説明

中間調フォトマスク

【課題】パターンずれの少ない高精度な中間調フォトマスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
透明基板1上のデバイスパターン部に、相対的に反射率が高く透過率が極めて低い遮光膜4の上に相対的に反射率が極めて低く透過率が高い半透過膜5が積層されている遮光部と、半透過膜5が透明基板上に直接堆積された半透過部と、遮光部又は半透過部の一部が除去され透明基板が露出した透光部7とを備える。一方、透明基板1上の非デバイスパターン部に設けられたアライメントマーク部に、遮光膜及び半透過膜がいずれも存在せず透明基板が露出した透光部と表面に反射防止膜が形成されていない遮光膜が最表面に露出した遮光部とによってアライメントマーク2が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ等に適用される中間調フォトマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフォトマスク(これを、本明細書では、「2階調フォトマスク」という。)は、透明基板の表面に光透過部(以下、「透光部」という。)と遮光部の2階調のパターンが設けられたもので、所望のパターンを形成するために用いられる。フォトマスクは通常、種々のパターンの2階調フォトマスクを複数枚使用し、露光も複数回行って最終的に1つのパターンを形成するが、そのパターンは当然のことながら2階調(つまり白黒2値)で構成される。
【0003】
半導体用フォトマスクなどの技術分野では、透明基板の表面に「位相シフタ」とよばれる所定のパターンの半透過膜を形成してなるフォトマスク(本明細書では「ハーフトーン型位相シフトマスク」という。)を用いることにより解像度の向上を図っている。但し、位相シフタを設ける目的はあくまで設計データの再現にあり、この場合も転写されたパターンは2階調となる。
【0004】
これに対し、フラットパネルディスプレイなどの技術分野では、ハーフトーンマスクを「位相シフタ」としてではなく、膜の透過率で露光量を制限することでグレートーンの階調を持つパターンが転写されるようにして、3階調のフォトマスクを得ることが行われている。なお、このようなフォトマスクを本明細書では「中間調フォトマスク(グレートーンマスク)」という。
【0005】
このように、ハーフトーンマスクを用いてパターンを形成し、膜の透過率で露光量を制限すると、1回の露光で露光量の異なるパターニングが可能となるため、結果として露光工程を削減することができる。
【0006】
ここで、従来の中間調フォトマスク(ここでは、代表的な「3階調」のフォトマスク)の一例について説明する。従来の一般的な中間調フォトマスクは、1層目が遮光膜により形成されたパターン(遮光パターン)、2層目が半透過膜により形成されたパターン(ハーフトーンパターン)から形成され、半透過部と遮光部と透光部の3階調から構成されている。
【0007】
例えば、特許文献2によれば、一つのフォトマスクにおけるデバイスパターン部(デバイス形成領域)において、半透過膜のみの層(A)、遮光膜及びその上に半透過膜が形成された層(B)、半透過膜と遮光膜がいずれも形成されていない層(C)の3階調が形成されている様子が示されている(例えば、同文献図1(9)参照)。
【0008】
中間調フォトマスクの製造方法は、一般に、パターニングが少なくとも2回(遮光膜のエッチングと、半透過膜のエッチング)、行われる。具体的には、露光領域を予めアライメントマークを形成するための領域(アライメントパターン部)とデバイスパターンを形成するための領域(デバイスパターン部)とに区別しておき、1回目のパターン形成時にアライメントマークを形成し2回目のパターニングの際には、このアライメントマークによって位置合わせを行う。
【0009】
図8(a)は、透明基板100上に、一様に遮光膜101が形成されたマスク(これを「マスクブランクス」という。)を示している。マスクブランクスは、従来の一般的な2階調フォトマスクを形成する場合に多く用いられるものである。図8(b)は、図8(a)に示すマスクブランクス100の表面にレジスト膜を形成し、パターニングすることによって得られる従来の2階調フォトマスクを用いた露光工程の様子を模式的に表している。
【0010】
ところで、図8(a)に示すように、従来の一般的なマスクブランクスは、単に透明基板の表面全体を遮光膜101が覆うだけでは無く、厳密には最表面に、薄い低反射率膜(反射防止膜)102が形成されている(これを、「反射防止加工」とよぶことにする。)。
【0011】
その理由は、もし仮に、低反射率膜102が形成されていないマスクブランクスを用いて形成したフォトマスク(例えば図8(c)に示すような)が存在したと仮定する。図8(c)は、表面に低反射率膜102が形成されていない仮想的なマスクブランクスを用いて形成した従来の2階調フォトマスクを用いた露光工程の様子を模式的に表している。この図に示すように、遮光膜101の表面は一般に反射率が極めて高いために、完成したフォトマスクの裏面側から露光光103を入射した際に被露光対象104から反射してきた光がフォトマスクの遮光パターンで被露光対象側に再反射して、正常な露光ができなくなる。故に、現在のマスクブランクスは全て表面に反射防止加工が施されている(例えば、特許文献1)。
【0012】
なお、この低反射率膜102は特に必要がなければ図示が省略されることも多いが、上述した理由により、マスクブランクスの最表面には必ず低反射率膜102が設けられている。逆にいうと、最表面に反射防止加工が全く施されていないマスクブランクスは、本発明の属する技術分野における近年の技術水準においてはまず考えられない、極めて異常なマスクブランクスであるといえる。
【0013】
中間調フォトマスクを形成する場合も、2階調フォトマスクを形成する場合と同様に、図8(a)に示すような構成のマスクブランクスから製造されることが一般的である。その場合は、第1層目となる遮光膜のパターニング後に、この第1層目を覆う第2層目(半透過膜)を形成して、再びパターニングを行う。
【0014】
第2層目の描画工程は、第1層目の遮光パターン形成時に基板周辺部の非デバイス領域(本明細書ではこれを、「アライメントマーク部(I)」という。)に設けられたアライメントマークにレーザー光を照射してその反射光(これを「アライメント信号」という。)を読み取ることにより、位置合わせを行っている。ところが、第2層目(半透過膜)の反射率は通常極めて低いため、アライメントマーク部に第2層目(半透過膜)が残っていると、反射率が著しく低下して、アライメント信号を読み取ることができないという問題が生じうる。
【0015】
図9(a)は、アライメントマーク部(I)の最表面に第2層目の半透過膜105が形成されている場合のアライメント信号の入射強度Iと反射強度Iを示している。同図はアライメントマーク部に対する入射光強度Iが半透過膜105によって減衰し、反射光強度Iが著しく小さくなっていることを表している。
【0016】
このように、「半透過膜102」の反射率が極めて低いことに起因して、光学式アライメントマークの読み取り信号が低下するという技術的課題を解決する方法として、マークパターン部における透光部の上に半透過膜が存在しないように構成するという方法が知られている(特許文献2乃至4等参照)。
【0017】
図9(b)は、図8(a)に示すマスクブランクスを出発材料として、例えば特許文献2に示すように、第2層目の成膜時に遮蔽板を用いてアライメントマーク部における遮光膜上に半透過膜が形成されないように構成したフォトマスクを示す図である。この方法によると、アライメントマーク部には半透過膜103aが形成されないため、アライメント信号の低下はある程度抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平05−127362号公報
【特許文献2】特開2006−227365号公報
【特許文献3】特開2000−98583号公報
【特許文献4】特開平7−319148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、図9(b)に示すように、アライメントマーク部に第2層目の半透過膜が形成されないように構成しても、従来のマスクブランクスを用いている限り、もともと遮光膜上に存在しているはずの低反射率膜(反射防止膜)102によって、アライメントマーク部に対する入射光強度Iよりも反射光強度Iが減衰することは避けられない。
【0020】
このように、遮光膜の最表面に反射防止膜が施された従来のマスクブランクスを使用する限り、いかにアライメントマーク部における遮光膜上に半透過膜が形成されないように構成しても、アライメントマーク部の最表面にわずかでも低反射率膜が露出していると、アライメントマーク信号が減衰し、アライメントエラーが生じやすかった。
【0021】
例えば、特許文献2に記載された方法によると、マークパターン部における透光部の上に半透過膜が存在しないように構成するため、アライメント信号の減衰は一定程度は抑えられる。しかし、同文献に記載された、「半透過膜が存在しないように構成すること」の実質的意味は、第2層目の半透過膜がアライメントマーク部に形成されないようにすることを意味するものにとどまり、高反射率膜を露出させることを意味しない。つまり、アライメント信号の減衰防止という技術的課題に対して必ずしも必要十分な手段とはいえない。
【0022】
また、特許文献3は、半透過膜が位相シフタとして用いられるものであるため、最終的に半透過膜が基板全面に露出するものではなく、それ故反射防止加工が施されたマスクブランクスを用いることが前提となっている。そして、低反射率膜が設けられたマスクブランクスを出発材料とし、アライメントマーク部の低反射率膜を選択的に除去する工程が必要となるため、無駄が多い。この意味において、同じ半透過膜を用いるフォトマスクであっても、「位相シフトマスク」と「中間調フォトマスク」とは、全く異なる考慮を要するものである。
【0023】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、パターンのずれが極めて小さい高精度な中間調フォトマスクを提供することを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る中間調フォトマスクは、透明基板1上のデバイスパターン部(II)に、相対的に反射率が高く透過率が極めて低い遮光膜4の上に相対的に反射率が極めて低く透過率が高い半透過膜5が積層されている遮光部と、前記半透過膜5が前記透明基板上に直接堆積された半透過部と、前記遮光部又は前記半透過部の一部が除去され前記透明基板が露出した透光部7とを備える一方、前記透明基板1上の非デバイスパターン部に設けられたアライメントマーク部(I)に、前記遮光膜及び半透過膜がいずれも存在せず前記透明基板が露出した透光部と表面に反射防止膜が形成されていない前記遮光膜が最表面に露出した遮光部とによってアライメントマーク2が形成されていることを特徴とする。
【0025】
このような構成よると、製造時にアライメント信号の減衰が抑えられるためにアライメント信号を確実に読み取ることができ、結果として、遮光膜のパターンと半透過膜のパターンのずれを小さくすることができる。
【0026】
この中間調フォトマスクを用いて得られるデバイスパターンは、遮光膜により形成される第1のデバイスパターンに、半透過膜により形成される第2のデバイスパターンを重ね合わせたパターンとなり、少なくとも半透過部と遮光部と透光部の3階調のパターンとなる。しかも、デバイスパターン部の最表面の大部分は相対的に反射率の低い半透過膜が露出するため、半透過膜が反射防止膜の機能をも兼ね備える。
【0027】
本発明に係る中間調フォトマスクは、前記半透過部は同一材料から構成され部分的に膜厚の異なる2以上の半透過膜で構成されるようにしてもよい。このようにすると、4階調以上の中間調フォトマスクを実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る中間調フォトマスクによると、パターンのずれが極めて小さい高精度な中間調フォトマスクを実現することができる。この中間調フォトマスクを使用することで、従来は複数枚のフォトマスクを使って複数回フォトリソグラフィー工程を実施していたところを一工程ですむようになり、製造工程が簡略化され、コストも低減される。さらに、透過率が異なる2以上の半透過膜を含む構成とすれば、3階調以上の階調数を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る中間調フォトマスクの製造工程において、第1層目(遮光膜)のパターニングが終了した状態のフォトマスクの平面図を示している。図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1線断面図を示している。図1(c)は、図1(c)は、図1(a)におけるY1−Y1線断面図を示している。
【図2】図2(a)は、図1(a)の状態に引き続き、第2層目となる半透過膜5を形成した直後の状態のフォトマスクの基板表面を示している。図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2線断面図を示している。図2(c)は、図2(a)におけるY2−Y2線断面図を示している。
【図3】図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る完成した三階調の中間調フォトマスク10の平面図、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3線断面図を示している。また、図3(c)は、図3(a)におけるY3−Y3線断面図を示している。
【図4】図4(a)は、本発明の第1の実施形態に係る三階調の中間調フォトマスク10を製造するためのアライメントマーク部(I)を遮蔽するための治具20を示している。図4(b)は、最適データに変換された第2層目のパターンデータ21を示している。
【図5】図5(a)乃至図5(c)は、第2の実施形態に係る中間調フォトマスクを説明するための図である。図5(a)は、第2の実施形態に係る四階調の中間調フォトマスク30の平面図、図5(b)は、図5(a)におけるX4−X4線断面図を示している。また、図5(c)は、図5(a)におけるY4−Y4線断面図を示している。
【図6】図6(a)は、アライメントマーク部(I)及び基板表面の上半分を遮蔽する治具40aを、図6(b)は、アライメントマーク部(I)及び基板表面の下半分を遮蔽する治具40bを示している。
【図7】図7(a)は、本発明の第1及び第2の実施形態における中間調フォトマスクの製造方法に適用可能なアライメントマークの一例を示している。図7(b)は、図7(a)のアライメントマークにレーザー光を照射した際のアライメント信号を表すオシロスコープの信号波形を模式的に表したものである。
【図8】図8(a)は、透明基板100上に、遮光膜101が形成されたマスク(これを「マスクブランクス」という。)を示している。図8(b)は、図8(a)に示すマスクブランクス100の表面にレジスト膜を形成し、パターニングすることによって得られる従来の2階調フォトマスクを用いた露光工程の様子を模式的に表している。図8(c)は、表面に低反射率膜102が形成されていないマスクブランクスを用いて形成した従来の2階調フォトマスクを用いた露光工程の様子を模式的に表している。
【図9】図9(a)は、アライメントマーク部(I)の最表面に第2層目の半透過膜105が形成されている場合のアライメント信号の入射強度Iと反射強度Iを示している。図9(b)は、図8(a)に示すマスクブランクスを出発材料として、第2層目の成膜時に遮蔽板を用いてアライメントマーク部における遮光膜上に半透過膜が形成されないように構成したフォトマスクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る中間調フォトマスクの製造方法の各実施形態について図面を参照して詳述する。
【0031】
(第1の実施形態)
はじめに、透明基板の表面に、相対的に反射率が高く透過率が極めて低い遮光膜が最表面に露出した特殊なマスクブランクスを準備する。上述の通り、一般にマスクブランクスは表面に反射防止膜が形成されているが(図8(a)参照)、本発明では、このように反射防止加工が施されていないもの(図示は省略するが、図8(a)において、低反射率膜(反射防止膜)102が形成されていないマスクブランクスである。)を用いることが必要である。
【0032】
次に、このマスクブランクスにレジストを塗布し、レーザー描画装置によって基板の周辺部にアライメントマークパターンを形成すると共に、その他の部分に第1のデバイスパターンを形成した後、現像及びエッチング工程(通常はウエットエッチングであるが特に限定されない。)、レジスト除去工程等を経て、第1層目となる遮光膜のパターニングが終了する。なお、アライメントマークパターンと第1のデバイスパターンは遮光膜に対して1回の工程でパターニングされるので、両者をあわせて、第1のレジストパターンということにする。
【0033】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る中間調フォトマスクの製造工程において、第1層目(遮光膜)のパターニングが終了した状態のフォトマスクの平面図を示している。この図に示すように、石英製の透明基板1の四隅にアライメントマーク2(2a乃至2d)が形成され、その内側に必要なデバイスパターン3が形成されている。なお、アライメントマークの形状はこの図に示す形状に限られない。後述するように、4本の直線が1点で交差する形状などが用いられる場合もある(図7(a)参照)。
【0034】
ところで、デバイスパターン3は基板1の中心部に位置する「デバイス領域」に形成されるのに対し、アライメントマークは、基板1の周辺部に位置する非デバイス領域に形成される。そこで、アライメントマークが形成される領域を「アライメントマーク部(I)」といい、デバイスパターンが形成される領域を「デバイスパターン部(II)」とよび、区別するものとする。
【0035】
図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1線断面図を示している。この図に示すように、デバイスパターン部(II)における透明基板1の表面には遮光膜4によって第1のデバイスパターンが形成されている。図1(c)は、図1(a)におけるY1−Y1線断面図を示している。この図に示すように、アライメントマーク部(I)における透明基板1の表面には遮光膜が形成されない透光部と遮光膜による遮光部とによってアライメントマーク2が形成されている。
【0036】
図2(a)は、図1(a)の状態に引き続き、第2層目となる半透過膜5を形成した直後の状態のフォトマスクの基板表面を示している。図4(a)に示すような、アライメントマーク部(I)を遮蔽するための治具20を用いて成膜することにより、アライメントマーク部(I)を除くデバイスパターン部(II)全体に半透過膜が形成される。この第2層目となる半透過膜は、遮光膜よりも相対的に反射率が極めて低く、かつ膜厚等によって規定される所定の透過率を備えている。
【0037】
半透過膜の透過率とその膜厚との関係は、単位膜厚Lの時の透過率をT、透過率Tの時の濃度をD、膜厚Lの時の濃度をDとして、次のように規定される。
【0038】
=−log T ・・・・・(1)
D =(L/L)・D ・・・・・(2)
【0039】
この式に従って、膜厚を制御することによって階調数をさらに増やすことができる。
【0040】
なお、半透過膜5を形成する際にアライメントマーク部(I)を遮蔽するための治具20は、積層された半透過膜が静電破壊されることを防ぐために、治具の内側は適度な丸みを持たせた方がよい。
【0041】
図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2線断面図を示している。この図に示すように、デバイスパターン部(II)における透明基板1の表面には、半透過膜によって第2のデバイスパターン6が形成されている。
【0042】
また、図2(c)は、図2(a)におけるY2−Y2線断面図を示している。この図に示すように、アライメントマーク部(I)における透明基板1の表面には、半透過膜は形成されておらず、遮光膜が形成されない透光部と遮光膜による遮光部とによってアライメントマーク5が形成されている。
【0043】
次に、第2層目の半透過膜の上にレジストを塗布してからレーザー描画装置を用いて第2層目のパターンを形成する。アライメントエラー(第1層目と第2層目のパターンのずれ)を小さくするため、レーザー描画装置で第2層目のパターンを形成する際にアライメントマーク2の位置を正確に認識する必要がある。この点、図2(a)の状態でアライメントマーク2には半透過膜が積層されておらず、反射率の高い遮光膜が最表面に露出している。従って、その後アライメントの時点でレジストが塗布されていたとしても、アライメント信号を十分に検出することができる。これによって、2層目のパターンの配置情報についてのパラメータが決定される。レーザー描画装置はこれらの情報を元に第2層目のパターンの描画開始位置、伸縮、回転等を補正して最適データに変換して描画する。
【0044】
図4(b)は、最適データに変換された第2層目のパターンデータ21を示している。このパターンは図1(a)に示される第1層目のパターンデータと同一座標系に存在するため、極めて高精度にパターンを重ね合わせることが可能となる。また、第2層目のパターンデータ21にはアライメントマークが不要である。
【0045】
第2層目のパターンデータ21は最終的な仕上がりが透光部7を所望するパターンを形成する。よって、第2層目のパターン21を第1層目のパターンに重ね合わせてパターン形成を行うと、最終的には遮光部と透光部と半透過部との三階調の中間調フォトマスク10が完成する。
【0046】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る完成した三階調の中間調フォトマスク10の平面図、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3線断面図を示している。また、図3(c)は、図3(a)におけるY3−Y3線断面図を示している。
【0047】
なお、これらの図から明らかなように、第2のエッチング工程は第2層目の半透過膜と第1層目の遮光膜とを一括してエッチング(通常はウエットエッチングであるが特に限定されない。)するため、透光部7は、半透過膜によって形成された第2のデバイスパターン6の一部や、遮光膜と半透過膜とが積層された部分の両方に形成される。
【0048】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において説明した中間調フォトマスクは遮光部と透光部と半透過部との三階調の中間調フォトマスクであったが、その製造方法を少し変形させると、四階調の中間調フォトマスクを製造することができる。
【0049】
図5(a)乃至図5(c)は、第2の実施形態に係る中間調フォトマスクを説明するための図である。図5(a)は、第2の実施形態に係る四階調の中間調フォトマスク30の平面図、図5(b)は、図5(a)におけるX4−X4線断面図を示している。また、図5(c)は、図5(a)におけるY4−Y4線断面図を示している。以下、その製造方法について説明する。
【0050】
はじめに、第1の実施形態と同様に、例えば図1(a)に示すような第1層目のパターンを形成する。次に、第2層目となる半透膜を形成する際に、図6(a)に示すようなアライメントマーク部(I)及び基板表面の上半分を遮蔽する治具40aを用いて、部分的に半透過膜を積層する。
【0051】
次いで、図6(b)に示すようなアライメントマーク部(I)及び基板表面の下半分を遮蔽する治具40bを用いて、先に積層させた半透過膜とは膜厚が異なるような半透過膜を積層させる。後は、第1の実施形態で説明した例に倣って第2層目のパターン21を形成すれば、1枚のフォトマスク上に半透過部の透過率が異なる2種類の透過率を持つ中間調フォトマスク30が完成する。
【0052】
この中間調フォトマスク30は、遮光部と透光部と半透過部との三階調の中間調フォトマスクにおいて、半透過部が2つの異なる透過率を持つので、結局、四階調のフォトマスクが得られたことになる。この考え方を応用すれば、さらに、5階調以上の多階調フォトマスクも理論上は実現可能である。特に、大型フォトマスクは実現可能性が高い。
【0053】
なお、第1層目の反射防止膜は一例としてクロム膜、第2層目の半透過膜は一例として酸化クロム膜が挙げられるが、反射率や透過率の相対関係が本発明の技術的思想に含まれる限り、特に限定されるものではない。
【0054】
(アライメントマークについて)
第1及び第2の実施形態に係る中間調フォトマスクはいずれもアライメントマークの上に低反射率膜が存在しないため、アライメント信号の強度が極めて大きいという特徴を備えている。以下、図7を参照して実際のアライメントマークとアライメント信号の一例を説明する。
【0055】
図7(a)は、本発明の第1及び第2の実施形態における中間調フォトマスクの製造方法に適用可能なアライメントマークの一例を示している。このアライメントマーク50は透明基板上の任意のエリアに極めて微細な遮光膜によって、4本の遮光膜の線が1点で交差するように描かれている。全ての線が交差する中心位置の座標Oを次のようにして求める。
【0056】
レーザー光を図7(a)に示す矢印のように走査して遮光膜との交点51a、51b、51cにおける反射光の強度を測定すると3本のピークが現れる。反射光の強度はオシロスコープなどの測定器で検出する。図7(b)は、図7(a)のアライメントマークにレーザー光を照射した際のアライメント信号52を表すオシロスコープの信号波形を模式的に表したものである。レーザー光の操作位置を点線で示す矢印のように移動させ、上下のピーク(図7(b)では3本のピークの両端に相当)の一辺を検出し、X方向の中心座標を算出する。
【0057】
実際にはレーザーの走査方向とマークのY方向が厳密に平行ではない場合もあるので、その場合中心座標の算出方法はやや複雑になるが、いずれにせよ、本発明に係る製造方法によって得られる中間調フォトマスクはアライメントマークの最表面が高反射率の遮光膜で構成されるため、アライメント信号を正確に検出することができる。ちなみに、図7(b)において破線で示した波形53は、遮光膜の上に半透過膜が残っている場合の波形の例であり、3本のピークが鮮明に検出できないことを表している。また、半透過膜が残っていない場合も、出発材料であるマスクブランクスの表面に低反射率膜(反射防止膜)が残っている場合も、同様にピークを検出することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、第1層目と第2層目のパターンのずれが極めて小さい高精度な中間調フォトマスクを提供するものであり、フォトリソグラフィー工程の工程数を減らすことができる技術として、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0059】
1 透明基板
2(2a乃至2d) アライメントマーク
3 デバイスパターン
4 遮光膜
5 半透過膜
6 第2のデバイスパターン
7 透光部
10 三階調の中間調フォトマスク
20 アライメントマーク部(I)を遮蔽するための治具
21 第2層目のパターンデータ
30 四階調の中間調フォトマスク
40a アライメントマーク部(I)及び基板表面の上半分を遮蔽する治具
40b アライメントマーク部(I)及び基板表面の下半分を遮蔽する治具
51a〜51c 遮光膜との交点
52 アライメント信号
I アライメントマーク部
II デバイスパターン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上のデバイスパターン部に、相対的に反射率が高く透過率が極めて低い遮光膜の上に相対的に反射率が極めて低く透過率が高い半透過膜が積層されている遮光部と、
前記半透過膜が前記透明基板上に直接堆積された半透過部と、
前記遮光部又は前記半透過部の一部が除去され前記透明基板が露出した透光部と
を備える一方、
前記透明基板上の非デバイスパターン部に設けられたアライメントマーク部に、前記遮光膜及び半透過膜がいずれも存在せず前記透明基板が露出した透光部と表面に反射防止膜が形成されていない前記遮光膜が最表面に露出した遮光部とによってアライメントマークが形成されていることを特徴とする中間調フォトマスク。
【請求項2】
前記半透過部は同一材料で構成され部分的に膜厚の異なる2以上の半透過膜で構成されることを特徴とする請求項1記載の中間調フォトマスク。
【請求項3】
表面に低反射率膜が形成されていないマスクブランクスを出発材料として製造されたマークパターン部とデバイスパターン部とを備える中間調フォトマスクであって、デバイスパターン部の表面に半透過膜が形成され、この半透過膜が反射防止機能を備えた低反射率膜としても機能することを特徴とする請求項1記載の中間調フォトマスク。
【請求項4】
前記アライメントマークの図形パターンは、複数の直線が1点で交差する中心座標Oを含む形状であることを特徴とする請求項1記載の中間調フォトマスク。
【請求項5】
請求項1記載の中間調フォトマスク製造用のマスクブランクスであって、平坦な透明基板の表面全体に遮光膜が形成され、前記遮光膜が最表面に露出したマスクブランクス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−186506(P2011−186506A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147602(P2011−147602)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2006−297284(P2006−297284)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(302003244)株式会社エスケーエレクトロニクス (31)
【Fターム(参考)】