説明

主にリーン運転する内燃機関を備えた自動車中の熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒をオンボード反応させる方法

窒素酸化物吸蔵触媒は、所謂リーンバーンエンジンのリーン排ガス中に含まれている窒素酸化物を除去するために使用される。吸蔵触媒は、高い温度によって熱的に老化される。この老化は、触媒の触媒活性の貴金属成分の焼結および吸蔵成分と担持材料との化合物の形成に基づく。本発明によれば、吸蔵材料の化合物形成は、吸蔵材料を二酸化炭素、場合によっては水蒸気および場合によっては窒素酸化物含有ガス混合物で処理することによって、200℃〜950℃、有利に300℃〜700℃の温度で十分に再び逆転させることができる。反応は、中和放出により直接に走行運転中の自動車で適当な排ガス条件を調節しかつ空気/燃料比を調節することによって行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転中に主にリーン運転する内燃機関を備えた自動車において、酸化セリウム含有担持材料上に窒素酸化物を吸蔵する化合物を有する、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させる方法に関する。
【0002】
窒素酸化物吸蔵触媒は、所謂リーンバーンエンジンのリーン排ガス中に含まれている窒素酸化物を除去するために使用される。この場合、清浄化作用は、エンジンのリーン運転段階で吸蔵触媒の吸蔵材料の窒素酸化物が主に硝酸塩の形で吸蔵され、エンジンの次のリッチ運転段階で先に形成された硝酸塩が分解され、再び遊離される窒素酸化物が吸蔵触媒上の還元排ガス分と反応して窒素、二酸化炭素および水に変わることに基づくものである。本発明の範囲内では、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンがリーンバーンエンジンに含まれ、このリーンバーンエンジンは、主要な運転時間中、リーンな空気/燃料混合物で運転され、中和放出の運転時間中には化学量論的な空気/燃料混合物で運転されることができる。リーン運転段階中に前記エンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物は、大部分が一酸化窒素からなる。
【0003】
窒素酸化物吸蔵触媒の作動様式は、SAEの刊行物SAE950809中に詳細に記載されている。それによれば、窒素酸化物吸蔵触媒は、多くの場合に担体上に被覆の形で施こされている触媒材料からなる。該触媒材料は、窒素酸化物吸蔵材料と触媒活性成分とを含有する。窒素酸化物吸蔵材料は再び、担持材料上に高分散した形で堆積している本来の窒素酸化物吸蔵成分からなる。
【0004】
吸蔵成分として、主としてアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属の塩基性酸化物、しかし殊に酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムが使用され、これらが二酸化窒素と反応して相応する硝酸塩に変わる。この物質が空気に接して主要部分が炭酸塩および水酸化物の形で存在することは、公知である。この化合物は、同様に窒素酸化物を吸蔵するのに適している。従って、本発明の範囲内で塩基性吸蔵酸化物を述べる場合には、相応する炭酸塩および水酸化物も含まれる。
【0005】
吸蔵成分に適した担持材料は、吸蔵成分の高分散性の分離を可能にする、10m2/gを上廻る高い表面積を有する温度安定性の金属酸化物である。本発明は、殊に酸化セリウム含有担持材料を有する吸蔵材料に関連する。これには、ドープされた酸化セリウムおよび特にセリウムとジルコニウムとの混合酸化物が属する。
【0006】
触媒活性成分として、白金族の貴金属が使用され、該金属は、一般に、吸蔵成分とは別個に別の担持材料上に堆積される。白金族金属のための担持材料としては、主に、同様にドーピング成分を含有していてよい、活性の高表面積の酸化アルミニウムが使用される。
【0007】
触媒活性成分の課題は、リーンな排ガス中で、一酸化炭素と炭化水素とを反応させて二酸化炭素と水とに変えることである。更に、この課題は、塩基性吸蔵材料と反応させて硝酸塩に変えることができるようにするために、排ガス中の一酸化窒素の含量を二酸化窒素に酸化することである。吸蔵材料中への窒素酸化物の堆積が増加するにつれて、この材料の吸蔵能力は、減少する。従って、ときどき吸蔵材料の再生を行なわなければならない。このために、エンジンは、リッチな空気/燃料混合物で短時間、運転される。リッチな排ガス中の還元性条件下で、形成された硝酸塩は窒素酸化物NOxへと分解され、かつ還元剤としての一酸化炭素、水素および炭化水素の使用下で窒素へと還元され、水および二酸化炭素が形成される。
【0008】
吸蔵触媒は、運転中に一時的に高い排ガス温度で負荷され、このことは、触媒の熱的損傷をまねきうる。2つの本質的な老化効果を区別することができる:
触媒活性貴金属成分は、吸蔵触媒の酸化物材料上に約2〜15nmの平均粒度を有する高分散形で施こされている。貴金属粒子は、微細な分布に基づき排ガス成分との相互作用のための高い表面積を有する。特にリーンバーンエンジンのリーンな排ガスにおいて、排ガス温度が上昇するにつれて、貴金属クリスタリットの不可逆的な拡大が観察され、この拡大は、触媒活性の不可逆的な減少に付随して現れる。
【0009】
吸蔵成分は、高い温度で同様に焼結に影響され、それによって該成分の触媒活性表面積は、減少する。更に、担持材料上に析出される吸蔵成分は、高い温度で担持材料と、窒素酸化物のための僅かな吸蔵能を有する化合物を生じることが観察された(SAE技術刊行物970746および欧州特許出願公開第0982066号明細書A1参照)。例えば、酸化バリウムを吸蔵成分としての酸化セリウム含有担持材料上に使用する場合には、バリウムセレート(BaCeO3)が形成する危険が存在する。
【0010】
貴金属粒子の焼結は、不可逆的なプロセスである。特殊な処理による元来の大きさのクリスタリットの回復は、不可能であると思われる。これに対して、一定の前提条件下で吸蔵成分と担持材料との化合物の形成は、適当な処理によって再び取り消される可能性があり、それによって、窒素酸化物吸蔵触媒の触媒活性は、熱的損傷後に少なくとも部分的に回復されることができる。窒素酸化物吸蔵触媒は、自動車中に堅固に取り付けられた排ガス浄化装置の典型的な構成成分であるので、触媒反応方法の実際の使用可能性に対して、反応に必要とされる条件を走行運転中に調節し、中和放出の状態にしうることは、本質的に重要なことである。
【0011】
従って、本発明の課題は、吸蔵能が高い温度のために吸蔵成分と担持材料との化合物形成によって減少する窒素酸化物吸蔵触媒を、主にリーン運転する内燃機関を備えた自動車の通常の走行運転中に反応させる方法を記載することである。この場合には、反応段階中にも有効な放出限界値は、十分に維持されることが保証されていなければならない。
【0012】
この課題は、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒をオンボード反応させる方法によって解決され、この場合この吸蔵触媒は、塩基性のストロンチウム化合物またはバリウム化合物、または酸化セリウム含有担持材料上のストロンチウム化合物およびバリウム化合物を有し、およびさらに熱的に老化された、ストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を担持材料と一緒に含有する。この方法は、ストロンチウムおよび/またはバリウムと担持材料との化合物を、主にリーン運転する内燃機関を備えた自動車の通常の走行運転中に二酸化炭素、場合によっては水および場合によっては窒素酸化物含有ガス混合物での処理によって分解することによって特徴付けられる。このガス混合物は、自動車のエンジンによって形成され、この場合分解プロセス中のガス混合物の空気数は、λ=1の値を越えない。場合によっては、エンジンによって形成されたガス混合物の空気数の後調整は、直接に触媒の排ガスストランド中への還元剤の供給によって行なうことができる。
【0013】
本発明は、第1にバリウムセレートの分解反応を二酸化炭素含有雰囲気中で利用する。
【0014】
CASAPU他は、Appl. Catal. B 63 (2005) 232-242中に、X線図試験により、Pt/BaCeO3-BaO/CeO2中のPt/CeO3がヘリウム中のCO220体積%からなる雰囲気中で950℃への加熱後に分解してバリウムカーボネートBaCO3と二酸化セリウムとを形成することを記載している。更に、上記刊行物は、熱分析試験により、400℃〜980℃の温度範囲内で、Pt/BaCeO3-BaO/CeO2試料をヘリウム中のCO220体積%からなる雰囲気中で加熱することにより該試料の質量変化が起こり、この観察された質量変化がバリウムセレートの分解および酸化バリウムと二酸化炭素との反応に帰因することを示している。同じ刊行物の別の個所には、バリウムセレートは、300℃でヘリウム中の水約3%の雰囲気中で二酸化窒素不含の雰囲気で、二酸化窒素の存在下の場合よりも徐々に分解するが、しかし、この場合には、二酸化窒素なしでも5時間の反応時間後に著量のバリウムセレートが分解することが記載されている。
【0015】
即ち、バリウムセレートは、二酸化炭素の作用下に400℃を上廻る温度で分解されうる。この場合には、方程式(1)による2工程の反応機構を基礎とすることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
ガス混合物が付加的に水蒸気を含有する場合には、バリウムセレートの分解は、既に300℃で開始し、この場合には、同様に2工程の反応機構(2)から出発することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
それに応じて、反応に使用される排ガスが二酸化炭素の高い含量と共に水の著しい含量も有することは、有利であることが判明した。同様に、二酸化窒素の含量も含まれていてよい。好ましくは、反応に使用される排ガスは、二酸化炭素5〜20体積%と共に水蒸気5〜15体積%および二酸化窒素0〜5体積%を含有する。
【0020】
解決すべき課題は、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を通常の走行運転中に反応させることにあるので、触媒の反応中でも自動車の中和放出は、保証されていなければならない。これは、自動車によって放出される排ガス成分の濃度が窒素酸化物吸蔵触媒の反応中に法的に定められた放出限界値を越えてはならないことを意味する。
【0021】
ところで、この問題の本発明による解決は、窒素酸化物吸蔵触媒の反応のためにエンジンの駆動時に空気/燃料比比を調節し、したがって反応に使用される排ガスがλ=1の空気数を越えないことにある。好ましくは、空気数は、λ=1に調節され、この場合には、本発明の範囲内でλ=1は、僅かに高い空気数と僅かに低い空気数との振動交換が行なわれ、したがって平均でλ=1の空気数が維持されることを意味する。このような振動が行なわれる空気数範囲は、三方触媒(Dreiwegekatalysator)の運転のために常用されているように、λ=0.9〜λ=1.1の間、有利にλ=0.95〜λ=1.05の間、殊に有利にλ=0.98〜λ=1.02の間にある。
【0022】
エンジン運転のこのような選択は、形成されかつ反応に必要とされる排ガス混合物が窒素酸化物吸蔵触媒上に導かれる場合に、この排ガス混合物が反応のために十分に高い量の二酸化炭素および水を含有することを保証する。これは、殊に自動車中に使用された排ガス浄化装置が2個の排ガス浄化コンバーター、即ちエンジンに隣接した触媒コンバーターおよび床板コンバーターを含む場合である。この場合、双方のコンバーターは、窒素酸化物吸蔵触媒を含んでいてよい。選択可能な方法の場合には、エンジンに隣接したコンバーターは、三方触媒(Dreiwegekatalysator)またはディーゼル酸化触媒を含むことができ、床板コンバーターは、窒素酸化物吸蔵触媒を有する。記載されたように触媒活性貴金属成分を含有し、この触媒活性貴金属成分の課題が一酸化炭素および炭化水素を排ガス中に含有されている酸素により二酸化炭素および水へ反応させることである、エンジンに隣接した窒素酸化物吸蔵触媒ならびに三方触媒(Dreiwegekatalysator)またはディーゼル酸化触媒は、排ガス中の二酸化炭素濃度および水濃度の上昇を保証する。それによって、窒素酸化物吸蔵触媒の反応に好適なガス混合物が提供され、同時に中和放出が保証される。
【0023】
噴射燃焼法を有する新規のリーン運転する内燃機関は、既に欧州の走行サイクルとは関連のない、120〜150km/hの範囲内の自動車速度を有する運転時点でも化学量論的過剰量の空気/燃料比比および空気数λ>1を有する一定の条件下で運転されてよい。よりいっそう高い燃料節約を達成する目的で、このような運転形式も原則的に好ましい。しかし、窒素酸化物吸蔵触媒が、熱的老化によって既に吸蔵能を失った場合には、化学量論的不足量の空気/燃料比比(リッチ運転)への頻繁なスイッチの切り換えによって窒素酸化物の破損は、回避されなければならず、この場合燃料使用の利点は、λ=1の空気数を有する化学量論的空気/燃料比運転に比較して失われる。従って、化学量論的空気/燃料比比を有する運転時点は、窒素酸化物吸蔵触媒の反応に利用されることができるが、この場合には、反応されない熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の他の運転と比較して燃料のよりいっそう多くの使用を生じることはない。
【0024】
窒素酸化物吸蔵触媒の本発明による反応には、少なくとも数分間の時間が必要とされるので、触媒の反応のために、自動車が少なくとも数分間100km/hを上廻る速度で運転されるような走行運転の段階を選択することは、好ましい。このような運転時点で、本発明によれば、化学量論的空気/燃料比比に調節され、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒は、反応される。この条件下で200℃〜950℃の排ガス温度が形成され、例えば、この排ガス温度は、二酸化炭素含有雰囲気中でのバリウムセレートの利用された分解反応に好適である。好ましいのは、300℃〜700℃、特に有利に400℃〜650℃の範囲内の温度である。
【0025】
窒素酸化物吸蔵触媒は、しばしばλ=0.8〜λ=1.1の範囲内で排ガスの空気数が振動交換する場合に脱硫される。このような脱硫法には、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の反応が接続されてもよい。しかし、これは、不要である。脱硫は、多くの場合に600℃を上廻る触媒温度で導入される。これとは異なり、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の反応は、既に200℃からの温度で可能であるかまたは400℃〜650℃の範囲内で特に有利である。即ち、脱硫に依存しないよりいっそう冷たい運転時点は、明らかに好ましいことが判明し、とりわけよりいっそう低い温度で、例えば貴金属成分の別の熱的老化効果は、回避される。
【0026】
記載された運転条件で、窒素酸化物吸蔵触媒を床板位置のコンバーター中およびエンジンに隣接したコンバーター中に含むか、または選択可能な方法の場合に窒素酸化物吸蔵触媒を床板位置のコンバーター中に有しかつ三方触媒をエンジンに隣接したコンバーター中に有する排ガス浄化装置を使用する場合には、必要とされる中和放出は、いつでも保証されることができる。2つの実施態様は、化学量論的空気/燃料比混合物でのエンジン運転時点で一酸化炭素、炭化水素および窒素酸化物のための十分な変換が存在することを保証し、この場合には、反応すべき窒素酸化物吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵機能は、利用される必要がない。
【0027】
本発明のもう1つの実施態様においては、塩基性のストロンチウム化合物またはバリウム化合物、または酸化セリウム含有担持材料上のストロンチウム化合物およびバリウム化合物を有し、およびさらに熱的老化によって形成された、ストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を担持材料と一緒に含有する窒素酸化物吸蔵触媒の反応は、適当な排ガス温度が保証されている場合には、空気数λ<1を有するガス混合物とも行なうことができる。また、このようなガス混合物は、一般に十分量の二酸化炭素および場合によっては水を含有する。更に、中和放出を確保するために、場合によっては付加的な手段が必要とされる。それというのも、いずれにせよ、高すぎる残留炭化水素放出量の危険が存在するからである。このために、一連の排ガス装置の変更、例えば場合によっては窒素酸化物吸蔵触媒と後接続された酸化触媒との間の第2の空気供給管とを組み合わせた、反応すべき窒素酸化物吸蔵触媒の後方の酸化触媒の配置を考えることができる。このような続行される排ガス装置の詳細な形状は、それぞれの使用に依存し、この技術的教示の対象ではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】熱的に老化された状態でのエンジンに隣接した触媒("NOxウィンドウ")の前方の温度(黒四角)、床板触媒(UB)中の375℃でλ=1で反応後の温度(黒三角)および床板触媒(UB)中の650℃でλ=1で反応後の温度(○)の関数としての全体系の測定されたリーン走行時間を示す略図。
【図2】熱的に老化された状態でのエンジンに隣接した触媒の前方の温度(黒四角)、床板触媒(UB)中の375℃でλ=1で反応後の温度(黒三角)および床板触媒(UB)中の650℃でλ=1で反応後の温度(○)の関数としての全体系の観察されたHC変換率を示す略図。
【図3】それぞれの排ガスストランドでエンジンに隣接した排ガス浄化コンバーターおよび自動車の床板範囲内に配置された第2の排ガス浄化コンバーターを含む、二叉排ガス浄化装置(zweiflutige Abgasreinigungsanlage)を備えた内燃機関を示す略図。
【0029】
次に、本発明を若干の実施例および図につき詳説する。
【実施例】
【0030】
例:
熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の反応を、リーンバーンエンジン(6気筒エンジン、3.5リットルの排気量、ガソリン直接噴射)を用いるエンジン試験状態で試験した。そこで、二叉排ガス浄化装置を使用した。
【0031】
この排ガス浄化装置の構造は、図3に略示されている。エンジン(1)の二叉排ガス浄化装置のそれぞれのストランドは、2個のコンバーターケーシングを装備しており、この場合一方は、エンジンに隣接した位置に存在し(2)、他方は、自動車の床板位置に等しい位置に配置された(3)。参照符号(4)および(5)は、それぞれ1つの排ガスストランドを示す。参照符号(6)は、分析すべき排ガスのための減少位置を略示し、同時に排ガス分析器を表わす。参照符号(7)および(8)は、消音器を示す。
【0032】
二叉排ガス浄化装置の排ガスストランド(4)中のコンバーターは、直列の触媒が装備されていた。この排ガスストランドの排ガスは、試験されなかった。使用された触媒は、単に実質の排ガス逆圧比の維持に使用された。
【0033】
排ガスストランド(5)中で、エンジンに隣接したコンバーター(2)中ならびに床板の位置に等しいコンバーター(3)中で欧州特許出願公開第1317953号明細書A1に記載の窒素酸化物吸蔵触媒を使用した。この窒素酸化物吸蔵触媒は、記載された欧州特許出願公開明細書中の請求項10の記載に相応して吸蔵材料を含み、この吸蔵材料は、酸化セリウムを基礎とする高表面積の担持材料上に施こされた、吸蔵成分としての塩基性バリウム化合物を含有する。この排ガス浄化装置の前記ストランド中で処理された排ガスの組成は、適当な排ガス分析器(6)(AMA 2000、Pierburg社)で試験された。
【0034】
排ガスストランド(5)のエンジンに隣接したコンバーター(2)中で、0.82 lの触媒体積%を有する触媒を使用した。セル数は、1cm2当たり93個のセルであった。床板範囲(3)には、2 lの全体積を有する2個の触媒が使用されており、この場合それぞれの触媒は、1 lの体積を有していた。この触媒は、1cm2当たり62個のセルを有していた。
【0035】
この試験で使用された全ての触媒の触媒被覆は、欧州特許出願公開第1317953号明細書A1に記載の触媒配合物に相当し、この場合この配合物の詳細に関しては、この欧州特許出願公開明細書中に指摘されている。この触媒の吸蔵材料は、セリウム/ジルコニウム混合酸化物(酸化セリウム90質量%および酸化ジルコニウム10質量%)上の酸化バリウムである。
【0036】
この触媒は、コンバーターケーシング中への使用前に、炉内で950℃で12時間、か焼され、意図的に触媒の熱的老化を惹起した。
【0037】
次に、熱的に老化された触媒系を記載された構成でエンジンの試験状態について特性決定した。このために、このエンジンをリーン運転における種々の負荷点で運転し、したがってエンジンに隣接した触媒の前方で200〜470℃の温度を生じた。排ガスストランド(5)中で床板触媒(3)の後方に配置されたNOxセンサーにより、窒素酸化物の放出を測定した。床板触媒の後方で臨界的な窒素酸化物濃度閾値を達成した場合には、リーン運転段階は、中断され、リッチな運転条件に切り換えることによって窒素酸化物の再生が開始された。再生段階の終結は、同様にNOxセンサーが再生手段の中断を示した場合に、このNOxセンサーにより検出された。この方法で算出されたリーンな走行時間は、窒素酸化物吸蔵挙動を特定決定するために、温度に依存してエンジンに隣接した触媒の前方でプロットされた("NOxウィンドウ";図1)。
【0038】
粗放出中および床板触媒の後方で測定された炭化水素放出量から、次の式により排ガス系の炭化水素変換率を計算した:
【数1】

【0039】
触媒系を熱的に老化された状態で特性決定した後、最初に"NOxウィンドウ"中で選択された最も熱い運転時点で化学量論的空気/燃料比に調節し、排ガスの返送を1時間停止させることにより、反応を行なった。この結果、床板触媒中の温度は、375℃を生じた。反応時間の終結後、排ガスの返送のスイッチを再びオンにし、エンジンをリーン運転段階に"再び調節し"、特性決定を既に記載されたルーチンに相応して繰り返した。
【0040】
バリウムセレートの分解は、二酸化炭素の影響下に有利によりいっそう高い温度で行なわれるので、特性決定にそのまま続けてλ=1での反応後およびスイッチがオフされた排ガスの返送後にさらに反応試験を実施した。この場合には、化学量論的空気/燃料比を有するエンジン運転時点を選択し、その際、床板触媒は、650℃に加熱された。記載された条件下で1時間の運転時間後、再びリーン運転段階に切り換え、既に記載された特性決定法を3回実施した。
【0041】
この特性決定の結果は、図1および図2に図示されている。
【0042】
図1は、熱的に老化された状態でのエンジンに隣接した触媒("NOxウィンドウ")の前方の温度(黒四角)、床板触媒(UB)中の375℃でλ=1で反応後の温度(黒三角)および床板触媒(UB)中の650℃でλ=1で反応後の温度(○)の関数としての全体系の測定されたリーン走行時間を示す。
【0043】
既に375℃での反応(UB)は、全温度範囲に亘ってリーン運転時間の明らかな延長を生じる。エンジンに隣接した触媒の前方での370〜380℃での触媒系に最適な運転時点において、59秒から130秒への、即ち120%のリーンな走行時間の改善が達成された。
【0044】
650℃での反応で、375℃での第1の反応と比較してなお僅かな改善を達成することができた。これは、第1の反応後に既に殆んど最適な効果を達成したことに帰因すると思われる。
【0045】
図2は、全体系の観察された炭化水素の変換率をエンジンに隣接した触媒の前方での温度の関数として示す。この場合、(黒四角)で示された曲線は、全体系の性能を熱的に老化された状態で示す。床板触媒(UB)中で375℃およびλ=1での反応後、(黒三角)で示された反応曲線が得られる。(○)は、床板触媒(UB)中で650℃およびλ=1での反応後の全体系の炭化水素の変換率を表わす。曲線の比較は、反応で炭化水素の変換の簡単な改善が200℃〜400℃の温度範囲内で得られることを示す。しかし、なかんずく、このデーターは、本発明による反応法が貴金属中心の損傷を生じないことを証明する。このことは、炭化水素と一酸化炭素との酸化反応にとって決定的に重要なことである。
【0046】
この実験データーは、窒素酸化物吸蔵材料としての窒素酸化物吸蔵触媒が酸化セリウムを基礎とする担持材料上の塩基性バリウム化合物を含有する場合に、適当な温度範囲内でλ=1での本発明による運転形式が熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の活性の部分的な再生を生じることを証明する。
【符号の説明】
【0047】
1 エンジン、 2 コンバーター、 3 コンバーター、 4、5 排ガスストランド、 6 排ガス分析器、 7、8 消音器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性のストロンチウム化合物またはバリウム化合物、または酸化セリウム含有担持材料上のストロンチウム化合物およびバリウム化合物を有し、およびさらに熱的老化によって形成された、ストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を担持材料と一緒に含有し、およびリーンバーンエンジンを備えた自動車の排ガスを清浄化するために使用される、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒をオンボード反応させる方法において、ストロンチウムおよび/またはバリウムと担持材料との化合物を、通常の走行運転中に二酸化炭素、場合によっては水蒸気および場合によっては自動車のエンジンによって発生される窒素酸化物含有ガス混合物での処理によって分解し、この場合このガス混合物の酸素含量は、分解プロセス中に空気数λ=1を越えないことを特徴とする、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒をオンボード反応させる方法。
【請求項2】
窒素酸化物吸蔵触媒は、リーンバーンエンジンを備えた自動車に対する排ガス浄化装置の構成成分であり、触媒の反応に必要とされるガス混合物の形成は、200℃〜950℃の排ガス温度を有するリーンバーンエンジンの運転状態で行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒の反応に使用される、リーンバーンエンジンの運転状態で化学量論的な空気/燃料比に調節され、したがって反応に利用される排ガスは、λ=1の空気数を有し、反応時間は、少なくとも数分間である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
触媒の反応に使用される、リーンバーンエンジンの運転状態で化学量論的不足量の空気/燃料比に調節され、したがって反応に利用される排ガスは、λ<1の空気数を有し、反応時間は、少なくとも数分間である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
触媒の反応に使用される排ガスは、二酸化炭素5〜20%、水蒸気5〜15体積%、二酸化窒素0〜5体積%および残分本質的に窒素を含有する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
排ガス浄化装置は、少なくとも1個の触媒コンバーターを含む、請求項3または4記載の方法。
【請求項7】
排ガス浄化装置は、エンジンに隣接した少なくとも1個の触媒コンバーターおよび1個の床板コンバーターを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
双方のコンバーターは、少なくとも1個の窒素酸化物吸蔵触媒を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エンジンに隣接したコンバーターは、三方触媒を含み、床板コンバーターは、窒素酸化物吸蔵触媒を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
エンジンに隣接したコンバーターは、ディーゼル酸化触媒を含み、床板コンバーターは、窒素酸化物吸蔵触媒を含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
床板コンバーターの前方の温度は、300℃〜850℃である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
エンジンによって形成されたガス混合物の空気数の後調整のために、排ガスストランド中への還元剤の直接の供給は、排ガス装置中に含まれる第1の窒素酸化物吸蔵触媒の前方で行なわれる、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−541039(P2009−541039A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516929(P2009−516929)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004961
【国際公開番号】WO2007/147485
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】