説明

中空プリント配線基板の製造法

【課題】多層プリント配線板の製造技術を応用して、すなわち、内層のプリント配線を中空部形成用凸部パターンとして利用し、当該凸部パターン間の凹部を樹脂で埋めずに中空のまま残した中空プリント配線基板を製造する。
【解決手段】次の(a)〜(c)の工程を経る。(a)プリプレグを加熱加圧成形した樹脂絶縁層の片面に、加熱硬化後においても再加熱により接着性を有する加熱硬化した熱硬化性樹脂Aの層1が一体化された絶縁板aを用意する。(b)プリプレグを加熱加圧成形した樹脂絶縁層の一方の面に中空部形成用凸部パターン3が一体化され、他方の面に銅箔2が一体化された絶縁板bを用意する。(c)絶縁板aの熱硬化性樹脂Aの層1側と前記絶縁板bの中空部形成用凸部パターン3側を向き合せて重ね、加熱加圧して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層プリント配線板の製造技術を応用して、内部に中空部を有するプリント配線基板を製造する方法に関する。マイクロフォンに組み込まれるプリント配線基板には、音質をよくするために音を通す中空部が付加されることがあるが、本発明は、このような中空プリント配線基板の製造に適したものである。
【0002】
【従来の技術】多層プリント配線板の製造には、次のような技術が広く採用されている。まず、絶縁板の両面にプリント配線を形成したプリント配線板を用意する。次に、プリプレグを介して前記プリント配線板を積み重ね、これらを加熱加圧成形により一体化する。プリプレグは、熱硬化性樹脂をガラスクロス等のシート状繊維基材に含浸乾燥し熱硬化性樹脂の硬化を半ばまで進めたものである。内層のプリント配線の配線間にできる凹部は絶縁樹脂で隙間無く埋める必要がある。上記の技術では、加熱加圧成形で溶融し流動するプリプレグの熱硬化性樹脂が凹部に十分に行きわたりこれを埋めるように、樹脂流れ量の大きいプリプレグを用いている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記多層プリント配線板の製造技術を応用する。内層のプリント配線を中空部形成用凸部パターンとして利用し、当該凸部パターン間の凹部を樹脂で埋めずに中空のまま残そうとするものである。しかし、上記従来の技術は、プリプレグから流出させた樹脂で凹部を埋め、中空部を残さないようにしようとする技術であり、このままでは対応できない。樹脂流れ量を少なく調整したプリプレグを用い加熱加圧成形時に中空部形成用凸部パターン間の凹部に流れ込む樹脂を少なくすることも考えられるが、これだけでは不十分である。プリプレグは剛性が低いために、加熱加圧成形時に変形し、凸部パターン間の凹部に入り込んでしまう問題もある。
【0004】本発明が解決しようとする課題は、中空部形成用凸部パターン間の凹部に樹脂が流れ込むのを防ぎ、中空部をそのまま残した中空プリント配線基板を製造することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る方法は、次の(a)〜(c)の工程を経て中空プリント配線基板を製造する。
(a)熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を加熱加圧成形した樹脂絶縁層の片面に、加熱硬化後においても再加熱により接着性を有する加熱硬化した熱硬化性樹脂Aの層が一体化された絶縁板aを用意する工程。
(b)熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を加熱加圧成形した樹脂絶縁層の一方の面に中空部形成用凸部パターンが一体化され、他方の面に金属箔が一体化された絶縁板bを用意する工程。
(c)前記絶縁板aの熱硬化性樹脂Aの層側と前記絶縁板bの中空部形成用凸部パターン側を向き合せて重ね、加熱加圧して一体化する工程。
【0006】本発明は、特に上記絶縁板aを用いる点に特徴がある。絶縁板aの片面に一体化された加熱硬化した熱硬化性樹脂Aの層は、上記(c)の工程における加熱により接着性を回復し、絶縁板aと絶縁板cを一体化する機能を発揮する。しかし、熱硬化性樹脂Aは既に硬化しているので、凸部パターン間の凹部に流れ込むほどの流動性はない。また、絶縁板aは、シート状繊維基材で補強されているので剛性がある。(c)の工程における加圧によっても変形せず、熱硬化性樹脂Aの層をしっかり保持して、これが凸部パターン間に入り込むことがないようにしている。
【0007】
【発明実施の形態】本発明に係る方法を実施するに当たり、絶縁板aは、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂ワニスを含浸乾燥して得たプリプレグを加熱加圧成形して製造する。このとき、熱硬化性樹脂Aの層も一体に形成する。熱硬化性樹脂Aは、例えばエポキシ樹脂にアクリルゴムを配合したものであり、これをフィルム状にして前記プリプレグ層の一方の面に配置し加熱加圧成形により一体化する。必要に応じて、プリプレグ層の他方の面には金属箔を配置し加熱加圧成形により一体化する。
【0008】絶縁板bも、ガラスクロスにエポキシワニス樹脂を含浸乾燥して得たプリプレグを加熱加圧成形して製造する。このとき、プリプレグ層の両面に金属箔を配置し加熱加圧成形により一体化する。一方の面の金属箔を、(c)の工程前にエッチング加工して中空部形成用凸部パターンとする。中空部形成用凸部パターンには、厚めの金属箔(70μm厚以上)を用いるとよい。
【0009】
【実施例】実施例(図1参照)
熱硬化性樹脂Aとして、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)10重量部、ゴム成分(エポキシ変性アクリルゴム)80重量部、硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂)10重量部、硬化促進剤(イミダゾール)1重量部を配合したワニスAを調製した。このワニスAをポリプロピレンからなる離型フィルムの片面に塗布し、150℃で2分間乾燥して、離型フィルムに保持した熱硬化性樹脂Aの層を準備した。熱硬化性樹脂Aの層は、乾燥後の厚みが30μmとなるよう塗布量を調整した。ガラスクロスにエポキシ樹脂ワニスを含浸乾燥したプリプレグ1枚の一方の面に前記離型フィルムに保持された熱硬化性樹脂Aの層を重ね、他方の面に金属箔(18μm厚の電解銅箔)を重ね、これをステンレス製の鏡面板に挟んで、圧力40kgf/cm2、熱盤最高温度140℃で10分間加熱加圧成形し、絶縁板aを作製した。図1に示すように、絶縁板aは、一方の面に熱硬化性樹脂Aの層1が一体化され、他方の面に銅箔2が一体化されている。別途、ガラスクロスにエポキシ樹脂ワニスを含浸乾燥したプリプレグ1枚の一方の面に18μm厚の電解銅箔を重ね、他方の面に70μm厚の電解銅箔を重ね、これをステンレス製の鏡面板に挟んで、圧力40kgf/cm2、熱盤最高温度175℃で40分加熱加圧成形し、両面銅張り積層板を作製した。そして、前記70μm厚の電解銅箔をエッチング法により選択的に除去し、中空部形成用凸部パターンとした。図1に示すように、絶縁板bは、一方の面に中空部形成用凸部パターン3が一体化され、他方の面に銅箔2が一体化されている。中空部形成用凸部パターン3の表面には、粗化のための黒化処理を施した。上記の各工程で得た絶縁板aの熱硬化性樹脂Aの層1側と、絶縁板bの中空部形成用凸部パターン3側とを向き合せて重ね、これをステンレス製の鏡面板に挟んで、圧力50kgf/cm2、熱盤最高温度175℃で、材料温度150℃が40分間継続するよう加熱加圧成形し一体化した。その後、両面の銅箔2をエッチング法により選択的に除去し回路加工をした。
【0010】従来例(図2参照)
ガラスクロスにエポキシ樹脂ワニスを含浸乾燥し、エポキシ樹脂の硬化反応状態を通常より進め溶融時の樹脂流動性を低下させたノンフロータイププリプレグを準備した。上記実施例で準備した絶縁板bの中空部形成用凸部パターン3側にノンフロータイププリプレグ4を重ね、さらにその上に18μm厚の電解銅箔2を重ね、これらをステンレス製の鏡面板に挟んで、圧力50kgf/cm2、熱盤最高温度175℃で、材料温度150℃が40分間継続するよう加熱加圧成形し一体化した。その後、両面の銅箔2をエッチング法により選択的に除去し回路加工をした。
【0011】上記実施例と従来例により作製したプリント配線基板の断面を観察して、中空部形成用凸部パターン3の間にできた中空部の高さを測定した。表1に測定結果を示す。表1は、本発明に係る実施例においては、中空部形成用凸部パターン3の厚さ70μmに近い中空部高さが確保されていることを示している。また、従来例においては、中空部形成用凸部パターン3の間の凹部に樹脂が流入し中空部を十分に確保できないことを示している。
【0012】
【表1】


【0013】
【発明の効果】上述のように、本発明に係る方法によれば、中空部形成用凸部パターンの間の凹部を樹脂で埋めず残したまま絶縁板aと絶縁板bを一体化することができ、中空部形成用凸部パターンの厚さに近い高さの中空部を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施例の製造工程を説明する断面図である。
【図2】従来例の製造工程を説明する断面図である。
【符号の説明】
1は熱硬化性樹脂Aの層
2は銅箔
3は中空部形成用凸部パターン
4はノンフロータイププリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】次の(a)〜(c)の工程を経ることを特徴とする中空プリント配線基板の製造法。
(a)熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を加熱加圧成形した樹脂絶縁層の片面に、加熱硬化後においても再加熱により接着性を有する加熱硬化した熱硬化性樹脂Aの層が一体化された絶縁板aを用意する工程。
(b)熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を加熱加圧成形した樹脂絶縁層の一方の面に中空部形成用凸部パターンが一体化され、他方の面に金属箔が一体化された絶縁板bを用意する工程。
(c)前記絶縁板aの熱硬化性樹脂Aの層側と前記絶縁板bの中空部形成用凸部パターン側を向き合せて重ね、加熱加圧成形して一体化する工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−60752(P2001−60752A)
【公開日】平成13年3月6日(2001.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−235857
【出願日】平成11年8月23日(1999.8.23)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】