を採取し、その濃度を求めた。結果を表4に示す。
【0050】
<比較例8、9>
両性高分子凝集剤を、表4に示す種類の高分子凝集剤に変更した以外は実施例10、11と同様にして濃縮処理の試験を実施し、各特性の測定を行った。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表4から明らかなように、実施例10、11ではいずれも、濾過速度に優れ、濃縮汚泥の濃度が高く、良好な結果が得られた。
一方、1%ηs/1%ηBの値が0.18の両性高分子凝集剤を使用した比較例8では、粗大な凝集フロックが形成され、実施例10、11に比べて濾過速度が劣り、濃縮汚泥の濃度が低かった。また、カチオン性高分子凝集剤を用いた比較例9では、実施例10、11に比べて濾過速度が劣り、濃縮汚泥の濃度が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】1%ηs及び1%ηBの測定に用いる溶解装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
10 溶解装置
11 可変式攪拌機
11a 攪拌軸
11b 攪拌翼
12 伸縮架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性単量体とアニオン性単量体とを含有する構成成分を共重合した共重合体からなる両性高分子凝集剤であって、
1%ηs/1%ηBの値が0.02〜0.10であることを特徴とする両性高分子凝集剤。
1%ηsとは、両性高分子凝集剤を0.2N−塩化ナトリウム水溶液に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
1%ηBとは、両性高分子凝集剤をイオン交換水に溶解し、1質量%凝集剤溶液とした際の25℃における粘度である。
【請求項2】
前記カチオン性単量体が、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート単量体の4級アンモニウム塩を有し、ジアルキルアミノアルキルアクリレート単量体の4級アンモニウム塩の含有量が構成成分100モル%中、5モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の両性高分子凝集剤を汚泥に添加して調質し、ベルトプレス型の濃縮機または脱水機を用いて濃縮処理または脱水処理することを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項4】
前記汚泥が活性汚泥または余剰汚泥であることを特徴とする請求項3に記載の汚泥の処理方法。




【図1】
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【公開番号】特開2008−104908(P2008−104908A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287835(P2006−287835)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】