説明

中立的な位置への調節機能を備えた人工足関節

【課題】関節の十分な可動性を実現しつつ、足関節の良好な安定性を保証する人工足関節を提案する。
【解決手段】距骨インプラント2と、脛骨インプラント4と、脛骨インプラント4と中間インプラント6と、を含む人工足関節1であって、人工足関節1が複数の機能的形状を取ることを許容するために、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対的な位置が調節可能となるように、そして、中間インプラント6の前記脛骨インプラント4に対する相対的な配置が、前記複数の機能的形状のうちの特定の機能的形状と一致するように設計された実装型の変形可能な結合手段10をさらに備えた人工足関節1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の整形外科的な治療が可能となるように設計された人工足関節の技術分野に関し、より詳細には、足関節の構造を復元するためのインプラントに関する。
【0002】
本発明は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、及び上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラントに関し、上記の中間インプラントは、足関節の動作を許容するために、接触面において上記の距骨インプラントに応じて動作できるように設けられている。
【0003】
また、本発明は、上記の人工足関節の製造方法に関する。
【0004】
また、本発明は、人工足関節の挿入のために設計された外科手術用キットに関する。
そして、本発明は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、及び上記の脛骨インプラント及び距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラントを含む人工関節を挿入するための外科的方法に関し、上記の中間インプラントは、足関節の動作を許容するために、接触面において上記の距骨インプラントに対応して動作できるように設けられている。
【背景技術】
【0005】
衝撃障害や疾病等によって全体的又は部分的に損傷してしまった足首の関節の運動の自由度をある程度まで回復させるために、人工関節が利用可能であることが知られている。
【0006】
特に、3つのインプラント(つまり、距骨(くるぶしの骨)の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、及び上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラント)を含む人工足関節が挿入されることが知られている。
【0007】
通常、中間インプラントは、他の2つのインプラントの間で運動するための高い運動の自由度を備えている。より詳細には、中間インプラントは、通常、脛骨インプラントへの当接面において、前後方向の平行移動、内外側方向の平行移動、及び上記の前記当接面と略垂直をなす脛骨の骨軸回りの回転方向の運動を許容する。
【0008】
通常、中間インプラントと距骨インプラントの接触面は、脚が足底屈及び背屈の動作を行うことができるように、概して円筒状、球状、又は円錐台形状の摩擦を有する曲面で構成されている。
【0009】
このような人工関節は、運動の自由度という観点では有利な効果をもたらすが、治療中の患者の状態によっては不適当である場合がある。
【0010】
既に患者が足首の可動性を制限するための整形外科治療を受けている場合には、関節は、筋肉の萎縮及び/又は腱の弛緩によって弱くなっているため、通常、不安定な状態にある。
【0011】
そのため、一例として、関節の可動性を回復させるために用いられる関節形成術(関節置換術)の実施が検討されるが、関節が以前に関節固定術(関節の癒着)によって固定されている場合、旧型であり可動構造が上述の3つのインプラントからなるものとは異なる人工関節を交換することが望まれる場合において、それまでに損なわれていた多自由度の運動の突然の回復は、患者の平衡感覚が障害を起こし、患者を転倒、負傷、及び当の関節に位置する組織の損傷という危険にさらす可能性が高い。
【0012】
従って、従来技術の3つのインプラントからなる人工関節の利用に伴い、患者は非常に長期間に渡るリハビリテーションを行わなければならない。
【0013】
加えて、いくつかの国では法規制により従来技術の3つのインプラントからなる人工足関節の利用を禁止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、従って、本発明の目的は、上述した不利益を被ることのない新規な人工足関節であって、関節の十分な可動性を実現しつつ、足関節の良好な安定性を保証する人工足関節を提案することである。
【0015】
本発明の他の目的は、人間工学に基づいており、患者が快適に利用できる新規な人工足関節を提案することである。
【0016】
本発明の他の目的は、消耗が最小限に抑えられ、優れた耐用性を実現する新規な人工関節を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、極めてシンプルであってロバスト性の高い設計の新規な人工足関節を提案することである。
【0018】
本発明の他の目的は、取り付け、特に、植設が極めて容易である新規な人工足関節を提案することである。
【0019】
本発明の他の目的は、人工関節の制作方法であって、製作した人工関節を人間工学的に好ましいものとする新規な製作方法を提案することである。
【0020】
本発明の他の目的は、本発明の人工足関節の取り付けをよりシンプルかつ確実にするための新規な検査用人工足関節を提案することである。
【0021】
本発明の他の目的は、シンプルであり安価な設計の新規なテスト用人工足関節を提案することである。
【0022】
本発明の他の目的は、人工足関節を所定の位置に取り付けるために設計された外科手術用キットであって、十分な関節の可動性を実現しつつ、足首の関節の良好な安定性を保証するものを提案することであり、そのキットは上記の人工足関節が、簡単に、正確に、そして確実に取り付けられるようにする。
【0023】
本発明の他の目的は、人工足関節を所定の位置に取り付けるために設計された外科手術用キットであって、設計が極めてシンプルであり、使用が簡単なものを提案することである。
【0024】
本発明の他の目的は、人工足関節を取り付けるための新規な外科的方法であって、関節の良好な安定性及び十分な可動性を実現可能である方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、人工足関節を取り付けるための新規な外科的方法であって、人工関節の耐用性を最大化し、それにより、患者が人工足関節をより快適に利用できるようにする方法を提供することである。
【0026】
そして、本発明の他の目的は、人工足関節を取り付けるための新規な外科的方法であって、極めて簡単に、確実に、そして、再現性良く実施されることができる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の上記目的は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、及び上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置される中間インプラントを含む人工足関節によって達成される。ここで、上記の中間インプラントは、足関節の動作を許容するために、接触面において上記の距骨インプラントに応じて動作できるように設けられており、上記の人工足関節は、第1には、複数の機能構造をなすことができるように、上記の中間インプラントの位置が脛骨インプラントに応じて調節可能となるように設計されており、第2には、中間インプラントの脛骨インプラントに対する配置が、上記のような複数の機能構造のうちの特定の機能構造をなすように選択されるように設計されることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の目的は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、及び上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラントを含む人工足関節を製作するための方法によって達成される。上記の中間インプラントは、足首の運動を許容するために、接触面において上記の距骨インプラントに対応して可動となるように設計されており、上記の方法は、中間インプラントが脛骨インプラントに対応して配置される配置ステップ(E1)を含むことを特徴とする。そして、上記の配置ステップ(E1)では、人工足関節に備えられた変形可能な結合手段によって、中間インプラントが、選択ステップ(E2)において複数の機能的形状の中から選択される特定の機能的形状を呈するように配置される。
【0029】
また、本発明の目的は、本発明の最終的な人工足関節が取り付けられる位置に一時的に植設されるように設計されることを特徴とするテスト用の人工足関節によって達成される。ここで、上記の最終的な人工足関節は、複数の形状から選択される特定の形状を取ることができ、上記のテスト用の人工足関節は、テスト用の距骨インプラント、テスト用の脛骨インプラント、テスト用の中間インプラント、及び、形状と寸法が距骨インプラントと脛骨インプラントと中間インプラントと最終的な人工足関節の変形可能な結合手段とそれぞれ実質的に一致するテスト用の変形可能な結合手段を含むことを特徴としており、それにより、上記のテスト用の人工足関節は、最終的な人工足関節が取りうる機能的形状に一致する機能的形状を患者の体内で呈することができる。
【0030】
また、本発明の目的は、人工足関節を所定の位置に取り付けるために設計された外科手術用キットであって、ともに本発明による人工足関節である「最終的な人工足関節」と呼ばれる人工足関節、及びテスト用の人工足関節を含む外科手術用キットによって達成される。
【0031】
また、本発明の目的は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント、脛骨の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント、上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラントを含む「最終的な人工足関節」を患者の体内に固定するための外科手術用キットにより達成される。ここで、上記の中間インプラントは、足首の運動を許容するために、接触面において上記の距骨インプラントに対応して可動となるように設けられている。また、上記の外科的方法は、テスト用の距骨インプラント、テスト用の脛骨インプラント、及びテスト用の中間インプラントを含むテスト用の人工足関節が、最終的な人工足関節が取り付けられる患者の体内の位置に植設されるテスト用人工足関節の植設ステップ(a)、上記のテスト用の人工足関節の特定の形状が複数の機能的形状の中から患者の体内で決定される決定ステップ(b)、及び変形可能な結合手段によって中間インプラントを脛骨インプラントに対して配置することで、決定ステップ(b)において選ばれた特定の形状が最終的な人工足関節において再現される再現ステップ(c)を含む。
【0032】
そして、本発明の目的は、「最終的な人工足関節」を患者の体内取り付けるための方法であって、テスト用の人工足関節を取り付けるための取り付けステップ(K)、すなわち、最終的な人工足関節の形状を実質的に再現するテスト用の人工足関節が、患者の体内における最終的な人工足関節が取り付けられる位置に植設されるステップ、患者の体内において、上記のテスト用の人工足関節が呈する特定の形状が複数の機能的形状の中から決定される決定ステップ(L)、及び決定ステップ(L)において選ばれた特定の機能的形状が、上記の最終的な人工足関節に備えられた調節手段によって、最終的な人工足関節において再現される再現ステップ(M)を含むことを特徴とする方法によって達成される。
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の範囲を限定しない実施例として与えられる以下の詳細な説明及び添付図面を解釈及び検討することで、さらに詳細が明らかになる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、構造の単純化及び実施の容易性及び信頼性を実現しつつ、個々の患者が個別の整形外科的治療を受けることを可能にする人工足関節を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の人工足関節の変形実施形態の一部を示す斜視図である。
【0037】
図2は、本発明の人工足関節の斜視図であって、図1に示される部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0038】
図3は、図2に示される人工足関節が足首の関節に植設された状態を示す斜視図である。
【0039】
図4は、本発明の外科手術用キットの第1部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0040】
図5は、本発明の外科手術用キットの第2部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0041】
図6は、本発明の人工足関節の脛骨インプラント及び結合手段の変形実施形態を示す斜視図である。
【0042】
図7は、本発明の人工足関節の脛骨インプラント及び結合手段の他の変形実施形態を示す斜視図である。
【0043】
本発明の人工足関節1は、特に疾病又は衝撃障害の患者の足首の関節の可動性を、少なくとも部分的に回復させるように設計されている。
【0044】
本発明の人工足関節は、以前に植設された人工足関節を交換するために用いられることもできる。
【0045】
本発明の人工足関節1は、距骨(くるぶしの骨)3の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント2、及び脛骨3の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント4を含む。
【0046】
本発明の人工足関節は、さらに、脛骨インプラント4と距骨インプラント2の間に配置されるように設計された中間インプラント6を含む。
【0047】
上記の中間インプラント6は、患者の足首の運動を許容するために、接触面(7)において、前記脛骨インプラント(4)に対して相対運動可能に取り付けられるように設計されている。上記の中間インプラント6は、特に、ポリエチレン製でありうる。
【0048】
より正確には、中間インプラント6は接触面6Aを有しており、接触面6Aはそれと相補的な形状をなす距骨インプラント2の表面2Aに当接するように設計されることが好ましい。これにより、中間インプラント6は、摩擦を起こしながら距骨インプラント2に対してスライド運動することができる。
【0049】
ここで、足が脚に対して足底屈及び背屈運動を行うことを許容するために、相補的な接触面2A,6Aは、曲がった形状、例えば、実質的に球状、円筒状、又は円錐台状をなすような曲がった形状を有していることが最も好ましい。
【0050】
本発明の重要な特徴として、人工足関節1は、中間インプラント6が複数の形状から選択される特定の形状をなすように脛骨インプラント4に対して配置されることが可能となるように設計された変形可能な結合手段10を備えている。
【0051】
つまり、結合手段10は、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対的配置として、複数の選択肢のうち個々の症例に最も適当であると考えられるものが選択可能となるように、人工足関節1に対して作用することができる。
【0052】
このように、結合手段10は実装型(on−board)であり、第1に、人工足関節1が複数の機能的形状を取ることができるように、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対位置が調節されることを許容し、第2に、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対的配置として、上記の複数の機能的形状のうちの特定の機能的形状が選択されることを可能とするように設計される。
【0053】
「機能的形状」という用語は、患者の関節にとって望まれる1又は複数の自由度の適切な回復を可能にするために、人工足関節の最終的な取り付け後の通常動作時に実現される静的な三次元的配列(人工足関節の各種構成要素の位置及び方向)と動的な配置(自由度)の両方を含むものである。
【0054】
本発明において「実装型(“on−board”)」という用語は、結合手段10は、人工足関節の内部に完全に組み込まれており、当該手段が再度変形されることを可能にする配置の可変性を本来備えており、その結果、人工足関節の機能的形状の変更を可能にすることを示すために用いられる。
【0055】
これによる利点として、それ自体が構造上変形可能である単一の手段による自立的な調節を行うことによって、様々な形状及び寸法を含む交換可能な使い捨てインプラントのセットであって、満足な形状が得られるまでインプラントに植設を続けなければならないような設計のものを使用する場合に起こり得る時間と材料の浪費を回避することができるようになる。
【0056】
本発明において変形可能である結合手段10は、人工足関節1の安定性を向上させることが可能であり、例えば、中間インプラント6及び脛骨インプラント4の可動性を制限するなど、中間インプラント6及び脛骨インプラント4の可動性を制御することによって足首の関節の安定性を向上させることが可能である。
【0057】
本発明において、結合手段10は、それが中間インプラント6と脛骨インプラント4の間で形成する可動式の結合部によって許容される自由度の運動の振幅のみを制限するように設計される場合がある。
【0058】
例えば、中間インプラント6が従来の3インプラント型人工足関節のように脛骨インプラント4が終端となる平面内にある場合、本発明の結合手段10は、制御不能な動作によって振幅が大きくなりすぎて接続部が完全に外れてしまうことのないように、接触面における平行移動のストロークを限定する当接面又はガイド部材を含み得る。
【0059】
より詳細には、結合手段10は、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対的な基準点を選択すること、及び中間インプラント6が当該基準点付近にあるときに可能となる脛骨インプラント4に対する運動の自由度の数及び/又は運動の振幅を制限することを可能にする。つまり、結合手段10は、人工足関節が可動状態にある複数の位置から選択された所定の位置を中心に、中間インプラント6の脱落を防止することができる。
【0060】
さらに、結合手段10は、中間インプラント6及び脛骨インプラント4の間で相互に接合するタイプの移動結合部を形成するように設計されることが好ましく、それによって、上記インプラントの全ての自由度を取り除くことができる。この目的のため、上記の変形可能な結合手段10は、上記の中間インプラント6を上記の脛骨インプラント4に係合させるため係合手段を含んでいることが好ましい。
【0061】
このように、図1及び2に示される好ましい実施形態において、結合手段10は、中間インプラント10を脛骨インプラント4に固定するように設計された固定手段となる。
【0062】
つまり、好ましくは、結合手段10は、それ自体を用いて行われる予備的な調節の後に選択される基準位置において、中間インプラント6が脛骨インプラント4に対して運動することを阻止することができる。
【0063】
本発明の結合手段10が中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対運動を抑制又は阻止するため、人工足関節が患者による歩行等の運動に用いられる場合、上記の各インプラントには機械的応力が発生する。
【0064】
このようなストレスは、人工足関節1を構成する上記インプラント2,4,6の早期の消耗を引き起こし、また、上記インプラント2,4,6の変形や破損すら発生させる可能性がある。
【0065】
そのため、特定の形状は、人工足関節が植設される患者の関節に固有の形状に応じて選択されることが好ましい。つまり、本発明の人工足関節1は、患者の具体的な骨格に応じて調節可能であるという利点を有する。
【0066】
これに関連して、本発明の結合手段10は、植設時に人工足関節の複数の機能的形状を選択可能にするような構造に設計されており、その個々の機能的形状が足関節の脚に対する可動性の回復に役立つ点に注目すべきである。このように人工足関節1がその植設時に取ることができる複数の機能的形状のうち、患者の関節を忠実に再現したものに最も近い機能的形状が、その患者にとって最適な動作モードを提供することになる。他方、患者の骨格にそれほど近くない他の機能的形状は、患者の関節を抑圧する可能性が高いため、比較的程度の低い動作モードを提供するにすぎず、患者にとっての快適性及び人工足関節の損耗という観点での性能は最適なモードに及ばない。
【0067】
そのため、脛骨インプラント4に対する中間インプラント6の特定の形状は、足首の通常の動作によって中間インプラント6及び脛骨インプラント4に加わる応力が全体的に見て最小限に抑えられるように選択されることが最も好ましい。このような形状を、以後「中立的形状」と称される。
【0068】
より正確には、健常な人間の足首の関節は、背屈運動及び足底屈運動に加えて特に以下のような複数の運動を脛骨5が距骨3に対して行うことを許容する。
【0069】
・足は静止状態にあるものの脚が足に対して前方又は後方に運動しようとするときの軸線(XX´)に実質的に沿った前後方向の運動。
【0070】
・足は静止状態にあるものの脚が水平方向に沿って内側に運動しようとし反対の脚が外側に移動しようとするときの軸線(YY´)に沿った内外側方向の運動。
【0071】
・脚が静止状態にある足に対してヨー角をなして旋回しようとするときの骨軸(ZZ´)回りの回転運動脛骨のあしが据え付けのままである足と関連して揺れ角度でピボットする傾向があるときに延髄の軸線(ZZ´)についての回転の運動。
【0072】
一般に、上記3つの運動は振幅が小さい。
【0073】
図3に示すように、患者が立った姿勢で直立するとともに、足が平坦で水平な面上にある場合、軸線(XX´)は、実質的に水平で患者の矢状面と平行であり(すなわち、軸線(XX´)が、患者が向いている方向に延び、軸線(YY´)は、実質的に水平で、かつ患者の一側へ延長して軸線(XX´)と実質的に直交し、さらに軸線(ZZ´)は、実質的に鉛直に延長して、軸線(XX´)と軸線(YY´)により定義される平面の法線を形成する。
【0074】
いずれの患者も特有の生体構造として基準点Pを有しており、この基準点Pに対して、前後方向の平行移動、内外側方向の平行移動、及び脛骨5の中心軸線(ZZ´)回りの回転運動が行われることが知られている。幾何学的に、基準点Pは、実質的に軸線(XX´)、軸線(YY´)及び軸線(ZZ´)の仮想上の交点に相当する。
【0075】
さらに、人工足関節人工足関節1が患者に植設されるときに、前記人工足関節は、1つ以上の関節の自由度を少なくとも部分的に回復することを可能とする1つ以上の運動軸線を定める。
【0076】
よって、本発明における中立的な形状とは、中間インプラント6の脛骨インプラント4に対する相対位置が、中間インプラント6が、前後方向、内外側方向、及び脛骨の骨軸回りの回転方向に沿った脛骨5の距骨2に対する相対運動の基準点Pに実質的に一致させられ、さらに、脛骨インプラント4及び/又は中間インプラントの方向が、人工足関節1の動作の軸が患者の足首の軸と等しくなるような方向にされるような所定の位置になった状態に対応する形状のことである。
【0077】
一例として、中間インプラント6及び脛骨インプラント4が互いに面で当接するように両者間の接触領域8が配置される場合、接触領域8は、軸線(ZZ´)と実質的に直交するとともに移動軸線(XX´)及び(YY´)のすぐ近傍に位置し、移動軸線(XX´)及び(YY´)により形成される平面上に配置されることが好ましい。
【0078】
都合上、以下の説明における「中立的な形状」との表現は、人工足関節1全体、結合手段10、又は、脛骨インプラント4に対する中間インプラント6の配置が中立的な形状に相当する際に見られる状況において、人工足関節1の他のいかなる構成要素にも適用されるものとする。
【0079】
本発明の変形可能な結合手段10は、中間インプラント6を中立的な形状をなすように配置することが可能であるため、前記脛骨インプラント4に対する前記中間インプラント6の余分な運動の振幅を最小化することが可能となり、及び/又は、インプラント4,6が互いに固定される際にこれらの要素に及ぼされる応力を制限することが可能となる。
【0080】
加えて、上記の結合手段10は調整可能であるため、それぞれの患者に固有の関節形状に合うように、有効に人工足関節1を適合させることが可能となる。
【0081】
このように、既定の単一構造を有する脛骨インプラント4上の中間インプラント6の不定の拘束から不可避的に発生し、必ずしも該当する患者の生体構造に対応しない、使用中の不快感及び過剰な摩耗を、大幅に防ぐことが可能である。
【0082】
特に、図1,2,5,6及び7に示される好ましい実施形態において、変形可能な結合手段10は、脛骨インプラント4に固定され、かつ脛骨インプラント4と中間インプラント6の間の機械的接合部を形成するように設計される基部12を備えている。
【0083】
前記基部12は、好ましくは実質的に長方形のブロック形状である。
【0084】
前記基部12には、基部12が脛骨インプラント4と関連して実際に固定される位置を、複数の固定可能位置から選択できるようにする調節可能な固定手段14が提供されることが好ましい。
【0085】
当然に、脛骨インプラント4と基部12の間の接触領域8の構造は、特定の実施形態に限られない。しかし、脛骨インプラント4と基部12の間の接触領域は、好ましくは実質的に平面であり、さらには、軸線(XX´)及び(YY´)によって定められる平面と実質的に一致することがより好ましい。
【0086】
このように、望ましくは、結果として自由な平面で当接して接続するように提供される自由度を用いることにより、脛骨インプラント4に対して基部12を押圧し、様々な位置で様々な向きを有して脛骨インプラント4に関連して基部12を位置づけることが可能である。中立的な形状を特定した後、基部12を堅固に固定するために、最終的な結合が行われる。
【0087】
好ましい他の実施形態において、調節可能な結合手段14により、基部12が脛骨インプラント4と関連して固定される位置を、例えば長楕円形の穴に係合するねじや、他の適切な機構によって、連続的に調整することが可能となる。
【0088】
特に、図5,7に示すように、調節可能な固定手段14は、基部12に設けられる1つ以上の溝17に係合する複数の広いヘッドのねじ16を備えている。溝17は、ねじ16の軸部と溝17の縁との間の残余クリアランスによって、脛骨インプラント4と関連して基部12の位置を線形又は角度を有して調整可能となるように寸法決めされる。したがって、まず脛骨インプラント4に基部12をゆるく連結し、次にその位置を調整し、最後に当該基部12を押圧して脛骨インプラント4に対して動かないように保持するために、ねじ16を締結することができる。図2に示すように、突起15を脛骨インプラント4に設けることもできる。これにより、まず第1に、脛骨インプラント4を脛骨5と関連して再現可能な方法で内外側方向に配置することを可能にするための基準となる部材を与えることができ、そして第2に、ねじ16の使用において必要とされる材料の厚さを脛骨インプラント4に与えることができる。
【0089】
すなわち、調節可能な固定手段14、より一般的には、変形可能な結合手段10は、「解除された(”unlocked”)」状態か、又は、他の「固定された(”locked”)」状態の、いずれかを採用して設計される。ここで、「解除された」状態とは、人工足関節の構成要素間、特に中間インプラント6及び/又は基部12と脛骨インプラント4の間での相対運動であり、人工足関節が複数の機能的形状構造を呈することができるように、特に中間インプラント6を(基部12を介して)脛骨インプラント4に対して明確な三次元配置で位置させることができるように、適切で十分な相対運動を、可能とする状態である。また、「固定された」状態とは、人工足関節の異なる機能的形状に対応する複数の形状の中から自由に選択される特定の形状に、又はその位置に近接して相対運動を抑え、望ましくは人工足関節の少なくとも2つの構成要素間の互いに動きを、できれば中間インプラント6の(基部12を介して)脛骨インプラント4に対する動きを防ぐ状態である。
【0090】
好ましい他の実施形態において、基部12は、中間インプラント6の基部12に対する接続を可能にする受容手段20を備える。
【0091】
最も好ましくは、上記の受容手段20は、中間インプラント6が基部12に対する単一の所定の位置のみを占めることができるように配置される。
【0092】
このような受容手段20を実現するために、様々な解決手段が考えられるが、特に、好ましくは心出し用のスタッド(studs)、刻み目(notches)、又は出張り(lugs)のようなキー手段と関連する、ねじを有する1つもしくは複数の溝形システムが考えられる。
【0093】
特に、図1,2及び5に示される好ましい他の実施形態において、受容手段20は、中間インプラント6がスリッドによって横から基部12に差し込まれることが可能となるような蟻継(dovetail)状に形成される。
【0094】
この変形例において、基部12と中間インプラント6の間の相互接続を実現するために、蟻継の生成軸(generator axis)に沿う移動の固定が十分である。
【0095】
好ましくは、当接部材21は、中間インプラント6が基部12に完全に差し込まれたときに中間インプラント6が接触するように設けられ、中間インプラント6が基部12に差し込まれた後の基部12からの中間インプラント6の抜き出しを妨害する戻り防止手段(不図示)が設けられる。
【0096】
当業者に周知の方法において、このような戻り防止手段は、例えばスナップ止めにより形成することができる。特に、基部12に接触する中間インプラント6の面の1つから突き出て移動するリップ(lip)によって形成される。このリップは、中間インプラント6が基部12に挿入される際に弾性的に変形、又は収縮し、その後、一旦中間インプラント6がその接触位置に達すると、リップを収める目的で設けられた切り欠き(notche)の中へ再配置される。
【0097】
このように、本発明によれば、脛骨インプラント4に中間インプラント6を係合するための係合手段11は、基部12の組み合わせ、その調節可能な固定手段14の組み合わせ、及びその受容手段20の組み合わせによって有利に形成することができる。
【0098】
一旦蟻継に配置されると、中間インプラント6は、締め付けねじ16のヘッドを固定するために有利に機能することができ、これにより、ねじ16が偶発的に弛むことによる基部12と脛骨インプラント4の間の弛みの早すぎる発生を抑えることができる。
【0099】
当然に、本発明の変形可能な結合手段10は、特定の異なる実施形態に限られず、特に人工足関節のインプラントの様々な相対的配置を可能とする他の実装型(on board)調節手段を包含する。
【0100】
好ましい他の実施形態において、人工足関節1は、施術者が正確に変形可能な結合手段10を構成できるように、中間インプラント6が脛骨インプラント4と関連してどのように配置されるかを示すように設計される基準手段22を更に備える。すなわち、基準手段22は、変形可能な結合手段10が、より一般的には人工足関節1が呈する形状を施術者に知らせる。
【0101】
より詳細には、本発明の基準手段22は、中間インプラント6及び/又は基部12が脛骨インプラント4に対してどのように配置されるかを、施術者に知らせるように設計された三次元の基準手段を構成できる。
【0102】
このように、有利に知ることができることにより、下記の詳細にて説明するように、特定の形状、特に中立的な形状に対応する人工足関節1の配置を再現できる。
【0103】
好ましくは、基準手段22は、脛骨インプラント4と関連する第1基準面4A及び基部12と関連する第2基準面12Aを有する。上記の第1,第2参照面4A,12Aの相対的位置は、外観的及び物理的に、脛骨インプラント4によって形成される基準フレームにおける基部12の位置を決定し、より一般的にはその位置を指し示すことを可能とする。
【0104】
好ましい他の実施形態において、脛骨インプラント4は、関節の動作を妨害する骨細胞の過剰の発達を抑えるための脛骨シールドを形成するタング(tongue)23と、骨に結合するためのねじを受けるのに役立つ長楕円形穴24を備えた固定タブとを有する。第1基準面4Aは、好ましくは実質的に平面であるタング23の前面の領域によって、有利に形成されることができる。
【0105】
類似する方法により、第2基準面12Aは、好ましくは、基部12の実質的に平坦な面により形成される。
【0106】
下記の詳細で述べられるように、第1及び第2基準面4A、12Aは、有利に、人工足関節1の組み立ての間、脛骨インプラント4と関連して正確に基部12の位置を調整することを可能とする。
【0107】
また、本発明は、距骨3の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント2、脛骨5の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント4、及び前記距骨インプラント2と脛骨インプラント4の間に配置されるように設計された中間インプラント6とを有する人工足関節1を製作する方法に関し、さらに、足首を動かすことができるようにするために、中間インプラント6は、距骨インプラント2に対して接触面7上で移動可能に取り付けられるように構成されている。本方法は、上記の人工足関節1に設けられた変形可能な結合手段10を、複数の許容される機能的形状の中から選択ステップ(E2)において選ばれた特定の機能的な状態で使用することによって、中間インプラント6を脛骨インプラント4に対して配置する配置ステップ(E1)を備えている点に特徴がある。
【0108】
好ましくは、選択ステップ(E2)において、人工足関節1が植設されるべき患者の関節の特定の形状に応じて人工足関節の特定の形状が選択され、より好ましくは、患者に応じた固有の中立的な形状が当該特定の形状として選ばれる。
【0109】
第1の変形例においては、この製作方法は、予め中立の形状を有するように組み立てられて提供される特注品の人工足関節の製造方法として、工場において実施することができる。
【0110】
特に、施術者が診察を行い、患者に対して医療用画像診断のような生体測定を行った後に、人工足関節の構成要素の組立に関係する重要データを含む寸法仕様を製造業者に送信するとともに、製造業者に対して、その人工足関節の適切な組み立てと包装を依頼するだけで、その後の手術のために、製造業者から提供される人工足関節1を遠隔地から注文できるという利点が想定される。
【0111】
他の変形例において、この制作方法は、外科手術において、人工足関節1を取り付ける際に、外科医が直接人工足関節1の形状を設定するような場面でも実行可能である。
【0112】
本発明は、製造所における人工足関節1の製作方法としても提供され、その製作方法は、変形可能な結合手段10を製作する製作ステップを含んでおり、当該製作ステップにおいては、まず第1に、人工足関節1が複数の許容される機能的形状を呈することを可能とするために、脛骨インプラント4に対する中間インプラント6の位置を調整可能とし、第2に、前記複数の許容される機能的形状の中から選ばれる特定の形状を呈するようにすべく、脛骨インプラント4に対する中間インプラント6の配置が選択されることを可能とするように、実装型の変形可能な結合手段10が製作される。
【0113】
また、本発明は、複数の許容される機能的形状の中から選ばれる特定の機能的形状を呈するように調整可能である最終的な人工足関節の代わりに、一時的に患部に植設されるように設計されたテスト用人工足関節101に関する。このテスト用人工足関節には、第1には、上記の複数の許容される機能的形状を全て呈することができるように構成されており、第2には、このテスト用人工足関節には、その計測された形状が最終的な人工足関節に引き継がれるようにするため、施術者がテスト用人工足関節自体の形状を計測可能となるように配置された参照手段112が設けられている。
【0114】
本発明の意味するところによれば、テスト用人工足関節101と最終的な人工足関節は、好ましくは、一回の外科手術において使用されるように設計されている。個々の患者に特有な中立的形状を識別し参照することが可能となるように、最初に、テスト用人工足関節が患者の足首の関節に取り付けられる。その後、テスト用人工足関節が取り外されるとともに、テスト用人工足関節101によって識別された上記の中立的な形状の3次元的な参照結果に従って中間インプラント6が位置決めされて固定されている最終的な人工足関節に置換される。
【0115】
つまり、テスト用人工足関節101は、個々の患者のための最終的な人工足関節に特定の形状を取らせるために必要な解剖学的な測定結果を得ることを可能とする中間移植付属品であり、そのテスト用人工足関節は、患者の関節に永続的に残されて歩行に伴う応力に耐えるように設計された実際の人工足関節ではない。
【0116】
テスト用人工足関節101は、このように最終的な人工足関節に比べて単純化された構成を有するという利点があり、特に、最終的な人工足関節に使用される材料に比べて強度が低く安価な材料を用いて形成することができる。
【0117】
最終的に患部に残される人工足関節は、上述の人工足関節1であることが好ましい。一方、テスト用人工足関節は、テスト用距骨インプラント102、テスト用脛骨インプラント104、テスト用中間インプラント106、及びテスト用の変形可能な結合手段110を有し、これらは、それぞれ上述した距骨インプラント2、脛骨インプラント4、中間インプラント6、及び変形可能な結合手段10の形状及び寸法に実質的に対応する形状及び寸法を有する。
【0118】
慣例に従って符号を付したので、テスト用人工足関節101の構成要素に付された符号は、最終的な人工足関節100に関して付された符号に100を加えたものとなっている。
【0119】
好ましい変形例において、テスト用中間インプラント106とテスト用の変形可能な結合手段110(より正確には、そのテスト用基部112)は、図4に示されるように、ブロック状の一体型ユニットをなす。
【0120】
よって、本発明において、変形可能な結合手段110を、厳密にテスト用人工足関節101に基づいて再現することは必ずしも必須ではないということになる。
【0121】
仮に、中間インプラント6が基部12に対して単一の位置しか取ることしかできないような最終的な人工足関節1の上記変形例を採用するのであれば、中立的な形状を決定するためには、中間インプラント6及び基部12という2つの構成要素のうちのどちらか一方の脛骨インプラント4に対する位置を知っていれば十分である。
【0122】
次に、テスト用脛骨インプラント104に対するテスト用中間インプラント106の動作のみが、基部12が至るべき適切な位置を導出するために必要であるといえるならば、テスト用人工足関節101上に固定手段14と同様のものを提供する必要はない。
【0123】
好ましいことに、テスト用人工足関節101において、基部12と中間インプラント6とによって形成され力学的に一つの物体として結合しているユニットを、その外部の各作業寸法及び形状のみを再現するブロック(106,110)によってモデル化することが好ましい。
【0124】
好ましい実施形態において、テスト用脛骨インプラント104と接触域にて接触するように設計されているブロック(106,110)の表面は、実質的に平面、平滑であり、何らの固定手段を有しない。
【0125】
他にもテスト用人工足関節101の構成要素の最終的な人工足関節に対する単純化が、本発明の範囲を超えることなく、前記中立位置を決定することについての実現性及び有効性に有害とならない単純化を提供する限りにおいて、実現可能である。
【0126】
このような単純化は、安価な材料の使用に伴い、殺菌して複数回使用するのに適したテスト用人工足関節を安価に製造することができるという利点がある。
【0127】
さらに、本発明のテスト用人工足関節101は、望ましいことに、患者の自然な動作に伴い、テスト用中間インプラント106上及びテスト用脛骨インプラント104に加わる応力を全体的にみて最小化させる中立的形状へとテスト用人工足関節が到達可能となるように配置された自己作動型センタリング手段を備える。つまり、自己作動型センタリング手段は、外科医によって与えられる患者の足部の自然運動の結果、自然とテスト用人工足関節101を中立的な形状に配置させるようなものであることが好ましい。
【0128】
ここで、ブロック(106、110)自体によって自己作動型センタリング手段が形成されている。接触面108において、より詳細には、(XX´)軸及び(YY´)軸によって定義される平面で、ブロック(106,110)自体がテスト用脛骨インプラント104に当接する平面において連結され、第二に、ブロック(106,110)の曲面106Aにおいて、テスト用距骨インプラント102とスライド回転に連結されるような方法で、ブロック106,110がテスト用距骨インプラント102とテスト用脛骨インプラント104の間に束縛されることなく介在されるように配置されることが好ましい。このような配置によって、自己作動型センタリング手段がブロック(106,110)自体により形成されることになる。
【0129】
このような配置により、センタリングのために必要な挙動がブロック(106,110)に与えられることになる。すなわち、テスト用人工足関節101が植設される際に、ブロック(106,110)がテスト用脛骨インプラント104とテスト用距骨インプラント102の間に配置されると、それらのインプラント104、102は、それぞれブロック(106,110)の反対面においてブロックと接触する。外科医は、患者の足部を脚部に対して巧みに動かすことによって、その関節に生じた力学的な応力の効果により、力学的な応力が全体的にみて最小化されるような基準点Pの位置へのセンタリングが完了するまでブロック106、110を平面当接によって許容された自由度をもって漸次に移動させることができる。
【0130】
基準手段122は、テスト用人工足関節101が患者の体内に植設されたときに、テスト用人工足関節101の形状を施術者が測定することができるように設計された測定手段32に備えられたタッチセンサ部33、34と協働するように配置されることが好ましい。
【0131】
テスト用人工足関節が植設されている間、基準手段122と接触検出部材33、34とが共に協働することを可能とすべく、テスト用人工足関節の植設の実行に先立ち、基準手段122がタッチセンサ部33、34に固定されるように配置されることが好ましい。このような構成によれば、特に、テスト用人工足関節が生体中で呈する形状の変化を継続的に取得することが可能となる。
【0132】
このように、テスト用人工足関節101と最終的な人工足関節1との間に存在する寸法及び機能上の類似性は、医療従事者がテスト用人工足関節101について直接的に位置測定を行うことを可能にするという点で好ましく、テスト用人工足関節の構成要素の距離及び方向が、最終的な人工足関節1に再現されるべき状態を正確に表していることは注目に値する。
【0133】
本発明は、人工足関節を正しい位置に設置するために設計された外科手術用キット30にも関する。
【0134】
本発明によれば、上記の外科手術用キット30は、「最終的な人工足関節」と称される本発明の人工足関節1、及び上述したテスト用の人工足関節101を含むものである。
【0135】
さらに、本発明の外科用キット30は、患者に人工足関節101が植設されている間に施術者がテスト用人工足関節101の配置を測定することができるように設計された測定手段32を含むことが好ましい。
【0136】
より正確には、特に人工足関節101が中立的な形状にあり、患者の足首の自然な運動に伴い中間インプラント106及び脛骨インプラント104にかかる応力が全体的にみて最小になるとき、上記の測定手段32は脛骨に対してテスト用の結合手段110又はブロック106,110の位置を測定することができるように設計されることが好ましい。
【0137】
本発明の測定手段32は、接触型の測定技術とレーザビーム型の遠隔測定技術のどちらを採用してもよい。
【0138】
例えば、脛骨インプラント104に対してブロック106、110の直線的なオフセット(ミリメータ)及び/又は角度のオフセット(度)を施術者に測定させるといったような明確な測定方法を用いることができる。言うまでもなく、これらの要素の相対的な位置を与える型板を形成することによって中立的な形状を間接的に測定方法を用いてもよい。
【0139】
測定手段32は、第1の感触センサ面33Aを与える第1タッチセンサ部33及び第2の感触センサ面34Aを与える第2タッチセンサ部34を含み、それらの感触センサ面は脛骨インプラント104及び中間インプラント106にそれぞれ接触することが好ましい。
【0140】
より正確には、図4に示されるように、第2の感触センサ面34Aはブロック110の底部を形成するテスト用の基部112と接触するように配置されることが好ましい。
【0141】
好ましい実施形態において、第1,第2タッチセンサ部33,34は、それらを各々テスト用脛骨インプラント104及びテスト用中間インプラント106に接続させるための接続手段が提供されることにより、第1にテスト用人工足関節101の植設に先立ってそれらを複数のインプラントの対応する部分に対して固定することができ、そして第2にそれらを上記のテスト用人工足関節101が患者の体中にあるときも当該インプラントを固定し続けることが可能になる。
【0142】
特に、この目的のために、感触センサ面から突出し、それぞれテスト用脛骨インプラント104A及びブロック106,110の基部112と対応する第1及び第2試験用基準面104A、112Aに形成された切開部に収まるように設計された位置決め用の突起を用いることが好ましい。
【0143】
それゆえに、本発明の測定手段32は、テスト用脛骨インプラント104に対するテスト用中間インプラント106の動作をリアルタイムに監視することで、植設されたテスト用人工足関節101の配置を連続的に評価することができる。
【0144】
接続手段は、タッチセンサ部33,34のそれぞれが、テスト用基準面104A及び112Aに揃えられ、固定されることを可能にするように準備されることが好ましい。
【0145】
第1,第2タッチセンサ部は、それぞれ第1,第2延伸可動部によって形成されており、第1,第2延伸可動部の一端部は、テスト用人工足関節101の植設時に、患者の足首へのアクセスのために形成された切開部から突出するように形成されることが好ましい。
【0146】
図4及び図5に示されるように、第1,第2タッチセンサ部33,34は、それぞれは長方形の板で形成され、テスト用人工足関節101の植設時に、2つの板が互いに結合して接触ゾーン8及び108と同一の平面、つまり、XX´軸及びYY´軸によって形成される面に当接するように形成されることが最も好ましい。
【0147】
第1,第2タッチセンサ部33,34は、リバーシブル可能又は解除可能な固定手段によって結合されることで、互いの相対的運動を許容又は制約することができる。
【0148】
特に、図4及び図5に示される好適な変形実施形態において、切り口の向こう側に突き出した部分に、一方を他に押し付けるように働くバイスグリップ(図示せず)で接触面108に対しては実質的に通常のクランプ力Fをかけることによって、第1,第2タッチセンサ部33,34が単純にそして確実に他と動くことを余儀なくさせることが可能である。 それゆえ、反転可能な固定手段を組み入れることは、テスト用人工足関節101によって一旦中立的な形状に到達すれば第1,第2タッチセンサ部33,34、テスト用脛骨インプラント104、もしくはブロック106,110の位置を妨害しない。
【0149】
第1,第2テスト用基準面104,112は最終的な人工足関節1の第1,第2テスト用基準面4,12に対して、それぞれ実質的に同一であることによって、第1,第2タッチセンサ部33,34は、最終的な脛骨インプラント4及びテスト用脛骨インプラント104、又は最終的な基部12及びテスト用基部12と同様かつ同等にうまく噛合うことが好ましい。
【0150】
加えて、最終的な人工足関節1は、テスト用脛骨インプラント104とテスト用中間インプラント106を接続する接続手段に相補的な要素、特に、タッチセンサ部33,34上の位置決め用杭を受けるために設計された孔を有することが好ましい。
【0151】
それゆえに、テスト用人工足関節101及び最終的な人工足関節1は互いに交換可能であるため、テスト用人工足関節の中立的な形状を参照した後、タッチセンサ部33,34を互いに固定した後、そして上記のタッチセンサ部をテスト用人工足関節101から外した後に、脛骨インプラント4及び基部12を配置することが可能になり、それらはそれぞれ第1,第2感触センサ面33A及び34Aに接触していているため、これらの要素を中立的な形状に位置付けることが可能になる。
【0152】
つまり、本発明の測定手段32は、テスト用人工足関節101の形状が、最終的な人工足関節1に置き換えられるように設計されており、前記測定手段32が最終的な人工足関節1用の組み立て型板を形成することが好ましい。
【0153】
速く、簡易に、そして正確に前記形状に置き換えられ、施術者が例えば直線的もしくは角度のオフセットのような中間値をはっきりと知ろうとする必要がなく、テスト用人工足関節101上の測定と最終的な人工足関節1上における再現が直ちにそして直感的に行われることを、そのような測定手段32の好ましい実施形態が可能にすることは注目に値する。
【0154】
当然ながら本発明は、そのもの自体を独立に考えた測定手段、より正確には最終的な人工足関節をその形状で置き換えるためにテスト用人工足関節101が呈する特定の形状を物理的に測定することを可能にする調節可能な型板に係る可能性がある。
【0155】
本発明によれば、最終的な人工足関節1は、それゆえに手術用のカーテンの外の付随的な作業台において、とくに近接性、照明、清浄度などについて、とりわけ容易にそして実用的な条件の下で有利に組み立てることができる。
【0156】
さらに、本発明のキット30の変形実施形態において、最終的な距骨インプラント2はテスト用のインプラント102としても働き、直接設置することにより、距骨を一つのインプラントから他へ置き換ないでおくことで、最終的な距骨インプラントが距骨から受ける損傷を制限する。明確には、最終的な人工足関節1が埋め込まれる形状を評価するために最終的な距骨インプラント2をテスト用人工足関節101の要素として用いるとき、最終的な距骨インプラント2を指定するために、本記述では「テスト用の距骨インプラント102」として参照する。
【0157】
テスト用の脛骨インプラント104を最終的な脛骨インプラント4と同種の中外側及び前後の中心化構造、すなわち、それぞれ投影(図示せず)及び脛骨遮蔽123にすることで、以前にテスト用脛骨インプラント104によって占められていた位置と同一の位置に最終的な脛骨インプラント4を脛骨5に対して相対的に位置づけることが直ちにできるという点も注目される。
【0158】
当然ながら、本発明の外科手術用キットは、人工足関節に限定されるものではなく、他の人工器官、とくに人工関節を植設するために他の形で提供することもできる。当業者は当然ながら、そのような適合をさせた結果から最終的な人工足関節及びテスト用の人工足関節の適切な寸法及び形状を決定することができる。
【0159】
本発明はまた、「最終的な人工足関節」を患者の体内の所定位置に配置する外科的方法に関する。最終的な人工足関節1は、距骨の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント2、脛骨4の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント4、及び上記の脛骨インプラントと距骨インプラントの間に配置されるように設計された中間インプラント6を含む。中間インプラント6は、足首の運動を許容するために、接触面7において、距骨インプラント2に対して運動可能に設けられるように設計されている。
【0160】
この方法は、個別の実施の形態として参照される上記の外科キット30を使用して実行することが最も好ましい。
【0161】
本発明において、上記の外科的方法は、テスト用人工足関節を植設するためのステップ(a)を有し、同ステップ(a)において、テスト用距骨インプラント102、テスト用脛骨インプラント104、及びテスト用中間インプラント106を有するテスト用人工足関節101は、最終的な人工足関節の代わりに、患者に植設される。
【0162】
より正確には、問題となっている骨表面を、特に切除によって準備した後において、施術者は、テスト用距骨インプラント102を距骨3の内部又は表面上にマウントして一時的に固定し、かつ、テスト用脛骨インプラント104を、脛骨5の内部又は表面上にマウントして一時的に固定する。そして、施術者は、テスト用脛骨インプラント104とテスト用距骨インプラント102の間にブロック106,110を挿入することによって、ブロック106,110を関節部に対して大まかに位置決めする。したがって、第1に、その表面106Aが、テスト用距骨インプラント102の表面102Aと接触するため、摩擦を伴いながらその上でスライドすることが可能であり、第2に、その反対側の表面は、接触ゾーン108において、テスト用脛骨インプラント104に対して運動可能に当接することが可能である。
【0163】
本発明の外科的方法はまた、決定ステップ(b)を有し、上記のステップ(b)において、テスト用人工足関節の特定の形状が、複数の形状の中から、患者の体内で決定される。
【0164】
ここで、「中立的な形状」は、決定ステップ(b)において、テスト用人工足関節101の特定の形状として、実験的に特定されることが好ましく、中立的な形状において、足首の関節の自然な動作に伴いテスト用人工足関節101に付与される応力は、全体的にみれば最小になる。
【0165】
特定の形状を決定するための決定ステップ(b)は、患者処置サブステップ(b1)及び調節サブステップ(b2)を有することが最も好ましい。そして、患者処置サブステップ(b1)において、患者は所定の姿勢を取らされ、上記処置の影響下で、テスト用人工足関節101の動作が観察される。また、調節サブステップ(b2)において、テスト用人工足関節101の形状が、上記のサブステップ(b1)において観察される動作に応じて修正される。
【0166】
より詳細には、施術者は、特に、それに足底屈を受けさせ、そして、背屈を続けることによって、足部を脚部に対して強制的に動かすことで、これらの処置に対するブロック106,110からの反応を観察することができる。
【0167】
なお、決定ステップ(b)の間に、複数の処置サブステップ(b1)が連続して実行され、かつ、各々の処置サブステップ(b1)は調節サブステップ(b2)に先行して行われることが好ましく、これにより、テスト用人工足関節101の形状を連続的に調節することができる。施術者は、決定された既定の順序に従って、患者に複数の異なる姿勢を周期的に取らせることができ、例えば、背屈と足底屈を交互に繰り返し行わせることができる。関節部の処置の効果の下で、ブロック106,110は、位置Pの中央を占めるようになる自然な傾向を有し、位置Pにおいては、関節部の運動の間において受ける応力が、実質的に最小にされる。
【0168】
つまり、処置サブステップ(b1)及び調節サブステップ(b2)は、同時に行われ、かつ、テスト用人工足関節101は、患者の単一又は複数の処置に応じて、自己設定されるように設計される。
【0169】
したがって、外科医は、脚部に対する足部の連続的処置を用いて、ブロック106,110を拘束し、脚部に対する足部の連続的処置を用いて、繰り返し運動させることによって、テスト用人工足関節101、及びブロック106,110を、その中立的形状に向かって徐々に集まるように強いることが可能である。
【0170】
本発明の外科的方法は、さらに、再現ステップ(c)を有し、再生ステップ(c)において、決定ステップ(b)において選択された特定の形状が、変形可能な結合手段によって脛骨インプラント4に対して中間インプラント6を配置することで、最終的な人工足関節において再現される。
【0171】
上記の方法は、単一の外科手術において全てが適用されるため置換ステップ(d)を有している。置換ステップ(d)において、テスト用人工足関節101が摘出され、選択された特定の形状を呈している最終的な人工足関節1が、テスト用人工足関節の代わりに植設される。
【0172】
この目的を達するために、注目に値することは、置換ステップ(d)が、テスト用人工足関節の全部あるいは一部と関係することができること、例えば、テスト用距骨インプラント102が保持され、最終的な距骨インプラント2として使用することができることである。
【0173】
好ましくは、上記の外科的方法は、テスト用人工足関節を作成するための作成ステップ(e)を有している。上記の作成ステップ(e)において、テスト用人工足関節は、測定手段32と関連している。測定手段32は、テスト用人工足関節が患者にインプラントされる間に、施術者が、テスト用人工足関節101の形状を測定することを可能にするように、設計される。
【0174】
作成ステップ(e)は、テスト用人工足関節101を植設するための植設ステップ(a)の前に、有利に実行することができる。したがって、テスト用人工足関節の形状の変化を連続的にモニタし、テスト用脛骨インプラント104に対するテスト用中間インプラント106の位置決め用データを常時収集することが可能である。
【0175】
好ましくは、測定手段32に、一つ以上のタッチセンサ部33,34が設けられ、各々が、テスト用人工足関節101を感知するように設計されているため、制限ステップ(c)は、測定手段32を固定するためのサブステップ(c1)を有し、当該サブステップ(c1)において、タッチセンサ部33,34の位置は、可逆ロック手段によって、固定される。
【0176】
より正確には、測定手段32は、第1感触センサ面33Aを有する第1タッチセンサ部、及び第2感触センサ面34Aを有する第2タッチセンサ部34を有しており、当該感触センサ面33A,34Aは、テスト用脛骨インプラント104及びテスト用中間インプラント106に、それぞれ、接触するように設計されており、ロックサブステップ(c1)は、第1,第2タッチセンサ部を互いに固定することにより実行される。
【0177】
最も好ましくは、決定ステップ(b)において実行される処置の効果の下で、テスト用人工足関節101が中立的な形状に到達したと、施術者が判断した場合に、バイスグリップ(vise−grip pliers)を用いて、それらを互いに向かって押し付けることによって、施術者は、タッチセンサ部33,34を形成する延伸可動部(extension leaves)を、固定するように保持する。したがって、施術者は、機能的形状の測定を実施し、収集した情報を永続的に保存することができる。
【0178】
有利には、測定手段の提供は、テスト用人工足関節101と干渉せず、一旦、中立的な形状に到達すれば、ブロック106,110の無統制の偶発的運動を、特に引き起こさない。
【0179】
再現ステップ(c)は、取り付けサブステップ(c2)を有することが好ましく、取り付けサブステップ(c2)において、最終的な人工足関節1は、測定手段32によって収集されたデータを基礎として確立される組立テンプレートを用いることにより変形される。
【0180】
より正確には、取り付けサブステップ(c2)は、第1ステージ(c´2)及び第2ステージ(c´´2)を有する。第1ステージ(c´2)は、ロックステップ(c1)の後であり、第1ステージ(c’2)の間においては、継続して互いに固定されているタッチセンサ部33,34によって形成されるアセンブリは、テスト用人工足関節101から分離される。また、第2ステージ(c’’2)の間においては、最終的な脛骨インプラント4が、第1感触センサ面33Aに対して当接させられ、また、結合手段10及びより詳しくはそれのベース12が、第2感触センサ面34Aに対して当接させられ、それによって、タッチセンサ部は、図5に示されるように、最終的な人工足関節1のための組立テンプレートを形成する。
【0181】
したがって、有利には、最終的な人工足関節1を、その植設の前に、整頓された作業場において構成しておくことができる点で有利である。
【0182】
好ましくは、第2ステージ(c´´2)の間において、施術者は、基底部12が接触領域8において脛骨インプラント4と接触するように、基底部12を配置し、ねじ16を締め付けることなく、ねじ16と係合し、そして、脛骨インプラント及び基底部のそれぞれの基準面4A,12Aを、組立テンプレートを形成するタッチセンサ部33,34に対して適用することで、それらを、自然に所定位置に配置することができる。一旦、基底部12が位置決めされると、施術者は、ねじ16を固く締結し、そして、中間インプラント6を係合し、V字型(dovetail)に当接させることによって、中間インプラント6を基底部12に挿入する。したがって、施術者は、患者に固有でありかつ患者の関節部形状に可能な限りに良好に適合させるためにテスト用人工足関節101に基づいて実験的に決定される特定の形状を、最終的な人工足関節1に容易に移転することができる。
【0183】
当然、本方法は、人工足関節の植設のみに限定されるものではない。
【0184】
特に「最終的な人工足関節」を患者に植設するための外科的方法を構成する本方法は、実質的に最終的な人工足関節の形状を再現するものであり、最終的な人工足関節の代わりに患者に植設されるテスト用人工足関節を植設する植設ステップ(K)、上記のテスト用人工足関節の特定の機能的形状を複数の可能な形態の中から患者の体内において決定する決定ステップ(L)、上記の決定ステップ(L)において選択された特定の機能的形状が、最終的な人工足関節を取り付けるための取り付け手段によって、最終的な人工足関節において再現される再現ステップ(M)を含んでいる。
【0185】
上記の「機能的形状」とは、静的な三次元レイアウト(形、体積、位置及び人工足関節の各種部材の配向)、及び最終的な人工足関節の正常な作動状態において取られる自由度を実現するための配置を意味する。
【0186】
本発明において、最終的な人工足関節とテスト用の人工足関節は、各々が本質的に複数の機能的形状を呈することができ、最終的な人工足関節の機能的形状は、テスト用人工足関節における片方又は「相応体」(すなわち、数学的なセット用語の概念での「前駆体」)を有している。このように本発明の方法は、最も適切な機能的形状を特定するために患者の体内にテスト用人工足関節を予め配置することによって、最終的な人工足関節の「調整」を行うものである。
【0187】
このために、本発明のテスト用人工足関節は、実質的に最終的な人工足関節の形状及び/又は連結状態の動作を再現する。また、テスト用人工足関節は、1回の外科手術において植設された後に最終的な人工足関節に置換されるように設計されている。
【0188】
特に、上記の外科的方法は、一定の可動性を与えようとする関節に対して人工足関節を適用するために用いられる。上記の決定ステップ(L)においては、テスト用人口足関節の特定の機能的形状として、関節の自然な動作に伴い人工足関節に加わる応力が最小になるような「中立的な形状」が経験的に特定されることが好ましい。
【0189】
このために、決定ステップ(L)は、患者が所定の姿勢にされた状態で受ける外科医の処置に基づくテスト用人工足関節の挙動を観察することを可能にするための患者処置サブステップ(L1)、及び当該処置サブステップ(L1)において観察される挙動に基づいて、テスト用人工足関節の形状を修正する調整サブステップ(L2)を有していることが好ましい。
【0190】
さらに、上記方法は、テスト用の人工足関節を製作するための製作ステップ(O)を含んでいることが好ましく、同ステップにおいて、テスト用の人口足関節は、テスト用人工足関節の患者の体内に植設と同時に外科医がテスト用人工足関節の形状を測定することができるように設計された測定手段に接続される。
【0191】
このように本発明の人工足関節1は、患者にとっての優れた快適性や関節の安定性をもたらし、腱弛緩や筋萎縮を患う患者のリハビリテーションを容易にし、特に、従来は平衡感覚の減退を伴った人工足関節の利用を快適にし、さらに、上記の人工足関節が少量の摩耗のみを受けるという点から、優れた耐久性を備えているといえる。
【0192】
さらに、それ自体が構造上変形可能である単一の手段によって自立的な調節を行うことで、例えば、様々な形状及び寸法を含む交換可能な使い捨てインプラントのセットであって、満足な形状が得られるまでインプラントに植設を続けなければならないような設計のものを使用する場合に起こり得る時間と材料の浪費を回避することができるようになる。
【0193】
このように、本発明の人工足関節及び方法は、人工足関節の構造の単純化及び実施の容易性及び信頼性を維持しつつ、個々の患者が個別の整形外科的治療を受けることを可能にするという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の人工足関節の変形実施形態の一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の人工足関節の斜視図であって、図1に示される部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示される人工足関節が足首の関節に植設された状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の外科手術用キットの第1部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の外科手術用キットの第2部分が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の人工足関節の脛骨インプラント及び結合手段の変形実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の人工足関節の脛骨インプラント及び結合手段の他の変形実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0195】
1 人工足関節、
2 距骨インプラント、
3 距骨、
4 脛骨インプラント、
4A 第1基準面、
5 脛骨、
6 中間インプラント、
7 接触面、
10 結合手段、
12 基底部、
12A 第2基準面、
14 固定手段、
20 受容手段、
22 基準手段、
30 外科手術用キット、
32 測定手段、
33 第1タッチセンサ部、
33A 第1の感触センサ面、
33B 第2の感触センサ面、
34 第2タッチセンサ部、
101 テスト用人工足関節、
102 テスト用距骨インプラント、
104 テスト用脛骨インプラント、
106 テスト用中間インプラント、
110 テスト用の変形可能な結合手段、
122 基準手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
距骨(3)の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント(2)と、脛骨(5)の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント(4)と、脛骨インプラント(4)と距骨インプラント(2)の間に配置されるように設計された中間インプラント(6)と、を含む人工足関節(1)であって、
前記中間インプラント(6)は、足首の動作を許容するために、接触面(7)において、前記脛骨インプラント(4)に対して相対運動可能に取り付けられるように設計されており、
前記人工足関節(1)は、第1に、人工足関節(1)が複数の機能的形状を取ることを許容するために、前記中間インプラント(6)の前記脛骨インプラント(4)に対する相対的な位置が調節可能となるように、そして、第2に、中間インプラント(6)の前記脛骨インプラント(4)に対する相対的な配置が、前記複数の機能的形状のうちの特定の機能的形状と一致するように設計された実装型の変形可能な結合手段(10)を備えていることを特徴とする。
【請求項2】
前記特定の機能的形状は、前記中間インプラント(6)の前記脛骨インプラント(4)に対する相対位置が、第1に、前記中間インプラント(6)が、前後方向、内外側方向、及び脛骨(5)の骨軸(ZZ´)回りの回転方向に沿った脛骨(5)の距骨(2)に対する相対運動の基準点(P)に実質的に一致させられ、第2に、前記脛骨インプラント(4)及び/又は前記中間インプラントの方向が、前記人工足関節(1)の動作の軸が患者の足首の軸と等しくなるような方向にされるような位置になった状態に対応する中立的な形状であることを特徴とする請求項1に記載の人工足関節。
【請求項3】
前記変形可能な結合手段(10)は、前記中間インプラント(6)を前記脛骨インプラント(4)に係合させるための係合手段(11)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工足関節。
【請求項4】
前記変形可能な結合手段(10)は、前記脛骨インプラント(4)に固定され、かつ、前記脛骨インプラント(4)と前記中間インプラント(6)の間の機械的な接合部を形成するように設計される基底部(12)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の人工足関節。
【請求項5】
前記基底部(12)は、複数の位置の中から前記基底部(12)が実際に前記脛骨インプラント(4)に対して固定される位置を選択することを可能にする調節可能な固定手段(14)を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人工足関節。
【請求項6】
前記調節可能な固定手段(14)は、前記基底部(12)の固定位置を、連続的に調節するための手段を形成することを特徴とする請求項5に記載の人工足関節。
【請求項7】
前記基底部(12)は、前記中間インプラント(6)を前記基底部(12)に連結させることを可能にする受容手段(20)を備えており、
前記受容手段(20)は、前記中間インプラント(6)が前記基底部(12)に対して単一かつ既定の相対位置のみを取ることができるように配置されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の人工足関節。
【請求項8】
前記変形可能な結合手段(10)の正確な変形を実現するために、前記中間インプラント(6)が前記脛骨インプラント(4)に対してどのように配置されているかを表示するように設計された基準手段(22)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の人工足関節。
【請求項9】
前記基準手段(22)は、前記脛骨インプラント(4)に関連付けられた第基準面(4A)及び前記基底部(12)に関連付けられた第2基準面(12A)を含み、
前記第1基準面(4A)及び前記第2基準面(12A)の相対位置は、前記脛骨インプラント(4)によって形成された基準系による前記基底部(12)の位置の決定を可能にすることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載の人工足関節。
【請求項10】
人工足関節の工場での製作方法であって、
前記人工足関節は、距骨(3)の内部又は表面上に植設されるように設計された距骨インプラント(2)と、脛骨(5)の内部又は表面上に植設されるように設計された脛骨インプラント(4)と、脛骨インプラント(4)と距骨インプラント(2)の間に配置されるように設計された中間インプラント(6)と、を含み、
前記中間インプラント(6)は、足首の動作を許容するために、接触面(7)において、前記脛骨インプラント(4)に対して相対運動可能に取り付けられるように設計されており、
前記製作方法は、第1に、人工足関節(1)が複数の機能的形状を取ることを許容するために、前記中間インプラント(6)の前記脛骨インプラント(4)に対する相対的な位置が調節可能となるように、そして、第2に、中間インプラント(6)の前記脛骨インプラント(4)に対する相対的な配置が、前記複数の機能的形状のうちの特定の機能的形状と一致するように設計された実装型の変形可能な結合手段(10)が作成される結合手段(10)作成ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記中間インプラント(6)と前記脛骨インプラント(4)が、前記変形可能な結合手段(10)を用いて、前記工場内で、前記中間インプラント(6)を前記脛骨インプラント(4)に対して配置することで、前記中間インプラント(6)と前記脛骨インプラント(4)が組み立てられる組み立てステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1つに記載された前記人工足関節の代わりに一時的に植設されるように設計されたテスト用人工足関節(101)であって、
前記最終的な人工足関節(1)は、複数の機能的形状から選択される特定の形状に変形されることができ、
前記テスト用人工足関節(101)は、前記テスト用人工足関節(101)が前記複数の機能的形状として、前記人工足関節(1)が取りうる機能的形状を患者の体内で取ることができるように、形状及び寸法が前記人工足関節(1)の前記距骨インプラント(2)、前記脛骨インプラント(4)、前記中間インプラント(6)、及び前記変形可能な結合手段(10)とそれぞれ実質的に一致するテスト用距骨インプラント(102)、テスト用脛骨インプラント(104)、テスト用中間インプラント(106)、及びテスト用の変形可能な結合手段(110)を含むことを特徴とするテスト用人工足関節。
【請求項13】
施術者が前記特定の形状を前記人工足関節(1)において再現するたけの形状を測定可能となるように配置された基準手段(122)をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のテスト用人工足関節。
【請求項14】
前記基準手段(122)は、施術者が前記人工足関節(1)が患者に植設されたときの前記テスト用人工足関節(101)の形状を測定することができるように設計された前記測定手段(32)のタッチセンサ部(33,34)と協働するように配置されることを特徴とする請求項12に記載のテスト用人工足関節。
【請求項15】
前記基準手段(122)は、前記テスト用人工足関節が植設されるときに前記タッチセンサ手段(33,34)と協働することができるように、前記テスト用人工足関節の植設に先立ち、前記タッチセンサ手段(33,34)に対して固定されるように配置されることを特徴とする請求項13又は14に記載のテスト用人工足関節。
【請求項16】
前記テスト用中間インプラント(106)及び前記テスト用の変形可能な結合手段(110)は、ブロック型の単一のユニットを形成することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1つに記載のテスト用人工足関節。
【請求項17】
前記テスト用人工足関節に、患者の足首の自然な運動中に前記テスト用中間インプラント(106)及び前記テスト用脛骨インプラント(104)に加わる応力が全体的にみて最小化されるような中立的な形状を取らせるための自己作動型センタリング手段をさらに含むことを特徴とする請求項12〜16又は18のいずれか1つに記載のテスト用人工足関節。
【請求項18】
前記自己作動型のセンタリング手段は、第1に平面で前記テスト用距骨インプラント(102)に当接し、第2にスライドしながら旋回運動可能に前記テスト用距骨インプラント(102)に結合するように、前記テスト用距骨インプラント(102)及び前記テスト用脛骨インプラント(104)の間に運動可能に配置されるブロック(106,110)によって形成されることを特徴とする請求項17に記載のテスト用人工足関節。
【請求項19】
人工足関節を固定するために設計された外科手術用キット(30)であって、
請求項1〜9のいずれか1つに記載された人工足関節(1)及び請求項12〜18のいずれか1つに記載されたテスト用人工足関節(101)を含むことを特徴とする外科手術用キット。
【請求項20】
前記テスト用人工足関節(101)が患者に植設されるときの前記テスト用人工足関節(101)の形状を施術者が測定することができるように設計された測定手段(32)をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の外科手術用キット。
【請求項21】
前記測定手段(32)は、前記テスト用人工足関節(106)の前記テスト用脛骨インプラント(104)に対する位置を測定するように設計されることを特徴とする請求項20に記載の外科手術用キット。
【請求項22】
前記測定手段(32)は、第1の感触センサ面(33A)を有する第1タッチセンサ部(33)及び第2の感触センサ面(33B)を有する第2タッチセンサ部(34)を含み、
前記第1,第2の感触センサ面(33A,33B)は、それぞれ前記テスト用脛骨インプラント(104)及び前記テスト用中間インプラント(106)と接触するように設計されることを特徴とする請求項21に記載の外科手術用キット。
【請求項23】
前記第1,第2タッチセンサ部(33,34)は、第1に、前記第1,第2タッチセンサ部(33,34)が、前記テスト用人工足関節の植設に先立ち、前記テスト用脛骨インプラント(104)及び前記テスト用中間インプラント(106)に対してそれぞれ固定され、第2に、記第1,第2タッチセンサ部(33,34)が、前記テスト用人工足関節(101)が患者の体内に入った後も、前記テスト用脛骨インプラント(104)及び前記テスト用中間インプラント(106)に対して固定され続けるように、それぞれ前記テスト用脛骨インプラント(104)及び前記テスト用中間インプラント(106)に接続するための接続手段を備えていることを特徴とする請求項22に記載の外科手術用キット。
【請求項24】
前記第1,第2タッチセンサ部は、各々が前記テスト用人工足関節(101)の植設時に患者の足首へのアクセスのために形成された切開部から突出可能な一端部を有するように設計された第1,第2延伸可動部によってそれぞれ形成されることを特徴とする請求項22又は23に記載された外科手術用キット。
【請求項25】
前記第1,第2タッチセンサ部(33,34)は、互いの相対運動が許容されるか又は禁止されるように、リバーシブル又は解除可能であるロック手段によって互いに結合させられることを特徴とする請求項22〜24のいずれか1つに記載の外科手術用キット。
【請求項26】
前記測定手段(32)は、前記テスト用人工足関節(101)の形状が前記人工足関節(1)に適用されることが可能となるように、前記人工足関節(1)の組み立て用テンプレートを形成するように設計されることを特徴とする請求項20〜25のいずれか1つに記載の外科手術用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−104884(P2008−104884A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278200(P2007−278200)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(502347858)ニューディール ソシエテ パー アクシオン シンプリファイド (2)
【Fターム(参考)】