説明

乳化液の製造方法及び化粧料の製造方法

【課題】乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の使用量を減らすことが可能な乳化液の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の乳化液の製造方法は、HLB12以上の親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水からなる予備乳化液を準備する予備乳化液準備工程と、予備乳化液に高圧乳化処理を行い、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造する乳化液製造工程とをこの順序で含む乳化液の製造方法であって、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、2重量%≦A≦10重量%、5重量%≦B≦30重量%、15重量%≦C≦85重量%及び5重量%≦D≦45重量%を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化液の製造方法及び化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリグリセリン脂肪酸エステル、油分、多価アルコール及び水からなる予備乳化液を高圧乳化処理して、平均粒子径が0.1μm以下の乳化粒子を含有する乳化液を製造する乳化液の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の乳化液の製造方法によれば、安全性が高い反面、乳化力が弱いポリグリセリン脂肪酸エステルを親水性界面活性剤として用いながらも、平均粒子径が0.1μm以下の乳化粒子を含有し、乳化安定性及び使用感に優れた乳化液を製造することができ、ひいては、安全性、乳化安定性及び使用感に優れた化粧料を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−86435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化粧料の技術分野においては、安全性及び使用感の観点から、基本的な性能を損なわないようにしながら界面活性剤の使用量をできる限り減らすことが可能な技術が常に求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、基本的性能としての乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の使用量を減らすことが可能な乳化液の製造方法を提供することを目的とする。また、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の含有量の低い化粧料を製造することのできる化粧料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の乳化液の製造方法は、HLB12以上の親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水からなる予備乳化液を準備する予備乳化液準備工程と、前記予備乳化液に高圧乳化処理を行い、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造する乳化液製造工程とをこの順序で含む乳化液の製造方法であって、前記予備乳化液における、前記親水性界面活性剤の含有量をAとし、前記油分の含有量をBとし、前記多価アルコールの含有量をCとし、前記水の含有量をDとしたとき、2重量%≦A≦10重量%、5重量%≦B≦30重量%、15重量%≦C≦85重量%及び5重量%≦D≦45重量%を満たすことを特徴とする。
【0008】
[2]本発明の乳化液の製造方法においては、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
0.17≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (1)
【0009】
[3]本発明の乳化液の製造方法においては、以下の式(2)を満たすことがより好ましい。
0.30≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (2)
【0010】
[4]本発明の乳化液の製造方法においては、以下の式(3)を満たすことがさらに好ましい。
0.48≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (3)
【0011】
[5]本発明の乳化液の製造方法においては、以下の式(4)を満たすことが好ましい。
0.27≦A/B≦1 ・・・ (4)
【0012】
[6]本発明の乳化液の製造方法においては、前記高圧乳化処理の圧力が500bar〜1000barであることを特徴とする。
【0013】
[7]本発明の乳化液の製造方法においては、前記親水性界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
[8]本発明の乳化液の製造方法においては、前記油分の構成成分として、N‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸誘導体及びトコフェロールエステルのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0015】
[9]本発明の乳化液の製造方法においては、前記多価アルコールが、グリセリン、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0016】
[10]本発明の化粧料の製造方法は、本発明の乳化液の製造方法により製造された乳化液と、水及び他の化粧料成分とを混合して化粧料を製造する化粧料製造工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乳化液の製造方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、平均粒子径が10nm〜100nmという極めて微細な乳化粒子が形成される所定の条件で乳化液を製造することとしているため、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の使用量を減らすことが可能となる。
【0018】
また、本発明の化粧料の製造方法によれば、本発明の乳化液の製造方法によって製造された乳化液を用いて化粧料を製造することとしているため、後述する実施例からも明らかなように、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の含有量の低い化粧料を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1〜4及び比較例1における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図2】実施例5〜9及び比較例2における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図3】実施例10〜12及び比較例3における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図4】実施例13〜15及び比較例4における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図5】実施例16〜18及び比較例5における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図6】実施例19〜22及び比較例6における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図7】実施例23〜26及び比較例7における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図8】実施例27〜29及び比較例8における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図9】実施例30〜34及び比較例9〜11における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図10】実施例23〜34及び比較例7〜11における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【図11】実施例35〜37における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の乳化液の製造方法及び化粧料の製造方法について、実施形態に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態1]
実施形態1に係る乳化液の製造方法は、予備乳化液を準備する予備乳化液準備工程と、予備乳化液を高圧乳化処理して乳化液を製造する乳化液製造工程とをこの順序で含む乳化液の製造方法である。以下、各工程を説明する。
【0022】
1.予備乳化液準備工程
予備乳化液準備工程は、HLB12以上の親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水を混合・撹拌することにより、HLB12以上の親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水からなる予備乳化液を準備する工程である。
【0023】
予備乳化液準備工程においては、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、2重量%≦A≦10重量%、5重量%≦B≦30重量%、15重量%≦C≦85重量%及び5重量%≦D≦45重量%を満たすとともに、以下の式(1)及び(4)を満たすようにする。
0.17≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (1)
0.27≦A/B≦1 ・・・ (4)
【0024】
親水性界面活性剤としては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0025】
このうち、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリルなどを用いることができる。
【0026】
また、ショ糖脂肪酸エステルとしては、市販のショ糖脂肪酸エステル、例えば、LWA−1570、L−1695、P−1570、P−1670、S−1570、S−1670、M−1695、O−1570(いずれも三菱化学フーズ株式会社の商品名。)などを用いることができる。
【0027】
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体としては、市販のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、例えば、NIKKOL HCO−40、HCO−50、HCO−60、HCO−80、HCO−100、HCO−40(医薬用)、HCO−50(医薬用)、HCO−60(医薬用)(いずれも日光ケミカルズ株式会社の商品名。)などを用いることができる。
【0028】
油分としては、例えば、スクワラン、植物性スクワランなどを用いることができる。なお、油分としては、N‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸誘導体及びトコフェロールエステルのうち少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0030】
水としては、例えば、精製水、イオン交換水又は常水を用いることができる。
【0031】
上記成分を混合・撹拌した直後は、濁りのある均一又は不均一な溶液となるが、時間経過により水層と油層とに分離する。
【0032】
2.乳化液製造工程
乳化液製造工程は、予備乳化液を高圧乳化処理することにより、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造する工程である。
【0033】
高圧乳化処理は、高圧ホモジナイザーを用いて、室温(例えば、15℃〜30℃。)、500bar〜1000barにて行う。
【0034】
製造された乳化液は、透明〜半透明の液体であり、条件によっては青白く見える。40℃で1月静置しても分離や白濁を起こすことはなかった。
【0035】
実施形態1に係る乳化液の製造方法によれば、平均粒子径が10nm〜100nmという極めて微細な乳化粒子が形成される条件で乳化液を製造することとしているため、安全性、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の使用量を減らすことが可能となる。
【0036】
なお、実施形態1に係る乳化液の製造方法においては、2重量%≦A≦7.5重量%を満たすことがより好ましい。基本的な性能(乳化粒子の平均粒子径及び乳化安定性)を損なわないようにしながら界面活性剤の使用量をできる限り減らすことが可能だからである。この観点から言えば、2重量%≦A≦5重量%を満たすことがさらに好ましい。
【0037】
また、実施形態1に係る乳化液の製造方法においては、以下の式(2)を満たすことがより好ましい。
0.30≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (2)
これは、後述する実施例からも明らかなように、基本的な性能(乳化粒子の平均粒子径及び乳化安定性)を損なわないようにしながら界面活性剤の使用量をできる限り減らすことが可能だからである。この観点から言えば、以下の式(3)を満たすことがさらに好ましい。
0.48≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (3)
【0038】
[実施形態2]
実施形態2に係る化粧料の製造方法は、実施形態1に係る乳化液の製造方法により製造された乳化液と、水及び他の化粧料成分とを混合して化粧料とする化粧料製造工程を含む化粧料の製造方法である。従って、実施形態2に係る化粧料の製造方法は、予備乳化液準備工程、乳化液製造工程及び化粧料製造工程をこの順序で含む。以下、各工程を説明する。
【0039】
1.予備乳化液準備工程
予備乳化液準備工程は、実施形態1における予備乳化液準備工程と同様である。
【0040】
2.乳化液製造工程
乳化液製造工程は、実施形態1における乳化液製造工程と同様である。
【0041】
3.化粧料製造工程
化粧料製造工程は、乳化液と、水及び他の化粧料成分とを混合して化粧料を製造する工程である。他の化粧料成分の種類及び配合量、また、混合するための機器、温度及び時間等の種々の条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料の種類に応じて任意に設定することができる。
【0042】
他の化粧料成分としては、例えば、保湿剤、アルコール類、薬効成分、増粘剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、色素、親水性紫外線散乱剤、水溶性ビタミン類、植物エキスなどを用いることができる。
【0043】
実施形態2に係る化粧料の製造方法によれば、実施形態1に係る乳化液の製造方法によって製造された乳化液を用いて化粧料を製造することとしているため、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の含有量の低い化粧料を製造することが可能となる。
【0044】
以下、本発明の乳化液の製造方法及び化粧料の製造方法の効果を、以下に示す各実施例及び各比較例に基づいて説明する。
【0045】
[実施例1〜4及び比較例1]
実施例1〜4及び比較例1においては、親水性界面活性剤のHLB値を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0046】
表1は、実施例1〜4及び比較例1における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。実施例1〜4及び比較例1においては、表1に示すように、親水性界面活性剤としてモノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、POE(40)硬化ヒマシ油、ショ糖ラウリン酸エステル又はPOE(40)セチルエーテルを用い、油分としてスクワランを用い、多価アルコールとしてグリセリンを用い、水として精製水を用いた。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1〜4及び比較例1においては、以下のようにして乳化液を製造した。すなわち、まず、精製水にグリセリンを加えた溶液を加熱した後、均一に攪拌混合して水相を調製した。また、スクワランに親水性界面活性剤を加えた溶液を加熱した後、均一に攪拌混合して油相を調製した。その後、油相を水相に添加し、ホモミキサーで乳化処理して予備乳化液とした。さらにその後、予備乳化液を40℃まで冷却した後、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイディックス社製)を用いて750barで2回高圧乳化処理することにより乳化液を調製した。なお、後述する各実施例及び各比較例においても基本的には同様の工程により乳化液を製造した。
【0049】
その後、製造された乳化液について、島津製作所のナノ粒子分布測定装置SALD−7100を用いて、乳化粒子の平均粒子径を測定した。なお、後述する各実施例及び各比較例においても同様のナノ粒子分布測定装置を用いて乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0050】
図1は、実施例1〜4及び比較例1における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。なお、図中の斜線で示す範囲は、乳化粒子の平均粒子径が10nm〜100nmである範囲、すなわち乳化安定性が高い範囲を示している。後述する各実施例及び各比較例においても同様である。
【0051】
図1から分かるように、実施例1〜4のとき、すなわち、親水性界面活性剤のHLBの値を12以上としたときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0052】
[実施例5〜9及び比較例2]
実施例5〜9及び比較例2においては、乳化液に対する親水性界面活性剤の配合量を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0053】
表2は、実施例5〜9及び比較例2における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0054】
【表2】

【0055】
図2は、実施例5〜9及び比較例2における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図2から分かるように、実施例5〜9のとき、すなわち、乳化液に対する親水性界面活性剤の配合量を2重量%〜10重量%としたときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0056】
なお、乳化液に対する親水性界面活性剤の配合量が10重量%を超える条件で乳化液を製造する場合には、親水性界面活性剤の使用量が多くなるとともに使用感が低下して本発明の目的を達成できないため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0057】
[実施例10〜12及び比較例3]
実施例10〜12及び比較例3においては、乳化液に対する油分の配合量を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0058】
表3は、実施例10〜12及び比較例3における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0059】
【表3】

【0060】
図3は、実施例10〜12及び比較例3における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図3から分かるように、実施例10〜12のとき、すなわち、乳化液に対する油分の配合量を5重量%〜30重量%としたときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0061】
なお、乳化液に対する油分の配合量が5重量%未満の条件で乳化液を製造する場合には、十分な乳化効率が得られるのではあるが、十分なエモリエント効果が得られずに使用感が低下することが予め分かっていたため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0062】
[実施例13〜15及び比較例4]
実施例13〜15及び比較例4においては、乳化液に対する多価アルコールの配合量を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0063】
表4は、実施例13〜15及び比較例4における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0064】
【表4】

【0065】
図4は、実施例13〜15及び比較例4における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図4から分かるように、実施例13〜15のとき、すなわち、乳化液に対する多価アルコールの配合量を15重量%〜85重量%としたときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0066】
なお、乳化液に対する多価アルコールの配合量が85重量%を超える条件で乳化液を製造する場合には、水の含有量が少なすぎて乳化効率が低くなりすぎることが予め分かっていたため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0067】
[実施例16〜18及び比較例5]
実施例16〜18及び比較例5は、高圧乳化処理の圧力を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0068】
表5は、実施例16〜18及び比較例5における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量、高圧乳化処理の圧力並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0069】
【表5】

【0070】
図5は、実施例16〜18及び比較例5における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図5から分かるように、実施例16〜18のとき、すなわち、高圧乳化処理の圧力を500bar〜1000barとしたときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0071】
なお、高圧乳化処理の圧力が1000barを超える条件で乳化液を製造する場合には、十分な乳化効率が得られるのではあるが、高圧ホモジナイザーに与える負荷が大きくなるため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0072】
[実施例19〜22及び比較例6]
実施例19〜22及び比較例6においては、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたときの、「A/B」の値を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。
【0073】
表6は、実施例19〜22及び比較例6における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の化粧料に対する配合量、「A/B」の値並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0074】
【表6】

【0075】
図6は、実施例19〜22及び比較例6における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図6から分かるように、実施例19〜22のとき、すなわち、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、「0.27≦A/B≦1 ・・・ (4)」を満たすときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0076】
0.27≦A/Bを満たすときに平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することが可能となるのは、A/Bの値が0.27未満である場合には、乳化力が弱くなりすぎるからである。
【0077】
なお、A/Bの値が1を超える場合には、乳化力は十分であるのであるが、親水性界面活性剤の使用量が多くなるとともに使用感が低下して本発明の目的を達成できないため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0078】
[実施例23〜26及び比較例7]
実施例23〜26及び比較例7は、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたときの、「C/(C+D)」の値を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。なお、実施例23〜26及び比較例7においては、A=10重量%の条件で乳化液を製造した。
【0079】
表7は、実施例23〜26及び比較例7における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量、「C/(C+D)」の値並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0080】
【表7】

【0081】
図7は、実施例23〜26及び比較例7における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。なお、図を見やすくするため、図7中、実施例23〜26のデータについてはE23〜E26の符号を付し、比較例7のデータについてはCE7の符号を付した。
【0082】
図7から分かるように、実施例23〜26のとき、すなわち、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、「0.17≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (1)」を満たすときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0083】
0.17≦C/(C+D)≦0.94を満たすときに平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することが可能となるのは、C/(C+D)の値が0.17以上になると水相の粘度が適度に高くなることにより乳化効率が高くなるからであると推測される。
【0084】
なお、C/(C+D)の値が0.94を超える条件で乳化液を製造する場合には、水の含有量が少なすぎて乳化効率が低くなる傾向がみられたため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0085】
[実施例27〜29及び比較例8]
実施例27〜29及び比較例8は、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたときの、「C/(C+D)」の値を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。なお、実施例27〜29及び比較例8においては、A=7.5重量%の条件で乳化液を製造した。
【0086】
表8は、実施例27〜29及び比較例8における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量、「C/(C+D)」の値並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【0087】
【表8】

【0088】
図8は、実施例27〜29及び比較例8における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。なお、図を見やすくするため、図8中、実施例27〜29のデータについてはE27〜E29の符号を付し、比較例8のデータについてはCE8の符号を付した。
【0089】
図8から分かるように、実施例27〜29のとき、すなわち、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、「0.30≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (2)」を満たすときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0090】
0.30≦C/(C+D)≦0.94を満たすときに平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することが可能となるのは、C/(C+D)の値が0.30以上になると水相の粘度が適度に高くなることにより乳化効率が高くなるからであると推測される。
【0091】
なお、C/(C+D)の値が0.94を超える条件で乳化液を製造する場合には、水の含有量が少なすぎて乳化効率が低くなる傾向がみられたため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0092】
[実施例30〜34及び比較例9〜11]
実施例30〜34及び比較例9〜11は、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたときの、「C/(C+D)」の値を変化させて乳化液を製造し、当該乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。なお、実施例30〜34及び比較例9〜11においては、A=5重量%の条件で乳化液を製造した。
【0093】
表9は、実施例30〜34及び比較例9〜11における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の乳化液に対する配合量、「C/(C+D)」の値並びに乳化液に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。
【表9】

【0094】
図9は、実施例30〜34及び比較例9〜11における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。なお、図を見やすくするため、図9中、実施例30〜34のデータについてはE30〜E34の符号を付し、比較例9〜11のデータについてはCE9〜CE11の符号を付した。
【0095】
図9から分かるように、実施例30〜34のとき、すなわち、予備乳化液における、親水性界面活性剤の含有量をAとし、油分の含有量をBとし、多価アルコールの含有量をCとし、水の含有量をDとしたとき、「0.48≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (3)」を満たすときに、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができた。
【0096】
0.48≦C/(C+D)≦0.94を満たすときに平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することが可能となるのは、C/(C+D)の値が0.48以上になると水相の粘度が適度に高くなることにより乳化効率が高くなるからであると推測される。
【0097】
なお、C/(C+D)の値が0.94を超える条件で乳化液を製造する場合には、水の含有量が少なすぎて乳化効率が低くなる傾向がみられたため、当該条件では乳化液を製造しなかった。
【0098】
図10は、実施例23〜34及び比較例7〜11における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。図10中、横軸は活性剤の配合料(重量%)であり、縦軸は「C/(C+D)」である。また、図10中、乳化粒子の平均粒子径が10nm〜100nmであるデータには「●」を付し、乳化粒子の平均粒子径が100nmを超えるデータには「×」を付した。
【0099】
図10から分かるように、親水性界面活性剤の含有量(A)が低くなるに従って、乳化安定性の高い「C/(C+D)」の範囲、すなわち、乳化粒子の平均粒子径が10nm〜100nmである「C/(C+D)」の範囲が徐々に狭くなっていることが明らかとなった。また、「C/(C+D)」の値を、「0.48≦C/(C+D)≦0.94」を満たすようにすれば、親水性界面活性剤の含有量(A)を5重量%にまで低くした場合であっても、乳化安定性が高く、乳化粒子の平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含む乳化液を製造することができることが明らかとなった。
【0100】
[実施例35〜37]
実施例35〜37においては、本発明の乳化液の製造方法により製造された、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造するとともに当該乳化液と水とを混合して化粧料を製造し、当該乳化液及び当該化粧料に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定した。このうち、実施例35は、Cの値が下限(15重量%)かつDの値が上限(45重量%)の場合における実施例であり、実施例36は、Aの値が下限の場合(2重量%)における実施例であり、実施例37は、Aの値が下限(2重量%)かつDの値が上限(45重量%)の場合における実施例である。すなわち、本発明の条件のうち相対的に乳化安定性が低くなると考えられる条件における実施例である。
【0101】
表10は、実施例35〜37における親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水の配合量(乳化液については乳化液に対する配合量、化粧料については化粧料に対する配合量)並びに乳化液又は化粧料に含まれる乳化粒子の平均粒子径を示す表である。図11は、実施例35〜37における乳化粒子の平均粒子径を示す図である。
【0102】
【表10】

【0103】
表10及び図11から分かるように、本発明の条件のうち相対的に乳化安定性が低くなると考えられる条件を採用したとしても、一旦平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造することができれば、その後、当該乳化液を用いて化粧料を製造した場合に乳化粒子の平均粒子径が所望の範囲から外れてしまうことなく、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する化粧料を製造することができた。
【0104】
以上説明したように、本発明の乳化液の製造方法によれば、平均粒子径が10nm〜100nmという極めて微細な乳化粒子が形成される条件で乳化液を製造することとしているため、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の使用量を減らすことが可能となる。
【0105】
また、本発明の化粧料の製造方法によれば、本発明の乳化液の製造方法によって製造された乳化液を用いて化粧料を製造することとしているため、乳化安定性及び使用感を損なわないようにしながら親水性界面活性剤の含有量の低い化粧料を製造することが可能となる。
【0106】
以上、本発明の乳化液の製造方法及び化粧料の製造方法を上記の実施形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0107】
(1)上記実施形態においては、親水性界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらの親水性界面活性剤以外のHLB12以上の親水性界面活性剤を用いることができる。
【0108】
(2)上記実施形態においては、油分として、スクワラン又は植物スクワランを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの油分以外の油分、例えばN‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸誘導体及びトコフェロールエステルのうち少なくとも1種を用いることができる。また、油分として、脂溶性の化粧料成分(例えば、香料、紫外線吸収剤、親油化処理された紫外線散乱剤、油溶性ビタミン類)を配合したものを用いることもできる。
【0109】
(3)上記実施形態においては、多価アルコールとして、グリセリン、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらの多価アルコール以外の多価アルコールを用いることもできる。
【0110】
(4)上記実施形態においては、マイクロフルイディックス社の高圧ホモジナイザーを用いて高圧乳化処理を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガウリン社その他の高圧ホモジナイザーを用いて高圧乳化処理を行うこともできる。
【0111】
(5)上記実施形態においては、水と乳化液とを混合して化粧料を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。水及び水溶性の化粧料成分(例えば、保湿剤、アルコール類、薬効成分、増粘剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、色素、親水性紫外線散乱剤、水溶性ビタミン類、植物エキス)と、乳化液とを混合して化粧料を製造することもできる。
【0112】
(6)本発明の乳化液は、スキンケア製品、ヘアケア製品、ボディケア製品、入浴剤などの各種化粧料に用いることができる。また、本発明の乳化液は、化粧水、乳剤、美容液、クリームなどの各種剤形の化粧料に用いることができる。従って、本発明の化粧料には、スキンケア製品、ヘアケア製品、ボディケア製品、入浴剤などの各種化粧料が含まれる。また、本発明の化粧料には、化粧水、乳剤、美容液、クリームなどの各種剤形の化粧料が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLB12以上の親水性界面活性剤、油分、多価アルコール及び水からなる予備乳化液を準備する予備乳化液準備工程と、
前記予備乳化液に高圧乳化処理を行い、平均粒子径が10nm〜100nmの乳化粒子を含有する乳化液を製造する乳化液製造工程とをこの順序で含む乳化液の製造方法であって、
前記予備乳化液における、前記親水性界面活性剤の含有量をAとし、前記油分の含有量をBとし、前記多価アルコールの含有量をCとし、前記水の含有量をDとしたとき、2重量%≦A≦10重量%、5重量%≦B≦30重量%、15重量%≦C≦85重量%及び5重量%≦D≦45重量%を満たすことを特徴とする乳化液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の乳化液の製造方法において、
以下の式(1)を満たすことを特徴とする乳化液の製造方法。
0.17≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (1)
【請求項3】
請求項2に記載の乳化液の製造方法において、
以下の式(2)を満たすことを特徴とする乳化液の製造方法。
0.30≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (2)
【請求項4】
請求項3に記載の乳化液の製造方法において、
以下の式(3)を満たすことを特徴とする乳化液の製造方法。
0.48≦C/(C+D)≦0.94 ・・・ (3)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の乳化液の製造方法において、
以下の式(4)を満たすことを特徴とする乳化液の製造方法。
0.27≦A/B≦1 ・・・ (4)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の乳化液の製造方法において、
前記高圧乳化処理の圧力が500bar〜1000barであることを特徴とする乳化液の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の乳化液の製造方法において、
前記親水性界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする乳化液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の乳化液の製造方法において、
前記油分の構成成分として、N‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸誘導体及びトコフェロールエステルのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする乳化液の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の乳化液の製造方法において、
前記多価アルコールが、グリセリン、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする乳化液の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の乳化液の製造方法により製造された乳化液と、水及び他の化粧料成分とを混合して化粧料を製造する化粧料製造工程を含むことを特徴とする化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−1289(P2011−1289A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144953(P2009−144953)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(398050777)株式会社アルソア本社 (10)
【Fターム(参考)】