説明

中空角材の接合構造

【課題】 本発明の課題は、中空角材を屈曲・接合して得られる組立構造体を補強するために、コーナ部に補強材を取り付けるための傾斜接合構造を提供することにある。
【解決手段】 構造体2のコーナ部に補強角材3を接合する接合構造であって、補強角材3は、先端を斜めに切断し、開口部の上縁および下縁に位置決め用の係合片32,36を形成するとともに、開口部の左右傾斜縁に接合を案内する案内体34を形成し、構造体2は、取付面に補強角材3の係合片32,36が嵌合する係合穴26,27と、案内体が案内される案内溝25を形成し、補強角材3の案内体34を構造体2の案内溝25に挿入して取り付けていき、補強角材3の係合片32,36を係合穴26,27に嵌め込むことにより位置決め・仮止めされて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空角材を組み合わせて構成する組立構造のうち、一方の基材を他方の基材に接合する接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
中空角材の組立構造体として、本出願人は特許文献1を提案している。特許文献1では、中空角材の折り曲げ位置に切欠部を形成し、この切欠部で中空角材を折り曲げることで、切欠部に形成した断片同士をボルトで固定し、屈曲構造体を形成している。また、第1基材の端部に突起を形成し、第2基材の取付面に挿入孔を形成し、第1基材の突起を第2基材の挿入孔に挿入して位置決めするとともに、第1基材の端部に形成したナット部に第2基材側からボルトを挿入して固定し、接合構造体を形成している。
【0003】
こうして形成される屈曲構造体や接合構造体は、それ自体の組立強度はそれ程高くないため、使用する製品によっては何らかの補強が必要であった。この場合、コーナ部に火打梁のような補強体を取り付けるのが有効となるが、専用の部材や金具を用意することは部品点数の増加を招き、部品管理や製作上好ましくないため、同じ中空角材を利用して補強材を取り付ける構成が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−267458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、中空角材を屈曲・接合して得られる組立構造体を補強するために、コーナ部に補強材を取り付けるための接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するため、中空角材からなる屈曲構造体もしくは接合構造体のコーナ部に、中空角材からなる補強角材を取り付ける接合構造であって、補強角材の両端を構造体のコーナ部の角度に合わせて斜めに切断し、該切断面の上縁および下縁に係合部を形成するとともに、該切断面の左右傾斜縁に接合案内部を形成し、前記構造体の取付面に前記補強角材の係合部が嵌合する係合受部と、接合案内部が案内される傾斜した案内溝部を形成し、前記補強角材を構造体のコーナ部に対して斜め45°の位置から、補強角材の接合案内部を中空角材の案内溝部へ両端同時に挿入させていき、補強角材の係合部を構造体の係合受部に嵌め込むことにより接合するようにした。
【0007】
補強角材の係合部のうち、下縁側に位置する係合部を係合凸片とし、上縁側に位置する係合部を前記接合案内部と繋がった係合片とするとともに、前記構造体の係合受部のうち、係合凸片が嵌る側の係合受部を係合穴とし、係合片が嵌る側の係合受部を係合溝とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屈曲構造体や接合構造体のコーナ部に、中空角材からなる補強角材を取り付けることができるので、構造体を複雑に組み合わせることなく、強度を高めることができる。また、構造体と同じ部材を加工して補強角材を構成することが可能になり、別途専用の部品を用意する必要がないため、部品管理が容易であり、製作上も同じ加工機で部品を加工することができ、コスト削減に繋がる。
【0009】
更に、屈曲構造体や接合構造体として組み立てた後に補強角材を取り付けることができ、しかも補強角材が構造体に位置決めされて取り付けられるので、組み立て作業が容易に行える。また、補強角材を構造体に取り付けた時に仮止めされた状態になるので、ネジ締めや溶接といった最終固定作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の接合構造によって組立られた組立構造体を示す外観図である。
【図2】組立構造体1を洗車機のフレームに採用した例を示す説明図である。
【図3】屈曲構造の中空角材2を示す外観図である。
【図4】中空角材2の屈曲構造による組立状態を示す説明図である。
【図5】補強角材3の構成を示す外観図である。
【図6】中空角材2に補強角材3を取り付ける状態を示す説明図である。
【図7】取付部を拡大した説明図である。
【図8】接合構造の中空角材40,41を示す外観図である。
【図9】中空角材40,41の接合構造による組立状態を示す説明図である。
【図10】面接合構造の中空角材60,61を示す外観図である。
【図11】フランジ付きナット70を取り付けた状態を示す説明図である。
【図12】中空角材60,61の面接合構造による組立状態を示す説明図である。
【図13】中空角材2の切削状態を示す展開図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施態様について説明する。図1は本発明の接合構造によって組立られた構造体を示す外観図である。
組立構造体1は、中空角材2を屈曲・接合することによって組み立て、コーナ部に補強角材3を取り付けて構成されている。この組立構造体1の特徴は、1本の長尺な中空角材を複数箇所直角に折り曲げて枠状に形成した点と、折り曲げたコーナ部に補強用の角材を取り付けて補強した点にある。この構成により、加工や組み込みが容易でありながら高い強度が得られ、溶接をしなくとも頑強な構造体を構成することができる。よって、固定構造物(例えば、表示装置の架台)のフレームに採用できることはもちろんのこと、可動構造物(例えば、自動車を洗浄する洗車機)のフレームにも採用することができる。
【0012】
図2は組立構造体1を洗車機のフレームに採用した例を示している。図2に見られるように、このフレームは1本の長尺な中空角材を複数箇所直角に折り曲げ、先端部を同角材の表面に接合させた巻き込み構造体と、屈曲コーナ部に補強角材を取り付けた補強構造とを組み合わせて形成されている。こうしたフレーム構造を洗車機のフレームに用いる場合、巻き込み構造体同士を面接合して組み立てていくのであるが、部分的に巻き込み構造体の粗密、すなわち巻き込みピッチや組み込みピッチを変えることで補強が図られている。例えば、ブラシやノズルが装備される部分や走行車輪が装備される部分は、その他の部分に比べて密に配設している。
このような組立構造体1における屈曲構造及び補強角材3の構造(図2のA部)、接合構造(図2のB部)、面接合構造(図2のC部)について、以下に説明をする。
【0013】
まず、屈曲構造の構成について、図3・4を用いて説明する。
中空角材2は、4つの面2A〜2Dで囲まれる四角柱形状をなし、折り曲げ位置の面2B,2C,2Dに切欠部4を形成するとともに、この切欠部4で折り曲げた時に対面してコーナ部の内面を形成する面2Cにおいて補強角材3を取り付ける取付部5,5を形成している。切欠部4は、NCレーザー加工機で所定形状に切削した後、治具等で切削部分を切除することで形成され、中空角材2を面2Aで繋がった第1基材6と第2基材7に分断する。屈曲構造は、中空角材2をこの切欠部4で第1基材6と第2基材7を突き合わせるように略L字型に折り曲げて構成されるものである。尚、NCレーザー加工機による切削と切削部分の切除については後述詳細に説明する。
【0014】
切欠部4により、面2Aには、折り曲げ基準となる切込溝8,8’が形成され、面2B及び2Dには、切込溝8,8’から第1基材6の面2Cにかけて45°に切断された接合縁9・9’と切込溝8,8’から第2基材7の面2Cにかけて45°に切断された接合縁10・10’が形成され、面2Cには、第1基材6および第2基材7にそれぞれ断片11,12が形成される。切込溝8,8’は、第1基材6と第2基材7の境界位置における面2Aから面2Bにかけてのコーナ部及び面2Aから面2Dにかけてのコーナ部に設けられ、中空角材2の折曲基準線L1を仮想形成している。接合縁9・9’及び10・10’は、第1基材6と第2基材7を折り曲げたときに互いに当接し、屈曲構造の外形を形成する。
【0015】
断片11は、第1基材6の面2Cに凸設形成され、面2Cとの境界位置に切込溝13,13’を形成し、この切込溝13,13’によって仮想形成される折曲基準線L2に沿って第1基材6の内方に略直角に折り曲げられる。折曲基準線L2の中心位置には、略コ字状の切抜穴14が設けられており、断片11を折り曲げることで、切抜穴14に囲まれた部分が凸片15を構成するようになっている。断片12は、第2基材7の面2Cに凸設形成され、面2Cとの境界位置に凸片15が嵌合する長孔16が開口されている。
【0016】
17は取付補強プレートで、四隅に凸部を形成したH形状をなし、第1基材6の面2Cにおける断片11の基端部に形成した凹陥溝18,18’と、面2Aに開口した取付孔19,19との間に取り付けられる。この取付補強プレート18は、断片11を第1基材6の内方に折り曲げたときに接触し、断片11の折り曲げ状態を補強するものである。
【0017】
このような形状により、図4(a)に示すように、第1基材6に取付補強プレート17を取り付け、断片11を折曲基準線L2で第1基材6の内方に向けて直角に折り曲げた後、中空角材2を切欠部4の折曲基準線L1で第1基材6と第2基材7を突き合わせるように折り曲げていくと、断片11の凸片15が断片12の長孔16に位置決めされながら嵌合していき、第1基材6の接合縁9,10と第2基材7の接合縁9’,10’が当接して中空角材2が直角に折り曲げられる。尚、接合縁の切断角度を変えることにより、直角以外の屈曲構造を構成することも可能である。
【0018】
こうして屈曲構造が形成されると、図4(b)に示すように、第1基材6の断片11と第2基材7の断片12が対面した状態で当接する。断片11,断片12及び取付補強プレート17には、当接した状態で互いに連通する位置にねじ穴20,21,22を開口しており、このねじ穴20,21,22同士を1本のボルト23によって一体的に接合することで、第1基材6と第2基材7の折り曲げ状態が保持されることになる。
【0019】
ボルト23を取り付けるための通穴24は、第2基材7の面2Aにおけるねじ穴20,21,22の軸線上に開口しており、この通穴24からねじ止め作業が図られる。これにより屈曲構造は、断片11,断片12及び取付補強プレート17を一体的にねじ止めすることで、第1基材6と第2基材7の折り曲げ状態が堅牢に強化され、スプリングバックを起こさず屈曲構造を構成することができる。尚、ここでは断片に対して1つのねじ穴を開口した例を示しているが、ねじ穴を複数設けて複数のねじで固定できるようにしても良いことはいうまでもない。
【0020】
次に、取付部5は、中空角材2の面2Cから面2B及び2Dの上部にかけて所定幅をもって45°に切り込んだ案内溝25が形成され、面2Cにおいてこの案内溝25を挟んで係合穴26,27が形成されている。案内溝25は、中空角材2を直角に折り曲げた状態で、補強角材3の取付方向に合わせて開口されており、折り曲げ後の中空角材2の内面コーナ部に対して45°の向きから補強角材3を挿入係合できるようになっている。係合穴26,27は、補強角材3を取付位置に仮止めするためのものであり、案内溝25を挟んだ前後に開口され、後側(切欠部4から離れる側)の係合穴27の近傍にはねじ穴28,28を開口している。
【0021】
尚、図2(b)に示すように、前側(切欠部4に近い側)の係合穴26を、案内溝25まで繋がった係合溝26’にしても良い。この場合、案内溝25への合流部を面取りもしくは丸め加工しておくのが望ましい。
【0022】
図5は補強角材3の構成を示す外観図である。
補強角材3は、中空角材2と同じ素材で、4つの面3A〜面3Dで囲まれる四角柱形状をなし、両端に中空角材2への取付部30を形成している。取付部30は、面3Aの端縁に断片31を形成し、面3Cの端縁に係合凸片32を形成し、面3B及び面3Dの端縁に斜め45°の傾斜縁33,33と、中空角材2の案内溝25に取り付けるための案内体34を形成するように、NCレーザー加工機で切削加工される。
【0023】
断片31は、面3Aの外縁部に凸設形成され、面3Aとの境界位置に折曲基準線L3を仮想形成するとともに、折曲基準線L3の中心位置に、略コ字状の切抜穴35を穿設している。この断片31を折曲基準線L3に沿って面3B及び面3Dの傾斜縁33,33の傾斜に合わせて面3Aの外方に折り曲げると、切抜穴35に囲まれた部分が係合凸片36となり、この係合凸片36を除く部分が中空角材2への取付片37となる。この取付片37には、中空角材2に取り付けた際に、中空角材2の取付部5のねじ穴28,28と対向する位置にねじ孔38,38を開口している。尚、図5においてはこの断片31を既に折り曲げた状態を図示している。
【0024】
案内体34は、傾斜縁33,33の中程から垂直に延出し、所定幅をもって面3Bと面3Dの間にアーチ状に架設されるもので、面3B・面3C・面3Dをコ字状に切削することによって切り出し形成されるものである。
【0025】
尚、図5(b)に示すように、面3Cの係合凸片32を、案内体34まで繋がった係合片32’にしても良い。この場合、案内体34への接続部を面取りもしくは丸め加工しておくのが望ましい。
【0026】
このように構成する中空角材2と補強角材3を接合する手順について説明する。
図6は中空角材2に補強角材3を取り付ける状態を示す説明図、図7は取付部を拡大した説明図である。
直角に折り曲げた中空角材2の内側コーナ部に対して、補強角材3を斜め45°の位置に合わせ、補強角材3の案内体34,34を中空角材2の案内溝25,25へ左右同時に挿入させていく。つまり、補強角材3の係合凸片32,32が中空角材2の係合穴26,26に、補強角材3の係合凸片36,36が中空角材2の係合穴27,27に、それぞれ嵌合していく。このとき、図7に示すように、係合凸片32と係合片36が係合穴26と係合穴27の開口部後縁から挿入され(図7a)、補強角材3の案内体34が中空角材2の案内溝25に完全に挿入されると(図7b)、係合凸片32と係合片36が係合穴26と係合穴27の開口部前縁に達し、補強角材3の取付片37が中空角材2の取付面に合致する。このように係合状態においては、案内溝25に案内体34が嵌合することにより前後方向の動きが規制され、係合穴26,27に係合片32,36が嵌合することにより左右方向の動きが規制される。最後に、中空角材2のねじ孔28と取付片37のねじ穴38同士をボルト39によって接合することで、中空角材2と補強角材3の接合状態が保持される。
【0027】
尚、図3(b)に示す中空角材2の係合溝22’及び図4(b)に示す補強角材3の係合片32’の形状によれば、係合片32’を係合溝27’に挿入する作業が容易に行え、位置合わせや寸法管理の精度を許容することができる。
【0028】
また、このような構成は、上記した構成に限定されるものではなく、様々に応用される。例えば、単に中空角材に傾斜板を取り付ける場合や、T型接続体のコーナ部に取り付ける場合であっても採用することができる。
【0029】
続いて、接合構造の構成について、図8・9を用いて説明する。尚、説明の都合上、中空角材40,41としているが、巻き込み構造体である場合は、1つの中空角材を前記屈曲構造で90°ずつ内側に折り曲げた後、その先端を一面に接合させるものとなる。
中空角材40は、対面する面40A・40Cの先端に断片42,42を形成し、この断片42,42の基端部分に面40A・40Cへ凹陥させた凹陥溝43を形成するとともに、面40B・40Dの先端に係合突起44,44を形成している。これら断片42,42、凹陥溝43、係合突起44,44は、中空角材40の先端をNCレーザー加工機で所定形状に切削した後、その切削部分を切除することで形成される。
【0030】
断片42,42は、それぞれ面40A・40Cとの境界位置に切込溝45を形成し、この切込溝45によって与えられる折曲基準線L3で内方に折り畳み可能になっており、略中心部にはねじ穴46を開口している。凹陥溝43は、断片42,42の基端部分において切込溝45と一体的に切削され、四隅に凸部を形成したH形状の取付補強プレート48が取り付けられる。係合突起44,44は、面40B・40Dの先端に突出形成され、両者の大きさを異ならせて取付時の方向性を与えている。
【0031】
取付補強プレート48は、2つのねじ穴49,49を開口しており、中空角材40の凹陥溝43に取り付けた状態で、断片42,42を内方に折り曲げることで、断片42のねじ穴46と取付補強プレート48のねじ穴49が合致する。また、取付補強プレート48は、2つのねじ穴49,49の間にスリット50が設けられている。このスリット50により、取付補強プレート48は変形しやすくなり、ねじ止めした際に断片42との密着性が高まり、接合状態が強固になる。
【0032】
中空角材41は、中空角材40が接合される面41Aに、中空角材40の係合突起43,43が挿入される係合穴51,51と、中空角材40を接合状態に固定するねじ穴52,52を開口し、この面41Aと対面する面41Cに、ねじ穴52,52にボルト53,53を取り付けるための通孔54,54を開口している。係合穴51,51は、中空角材40の係合突起44,44の形状に合わせて両者の大きさを異ならせている。
【0033】
このように構成する中空角材40と中空角材41で接合構造体を形成する手順について説明する。
まず、取付補強プレート48を中空角材40の凹陥溝43に取り付け、断片42,42を内方に折り曲げる。これにより、断片42のねじ穴46と取付補強プレート48のねじ穴49が合致する。その後、中空角材41の係合穴51,51に中空角材40の係止突起44,44を大きさを合わせて挿入すると中空角材40の先端が中空角材41の面41Aに仮止めされる。この状態では、中空角材41のねじ穴52,52と中空角材40のねじ穴46,46が合致するので、通孔54,54よりボルト53,53を挿入して固定するのである。中空角材40のねじ穴46,46は、取付補強プレート48のねじ穴49と合致しているため、ボルト53,53の締着により、中空角材40と中空角材41は強固に接合した接合構造体を形成することができる。このとき、ボルト53,53の締め付けにより、取付補強プレート48がスリット50で変形し、断片42との密着性が高まる。
【0034】
次に、中空角材同士を面接合する場合について、図10〜12を用いて説明する。
中空角材60は、中空角材61との接触面となる面60Aにボルト貫通孔62が開口されている。面60Aと連接する面60Bもしくは面60Dのいずれか一方(ここでは面60B)には、ボルト貫通孔62が開口された面60Aの内面60A’に向かって折り曲げ加工される断片63が切り抜き成型されている。この断片63は、面60Bにおける面60Aとの稜縁部64を除いた三方をNCレーザ加工機によって略コ字状に切り込んだ切込溝65によって矩形状に成型される。
【0035】
断片63には、フランジ付きナットを保持するためのナット取付溝66が切り抜き成型されている。ナット取付溝66は、断片63における前記稜縁部64側にフランジ付きナットのフランジ部が挿通可能なフランジ挿通部66aを形成し、断片63の自由端部67側にフランジ付きナットのナット部が挿通可能なナット保持部66bを形成している。
【0036】
面60Aには、ボルト貫通孔62の他に、断片63のナット取付溝66に取り付けたフランジ付きナットを抜け止めする抜止片68が形成されている。抜止片68は、三方をNCレーザ加工機によって略コ字状に切り込んだ切込溝69によって矩形状に成型される。
【0037】
図11は断片63を折り曲げてフランジ付きナットを取り付けた状態を示す説明図、図12は中空角材61に面接合する状態を示す説明図である。
まず、ナット取付溝66を打ち抜き、稜縁部64を折り曲げ基準として、断片63をボルト貫通孔62が開口された面Aの内面A’に向けて略90°折り曲げる。このとき、面Aの内面A’と断片63との間にフランジ付きナット70のフランジ部70aが遊嵌されるだけの隙間Sを生じるように折り曲げる。
【0038】
次に、フランジ付きナット70のフランジ部70aをナット取付溝66のフランジ挿通部66aから隙間Sに挿通していき、ナット部70bをナット取付溝66のナット挿通部66bに嵌合する。その後、面60Aに形成した抜止片68を内側に押し込むことで、変位した抜止片68がナット取付溝66に取り付けたフランジ付きナット70のフランジ部70aに係合する。これにより、フランジ付きナット8が位置決め・回り止め・抜け止めされた状態でボルト貫通孔62と対向する位置に取り付けられることになる。すなわち、フランジ付きナット70のナット部70bがナット挿通部66bに嵌合することで、ナット70のねじ穴70cがボルト貫通孔62と連通するように位置決めされるとともにボルトをねじ込むときの回り止めとなり、しかもフランジ部8aが抜止片68に係止されて抜け止めがなされることになる。
【0039】
さて、中空基材60にフランジ付きナット70を取り付けた状態で、中空角材61とボルト71によって固定する。中空角材61は、中空角材60との接触面となる面61Aにボルト孔72を開口し、面61Aと対面する面61Cにボルト通孔73を開口している。この中空角材61のボルト孔72と中空角材60のボルト貫通孔62を合わせ、中空角材61の面61Cに開口したボルト通孔73からボルト71を挿入してねじ込んでいく。このとき、フランジ付きナット70は、ナット取付溝66及び抜止片68によって位置決め・回り止め及び抜け止めされているので、ボルト71をねじ込んでいくだけできわめて簡単に接合作業を行うことが可能になる。
【0040】
続いて、各基材のNCレーザー加工機による切削と切削部分の切除について説明する。図13は中空角材2の展開図を示しており、ここでは中空角材2の切欠部4を切削する場合を例に説明する。
切欠部4は、面2Aから面2Cにかけて、切込溝8,接合縁9,切込溝13,凹陥溝18,断片11,断片12,接合縁10の輪郭を繋ぐ切断線S1(点線)に沿って切断される切出片B1(薄塗り部)と、切込溝8’,接合縁9’,切込溝13’,凹陥溝18,断片11,断片12,接合縁10’の輪郭を繋ぐ切断線S2(一点鎖線)に沿って切断される切出片B2(厚塗り部)とを切り出すことで加工される。
【0041】
接合縁の切断線には、切断中に切出片B1,B2が浮き上がったり、基材2から切除されてしまったりするのを防止する浮上防止部Fが形成されている。この浮上防止部Fは、製品形状に影響のない位置に、製品形状に影響を与えない形状で形成され、ここでは接合縁9・9’及び10・10’の一部を半円状に凹陥させて形成されている。この浮上防止部Fにより、切断段階では切出片B1,B2が基材2に残ったままとなり、切断が終了した後に工具等で軽く押し込めば簡単に係合状態が外れて切出片B1,B2を切除することができる。
【0042】
続いて、このように構成する切出片の切断方法について説明する。
まず、切出片B1における断片11と断片12とを繋ぐ仮想接続線Lの近傍に加工ヘッド(図示しない)を合わせ、その位置に切断開始点となるピアッシング孔Pを穿設する。次に、ピアッシング孔Pから仮想接続線Lに向けて直線的に切断ポイントを移動させた後、切断線S1に沿って切断ポイントを移動させていく。ここでは、ピアッシング孔83−仮想接続線82−断片11−切込溝13−凹陥溝18−接合縁9−浮上防止部F−接合縁9−切込溝8−接合縁10−浮上防止部F−接合縁10−断片12−仮想接続線Lの順に移動させていく。切断の終点となる仮想接続線Lには、僅かに切断されないミクロジョイント部Mを形成し、このミクロジョイント部Mを残して切断は終了となる。
【0043】
こうした切断加工は、切断が進行するにつれて切出片B1が切り出される割合が高くなり、その分基材2から浮き上がる危険性が高まってくる。ここでは、切断開始点から離れた接合縁9・9’及び10・10’に浮上防止部Fを設けたことで、切出片B1が浮上する危険性はほとんど解消される。また、切断加工が終了した後は、ミクロジョイント部Mと浮上防止部Fの作用によって、切出片B1が基材2に残留する。これにより、加工後の基材2を運搬する際に、切断面で怪我をしたり、基材2を変形させたりすることがなくなる。更に、切出片B1の最終的な切除もきわめて容易に行える。すなわち、浮上防止部Fでは、凹凸形状によって係合状態が保持されるため、切出片B1の切断加工が終了した時点では完全に切断されており、切出片B1の切除は、1箇所のミクロジョイント部Mを破断するだけでよい。そして、この分離作業は、浮上防止部Fを基材2の内側に押し込んで係合状態を開放し、開放した端部を前後に折り曲げることで簡単に行えるのである。また、ミクロジョイント部Fを切出片B1上に設けることで、破断部分のバリ取り作業は不要となる。
【符号の説明】
【0044】
1 組立構造体
2 中空角材
3 補強角材
4 切欠部
5 取付部
6 第1基材
7 第2基材
11 断片
12 断片
25 案内溝
26 係合穴
26’ 係合溝
27 係合穴
30 取付部
31 断片
32 係合凸片
32’ 係合片
34 案内体
36 係合片
37 取付片
40 中空角材
41 中空角材
42 断片
48 ナット保持プレート
60 中空角材
61 中空角材
63 断片
68 抜止片
70 フランジ付きナット
71 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空角材からなる屈曲構造体もしくは接合構造体のコーナ部に、中空角材からなる補強角材を取り付ける接合構造であって、
補強角材の両端を構造体のコーナ部の角度に合わせて斜めに切断し、該切断面の上縁および下縁に係合部を形成するとともに、該切断面の左右傾斜縁に接合案内部を形成し、前記構造体の取付面に前記補強角材の係合部が嵌合する係合受部と、接合案内部が案内される傾斜した案内溝部を形成し、
前記補強角材を構造体のコーナ部に対して斜め45°の位置から、補強角材の接合案内部を中空角材の案内溝部へ両端同時に挿入させていき、補強角材の係合部を構造体の係合受部に嵌め込むことにより接合するようにしたことを特徴とする中空角材の接合構造。
【請求項2】
前記補強角材の係合部のうち、下縁側に位置する係合部を係合凸片とし、上縁側に位置する係合部を前記接合案内部と繋がった係合片とするとともに、前記構造体の係合受部のうち、係合凸片が嵌る側の係合受部を係合穴とし、係合片が嵌る側の係合受部を係合溝としたことを特徴とする上記請求項1記載の中空角材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−149547(P2011−149547A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40277(P2010−40277)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】