説明

両面フレキシブルプリント配線板

【課題】優れた耐屈曲性を有することができる両面FPCを提供すること。
【解決手段】第1面1a及びその反対側の第2面1bを有し、第1面1a及び第2面1bを通るように形成されているスルーホール2を有する絶縁基材1と、第1面1a及び第2面1a上に設けられる導体層10,20と、スルーホール2の内壁面2aに設けられる導体部30と、導体層10,20の厚さが5〜12μmであり、且つ、導体層10,20の厚さをd(μm)、スルーホール2の径をφ(μm)とした場合に、d及びφがd/φ=0.4〜2.5を満足する両面FPC100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面フレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタルカメラなどの電子機器については小型化及び高機能化が求められている。これに伴い、その小型電子機器に用いられるフレキシブル配線板(以下、「FPC」と呼ぶ)として、FPCを大型化せずに多数の電子部品の実装を可能とする両面FPCがよく用いられるようになっている。両面FPCは、絶縁基材の両面側にそれぞれ銅回路を設け、これら両面に設けられた銅回路同士を、絶縁基材のスルーホール内壁面に設けられた銅めっき膜を介して電気的に接続させたものである(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−253761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に記載の両面FPCは、では、スルーホールが繰り返し屈曲に対して脆弱な部分となっている。このため、両面FPCには、繰り返し屈曲に対する十分な耐久性、即ち十分な耐屈曲性を有することが求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐屈曲性を有する両面FPCを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため、スルーホールの径及び絶縁基材の両面に設けられる導体層の厚さに着目して鋭意研究を重ねた結果、絶縁基材の両面に設けられる導体層の厚さが所定の範囲にあり、且つスルーホールの径と導体層の厚さとの関係が所定の範囲にあるときに上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、第1面及びその反対側の第2面を有し、前記第1面及び前記第2面を通るように形成されているスルーホールを有する絶縁基材と、前記第1面及び前記第2面上に設けられる導体層と、前記スルーホールの内壁面上に設けられる導体部と、前記導体層の厚さが5〜12μmであり、且つ、前記導体層の厚さをd(μm)、前記スルーホールの径をφ(μm)とした場合にd及びφが下記式:
d/φ=0.4〜2.5
を満足することを特徴とする両面FPCである。
【0008】
この発明によれば、優れた耐屈曲性を有する両面FPCが提供される。
【0009】
なお、導体層の厚さd(μm)が上記範囲を外れると、耐屈曲性が顕著に低下する。またd/φの値が上記範囲を外れると、耐屈曲性が顕著に低下する。
【0010】
上記両面FPCにおいては、前記スルーホールの径が5〜30μmであることが好ましい。この場合、スルーホールの径が上記範囲を外れる場合に比べて、より優れた耐屈曲性が得られる。
【0011】
上記両面FPCにおいては、前記スルーホールが、前記導体部によって充填されていることが好ましい。この場合、スルーホールが導体部によって充填されていない場合に比べて耐屈曲性をより向上させることができる。
【0012】
なお、本発明において、「スルーホールの径」とは、スルーホールと絶縁基材の第1面又は第2面との交差により得られる開口の径のうちの最小径を言うものとする。ここで、開口の径とは、開口の形状が例えば円形である場合にはその直径を、四角形である場合にはその最も短い辺の長さを意味するものとする。なお、スルーホールと絶縁基材の第1面との交差により得られる開口の面積と、スルーホールと絶縁基材の第2面との交差により得られる開口の面積とが異なる場合には、より小さい面積の開口の径のうちの最小径を言うものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた耐屈曲性を有する両面FPCが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る両面FPCの一実施形態を部分的に示す切断面端面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【図4】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【図5】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【図6】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【図7】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【図8】図1の両面FPCの一製造工程を示す切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る両面FPCの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る両面FPCの好適な実施形態を部分的に示す切断面端面図、図2は、図1の部分拡大図である。図1に示すように、本実施形態の両面FPC100は、絶縁基材1と、絶縁基材1の第1面1a上に設けられる導体層10と、絶縁基材1のうち第1面1aと反対側の第2面1b上に設けられる導体層20とを備えている。また絶縁基材1には、第1面1a及び第2面1bを通るようにスルーホール2が形成されており、スルーホール2の内壁面2aには、導体層10と導体層20とを接続する導体部30が設けられている。また本実施形態の両面FPC100では、スルーホール2は導体部30によって充填されていない。即ち導体部30は中空状となっている。より具体的には、導体部30には、絶縁基材1の厚さ方向に延びる貫通孔が形成されている。
【0017】
ここで、導体層10及び導体層20の厚さdは5〜12μmである。またスルーホール2の径をφ(μm)とすると、d及びφは下記式:
d/φ=0.4〜2.5
を満足している。
【0018】
このような両面FPC100によれば、耐屈曲性に優れたものとなる。またスルーホール2の内壁面2aに設けた導体部30の直流抵抗の上昇が抑制され、両面FPC100に規定電流を容易に流すことができる。
【0019】
次に、絶縁基材1、スルーホール2、導体層10,20及び導体部30のそれぞれについて詳細に説明する。
【0020】
絶縁基材1は、絶縁性の材料であればいかなるものであってもよく、絶縁基材1としては、例えばポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。中でも、PIが耐熱性や寸法安定性の点から好ましい。絶縁基材1は通常、平板状をなしている。
【0021】
スルーホール2は、第1面1a及び第2面1bを通るように形成されている。スルーホール2の内壁面2aの形状は、特に制限されず、例えば円柱状でも四角柱状でも円錐状でもよい。またスルーホール2の径φは、5〜150μmであるが、耐屈曲性をより向上させる点からは5〜30μmであることが好ましい。
【0022】
導体層10,20及び導体部30はそれぞれ、例えばシード層3とめっき膜5とで構成されている。導体部30のシード層3は、絶縁基材1の第1面1a上に設けられるシード層3及び、第2面1b上に設けられるシード層3に連続して設けられており、導体部30のめっき膜5は、絶縁基材1の第1面1a側に設けられるめっき膜5、及び、第2面1b側に設けられるめっき膜5に連続して設けられている。
【0023】
シード層3は例えば銅などで構成される。シード層3は、絶縁基材1側にNiまたはNi−Cr合金からなる層をさらに有していてもよい。この場合、シード層3と絶縁基材1との間の密着性がより向上し、導体層10、20、30の絶縁基材1からの剥離をより十分に抑制することができる。めっき膜5は、例えば銅などで構成される。
【0024】
導体層10及び導体層20の厚さdは、5〜8μmであることが好ましい。この場合、厚さdが上記範囲を外れた場合に比べて、耐屈曲性が顕著に優れたものとなる。
【0025】
次に、上述した両面FPC100の製造方法について図3〜図8を用いて説明する。
【0026】
図3〜図8は、両面FPC100を製造する一連の工程を示す切断面端面図である。
【0027】
まず絶縁基材1を準備する(図3)。
【0028】
次に、絶縁基材1に、第1面1aと第2面1bとを通るようにスルーホール2を形成する(図4)。スルーホール2は、レーザ加工装置、ドリル、パンチなどの穿孔装置を用いて形成することができる。なお、図4は、スルーホール2がレーザ加工装置により形成された例を示すものであり、第1面1a側の径が第2面1b側の径よりも大きくなっている。レーザ加工装置としては、例えばエキシマーレーザ装置を用いることができる。
【0029】
次に、絶縁基材1の上にシード層3を形成する(図5)。シード層3は、絶縁基材1の上に、Ni層またはNi−Cr合金層を形成した後、Cu層を形成することによって得ることができる。シード層3は、例えばスパッタ法、蒸着法、無電解めっき法などによって形成することができる。
【0030】
次に、シード層3の上で且つめっき膜5を形成しない領域にマスク層4を形成する(図6)。マスク層4は、例えばシード層3の上にレジスト層(図示せず)を形成し、レジスト層を露光して現像することにより得ることができる。
【0031】
次に、シード層3の上に電解めっき法によって、めっき膜5を形成する(図7及び図2)。このとき、めっき膜5は、導体層10,20の厚さdが5〜12μmとなるように、且つ厚さd(μm)及びスルーホール2の径φ(μm)が下記式:
d/φ=0.4〜2.5
を満足するように形成する。これにより、絶縁基材1の第1面1a側及び第2面1b側にそれぞれ導体層10,20を形成すると同時に、スルーホール2の内壁面2aに導体部30を形成することが可能となる。
【0032】
次に、マスク層4を除去し(図8)、続いて、マスク層4の除去により露出したシード層3を除去する。こうして、絶縁基材1の第1面1a上に導体層10を有し、第2面1b上に導体層20を有し、スルーホール2の内壁面2a上に導体部30を有する積層体が得られる(図1参照)。
【0033】
最後に、接着剤層及び樹脂フィルムから構成されるカバーレイ(図示せず)を2つ用意する。そして、これらのカバーレイを、上記積層体に重ね合わせる。このとき、カバーレイの接着剤層と導体層10,20とを接触させるようにする。こうして、2つのカバーレイの間に上記積層体を配置した後、これらを熱プレスし、カバーレイを上記積層体に貼り付ける。
【0034】
以上のようにして両面FPC100が得られ、両面FPC100の製造が完了する。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、導体層10,20,30がシード層3とめっき膜5とで構成されているが、めっき膜5を無電解めっき法により形成する場合にはめっき膜5のみで構成することもできる。この場合、シード層3の形成は不要となる。
【0036】
また上記実施形態では、スルーホール2が導体部30によって充填されていないが、耐屈曲性をより向上させる観点からは、スルーホール2は導体部30によって充填されていることが好ましい。即ち導体部30は中実状となっていることが好ましい。より具体的には導体部30には貫通孔が形成されていないことが好ましい。このようにスルーホール2を導体部30で充填するためには、例えばスルーホール2の内壁面2aの形状が円柱状である場合、導体層10,20の厚さdをスルーホール2の径φの1/2以上にすればよい。
【0037】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
はじめに、PIからなる厚さ25μmの絶縁基材に、エキシマレーザ加工機Light Bench(製品名、OPTEC社製)を用いて最小径が5μmとなるスルーホールを形成した。
【0039】
次に、絶縁基材の上にNi層をスパッタ法によって20nm程度の厚さに形成し、その後、Cu層をスパッタ法によって厚さ200nm程度の厚さに形成した。こうしてNi層及びCu層からなるシード層を得た。
【0040】
次に、このシード層の上に、RY3310(日立化成社製)からなるレジスト層を厚さ10μmとなるようにラミネートした。その後、露光装置を用いて、レジスト層のうち、導体層を形成する予定の領域を露光した。
【0041】
露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなる現像液を用いて未露光部分を除去して、露光部分はマスク層として残した。
【0042】
続いて、めっき液として、トップルチナNSV(商品名、奥野製薬工業株式会社製)を用い、上記のシード層上に、電解めっき法により、Cuの電解めっき膜を形成した。こうして絶縁基材の両面上及びスルーホールの内壁面上に導体層を形成した。このとき、絶縁基材の両面に形成された導体層については、厚さが68μmとなるようにし、導体層によってスルーホールを充填させた。
【0043】
その後、マスク層を3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて除去し、続いて、シード層を硫酸・過酸化水素水系エッチング液により除去した。
【0044】
最後に、カバーレイとして、CSA1020(商品名、有沢製作所株式会社製)を2枚準備し、これらをそれぞれ絶縁基材の両面側に形成されためっき膜を覆うように積層体に貼り合わせた。こうして両面FPCを得た。
【0045】
(実施例2〜5)
スルーホールの径φ及び導体層の厚さdをそれぞれ表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして両面FPCを得た。
【0046】
(実施例6)
スルーホールの径φ及び導体層の厚さdをそれぞれ表1に示す通りに変更し、導体層でスルーホールを充填させなかったこと以外は実施例1と同様にして両面FPCを得た。
【0047】
(比較例1〜15)
スルーホールの径φ及び導体層の厚さdをそれぞれ表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして両面FPCを得た。

【表1】

【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜15の両面FPCについて、以下のようにして、耐屈曲性及びスルーホール内壁面に形成された導体層の直流抵抗を調べた。
【0049】
[耐屈曲性試験]
実施例1〜6及び比較例1〜15の両面FPCについて、以下のようにして耐屈曲性試験を行った。即ち、FPC高速屈曲性試験機(製品名:SEK−31C2S、信越エンジニアリング株式会社製)を用い、以下の測定条件:
屈曲半径:2mm
屈曲速度:1500回/分
で屈曲寿命回数を測定した。結果を表1に示す。ここで、屈曲寿命回数とは、両面FPCの抵抗上昇率が20%以上となるまでの屈曲回数である。
【0050】
[スルーホール内壁面に形成された導体層の直流抵抗]
実施例1〜6及び比較例1〜15の両面FPCについて、スルーホールの内壁面に形成された導体層の直流抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
表1に示すように、実施例1〜6の両面FPCは、比較例1〜15の両面FPCに比べて、極めて優れた耐屈曲性を有していることが分かった。また、実施例1〜5の両面FPCは、比較例1〜15の両面FPCに比べて直流抵抗が顕著に低くなっていることも分かった。従って、実施例1〜6の両面FPCは、規定電流を容易に流すことができることが分かった。
【0052】
以上より、本発明に係る両面FPCによれば、優れた耐屈曲性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0053】
1…絶縁基材、2…スルーホール、3…シード層、5…めっき膜、10,20…導体層、30…導体部、d…導体層の厚さ、φ…スルーホールの径。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及びその反対側の第2面を有し、前記第1面及び前記第2面を通るように形成されているスルーホールを有する絶縁基材と、
前記第1面及び前記第2面上に設けられる導体層と、
前記スルーホールの内壁面に設けられる導体部と、
前記導体層の厚さが5〜12μmであり、且つ、前記導体層の厚さをd(μm)、前記スルーホールの径をφ(μm)とした場合に、d及びφが下記式:
d/φ=0.4〜2.5
を満足することを特徴とする両面フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記スルーホールの径φが5〜30μmであること、
を特徴とする請求項1に記載の両面フレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記スルーホールが、前記導体部によって充填されている、請求項1又は2に記載の両面フレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−18808(P2011−18808A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163070(P2009−163070)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】