説明

乗物用シート

【課題】後面衝突時における連結部材の変形と、きしみ音の発生を抑制することができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートは、左右一対のサイドフレーム11を有する着座フレーム1と、一対のサイドフレーム11の後部に設けられたシートバックフレームと、シートバックフレームの下方で一対のサイドフレーム11を連結する連結部材3とを備える。連結部材3は、左右方向に延び、一対のサイドフレーム11の間に配置される連結パイプ31と、連結パイプ31の両端に固定され、サイドフレーム11に貫通した状態で当該サイドフレーム11に直接固定される一対の連結ピン32とを備える。連結ピン32は、サイドフレーム11を貫通した状態で固定される貫通部34が中実である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートなどの乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートなどの乗物用シートとして、例えば、特許文献1に記載されているように、乗員が着座する着座部を構成するクッションフレーム(着座フレーム)と、シートバックを構成するバックフレーム(シートバックフレーム)とを備えたものが知られている。また、特許文献1に記載された乗物用シートは、パイプ状のリヤメンバー(連結部材)を備えており、この連結部材の両端が、着座フレームの左右一対のサイドフレームの後部に形成された貫通孔に差し込まれることで、一対のサイドフレームを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−49804号公報(図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が後から追突されたり、後退走行時に追突したりするなど、車両の後面で衝突する、いわゆる後面衝突のとき、シートバック(シートバックフレーム)には乗員から後方へ荷重が掛かることとなる。この荷重は、サイドフレームを介しシートバックフレームの軸回りに伝わって、サイドフレームに差し込まれた連結部材に掛かることになる(図6の矢印参照)ので、パイプ状である連結部材の端部をつぶすように変形させる可能性があった。
【0005】
また、従来の連結部材は、両端がサイドフレームの貫通孔に差し込まれているだけであったので、きしみ音が発生することがあった。
【0006】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、後面衝突時における連結部材の変形と、きしみ音の発生を抑制することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成する本発明の乗物用シートは、左右一対のサイドフレームを有する着座フレームと、前記一対のサイドフレームの後部に設けられたシートバックフレームと、前記シートバックフレームの下方で前記一対のサイドフレームを連結する連結部材と、を備えた乗物用シートであって、前記連結部材は、左右方向に延び、前記一対のサイドフレームの間に配置されるパイプ部材と、前記パイプ部材の両端に固定され、前記サイドフレームに貫通した状態で当該サイドフレームに直接固定される一対のピン状部材と、を備え、前記ピン状部材は、前記サイドフレームを貫通した状態で固定される貫通部が中実であることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、サイドフレームを貫通した状態で固定されるピン状部材の貫通部が中実であるので、後面衝突時にピン状部材(連結部材)に荷重がかかっても、つぶれるようなことはないため、連結部材の変形を抑制することができる。また、上記構成によれば、連結部材の両端(一対のピン状部材)がサイドフレームに直接固定されるので、きしみ音の発生を抑制することできる。
【0009】
前記した乗物用シートは、乗物の床に固定され、前後に長く延びるロアレールと、前記ロアレールに係合することで、前記ロアレールに対し前後にスライド移動可能なアッパーレールと、を備え、前記アッパーレールは、前後方向に延び、前記サイドフレームと固定される板状の取付部を有し、前記サイドフレームは、前記ピン状部材の左右外側の端面が前記取付部の左右内側の面に突き当てられた状態で前記取付部に固定されている構成とすることができる。
【0010】
このような構成によれば、サイドフレームに固定されたピン状部材の端面が取付部に突き当てられた状態で取付部に固定されているので、乗物用シート全体の剛性を向上させることができる。これにより、後面衝突時における連結部材の変形や、きしみ音の発生をより確実に抑制することができる。
【0011】
また、前記したピン状部材の端面が取付部に突き当てられた状態で取付部に固定されている乗物用シートにおいて、前記ピン状部材は、左右外側の端面に雌ねじ部が形成されており、雄ねじ部を有する締結部材によって前記取付部に固定されることで、前記貫通部が中実となる構成とすることができる。
【0012】
このような構成によれば、ピン状部材(連結部材が固定された着座フレーム)と取付部(アッパーレール)を溶接せずに固定することができる。これにより、着座フレームに対して、単体のアッパーレールや、ロアレールに係合した状態のアッパーレールを固定するときに、溶接のスパッタがアッパーレールに付着したり、ロアレールに入り込んだりすることを防止することができる。その結果、ロアレールとアッパーレールの間に溶接のスパッタに起因する異物が入り込むことを抑制できるので、アッパーレール(乗物用シート)のスライド動作の不良を抑制することができる。また、上記構成によれば、ピン状部材の雌ねじ部に締結部材の雄ねじ部を締結することで貫通部が中実となるので、ピン状部材に固定用の雌ねじ部が形成された構成においても、後面衝突時における連結部材の変形を抑制することができる。
【0013】
また、前記したピン状部材の端面が取付部に突き当てられた状態で取付部に固定されている乗物用シートにおいて、前記ピン状部材は、左右外側の端面にかしめ用突部が形成されており、当該かしめ用突部を前記取付部に設けられた貫通孔に挿入し、先端をかしめることで前記取付部に固定される構成とすることもできる。
【0014】
このような構成によっても、ピン状部材(連結部材が固定された着座フレーム)と取付部(アッパーレール)を溶接せずに固定することができるので、ロアレールとアッパーレールの間に異物が入り込むことを抑制でき、乗物用シートのスライド動作の不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の構成によれば、サイドフレームを貫通した状態で固定されるピン状部材の貫通部が中実であるので、後面衝突時における連結部材の変形を抑制することができる。また、連結部材の両端がサイドフレームに直接固定されるので、きしみ音の発生を抑制することできる。
【0016】
請求項2に記載の構成によれば、乗物用シート全体の剛性を向上させることができるので、後面衝突時における連結部材の変形や、きしみ音の発生をより確実に抑制することができる。
【0017】
請求項3に記載の構成によれば、連結部材が固定された着座フレームとアッパーレールを溶接せずに固定することができるので、ロアレールとアッパーレールの間に異物が入り込むことを抑制でき、乗物用シートのスライド動作の不良を抑制することができる。また、ピン状部材に固定用の雌ねじ部が形成された構成においても、後面衝突時における連結部材の変形を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の構成によれば、連結部材が固定された着座フレームとアッパーレールを溶接せずに固定することができるので、ロアレールとアッパーレールの間に異物が入り込むことを抑制でき、乗物用シートのスライド動作の不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】シートフレームの斜視図である。
【図3】シートフレームの分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】実施形態に係る連結ピンに連結パイプを溶接する様子を示す説明図(a)と、比較例に係る連結ピンに連結パイプを溶接する様子を示す説明図(b),(c)である。
【図6】後面衝突時の車両用シートの状態を示す側面図である。
【図7】変形例に係る連結ピンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、乗物用シートに座る乗員を基準とする。
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シートSは、着座部S1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを主に備えて構成されている。
【0021】
車両用シートSは、その内部に、図2に示すようなシートフレームFを備えている。シートフレームFは、着座部S1のフレームである着座フレーム1と、シートバックS2のフレームであるシートバックフレーム2と、連結部材3とを主に備えて構成されている。また、車両用シートSは、ロアレール4と、アッパーレール5とを備えており、前後にスライド移動可能に構成されている。
【0022】
図1に示した車両用シートSの着座部S1およびシートバックS2は、着座フレーム1およびシートバックフレーム2の外側に、クッションおよび表皮を被せることで構成されている。そして、図1に示した車両用シートSは、シートバックフレーム2の後述するピラー支持部25にヘッドレストS3を取り付けることで構成されている。
【0023】
図2,3に示すように、着座フレーム1は、左右一対のサイドフレーム11と、サイドフレーム11の前部を連結するフロントフレーム12とを主に有し、一対のサイドフレーム11の後部が連結部材3によって連結されることで略枠状に構成されている。
【0024】
シートバックフレーム2は、着座フレーム1(一対のサイドフレーム11)の後部に設けられており、左右一対のシートバックサイドフレーム21と、一対のシートバックサイドフレーム21の上部を連結する上部フレーム22と、下端部を連結する下部フレーム23とを主に有して略枠状に構成されている。このシートバックフレーム2は、一対のシートバックサイドフレーム21が着座フレーム1(一対のサイドフレーム11)の後部にリクライニング機構24を介して連結されており、着座フレーム1に対し揺動軸24Aを中心として前後に揺動可能に支持されている。上部フレーム22には、ヘッドレストS3を取り付けるためのピラー支持部25が設けられている。
【0025】
シートバックフレーム2の一対のシートバックサイドフレーム21の間には、板状の受圧部材26が配置されており、連結ワイヤ(符号省略)を介してシートバックサイドフレーム21に取り付けられている。この受圧部材26は、車両が後から追突されたり、後退走行時に追突したりするなど、車両の後面で衝突する、いわゆる後面衝突のときに、乗員から所定以上の後方への荷重が掛かることで後方へ移動する。これにより、乗員の上体は後方に沈み込むことになるので、乗員に対する後面衝突時の荷重の影響を緩和することが可能となっている
【0026】
ロアレール4は、着座フレーム1の下方において左右に所定の間隔をあけて2つ設けられており、前後に長く延びるレール本体41と、フロントブラケット42およびリアブラケット43とを主に有して構成されている。各ロアレール4は、フロントブラケット42とリアブラケット43によって車両(乗物)の床に固定されている。
【0027】
アッパーレール5は、各ロアレール4に対応して1つずつ(合計2つ)設けられており、前後に長く延びるレール本体51と、板状の取付部の一例としての取付板52とを主に有して構成されている。図4に示すように、アッパーレール5は、レール本体51がロアレール4のレール本体41に係合することで、ロアレール4(車両の床)に対し前後にスライド移動可能となっている。
【0028】
取付板52は、前後方向に長く延びる金属板を略L形状に折り曲げることで形成されており、その下部(折曲部52C)が溶接などによってレール本体51の上面に固定されている。この取付板52は、図2,3に示すように、ピン8や後述するボルト9によってサイドフレーム11(着座フレーム1)と固定される。これにより、車両用シートSが、車両の床に対し前後にスライド移動可能となっている。
【0029】
なお、本実施形態において、ピン8による取付板52とサイドフレーム11との固定は、サイドフレーム11および取付板52のそれぞれ設けられた貫通孔11B,52Bにピン8を挿入し、その先端をかしめることによってなされている。
【0030】
連結部材3は、サイドフレーム11の後部、より詳細には、シートバックフレーム2の下方(揺動軸24Aの前側斜め下方付近)で一対のサイドフレーム11を連結する部材であり、パイプ部材の一例としての連結パイプ31と、一対のピン状部材の一例としての連結ピン32とを備えている。この連結部材3は、連結パイプ31の両端に一対の連結ピン32を溶接によって固定することで形成されている。
【0031】
連結パイプ31は、左右方向に延びる略円筒状のパイプであり、例えば、平板状の金属板を円筒状に折り曲げ、突き当てた端面同士を溶接した後、外周面の溶接ばりを除去することで形成されている。この連結パイプ31は、図4に示すように、連結部材3が一対のサイドフレーム11に固定されたときには、一対のサイドフレーム11の間に配置される。なお、図4では、連結部材3の一端側のみを示している。
【0032】
連結ピン32は、連結パイプ31の両端に溶接によって固定される部材であり、挿入部33と、貫通部34とを主に有している。この連結ピン32は、連結部材3が一対のサイドフレーム11に固定されたときには、貫通部34がサイドフレーム11に設けられた貫通孔11Aに係合しており、サイドフレーム11に貫通した状態で当該サイドフレーム11に溶接によって直接固定される。
【0033】
挿入部33は、連結パイプ31の両端(端部)に入り込む略円筒状の部位であり、その外径が連結パイプ31の内径よりも小さく形成されている。これにより、挿入部33が、連結パイプ31の端部に挿入されると、挿入部33の外周面と連結パイプ31の内周面との間に隙間(遊び)ができるので、連結パイプ31の内周面に溶接ばりが残る場合であっても、連結パイプ31と連結ピン32の軸線を合わせることができるようになっている。
【0034】
貫通部34は、連結部材3が一対のサイドフレーム11に固定されたときに、サイドフレーム11に貫通した状態で当該サイドフレーム11に固定される部位であり、挿入部33よりも大径の略円筒状に形成されている。この貫通部34(連結ピン32)は、左右外側の端面(外側端面32A)に、左右内側に向けて凹む形状の穴が設けられており、当該穴の内周面に雌ねじ部32Bが形成されている。この雌ねじ部32Bには、着座フレーム1(連結部材3が固定されたサイドフレーム11)と、アッパーレール5(取付板52)とを固定するときに、雄ねじ部91を有する締結部材の一例としてのボルト9が螺挿される。
【0035】
また、貫通部34は、左右内側の端部(連結パイプ31の端面31Aと対向する部分)に、挿入部33に向けて左右外側から内側へ縮径するように傾斜する傾斜面34Aが形成されている。本実施形態において、連結部材3は、連結パイプ31が、一対の連結ピン32と、この傾斜面34Aにおいて溶接によって固定されている。
【0036】
このような連結部材3は、連結パイプ31の両端(一端側のみ図示)に一対の連結ピン32の挿入部33を挿入し、図示しない治具を用いて、一対の連結ピン32(外側端面32A)の左右の間隔を一対のサイドフレーム11の左右の間隔に合わせて調整したり、連結パイプ31の軸線と各連結ピン32の軸線を合わせたりした後、連結パイプ31と一対の連結ピン32を溶接によって固定することで形成することができる。
【0037】
ここで、図5(b)に示す比較例の連結ピン32’のように、貫通部34の左右内側の端部(端面34A’)が、連結パイプ31の端面31Aと略平行である場合、端面31Aと端面34A’との距離が小さくなると、溶接トーチTが比較的薄肉の連結パイプ31に触れてしまい、連結パイプ31が溶け落ちる可能性が生じる。また、図5(c)に示すように、比較例の連結ピン32’では、連結パイプ31の端面31Aと貫通部34の端面34A’との距離が大きくなると、挿入部33の外周面と連結パイプ31の内周面との間に隙間があることもあり、溶接によって連結パイプ31と接合すること自体が難しくなる。
【0038】
また、連結ピン32’の端面34A’が連結パイプ31の端面31Aと平行であると、上記したとおり、溶接時に、端面34A’と端面31Aとの距離が重要となるので、連結部材3’が取り付けられる一対のサイドフレーム11の間隔がある程度決まっていることを考慮すると、連結パイプ31の長さを揃える必要があるため、連結パイプ31の長さの寸法精度が要求されることとなる。
【0039】
一方、図5(a)に示すように、本実施形態の連結ピン32は、貫通部34の左右内側の端部に挿入部33に向けて縮径するように傾斜する傾斜面34Aが形成されているので、連結パイプ31の長手方向において、端面31Aと傾斜面34Aとの距離が小さくなっても、傾斜面34Aの端面31Aと対向する対向部34Bよりも連結パイプ31の径方向外側(図5(a)において対向部34Bよりも右)に位置する面は、連結パイプ31の長手方向外側(図5の右側)に向けて拡径していることになるので、当該面を目標に溶接トーチTを近づけることで、溶接トーチTが連結パイプ31に触れることを抑制することができる。
【0040】
また、連結パイプ31の長手方向において、端面31Aと傾斜面34Aとの距離が大きくなっても(例えば、図5(c)と同じ距離Dとなった場合でも)、対向部34Bよりも連結パイプ31の径方向内側(図5(a)において対向部34Bよりも左)に位置する面は、挿入部33に向けて縮径するように傾斜しているので、図5(c)に示した比較例の構成と比べて、連結パイプ31に近づくこととなり(連結パイプ31と連結ピン32の距離が小さくなるところができ)、溶接によって連結パイプ31と連結ピン32を接合しやすくなっている。
【0041】
すなわち、本実施形態の連結ピン32は、比較例の連結ピン32’と比べて、連結パイプ31と連結ピン32を容易に溶接することができるようになっている。また、本実施形態の連結ピン32は、溶接時における端面31Aと傾斜面34Aとの距離が、連結パイプ31ごとにある程度ばらついていても問題なく溶接ができるので、連結パイプ31の長さの寸法精度のばらつきをある程度許容することができるようになっている。
【0042】
さらに、本実施形態の連結ピン32は、貫通部34の端面31Aと対向する部分に、挿入部33に向けて縮径するように傾斜する傾斜面34Aが形成されていることで、溶接時に、溶融した材料は傾斜面34Aに沿って連結パイプ31の内周面と挿入部33との間に流れ込むことができる(図4参照)。これにより、連結パイプ31と連結ピン32の接合面積を大きくすることができるので、連結パイプ31と連結ピン32を強固に固定することができるようになっている。
【0043】
次に、車両用シートSの組み立てについて簡単に説明する。
図3に示すように、まず、一対のサイドフレーム11を、連結部材3によって連結し、着座フレーム1を形成する。このとき、連結部材3の両端(一対の連結ピン32の貫通部34)は、図4に示すように、サイドフレーム11に設けられた貫通孔11Aに貫通した状態に係合され、サイドフレーム11に対し溶接によって直接固定される。その後、着座フレーム1(一対のサイドフレーム11)の後部にシートバックフレーム2を連結する。
【0044】
本実施形態では、連結部材3の両端(一対の連結ピン32)がサイドフレーム11に溶接によって直接固定されているので、サイドフレーム11の貫通孔11Aに差し込まれただけの構成とは異なり、きしみ音の発生を抑制することできるようになっている。
【0045】
次に、着座フレーム1(各サイドフレーム11)に、アッパーレール5を固定する。このとき、アッパーレール5は、ロアレール4に係合した状態であってもよいし、単体(ロアレール4に係合していない状態)であってもよい。
【0046】
より具体的に、サイドフレーム11は、連結部材3(連結ピン32)の外側端面32Aが、アッパーレール5の取付板52の左右内側の面(内側面52D)に突き当てられた状態で、ボルト9の雄ねじ部91と連結ピン32の雌ねじ部32Bとの締結によって取付板52(アッパーレール5)に固定される。このとき、連結ピン32は、ボルト9によって取付板52に固定されることで、貫通部34に設けられた穴がボルト9の雄ねじ部91によって埋められるので、貫通部34(少なくとも左右方向においてサイドフレーム11と重なる部分)が中実となる。
【0047】
また、各サイドフレーム11は、図2,3に示すように、貫通孔11Aよりも前側の部分が、取付板52に3つのピン8によって固定される。前記したとおり、ピン8によるサイドフレーム11と取付板52との固定は、サイドフレーム11および取付板52のそれぞれ設けられた貫通孔11B,52Bにピン8を挿入し、その先端をかしめることによってなされる。
【0048】
そして、着座フレーム1およびシートバックフレーム2の外側に、クッションおよび表皮を被せ、ヘッドレストS3を取り付けることで、図1に示す車両用シートSが組み立てられる。このように組み立てられた車両用シートSは、ロアレール4を車両の床にボルトなどで固定することで、車両に取り付けられる。
【0049】
本実施形態では、サイドフレーム11(着座フレーム1)と取付板52(アッパーレール5)とが、ピン8とボルト9により、溶接せずに固定されるので、溶接のスパッタがアッパーレール5に付着したり、ロアレール4に入り込んだりすることを防止することができる。これにより、ロアレール4とアッパーレール5の間に溶接のスパッタに起因する異物が入り込むことを抑制できるので、車両用シートSのスライド動作の不良を抑制することができるようになっている。
【0050】
また、図6に示すように、車両用シートSにおいては、後面衝突のとき、シートバックフレーム2に乗員Hから後方へ荷重が掛かり、この荷重がサイドフレーム11を介して揺動軸24A回りに伝わって、連結部材3の両端(連結ピン32の貫通部34)に掛かることとなる(矢印参照)が、本実施形態では、図4に示すように、連結ピン32は、サイドフレーム11を貫通した状態で固定される貫通部34が中実であるので、後面衝突時に連結ピン32(連結部材3)に荷重がかかっても、つぶれるようなことはない。これにより、後面衝突時における連結部材3の変形を抑制することができるようになっている。
【0051】
さらに、本実施形態では、サイドフレーム11に固定された連結ピン32の外側端面32Aが取付板52に突き当てられた状態で取付板52に固定されているので、車両用シートS全体の剛性を向上させることができるようになっている。これにより、後面衝突時における連結部材3の変形や、きしみ音の発生をより確実に抑制することができる。
【0052】
以下に、本実施形態に係る車両用シートSの効果についてまとめる。
サイドフレーム11を貫通した状態で固定される連結ピン32の貫通部34が中実であるので、後面衝突時における連結部材3の変形を抑制することができる。また、連結部材3の両端(連結ピン32)がサイドフレーム11に溶接によって直接固定されるので、きしみ音の発生を抑制することできる。
【0053】
サイドフレーム11は、連結ピン32の外側端面32Aが取付板52に突き当てられた状態で取付板52に固定されているので、車両用シートS全体の剛性を向上させることができ、後面衝突時における連結部材3の変形や、きしみ音の発生をより確実に抑制することができる。
【0054】
ピン8やボルト9により、連結部材3が固定された着座フレーム1とアッパーレール5を溶接せずに固定しているので、ロアレール4とアッパーレール5の間に異物が入り込むことを抑制でき、車両用シートSのスライド動作の不良を抑制することができる。また、連結ピン32はボルト9によって取付板52に固定されることで貫通部34が中実となるので、連結ピン32に固定用の雌ねじ部32Bが形成された構成においても、後面衝突時における連結部材3の変形を抑制することができる。
【0055】
貫通部34の左右内側の端部に挿入部33に向けて縮径するように傾斜する傾斜面34Aが形成されているので、連結パイプ31と連結ピン32を容易に溶接することができるとともに、連結パイプ31の長さの寸法精度のばらつきをある程度許容することができる。また、溶接時に、溶融した材料が傾斜面34Aに沿って連結パイプ31の内周面と挿入部33との間に流れ込むことができるので、連結パイプ31と連結ピン32を強固に固定することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0057】
前記実施形態では、連結ピン32(ピン状部材)は、外側端面32Aに雌ねじ部32Bが形成され、雄ねじ部91を有するボルト9によって取付板52に固定されることで、貫通部34が中実となる構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明のピン状部材の貫通部は、最初から中実に形成されていてもよい(例えば、図7に示す連結ピン32参照)。
【0058】
前記実施形態では、連結ピン32(サイドフレーム11)と取付板52(アッパーレール5)を溶接せずに固定する方法として、ボルト9による固定を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、連結ピン32の一部(かしめ用突部35の先端)をかしめることによって、連結ピン32と取付板52とを固定してもよい。具体的に、このとき用いられる連結ピン32(ピン状部材)は、図7に示すように、外側端面32A(左右外側の端面)にかしめ用突部35が形成されている。そして、このかしめ用突部35を取付板52に設けられた貫通孔52Aに挿入し、かしめ用突部35の先端をかしることで、連結ピン32(連結部材3が固定された着座フレーム1)を取付板52に固定することができる。
【0059】
このような構成によっても、連結部材3が固定された着座フレーム1と取付板52(アッパーレール5)溶接せずに固定することができるので、ロアレール4とアッパーレール5の間に異物が入り込むことを抑制でき、車両用シートSのスライド動作の不良を抑制することができる。
【0060】
前記実施形態では、サイドフレーム11と取付板52(取付部)とは、連結ピン32(ピン状部材)の外側端面32Aが取付板52の内側面52Dに突き当てられた状態で、ボルト9によって連結ピン32の位置で互いに固定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、サイドフレームと取付部とは、ピン状部材とは異なる位置(例えば、前記実施形態のピン8だけ)で互いに固定されていてもよい。
【0061】
前記実施形態では、アッパーレール5は、主に、レール本体51と取付板52とを有する2部品構成であったが、本発明はこれに限定されず、例えば、レール本体と取付板(取付部)が一体に(1部品として)構成されていてもよい。
【0062】
前記実施形態で示した、着座フレーム1、シートバックフレーム2、ロアレール4およびアッパーレール5の構成は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、これら各部材の細部の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、前記実施形態のシートバックフレーム2は、受圧部材26が設けられていない構成であってもよい。また、着座フレーム1には、着座部S1の高さを調整するためのハイトアジャスト機構を備えていてもよい。
【0063】
前記実施形態では、乗物用シートの適用例として、自動車などの車両用シートを示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶用や航空機用のシートに適用することもできる。
【0064】
前記実施形態では、車両用シートS(乗物用シート)が、ロアレール4とアッパーレール5を備え、前後にスライド移動可能に構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の乗物用シートは、ロアレールとアッパーレールを備えない構成(前後にスライド移動しない構成)であってもよい。
【0065】
前記実施形態では、車両用シートS(乗物用シート)がリクライニング機構24を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の乗物用シートは、リクライニング機構を備えない構成であってもよい。この場合、着座フレームとシートバックフレーム(前記実施形態のサイドフレーム11とシートバックサイドフレーム21)は、一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 着座フレーム
2 シートバックフレーム
3 連結部材
4 ロアレール
5 アッパーレール
9 ボルト
11 サイドフレーム
31 連結パイプ
31A 端面
32 連結ピン
32A 外側端面
32B 雌ねじ部
33 挿入部
34 貫通部
34A 傾斜面
35 かしめ用突部
52 取付板
52A 貫通孔
91 雄ねじ部
F シートフレーム
S 車両用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のサイドフレームを有する着座フレームと、
前記一対のサイドフレームの後部に設けられたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの下方で前記一対のサイドフレームを連結する連結部材と、を備えた乗物用シートであって、
前記連結部材は、
左右方向に延び、前記一対のサイドフレームの間に配置されるパイプ部材と、
前記パイプ部材の両端に固定され、前記サイドフレームに貫通した状態で当該サイドフレームに直接固定される一対のピン状部材と、を備え、
前記ピン状部材は、前記サイドフレームを貫通した状態で固定される貫通部が中実であることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
乗物の床に固定され、前後に長く延びるロアレールと、
前記ロアレールに係合することで、前記ロアレールに対し前後にスライド移動可能なアッパーレールと、を備え、
前記アッパーレールは、前後方向に延び、前記サイドフレームと固定される板状の取付部を有し、
前記サイドフレームは、前記ピン状部材の左右外側の端面が前記取付部の左右内側の面に突き当てられた状態で前記取付部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ピン状部材は、左右外側の端面に雌ねじ部が形成されており、雄ねじ部を有する締結部材によって前記取付部に固定されることで、前記貫通部が中実となることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ピン状部材は、左右外側の端面にかしめ用突部が形成されており、当該かしめ用突部を前記取付部に設けられた貫通孔に挿入し、先端をかしめることで前記取付部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−136087(P2012−136087A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288286(P2010−288286)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】