説明

乳化組成物

【課題】紫外線散乱剤を併用しても活性酸素除去剤及び抗酸化剤を安定性よく保持する乳化組成物を提供する。
【解決手段】本発明の乳化組成物は、油相及び水相から構成される乳化組成物であって、紫外線散乱剤と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種とをそれぞれ別個に、乳化組成物を構成する油相及び水相の異なる相に添加してなる。好ましくは、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種は、水相に分散するO/W型乳化粒子に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カロテノイドなどの天然物から抽出された色素成分の活性酸素除去性もしくは抗酸化性が、生体内の酸化ストレス除去に有効であることが見出され、健康食品、外用医薬品、化粧料などの分野に応用が期待されている。しかしながら、それらの成分は、高活性ゆえに安定性、耐光性に問題があった。
例えば、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンは、その活性が注目されている素材であるが、安定性が低い。これらを改善するために、安定性においては、例えば、酸素非透過性の包装材料に密封するという物理的な方法(例えば、特許文献1)、フラバノール及びコウジ酸を併用する方法(例えば、特許文献2)、有機酸又は有機酸塩と没食子酸とを併用する方法(例えば、特許文献3)などの化学的な方法などで安定化されることが知られている。
また一般的に慢性的な紫外線曝露によって肌荒れやシワの発生、たるみ、色素沈着などの皮膚防止するために、酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線遮蔽剤を含有することも行われている(例えば、特許文献4)。
しかしながら、これらの紫外線遮蔽剤(紫外線散乱剤)は、触媒効果も備わっているため、天然成分由来の活性酸素除去剤及び抗酸化剤を添加と共に用いて組成物を形成すると、有効成分としての活性酸素除去剤もしくは抗酸化剤の安定性が低下する。
【特許文献1】特開平8−12896号公報
【特許文献2】特開平8−332052号公報
【特許文献3】特開2002−218940号公報
【特許文献4】特許第3863675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、紫外線散乱剤を併用しても、有効成分としての活性酸素除去剤及び抗酸化剤を長期経時でも安定性よく保持することができる乳化組成物が望まれていた。
本発明の目的は、紫外線散乱剤を併用しても活性酸素除去剤及び/又は抗酸化剤を安定性よく保持することができる乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の乳化組成物は、以下のものである。
<1> 油相及び水相から構成される乳化組成物であって、紫外線散乱剤と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種とをそれぞれ別個に、乳化組成物を構成する油相及び水相の異なる相に添加してなる乳化組成物。
<2> 前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、前記水相に添加される<1>の乳化組成物。
<3> 前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、前記水相に分散するO/W型乳化粒子に含まれる<2>の乳化組成物。
<4> 前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、活性酸素除去剤及び抗酸化剤を共に含む<1>〜<3>のいずれかの乳化組成物。
<5> 前記紫外線散乱剤が、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択された少なくとも1つである<1>〜<4>のいずれかの乳化組成物。
<6> 前記乳化組成物が活性酸素除去剤を含み、該活性酸素除去剤が、マンニトール、カロテノイド類、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸及びその誘導体、グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1つである<1>〜<5>のいずれかの乳化組成物。
<7> 前記乳化組成物が抗酸化剤を含み、該抗酸化剤が、ビタミンA類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンE類及びその誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択された少なくとも1種である前記活性酸素除去剤を含む<1>〜<6>のいずれかの乳化組成物。
<8> 紫外線吸収剤を更に含む<1>〜<7>のいずれかの乳化組成物。
<9> 前記乳化組成物が活性酸素除去剤を含み、該活性酸素除去剤が、カロテノイド類である<1>〜<8>のいずれかの乳化組成物。
<10> 前記乳化組成物が抗酸化剤を含み、該抗酸化剤が、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩と、ビタミンE類及びその誘導体並びにそれらの塩とからなる群より選択された少なくとも1種である<1>〜<9>のいずれかの乳化組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、紫外線散乱剤を併用しても、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種を安定性よく保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の乳化組成物は、油相及び水相から構成される乳化組成物であって、紫外線散乱剤と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種とをそれぞれ別個に、乳化組成物を構成する油相及び水相の異なる相に添加してなる乳化組成物である。
本発明の乳化組成物では、紫外線散乱剤(本発明において、成分(A)ということがある。)と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種(本発明において、成分(B)ということがある。)とが、乳化組成物を構成する油相及び水相の異なる相にそれぞれ別個に添加されている。これにより、触媒効果等がある紫外線散乱剤を、活性酸素除去剤及び/又は抗酸化剤を含有する乳化組成物に用いても、活性酸素除去剤及び/又は抗酸化剤とは別の相に添加されているので、活性酸素除去剤及び/又は抗酸化剤の安定性を損なうことがなく、良好に保持することができる。この結果、活性酸素除去剤及び/又は抗酸化剤が有する機能性を長期にわたって発揮可能な乳化組成物を提供することができる。
なお、乳化組成物中の水相及び油相のそれぞれに各成分が添加されることを、本明細書では「別相添加」と称することがある。
【0007】
本発明において上記成分(A)と成分(B)とは、本発明の乳化組成物を構成する油相及び水相に別相添加されていれば、成分(A)及び成分(B)のいずれが油相又は水相に含有されていてもよい。成分(B)の機能性を効果的に発揮させる観点からは、成分(B)は乳化組成物の水相に含有されていることが好ましく、成分(B)が、乳化組成物の水相に分散するO/W型乳化粒子に含まれていることが特に好ましい。この場合、成分(A)は、乳化組成物を構成する油相、即ち、成分(B)を含有するO/W型乳化粒子とは異なる油相に含有される。
成分(B)を、水相に分散するO/W型乳化粒子として本発明の乳化組成物に配合する場合には、後述するように、成分(B)を含有するO/W型乳化粒子が分散した別の乳化組成物(以下、適宜、水分散物と称する)を、乳化組成物の水相に添加することが、微細なO/W型乳化粒子が水相に分散した乳化組成物を簡便に得ることができ、好ましい。この場合に、以下の各成分は、本発明の乳化組成物の構成と矛盾しない限り、乳化組成物を構成する各相に含まれていてよく、成分(B)を含有するO/W型乳化粒子を得るために予め作製する水分散物を構成する各相に含まれていてもよい。
【0008】
<紫外線散乱剤>
本発明における成分(A)としての紫外線散乱剤は、「紫外線遮蔽剤」と称させることもある化合物であり、これには、紫外線を反射又は遮蔽する機能を有する無機粉末及び有機化合物を挙げることができる。
無機粉末としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、タルクの粉末を挙げることができる。無機粉末のうち、紫外線防御能の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。
また、乳化組成物の油相又は水相に対する無機粉末の親和性を向上させるために、無機粉末が親水化表面処理又は疎水化表面処理したものであってもよい。このような表面処理された無機粉末としては、例えば、シリコーン油やフッ素系油などの油剤、無水ケイ酸(シリカ)、アルミニウムステアレート、ジンクパルミテート等の脂肪酸石けん、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、パルミチン酸デキストリン等の脂肪酸エステル等によって表面が被覆された表面被覆無機粉末を挙げることができる。このような表面処理としては、対象となる無機粉末の種類及び添加する乳化組成物の相によって異なるが、油相に添加する場合には、油相との相溶性の観点から、シリコーン処理、アルキル脂肪酸処理等が好ましく用いられ、水相に添加する場合には、水分散性の観点からシリカ処理が好ましく用いられる。
これらの無機粉末の紫外線散乱剤は、添加される相への親和性などを考慮して、単独で又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0009】
紫外線散乱剤としての有機化合物には、アゾ系染料、キサンチン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料などの有機染料、レーキ、アゾ系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、スチレンメタクリル酸アルキル共重合体、スチレンアクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ナイロンパウダーなどの高分子粉体などを挙げることができる。さらに、前記高分子化合物の中空粒子及び多孔質粒子も用いることができる。これらの有機紫外線散乱剤うち、散乱性の観点から、ポリメタクリル酸メチル、スチレンメタクリル酸アルキル共重合体、スチレンアクリル酸アルキル共重合体が好ましく、中でも、ポリメタクリル酸メチル重合体が好ましい。また、これらの高分子化合物の中空粒子及び多孔質粒子も、紫外線散乱剤としての散乱性を向上させることができる形態であるため、好ましく用いられる。
【0010】
本発明の乳化組成物における紫外線散乱剤の含有量は、用いられる紫外線散乱剤の種類によって異なるが、紫外線遮蔽能の観点から、乳化組成物全体の質量に対して0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜15質量%とすることができる。
【0011】
<活性酸素除去剤>
本発明における成分(B)としての活性酸素除去剤には、例えば、スーパーオキシドディスムターゼ、マンニトール、カロテノイド類、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸及びその誘導体、グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩、オウゴン抽出物、イチョウ抽出物、ケイケットウ抽出物、サンザシ抽出物、マイカイカ抽出物、ユキノシタ抽出物、メリッサ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、エイジツ抽出物、ボタンピ抽出物、パセリ抽出物、トルメンチラ抽出物、羅漢果抽出物、ヤシャジツ抽出物及びジコッピ抽出物等のフラボノイドを含む植物抽出物等が挙げられる。
【0012】
本発明における成分(B)としての抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等のレチノール及びその誘導体、レチナール及びその誘導体、デヒドロレチナール等のビタミンA類;チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩等のチアミン類、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン類、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、コリン、イノシトール類等のビタミンB類;L−アスコルビン酸、パルミチン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、イソパルミチン酸L−アスコルビル、ジイソパルミチン酸L−アスコルビル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、ジステアリン酸L−アスコルビル、イソステアリン酸L−アスコルビル、ジイソステアリン酸L−アスコルビル、ミリスチン酸L−アスコルビル、ジミリスチン酸L−アスコルビル、イソミリスチン酸L−アスコルビル、ジイソミリスチン酸L−アスコルビル、オレイン酸L−アスコルビル、ジオレイン酸L−アスコルビル、2−エチルヘキサン酸L−アスコルビル、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルカリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルカルシウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルアルミニウム、L−アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸硫酸エステルカリウム、L−アスコルビン酸硫酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステルカルシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステルアルミニウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、L−アスコルビン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸アルミニウム等のアスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩等のビタミンC類;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ジヒドロキシスタナール等のビタミンD類;dl−α(β、γ)−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等トコフェロール及びその誘導体並びにそれらの塩、ユビキノン類等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0013】
これらの活性酸素除去剤及び抗酸化剤は、厳密に区別される必要はなく、双方の機能を発揮し得るものがいずれかに含まれていてもよい。また、上記活性酸素除去剤及び抗酸化剤を、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて使用してもよいが、保存安定性の観点から、上記の活性酸素除去剤と、抗酸化剤とからそれぞれ少なくとも1種を組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
これらの活性酸素除去剤及び抗酸化剤のうち、特に好ましいものとしては、マンニトール、カロテノイド類、ルチン及びその誘導体、イチョウ抽出物、オウゴン抽出物、ケイケットウ抽出物、ユキノシタ抽出物、メリッサ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、エイジツ抽出物、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンE類及びその誘導体並びにそれらの塩が挙げられ、中でもカロテノイド類が更に好ましい。
【0015】
カロテノイド類としては、アクチニオエリトリン、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、β−8’−アポ−カロテナール、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β―カロテン、γ―カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
中でも、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β―クリプトキサンチンが好ましく、特に酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果が認められているアスタキサンチンが好ましい。
【0016】
本発明の乳化組成物中における成分(B)の含有量は、好ましくは0.00001〜50質量%であり、より好ましくは0.0001〜30質量%である。この範囲であれば、活性酸素除去剤及び抗酸化剤としての機能を効果的に発揮することができる。また、植物抽出物を用いる場合には、乾燥固形分が上記の範囲内であれば問題ない。
【0017】
<紫外線吸収剤>
本発明の乳化組成物には、紫外線防御能向上のために紫外線吸収剤を含むものであってもよい。本発明の乳化組成物に添加可能な紫外線吸収剤としては、320nm〜400nmのUV−A領域及び290nm〜320nmのUV−B領域の少なくとも一方に吸収極大を有する化合物が該当し、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジパラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、メトキシケイ皮酸オクチル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸アミル等の安息香酸系紫外線吸収剤;サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソプロピルベンジル、サリチル酸カリウム等のサリチル酸系紫外線吸収剤;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−メトキシジベンゾイルメタン、4−t−ブチル−4’−ヒドロキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤;ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤;メンチル−o−アミノベンゾエート、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メンチル、オクトクリレン等が挙げられることができる。
本発明の乳化組成物における紫外線吸収剤の含有量は、紫外線防御の観点から、乳化組成物全体の質量に対して0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜15質量%とすることができる。
【0018】
<乳化剤>
本発明の乳化組成物では、乳化剤として、リン脂質及び/又は界面活性剤を含むことができる。
本発明の乳化組成物に使用可能なリン脂質としては、具体的には、レシチン、ホスファチジン酸、ビスホスファチジン酸、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等を例示でき、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンも挙げることができる。これらの混合物であるレシチンや水素添加レシチンを用いることもできる。またこれらリン脂質の由来は特に限定されず、例えばダイズ油等の植物油、卵黄等の動物由来のもの等が用いられ、特に精製したものが好適である。
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解した結果、1分子内に1つの脂肪酸残基を有するグリセロリン脂質、即ちリゾレシチンも含まれる。
【0019】
本発明においては、乳化安定性の観点から、レシチンが特に好ましい。
市販品のレシチンとしては、理研ビタミン(株)製レシオンシリーズや、レシマールELなどを挙げることができる。
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
本発明で用いるリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0020】
本発明の乳化組成物においてリン脂質の含有量は、乳化組成物の形態によって異なるが、微細なO/W型乳化粒子が分散した水分散物を得る場合には、水分散物におけるリン脂質の含有量は、乳化安定性の観点から、水分散物に対して0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%とすることができる。
【0021】
本発明の乳化組成物に使用可能な界面活性剤としては、特に制限は無いが、ノニオン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0022】
本発明の乳化剤に使用可能なポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO-CV,NIKKO
L DGMO-90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKK
OL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−50D、O−15D、B−100D、B−70D、ER−60D、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0023】
本発明の乳化組成物に使用可能なソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110などが挙げられる。
【0024】
本発明の乳化組成物に使用可能なショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるノニオン性界面活性剤は、分散性向上のためHLB10以上でHLB16以下のノニオン性界面活性剤であることが好ましく、エマルションの安定性の観点からは12以上16以下であることがより好ましい。
【0026】
これらの界面活性剤の添加量は、乳化組成物の形態によって異なるが、微細なO/W型乳化粒子が分散する水分散物を得る場合には、水分散物に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。0.1質量%以上の添加量とすることによって、より微細な粒子径の乳化物を得ることができると共に乳化物の安定性を充分に確保することができ、また、50質量%以下の添加量とすることによって、乳化物の泡立ちを適切な範囲に調整することができる。
【0027】
<グリセリン>
本発明において微細なO/W型乳化粒子が分散する水分散物を得るには、グリセリンを含有することが、水分散物におけるエマルジョン粒子の平均粒子径をより小さくし、かつ該粒子径を小さいまま長期に亘り安定して保持できるため、好ましい。
この場合、グリセリンの含有量は、本水分散物の全質量に対して、分散安定性、防腐性の観点から10質量%〜60質量%が好ましく、好ましくは20質量%〜55質量%、さらに好ましくは30質量%〜50質量%とすることができる。
【0028】
<その他成分>
本発明の乳化組成物には、上記成分の他、通常の皮膚外用剤もしくは化粧料に使用される成分、すなわち、油剤(天然動植物油脂、半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、フッ素系油剤等)、ゲル化剤、金属セッケン、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性)、上記以外の粉体(無機粉体、有機粉体、顔料等)、アルコール類(高級アルコール、多価アルコール、ステロール等)、水溶性高分子(動植物系、微生物系、合成系)、皮膜形成剤、樹脂、防腐剤、抗菌剤、香料、精油、塩類、水(精製水、温泉水及び深層水)、pH調整剤、清涼剤、保湿剤、抗炎症剤、美白剤、細胞賦活剤、肌あれ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤、アミノ酸類、核酸関連物質、酵素、ホルモン類、包接化合物、植物抽出物、動物及び微生物由来の抽出物等を添加することができる。
【0029】
<乳化組成物の形態>
本発明の乳化組成物の形態は、油相及び水相を明瞭に区分されている乳化組成物であれば特に限定されず、例えば、水分散液状、乳液状、多層状、ペースト状、ゲル状等種々のものを選択することができるが、使用感の観点から、乳液状、多層状、ペースト状、ゲル状のものが好ましい。
本発明の乳化組成物は、その形態に応じて、通常用いられる方法に従って、上記各成分を、乳化組成物の形態に応じて通常適用される基剤に通常用いられる配合条件で配合して調製することができる。
【0030】
本発明における乳化組成物における乳化粒子の体積平均粒子径は特に制限はないが、上記成分(B)が水相に分散するO/W型乳化粒子に含まれる場合には、乳化粒子の体積平均粒子径は、粒子安定性及び透明性の観点から、1nm以上、300nm以下であることが好ましく、水相の透明性の観点から、より好ましくは130nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
【0031】
前記体積平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルジョンの粒径測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における体積平均粒径範囲および測定の容易さから、本発明におけるエマルジョンの体積平均粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明において、O/W型エマルジョンの体積平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定した値を採用する。
前記体積平均粒径の測定方法は、油相成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、測定用ガラス管を用いて測定を行う。体積平均粒径は、分散媒屈折率として1.3313(純水)、分散媒の粘度として0.8846cp(純水)に設定して測定した時の累積(50%)値として求めることができる。
前記エマルション組成物の粒子径は、エマルション組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって調整することができる。
【0032】
<乳化組成物の製造方法>
乳化組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、I)水性媒体(水等)に、水溶性乳化剤を溶解させて、水相を得る工程、II)油溶性成分及びリン脂質等を混合・溶解して、油相を得る工程、III)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い、乳化組成物を得る工程を含む製造方法が好ましい。
乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、目的とする乳化組成物の形態に応じて、適宜選択される。
【0033】
例えば、微細なO/W型乳化粒子を含む乳化組成物を得る場合又は、乳化組成物の水相に添加するために微細なO/W型乳化粒子の水分散物を予め作製する場合には、前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、一般的には油相/水相比率が小さい方が、粒子径は小さくなるが、油相/水相比率が小さすぎると、有効成分が低くなるため実用上の問題を生じたり、また、乳化剤濃度が薄くなるため、乳化組成物の乳化安定性が悪化することがある。
以上の観点から、O/W型乳化組成物の油相/水相比率(質量%)は0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70が好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
このとき、O/W型乳化組成物における水の割合は、乳化粒子の微細化の観点から80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
【0034】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な乳化粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
【0035】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましく、取り扱う機能性油性成分の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
【0036】
前記高圧ホモジナイザーとしては、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するチャンバー型高圧ホモジナイザー及び均質バルブを有する均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。これらの中でも、均質バルブ型高圧ホモジナイザーは、処理液の流路の幅を容易に調節でき、操作時の圧力及び流量を任意に設定できるため、その操作範囲が広く、特に本発明にかかるエマルション組成物の製造方法にとって好ましい。
また、操作の自由度は低いが、圧力を高める機構が作りやすいため、超高圧を必要とする場合、チャンバー型高圧ホモジナイザーも好適に用いることができる。
【0037】
前記チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
前記均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0038】
本発明において、前記高圧ホモジナイザーの圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜250MPa、更に好ましくは100〜250MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
このような工程によって、油性成分を含有する乳化粒子が水性媒体中に分散しているO/W型乳化組成物が得られる。
【0039】
本発明の乳化組成物が、微細なO/W型乳化粒子を水相に含む乳化組成物の場合には、乳化組成物の水相に、予め作製されたO/W型乳化粒子の水分散物を添加することによって製造することができる。この水分散物は、上記のO/W型乳化組成物と同様の製造方法で得ることができる。
水分散物を、本発明にかかる乳化組成物の水相に配合する場合には、水分散物中のO/W型乳化粒子に含まれる油溶性成分の機能を効果的に発揮させる観点から、水分散物の配合量は、乳化組成物の水相成分の全質量に対して0.0001質量%〜20質量%であることが好ましく、0.001質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
この結果、乳化組成物を構成する油相(乳化粒子)とは別に、水分散物中のO/W型乳化粒子が水相に分散した乳化組成物を得ることができる。
【0040】
本発明の乳化組成物は、紫外線散乱剤と併用しても、活性酸素除去剤又は抗酸化剤の機能が損なわれずに長期間安定して乳過疎生物中に保持することができるので、活性酸素除去剤又は抗酸化剤の機能を効果的に発揮させることができる用途、例えば皮膚外用剤、化粧料等として好適に用いられる。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
(1)水分散物(i)−a、(i)−bの作製
下記表1記載の各成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水性組成物を得た。
また、下記表2記載の各成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
水相を70℃に保ったままホモジナイザー(みづほ工業(株)製真空乳化装置PVQ−1D型)で攪拌し(10000rpm)、そこへ上記油相組成物を添加して乳化物を得た。得られた乳化物を、40℃で、アルティマイザーHJP−25005(株式会社スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有水分散物(i)−aを調製した。
【0045】
油相組成物におけるレシチン90gの代わりに、純水90gを加えた以外は同様にして、アスタキサンチン類含有水分散物(i)−bを作製した。
【0046】
(2)水性組成物(ii)−a〜(ii)−lの作製
下記の油相成分及び水相成分の各成分を、70〜80℃に加温し,ホモミキサーで5000rpm,5分間、均一に溶解して、分散させた。油相成分を水相成分に添加し、80℃に保ちながらホモミキサーで6,000rpm、10分間撹拌後、パドル撹拌しながら冷却し、35〜30℃で撹拌を止め、10分間放置して、乳化組成物(ii)−a〜(ii)−lを得た。
【0047】
(油相成分) 質量%
ポリグリセリン/ステアロイル乳酸ナトリウム混合物 2.5
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 3.0
ベヘニルアルコール 2.5
スクワラン 4.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 3.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 4.0
オクトクリレン 2.6
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
ヘマトコッカス藻抽出物 (表3に記載)
紫外線散乱剤(表3に記載) (表3に記載)
【0048】
(水相成分) 質量%
防腐剤 適量
1,3−ブチレングリコール 5.0
キサンタンガム 0.3
アスタキサンチン類含有水分散物(表3に記載) (表3に記載)
紫外線散乱剤(表3に記載) (表3に記載)
精製水 全量で100.0
【0049】
物性値の測定
(1)40℃経時
サンプルを遮光容器に充填し、蓋を閉めた後、40℃の恒温槽に入れて経時60日間保管した。
結果を表3に示す。
【0050】
吸光度は、UV−VISIBLE(可視紫外)スペクトルフォトメーターUV−2550(島津製作所製)を使用し、積分球を使用し、反射スペクトルにて全反射の吸収スペクトルを測定し、478nmでの吸収を用いた。評価は、組成物調合直後の吸光度に対する恒温槽内での保存後の吸光度から求められる残存率を分散液の褪色レベルとし、下記の評価基準に基づいて行った。
◎:吸光度残存率70%以上(手のひらの上に乳化組成物を塗った際に変化が判別できず問題ないレベル)
○:吸光度残存率50%以上70%未満(手のひらの上に乳化組成物を塗った際に変化が判別できるが、商品価値上問題ないレベル)
×:吸光度残存率50%未満(NGレベル)
乳化組成物中のアスタキサンチン類含有水分散物(i)−a及び(i)−bの体積平均粒子径は、動的光散乱粒径分散測定装置LB−550(株式会社堀場製作所社製)を使用して20℃にて測定したところ、それぞれ70nmと350nmであった。
【0051】
【表3】

【0052】
表3に示されるように、本発明の実施例にかかる組成物は、比較例に対して褪色の程度が小さく、アスタキサンチン等の成分が安定していることが判る。このように本発明の実施例にかかる乳化組成物は、紫外線散乱剤を併用しても、活性酸素除去剤及び抗酸化剤を良好に維持することができ、安定性に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相及び水相から構成される乳化組成物であって、紫外線散乱剤と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種とをそれぞれ別個に、乳化組成物を構成する油相及び水相の異なる相に添加してなる乳化組成物。
【請求項2】
前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、前記水相に添加される請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、前記水相に分散するO/W型乳化粒子に含まれる請求項2記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選択された少なくとも1種が、活性酸素除去剤及び抗酸化剤を共に含む請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記紫外線散乱剤が、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記乳化組成物が活性酸素除去剤を含み、該活性酸素除去剤が、マンニトール、カロテノイド類、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸及びその誘導体、グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項7】
前記乳化組成物が抗酸化剤を含み、該抗酸化剤が、ビタミンA類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンE類及びその誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項8】
紫外線吸収剤を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項9】
前記乳化組成物が活性酸素除去剤を含み、該活性酸素除去剤がカロテノイド類である請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項10】
前記乳化組成物が抗酸化剤を含み、該抗酸化剤が、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩と、ビタミンE類及びその誘導体並びにそれらの塩とからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の乳化組成物。

【公開番号】特開2009−143900(P2009−143900A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295104(P2008−295104)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】