説明

乗り物用シート構造

【課題】比較的簡単な形状の部品の追加で、シートクッションの見栄えを損なわずに、操作レバーの操作時に操作レバーがシートクッションに引っ掛かるのを防止する。
【解決手段】乗り物のシート11がシートパッド14をシート表皮16により覆って形成され、操作レバー17がこのシート11の側面に設けられる。操作レバー17側のシートパッド14側部に切欠き部14aが形成され、この切欠き部14aに沿ってプレート18が設けられる。プレート18はシート表皮16により覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーによりシートを着席者の所望の状態に調整できる乗り物用シートの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乗り物用シート構造として、図4に示すように、シートクッション2が、フレーム9上に載置されたシートパッド4と、このシートパッド4を覆うシート表皮6とを有し、シートクッション2の側面に着席者が操作する操作レバー7が設けられたシート1が知られている。このシート1では、操作レバー7の後端がスライド機構又はリクライニング機構に枢着され、操作レバー7の後端を中心にシートクッション2の側面に沿って上下方向に回動するように構成される。上記シートパッド4は四角枠状のフレーム9により支持され、このフレーム9にはワイヤフレーム5が取付けられる。またシートパッド4の下面には、フレーム9の形状に相応する四角枠状の凹部4bが形成され、この凹部4bをフレーム9に嵌入することによりシートパッド4がフレーム9に対して位置決めされる。一方、ワイヤフレーム5は、フレーム9の長手方向に所定の間隔をあけて設けられ上端がフレーム9にそれぞれ溶着された複数の縦ワイヤ部5aと、これらの縦ワイヤ部5aの下端に溶着されフレーム9と同様に四角枠状に形成された枠状ワイヤ部5bと、フレーム9の側片9aに平行になるように縦ワイヤ部5aに架設され枠状ワイヤ部5bに近接する横ワイヤ部5dとを有する。このように構成されたシート1では、四角枠状のフレーム9にシートパッド4の四角枠状の凹部4bを嵌入することにより、シートパッド4がフレーム9に対して位置決めされた状態で固定される。この状態でシートパッド4をシート表皮6で覆った後に、シート表皮6の端部に所定の間隔をあけて取付けられたフック6aを横ワイヤ部5dに係止する。このようにしてシートクッション2が組立てられる。
【0003】
一方、シートクッションの前側面下部に前方及び下方に開口部が形成され、この開口部にスライドレールのロック解除用の操作レバーを収容する操作レバー収容部が設けられ、この操作レバー収容部が、シートクッションのフレームと一体の板金製取付体と、この取付体の内面に嵌合する樹脂製ガーニッシュとからなる、シートクッションにおける操作レバー収容部の構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この操作レバー収容部の構造では、板金製取付体が、操作レバーを連結する操作軸挿通用の挿通口と下端より後方に向けて折曲し取付孔を有するフランジとを有する前面部と、この前面部の下端を除く周縁より前方に向けて延設して頂部に係止孔を有する側面部とから構成される。またガーニッシュは、取付体と略同の形状で取付体の挿通口の口縁より上向きに挿入して取付体の裏側に掛止する掛止爪と、係止孔に上向きに挿入する突起と、取付孔に締結部材によって締結される下部フランジを有する。このように構成された操作レバー収容部の構造では、ガーニッシュの係止爪をシートクッション側の取付体の挿通口に、また突起を係止孔にそれぞれ同一方向に挿し込むことにより、ガーニッシュが取付体に仮止めされ、その後、ガーニッシュの下部フランジを取付体のフランジに締結することにより、ガーニッシュが取付体に取付けられる。このように、ガーニッシュがシートクッション側の取付体に簡単に取付けることができ、その作業性を向上できる。またガーニッシュが取付体に対して前後方向、左右方向及び上下方向に確実に固定されるため、シートクッションから脱落しないようになっている。
【特許文献1】特開2001−55070号公報(請求項1、段落[0009]、[0023])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の図4に示すシート1では、乗員がシート1に着席したり或いは乗降を繰返すと、シートクッション2のシートパッド4が変形して図4の二点鎖線で示すようにシートクッション2の側方に比較的広い範囲で突出するように変形するため、シートパッド4の変形が操作レバー7の可動範囲内に達して、操作時に操作レバー7がシートクッション2に引っ掛かり、操作レバー7をスムーズに操作できないおそれがあった。また、上記従来の図4に示すシート1では、操作レバー7が戻りきらずにハーフロック状態が発生するおそれがあった。更に、上記従来の特許文献1に示された操作レバー収容部の構造では、板金製取付体や樹脂製ガーニッシュなどの複雑な形状の部品を必要とするため、これらの部品の製作工数や組付工数が増大する不具合があった。
【0005】
本発明の目的は、比較的簡単な形状の部品の追加で、シートクッション又はシートバックの見栄えを損なわずに、操作レバーの操作時に操作レバーがシートクッション又はシートバックに引っ掛かるのを防止できる、乗り物用シート構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1及び図3に示すように、シートパッド14をシート表皮16により覆って形成された乗り物用シート11と、このシート11の側面に設けられた操作レバー17とを備えた乗り物用シート構造の改良である。その特徴ある構成は、操作レバー17側のシートパッド14側部に切欠き部14aが形成され、切欠き部14aに沿ってプレート18が設けられ、プレート18がシート表皮16により覆われたところにある。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1及び図3に示すように、プレート18が操作レバー17の可動範囲に設けられたことを特徴とする。また請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図1及び図2に示すように、乗り物用シート11が、シートパッド14を支持するフレーム19と、このフレーム19に取付けられたワイヤフレーム21とを有し、プレート18がワイヤフレーム21に取付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、操作レバー側のシートパッド側部に切欠き部を形成し、この切欠き部に沿ってプレートを設け、更にプレートをシート表皮により覆ったので、プレートにより操作レバー側のシートクッション側部又はシートバック側部の形状が造り出される。この結果、シートクッション又はシートバックの側面の見栄えを損なわない。また乗員がシートに着席してシートパッドが変形しても或いはシートパッドが経年変化により変形しても、この変形がプレートにより抑制される。この結果、操作時に操作レバーがシートクッションに引っ掛かることなく、操作レバーをスムーズに操作できる。更に製作工数や組付工数が増大する複雑な形状の部品を必要とする従来の操作レバー収容部の構造と比較して、本発明では比較的簡単な形状の部品の追加であるため、これらの部品の製作工数や組付工数の増大は僅かで済む。
【0009】
請求項2に係る発明では、プレートを操作レバーの可動範囲に設けたので、乗員がシートに着席してシートパッドが変形しても或いはシートパッドが経年変化により変形しても、この変形がプレートにより抑制されて操作レバーの可動範囲内に達しない。この結果、操作時に操作レバーがシートクッションに引っ掛かることを確実に防止できる。また請求項3に係る発明では、シートパッドを支持するフレームにワイヤフレームを取付け、このワイヤフレームにプレートを取付けたので、プレートがシート表皮内でガタつくことはない。この結果、乗り物が振動しても、プレートとワイヤフレームとの間で相対的な運動が発生しないので、プレートから異音を発することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図3に示すように、シート11は、着席者の尻部を受けるシートクッション12と、下端がシートクッション12の後端に取付けられ着席者の背部を受けるシートバック13とを備える。このシート11は、図示しないが自動車のキャブのフロアパネル上に取付けられる。シートクッション12はフロアパネルにスライド機構(図示せず)を介して取付けられ、シートクッション12はシートバック13とともに前後方向に摺動して複数のスライド位置のいずれかに選択的に固定できるように構成される。またシートバック13の下端はシートクッション12の後端にリクライニング機構(図示せず)を介して取付けられ、シートバック13はシートクッション12に対して前後方向に回動して複数の傾斜角度のいずれかに選択的に固定できるようになっている。なお、この実施の形態では、シートを自動車のキャブに取付けたが、シートを船や飛行機等の乗り物の客室や操縦室に取付けてもよい。
【0011】
図1及び図2に示すように、シートクッション12は、弾力性を有する発泡ポリウレタン樹脂、発泡スチロール樹脂、スポンジラバーなどの軟質合成樹脂や軟質ゴム等により形成されたシートパッド14と、布や皮革等により形成されシートパッド14を覆うシート表皮16とを有する。またシートクッション12の左側面には着席者が操作する操作レバー17が設けられる。この操作レバー17の後端は上記スライド機構又はリクライニング機構に枢着され、操作レバー17の後端を中心にシートクッション12の側面に沿って上下方向に回動するように構成される。操作レバー17がスライド機構に連結されている場合には、操作レバー17の操作によりシートクッション12をシートバック13とともに所望の前後方向の位置に固定でき、操作レバー17がリクライニング機構に連結されている場合には、操作レバー17の操作によりシートバック13を所望の傾斜角度に固定できるようになっている。なお、この実施の形態では、操作レバーをシートクッションの左側面に回動可能に取付けたが、操作レバーをシートクッションの右側面に回動可能に取付けてもよい。また、この実施の形態では、操作レバーがシートクッションの側面に沿って上下方向に回動するように構成したが、操作レバーがシートクッションの側面に沿って上下方向にスライドするように構成してもよい。更に、操作レバーをシートクッションではなくシートバックの側面に取付け、この操作レバーがシートバックの側面に沿って回動又はスライドするように構成してもよい。
【0012】
本実施の形態の特徴ある構成は、操作レバー17側のシートパッド14側部に切欠き部14aが形成され、切欠き部14aに沿ってプレート18が設けられ、プレート18がシート表皮16により覆われたところにある(図1)。シートパッド14はフレーム19により支持され、このフレーム19にはワイヤフレーム21が取付けられる。フレーム19は金属製パイプ等により四角枠状に形成される(図2)。またシートパッド14の下面には、フレーム19の形状に相応する四角枠状の凹部14bが形成され、この凹部14bをフレーム19に嵌入することによりシートパッド14がフレーム19に対して位置決めされる(図1)。上記切欠き部14aは、シートパッド14のフレーム19外側面を覆う部分を、後述する略長方形状のプレート18に相応する略長方形状に切取ることにより形成される。これによりプレート18が切欠き部14aに収容されると、プレート18が切欠き部14aに沿って設けられた状態になる。
【0013】
一方、ワイヤフレーム21は、フレーム19の長手方向に所定の間隔をあけて設けられ上端がフレーム19にそれぞれ溶着された複数の縦ワイヤ部21aと、これらの縦ワイヤ部21aの下端に溶着されフレーム19と同様に四角枠状に形成された枠状ワイヤ部21bと、フレーム19の側片19aに平行になるように縦ワイヤ部21aに架設されフレーム19に近接する第1横ワイヤ部21cと、フレーム19の側片19aに平行になるように縦ワイヤ部21aに架設され枠状ワイヤ部21bに近接する第2横ワイヤ部21dとを有する(図1及び図2)。またプレート18はその外面がシート表皮16を介して操作レバー17に対向するようにワイヤフレーム21に取付けられる(図1)。プレート18は、合成樹脂板や金属板等により形成されたプレート本体18aと、プレート本体18aと一体的にプレート本体18aの上縁に沿って設けられたフランジ部18bと、プレート本体18aと一体的にプレート本体18aの下縁に沿って設けられた湾曲部18cと、プレート本体18aのワイヤフレーム21に対向する面に取付けられた係止爪18dとを有する。プレート本体18aは操作レバー17の可動範囲に設けられる、即ちプレート本体18aは操作レバー17の可動範囲を全て含むように略長方形状に形成される(図2及び図3)。またフランジ部18bはフレーム19に向って突出し、フランジ部18bの上面は切欠き部14a上面を形成するシートパッド14に対向するように構成される(図1)。このフランジ部18bによりプレート本体18aの剛性が増大するとともに、乗員のシート11への着席時に切欠き部14a上面を形成するシートパッド14を受けるように構成される。湾曲部18cは、枠状ワイヤ部21bに対向する位置に設けられ、枠状ワイヤ部21bを構成する線材の半径と略同一の曲率半径で湾曲して形成される。更に係止爪18dは、第1横ワイヤ部21cに対向する位置に設けられ、第1横ワイヤ部21cに係止可能に構成される。なお、シート表皮16の端部には所定の間隔をあけてフック16aがそれぞれ取付けられ、これらのフック16aは第2横ワイヤ部21dに係止される。
【0014】
係止爪18dが第1横ワイヤ部21cに係止され、湾曲部18cが枠状ワイヤ部21bに係合されることにより、プレート18が切欠き部14aに収容された状態でワイヤフレーム21に取付けられる。この状態でプレート18のフランジ部18b上面が操作レバー17の操作時の最高部位を含む水平面に対して5〜10mm高く設定される。またプレート18の外面がシートパッド14側部のうち切欠き部14aの形成されていない部分の外面に対して1〜5mmだけシートクッション12内に引込むように構成される。ここで、プレート18のフランジ部18b上面と操作レバー17の操作時の最高部位を含む水平面との高さの差H(図1)を5〜10mmの範囲内に限定したのは、プレート18を操作レバー17の可動範囲より上方に延長することにより、乗員のシート11への着席時にシートパッド14が変形してもその変形が操作レバー17の操作に支障をきたさないようにするとともに、プレート18の上方への延長を必要最小限に抑えるためである。またプレート18外面のパッド14側部外面に対する引込み量D(図1)を1〜5mmの範囲内に限定したのは、1mm未満では乗員がシート11に着席していないときにプレート18が外側方に突出してシートクッション12側面の見栄えを損なうおそれがあり、5mmを越えるとプレート18外面とパッド14側部外面との段差が大き過ぎて手で触れたときに違和感を与えるからである。
【0015】
このように構成された車両用シート構造では、プレート18の係止爪18dを第1横ワイヤ部21cに係止し、プレート18の湾曲部18cを枠状ワイヤ部21bに係合させて、プレート18にて切欠き部14aを塞ぐことにより、プレート18が切欠き部14aに収容された状態、即ち切欠き部14aに沿って設けられた状態で、ワイヤフレーム21に取付けられる。この状態でシートパッド14をシート表皮16で覆うと、プレート18により操作レバー17側のシートクッション12側部の形状が造り出されているため、シートクッション12の側面の見栄えを損なわない。また乗員がシート11に着席すると、シートクッション12のシートパッド14が変形して、プレート18のフランジ部18bが切欠き部14a上面を形成するシートパッド14を受ける。このときフランジ部18bをプレート本体18aと一体成形することによりプレート本体18aの剛性が増大しているため、上記シートパッド14による押下げ力がフランジ部18bに作用しても、プレート本体18aは変形せず、シートパッド14は図1の二点鎖線で示すようにシートクッション12の側方に突出するように変形する。この結果、シートパッド14の変形が操作レバー17の可動範囲内に達しないので、操作時に操作レバー17がシートクッション12に引っ掛かることなく、操作レバー17をスムーズに操作できる。なお、車両を長年使用して、シートパッド14が経年変化により変形しても、この変形をプレート18のフランジ部18bが受けるので、上記と同様にシートパッド14の経年変化による変形が操作レバー17の可動範囲内に達しない。この結果、上記と同様の効果が得られる。またプレート18の係止爪18dを第1横ワイヤ部21cに係止し、プレート18の湾曲部18cを枠状ワイヤ部21bに係合させて、プレート18をワイヤフレーム21に取付けたので、プレート18がシート表皮16内でガタつくことはない。この結果、車両が振動しても、プレート18とワイヤフレーム21との間で相対的な運動が発生しないので、プレート18から異音を発することはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施形態の車両用シート構造を示す図3のA−A線断面図である。
【図2】そのシートのフレームの構成を示す要部斜視図である。
【図3】そのシートの斜視図である。
【図4】従来例の車両用シート構造を示す図1に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0017】
11 シート
14 シートパッド
14a 切欠き部
16 シート表皮
17 操作レバー
18 プレート
19 フレーム
21 ワイヤフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッド(14)をシート表皮(16)により覆って形成された乗り物用シート(11)と、このシート(11)の側面に設けられた操作レバー(17)とを備えた乗り物用シート構造において、
前記操作レバー(17)側の前記シートパッド(14)側部に切欠き部(14a)が形成され、
前記切欠き部(14a)に沿ってプレート(18)が設けられ、
前記プレート(18)が前記シート表皮(16)により覆われた
ことを特徴とする乗り物用シート構造。
【請求項2】
プレート(18)が操作レバー(17)の可動範囲に設けられた請求項1記載の乗り物用シート構造。
【請求項3】
乗り物用シート(11)が、シートパッド(14)を支持するフレーム(19)と、このフレーム(19)に取付けられたワイヤフレーム(21)とを有し、プレート(18)が前記ワイヤフレーム(21)に取付けられた請求項1又は2記載の乗り物用シート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132121(P2010−132121A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309658(P2008−309658)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】