説明

乗客コンベア装置

【課題】乗客の靴等が間隙に挟まれることを未然に防ぎ、センサの取付けやメンテナンスが容易な乗客コンベア装置を得る。
【解決手段】乗客を搬送する踏段2と、移動手摺3と、駆動装置6と、移動手摺2を支持する支持部の下部にあって、踏段2の側面と間隙を保って対向しているスカートガード5と、光線14を出射する発光装置9及び光線14を受光する受光装置10と、検出装置11と、警告装置12と、運転制御装置13とを備える。発光装置9及び受光装置10は、スカートガード5の踏段側の同じ側面に設けられ、乗降口の間に光線14が渡るように配置され、検出装置11は、受光装置10からの受光信号によって、遮光物を検出する。警告装置12は、検出装置11からの検出信号によって警告を行う。運転制御装置13は、検出装置11からの検出信号によって駆動装置6の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアを利用する乗客の靴等が踏段とスカートガードとの間の間隙に挟まれるのを防ぐ乗客コンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ1は、図1に示すように踏段2、移動手摺3、内側板4、スカートガード5とエスカレータ1を駆動するための駆動装置6とから構成される。図2に示すように、踏段2の端部にあるデマケーションライン8とスカートガード5との間には、数mm程度の間隙7が存在する。そのため、従来のエスカレータの事故防止装置においては、エスカレータのスカートガードの内部に光電管を取付け、エスカレータに沿って光ビームを出射した構成としている。スカートガードに靴等が当たりたわみ変形が発生した場合に光電管ビームが遮光され、これによりステップ(踏段)とスカートガードとの間隙の異常を検出する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−41878号公報(第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエスカレータの事故防止装置においては、乗客の靴等がスカートガードに接触した後で異常を検出するため、検出した時にはすでに間隙に挟まれていることがあったり、間隙の異常検出がスカートガードの形状やたわみ変位に依存するため、乗客の靴等が間隙に挟まれた事を検出できない場合があるという問題点があった。また、センサがスカートガードの内部にあるため、センサの据付やメンテナンス時の投受光モジュールの位置合わせが難しいという問題もあった。
【0005】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、乗客の靴等が間隙に挟まれることを未然に防ぎ、センサの取付けやメンテナンスが容易な乗客コンベア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベア装置は、乗降口の間を乗客を載せて搬送する踏段と、この踏段と同じ速度で移動する移動手摺と、踏段と移動手摺とを動かす駆動装置と、移動手摺を支持する支持部の下部にあって、踏段の側面と間隙を保って対向するスカートガードと、光線を出射する発光装置及びこの光線を受光する受光装置と、検出装置と、警告装置と、運転制御装置とを備える。発光装置及び受光装置は、スカートガードの踏段側の同じ側面に設けられ、乗降口の間に光線が渡るように配置され、検出装置は、受光装置からの受光信号によって遮光物を検出する。警告装置は、検出装置からの検出信号によって警告を行う。運転制御装置は、検出装置からの検出信号によって駆動装置の運転を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
スカートガードの踏段側に発光装置と受光装置とを設け、乗降口の間に光線が渡るように配置したので、乗客の靴等がスカートガードに近づく際に検出でき、間隙に挟まれることを未然に防止することが可能となる。また、据付や保守時の点検を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図3は、この発明を実施するための実施の形態1におけるエスカレータ装置の説明図である。乗客コンベアとしてエスカレータや動く歩道等があり、ここではエスカレータを例にして説明するが、他の乗客コンベアにも同様に適用できる。図において、このエスカレータ装置は、踏段2、移動手摺3、内側板4、スカートガード5、駆動装置6、発光装置9、受光装置10、検出装置11、警告装置12、運転制御装置13、警告手段15とを備えている。この図は、踏段2に対し奥側の移動手摺3、内側板4、スカードガード5を示しているが、手前側にも移動手摺等はあるため、手前側のスカートガードにも同様に発光装置と受光装置とを設置することができる。
【0009】
踏段2は、運転制御装置13によって制御された駆動装置6によって動き、乗降口の間を乗客を載せて搬送する。移動手摺3も、運転制御装置13によって制御された駆動装置6によって動き、踏段2と同じ速度で移動する。内側板4は移動手摺3の下に配置され、移動手摺を支持する支持部を構成している。スカートガード5は、内側板4の下部にあって、踏段2の側面とわずかな間隙7を保って対向しているパネルである。
【0010】
スカートガード5の踏段側の同じ側面には発光装置9と受光装置10が装着されている。一方の乗降口に配置された発光装置9は光線14を出射するための装置であり、他方の乗降口に配置された受光装置10を照射するように構成されている。発光装置9としては、例えば、図4に示すように、LED (Light Emitting Diode) やLD(Laser Diode) 等の発光素子22と、発光素子22からの出射光線を平行光とするための投光レンズ23から構成されたものである。投光レンズ23には例えば、平凸レンズやフレネルレンズを使用することが可能である。また、受光装置10は発光装置9と対向する位置に装備され、発光素子22からの光線14を受光し、受光した光強度を電気信号に変換する。受光装置10としては、例えば、図5に示すように、PD(Photo Diode) やCCD(Charge Coupled Device)や光電子増倍管等の受光素子24と、光線14を集光するための受光レンズ25から構成されたものである。受光レンズ25には例えば、平凸レンズやフレネルレンズを使用することが可能である。
【0011】
検出装置11は、受光装置10からの受光信号の強度に応じて遮光物の有無を判定する。警告装置12は、検出装置11が遮光物を検出したときに出力する検出信号により動作し、警告手段15を用いて警告を行う。警告手段15は、乗客に危険を警告するための手段であり、例えば、スピーカによる音声アナウンスや警告灯等を用いる。運転制御装置13は、検出装置11からの検出信号により駆動装置6を制御して、エスカレータ1の減速や緊急停止を行う。
【0012】
このように構成された乗客コンベア装置において、乗客の靴等がスカートガード5に接近し、発光装置9の発光素子22から出射される光線14が遮断されると、受光装置10から検出装置11へ出力される受光信号の強度が低下し、ある一定強度以下になったときに、検出装置11は遮光物有りと判定する。
【0013】
検出装置11は、検出信号を警告装置12へ出力し、警告装置12は警告手段15を用いて乗客に危険を警告する。または、検出装置11は、検出信号を運転制御装置13へ出力し、運転制御装置13は駆動装置6を制御して、踏段2と移動手摺3は減速、緊急停止する。または、検出装置11は、検出信号を警告装置12と運転制御装置13の両方へ出力する。この場合、乗客に危険を警告すると共に、踏段2と移動手摺3は減速、緊急停止する。
【0014】
あるいは、検出装置11は、まず、検出信号を警告装置12へ出力し、検出装置11が遮光物有りの判定をある一定時間以上継続したときに、検出信号を運転制御装置13に出力するようにしても良い。この場合は、先に警告が発せられ、一定時間経過後に運転制御装置13が動作し、踏段2と移動手摺3が減速し、緊急停止する。
【0015】
なお、乗降口に踏段からの高さや位置を変えて発光装置9及び受光装置10を複数組設置してもよい。この場合、踏段2から離れたセンサに反応があった場合は警告をする。次に、踏段近傍のセンサに反応があったときは停止をしたり、あるいはまず減速の運転制御をし、その後、遮光物の検出が一定時間以上継続する場合に停止の運転制御をしても良い。
【0016】
センサがスカートガードの外部にあるため、蛍光灯等の外乱光の影響を受けることがある。その際は赤外線を用いた発光装置及び受光装置を用いてもよい。また、光線をパルス状に出射させて蛍光灯の発光周波数からずらしても良い。また、受光センサの視野制限をして、発光装置9からの光を受光するようにし、外乱光の影響を受け難くしてもよい。
【0017】
このように構成された乗客コンベア装置によれば、スカートガード5の踏段側に発光装置と受光装置を設け、乗降口の間に光線が渡るように配置したので、乗客の靴等がスカートガード5に近づく際に検出でき、乗客の靴等がスカートガード5と踏段2との間隙に挟まれ、乗客が転倒、あるいは足、指などを損傷する事故を未然に防止することが可能となる。また、発光装置9及び受光装置10がスカートガード5の外側(踏段側)に装備されているため、据付及び保守時の点検を容易に行なうことが可能となる。
【0018】
また、警告が発せられて一定時間経過後に運転制御を行うようにすると、乗客への注意を促した後にエスカレータが止まるため、誤停止を減少させることができる。また、高さや位置を変えてセンサを複数組設置した場合は、遮光物の位置に応じて警告と運転制御ができるので、乗客に注意を促すことができ、間隙に挟まれる事故が減少し、安全性が増す。さらに、赤外線やパルス、視野制限により外乱光の影響を受けにくくすると、蛍光灯等に起因する外乱光による誤動作を防ぐ事ができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1は、発光装置9と受光装置10とを乗降口に配置したが、ここでは、乗降口の間に直列に複数組配置したものについて述べる。図6は、この発明を実施するための実施の形態2におけるエスカレータ装置の説明図である。図において、発光装置9a、9bと受光装置10a、10bはスカートガード5の踏段側の同じ側面に設けられ、乗降口の間に光線が渡るように配置されている。発光装置9a、9bはそれぞれ、光線14a、14bを出射し、それぞれ受光装置10a、10bを照射するように構成されている。発光装置9a、9b、受光装置10a、10bとしては、実施の形態1で説明したものを使う事が可能である。
【0020】
検出装置11は、受光装置10a、10bからの受光信号の強度に応じて遮光物の有無を判定する。警告装置12は、検出装置11が遮光物を検出したときに出力する検出信号により動作し、光線14aの範囲内に遮光物が存在するときは警告手段15aを用いて乗客に警告を行い、光線14bの範囲内に遮光物が存在するときは警告手段15bを用いて乗客に警告を行う。運転制御装置13は、検出装置11からの検出信号により駆動装置6を制御して、エスカレータ1の減速や緊急停止を行う。
【0021】
図6では、遮光物検出範囲が2箇所の例を示したが、乗降部を含めて3箇所以上に対しても適用可能である。ここで、乗客コンベアの両端部にあって乗降口に近いエリアを乗降部とし、この目安として、例えば一般的なエスカレータの場合、停止するまでに2.2m程度必要なため、安全をみると、乗降部は乗降口から踏段側に3m程度の範囲の設定が適当である。乗客コンベアの速度に応じて停止する距離が異なるので、乗降部の範囲は適宜変えてもよい。
【0022】
このように構成された乗客コンベア装置の検出装置11の動作について図7のフローチャートに沿って説明する。まず、ステップ100で受光装置からの受光信号を見て、ステップ110で一定強度以下かを判断する。受光強度が強い場合は、ステップ111で遮光物なしと判断する。一定強度以下の場合は遮光物ありと判断し、ステップ120へ進む。ここでは遮光検知エリアの数を判断する。遮光検知エリアが3箇所未満の場合はステップ134に進み、対応するエリアで警告手段15aもしくは15bを用いて警告を行う。遮光検知エリアが3箇所以上の場合はステップ121へ進み、乗降部かどうかを判断する。乗降部ではない(乗降口から遠い)場合はステップ133に進み、対応するエリアで警告を行う。乗降部(乗降口から近い)の場合はステップ130へ進む。ここでは、ステップ132に進んで対応するエリアで警告を行っても良いし、ステップ131に進んで、運転制御、もしくは対応するエリアでの警告と共に運転制御を行っても良い。運転制御としては、踏段2と移動手摺3の減速や緊急停止がある。
【0023】
ステップ132〜134で対応するエリアで警告を行った場合は、ステップ140で警告時間をカウントする。次に、ステップ141で警告を行っている時間がある一定時間以上かを判断し、一定時間以上警告を行っているときは、ステップ150で運転制御を行う。一定時間に達していない場合は、ステップ100へ戻りループを繰返す。なお、警告が行われたため、乗客が気付いてスカートガード5から離れると、ステップ110では受光強度が戻るので、その際は、ステップ111へ移行し、遮光物無しと判断し、警告を解除する。
【0024】
このように構成された乗客コンベア装置によれば、遮光物が検出された場所ごとに警告できるので、乗客へ正確に注意喚起することが可能となる。また、乗降部を含めて3組以上センサが配置されている場合は、事故が起きやすい乗降部では減速、緊急停止し、その他の位置では警告後停止という動作が可能であり、安全性が向上する。
【0025】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、発光装置と受光装置とを離れた場所に配置していたが、ここでは、反射板を用いることにより、近接した場所に設置する方法について述べる。図8は、この発明を実施するための実施の形態3におけるエスカレータ装置の説明図である。図において、発光装置9a、9bと受光装置10a、10bはエスカレータの中央付近のスカートガードの踏段側の同じ側面にかためて配置し、乗降口のスカートガードの同じ側面には反射板16a、16bを設置している。これにより、乗降口の間に光線が渡るように配置されている。発光装置9a、9b、受光装置10a、10bとしては、実施の形態1で説明したものを使う事が可能である。
【0026】
発光装置9a、9bは、それぞれ光線14a、14bを出射し、これらの光は、反射板16a、16bで折り返され、それぞれ受光装置10a、10bで受光される。これらの発光装置と受光装置は、スカートガード5の同じ側面に踏段からの高さを変えて配置してもよい。例えば、発光装置9a、9bの設置位置が高く、受光装置10a、10bの設置位置が踏段2に近い場合は、往路の光は上側、復路の光は下側に位置し踏段2近傍を通ることとなる。
【0027】
なお、図8では、遮光物検出範囲が2箇所での具体例を示したが、乗降部を含めて3箇所以上に対しても適用可能である。このように構成された乗客コンベア装置の検出装置11の動作については実施の形態2と同様である。
【0028】
このように構成された乗客コンベア装置によれば、往復の光を用いるため感知できるエリアが広がり、安全性が増す。また、薄い反射板を用いると省スペース化が可能となる。
【0029】
実施の形態4.
実施の形態2、3では、発光装置と受光装置を複数組設置することによって遮光物の場所を検出していたが、ここでは、実施の形態1の発光装置9と受光装置10と共に、距離測定装置を使用して遮光物の場所を検出する方法について述べる。図9は、この発明を実施するための実施の形態4におけるエスカレータ装置の説明図である。図において、距離測定装置17a、17bは、乗降口付近に設置されており、乗客の靴等によって乗降口間の光線14aを遮光する遮光物18a、18bまでの距離を測定し、距離情報を含んだ信号を検出装置11へ出力する。
【0030】
距離測定装置17a、17bとしては、例えば、三角測量法やTOF(Time of Flight)法等の遮光物からの反射光を用いて距離を測定するものがある。三角測量法は、図10に示すように、発光素子22から投光レンズ23を通った照射光26が遮光物18にあたり、その反射光27が受光レンズ25を通って受光素子24に入射する位置から距離を測定するものである。この受光素子として例えば、PSD(Position Sensitive Detector)等を用いる。また、TOF法は、図11に示すように、送信機28からパルス状の照射光26を出射し、遮光物18にあたった反射光27が受信機29に戻ってくるまでの送信信号30と受信信号31との時間τを測定し、距離を算出するものである。
【0031】
検出装置11は、受光装置10からの受光信号の強度に応じて遮光物の有無を判定すると共に、距離測定装置17a、17bからの距離情報を含んだ信号により乗降口から遮光物までの距離がある一定距離以内(乗降部)かどうかも判定する。
【0032】
警告装置12は、検出装置11が遮光物を検出したときに出力する検出信号により動作し、図9に示すように、光線14aの範囲内に遮光物が存在するときは警告手段15aを用いて乗客に警告を行い、乗降部に遮光物が存在するときは警告手段15b、15cを用いて乗客に警告を行う。運転制御装置13は、検出装置11からの検出信号により駆動装置6を制御して、エスカレータ1の減速や緊急停止を行う。
【0033】
このように構成された乗客コンベア装置の検出装置11の動作について図12のフローチャートに沿って説明する。まず、ステップ101で受光装置と距離測定装置からの出力信号を見に行き、ステップ102で距離測定装置17a、17bからの信号を判断する。信号がある場合は、ステップ122へ進み、エスカレータ1の中央部等で距離測定装置17a、17bの検出エリア外(エスカレータ1の中間部)のため信号が無い場合は、ステップ110へ進む。
【0034】
ステップ110では受光装置が一定強度以下かを判断する。受光強度が強い場合は、ステップ111で遮光物なしと判断する。一定強度以下の場合は遮光物ありと判断し、ステップ135に進み、対応するエリアで警告手段、例えば15aを用いて警告を行う。
【0035】
ステップ122では、距離測定装置17a、17bが一定距離以下(乗降部)の遮光物を検出したかを判定する。距離が離れているときは、ステップ133に進み、対応するエリアで警告を行う。距離が近い(乗降部)ときは、ステップ130へ進む。ここでは、ステップ132に進んで、対応するエリアで警告手段、例えば15b、15cを用いて警告を行っても良いし、ステップ131に進んで、運転制御、もしくは対応するエリアでの警告と共に運転制御を行っても良い。運転制御としては、踏段2と移動手摺3の減速や緊急停止がある。
【0036】
ステップ132、133、135で対応するエリアで警告を行った場合は、ステップ140で警告時間をカウントする。次に、ステップ141で警告を行っている時間がある一定時間以上かを判断し、一定時間以上警告を行っているときは、ステップ150で運転制御を行う。一定時間に達していない場合は、ステップ101へ戻りループを繰返す。なお、警告が行われたため、乗客が気付いてスカートガード5から離れると、距離測定装置からの信号は無くなり、ステップ110では受光強度が戻るので、ステップ111へ移行し、遮光物無しと判断し、警告を解除する。
【0037】
このように構成された乗客コンベア装置によれば、遮光物がエスカレータの中間部のため距離測定装置の検出エリア外の場合は受光装置によって遮光物の有無を検出し、検出エリア内の場合は距離測定装置によって遮光物の場所が検出できる。そのため、検出された場所に対応して警告をしたり、乗降部付近では減速、緊急停止し、その他の位置では警告するというような動作が可能であり、安全性が向上する。また、警告や運転制御を行う際の乗降口からの距離設定を容易に変更できるので、エスカレータの速度や設置環境、利用状況に応じて最適な距離に変更できる。そのため、利便性が向上する。
【0038】
実施の形態5.
実施の形態4では、遮光物までの距離測定のため、遮光物からの反射光を用いた距離測定装置を使用していたが、ここでは、二組の逆向きに往復する光路を用いる距離測定について述べる。図13は、この発明を実施するための実施の形態5におけるエスカレータ装置の説明図である。図において、エスカレータ装置は、発光装置9a〜9d、受光装置10a〜10d、光線導波手段19a、19bを備えている。
【0039】
上側の階の乗降口に配置された発光装置9bからの光線14bは、下側の階の乗降口に配置された受光装置10bで受光され、この受光装置10bに連動して発光する発光装置9dからの光線は、光ファイバ等の光線導波手段19aによって受光装置10dで受光され、左回りの往復の光路を形成する。また、上側の階の発光装置9cからの光線は、光線導波手段19bによって下側の階の受光装置10cで受光され、この受光装置10cに連動して発光する発光装置9aからの光線14aは受光装置10aで受光され、逆向き(右回り)の往復の光路を形成する。
【0040】
光線導波手段19b、19aは、それぞれ、発光装置9c、9dによって出射された光線を受光装置10c、10dへ伝播させるための手段である。例えば、光ファイバー等を使用することが可能であり、同じような長さであることが望ましい。検出装置11は、光線14a、14bが遮断されたときに、受光装置10a、10dからの受光信号により遮光物の有無を判定し、遮光物の位置を特定する。警告装置12は、検出装置11が遮光物を検出したときに出力する検出信号により動作し、検出装置11で特定された場所に対応して最も近い警告手段15を用いて乗客に警告を行う。運転制御装置13は、検出装置11からの検出信号により駆動装置6を制御して、エスカレータ1の減速や緊急停止を行う。
【0041】
このように構成された乗客コンベア装置の検出装置11の距離算出方法について図14を用いて説明する。この図は、受光装置からの出力20と、検出装置の信号21を示している。乗客の靴等がスカートガード5に接近したときに、発光装置9a、9bから出射される光線14a、14bが遮光物18によって同時に遮断されるとする。乗客コンベアの全長をLとし、下側の階の乗降口からLa、上側の階の乗降口からLbの距離に遮光物18があるとする。
【0042】
L=La+Lb (1)
【0043】
光線が遮断された場合、左回りの最後の光は、La+Lの距離を通って受光装置10dに到達し、右回りの最後の光は、Lbの距離を通って受光装置10aに到達する。光速をc、光線導波手段の屈折率をnとすると光線導波手段の中では屈折率だけ光の速度が落ちるので、左回りの最後の光は、(La+nL)/cの時間後に受光装置10dに到達し、右回りの最後の光は、Lb/cの時間後に受光装置10aに到達する。よって、右回りと左回りの光が受光装置に達する時間の差をΔTとすると、(2)式のようになる。
【0044】
(La−Lb+nL)/c=ΔT (2)
【0045】
(1)式と(2)式より、(3)、(4)式が導かれ、遮光物の位置が特定できる。
【0046】
La={(1−n)L+c・ΔT}/2 (3)
Lb={(1+n)L−c・ΔT}/2 (4)
【0047】
よって、乗降口からの一定距離(乗降部)をAとすると、(5)式を満たす場合に運転制御、若しくは警告と共に運転制御を行う。
【0048】
La≦A、又は、Lb≦A (5)
【0049】
この手法は、エスカレータ1の全長に渡って遮光物の位置を把握することができるので、複数の警告手段を設置すると、遮光物の位置に対応して最も近い警告手段から警告可能である。
【0050】
上記の方法で位置を測定するには、光線14aと14bがほぼ同時に遮断される必要があるが、これらの光線が離れていては正確な位置測定が困難となる。そのため、例えば、半導体技術とマイクロマシン技術を用い、同一基板上に発光素子9bと受光素子10aを隣接して形成してマイクロレンズで覆って一方の乗降口に設置し、同様に他方の乗降口にも同様の発光素子9aと受光素子10bを設置してもよい。これによって乗降口に設置したセンサの光線をほぼ同じにする事ができる。
【0051】
なお、上記の方法は、上側の階に設置された発光装置9bからの左回りの往復の光路と、同じく上側の階に設置された発光装置9cからの右回りの往復の光路を用いており、検出装置11は、上側の階に近接して設置された受光装置10d、10aの受光信号から距離を算出していた。しかし、別の階から出射し、別の階で受光しても良い。
【0052】
この場合、上側の階に設置された発光装置9b→光線14b→受光装置10b→発光装置9d→光線導波手段19a→受光装置10d、という左回りの往復の光路と、下側の階に設置された発光装置9a→光線14a→受光装置10a→発光装置9c→光線導波手段19b→受光装置10c、という、右回りの往復の光路を用い、検出装置11は、別の階に設置された受光装置10d、10cの受光信号から距離を算出する。
【0053】
この場合の検出装置11の距離算出方法について図15を用いて説明する。左回りの最後の光は、La+Lの距離を通って受光装置10dに到達し、右回りの最後の光は、Lb+Lの距離を通って受光装置10cに到達する。そのため、左回りの最後の光は、(La+nL)/cの時間後に受光装置10dに到達し、右回りの最後の光は、(Lb+nL)/cの時間後に受光装置10aに到達する。よって、右回りと左回りの光が受光装置に達する時間の差をΔTとすると、(6)式のようになり、(1)式及び(6)式から、乗降口から遮光物までの距離を算出することが可能となる。
【0054】
|La−Lb|/c=ΔT (6)
|La−Lb|=c・ΔT≧B (7)
【0055】
なお、(7)式に示すように、有る値B以上のとき遮光物は乗降口から近い(乗降部)ことになるので、この場合は、運転制御若しくは警告と共に運転制御を行うようにしても良い。ただし、この方法は、受光装置10c、10dが上下の階に分かれているので、検出装置11とそれぞれの受光装置10c、10dとの距離が異なる場合は、それぞれの受光装置10c、10dからの検出信号に時間差が発生するため、あらかじめこの時間差を測定して較正する必要がある。
【0056】
このように構成された乗客コンベア装置によれば、遮光物の位置を把握することができるので、検出された場所に対応して最も近い警告手段から警告をしたり、乗降口付近では減速、緊急停止し、その他の位置では警告することが可能である。そのため、乗客へ正確に注意喚起することができ、安全性が向上する。また、遮光物からの反射光を使わないので、SN比が良い。そのため、感度良く遮光物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来のエスカレータを示す斜視図である。
【図2】従来のエスカレータを示す上面図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示すエスカレータ装置の説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示すエスカレータ装置の発光装置の構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示すエスカレータ装置の受光装置の構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2を示すエスカレータ装置の説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2を示すエスカレータ装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3を示すエスカレータ装置の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4を示すエスカレータ装置の説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4を示すエスカレータ装置の三角測量法の説明図である。
【図11】この発明の実施の形態4を示すエスカレータ装置のTOF法の説明図である。
【図12】この発明の実施の形態4を示すエスカレータ装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態5を示すエスカレータ装置の説明図である。
【図14】この発明の実施の形態5を示すエスカレータ装置の原理を示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態5を示すエスカレータ装置の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 エスカレータ
2 踏段
3 移動手摺
4 内側版
5 スカートガード
6 駆動装置
7 間隙
8 デマケーションライン
9、9a、9b、9c、9d 発光装置
10、10a、10b、10c、10d 受光装置
11 検出装置
12 警告装置
13 運転制御装置
14、14a、14b、14c 光線
15、15a、15b、15c 警告手段
16a、16b 反射板
17a、17b 距離測定装置
18、18a、18b 遮光物
19a、19b 光線導波手段
20 受光装置からの出力
21 検出装置の信号
22 発光素子
23 投光レンズ
24 受光素子
25 受光レンズ
26 照射光
27 反射光
28 送信機
29 受信機
30 送信信号
31 受信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口の間を乗客を載せて搬送する踏段と、
前記踏段と同じ速度で移動する移動手摺と、
前記踏段と前記移動手摺とを動かす駆動装置と、
前記移動手摺を支持する支持部の下部にあって、前記踏段の側面と間隙を保って対向するスカートガードと、
前記スカートガードの前記踏段側の同じ側面に設けられ、前記乗降口の間に光線が渡るように配置された前記光線を出射する発光装置及び前記光線を受光する受光装置と、
前記受光装置からの受光信号によって遮光物を検出する検出装置と、
前記検出装置からの検出信号によって警告を行う警告装置と、
前記検出装置からの検出信号によって前記駆動装置の運転を制御する運転制御装置とを備えた乗客コンベア装置。
【請求項2】
発光装置と受光装置は、乗降口に踏段からの高さと位置を変えて並列に複数組設けられた請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項3】
発光装置と受光装置は、乗降口の間に直列に3組以上設けられ、その内の2組は乗客コンベアの両端部の乗降部にそれぞれ配置され、
検出装置は、前記乗降部の受光装置からの受光信号によって前記乗降部の遮光物を検出する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項4】
遮光物からの反射光によって前記遮光物までの距離を測定する距離測定装置を乗降口に更に備え、
検出装置は、前記距離測定装置からの距離情報によって乗降部の遮光物を検出する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項5】
発光装置と受光装置は、
一方の乗降口に設けられた第一の発光装置と、他方の乗降口に設けられこの第一の発光装置からの光線を受光する第一の受光装置と、この第一の受光装置に近接しこれに連動して発光する第二の発光装置と、この第二の発光装置からの光線を伝える第一の光線導波手段と、前記第一の発光装置に近接し前記第一の光線導波手段からの光線を受光する第二の受光装置とから成る乗降口を往復する第一の光路と、
前記第一の発光装置に近接する第三の発光装置と、この第三の発光装置からの光線を伝える第二の光線導波手段と、前記第一の受光装置に近接し前記第二の光線導波手段からの光線を受光する第三の受光装置と、前記第一の受光装置に隣接して設けられ前記第三の受光装置に連動して発光する第四の発光装置と、前記第一の発光装置に隣接して設けられこの第四の発光装置からの光線を受光する第四の受光装置とから成る第二の光路とを構成し、
検出装置は、前記第二の受光装置と前記第四の受光装置からの受光信号によって遮光物までの距離を算出し、乗降部の前記遮光物を検出する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項6】
発光装置は、赤外線及びパルス状の光線の少なくとも一方を出射する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項7】
受光装置は、受光部の視野制限を行って発光装置からの光を受光する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項8】
発光装置からの光線を反射する反射板をスカートガードの踏段側の同じ側面に更に備え、
受光装置は、この反射板からの前記光線を受光する請求項1記載の乗客コンベア装置。
【請求項9】
運転制御手段は、検出装置が遮光物の検出を一定時間以上継続した際に出力する検出信号により、駆動装置の運転を制御する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の乗客コンベア装置。
【請求項10】
運転制御手段は、検出装置が乗降部の遮光物を検出した際に出力する検出信号により、駆動装置の運転を制御する請求項3ないし5のいずれか1項に記載の乗客コンベア装置。
【請求項11】
警告装置は、検出装置が遮光物を検出した場所に対応して警告を行う請求項3ないし5のいずれか1項に記載の乗客コンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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