説明

中空微粒子、中空微粒子の製造方法及び中空微粒子の製造装置

【課題】単分散性に優れた中空微粒子を作製する。
【解決手段】中空微粒子の製造方法は、微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子18を分散させ分散相16を形成する工程と、予め定められた細孔径を有する膜部材20(又はマイクロチャネル20)を介して分散相16の滴40を親油性の連続相32に放出させ油中水エマルションを形成する工程と、油中水エマルションに架橋剤52を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子60を形成する工程と、内包微粒子18を溶解可能な溶媒72に内包微粒子含有微粒子60を投入して少なくとも1つ以上の中空孔82を有し且つ平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子80を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空微粒子、中空微粒子の製造方法及び中空微粒子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子の内部に空隙を有する構造をもつ「中空粒子」と呼ばれる粒子が近年注目を浴びている。この中空粒子内の空隙を活用することによって、様々な分野において機能性材料として利用されている。例えば、機能性材料として、マイクロカプセル、触媒担持体、吸着剤、光散乱剤や断熱部材などの用途がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、まず、撹拌槽中で、水系媒体中に分散する数平均分子量20,000〜500,000の樹脂粒子に、疎水性架橋モノマーと重合開始剤を添加し、疎水性架橋モノマーが樹脂粒子中に取り込まれ、取り込まれた疎水性架橋モノマーが重合開始剤により重合が開始し、重合の進行に伴って、樹脂粒子表面近傍の疎水性架橋剤モノマーが重合し、樹脂粒子表面に疎水性架橋モノマーの重合体が被膜状に形成され、さらに重合を進行させていくと、疎水性架橋モノマーより構成される重合体の被膜が分離しはじめ、被膜の分離の進行により、被膜と樹脂粒子表面の間に空隙が形成され、最終的に、中空粒子を作製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−266504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような中空粒子を製造する方法は、スケールアップを行うことにより、粒子の単分散性(すなわち、粒径がそろっていること)を維持することが容易ではない。さらに、ミクロンオーダーの粒径を有する中空微粒子において、単分散性を獲得することは容易ではない。
【0006】
本発明は、単分散性に優れたミクロンオーダーの粒径を有する中空微粒子、及び製造時にスケールアップを行っても単分散性に優れたミクロンオーダーの粒径を有する中空微粒子の製造方法及び製造装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0008】
(1)平均粒径が0.1μm以上10μm以下であって、中空孔を1つ以上有する中空微粒子である。
【0009】
平均粒径が0.1μm以上10μm以下と極めて微粒子であって、且つ中空孔が1つ以上あるため、機能性部材としての用途適用範囲が広い。
【0010】
(2)上記(1)に記載の中空微粒子において、CV9%以下の単分散性を有する中空微粒子である。
【0011】
単分散性に優れた中空微粒子であるため、機能性部材としての特性のばらつきが少ない。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載の中空微粒子において、有機高分子化合物からなる中空微粒子である。
【0013】
有機高分子化合物からなる中空微粒子は、無機質中空微粒子に比べ、可撓性に優れている。したがって、例えば、医療分野、化粧品分野、農薬分野などに有望視されているドラックデリバリーシステム(Drug Delivery System、以下「DDS」という)のキャリアとして好適である。
【0014】
(4)上記(3)に記載の中空微粒子において、前記有機高分子化合物は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を含むポリアミノ酸及びその塩、ポリエチレングリコール、アラビアゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化プロテイン、コラーゲン分解物及びその誘導体、アシル化タンパク、ポリグリセリン、アミノ酸ポリグリセリンエステル、糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の天然高分子化合物である中空微粒子である。
【0015】
天然高分子化合物からなる中空微粒子は、例えば、医療分野、化粧品分野、農薬分野などに用いるDDSのキャリアとしての安全性が高い。
【0016】
(5)微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子を分散させ分散相を形成する工程と、予め定められた細孔径を有する膜部材又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルを介して前記分散相の滴を親油性の連続相に放出させ油中水エマルションを形成する工程と、前記油中水エマルションに架橋剤を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子を形成する工程と、内包微粒子を溶解可能な溶媒に前記内包微粒子含有微粒子を投入して少なくとも1つ以上の中空孔を有し且つ平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子を形成する工程と、を有する中空微粒子の製造方法である。
【0017】
微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子を分散させた分散相を用い、予め定められた細孔径を有する膜部材又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルを介して油中水エマルションを形成するので、平均粒径が従来のものより小さい内包微粒子含有微粒子が形成される。さらに形成された内包微粒子含有微粒子を、例えば内包微粒子のみを溶解可能な溶媒に浸漬することによって、内包微粒子のみを溶解させ、内包微粒子が存在していた部分が中空孔となった少なくとも1つ以上の中空孔を有する中空微粒子を形成することができる。
【0018】
(6)微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子を分散させた分散相を貯留する分散相貯留槽と、前記分散相を透過させるため予め定められた細孔径を有する膜部材又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルと、前記膜部材又はマイクロチャネルを介して透過した分散相の滴を親油性の連続相に放出させ油中水エマルションを形成する乳化槽と、前記油中水エマルションに架橋剤を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子を形成する微粒子化槽と、前記内包微粒子含有微粒子中の内包微粒子を溶解可能な溶媒が貯留された溶解槽と、を有し、少なくとも1つ以上の中空孔を有し平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子を調製する中空微粒子の製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単分散性に優れたミクロンオーダーの粒径を有する中空微粒子、及び製造時にスケールアップを行っても単分散性に優れたミクロンオーダーの粒径を有する中空微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における中空微粒子の製造装置の一例の構成を示す模式図である。
【図2】図1の破線で囲った部分の拡大模式図である。
【図3】本発明における中空微粒子の一例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明における中空微粒子の他の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明における中空微粒子の他の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明における中空微粒子の他の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態における中空微粒子、中空微粒子の製造方法及び中空微粒子の製造装置について、以下に説明する。
【0022】
[中空微粒子]
本発明の実施の形態における中空微粒子は、その平均粒径が0.1μm以上10μm以下であって、中空孔を1つ以上有する。ここで、「中空微粒子」における「微粒子」とは、一般的な粒子より小さい粒子を指し、平均粒径が0.1μm以上10μm以下の粒子を微粒子という。また「中空」とは、粒子内に形成された空隙及び粒子表面に開口を有する空隙の両方を含む意味である。
【0023】
中空微粒子の平均粒径が0.1μm以上10μm以下であり且つ中空孔が1つ以上あることから、本実施の形態の中空微粒子を機能性部材、例えばDDSに用いる場合、中空微粒子の中空孔の数と中空孔の大きさに応じて、中空孔中の薬剤の放出速度を制御することができる。
【0024】
また、上記平均粒径は、粒径に応じて以下の装置及び操作により測定した。測定する粒子直径が2μm以下の場合、ダイナミック光散乱光度計(「DLS−8000」大塚電子株式会社製)と走査電子顕微鏡(以下「SEM」という)、又は、測定する粒子直径が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0025】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
【0026】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、コールターマルチカウンター−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0027】
本実施の形態における中空微粒子の単分散性は、CV9%以下である。単分散性に優れた中空微粒子であるため、機能性部材としての特性のばらつきが少ない。
【0028】
単分散性は、得られた中空微粒子をスライドグラス上に散布し、ダイナミック光散乱光度計(「DLS−8000」大塚電子株式会社製)の測定データを素に求めるか、又は光学顕微鏡像をビデオカメラを通じて画像解析装置に取り込み、50個以上の中空微粒子の平均粒径を測定し、以下の式(1)に基づきCV値(Coefficient of Variation)を求めた。なお、一般に、CV値が10%以下になると単分散性が高いと考えられる。
(数1)
CV[%]=(σ/D)×100 ・・・(1)
式中、σは標準偏差、Dは平均粒径である。
【0029】
本実施の形態における中空微粒子は、有機高分子化合物からなり、有機高分子化合物は、合成有機高分子化合物であっても、天然高分子化合物であってもよく、中空微粒子の用途に応じて適宜これらの中から少なくとも1種選択する。
【0030】
合成有機高分子化合物としては、例えば、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等をあげることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、ナイロン6、パラフィンワックス等をあげることができる。
【0031】
一方、天然高分子化合物としては、例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を含むポリアミノ酸及びその塩、ポリエチレングリコール、アラビアゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化プロテイン、コラーゲン分解物及びその誘導体、アシル化タンパク、ポリグリセリン、アミノ酸ポリグリセリンエステル、マンニトールなどの糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができる。
【0032】
有機高分子化合物からなる中空微粒子は、無機質中空微粒子に比べ、可撓性に優れている。したがって、例えば、医療分野、化粧品分野、農薬分野などに有望視されているドラックデリバリーシステム(DDS)のキャリアとして好適である。さらに、天然高分子化合物からなる中空微粒子は、例えば、医療分野、化粧品分野、農薬分野などに用いるDDSのキャリアとしての安全性が高い。
【0033】
[中空微粒子の製造方法及び製造装置]
本発明の実施の形態における中空微粒子の製造方法及び製造装置について、図1,図2を用いて以下に説明する。なお、図1,2は説明のために模式的に記載されており、その寸法関係は実際のものと異なる。
【0034】
本発明の実施の形態における中空微粒子の製造装置は、図1に示すように、粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子18を分散させた分散相16を貯留する分散相貯留槽10と、分散相16を透過させるため予め定められた細孔径を有する膜部材20と、膜部材20を介して透過した分散相16の滴40を親油性の連続相32に放出させ油中水エマルションを形成する乳化槽30と、連続相32に滴40が乳化している油中水エマルションに架橋剤52を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子60を形成する微粒子化槽50と、内包微粒子含有微粒子60中の内包微粒子18を溶解可能な溶媒72が貯留された溶解槽70と、を備える。ここで、上記膜部材20の代わりに、予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルを用いてもよい。
【0035】
さらに、本実施の形態における中空微粒子の製造装置は、不活性ガスが圧入されたガスボンベ12と圧力測定用の圧力計14とが設けられ、さらにガスボンベ12と圧力計14とを繋ぐ流路にはバルブ13が設けられ、圧力計14の測定値に基づき、バルブ13の開閉度を制御して所定の圧力に調整している。ここで、不活性ガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
【0036】
次に、上記製造装置の動作について図1,2を用いて説明しながら、本実施の形態における製造方法について以下に説明する。
【0037】
まず、分散相貯留槽10内に、微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子18を分散させ分散相を形成する。ここで、「微粒子形成用物質」とは、上述した有機高分子化合物を指し、有機高分子化合物は、上述した合成有機高分子化合物であっても、天然高分子化合物であってもよく、中空微粒子の用途に応じて適宜これらの中から少なくとも1種選択する。生体適合性の機能性部材として中空微粒子を用いる場合、上記天然高分子化合物として、例えば重量平均分子量8,000〜10万程度のキトサンが好適である。
【0038】
次いで、バルブを開けてガスボンベ12から不活性ガスを圧力計14を介して分散相貯留槽10内に圧入し、予め定められた細孔径を有する膜部材20(又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネル)を介して分散相16の滴40を親油性の連続相32に放出させ、乳化槽30にて油中水エマルションを形成する。この工程を膜乳化工程ともいう。さらに、図2を用いて詳細に説明すると、膜部材20の細孔径より小さい粒子径を有する内包微粒子18を含有する分散相16を用いて膜乳化法により連続相32に滴40を圧入分散させて、微粒子形成用物質を含む溶液中に内包微粒子18を1つ以上含有する滴40、油中水エマルション(以下「W/Oエマルション」ともいう)を形成する。ここで、膜部材20の細孔径dと内包微粒子18の粒子径dの関係は、上述したように、d>dの関係を有する。また、膜部材20の細孔径dと滴40であるW/Oエマルションの粒子径dとの関係は、d≦dであり、単分散性としてCV9%以下とする場合には、ガスボンベ12からの不活性ガスの圧力を以下のように制御している。また、膜部材20の代わりにマイクロチャネル20を用いる場合も、マイクロチャネル20のチャネル径と内包微粒子18の粒子径dの関係は、上述したように、d>dの関係を有し、マイクロチャネル20の細孔径dと滴40であるW/Oエマルションの粒子径dとの関係は、d≦dであり、さらに単分散性としてCV9%以下とする場合には、ガスボンベ12からの不活性ガスの圧力を以下のように制御している。
【0039】
分散相が、膜部材の細孔径を介して連続相に滴40として放出される際の臨界透過圧Pcは、以下の式(2)から求められる。なお、臨界透過圧Pcより小さい圧力では、滴40は放出されず、臨界透過圧Pcを超える圧力になった時点ではじめて滴40が連続相に放出される。
(数2)
Pc=4γcosθ/Dm ・・・(2)
式中、Pc:臨界透過圧(kPa)、γ:W/O界面張力(連続相が油相で分散相が水相である場合)(mN/m)、θ:膜部材と水滴との接触角(°)、Dm:膜部材の細孔径(μm)である。
【0040】
本実施の形態では、不活性ガスの圧力を臨界透過圧Pcの近傍に制御することによって、中空微粒子の単分散性をCV9%以下に制御することができる。また、マイクロチャネルを用いる場合も、同様に圧力を制御することにより単分散にすることができる。
【0041】
上記連続相32としては、通常乳化に用いる常温で水に溶解しない油性溶媒であれば如何なる油性溶媒でもよく、また、微粒子形成用物質をほとんど溶解しない油性溶媒であればよく、例えば、大豆精製油、レモンオイルなどの動植物油;ケロシン、ヘキサン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエンなど有機溶媒が好適に用いられる。
【0042】
上記W/Oエマルションを形成する連続相32は、油性界面活性剤が添加されていることが好ましく、油性界面活性剤としては、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)、ショ糖エルカ酸エステル(「ER−290」三菱化学フーズ(株)製)などを用いることができ、その他の界面活性剤、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤、Tween系界面活性剤(例えば、「Tween 20」(polyoxyethylene solbitan monolaulate)、GEヘルスバイオサイエンス(株)製、「Tween 80」(polyoxyethylene solbitan monooleate)、東京化成工業(株)製)やSpan系界面活性剤(例えば、「Span 85」(Solbitan trioleate)、「Span 83」(solbitan sesquileate)、いずれも東京化成工業(株)製)などの非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかから適宜選択して用いてもよい。
【0043】
次に、微粒子化槽50にて、内包微粒子18を含有するW/Oエマルション(滴40)に架橋剤52を添加し、微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子18を含有する内包微粒子含有微粒子60を形成する。
【0044】
ここで、架橋剤52としては、汎用の架橋剤であれば、如何なるものを用いてよいが、例えば、架橋反応が迅速である点から、例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)等のアルデヒド系化合物;硼砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO)、Co(BO)、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO)、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等のホウ素化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;レゾール樹脂;ポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;エポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。なお、上記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
次いで、内包微粒子18を溶解可能な溶媒72に内包微粒子含有微粒子60を投入し浸漬して、内包微粒子含有微粒子60の内包微粒子18を溶出させて、少なくとも1つ以上の中空孔82を有し且つ平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子80を形成する。したがって、上述した架橋剤による架橋度合いは、内包微粒子18が溶出可能な程度に適宜調整される。また、上記溶媒72は、内包微粒子18を溶解し、架橋された微粒子形成用物質のシェル84をほとんど溶解しない溶媒が選択される。したがって、シェル84を形成する架橋された微粒子形成用物質と内包微粒子18との組み合わせに応じて溶媒72を適宜選択することが望ましい。なお、溶媒72は、内包微粒子18を完全に溶出されるものであるが、場合によってはシェル84を一部溶出又は一部膨張させるものであってもよい。
【0046】
本実施の形態における内包微粒子18は、シェル84を形成する微粒子形成用物質の溶解性に差があるものであればよく、例えば、シェル84を架橋されたキトサン(重量平均分子量:8,000〜50,000)で構成する場合、未架橋ポリスチレン(重量平均分子量:1,000〜60,000)からなる内包微粒子18を用い、溶媒としてトルエンを用いることができる。
【0047】
本実施の形態において、得られる中空微粒子の平均粒径を0.1μm以上10μm以下に制御するためには、膜部材20の細孔径又はマイクロチャネルのチャネル径、分散相16中の微粒子形成用物質の濃度、ガスボンベ12から圧入される気体圧力、内包微粒子18の粒子径、微粒子形成用物質の種類を制御することにより、適宜変更させることができる。
【0048】
また、得られる中空微粒子内の中空孔の数は、主に、膜部材20の細孔径又はマイクロチャネルのチャネル径、分散相16中の微粒子形成用物質の濃度、内包微粒子18の粒子径、内包微粒子18の分散相16中の濃度を制御することにより、適宜変更させることができる。
【0049】
本実施の形態の製造装置は、連続生産が可能であり、スケールアップによる影響が極めて少ないため、膜乳化方法(膜部材又はマイクロチャネルを用いた)により、連続的に単分散中空微粒子を大量生産させることができる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明におけるより具体的比較例および実施例について説明を行うが、以下の実施例は本発明の内容について何ら限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「%」はすべて「質量%」を意味し、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0051】
また、平均粒径及び単分散性は、上述したように各測定を行った。
【0052】
−有機高分子化合物の分子量測定方法−
分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0053】
実施例1:
イオン交換水5質量部に、重量平均分子量が48,000のキトサンをキトサン濃度が1.0質量%になるように添加し、さらに、コアとなる内包微粒子である未架橋ポリスチレン粒子(粒径:4.3μm)を5000ppm濃度になるように添加し混合して、分散相を形成した。次いで、0.5atm(50kPa)で分散相を圧入して、細孔径11.1μmの膜部材を介して、上記分散相を、ケロシン30質量部にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)を1.0質量%の濃度になるように添加して調整された連続相に圧入分散させた。得られたW/Oエマルション中に25%のグルタルアルデヒド水溶液を添加して微粒子のシェルとなるキトサンを室温(例えば20℃)で2時間架橋させた。次いで、得られた内包微粒子含有微粒子をトルエン溶媒に室温(例えば20℃)で3日間浸漬させ、内包微粒子であるポリスチレンを溶出させる。これにより、図3に示す中空孔を1個有する平均粒径10μmの中空微粒子が得られた。
【0054】
実施例2:
イオン交換水5質量部に、重量平均分子量が48,000のキトサンをキトサン濃度が1.0質量%になるように添加し、さらに、コアとなる内包微粒子である未架橋ポリスチレン粒子(粒径:1.1μm)を5000ppm濃度になるように添加し混合して、分散相を形成した。次いで約0.4〜0.5atm(約40〜50kPa)で分散相を圧入して、細孔径5.4μmの膜部材を介して、上記分散相を、ケロシン30質量部にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)を1.0質量%の濃度になるように添加して調整された連続相に圧入分散させた。得られたW/Oエマルション中に25%のグルタルアルデヒド水溶液を添加して微粒子のシェルとなるキトサンを室温(例えば20℃)で2時間架橋させた。次いで、得られた内包微粒子含有微粒子をトルエン溶媒に室温(例えば20℃)で4時間浸漬させ、内包微粒子であるポリスチレンを溶出させる。これにより、図4に示す中空孔を2個有する平均粒径5μmの中空微粒子が得られた。
【0055】
実施例3:
イオン交換水5質量部に、重量平均分子量が48,000のキトサンをキトサン濃度が1.0質量%になるように添加し、さらに、コアとなる内包微粒子である未架橋ポリスチレン粒子(粒径:1.1μm)を5000ppm濃度になるように添加し混合して、分散相を形成した。次いで、0.5atm(50kPa)で分散相を圧入して、細孔径11.1μmの膜部材を介して、上記分散相を、ケロシン30質量部にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)を1.0質量%の濃度になるように添加して調整された連続相に圧入分散させた。得られたW/Oエマルション中に25%のグルタルアルデヒド水溶液を添加して微粒子のシェルとなるキトサンを室温(例えば20℃)で2時間架橋させた。次いで、得られた内包微粒子含有微粒子をトルエン溶媒に室温(例えば20℃)で2日間浸漬させ、内包微粒子であるポリスチレンを溶出させる。これにより、図5に示す中空孔を2個以上有する平均粒径10μmの中空微粒子が得られた。
【0056】
実施例4:
イオン交換水5質量部に、重量平均分子量が48,000のキトサンをキトサン濃度が1.0質量%になるように添加し、さらに、コアとなる内包微粒子である未架橋ポリスチレン粒子(粒径:1.1μm)を5000ppm濃度になるように添加し混合して、分散相を形成した。次いで、0.5atm(50kPa)で分散相を圧入して、細孔径11.1μmの膜部材を介して、上記分散相を、ケロシン30質量部にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)を1.0質量%の濃度になるように添加して調整された連続相に圧入分散させた。得られたW/Oエマルション中に25%のグルタルアルデヒド水溶液を添加して微粒子のシェルとなるキトサンを室温(例えば20℃)で2時間架橋させた。次いで、得られた内包微粒子含有微粒子をトルエン溶媒に室温(例えば20℃)で3日間浸漬させ、内包微粒子であるポリスチレンを溶出させる。これにより、図6に示す中空孔を複数個有する平均粒径10μmの中空微粒子が得られた。
【0057】
実施例5:
イオン交換水5質量部に、重量平均分子量が48,000のキトサンをキトサン濃度が1.0質量%になるように添加し、さらに、コアとなる内包微粒子である未架橋ポリスチレン粒子(粒径:0.16μm)を5000ppm濃度になるように添加し混合して、分散相を形成した。次いで、約1.5atm(152kPa)で分散相を圧入して、細孔径0.5μmの膜部材を介して、上記分散相を、ケロシン30質量部にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(「CR−310」阪本薬品工業(株)製)を1.0質量%の濃度になるように添加して調整された連続相に圧入分散させた。得られたW/Oエマルション中に25%のグルタルアルデヒド水溶液を添加して微粒子のシェルとなるキトサンを室温(例えば20℃)で2時間架橋させた。次いで、得られた内包微粒子含有微粒子をトルエン溶媒に室温(例えば20℃)で3日間浸漬させ、内包微粒子であるポリスチレンを溶出させる。これにより、中空孔を複数個有する平均粒径0.5μmの中空微粒子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の活用例として、機能性部材、例えば、マイクロカプセル、触媒担持体、吸着剤、光散乱剤や断熱部材などの用途への適用がある。
【符号の説明】
【0059】
10 分散相貯留槽、12 ガスボンベ、13 バルブ、14 圧力計、16 分散相、18 内包微粒子、20 膜部材又はマイクロチャネル、30 乳化槽、32 連続相、40 滴、50 微粒子化槽、52 架橋剤、60 内包微粒子含有微粒子、70 溶解槽、72 溶媒、80 中空微粒子、82 中空孔、84 シェル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1μm以上10μm以下であって、中空孔を1つ以上有することを特徴とする中空微粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の中空微粒子において、
CV9%以下の単分散性を有することを特徴とする中空微粒子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の中空微粒子において、
有機高分子化合物からなることを特徴とする中空微粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の中空微粒子において、
前記有機高分子化合物は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を含むポリアミノ酸及びその塩、ポリエチレングリコール、アラビアゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化プロテイン、コラーゲン分解物及びその誘導体、アシル化タンパク、ポリグリセリン、アミノ酸ポリグリセリンエステル、糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の天然高分子化合物であることを特徴とする中空微粒子。
【請求項5】
微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子を分散させ分散相を形成する工程と、
予め定められた細孔径を有する膜部材又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルを介して前記分散相の滴を親油性の連続相に放出させ油中水エマルションを形成する工程と、
前記油中水エマルションに架橋剤を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子を形成する工程と、
内包微粒子を溶解可能な溶媒に前記内包微粒子含有微粒子を投入して少なくとも1つ以上の中空孔を有し且つ平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子を形成する工程と、
を有することを特徴とする中空微粒子の製造方法。
【請求項6】
微粒子形成用物質を含む水溶液に内包微粒子を分散させた分散相を貯留する分散相貯留槽と、
前記分散相を透過させるため予め定められた細孔径を有する膜部材又は予め定められたチャネル径を有するマイクロチャネルと、
前記膜部材又はマイクロチャネルを介して透過した分散相の滴を親油性の連続相に放出させ油中水エマルションを形成する乳化槽と、
前記油中水エマルションに架橋剤を添加し微粒子形成用物質を架橋させて内包微粒子含有微粒子を形成する微粒子化槽と、
前記内包微粒子含有微粒子中の内包微粒子を溶解可能な溶媒が貯留された溶解槽と、
を有し、少なくとも1つ以上の中空孔を有し平均粒径0.1μm以上10μm以下の中空微粒子を調製することを特徴とする中空微粒子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214219(P2010−214219A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60410(P2009−60410)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(503317164)
【出願人】(509074461)
【Fターム(参考)】