説明

主軸駆動用モータの制御装置

【課題】主軸にかかる負荷が大きい場合はモータと主軸との間にスリップが発生し、主軸位置検出結果をモータ速度のフィードバック制御に利用するとモータ速度の制御が不安定になるという問題が生じていた。
【解決手段】本発明の制御装置は、位置指令値に従って速度指令値を出力する位置制御部と、前記速度指令値に従って電流指令値を出力する速度制御部と、モータに流れる電流を検出する電流検出部と、電流に基づいてモータの第1速度を推定する第1速度推定部と、センサにより検出される主軸位置に基づいて算出される主軸速度及び変速比に基づいてモータの第2速度を推定する第2速度推定部と、モータ負荷の値を算出する負荷演算部と、を有し、速度制御部は、モータ負荷の値が所定の値以上の場合は第1速度を用い、所定の値未満の場合は第2速度を用いて電流指令値を算出する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸駆動用モータの制御装置に関し、特に所定の変速比を有する速度調整機構を介して主軸を駆動するモータの速度を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野においては、工作機械の主軸を駆動するモータに速度センサを有していない、いわゆる速度センサレスの誘導モータ等のモータが用いられている。このモータの制御においては、モータに流れる電流(実電流)に基づいて、ソフトウエアを用いてモータの速度を計算することにより推定している。モータを制御する制御装置は、推定した速度に基づいて、モータの速度の制御を行っている(例えば、特許文献1)。一般的には、そのようなモータは、速度制御だけが必要とされる用途に利用されている。
【0003】
上記のようにモータに流れる実電流から推定した速度に基づいてモータの制御を行う従来の制御装置の構成を図7に示す。従来の制御装置100は、第1加算器2と、速度制御部3と、電流制御部4と、パワー増幅器5と、電流検出部6と、速度推定部70とを備えており、工作機械20を制御する。
【0004】
第1加算器2は、速度指令値と速度推定部70が出力した推定速度とを加算して出力し、この出力結果に基づいて速度制御部3は、電流指令値を出力する。電流制御部4は、電流指令値に基づいてパワー増幅器5を制御し、パワー増幅器5は、工作機械20のモータ21を駆動するための電流を供給する配線22に電流を出力する。パワー増幅器5が出力した電流は、電流検出部6によって検出され、電流制御部4にフィードバックされるとともに、速度推定部70に出力される。速度推定部70は、電流検出部6が検出した電流に基づいてモータの推定速度を算出し、第1加算器2に出力する。
【0005】
工作機械20は、センサレス誘導モータ等のモータ21と、モータ回転軸23と、速度調整機構24と、主軸回転軸27と、主軸25とを備えている。モータ21は、制御部100のパワー増幅器5から配線22を介して供給される電流によりモータ回転軸23を回転させる。モータ回転軸23を回転させる動力は、ベルト等の速度調整機構24を介して主軸回転軸27に伝達され、主軸25が回転する。このように従来の制御装置は、モータの速度を供給する電流から推定しているので、モータに速度検出用のセンサを用いる必要がなく、センサ設置のためのコストを抑制している。しかしながら、上記構成により主軸の位置の制御を行う場合には、モータに流れる電流から推定した推定速度を積分して主軸の位置をフィードバック制御することが考えられるが、推定のタイミングが遅れる推定遅れや、速度推定値に推定誤差が含まれる場合があるため、高精度が要求される工作機械の主軸の位置制御等の用途には使用することができなかった。
【0006】
上記のような速度センサレス誘導モータを、工作機械の旋盤の主軸のように、位置制御が必要とされる用途に適用する場合、主軸に付けられた回転位置を検出するためのセンサを利用して、その帰還パルスをモータの速度フィードバックに代用する場合がある。図8に、このような形態を備えた従来の制御装置の構成を示す。従来の制御装置100は、図7に示した従来の制御装置に加えて、第2加算器11と、位置制御部1とを備えている。位置制御部1は、位置指令値に従って、モータ21の速度を制御するための速度指令値を速度制御部3に出力する。
【0007】
工作機械20は、さらに、主軸回転軸27に設置された主軸回転体28を備えており、主軸回転体28は主軸回転軸27の回転に合わせて回転する。主軸回転体28の近傍にはセンサ29が設置されており、主軸回転体28の位置を検出し、制御装置100の第2加算器11に出力することにより、主軸の位置のフィードバック制御を行っている。また、このセンサ29のフィードバックデータをモータの推定速度に加味することにより、単にモータの電流値からモータの速度を推定する場合に比べて、モータの速度を制御するループを安定化させることができる。
【0008】
また、上記のように、主軸回転体の近傍に設けられたセンサからの位置情報を利用する場合には、モータの速度(モータ速度)の制御を行う際のループゲイン(速度ループゲイン)を高く設定することが可能となり、さらには、主軸の位置(主軸位置)の制御を行う際のループゲイン(位置ループゲイン)も高く設定することが可能となる。ここで、ループゲインとは、フィードバック制御における感度であり、ループゲインを高くすると誤差を抑制することができ、ループゲインを低くすると動作を滑らかにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−51594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、主軸回転体の近傍に設けられたセンサの検出結果を利用してモータを制御する場合、モータの動力を主軸に伝達するために設けられた速度調整機構においてスリップが発生する場合がある。主軸にかかる負荷が小さい場合は、ほとんどスリップは発生しないため、センサ29からの主軸速度検出結果を制御装置にフィードバックさせてモータ速度を制御することが可能である。しかしながら、主軸にかかる負荷が大きい場合は、モータと主軸との間にスリップが発生する場合があり、そのような場合に、主軸回転体の近傍に設置したセンサが検出した主軸速度検出結果をモータ速度のフィードバック制御に利用すると、モータ速度の制御が不安定になるという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の制御装置は、所定の変速比を有する速度調整機構を介して主軸を駆動するモータの速度を制御する制御装置であって、位置指令値に従って主軸位置を制御するための速度指令値を出力する位置制御部と、速度指令値に従ってモータ速度を制御するための電流指令値を出力する速度制御部と、電流指令値に従ってモータが駆動された場合にモータに流れる電流を検出する電流検出部と、電流に基づいてモータの第1速度を推定する第1速度推定部と、主軸の近傍に設けられたセンサにより検出される主軸位置に基づいて算出される主軸速度及び変速比に基づいてモータの第2速度を推定する第2速度推定部と、モータ負荷の値を算出する負荷演算部と、を有し、速度制御部は、モータ負荷の値が所定の値以上の場合は、第1速度を用いて電流指令値を算出し、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、第2速度を用いて電流指令値を算出する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の実施態様による制御装置において、速度制御部は、モータ負荷の値が所定の値以上の場合は、第1速度ループゲインを用いて電流指令値を算出し、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、第1速度ループゲインより高い第2速度ループゲインを用いて電流指令値を算出するようにしてもよい。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様による制御装置において、位置指令値に従って主軸位置を制御するための速度指令値を速度制御部に出力する位置制御部をさらに設け、位置制御部は、モータ負荷の値が所定の値以上の場合は、第1位置ループゲインを用いて速度指令値を算出し、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、第1位置ループゲインより高い第2位置ループゲインを用いて速度指令値を算出するようにしてもよい。
【0014】
本発明の制御装置において、負荷演算部は、電流指令値に基づいてモータ負荷の値を決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、モータの電流から算出した速度推定値と、主軸の速度から算出した速度推定値とを切り換えて、モータ速度の制御を行うようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに係らず、モータ速度の制御を高精度に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の他の実施態様による制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、速度制御のための速度ループゲインの大きさを変えるようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに係らず、モータ速度の制御を高精度に行うことができる。
【0017】
また、本発明のさらに他の実施態様による制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、位置制御のための位置ループゲインの大きさを変えるようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに係らず、主軸位置の制御を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る制御装置によるモータ速度の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係る制御装置の構成図である。
【図4】本発明の実施例2に係る制御装置によるモータ速度の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例3に係る制御装置の構成図である。
【図6】本発明の実施例3に係る制御装置によるモータ速度の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】従来のモータ速度の制御装置の構成図である。
【図8】従来のモータ速度の制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る制御装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【実施例1】
【0020】
まず、本発明の実施例1に係る制御装置について説明する。図1に本発明の実施例1に係る制御装置の構成図を示す。制御装置101は、位置制御部1と、第1加算器2と、速度制御部3と、電流制御部4と、パワー増幅器5と、電流検出部6と、第1速度推定部7と、第2速度推定部8と、主軸速度演算部9と、第2加算器11と、負荷演算部12と、切替制御部13と、第1スイッチSW1とを有している。工作機械20の構成は図7に示した従来の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0021】
位置制御部1は、位置指令値に従って主軸位置を制御するための速度指令値を速度制御部3に出力する。速度制御部3は、位置制御部1が位置指令値に従って算出し、出力した速度指令値に従ってモータ速度を制御するための電流指令値を算出し、これを電流制御部4に出力する。
【0022】
電流制御部4は、速度制御部3からの電流指令値に従ってパワー増幅器5を制御し、パワー増幅器5は、工作機械20のモータ21を駆動するための電流を供給する配線22に電流を出力する。電流検出部6は、電流指令値に従ってパワー増幅器5から供給された電流によりモータ21が駆動された場合にモータ21に流れる電流を検出する。電流検出部6により検出された電流は、電流制御部4にフィードバックされるとともに、第1速度推定部7に出力される。
【0023】
第1速度推定部7は、電流検出部6が検出した電流に基づいてモータ21の第1速度を推定する。第2速度推定部8は、主軸25の近傍に設けられたセンサ29により検出される主軸位置に基づいて主軸速度演算部9により算出される主軸速度及びモータ21と主軸25との間に設けられた速度調整機構24の変速比に基づいてモータ21の第2速度を推定する。
【0024】
負荷演算部12は、モータ負荷の値を算出する。モータ負荷の値は、速度制御部3が出力する電流指令値に基づいて決定されることが好ましい。
【0025】
第1スイッチSW1は、切替制御部13からの選択信号に基づいて、第1速度推定部7と第2速度推定部8とを切り換えて、第1加算器2に出力される推定速度を切り換える。切替制御部13は、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値に応じて第1スイッチSW1を切り換える選択信号を出力している。即ち、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値が所定の値以上の場合は、速度制御部3が、第1速度を用いて電流指令値を算出するように、第1スイッチSW1において第1速度推定部7が選択されるように選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、速度制御部3が、第2速度を用いて電流指令値を算出するように、第1スイッチSW1において第2速度推定部8が選択されるように選択信号を出力する。
【0026】
次に、本発明の実施例1に係る制御装置を用いた制御方法について図2に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101において、制御装置101に加工開始の命令を与える。次に、ステップS102において、加工が終了したか否かを判断する。加工が終了している場合は、ステップS106に進んで制御を終了する。
【0027】
加工が終了していない場合は、ステップS103において、モータ負荷の値が所定の値以上か否かを判断する。モータ負荷の大きさは、速度制御部3が電流制御部4に対して出力する電流指令値によって決定することができる。
【0028】
モータ負荷の値が所定の値以上の場合には、ステップS104において、速度制御部3が、第1速度を用いて電流指令値を算出するように、切替制御部13が第1スイッチSW1を第1速度推定部7側に切り換えるための選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、ステップS105において、速度制御部3が、第2速度を用いて電流指令値を算出するように、切替制御部13が第1スイッチSW1を第2速度推定部8側に切り換えるための選択信号を出力する。その後、ステップS102に戻って、以上のステップS102〜S105を繰り返す。
【0029】
以上のように、本発明の実施例1に係る制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、モータの電流から算出した速度推定値(第1速度)と、主軸の速度から算出した速度推定値(第2速度)とを切り換えて、モータ速度の制御を行うようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに関わらず、モータ速度の制御を高精度に行うことができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の実施例2に係る制御装置について説明する。図3に本発明の実施例2に係る制御装置の構成図を示す。実施例2に係る制御装置102が、実施例1に係る制御装置101と異なっている点は、第1速度ループゲイン記憶部31と、第2速度ループゲイン記憶部32と、第2スイッチSW2とをさらに設けている点である。制御装置102の他の構成及び工作機械20の構成は、実施例1に係る制御装置101及び工作機械20と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
第1速度ループゲイン記憶部31は、速度制御部3が電流指令値の算出のために用いる速度ループゲインとして、第1速度ループゲインの値を記憶している。一方、第2速度ループゲイン記憶部32は、速度制御部3が電流指令値の算出のために用いる速度ループゲインとして、第2速度ループゲインの値を記憶しており、第2速度ループゲインの大きさは、第1速度ループゲインより高い点を特徴としている。
【0032】
第2スイッチSW2は、切替制御部13からの選択信号に基づいて、第1速度ループゲイン記憶部31と第2速度ループゲイン記憶部32とを切り換えて、速度制御部3に与えられる速度ループゲインを切り換える。切替制御部13は、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値に応じて第2スイッチSW2を切り換える選択信号を出力している。即ち、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値が所定の値以上の場合は、速度制御部3が、第1速度ループゲインを用いて電流指令値を算出するように、第2スイッチSW2において第1速度ループゲイン記憶部31が選択されるように選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、速度制御部3が、第2速度ループゲインを用いて電流指令値を算出するように、第2スイッチSW2において第2速度ループゲイン記憶部32が選択されるように選択信号を出力する。
【0033】
次に、本発明の実施例2に係る制御装置を用いた制御方法について図4に示したフローチャートを用いて説明する。実施例2に係る制御装置を用いた制御方法が、実施例1に係る制御装置を用いた制御方法と異なる点は、モータ負荷の大きさに応じて、速度制御部に与えられる速度ループゲインの大きさを変えている点である。実施例1に係る制御装置の制御方法における図2に示したステップS101〜S106に対応するステップS201〜S204、S206、S208は、実施例1に係る制御装置の制御方法と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0034】
ステップS203において、モータ負荷の値が所定の値以上の場合には、ステップS204において、実施例1と同様に第1速度を選択し、ステップS205において、速度制御部3が、第1速度ループゲインを用いて電流指令値を算出するように、切替制御部13が第2スイッチSW2を第1速度ループゲイン記憶部31側に切り換えるための選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、ステップS206において、実施例1と同様に第2速度を選択し、ステップS207において、速度制御部3が、第2速度ループゲインを用いて電流指令値を算出するように、切替制御部13が第2スイッチSW2を第2速度ループゲイン記憶部32側に切り換えるための選択信号を出力する。その後、ステップS202に戻って、ステップS202〜S207を繰り返す。
【0035】
以上のように、本発明の実施例2に係る制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、速度制御のための速度ループゲインの大きさを変えるようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに係らず、モータ速度の制御を高精度に行うことができる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の実施例3に係る制御装置について説明する。図5に本発明の実施例3に係る制御装置の構成図を示す。実施例3に係る制御装置103が、実施例2に係る制御装置102と異なっている点は、第1位置ループゲイン記憶部41と、第2位置ループゲイン記憶部42と、第3スイッチSW3とをさらに設けている点である。制御装置の他の構成及び工作機械20の構成は、実施例2に係る制御装置及び工作機械と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
第1位置ループゲイン記憶部41は、位置制御部1が速度指令値の算出のために用いる位置ループゲインとして、第1位置ループゲインの値を記憶している。一方、第2位置ループゲイン記憶部42は、位置制御部1が速度指令値の算出のために用いる位置ループゲインとして、第2位置ループゲインの値を記憶しており、第2位置ループゲインの大きさは、第1位置ループゲインより高い点を特徴としている。
【0038】
第3スイッチSW3は、切替制御部13からの選択信号に基づいて、第1位置ループゲイン記憶部41と第2位置ループゲイン記憶部42とを切り換えて、位置制御部1に与えられる位置ループゲインを切り換える。切替制御部13は、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値に応じて第3スイッチSW3を切り換える選択信号を出力している。即ち、負荷演算部12が算出したモータ負荷の値が所定の値以上の場合は、位置制御部1が、第1位置ループゲインを用いて速度指令値を算出するように、第3スイッチSW3において第1位置ループゲイン部41が選択されるように選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、位置制御部1が、第2位置ループゲインを用いて速度指令値を算出するように、第3スイッチSW3において第2位置ループゲイン記憶部42が選択されるように選択信号を出力する。
【0039】
次に、本発明の実施例3に係る制御装置を用いた制御方法について図6に示したフローチャートを用いて説明する。実施例3に係る制御装置を用いた制御方法が、実施例2に係る制御装置を用いた制御方法と異なる点は、モータ負荷の大きさに応じて、位置制御部に与えられる位置ループゲインの大きさを変えている点である。実施例2に係る制御装置の制御方法における図4に示したステップS201〜S208に対応するステップS301〜S305、S307、S308、S310は、実施例2に係る制御装置の制御方法と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
ステップS303において、モータ負荷の値が所定の値以上の場合には、ステップS304において、実施例1と同様に第1速度を選択し、ステップS305において、実施例2と同様に第1速度ループゲインを選択する。次に、ステップS306において、位置制御部1が、第1位置ループゲインを用いて速度指令値を算出するように、切替制御部13が第3スイッチSW3を第1位置ループゲイン記憶部41側に切り換えるための選択信号を出力する。一方、モータ負荷の値が所定の値未満の場合は、ステップS307において、実施例1と同様に第2速度を選択し、ステップS308において、実施例2と同様に第2速度ループゲインを選択する。次に、ステップS309において、位置制御部1が、第2位置ループゲインを用いて電流指令値を算出するように、切替制御部13が第3スイッチSW3を第2位置ループゲイン記憶部42側に切り換えるための選択信号を出力する。その後、ステップS302に戻って、ステップS302〜S309を繰り返す。
【0041】
以上のように、本発明の実施例3に係る制御装置によれば、主軸にかかる負荷の大きさに応じて、位置制御のための位置ループゲインの大きさを変えるようにしているので、主軸にかかる負荷の大きさに係らず、主軸位置の制御を高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 位置制御部
2 第1加算器
3 速度制御部
4 電流制御部
5 パワー増幅器
6 電流検出部
7 第1速度推定部
8 第2速度推定部
9 主軸速度演算部
11 第2加算器
12 負荷演算部
13 切替制御部
101〜103 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変速比を有する速度調整機構を介して主軸を駆動するモータの速度を制御する制御装置であって、
位置指令値に従って主軸位置を制御するための速度指令値を出力する位置制御部と、
前記速度指令値に従ってモータ速度を制御するための電流指令値を出力する速度制御部と、
前記電流指令値に従ってモータが駆動された場合にモータに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流に基づいてモータの第1速度を推定する第1速度推定部と、
主軸の近傍に設けられたセンサにより検出される主軸位置に基づいて算出される主軸速度及び前記変速比に基づいてモータの第2速度を推定する第2速度推定部と、
モータ負荷の値を算出する負荷演算部と、を有し、
前記速度制御部は、前記モータ負荷の値がモータと主軸との間にスリップが発生する値以上の場合は、前記第1速度を用いて前記電流指令値を算出し、前記モータ負荷の値が前記モータと主軸との間にスリップが発生する値未満の場合は、前記第2速度を用いて前記電流指令値を算出し、
前記速度制御部が前記電流指令値の算出のために用いるループゲインとして、第1速度ループゲインと、前記第1速度ループゲインより高い第2速度ループゲインと、を記憶した記憶部をさらに有し、
前記速度制御部は、前記モータ負荷の値が前記モータと主軸との間にスリップが発生する値以上の場合は、前記第1速度ループゲインを用いて前記電流指令値を算出し、前記モータ負荷の値が前記モータと主軸との間にスリップが発生する値未満の場合は、前記第2速度ループゲインを用いて前記電流指令値を算出する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記位置指令値に従って前記主軸位置を制御するための速度指令値を前記速度制御部に出力する位置制御部をさらに有し、
前記記憶部は、前記位置制御部が前記速度指令値の算出のために用いるループゲインとして、第1位置ループゲインと、前記第1位置ループゲインより高い第2位置ループゲインと、を記憶し、
前記位置制御部は、前記モータ負荷の値が前記モータと主軸との間にスリップが発生する値以上の場合は、前記第1位置ループゲインを用いて前記速度指令値を算出し、前記モータ負荷の値が前記モータと主軸との間にスリップが発生する値未満の場合は、前記第2位置ループゲインを用いて前記速度指令値を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記負荷演算部は、前記電流指令値に基づいて前記モータ負荷の値を決定する、請求項1または2に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63017(P2013−63017A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237701(P2012−237701)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2011−79162(P2011−79162)の分割
【原出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】