説明

乗客コンベア

【課題】踵部分の細い靴を履いた利用客に対して注意喚起を行なうことのできる乗客コンベアの提供。
【解決手段】無端状に連結されて循環移動する複数の踏段1、これらの踏段1と同期して移動し欄干構成部材(2)に案内される移動手摺3、および、踏段1および移動手摺2を駆動するモータを含んでなる駆動装置を制御する制御装置4とを備えた乗客コンベアにおいて、乗降床7に、所定の検出範囲を有する感圧式スイッチ8を複数配置するとともに、乗降床7におけるあらかじめ定められる所定面積、すなわち、ピンヒールの踵部分の面積に基づき定められる所定面積に一定量以上の接触面圧力が作用したことを検出し、音声合成装置6により注意喚起放送を行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、音声合成装置により利用客に注意喚起放送を行う乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗降床に感圧式スイッチを設け、利用客がスイッチ取付部にいることを検出する乗客コンベアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−277192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、服飾動向は時代の流行により変化するが、近年、女性用靴において踵部分が非常に細い靴(一般にピンヒールと称される靴)が好まれる傾向がある。このため、乗客コンベアの構造上、踏段に形成される桟の幅よりピンヒールの踵部分が細い場合、桟に踵部分が挟まり事故に至る恐れがある。なお、前述したものは乗降床に乗客がいることを検出するためのもので、桟に靴の踵部分が挟まる事故を考慮したものではなかった。
【0004】
本発明は、前述した実状に鑑みてなされたもので、その目的は、踵部分の細い靴を履いた利用客に対して注意喚起を行なうことのできる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段、これらの踏段と同期して移動し欄干構成部材に案内される移動手摺、および、前記踏段および前記移動手摺を駆動するモータを含んでなる駆動装置と、この駆動装置を制御する制御装置とを備えた乗客コンベアにおいて、乗降床に、所定の検出範囲を有する感圧式スイッチを複数配置するとともに、前記乗降床におけるあらかじめ定められる所定面積に一定量以上の接触面圧力が作用したことを検出し、音声合成装置により注意喚起放送を行うことを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明は、乗客コンベアの乗降床に踵部分の細い靴を履いた利用客が立った場合、踵部分の接触面積が狭いことから大きな接触面圧力が作用する。これに応じてあらかじめ定められる所定面積に配置された感圧式スイッチは一定量以上の接触面圧力が発生したことを検出し、音声合成装置は注意喚起放送を行う。一方、紳士靴等の踵部分の大きな靴を履いた利用者の場合、接触面積が広いことから接触面圧力は小さくなるとともに、たとえ利用者の体重ゆえに一定以上の接触面圧力が作用したとても、所定面積を超えた範囲に設置される多数の感圧式スイッチが接触面圧力を検出することから、踏段の桟に踵部分が挟まる可能性のある靴を履いた利用者ではないことが適宜判断され、不必要に音声合成装置が動作することを防ぐ。これによって、踵部分の細い靴を履いた利用客に対して的確な注意喚起を行なうことができる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記所定面積は、ピンヒールの踵部分の面積に基づき定められることを特徴としている。このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、ピンヒールの踵部分の面積に基づき音声合成装置の動作基準となる所定面積を定めることから、より限定した利用客、すなわち、踏段の桟に挟まる可能性が高いピンヒールを履いた利用客に確実に注意喚起を行い、利用客の意識を高めることで挟まれ事故を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、踵部分の細い靴を履いた利用客の乗込みを判断し、的確な注意喚起放送を行うことにより利用客の意識を高めることで、踏段に形成される桟へ踵部分が挟まれる事故を低減することができ、これによって、乗客コンベアの安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の乗客コンベアに係る実施の形態を図に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明に係る乗客コンベアの一実施形態を示す概略構成図、図2は乗客コンベアの動作手順を示すフローチャート、図3は靴の形状による圧力分布の違いを表す説明図である。
【0011】
本実施形態の乗客コンベアは図1に示すように、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段1と、踏段1の両側に立設される欄干2と、欄干2に案内され踏段1と同期して移動する移動手摺3と、踏段1および移動手摺3を駆動する図示しない駆動装置を制御する制御装置4と、電気信号を音声に変換するスピーカ5を介して注意喚起放送を行う音声合成装置6とを備えている。また、乗降床7には所定の検出範囲を有する複数の感圧スイッチ8が配置されるとともに、入力回路9を介してそれぞれの感圧スイッチ8の動作状態が制御装置4に取り込まれる。そして、乗降床におけるあらかじめ定められる所定面積、すなわち、ピンヒールの踵部分の面積に基づき定められる所定面積に一定量以上の接触面圧力が作用したことに応じ、音声合成装置6が注意喚起放送を行うようになっている。
【0012】
本実施形態にあっては、乗客コンベアの乗降床に利用客が立つと、図2の手順S1に示すように入力回路9を介してそれぞれの感圧スイッチ8の動作状態が制御装置4に取り込まれる。そして、手順S2として感圧スイッチ8の動作面積が所定面積より狭いか、すなわち、所定数以下の感圧スイッチ8が動作状態にあるかどうかを判断し、このとき動作面積が狭いことが判断されると、手順S3として動作状態にある感圧スイッチ8に一定量以上の接触面圧力が作用しているかどうかを判断する。
【0013】
ここで、図3の(a)に示すように踵部分の細い靴、例えば、ピンヒールを履いた利用客が立った場合、踵部分の接触面積が狭いことから大きな接触面圧力が作用する。一方、(b)に示すように紳士靴等の踵部分の大きな靴を履いた利用者の場合、接触面積が広いことから接触面圧力は小さくなる。また、たとえ利用者の体重ゆえに一定以上の接触面圧力が作用したとても、前述した手順S2で所定面積を超えた範囲に設置される多数の感圧式スイッチが接触面圧力を検出することとなり、したがって、踏段1の桟に踵部分が挟まる可能性のある靴を履いた利用者ではないことが適宜判断されることになる。そして、手順S3で一定量以上の接触面圧力が作用していることが判断されると、制御装置4から音声合成装置6に指令が出力され、手順S4として音声合成装置6はスピーカ5を介して、例えば、「ステップの溝に先が細いヒールや傘等が挟まれることがありますので、ご注意ください。」という注意喚起放送を複数回行う。この後、手順S5として感圧スイッチ8が無動作となると、すなわち、乗降床から利用客が移動したことが判断されると、制御装置4は音声合成装置6に指令を出力し、注意喚起放送を終了する。
【0014】
本実施形態によれば、踵部分の細い靴を履いた利用客、特に、ピンヒールを履いた利用客の乗込みを判断し、的確な注意喚起放送を行うことにより利用客の意識を高めることで、踏段に形成される桟へ踵部分が挟まれる事故を低減することができ、これによって、乗客コンベアの安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】乗客コンベアの動作手順を示すフローチャートである。
【図3】靴の形状による圧力分布の違いを表す説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 踏段
2 欄干
3 移動手摺
4 制御装置
5 スピーカ
6 音声合成装置
7 乗降床
8 感圧スイッチ
9 入力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動する複数の踏段、これらの踏段と同期して移動し欄干構成部材に案内される移動手摺、および、前記踏段および前記移動手摺を駆動するモータを含んでなる駆動装置と、この駆動装置を制御する制御装置とを備えた乗客コンベアにおいて、
乗降床に、所定の検出範囲を有する感圧式スイッチを複数配置するとともに、前記乗降床におけるあらかじめ定められる所定面積に一定量以上の接触面圧力が作用したことを検出し、音声合成装置により注意喚起放送を行うことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記所定面積は、ピンヒールの踵部分の面積に基づき定められることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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