説明

乗客コンベアの総積載荷重検出装置

【課題】乗客コンベア全体の総積載荷重を常に正確に検出し、検出した総積載荷重を乗降口に表示するようにした乗客コンベアの総積載荷重検出装置を得る。
【解決手段】踏板2、ライザ3、左右一対のブラケット4、支え金5、追従ローラ6等の各部品により構成された乗客コンベアのステップ1と、各ブラケット頭部の前端部及び後端部にそれぞれ設置され、踏板上に掛かる積載荷重を支持する防振ゴム7と、各ブラケット頭部の防振ゴム間に位置するように設けられ、各ステップの積載荷重を検出する個別の積載荷重検出装置8と、個別の積載荷重検出装置から送信される各ステップの積載荷重データを受信し、受信した積載荷重データを積算して乗客コンベアの総積載荷重を算出し、その算出結果に基づいて乗客コンベアの運転を制御する乗客コンベアの制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアの総積載荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアにおいては、所定時間当りの乗客数を計数し、その計数値が所定値以上となると乗客コンベアの混雑時を検出し、事故を防止する放送を行う乗客コンベアの放送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、上下の乗降口近くの踏段軌道用ガイドレールに圧力センサー等の荷重検出手段を設け、さらに上下乗降口付近及び監視室に表示器を設け、検出した荷重データを表示するエスカレータの制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらにまた、踏段の端縁部に荷重検出装置を設け、この荷重検出装置からの動作信号により、乗客に対し注意喚起させる報知手段を備えたマンコンベアの安全装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−305673号公報
【特許文献2】特開平4−371487号公報
【特許文献3】特開平5−338980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の特許文献1は、所定時間当りの乗客数を計数し、その計数値が所定値以上となった時に混雑を検出するものであるが、乗客数と平均体重から算出するものであるから、乗客コンベア全体の正確な総積載荷重を検出することはできない。また特許文献2は、上下の乗降口近くの踏段軌道用ガイドレールに圧力センサー等の荷重検出手段を設けて負荷状態を検出するものであるが、上下の乗降口近くの荷重は検出できるが、乗客コンベア全体の正確な積載荷重を検出することはできない。さらにまた、特許文献3は、踏段の端縁部に荷重検出装置を設けて、乗客の踏段端縁部への乗り込みを検出し、踏段とスカートガードの間の隙間に挟み込まれるのを防止するようにしたものであり、乗客コンベア全体の総積載荷重を検出するものではない。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、乗客コンベア全体の総積載荷重を常に正確に検出し、検出した総積載荷重を乗降口に表示するようにした乗客コンベアの総積載荷重検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベアの総積載荷重検出装置においては、踏板、ライザ、左右一対のブラケット、支え金、追従ローラ等の各部品により構成された乗客コンベアのステップと、各ブラケット頭部の前端部及び後端部にそれぞれ設置され、踏板上に掛かる積載荷重を支持する防振ゴムと、各ブラケット頭部の防振ゴム間に位置するように設けられ、各ステップの積載荷重を検出する個別の積載荷重検出装置と、個別の積載荷重検出装置から送信される各ステップの積載荷重データを受信し、受信した積載荷重データを積算して乗客コンベアの総積載荷重を算出し、その算出結果に基づいて乗客コンベアの運転を制御する乗客コンベアの制御装置とを備えたものである。
【0007】
また、乗客コンベアの制御装置は、乗客コンベアの総積載荷重の算出結果を乗降口付近に設けた表示盤に表示するものである。
【0008】
また、個別の積載荷重検出装置は、踏板の下面に位置して防振ゴムの沈下とともに下降する検出部と、検出部の下端部が挿入されるソレノイドと、検出・発信装置とを備え、支え金に取り付けられているものである。
【0009】
また、検出・発信装置は、リチウム電池と、制御装置に送信する発信器から構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、乗客コンベア全体の総積載荷重を常に正確に検出できるので、検出した総積載荷重に基づいて、乗客コンベアの運転を安全に制御することができるとともに、総積載荷重を乗降口に表示できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】乗客コンベアの踏段部分を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の実施例1における乗客コンベアの個別の積載荷重検出装置の要部を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施例1における乗客コンベアの個別の積載荷重検出装置を示す正面図である。
【図4】図3のC−C線に沿った断面図である。
【図5】この発明の実施例1における乗客コンベアの総積載荷重検出装置の各ステップの積載荷重検出状況を示す表である。
【図6】この発明の実施例1における乗客コンベアの総積載荷重検出装置が検出した総積載荷重を乗降口付近に表示する一例を示す乗客コンベアの側面図である。
【図7】この発明の実施例1における乗客コンベアの総積載荷重検出装置が検出した総積載荷重を乗降口付近に表示する他の例を示す乗客コンベアの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1において、1は乗客コンベアのステップであり、踏板2、ライザ3、左右一対(A側、B側)のブラケット4、支え金5、追従ローラ6等の各部品により構成されている。この発明ではブラケット4の頭部形状を現状よりも大きくして、積載荷重検出装置を設置できるようにする。
【0013】
図2〜図4において、7は左右一対のブラケット4頭部の前端部(A11、B11)及び後端部(A12、B12)にそれぞれ設置された4個の防振ゴムで、踏板2よりビスにより取り付けられて踏板2上に掛かる積載荷重を支持する。8は左右一対(A側、B側)のブラケット4頭部の中央部に設けられた個別の積載荷重検出装置である。この個別の積載荷重検出装置8は、A11に位置する防振ゴム7とA12に位置する防振ゴム7の沈下により一方(A側)のブラケット4側の積載荷重XA1を検出し、B11に位置する防振ゴム7とB12に位置する防振ゴム7の沈下により他方(B側)のブラケット4側の積載荷重XB1を検出する。そして、個別の積載荷重検出装置8が検出した積載荷重XA1、XB1は電気信号に変換されて発信される。個別の積載荷重検出装置8は、踏板2の下面に位置して防振ゴム7の沈下とともに下降するT字状の検出部9と、検出部9の下端部が挿入されるソレノイド10と、検出・発信装置11とを備え、支え金5に取り付けられている。また、検出・発信装置11はリチウム電池12と発信器13から構成されている。検出部9で検出された各ステップ1の積載荷重XA1、XB1は、検出・発信装置11で積算されてから電波又は無線等により乗客コンベアの制御装置(図示せず)に送信される。送信されるステップ毎の積載荷重データは、ステップ数:N個分(N、N・・・NN−1、N)であり、これを表にして表わしたのが図5である。ここで、ステップN1の検出部9で検出された積載荷重XA1、XB1、ステップN2の検出部9で検出された積載荷重XA2、XB2、ステップNN−1の検出部9で検出された積載荷重XAN-1、XBN-1、ステップNの検出部9で検出された積載荷重XAN、XBNである。乗客コンベアの制御装置では、ステップ数:N個分(N、N・・・NN−1、N)の積載荷重データを受信し、受信した積載荷重データを積算する。ここで、ステップNの積算された積載荷重は、XA1+XB1、ステップNの積算された積載荷重は、XA2+XB2、ステップNN−1の積算された積載荷重は、XAN-1+XBN-1、ステップNの積算検出された積載荷重は、XAN+XBNである。次に、各ステップの積算された積載荷重は乗客コンベア全体の総積載荷重として算出され、その算出結果を乗降口の表示盤等にローリング表示により表示する。ここでは、乗降口の表示盤により注意喚起と総積載荷重により乗客コンベアの減速・停止、オートアナウンスのメッセージ放送等を行う。
【0014】
図6及び図7はこの発明の実施例1における乗客コンベアの総積載荷重検出装置が検出した総積載荷重を乗降口付近に表示する例を示す図である。図6は乗客コンベアの乗降口に柱状体の表示盤14を設置したものであり、図7は乗客コンベアの乗降口にアーチ状の表示盤15を設置したものである。乗客コンベア全体の総積載荷重が50%以下の場合は、乗客コンベアを通常運転とし、表示盤14、15には、例えば「積載上は問題ありません」を表示し、それと同時に天気予報等のインフォメーション表示を行い、オートアナウンスのメッセージとしては、例えば「積載上は問題ありません」を放送し、それと同時に例えば「整列してお乗り下さい」を放送するものとする。また、乗客コンベア全体の総積載荷重が50%以上、80%未満の場合は、乗客コンベアを通常運転とし、表示盤14、15には、例えば「積載上は問題ありませんが、混雑していますので注意してお乗り下さい」を表示し、それと同時に天気予報等のインフォメーション表示を行い、オートアナウンスのメッセージとしては、例えば「積載上は問題ありませんが、混雑していますので注意してお乗り下さい」を放送するものとする。また、乗客コンベア全体の総積載荷重が80%以上、90%未満の場合は、乗客コンベアを通常運転から減速運転とし、例えば30m/分から15m/分に減速し、表示盤14、15には、例えば「積載荷重が規定値に近い状態ですので、速度を減速します。お乗りになる方は間隔を空けてお乗り下さい」を表示し、それと同時に天気予報等のインフォメーション表示を行い、オートアナウンスのメッセージとしては、例えば「積載荷重が規定値に近い状態ですので、速度を減速します。お乗りになる方は間隔を空けてお乗り下さい」を放送するものとする。さらに、乗客コンベア全体の総積載荷重が90%以上の場合は、乗客コンベアを減速して停止する。そして、表示盤14、15には、例えば「積載荷重が100%の状態ですので、エスカレータへの乗車はご遠慮下さい」を表示し、オートアナウンスのメッセージとしては、例えば「積載上は問題ありません」を放送し、それと同時に例えば「積載荷重が100%の状態ですので、エスカレータへの乗車はご遠慮下さい」を放送するものとする。
【符号の説明】
【0015】
1 乗客コンベアのステップ
2 踏板
3 ライザ
4 ブラケット
5 支え金
6 追従ローラ
7 防振ゴム
8 個別の積載荷重検出装置
9 T字状の検出部
10 ソレノイド
11 検出・発信装置
12 リチウム電池
13 発信器
14 柱状体の表示盤
15 アーチ状の表示盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏板、ライザ、左右一対のブラケット、支え金、追従ローラ等の各部品により構成された乗客コンベアのステップと、
前記各ブラケット頭部の前端部及び後端部にそれぞれ設置され、前記踏板上に掛かる積載荷重を支持する防振ゴムと、
前記各ブラケット頭部の前記防振ゴム間に位置するように設けられ、各ステップの積載荷重を検出する個別の積載荷重検出装置と、
前記個別の積載荷重検出装置から送信される各ステップの積載荷重データを受信し、受信した積載荷重データを積算して乗客コンベアの総積載荷重を算出し、その算出結果に基づいて乗客コンベアの運転を制御する乗客コンベアの制御装置と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの総積載荷重検出装置。
【請求項2】
乗客コンベアの制御装置は、乗客コンベアの総積載荷重の算出結果を乗降口付近に設けた表示盤に表示することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの総積載荷重検出装置。
【請求項3】
個別の積載荷重検出装置は、踏板の下面に位置して防振ゴムの沈下とともに下降する検出部と、検出部の下端部が挿入されるソレノイドと、検出・発信装置とを備え、支え金に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗客コンベアの総積載荷重検出装置。
【請求項4】
検出・発信装置は、リチウム電池と、制御装置に送信する発信器から構成されていることを特徴とする請求項3記載の乗客コンベアの総積載荷重検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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