説明

中継局、経路誘導方法、およびプログラム

【課題】無線マルチホップネットワークにおいて、基地局と移動端末との間の接続の品質を維持するのに好適な中継局等を提供する。
【解決手段】経路誘導型中継局のリンク情報収集部21は、経路誘導型中継局が通信可能な移動端末と、基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、当該移動端末と、基地局との接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集する。経路選択部22は、接続が確立された時点のリンク情報と比較して、収集したリンク情報の状態に変化があると、収集したリンク情報に基づいて移動端末に適した経路を選択する。経路誘導部23は、選択された経路で接続するように、移動端末を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線マルチホップ通信システムにおける中継局、経路誘導方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルWiMAXとは,「WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)」と呼ばれる無線通信の規格を移動通信に適用する技術である。現在、このモバイルWiMAXにおいて、マルチホップリレー(MMR:Mobile Multihop Relay)を実現するための標準化(IEEE802.16j)が進められている。
【0003】
WiMAXで使用される周波数帯域は直進性が高いため、より多くの情報量を送信できる一方、障害物を回り込みにくく、伝達範囲(カバレッジ)も狭い。マルチホップリレーは、この問題を解決するために、基地局よりも安価に実現可能な中継局(RS:Relay Station)を移動端末(MS:Mobile Station)と基地局(BS:Base Station)との間に設置し、中継局を経由して、基地局と移動端末とを相互接続する通信方式である。
【0004】
IEEE802.16jにおいては、固定中継局の他に、ノマディック(nomadic:非定住型)中継局、およびモバイル中継局の利用がサポートされている。これにより、災害時やイベント開催時などに、ノマディック中継局を設置して一時的にカバレッジを拡大したり、電車や自動車などにモバイル中継局を搭載することが可能となる。典型的には、事業者が固定中継局を、そして、利用者がノマディック中継局を所有することが想定される。
【0005】
このような無線マルチホップネットワークにおいては、複数の中継経路が存在する。図1に典型的な無線マルチホップネットワークの例を示して説明する。
【0006】
図1では、1つの基地局が受け持つ範囲内であるセルの構成を示す。セルは、1つの基地局1に対して、中継局2−1と2−2、および、移動端末3−1から3−3、により構成される。特に区別する必要がない場合、適宜単に、中継局2、および、移動端末3と記載する。なお、中継局2と移動端末3の数はそれぞれ2台と3台ずつ記載されているが、数はこれに限らない。
【0007】
基地局1と中継局2、および、中継局2同士は、無線または有線で接続され、移動端末3は、基地局1、および、中継局2と、無線により接続される。さらに、基地局1は、典型的には有線のネットワークを介して図示しない他の基地局1と接続される。
【0008】
図1に示す例の場合、例えば、移動端末3−1と基地局1の間の通信経路としては、以下が考えられる。
1)端末3−1⇔中継局2−1⇔基地局1
2)端末3−1⇔中継局2−1⇔中継局2−2⇔基地局1
或いは、移動端末3−1が、中継局間の境界にいるために、中継局2−2とも通信可能であれば(点線に示すリンク)、
3)移動端末3−1⇔中継局2−2⇔基地局1
という経路も考えられる。当然ながら、各移動端末が、直接基地局と通信する経路も考えられる。
【0009】
特許文献1に開示される移動端末は、このようなマルチホップ中継方式を使用するセルラー通信システムにおいて、セルの負荷量の調整や、中継局の再配置を行うために、サービング局(移動端末と接続している基地局、または、中継局)からの要請を受けて、候補ノードへとハンドオーバを行う。ここで、候補ノードとは、隣接セルの基地局、隣接セルの中継局、サービング基地局、及びサービングセルの隣接中継局を含む。端末機は、スキャニングにより獲得した受信強度などにより、候補ノードのいずれかにハンドオーバするかを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−116697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、移動端末が、候補ノードのいずれかにハンドオーバするものの、総合的な通信経路の状態を考慮して、経路全体を切り替えることは行わない。例えば、候補ノードが中継局であり、当該中継局からの受信強度が高い場合、当該中継局へとハンドオーバが行われる。しかし、当該中継局が接続される基地局との伝送レートが低いために、経路全体としては通信品質が低い場合がある。
【0012】
また、特許文献1は、セルの負荷量の調整や中継局の再配置のために、中継局のハンドオーバ処理を行うが、通信品質の維持については考慮していない。基地局と移動端末との間の通信経路の総合的な状態を考慮して、接続が確立された後も基地局と移動端末との接続の品質を維持する技術が求められている。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、無線マルチホップネットワークにおいて、基地局と移動端末との間の接続の品質を維持するのに好適な、中継局、経路誘導方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る中継局は、
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局であって、
所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、当該移動端末と、当該基地局との接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
を備え、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る経路誘導方法は、
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局による経路誘導方法であって、
前記中継局は、経路誘導部と、リンク情報収集部と、経路選択部と、を備え、
前記経路誘導部が、所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導ステップと、
前記リンク情報収集部が、前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集ステップと、
前記経路選択部が、前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択ステップと、
前記経路誘導部が、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導するステップと、
を備える、
ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記移動端末からの要求に応じて、前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
して機能させ、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線マルチホップネットワークにおいて、基地局と移動端末との間の接続の品質を維持するのに好適な中継局等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な無線マルチホップネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る無線マルチホップネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る経路誘導型中継局の構成例を示すブロック図である。
【図4】リンク情報データベースのテーブル構成例を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る移動端末と基地局との間の接続処理の流れを示すフロー図である。
【図6】無線端末と基地局との間の経路を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る経路誘導型中継局による最適な経路へのハンドオーバ処理の流れを示すフロー図である。
【図8】リンク情報の状態の変化を示す図である。
【図9】本実施の形態の変形例に係るポリシ情報データベースのテーブル構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る無線マルチホップネットワークシステムを図2に示す。図1に示した一般的な無線マルチホップネットワークシステムと比較すると、本システムは、経路誘導型中継局12(図2では1台のみ示すが、数はこれに限定されない)が中継局2−1と入れ替わった構成となっている。
【0020】
経路誘導型中継局12は、基地局1と移動端末3−1〜3−3の間で無線マルチホップ通信を行うだけでなく、ハンドオーバ、即ち、移動端末が接続する中継局の切り替えを行って、移動端末3−1〜3−3を適した経路に誘導する。以下、図3を参照して、経路誘導型中継局12の構成要素について説明する。
【0021】
図3に示すように、経路誘導型中継局12は、リンク情報収集部21、経路選択部22、および経路誘導部23、および、リンク情報データベース24等を備える。
【0022】
リンク情報収集部21は、経路誘導型中継局12と通信可能な移動端末3のうち、基地局1と接続が確立されているものについて、当該移動端末3と基地局1との間の各通信経路を構成するリンクのリンク情報を収集する。例えば、図2の例では、経路誘導型中継局12のリンク情報収集部21は、移動端末3−1および3−2のうち、基地局1と接続が確立されているものについてリンク情報を収集する。ここで、リンク情報とは、例えば、受信強度、BER(Bit Error Rate)、伝送レート、通信トラヒック量等の少なくともいずれかである。
【0023】
リンク情報収集部21は、経路誘導型中継局12に隣接するリンクについては、自ら監視して、リンク情報を収集する。一方、経路誘導型中継局12が隣接していないリンクについては、当該リンクに隣接するノード、即ち、基地局1、中継局2、他の経路誘導型中継局12、および移動端末3、のそれぞれに対して、そのノードに隣接するリンクの情報を返信するよう要求する。他のノードは、要求に応答して、リンク情報をリンク情報収集部21に返信する。
【0024】
なお、リンク情報収集部21はリンク情報の収集を、例えば、経路誘導型中継局12と通信可能な移動端末3が基地局1と接続を確立した時点以降、所定の時間間隔で行う。
【0025】
リンク情報データベース24は、移動端末3と基地局1との間の接続経路が確定した際に、その時点での、当該移動端末3と基地局1との間に存在する各経路のリンク情報を記憶する。リンク情報は、上述したように、リンク情報収集部21によって収集される。図4に示すように、リンク情報データベース24は、経路誘導型中継局12と通信可能な移動端末3のうち、基地局1と接続が確立されたものについて、当該移動端末3と、基地局1との間の各経路を構成する各リンクの識別情報と、各リンクに対応する上りと下りのリンク情報を有する1または複数のレコードから構成されるテーブルを記憶する。
【0026】
ここで、上りのリンク情報は移動端末3から基地局1にデータを送信するときのリンク情報であり、下りのリンク情報は基地局1から移動端末3にデータが送信されるときのリンク情報である。例では、上りのリンク情報と下りのリンク情報はそれぞれ個別に格納され管理されるが、上りまたは下りのリンク情報を他方に用いても構わない。即ち、上りのリンク情報を下りのリンク情報として用いても良いし、下りのリンク情報を上りのリンク情報として用いても良い。
【0027】
経路選択部22は、基地局1と移動端末3との間に接続が確立されている場合、リンク情報データベース24に記憶される当該接続が確立された時点でのリンク情報と、収集されたリンク情報との間に状態の変化があると、当該収集されたリンク情報に基づいて、基地局1と移動端末3との間の経路の中から移動端末3に適した経路を選択する。例えば、リンク情報として伝送レートを用いる場合、最高の伝送レートを実現する最小ホップ数の経路を、最も適した経路であるとして選択する。適した経路が複数ある場合は、そのうちのいずれかを選択すればよい。選択された経路は、上りと下りとで同一であっても、異なっていてもよい。
【0028】
なお、経路選択部22は、例えば、移動端末3が、経路誘導中継局12の通信可能なエリア内、或いはエリア外に移動したときに、当該移動端末3と基地局1との間に存在する経路のそれぞれを把握するための処理を行う。例えば、セル内の各ノードは、所定のタイミングでブロードキャストを行って、通信可能な相手についての情報を互いにやり取りし、経路選択部22は、当該情報を収集して、基地局1と移動端末3との間の経路構成を把握する。当該経路構成の情報は、リンク情報収集部21がリンク情報を収集する際にも利用される。
【0029】
経路誘導部23は、移動端末3からの発呼などの要求に応じて、所定の手順で基地局1と移動端末3との間に接続を確立するよう移動端末3を誘導する。また、基地局1と移動端末3との間に接続が確立された以降は、経路選択定部22によって選択された最適な経路に確立された接続を切り替えるように移動端末3を誘導する。
【0030】
次に、本実施の形態に係る経路誘導型中継局12の動作処理を説明する。
【0031】
(接続の確立)
まず、移動端末3が、例えば、他の移動端末3に対して呼び出しを行う(発呼する)と、移動端末3と基地局1との間に接続処理が開始される。接続処理のフローを、図5を参照して説明する。
【0032】
接続処理において、移動端末3は、まず、定義された周波数のうちのチャネルをスキャンして、自分の属するセルを構成するノード(経路誘導型中継12、中継局2、または基地局1)のうち、いずれか最も強い受信強度で通信できるものを選択する(ステップS101)。そして、選択したノードとの間で接続処理を行う(選択したノードが経路誘導型中継局12、または、中継局2であれば、ステップS102a、基地局1であれば、S102b)。ここで、接続処理とは、例えば、レンジングやパラメータのネゴシエーションなどを含む。
【0033】
移動端末3と接続処理を行ったノード(基地局1以外)は、同じように自分に隣接するリンクのうち最も強い受信強度で通信できるノードを選択して(ステップS104)、当該ノードと接続処理を行う(選択したノードが基地局1であればS105a、経路誘導型中継局12、または、中継局2であれば、ステップS105b)。ここで、経路誘導型中継局12において、接続処理を行うのは、経路誘導部23である。なお、ステップS103の処理は、経路誘導型中継局12、または、中継局2が、他の経路誘導型中継局12、または、中継局2から選択されて、接続処理を行う場合の処理を示す。
【0034】
接続が基地局1まで確立されると、基地局1は、呼出先(着信側)の移動端末3(図示せず)の位置するエリアを担当する基地局(即ち、サービング基地局。図示せず。)と所定の処理を行って、呼出先移動端末3までの接続を確立する(ステップS106)。これにより、発呼側と着信側の移動端末3同士が通信可能となるが、本実施の形態においては、移動端末3から基地局1までの接続についてのみ取り挙げる。
【0035】
ここで、上記の処理を、図2に示す構成と同様の構成を備える、図6に示す無線マルチホップネットワークシステムを用いて説明する。ただし、理解を容易にするために、移動端末3のうち、3−1のみを示す。
【0036】
例えば、図6において、経路誘導型中継局12からの信号の受信強度が中継局2−2と比較して強い場合、移動端末3−1は、まず、リンク3を選択し、経路誘導型中継局12と接続を確立すべく、経路誘導型中継局12に接続要求を転送する。同様にして、経路誘導型中継12は、基地局1からの受信強度が中継局2−2よりも強いと判定すると、リンク4を選択して、基地局1に接続要求を転送する。
【0037】
図6では、実線は接続済みのリンクを、点線はそれ以外のリンクを示している。即ち、リンク3とリンク4から構成される経路1が接続されている。なお、呼出処理の場合は、基地局1から移動端末3−1まで、逆の手順で接続先のノードを選択して接続を確立すればよい。また、接続の確立のための経路の選択基準としては、受信強度以外を用いてもよいし、経路の選択方法も上記に限るものではない。
【0038】
図5に戻り、着信側の移動端末3との接続の確立に成功した場合、着信側の移動端末3のサービング基地局から応答が発呼側の移動端末3に到達する。これに対して、発呼側の移動端末3は、自分の通信可能な経路誘導型中継局12が、接続経路に含まれていない場合を考慮して当該経路誘導型中継局12に、接続が確立された旨を通知する。経路誘導型中継局12のリンク情報収集部21は、通知を受け取ると、その時点の発呼側の移動端末3と基地局1との間に存在する各経路を構成するリンク(接続済みのリンクも含む)について、リンク情報を収集して、リンク情報データベース24に記憶する(ステップS107)。
【0039】
リンク情報収集部21は、当該経路を構成するリンクのうち、経路誘導型中継局12に隣接するリンクについては、自ら監視して、リンク情報を収集する。一方、当該リンクのうち、経路誘導型中継局12が隣接していないリンクについては、当該リンクに隣接するノード、即ち、基地局1、中継局2、他の経路誘導型中継局12、および移動端末3、のそれぞれに対して、そのノードに隣接するリンクの情報を返信するよう要求して、当該各ノードからリンク情報を受信する。収集したリンク情報は、リンク情報データベース24に記憶する。
【0040】
例えば、図6においては、移動端末3−1について、リンク1〜リンク5のリンク情報が収集される。リンク情報収集部21は、移動端末3−1と基地局1との間のリンク情報を収集する際、リンク2についてのリンク情報は、中継局2−2、または、移動端末3−1から行うが、その他のリンクについては隣接しているため自ら収集する。
【0041】
(最適な経路へのハンドオーバ処理)
次に、接続が確立された後に、最適な経路にハンドオーバするための、経路移動型中継局12の処理について、図7のフロー図を参照して説明する。
【0042】
まず、所定の時間が経過すると(ステップS201;YES)リンク情報収集部21が、接続が確立されている移動端末3のそれぞれと基地局1との間に存在する各経路を構成するリンクのリンク情報を収集する(ステップS202)。所定の時間が経過しない間(ステップS201;NO)は、ステップS201の処理を繰り返して待つ。即ち、リンク情報の収集は、定期的に行われる。ステップS202の処理において、リンク情報を収集する手順は、上記のステップS107の処理で説明した手順と同様である。
【0043】
次いで、経路選択部22は、リンク情報データベース24に記憶されているリンク情報と、収集したリンク情報とを比較する(ステップS203)。リンク情報に変化がなければ(ステップS203;NO)、処理を終了する。一方、リンク情報に変化があった場合(ステップS203;YES)、経路選択部22は、収集したリンク情報に基づいて、移動端末3−1に適した経路を選択する(ステップS204)。
【0044】
例えば、上記ステップS107の処理の実行により、移動端末3−1と基地局1との間のリンクのリンク情報として、リンク情報データベース24に、図8(A)に示すようなリンク情報テーブルが記憶されている。また、上記ステップS202の処理の実行により、移動端末3−1と基地局1との間のリンクについて、図8(B)に示すリンク情報が収集されている。なお、図8(A)および図8(B)では、リンク情報として伝送レートを用いている。
【0045】
図8(A)と図8(B)とを比較すると、電波状況の劣化等の理由によりリンク4の状態が変化している。経路誘導型中継局12の経路選択部22は、ステップS202の処理において収集されたリンク情報に基づいて、移動端末3−1に適した最高の伝送レートを実現する最小ホップ数を有する経路を、経路2として算出する。
【0046】
即ち、経路全体の伝送レートは、当該経路内の最も伝送レートの低いリンクに引きずれられてしまう。したがって、リンク3およびリンク4から構成される経路1の伝送レートは、図8(B)に示す状態の場合、10Mbpsとなる。一方、リンク1およびリンク2から構成される経路2では、伝送レートは15Mbpsとなる。よって、最高の伝送レートを実現する最小ホップ数の経路は経路2となる。なお、図8の例では、上りと下りの伝送レートが同じであるが、異なる場合は、通信方向に応じて、最適な経路を選択するようにしてもよい。
【0047】
図7に戻り、経路誘導部23は、基地局1に接続パスを経路2に切り替えるようハンドオーバ要求を行う(ステップS205)。要求に応答して、基地局1はハンドオーバ処理を開始し、移動端末3−1と基地局1との接続パスを経路2に切り替える処理を実行する。このように、リンク4を、単により高い伝送レートを有するリンク5に切り替えるのではなく、全体として最も高い伝送レートを実現する経路に切り替えることが可能となる。
【0048】
なお、ハンドオーバ処理は、移動端末3−1に要求して、移動端末3−1主導で行ってもよい。あるいは、経路誘導型中継局12が主導で行ってもよい。また、ハンドオーバ処理の終了後、リンク情報収集部21は、ステップS202の処理において収集したリンク情報をリンク情報データベースに記憶する(ステップS206)。そして、ステップS201の処理に戻る。次回のループにおけるステップS203の処理では、この記憶されたリンク情報と新たに収集したリンク情報が比較され、経路の状態に変化があった否かが判定される。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されず、種々の変形および応用が可能である。また、上述した実施形態の各構成要素を自由に組み合わせることも可能である。
【0050】
上記実施の形態では、経路選択部22は、経路誘導型中継局12が経路の誘導を行う移動端末3について、基地局1との間のリンク情報のみに基づいて経路の選択を行う構成とした。これに限定されるものではなく、例えば、各移動端末3と、各移動端末3を利用する利用者と、各利用者に対応するポリシ情報の3つの項目を有する1または複数のレコードからなるポリシ情報テーブルをリンク情報データベース24に記憶してもよい。この場合、ポリシ情報は利用者が予め設定するようにしてもよいし、利用者の移動端末3の状態に応じて事業者が設定するようにしてもよい。経路選択部22は、リンク情報のほかに、当該ポリシ情報に基づいて経路を選択するようにしてもよい。
【0051】
ポリシ情報としては、例えば、図9に示すように、利用者のスループットを最大限向上させることを重視するということを示す「スループット重視」や、バッテリ残量が少ないときなどに近隣で電波状況が良い基地局1または中継局2と接続して電力消費を抑制することを重視するということを示す「省電力重視」などを設定可能とすればよい。例えば、「省電力重視」が設定される場合、経路選択部22は、移動端末3から近隣で電波状況が良い基地局1または中継局2へ至る経路が適した経路として選択される。これにより、経路誘導型中継局12は、移動端末3の利用者の希望に適した経路を選択することが可能となる。
【0052】
また、上記実施の形態では、移動端末3と基地局1との間の接続を確立する際に、順次最も高い受信強度を得られるノードを接続先として選択する構成とした。これに限定されるものではなく、例えば、リンク情報収集部21は、経路誘導中継局12と通信可能な移動端末3の全てについて、接続確立後のみでなく定期的に移動端末3と基地局1との間の経路のリンク情報を収集するようにし、経路選択部22は、ステップS204と同様に移動端末3に適した経路を選択するようにしてもよい。そして、経路誘導部23は、選択された経路で接続がされるよう移動端末3を誘導してもよい。これにより、接続を確立する際にも、最適な経路を選択することが可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では、リンク情報として伝送レートを用いる場合について説明したが、その他のパラメータをリンク情報として用いるようにしてもよい。
【0054】
なお、本経路誘導型中継局は、WiMAXのほか、3GPP(Third Generation Partnership Project)/3GPP2(Third Generation Partnership Project 2)、第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)などのモバイルネットワークにおいて無線マルチホップ通信方式を利用したシステムにも適用可能である。
【0055】
経路誘導型中継局12は、専用のハードウェアとして実現可能であるほか、例えば、無線インタフェースを備える一般的なコンピュータに、経路誘導型中継局12の制御プログラムを実行させることで実現してもよい。経路誘導型中継局12の制御プログラムは、予めコンピュータの記憶部等に記憶しておいてもよいし、あるいは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)、USBメモリ等に記憶させてプログラムを配付してもよい。後者の場合は、利用する記憶媒体のいずれかを読み取る装置をコンピュータに備えるようにして、当該プログラムをコンピュータに読み込ませることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0056】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0057】
(付記1)
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局であって、
所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、当該移動端末と、当該基地局との接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
を備え、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする中継局。
【0058】
(付記2)
前記リンク情報収集部は、接続が確立される以前についても所定のタイミングでリンク情報を収集し、
前記経路誘導部は、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする付記1に記載の中継局。
【0059】
(付記3)
前記中継局の前記経路選択部は、前記リンク情報と、予め設定された利用者の要望と、の少なくともいずれかに基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する、
ことを特徴とする付記1に記載の中継局。
【0060】
(付記4)
前記中継局の前記経路誘導部は、主導でハンドオーバを行うか、または、前記基地局または前記移動端末にハンドオーバを要求する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の中継局。
【0061】
(付記5)
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局による経路誘導方法であって、
前記中継局は、経路誘導部と、リンク情報収集部と、経路選択部と、を備え、
前記経路誘導部が、所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導ステップと、
前記リンク情報収集部が、前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集ステップと、
前記経路選択部が、前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択ステップと、
前記経路誘導部が、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導するステップと、
を備える、
ことを特徴とする経路誘導方法。
【0062】
(付記6)
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記移動端末からの要求に応じて、前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
して機能させ、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1 基地局
2 中継局
3 移動端末
12 経路誘導型中継局
21 リンク情報収集部
22 経路選択部
23 経路誘導部
24 リンク情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局であって、
所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、当該移動端末と、当該基地局との接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
を備え、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする中継局。
【請求項2】
前記リンク情報収集部は、接続が確立される以前についても所定のタイミングでリンク情報を収集し、
前記経路誘導部は、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継局。
【請求項3】
前記中継局の前記経路選択部は、前記リンク情報と、予め設定された利用者の要望と、の少なくともいずれかに基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継局。
【請求項4】
前記中継局の前記経路誘導部は、主導でハンドオーバを行うか、または、前記基地局または前記移動端末にハンドオーバを要求する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の中継局。
【請求項5】
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局による経路誘導方法であって、
前記中継局は、経路誘導部と、リンク情報収集部と、経路選択部と、を備え、
前記経路誘導部が、所定の手順で前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導ステップと、
前記リンク情報収集部が、前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集ステップと、
前記経路選択部が、前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択ステップと、
前記経路誘導部が、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導するステップと、
を備える、
ことを特徴とする経路誘導方法。
【請求項6】
基地局と移動端末とが、直接、あるいは、1つ以上の中継局を介して接続されている、無線マルチホップネットワークにおける当該中継局として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記移動端末からの要求に応じて、前記基地局と前記移動端末との間に接続を確立するよう前記移動端末を誘導する経路誘導部と、
前記中継局の通信可能な前記移動端末と、前記基地局との間の経路を構成する各リンクについて、当該リンクの属性情報であるリンク情報を、接続が確立された時点から、所定のタイミングで収集するリンク情報収集部と、
前記収集されたリンク情報が、前記接続が確立された時点に収集されたリンク情報と異なる場合、前記収集されたリンク情報に基づいて、前記基地局と前記移動端末とを結ぶ経路のうちから1つを選択する経路選択部と、
して機能させ、
前記経路誘導部は、前記選択された経路に前記確立された接続を切り替えるよう、前記移動端末を誘導する、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74541(P2013−74541A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213437(P2011−213437)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】