説明

乳化組成物

【課題】油分を多量に含有し、透明性が高くあっさりとした使用感を持つ、抗炎症作用もしくは美白作用に優れた液状の乳化組成物を提供する。
【解決手段】油性の抗炎症成分、又は、油性の美白成分と、レシチンおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、多価アルコールを含有する油分と、高級アルコールを含有する水分を高圧乳化法により乳化することで上記課題が解決された。この乳化製剤を肌に使用したところ、肌に対して強い抗炎症作用もしくは、強い美白作用を示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関するものである。より具体的には優れた抗炎症作用および/または美白作用を示す有効成分を含有する、透明性が高い乳化組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴い肌から分泌される油性成分は減少する。油性成分の分泌量の低下は皮膚表面のきめの乱れ、皮膚の乾燥、肌荒れなどの原因となる。失われた油性成分や水性成分を補い、肌の油性成分と水性成分のバランスを整える目的で一般的にクリームのような乳化組成物が使用されてきた。クリームは特に油性成分の補給効果(エモリエント効果)に優れるが、使用時のベタつきや油っぽさがあり、そのため、使用時の感触が損なわれる。肌へ水性成分を補給する目的で化粧水もよく使用されるが、一般的に、化粧水に油性成分補給効果は無い。この課題を解決するために、本発明者らは、特定の界面活性剤およびレシチンを配合し、高圧乳化法により処理することで多量の油性成分を含有するにも関わらず液状のあっさりとした触感の乳化組成物を発明した(特許文献1)。特許文献1の発明品はクリームと同一の組成物でありながら、透明性が高く化粧水のような液状の乳化組成物である。実際に特許文献1の発明品と同一組成の乳化組成物は製造方法の違いによりクリーム状の乳化組成物にもなる。このように特許文献1の発明品の乳化組成物は優れた油性成分補給効果と油性感を感じさせない化粧水のような使用感という、相反する機能性を実現した乳化組成物である。さらに、この乳化組成物中の油性成分の粒子径は通常の乳化組成物中の油分を内包するミセルの粒子径と比較して極めて小さい。ミセルの粒子径は小さければ小さい程、油性成分の表面積は増え油性成分の皮膚への浸透性は上昇し、油性成分の皮膚に対する生理作用も上昇する。
【0003】
一方、肌の美白作用や抗炎症作用を期待し、油性の美白成分や炎症抑制成分を配合した乳化組成物は美容目的で肌に塗布される化粧品は医薬部外品として販売され、広く利用されてきた。特許文献1の乳化組成物に、これらの油性成分を配合することで、他の乳化技術により乳化されたクリーム等の乳化組成物よりも強い美白作用や抗炎症作用が期待できる。しかしながら、特許文献1に開示した乳化組成物は極めて高い乳化バランスで作成された乳化組成物であり、そのまま油性の美白成分や抗炎症成分を配合すると乳化バランスが崩れ油性成分が分離し、乳化製剤として使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2006−106789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
美白作用や抗炎症作用などの生理機能を持つ油性成分を配合し、油分を豊富に含むにも関わらず透明性に優れ、油性感が抑えられた液状の乳化組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは乳化組成物の配合組成について鋭意研究を行い、油性成分およびグリセリンなどの多価アルコールを特定の配合割合にて使用することで、美白作用や抗炎症作用などの生理作用を持つ油性成分を配合しながら、油性成分の含有量が高いにも関わらず、透明性が高くさっぱりと使用感を有し経時的にも安定な乳化組成物を開発し、本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明は以下を提供する:
(項目1)
乳化組成物であって、以下:
(a)0.02〜1重量%の油性の抗炎症成分、
(b)0.7〜1.1重量%のレシチン、0.7〜1.3重量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および、1〜3重量%の高級アルコールからなる、乳化剤
(c)15〜30重量%の多価アルコールからなる油性成分
を含む組成物を高圧乳化法により乳化することによって製造される、乳化組成物。
(項目2)
皮膚化粧料、皮膚外用用医薬品、および、医薬部外品からなる群から選択される製品である、項目1に記載の乳化組成物。
(項目3)
前記油性の抗炎症成分がグリチルレチン酸ステアリルである、項目1に記載の乳化組成物。
(項目4)
前記油性の抗炎症成分がグリチルレチン酸ステアリルであり、前記レシチンが水添レシチンであり、前記ポリオキシエチレンソルビタン肪酸エステルがモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、前記高級アルコールがベヘニルアルコール、前記多価アルコールがグリセリン、1,3−ブチレングリコール、および1,2−ペンタンジオールからなる群から選択される、項目1に記載の乳化組成物。
(項目5)
前記グリセリンの配合量が8〜15重量%である項目4に記載の乳化組成物。
(項目6)
乳化組成物であって、以下:
(d)2〜4重量%の油性の美白成分、
(b)0.7〜1.1重量%のレシチン、0.7〜1.3重量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および、1〜3重量%の高級アルコールからなる、乳化剤
(c)15〜30重量%の多価アルコールからなる油性成分
を含む組成物を高圧乳化法により乳化することによって製造される、乳化組成物。
(項目7)
皮膚化粧料、皮膚外用用医薬品、および、医薬部外品からなる群から選択される製品である、項目6に記載の乳化組成物。
(項目8)
前記油性の美白成分がテトラへキシルデカン酸アスコルビルである、項目6に記載の乳化組成物。
(項目9)
前記油性の美白成分がテトラへキシルデカン酸アスコルビルであり、前記レシチンが水添レシチンであり、前記ポリオキシエチレンソルビタン肪酸エステルがモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、前記高級アルコールがベヘニルアルコール、前記多価アルコールがグリセリン、1,3−ブチレングリコール、および1,2−ペンタンジオールからなる群から選択される、項目6に記載の乳化組成物。
(項目10)
グリセリンの配合量が8〜15重量%である項目9に記載の乳化組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従って、美白作用や抗炎症作用などの生理作用を持つ油性成分を配合しながら、油性成分の含有量が高いにも関わらず、透明性が高くさっぱりと使用感を有し経時的にも安定な乳化組成物が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及されない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
本明細書において使用する場合、用語「乳化」とは、水性成分と油性成分のように互いに溶け合わず、放置すると分離する液体成分を、均一の分離しない液体成分とすることをいう。
【0010】
本明細書において使用される用語「乳化組成物」とは、油性成分と水性成分のように互いに溶け合わず、放置すると分離する液体成分を均一の分離しない成分として含有する組成物をいう。
【0011】
本明細書において使用される用語「高圧乳化法」とは、油性成分と水溶成分との混合物を、細い隙間を、10MPa以上の非常に高い圧力で通過させることによって、より細かく安定なエマルションを作り出す方法をいう。高圧乳化法を行う機器として、ゴーリンホモジナイザータイプおよびマイクロフルイダイザータイプなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0012】
本明細書において使用する場合、用語「水性成分」とは、水によって溶解および/または希釈することが可能な成分をいう。
【0013】
本明細書において使用する場合、用語「油性成分」とは、常温で液体または固体であり、水に不溶で、粘性があり、水より比重が小さく、燃焼する物質をいう。
【0014】
本発明において使用する「油性成分」としては、常温で液体または固体であり、水に不溶で、粘性があり、水より比重が小さく、燃焼する物質をいう。油性成分としては、例えば、以下からなる群から選択される物質が挙げられるが、これに限定されない:
アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、つばき油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、コーン油、なたね油、キョウニン油、パーシック油、桃仁油、ひまし油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ココナッツ油、小麦胚芽油、米胚芽油、月見草油、ハイブリッドヒマワリ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、へーゼルナッツ油、パーム核油、パーム油、やし油、カカオ脂、シア脂、木ろう、ミンク油、タートル油、卵黄油、牛脂、乳脂、豚脂、場油等の油脂類、または、ホホバ油、カルナウバろう、キャンデラろう、米ぬかろう、オレンジラフィー油、みつろう、セラック、ラノリン、モンタンろう等のロウ類、または、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、軟質流動イソパラフィン、水添ポリイソブチレン、オゾケライト、セレシン、α−オレインフィンオリゴマー、ポリブテン、ポリエチレン等の炭化水素類、または、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソトリデカン酸、イソノナン酸、ペンタデカン酸等の高級脂肪酸類、または、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、イソコレステロール、シトステロール、スチグマステロール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール等の高級アルコール類、または、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、トリカプリン、トリミリスチン、トリオクタノイン、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ステアリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスチル、トリイソステアリン酸ペンタエリスリル、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル類、ならびにこれらを2種以上含む混合物。
【0015】
本明細書において使用する場合、用語「高級アルコール」とはアルコール類のうち、炭素数の多いものをいい、一般的に炭素数6以上の1価アルコールをいう。
【0016】
本明細書において使用する場合、用語「レシチン」とは、ホスファチジルコリンおよびその誘導体をいう。本発明において使用されるレシチンとしては、例えば、以下が挙げられるが、これに限定されない:大豆レシチンおよび卵黄レシチン、ならびにこれら天然のレシチンから調製される精製レシチンおよび水素添加レシチン、ならびにこれらレシチンの2種以上を含む混合物。本発明において使用するレシチンとして好ましいレシチンは、水素添加レシチンである。
【0017】
本明細書において使用する場合、用語「水素添加レシチン」とは、「水添レシチン」と互換可能に使用され、レシチンの不飽和結合に水素を添加して還元されたレシチンをいう。レシチンの配合量は、乳化組成物全体に対して0.1重量%以上配合することが好ましく、0.7〜1.1重量%配合することがより好ましい。
【0018】
用語「多価アルコール」とは、炭化水素の複数個の水素をヒドロキシル基(−OH)置換したアルコールをいう。本発明において使用する好ましい「多価アルコール」は、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリンである。「多価アルコール」は乳化組成物全体に対して15〜30重量%配合することが望ましい。さらには「多価アルコール」としてグリセリンを8〜15%重量配合することがより好ましい。
【0019】
本発明において使用する好ましい「油性の抗炎症成分」はグリチルレチン酸ステアリルである。油性の抗炎症成分の配合量は、乳化組成物全体に対して0.02〜1重量%配合することが望ましい。
【0020】
本発明において使用する好ましい「油性の美白成分」はテトラへキシルデカン酸アスコルビルである。油性の美白成分の配合量は、乳化組成物全体に対して2〜4重量%配合することが望ましい。
【0021】
本発明の乳化組成物は、油性成分と水溶性成分の混合物を高圧乳化法により乳化することにより提供することができるが、本発明の高圧乳化法に使用する高圧乳化機の種類や、反応温度、処理回数、高圧乳化処理部にかかる圧力等のいずれの条件も限定されない。
【0022】
マイクロフルイダイザータイプの高圧乳化機としては、例えば、マイクロフルイディスク社のマイクロフルイダイザーを使用することができる。反応温度についても特に限定されないが、製造効率を考慮すると、乳化前の油溶性成分と水溶性成分の混合物が液状に融解する温度である60〜90℃程度まで加熱融解した後、高圧乳化機に投入し、処理時は30〜80℃程度の温度で反応させることが好ましい。また、処理回数についても特に限定されないが、製造効率と製造される乳化組成物の乳化状態を考慮すると2〜5回、処理することが好ましい。高圧乳化処理部にかかる圧力についても特に限定されることはないが、10MPa以上で処理することが好ましく、100〜200MPaの圧力で処理することがより好ましい。
【0023】
上記の方法により製造された本発明の乳化組成物に対しては、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、シリコーン類、脂肪類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、増粘剤等の基材の他、医薬品および医薬部外品の有効成分、pH調整剤、防腐剤、色素、香料、酸化防止剤、天然由来エキス、糖類、または、味覚調整剤等も、必要に応じて添加することができる。
【0024】
本発明の乳化組成物は、皮膚外用剤および、食品、医薬品として使用することができる。皮膚外用剤および、食品、医薬品の形状は特に問わない。その使用目的に応じて、如何なる形状をも選択することができる。例えば、液状、ゲル状、クリーム状、顆粒状、個体、エアロゾルのような気体などの形態で使用できる。本発明の乳化組成物を皮膚外用剤として使用する場合、本発明の乳化組成物をそのまま使用する、もしくは、添加する、希釈した後に添加することにより、化粧水、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、美容液、パック、洗顔剤、クレンジング剤、ヘアケア剤、石鹸、浴用剤、シャンプー、リンス、リップスティック、口紅、ファンデーション等の化粧品や医薬部外品、医薬品に配合することができる。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「透視度」とは、試料溶液の透き通り度合いを示す指標であり、透視度計により測定できる数値をいう。透視度計に二十重字の標識板を沈め下部の流出口から、排水していき、標識板の二重線が確認できた時の試料溶液の高さ(cm)を「度」として表した数値である。
【0026】
本発明の乳化組成物は、0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、なお好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上、さらにより好ましくは0.7以上、最も好ましくは0.8以上の透視度を有する。
【0027】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
(実施例1:乳化組成物Aの調整)
引用文献1に開示した調整方法に従い、油性の抗炎症成分としてグリチルレチン酸ステアリルを0.1%配合した乳化組成物Aを調製した。以下に乳化組成物Aの調整手順を示す。
(処方)
(a)ベヘニルアルコール:2.5(重量%)
(b)水添レシチン:0.9(重量%)
(c)スクワラン:7.5(重量%)
(d)メチルポリシロキサン:0.5(重量%)
(e)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.):1(重量%)
(f)グリチルレチン酸ステアリル:0.1(重量%)
(g)グリセリン:7(重量%)
(h)1,3−ブチレングリコール:5(重量%)
(i)ポリオキシエチレンメチルグルコシド(20E.O.):2.5(重量%)
(j)1,2−ペンタンジオール:3(重量%)
(k)上記の残部として、全量100%になるように精製水を調製した。
(調製方法)
(a)〜(f)と、(g)〜(k)を別々に加熱融解し、80℃で混合して高圧乳化機のマイクロフルイダイザーを使用して乳化した。処理部にかかる圧力は150Mpaに設定した。この高圧乳化処理を3回、行うことで乳化組成物Aを調製した。
【0029】
(実施例2:乳化組成物B1の調整)
油性の抗炎症成分としてグリチルレチン酸ステアリルを0.1%配合した乳化組成物B1を調製した。以下に乳化組成物B1の調整手順を示す。
(処方)
(a)ベヘニルアルコール:2(重量%)
(b)水添レシチン:0.9(重量%)
(c)スクワラン:7.5(重量%)
(d)メチルポリシロキサン:0.5(重量%)
(e)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:1(重量%)
(f)グリチルレチン酸ステアリル:0.1(重量%)
(g)グリセリン:10(重量%)
(h)1,3−ブチレングリコール:5(重量%)
(i)ポリオキシエチレンメチルグルコシド:2.5(重量%)
(j)1,2−ペンタンジオール:3(重量%)
(k)上記の残部として、全量100%になるように精製水を調製した。
(調製方法)
(a)〜(f)と、(g)〜(k)を別々に加熱融解し、80℃で混合して高圧乳化機のマイクロフルイダイザーを使用して乳化した。処理部にかかる圧力は150Mpaに設定した。この高圧乳化処理を3回、行うことで乳化組成物B1を調製した。
【0030】
(実施例3:乳化組成物B2の調整)
乳化組成物B1と比較するため、乳化組成物B1と同一処方の乳化組成物B2を調製した。以下に乳化組成物B2の調整手順を示す。
(処方)
(a)ベヘニルアルコール:2(重量%)
(b)水添レシチン:0.9(重量%)
(c)スクワラン:7.5(重量%)
(d)メチルポリシロキサン:0.5(重量%)
(e)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:1(重量%)
(f)グリチルレチン酸ステアリル:0.1(重量%)
(g)グリセリン:10(重量%)
(h)1,3−ブチレングリコール:5(重量%)
(i)ポリオキシエチレンメチルグルコシド:2.5(重量%)
(j)1,2−ペンタンジオール:3(重量%)
(k)上記の残部として、全量100%になるように精製水を調製した。
(調製方法)
本発明の乳化組成物B1と同一処方の組成物を以下の調整方法により乳化しクリーム状の製剤B2を得た。(a)〜(f)と(g)〜(k)を別々に加熱し80℃で混合してからホモミキサーを使用して攪拌することで、白色のクリーム状の乳化組成物B2を得た。
一方、本発明の乳化組成物B1は透明度が高い液状の製剤である。従って、本発明によれば、クリームになり得る製剤でありながら、安定性が高く、抗炎症効果に優れ、あっさりとした使用感を持ち、さらには透明度が高い液状の乳化組成物を調整することができる。乳化組成物B2はクリームとしての機能性を持ちながら、化粧水のような使用感を持つ液状の乳化組成物である。
【0031】
(実施例4:乳化組成物C1の調整)
以下の処方で、油性の美白成分としてテトラへキシルデカン酸アスコルビルを3%配合した乳化組成物Dを調製した。以下に乳化組成物Dの調整手順を示す。
(処方)
(a)ベヘニルアルコール:2(重量%)
(b)水添レシチン:0.9(重量%)
(c)スクワラン:4.5(重量%)
(d)メチルポリシロキサン:0.5(重量%)
(e)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:1(重量%)
(f)テトラへキシルデカン酸アスコルビル:3(重量%)
(g)グリセリン:10(重量%)
(h)1,3−ブチレングリコール:5(重量%)
(i)ポリオキシエチレンメチルグルコシド:2.5(重量%)
(j)1,2−ペンタンジオール:3(重量%)
(k)上記の残部として、全量100%になるように精製水を調製した。
(調製方法)
(a)〜(f)と、(g)〜(k)を別々に加熱融解し、80℃で混合して高圧乳化機のマイクロフルイダイザーを使用して乳化した。処理部にかかる圧力は150Mpaに設定した。この高圧乳化処理を3回、行うことで乳化組成物C1を調製した。
【0032】
(実施例5:乳化組成物C2の調整)
乳化組成物C1と比較するため、乳化組成物C1と同一処方の乳化組成物C2を調製した。以下に乳化組成物C2の調整手順を示す。
(処方)
(a)ベヘニルアルコール:2(重量%)
(b)水添レシチン:0.9(重量%)
(c)スクワラン:4.5(重量%)
(d)メチルポリシロキサン:0.5(重量%)
(e)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:1(重量%)
(f)テトラへキシルデカン酸アスコルビル:3(重量%)
(g)グリセリン:10(重量%)
(h)1,3−ブチレングリコール:5(重量%)
(i)ポリオキシエチレンメチルグルコシド:2.5(重量%)
(j)1,2−ペンタンジオール:3(重量%)
(k)上記の残部として、全量100%になるように精製水を調製した。
(調製方法)
本発明の乳化組成物C1と同一処方の組成物を以下の調整方法により乳化しクリーム状の製剤C2を得た。(a)〜(f)と(g)〜(k)を別々に加熱し80℃で混合してからホモミキサーを使用して攪拌することで、白色のクリーム状の乳化組成物C2を得た。
一方、本発明の乳化組成物C1は透明度が高い液状の製剤である。従って、本発明によればクリームになり得る製剤でありながら、安定性が高く、美白効果に優れ、あっさりとした使用感を持ち、さらには透明度が高い液状の乳化組成物を調整することができる。乳化組成物C1はクリームとしての機能性を持ちながら、化粧水のような使用感を持つ液状の乳化組成物である。
(乳化組成物A、B1、およびC1の安定性)
本発明の乳化組成物B1およびC1の安定性を、比較製剤として作成した乳化組成物Aの安定性と比較した。
【0033】
乳化組成物A、B1、およびC1を、温度40℃の条件で6か月、温度50℃の条件で3ヶ月間、および、-15℃と25℃の温度変化を12時間毎に繰り返すサイクル試験を10日間実施した。比較製剤として作成した乳化組成物Aは、温度50℃の条件では15日間、温度40℃の条件で20日間保存した後、製剤は油性成分と水性成分に分離した。さらに、サイクル試験では液状から一日でクリーム状に変化した。
一方、本発明の乳化組成物B1およびC1は、いずれも安定性が高く温度40℃で6カ月経過後、50℃で3カ月経過後、サイクル試験10日間経過後のいずれの条件においても、製剤の状態に全く変化が見られなかった。
【0034】
(実施例6:乳化組成物B1と乳化組成物B2の機能性)
本発明の乳化組成物B1の機能性と、乳化組成物B1と全く同じ配合成分を含む乳化組成物B2の機能性を比較した。
【0035】
【表1】

このように本発明の乳化組成物B1は、B2と全く同じ配合成分を含むにも関わらず、B2とは全く違った外観および使用感を持つだけでなく、強い抗炎症作用も示した。乳化組成物B1中の抗炎症成分を含む油分の粒子径が乳化組成物B2の粒子径と比較して非常に小さく、肌への吸収性が大幅に上昇したことに起因すると考える。
【0036】
(実施例7:乳化組成物C1と乳化組成物C2の機能性)
本発明の乳化組成物C1の機能性と、乳化組成物C1と全く同じ配合成分を含む乳化組成物C2の機能性を比較した。
【0037】
【表2】

このように本発明の乳化組成物C1は、C2と全く同じ配合成分を含むにも関わらず、C2とは全く違った外観および使用感を持つだけでなく、強い抗炎症作用も示した。乳化組成物C1中の抗炎症成分を含む油分の粒子径が乳化組成物C2の粒子径と比較して非常に小さく、肌への吸収性が大幅に上昇したことに起因すると考える。
【0038】
このように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明はこの実施形態に限定して解釈されるべきではない。本発明は、特許請求の範囲によってその範囲が解釈されるべきことが理解される。当業者は、発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の乳化組成物を化粧品として使用することで、油性成分を多量に含有するにも関わらず、透明性が高く、液状であり、あっさりとした使用感を持ち、さらには、抗炎症作用および美白作用に優れた乳化組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化組成物であって、以下:
(a)0.02〜1重量%の油性の抗炎症成分、
(b)0.7〜1.1重量%のレシチン、0.7〜1.3重量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および、1〜3重量%の高級アルコールからなる、乳化剤
(c)15〜30重量%の多価アルコールからなる油性成分
を含む組成物を高圧乳化法により乳化することによって製造される、乳化組成物。
【請求項2】
皮膚化粧料、皮膚外用用医薬品、および、医薬部外品からなる群から選択される製品である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記油性の抗炎症成分がグリチルレチン酸ステアリルである、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記油性の抗炎症成分がグリチルレチン酸ステアリルであり、前記レシチンが水添レシチンであり、前記ポリオキシエチレンソルビタン肪酸エステルがモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、前記高級アルコールがベヘニルアルコール、前記多価アルコールがグリセリン、1,3−ブチレングリコール、および1,2−ペンタンジオールからなる群から選択される、項目1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記グリセリンの配合量が8〜15重量%である請求項4に記載の乳化組成物。
【請求項6】
乳化組成物であって、以下:
(d)2〜4重量%の油性の美白成分、
(b)0.7〜1.1重量%のレシチン、0.7〜1.3重量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および、1〜3重量%の高級アルコールからなる、乳化剤
(c)15〜30重量%の多価アルコールからなる油性成分
を含む組成物を高圧乳化法により乳化することによって製造される、乳化組成物。
【請求項7】
皮膚化粧料、皮膚外用用医薬品、および、医薬部外品からなる群から選択される製品である、請求項6に記載の乳化組成物。
【請求項8】
前記油性の美白成分がテトラへキシルデカン酸アスコルビルである、請求項6に記載の乳化組成物。
【請求項9】
前記油性の美白成分がテトラへキシルデカン酸アスコルビルであり、前記レシチンが水添レシチンであり、前記ポリオキシエチレンソルビタン肪酸エステルがモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、前記高級アルコールがベヘニルアルコール、前記多価アルコールがグリセリン、1,3−ブチレングリコール、および1,2−ペンタンジオールからなる群から選択される、項目6に記載の乳化組成物。
【請求項10】
グリセリンの配合量が8〜15重量%である請求項9に記載の乳化組成物。

【公開番号】特開2010−270067(P2010−270067A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123633(P2009−123633)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(300029569)ゲオール化学株式会社 (12)
【Fターム(参考)】