説明

両面フレキシブルプリント基板の製造法及び両面フレキシブルプリント基板。

【課題】十分な耐熱性、難燃性、接着性を有し、しかも製造工程が簡単で複雑な設備を必要としない両面フレキシブル基板の製造方法を提供すること。
【解決の手段】下記式(1)で表される芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂及び有機溶剤を含むワニスを金属箔に直接塗布する工程、溶媒を除去し、樹脂層を設ける工程、及び金属箔を樹脂層側に貼り合わせて硬化させる工程からなる両面フレキシブルプリント基板の製造方法。
【化1】


(式中、m、nは平均値でありm+nは2〜200の正数であり、nは0.1以上の正数である。Ar、Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族残基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は十分な耐熱性を有し、しかも製造工程が簡単で複雑な設備を必要としない両面フレキシブルプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板は高分子絶縁フィルムの表面に導体回路を形成した可撓性のある配線版であって、近年電子機器の小型化、高密度化を達成する手段として多用されている。中でも絶縁フィルムとして芳香族ポリイミドを用いたものが主流を占めている。従来のフレキシブルプリント基板はポリイミドフィルムと銅箔を接着剤により貼り合わせる方法により製造されていたため耐熱性、難燃性、電気特性、密着性といった物性は用いる接着剤に左右されてしまい、ポリイミドの優れた諸特性は十分に発現することが出来なかった。この問題を解決する方法として金属箔上にポリアミック酸(ポリイミドの前駆体)のワニスを直接塗布し溶剤除去、硬化により製造する方法が行われている(特許文献1)。また最近では基板の高密度化に伴いポリイミドフィルムの両側に銅箔を張り合わせた両面フレキシブル基板の要求が高まっている。この両面フレキシブルプリント基板の場合、通常上述の片面フレキシブルプリント基板に熱可塑性ポリイミドなどを塗布し高熱で銅箔をラミネートするといった方法が提案されている。また、これらポリイミドフィルムを使用しないで、ポリイミドフィルムと金属箔を接着する接着剤層が、絶縁フィルムとして使用できる可能性が特許文献2または3に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−245868号公報
【特許文献2】WO02/00791号公報
【特許文献3】WO2004/048436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
片面フレキシブルプリント基板の場合、金属箔上にポリアミック酸(ポリイミドの前駆体)のワニスを直接塗布し溶剤除去、硬化により製造する方法によれば前述の接着剤による諸特性低下の問題は解決することが出来る。しかしながら通常ポリアミック酸を熱硬化させる工程は、通常250〜350℃の高熱で2〜5時間加熱させる必要があり生産性の面で問題がある。また、ポリアミック酸の縮合工程では硬化収縮が大きいため、製造後フレキシブルプリント基板がカールするという問題がある。また両面フレキシブルプリント基板を製造する場合は、この片面フレキシブルプリント基板の製造上の難点に加え、熱可塑性ポリイミドを使用する必要があるが、これは通常融点が200℃以上と高いため加熱溶融させるには大掛かりな設備が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこうした実状に鑑み、高温で長時間硬化させる工程を必要とせず、硬化収縮も小さい両面フレキシブル基板を求めて鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)下記式(1)で表される芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂及び有機溶剤を含むワニスを金属箔に直接塗布する工程、溶媒を除去し、樹脂層を設ける工程、及び金属箔を樹脂層側に貼り合わせて硬化させる工程からなる両面フレキシブルプリント基板の製造方法、
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、m、nは平均値でありm+nは2〜200の正数であり、nは0.1以上の正数である。Ar、Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族残基である。)
(2)上記(1)記載の製造方法により得られる両面フレキシブルプリント基板
(3)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂からなる絶縁層およびその両面に設けられた金属箔の3層からなる両面フレキシブルプリント基板
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、簡便で大掛かりな設備を必要とせず経済的に優れる。本発明により得られる両面フレキシブル基板はポリイミドを使用した場合に近い耐熱性、難燃性を持ちながらより一般的なエポキシ樹脂の硬化条件で製造できるため、工業的に極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用される金属箔としては銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケルパラジウム、クロム、モリブデン等またはそれらの合金が挙げられ、樹脂層との接着性を高めるために、コロナ放電、サンディング、メッキ、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤などによって機械的または化学的な表面処理を行ってあってもよい。この中でも特に銅箔が好ましい。銅箔の種類としては電解銅箔でもよく、圧延銅箔でもよい。金属箔の厚さとしては通常3〜50μmであり、好ましくは4〜40μmである。
【0011】
本発明で用いられる芳香族ポリアミド樹脂は、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂であれば特に制限なく使用できるが、下記式(1)で表される芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。このような芳香族ポリアミド樹脂は、例えば特開平8−143661号公報等に記載された方法に準じて得ることができる。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、m、nは平均値でありm+nは2〜200の正数であり、nは0.1以上の正数である。Ar、Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基である。)
【0014】
以下、本発明に用いられる芳香族ポリアミド樹脂の製法について説明する。前記式(1)で表されるポリアミド樹脂は溶剤中で芳香族ジアミンを、芳香族ジカルボン酸のモル数に対して過剰になるように仕込んで重縮合することにより得ることが出来る。
芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンの重縮合反応は、好ましくは縮合剤としての芳香族亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で行うことが好ましい。
【0015】
ここで用いられる芳香族亜リン酸エステルとしては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリ−o−トリル、亜リン酸ジ−o−トリル、亜リン酸トリ−m−トリル、亜リン酸ジ−m−トリル、亜リン酸トリ−p−トリル、亜リン酸ジ−p−トリル、亜リン酸トリ−p−クロロフェニルなどが挙げられる。芳香族亜リン酸エステルの使用量は、芳香族ジアミン1モルに対して通常0.5〜3モル、好ましくは1〜2.5モルである。
【0016】
ピリジン誘導体としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンなどが挙げられる。ピリジン誘導体の使用量は、芳香族ジアミン1モルに対して通常1〜5モル、好ましくは2〜4モルである。
【0017】
上記芳香族ポリアミド樹脂の製造に用いられる芳香族ジアミンの例としてはジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノクロロベンゼン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアニリン、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、メチレンビス(ジブロモアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホキシドやジアミノフルオレンなどが挙げられ、中でもジアミノジフェニルエーテルとメチレンビス(ジエチルアニリン)が好ましい。
【0018】
上記芳香族ポリアミド樹脂の製造に用いられる芳香族ジカルボン酸の例としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼン二酢酸、ベンゼンジプロピオン酸、ビフェニルジカルボン酸、オキシジ安息香酸、チオジ安息香酸、ジチオジ安息香酸、ジチオビス(ニトロ安息香酸)、カルボニルジ安息香酸、スルホニルジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、メチレンジ安息香酸、イソプロピリデンジ安息香酸、ヘキサフルオロイソプロピリデン安息香酸、ピリジンジカルボン酸等のフェノール性水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等のフェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、芳香族ポリアミド樹脂がエポキシ樹脂の硬化剤として作用するため、芳香族ポリアミドはフェノール性水酸基を有している必要がある。このような芳香族ポリアミド樹脂を得るためには、前記において芳香族ジカルボン酸成分中で、フェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸が1モル%以上を占める割合で使用する。
【0019】
反応に際して、触媒として無機塩を用いると反応が進行しやすくなり、好ましい。無機塩の具体例としては、塩化リチウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウムや、これらの混合物が挙げられる。これら無機塩の使用量は、用いる式(5)または式(1)の化合物1.0モルに対して、通常0.1〜2.0モル、好ましくは0.2〜1.0モルである。
【0020】
芳香族ポリアミド樹脂の製造に使用される溶媒は、芳香族ポリアミド樹脂と溶媒和を起こす溶媒であれば特に制限は無いが、具体例としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等やこれらの混合溶媒が挙げられるが、特にN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。また溶液中の芳香族ポリアミド樹脂の濃度は2〜50重量%が好ましく、生産効率と操作性の良い溶液粘度とを考慮すると5〜30重量%が特に好ましい。
【0021】
芳香族ポリアミド樹脂の製造において、縮合反応終了後に反応系内に水が滴下される。水を添加する際は、通常撹拌下60〜110℃、好ましくは70〜100℃の範囲で添加される。水の添加量は反応液の総重量に対して通常10〜200重量%であり、好ましくは20〜150重量%である。
【0022】
水の滴下時間は通常、30分〜15時間であり、好ましくは1〜10時間である。残存する縮合剤は、この水の滴下工程においてリン酸イオン及びフェノール類へ加水分解される。水の滴下は撹拌下において樹脂層と水層とが層分離を起こし始めるまで続ける。
【0023】
層分離が始まった時点で撹拌を止め静置することにより、上層(水層)と下層(樹脂層)とに分け、上層の水層を除去する。この場合、通常樹脂層は粘度が高くスラリー状になっているのでデカンテーションなどによって容易に水層は除去できる。またポンプなどで系外に送液することも可能である。水層中にはリン酸、亜リン酸、触媒、フェノール類、ピリジンなどの不純物及び溶剤の一部が含まれている。
【0024】
水層を除去して残された樹脂層は溶剤も一部取り除かれており、粘度がかなり上昇して扱いにくいため、再度有機溶剤を加えて希釈する。この場合使用し得る有機溶剤はN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどである。使用する溶剤の量は粘度が十分に下がる範囲であれば特に規定はされないが、通常洗浄前の反応液の重量に対して5〜100重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。
【0025】
上述の洗浄工程を通常1〜10回、好ましくは2〜8回繰り返すことにより、イオン性不純物や低分子量有機不純物の低減された芳香族ポリアミド樹脂の処理液が得られる。
【0026】
洗浄・希釈された処理液を貧溶媒に加えポリアミド樹脂を析出させる。貧溶媒としてはポリアミド樹脂と溶媒和を起こし難い液体であれば特に制限は無いが、具体例としては水、メタノール、エタノールなどやこれらの混合溶媒が挙げられる。その使用量は析出したポリアミド樹脂が操作上問題なく濾別できる範囲で出来るだけ少量であることが望ましく、反応に用いられた溶媒1重量部に対して0.5〜50重量部が好ましく、特に1〜10重量部が好ましい。
【0027】
洗浄された処理液と貧溶媒の混合は処理液中に撹拌下で貧溶媒を徐々に添加しても良いし、貧溶媒中に撹拌下で反応液を添加しても良い。送液ポンプ、コンプレッサー及び2流体ノズル、あるいは送液ポンプ及び1流体ノズルを用いて反応液を貧溶媒中に噴霧する方法は、適度な粒径の芳香族ポリアミド樹脂が容易に析出できるため好ましい。反応液と貧溶媒の混合を行う温度は通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。
【0028】
貧溶媒との混合により析出した芳香族ポリアミド樹脂は、濾別により単離され、水でケーキ洗浄することによりイオン性不純物が除去される。このケーキを乾燥することによりポリアミド樹脂が得られるが、更に水溶性有機溶剤で洗浄することによりイオン性不純物をより低減することが出来る。
【0029】
水溶性有機溶剤としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類やアセトンなどが挙げられ、これらの単独または混合で用いられるが、メタノールが特に好ましい。
【0030】
水溶性有機溶剤での洗浄は、上記で濾別により単離された芳香族ポリアミド樹脂ケーキを濾過器上で洗浄しても効果があるが、単離され溶媒と貧溶媒を含んだポリアミド樹脂ケーキまたはこのケーキをいったん乾燥により溶媒及び貧溶媒を除いたポリアミド樹脂と上記水溶性有機溶剤とを新たに容器に仕込み、撹拌懸濁させた後、再度濾別することにより、更に優れた精製効果を発揮する。この場合の水溶性有機溶剤の使用量は、正味のポリアミド樹脂1重量部に対して1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部であり、撹拌の温度は常温から懸濁液の沸点が好ましく、特に沸点での撹拌が好ましい。また、撹拌時間は0.1〜24時間、好ましくは、1〜5時間である。更に通常この操作は常圧下で行われるが、加圧化で行うことも出来る。
【0031】
上記、懸濁処理を行った後、芳香族ポリアミド樹脂を濾別し、通常更に上記水溶性有機溶剤を用いてケーキ洗浄を行い、次いで場合により更に水でケーキ洗浄を行った後、乾燥することにより目的のイオン性不純物の少ない芳香族ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
【0032】
本発明において使用する芳香族ポリアミド樹脂の固有粘度値(30℃における0.5g/dlのN,N−ジメチルアセトアミド溶液で測定)は、0.1〜4.0dl/gの範囲にあるものが好ましい。一般に好ましい平均重合度を有するか否かは、固有粘度を参照することにより判断する。固有粘度が0.1dl/gより小さいと、成膜性や芳香族ポリアミド樹脂としての性質出現が不十分であるため、好ましくない。逆に固有粘度が4.0dl/gより大きいと、重合度が高すぎ溶剤溶解性が悪くなり、かつかつ成形加工性が悪くなるといった問題が発生する。
【0033】
こうして得られる式(1)のポリアミド樹脂のmとnの値はフェノール性水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸とフェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸の仕込み比によって決定され、通常平均値で2〜200であり、好ましくは5〜150である。
【0034】
本発明の製造方法において、樹脂層は、芳香族ポリアミド樹脂とエポキシ樹脂及び有機溶剤を含有するワニスから、有機溶剤を除去して得られる。このワニスにおいて使用できるエポキシ樹脂の具体例としては1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば得に限定はされないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0035】
前記ワニスにおいて、エポキシ樹脂の使用量は、芳香族ポリアミド樹脂の活性水素当量1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましい。芳香族ポリアミド樹脂の活性水素当量とは分子末端のアミノ基及び分子中のフェノール性水酸基量から算出できる。活性水素1当量に対して0.5当量に満たない場合、或いは1.5当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0036】
また前記ワニスおいては硬化促進剤を使用することも出来る。使用できる硬化促進剤の例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤は芳香族ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填剤を含有し得る。用い得る無機充填剤の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填剤は本発明のエポキシ樹脂組成物において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料などの種々の配合剤を添加することが出来る。
【0038】
本発明に用いられるワニスは、上記に説明したエポキシ樹脂、芳香族ポリアミド樹脂を有機溶剤に溶解して得られる。用いられる溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。得られたワニス中の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)は通常10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%である。
【0039】
本発明において工業的に金属箔上に樹脂層を形成させるためには、金属箔の表面に上述のワニスを製膜用スリットから吐出させる。この塗工方法としてはロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、ドクターブレードフローコーター、密閉コーター等によるものが挙げられる。実験室で簡易的に塗工する場合は、アプリケーターを用いることが出来る。
【0040】
次に、金属箔上に塗布したワニスから有機溶剤を60〜180℃で加熱除去する。この工程は減圧下で行ってもよく、赤外線の照射下で行ってもよい。溶剤除去後、樹脂面に金属箔を貼り合わせ加圧下で樹脂層を150〜250℃で0.1〜10時間加熱硬化させることにより目的とする両面フレキシブルプリント基板を得ることが出来る。樹脂層の厚さは塗工するワニスの固形分濃度によって左右されるが、通常2〜200μmであり、好ましくは3〜150μmである。
【実施例】
【0041】
次に本発明を更に実施例により具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0042】
合成例1
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、5−ヒドロキシイソフタル酸2.7部、イソフタル酸119.6部、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル150部、塩化リチウム7.8部、N−メチルピロリドン811.5部、ピリジン173.6部を加え撹拌溶解させた後、亜リン酸トリフェニル376.2部を加えて95℃で4時間縮合反応をさせ、ポリアミド樹脂の反応液(A)を得た。この反応液(A)中に90℃で水490部を2時間かけて滴下し、静置した。上層が水層、下層が油層(樹脂層)に層分離したため、上層をデカンテーションによって除去した。廃水の量は1100部であった。油層(樹脂層)にN,N−ジメチルホルムアミド610部を加えて希釈した。次いで90℃にて水245部を1時間かけて滴下した。上層をデカンテーションによって除去した。廃水の量は1100部であった。この洗浄工程を更に3度繰り返し芳香族ポリアミド樹脂の処理液1600部を得た。このポリアミド溶液を撹拌された水3200部中に滴下ロートを用いて滴下し、微粒子状の芳香族ポリアミド樹脂を析出させ、濾別した。得られたウェットケーキをメタノール2400部に分散させ撹拌下で2時間還流した。次いでメタノールを濾別し水1600部で洗浄し、乾燥することにより、下記式(2)
【0043】
【化4】

【0044】
で表される芳香族ポリアミド樹脂240部を得た。この芳香族ポリアミド樹脂中に含まれる全リン量を硫酸・硝酸で湿式酸化分解後、モリブデン青―アスコルビン酸吸光光度法により定量したところ、550ppmであった。得られた芳香族ポリアミド樹脂の固有粘度は0.52dl/g(ジメチルアセトアミド溶液、30℃)であり、式中、mの値は約39.2、nの値は約0.8であった。また仕込み比率から計算されたフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂のエポキシ基に対する活性水素当量は約5000g/eqであった。
【0045】
得られた芳香族ポリアミド樹脂7.50部に対し、エポキシ樹脂としてNC−3000(日本化薬株式会社製、エポキシ当量275g/eq、軟化点55℃)0.42部、硬化触媒として2PHZ−PW(四国化成製)0.01部、溶剤としてN−メチルピロリドン17部を用いて撹拌溶解させワニスを調整した。
【0046】
試験例1
合成例1で得られたワニスを厚さ18μmの電解銅箔の粗面にアプリケーターを用いて100μmに塗布し130℃で30分間乾燥させることにより溶剤を除去した。次いで180℃で1時間硬化させることにより片面フレキシブル基板を得た。硬化後、室温でのカールは認められなかった。
【0047】
得られた片面フレキシブル基板を30分煮沸した後に、ポリイミド面を260℃の半田浴上に30秒間接触させ、銅箔面の外観を観察したところ、異常は観察されなかった。
【0048】
得られた片面フレキシブル基板の銅箔をエッチングにより除去し樹脂層のガラス転移温度を測定したところ、235℃であった。また、UL94規格に基づき難燃性を観察したところV−0レベルであった。
【0049】
実施例1
合成例1で得られたワニスを厚さ18μmの電解銅箔の粗面にアプリケーターを用いて100μmに塗布し130℃で30分間乾燥させることにより溶剤を除去した。次いで樹脂面に厚さ18μmの電解銅箔を張り合わせ、熱板プレスで30Kg/cm圧力下180℃で1時間硬化させることにより両面フレキシブル基板を得た。
【0050】
得られた両面フレキシブル基板の接着性をJIS−C6471規格に基づいて銅箔引き剥がし試験を行い測定したところ2.1Kg/cmであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂及び有機溶剤を含むワニスを金属箔に直接塗布する工程、溶媒を除去し、樹脂層を設ける工程、及び金属箔を樹脂層側に貼り合わせて硬化させる工程からなる両面フレキシブルプリント基板の製造方法。
【化1】

(式中、m、nは平均値でありm+nは2〜200の正数であり、nは0.1以上の正数である。Ar、Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族残基である。)
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られる両面フレキシブルプリント基板。
【請求項3】
フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂からなる絶縁層およびその両面に設けられた金属箔の3層からなる両面フレキシブルプリント基板。

【公開番号】特開2012−138586(P2012−138586A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23951(P2012−23951)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2005−131794(P2005−131794)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】