説明

乳鉱物およびカゼイン分画を用いる体重状態の治療のための組成物および方法

【課題】体重の管理および体重の状態、例えば体重超過または肥満の治療のために、脂肪細胞を減少させるために有効な量の1つまたはそれ以上の乳鉱物混合物、食物の摂取後の満腹感を強めるのに有効な量のタンパク質化合物、および脂肪代謝を調節するのに有効な量の酵素阻害ペプチドを含む、体重管理組成物を提供する。
【解決手段】体重の状態を治療するために治療上有効量のカルシウムを含む乳鉱物、κ−カゼインフラグメント106−169を含むタンパク質源、および酵素阻害ペプチドを有する栄養補助組成物。栄養補助組成物は体重超過および肥満などの体重の状態の治療において、全体的に良好な健康を促すと共に、体重増加を制限および/または体重減少を増強するために有効な量で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は2002年3月1日出願の「肥満の治療のための組成物および方法(compositions and Methods for Treatment of Obesity)」と題した同時係属中の米国仮出願番号第60/360,709号、並びに2003年2月21日出願の「体重の状態の治療のための組成物および方法(Compositions and Methods for Treatment of Body Weight Conditions)」と題した同時係属中の米国出願の利益に基づき、そしてそれを主張し、その開示を出展明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、治療上有効な栄養補助組成物(nutritional supplement composition)を投与することにより、体重の状態を治療するための組成物および方法を志向する。具体的には、乳鉱物(milk mineral)混合物およびタンパク質成分を含む栄養組成物は体重減少の増強および/または体重増加の制限に有効である。
【背景技術】
【0003】
肥満は若者および老齢者の双方に影響する全世界的な健康上の懸念である。米国では男性および女性の50%以上が体重超過であると推定される。ヒトの体重超過の度合いをヒトの「ボディ・マス・インデックス(体格指数)」すなわち「BMI」に基づいて評価することができ、これは以下のように算出される:
BMI=体重(kg)/[身長(m)]
【0004】
2000年には、人口のほぼ20%が、BMIが30に等しいかまたはそれ以上であることにより定義される肥満のカテゴリーに入った。肥満に伴う問題には、心臓血管疾患、糖尿病、特定の型の癌、変形性関節症および睡眠障害などがある。肥満および関連する障害は米国国民医療費のほぼ10%を占める。
【0005】
90%を越える身体エネルギーが脂肪組織に貯えられる。脂肪組織は多くの重要な機能を有しており、その最も明白なものは、食事性脂肪の血液循環に入る日常の流入を「緩衝」し、そして必要に応じて、代謝燃料の供給源として脂肪酸を放出することである。その他の機能にはアジプシン(血液凝固に必須)、アンジオテンシノーゲン(血圧調節に関与)、およびレプチン(エネルギー調節に関与するホルモン)の生成および放出などがある。脂肪組織の蓄積により体重超過および肥満に至る。
【0006】
食生活は体重管理に影響を及ぼすことが知られている。過剰な食生活、例えば高カロリー摂取および高脂肪食の摂取は望ましくない体重増加および健康障害に至る可能性がある。同様に、1つまたはそれ以上の栄養素が欠乏している食生活もまた体重管理および健康に良くない影響を有する可能性がある。例えば文献では、カルシウムが欠乏している食生活は肥満の発生に寄与する可能性があると示唆している。Shiら、「エネルギー制限されたaP2アグーチ・トランスジェニックマウスにおける脂肪細胞脂質代謝および体重制御に及ぼす食餌性カルシウムの影響(Effects of dietary calcium on adipocyte lipid methabolism and body weight regulation in energy−restriced aP2−agouti transgenic mice)」FASEB J.15(2):291−293頁(2001年)、Zemelら、「食餌性カルシウムによる脂肪細胞の制御(Regularion of adiposity by dietary calcium)」FASEB J.14(9):1132−1138頁(2000年)。
【0007】
またヒト身体においても体重増加に影響する機構が知られている。例えば食物を摂取すると、身体はペプチド、コレシストキニン(CCK)を放出し、これは酵素およびその他の体液の分泌並びに消化系内のその他の物理的反応を促進する結果、満腹の信号を送るように作用する。CCK放出は食欲低下を招き、ヒトは摂食を止めるようになることが示されている。タンパク質、例えばκ−カゼインフラグメント106−169、はグリコマクロペプチド(GMP)とも称され、CCKの放出を刺激することが知られている。
【0008】
体重超過および肥満の成人に用いられる種々の体重管理組成物および方法が知られている。しかしながら典型的には、その方法は体重増加を調節するか、または体重減少を促進するために、バランスのとれた食生活を提供することほとんど無視して、特定の体重管理機構に焦点をあてている。例えばZemelに対する米国特許第6,384,087号はヒトおよびその他の動物の肥満を治療または回避するための方法および材料を開示している。その特許は高カルシウムの食生活を提供することにより肥満調節の利益を達成できると開示している。さらにその特許は、個体は制限されたカロリーの食生活で維持されると教示している。この特許の体重管理機構は1つの特定の栄養素、カルシウムのレベルを増加させることを志向しているが、随意的にカロリー摂取を制限する一方、バランスのとれた食生活を促してはいない。別の例としては、Portmanに対する米国特許第6,207,638号はCCKの放出を刺激することにより満腹感を強め、そして延長するための栄養学的介入組成物を開示している。組成物にはタンパク質、グリコマクロペプチド、長鎖脂肪酸、カルシウム(炭酸カルシウムまたは乳酸カルシウムの形態で)および可溶性および不溶性繊維の組み合わせが含まれる。その特許は組成物を経口的に摂取させて、ヒトを低カロリー摂取で満腹させることができると教示している。この組成物の体重管理機構は制限されたカロリー摂取を志向し、全体的な栄養所要量に対処していない。
【0009】
栄養学的にバランスのとれた食生活を促しながら、理想的な体重を維持し、体重増加を低減および/または体重減少を増強するためにヒトの食生活を改善する方法の必要性が依然として存在している。体重超過および肥満の発生を低減し、そして全体的な健康を維持するための健康的な食生活に関する必須栄養素を提供する食品構成に関する必要性も依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は体重の管理および体重の状態、例えば体重超過または肥満の治療のための組成物を志向する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様に従って、脂肪細胞を減少させるために有効な量の1つまたはそれ以上の乳鉱物混合物、食物の摂取後の満腹感を強めるのに有効な量のタンパク質化合物、および脂肪代謝を調節するのに有効な量の酵素阻害ペプチドを含む、体重管理組成物が提供される。乳鉱物混合物はカルシウムを含み、そしてタンパク質化合物はκ−カゼインフラグメント106−169を含む。本発明の別の態様に従って、体重を維持および/または低下させるための栄養補助食品(nutritional supplement)が提供される。栄養補助食品は脂肪細胞を減少させるために有効な量のカルシウムを有する乳鉱物組成物を含むことができる。栄養補助食品はまた食物の摂取を制限または削減するために満腹感を強めるのに有効な量のκ−カゼインフラグメント106−169を有するタンパク質成分を含むこともできる。栄養補助食品はまた、体重超過状態または肥満の治療において体重減少を増強するのに有効な量の酵素阻害ペプチド、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含むこともできる。
本発明のさらに別の態様に従って、望ましい体重を維持し、そして体重超過状態または肥満を治療する方法は、かかる治療を必要とする個体に、全体的に良好な健康状態を促すと共に、体重増加を制限および/または体重減少を増強する栄養組成物を投与することを含む。組成物は治療上有効量の乳鉱物成分、タンパク質成分および/または酵素阻害ペプチド成分を含むことができる。組成物を直接個体に摂取させるかまたは組成物で強化した食品を介して投与することができる。食品を介して投与する場合、例えば食品の1日一人分量または所定の提供回数が、望ましい体重を維持するか、または体重超過状態または肥満を治療するのに有効な組成物の量を提供するように、栄養補助組成物の量を適当に選択することができる。食物の摂取の直前または後に、食事の一部としてまたは食間のスナックとして組成物を投与することができる。
【0012】
栄養補助組成物は、一般に適当な粒子サイズの粉末の形態で、広範な型の食品に組み込むことができる。実例としては、栄養組成物を酸性ジュース飲料(例えばオレンジジュース、リンゴジュース、ブドウジュース、グレープフルーツジュース、クランベリージュース、またはミックスジュース)、酸性飲料(例えばスポーツ飲料、Gatorade(登録商標))、中性pH飲料(例えば牛乳UHT乳製品、RTD栄養飲料、豆乳、またはシェイクおよびその他の混合飲料、例えばミルクシェイク、スムージー、フラッペ)、栄養補助食品(例えば高エネルギープロテインバー)、菓子製品(例えば高カルシウムチューズ、チューインガム、チョコレート、またはクッキー)、乳製品(例えばヨーグルト、アイスクリーム、牛乳、チーズ、プロセスチーズ、またはバター)、およびデンプン質製品(例えばパン、マフィン、ビスケット、シリアルまたはロールパン)に加えることができる。また別に、栄養補助組成物を、例えば錠剤またはカプセルの形態で、そして場合によってはその他の鉱物および/またはビタミンと組み合わせて直接投与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は所定の体重範囲を維持し、並びに体重減少を増強および/または体重増加を制限し、そして良好な健康状態を促すことにより体重超過状態または肥満を治療するための組成物および方法を志向する。体重超過および肥満はある程度乳製品、そしてさらにとりわけ乳製品に存在する鉱物の摂取不足が関係する。本発明の実施に従って、栄養補助組成物を、直接的かまたは組成物で強化した食品を介してのいずれかにより投与することにより、体重超過状態および肥満を有効に治療できることが見出された。栄養補助組成物は治療上有効量の乳鉱物、タンパク質および酵素阻害ペプチドを含有し、そして食事の前または食事中に投与される。栄養補助組成物はまた望ましい体重を維持することを欲している個体にも投与することができる。
【0014】
体重管理の別の機構に対処するために、組成物中に別の成分を用いることにより治療を増強することができる。組成物は満腹感を提供することによりカロリー摂取を制限し、摂食の停止に至るためにκ−カゼインフラグメント106−169(またはかかるペプチドの供給源)を含むことができる。加えて、脂肪代謝を調節することにより脂肪組織の制御を補助するために酵素阻害ペプチドを含むことができる。
【0015】
「治療する」、「治療すること」、「治療」なる用語および本明細書で用いる類似の用語は、個体が体重超過または肥満である度合い、またはそれに伴ういずれかの症状を緩和、抑制、阻害またはそうでなければ低減するために、体重超過または肥満である個体、とりわけヒトに栄養補助組成物を投与することを意味する。「治療する」、「治療すること」、「治療」なる用語および本明細書で用いる類似の用語はまた、体重超過または肥満になる危険性を有しているか、またはそうでなければそれを回避したい個体に栄養補助組成物を予防的に投与することをも意味する。
【0016】
栄養補助組成物の1つの成分は乳鉱物である。本明細書で用いる「乳鉱物」なる用語は乳清または牛乳から得られる鉱物複合体を意味する。鉱物複合体は均衡のとれた形態のカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛を含有する。炭酸カルシウムのチョークのような味と対照的に乳鉱物は相対的に中性の味である。カルシウムに富む乳清分画は、炭酸カルシウムおよび乳酸カルシウムが呈するよりもより高いカルシウムの生物学的利用率を呈することが実証されている。Ranhotraら、「高カルシウム乳清分画におけるカルシウムの生物学的利用率(Bioavailability of Calcium in a High Calcium Whey Fraction)」、Nutrition Research 17巻,11−12号,1663−1670頁(1997年)。最適な吸収のために、カルシウムおよびリンは、カルシウム:リンの比率が約1:1から2:1、例えば双方が牛乳および骨において見出されるのに類似した比率で存在するのが好ましい。乳鉱物はまた典型的には多量のラクトースおよび生体活性タンパク質を含有する。乳鉱物はまた一般に「牛乳カルシウム」とも称される。
【0017】
乳鉱物はその他の形態のカルシウムを有する栄養補助食品と比較して種々の利益を提供する。カルシウム補助食品およびカルシウム強化食物は炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、および水酸化カルシウムのごとき形態のカルシウムを含有する。しかしながらこれらの形態のカルシウムは望ましくない風味を生み出す可能性および/または食品から望ましい芳香および風味の化合物を奪う可能性がある。乳鉱物の使用によりこれらの問題を回避することができる。さらに重大なことに、乳鉱物複合体はカルシウムだけでなく、牛乳および乳製品にのみ存在し、そして健康的な食生活に重要なカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛などの、バランスのとれた、そして純粋な形態のその他の乳鉱物をも提供する。結果的に、乳鉱物複合体は、栄養の観点からカルシウムおよびその他の鉱物の好ましい形態であるカルシウムなどのバランスのとれた形態の鉱物を提供する。
【0018】
乳清または牛乳からの抽出により乳鉱物を得る適当な方法は当業者に公知である。適当な抽出方法は米国特許第5,639,501号に記載されており、その開示はその全てを出展明示により本明細書の一部とする。加えて、市販により入手可能な乳鉱物製品にはTRUCAL(登録商標)製品などがあり、これはウィスコンシン州モンローのGlanbia Nutritionals Inc.から市販により入手可能である。乳鉱物の典型的な組成を以下の表1で説明する。
【0019】
【表1】

【0020】
1つの重要な乳鉱物の特性はカルシウム対マグネシウム比である。所定のカルシウム対マグネシウム比は、その他の重要な鉱物の浸出、それは骨を脆弱にし、そして骨粗鬆症の危険性を増大させてしまう可能性があるのだが、を制限または回避するのに望ましい。いずれの理論に縛られることも望まないが、カルシウムおよびマグネシウムは共通の消化管吸収経路を共有するので、食事における高いCa:Mg比はマグネシウム吸収を邪魔する。マグネシウムレベルに対してカルシウムレベルが高い場合、カルシウムは吸収経路に関してマグネシウムと競合し、結果的に低マグネシウム血症に至る(血中の低マグネシウム)。
【0021】
天然の乳鉱物、とりわけカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛は栄養学において非常に重要である。例えばカルシウムは多くの身体機能、例えば筋肉機能制御、血液凝固、ホルモン制御、神経機能、および酵素活性化に必須である。乳鉱物中のカルシウムは高い生物学的利用率を有し、これはビタミンD、ラクトース、消化管酸度、および特定の繊維により増強される。また、乳鉱物中のバランスのとれた形態のカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛、並びにビタミンDは尿中への喪失によるカルシウムの枯渇を最小限にするのを助ける。
【0022】
乳鉱物中の鉱物および生体活性タンパク質のバランスにより、本発明の組成物で強化された食品が健常な体重の維持および体重超過および肥満の状態の治療に有効になる。いずれの理論に縛られることも望まないが、以下に本発明の組成物を用いて体重の状態を治療できる種々の機構についての論考を提供する。
【0023】
本組成物の乳鉱物は体重の管理並びに体重超過および肥満などの状態の治療に有効な、カルシウムの高い生物学的利用率を提供する。細胞性カルシウムイオン処理における一般的な代謝欠損は体重の増加および肥満の発生の原因となると考えられている。低カルシウム摂取は脂肪細胞における細胞内カルシウム濃度を増加させ、それによりその代謝をリポリシス(脂肪分解)からリポゲネシス(脂肪合成)および脂肪蓄積に転換する。カルシウム摂取の量を増加させることにより、細胞内カルシウム濃度が低下し、これはリポリシスを増加させ、そしてリポゲネシスを低下させる。従って、体重の維持および/または脂肪組織質量の低下による体重減少に有効なカルシウム量の日常的な摂取を提供するのが望ましい。
【0024】
本発明の別の態様では、栄養補助組成物はタンパク質供給源、例えば乳清タンパク質またはその他の適当な食物タンパク質を含む。乳清タンパク質は牛乳中に可溶性の球状タンパク質として生じる。一般に、これらは全体的な健康および栄養に必要なタンパク質の重要な供給源である。乳清タンパク質に由来する主要タンパク質およびペプチド構成成分にはα−ラクトアルブミンおよびβ−ラクトグロブリン、κ−カゼインフラグメント106−109、ラクトフェリン、ウシ血清アルブミン、ラクトペルオキシダーゼ、および免疫グロブリンなどがある。
【0025】
重要なペプチド構成成分はκ−カゼインフラグメント106−109である。これらのペプチドは消化管ホルモンCCKの放出を刺激することにより食欲抑制剤として機能する。CCKは、満腹に伴う身体の応答を生じ、それにより結果的に食事の終止に至るので、これは摂食行動の短時間調節に有効である。従って、食事前、中、または直後でも、有効量のκ−カゼインフラグメント106−169を投与することにより、食事中に摂食する食物量を制限できるが、満腹感は提供される。加えて、ヒトが空腹を感じている場合、食間のκ−カゼインフラグメント106−169の投与によっても満腹感を提供することができ、それにより食間の望ましくないスナック摂取が回避される。
【0026】
κ−カゼインフラグメント106−169の供給源には、PROVON(登録商標)190およびPROVON(登録商標)290などがあり、これはウィスコンシン州モンローのGlanbia Nutritionals Inc.から市販により入手可能である。κ−カゼインフラグメント106−169を生成するための適当な方法は当業者に公知であり、例えば米国特許第5,278,288号および第5,280,107号に記載されており、その全てを出展明示により本明細書の一部とし、これは乳原料、例えばチーズ乳清および乳清タンパク質濃縮物からκ−カゼインフラグメント106−169を生成するための方法を記載している。
【0027】
本発明の別の態様では、組成物は酵素阻害ペプチドを含む。かかるペプチドの供給源には、カゼイン、乳清タンパク質、大豆タンパク質、または当業者に公知のいずれかの方法に従って加工してペプチドを提供することができるいずれかその他の適当な市販により入手可能な食物タンパク質などがある。かかるペプチドの一例はアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害するものである。アンジオテンシンIIは脂肪細胞により合成され、そして分泌されるホルモンである。文献は、アンジオテンシンIIが脂質合成の制御および脂肪細胞の貯蔵を介して脂肪過多症の調節に関与している可能性があることを示している。いくつかの乳製品のペプチドはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害に関わる。従って、治療上有効量のACE−阻害ペプチドを投与することにより、体重減少が増強され得る。別の型の酵素阻害ペプチドはCCKの酵素分解を阻害するものである。1つまたはそれ以上の酵素阻害ペプチドを組成物に含めることができる。
【0028】
本発明の組成物を得るために、所望により、栄養補助組成物の調製の前に、組成物のために選択された成分を加工することができる。乳鉱物抽出物は典型的には精製され、噴霧乾燥され、そして所望により、液体または固体食品と混合することを可能にする適当な粒子サイズを有する粉末に粉砕される。乳鉱物抽出物は表1に示すようにカルシウムおよびその他の鉱物を有する。同様に、タンパク質成分は典型的には精製され、噴霧乾燥され、そして粉末に粉砕される。タンパク質成分はκ−カゼインフラグメント106−169を有し、そして所望により、アミノ酸および全体的に良好な健康状態および栄養に必須のその他の栄養素を有する。またACE−阻害ペプチドを栄養補助組成物で提供することもできる。乳鉱物抽出物、タンパク質成分およびACE組成ペプチド並びにその組み合わせから選択される望ましい成分を混合し、本発明の栄養補助組成物を提供する。場合によっては、当業者に公知の技術に従って、組成物はその他の成分、例えば鉱物、ビタミン、着香剤および着色剤を含むことができる。
【0029】
組成物に適した粒子サイズは、粉末を混合する食品の物理学的特性(例えば液体または固体、比重、pH、粘度等)のごとき因子に依存する。平均粒子サイズは約0.1ミクロンから約300ミクロンの範囲である可能性が高く、さらに通常には約1ミクロンから約100ミクロンの範囲である。中性pH飲料、例えば牛乳用には、粉末の懸濁液を容易に形成できるように、さらに微細に粉砕された粉末を用いるのが好ましい。pHが下がるにつれて粉末の可溶性が高くなるので、例えば、粉末が可溶化される酸性ジュース飲料および酸性飲料においては典型的にはあまり微細に粉砕されていない粉末を用いることができる。
【0030】
粉末形態の栄養補助組成物を広範な型の食品、酸性ジュース飲料(例えばオレンジジュース、リンゴジュース、ブドウジュース、グレープフルーツジュース、クランベリージュース、またはミックスジュース)、酸性飲料(例えばスポーツ飲料、Gatorade(登録商標))、中性pH飲料(例えば牛乳UHT乳製品、RTD栄養飲料、豆乳、またはシェイクおよびその他の混合飲料、例えばミルクシェイク、スムージー、フラッペ)、栄養補助食品(例えば高エネルギープロテインバー)、菓子製品(例えば高カルシウムチューズ、チューインガム、チョコレート、またはクッキー)、乳製品(例えばヨーグルト、アイスクリーム、牛乳、チーズ、プロセスチーズ、またはバター)、およびデンプン質製品(例えばパン、マフィン、ビスケット、シリアルまたはロールパン)の添加物として用いることができる。食品と組み合わせる栄養補助組成物の相対重量は食品の密度および提供サイズのごとき因子に依存する。典型的には、栄養補助組成物の量は0.1から約10重量%の範囲であり、これは食品の全重量に基づく。
【0031】
また別に、栄養補助組成物を直接個体に投与する形態に調製することができる。実例としては、組成物を錠剤、咀嚼剤、カプセルおよび液体シロップの形態で調製することができる。
【0032】
組成物の処方および、食品を介して投与する場合、食品に混合する組成物の量を、体重増加および/または体重減少を調節するのに有効であるように特定の成分の望ましい量を提供するように選択する。実例としては、典型的な栄養補助組成物は、組成物の一人分あたり少なくとも約0.5と約6グラムの間、またはそれ以上のカルシウム、少なくとも約0と約10グラムの間、またはそれ以上のκ−カゼインフラグメント106−169、および少なくとも約0と約20グラムの間、またはそれ以上のACE阻害ペプチドを提供するように投与することができる。投与される組成物の量を、所望により、組成物を投与する個体の物理学的特性および栄養要求における差異を考慮するように調整することができる。
【0033】
本発明の方法に従って、体重超過および肥満を含む体重の状態が効果的に管理および治療される。すなわち、健常状態で、そして一般的に理想的な体重を有している個体はその体重を管理し、そして望ましい体重範囲を維持することができる。望ましい範囲を超える体重を有しており、そして体重超過または肥満であると考えられる個体については、体重増加を制限および/または体重減少を促すことにより有効に治療することができる。栄養補助組成物の治療上有効量を個体に投与してこれらの利益を提供する。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は本発明の好ましい態様をさらに説明するが、添付の請求の範囲で示す本発明の範囲をいかなるようにも限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0035】
この実施例は栄養補助組成物で強化した飲料の調製を説明する。成分を混合して表2に示す組成を有する製品を作製した。
【0036】
【表2】

【0037】
水和するために液体成分およびカラギナンを高速で約5分間混合した。残りの乾燥成分を一緒に混合し、そして液体混合物にゆっくりと加え、低速で約5分から約10分間混合した。
【0038】
強化ドリンクの11オンス一人分でカルシウム1グラム、タンパク質30グラム、κ−カゼインフラグメント106−169 6グラム、およびACE阻害ペプチド成分1グラムが提供される。
【実施例2】
【0039】
この実施例は栄養補助組成物で強化した第1の粉末飲料混合物の処方を説明する。成分を混合して表3に示す組成を有する製品を作製した。
【0040】
【表3】

【0041】
飲料を提供するために十分な容量の望ましい液体、例えば水または脱脂粉乳と混合するのに備えた乾燥混合物を調製する。
【0042】
乾燥混合物の1回一人分(41.5グラム)で約127カロリー、タンパク質約20グラム、カルシウム約1グラム、κ−カゼインフラグメント106−169約4グラム、およびACE阻害ペプチド成分約2グラムが提供される。
【実施例3】
【0043】
この実施例は栄養補助組成物で強化した第2の粉末飲料混合物の処方を説明する。成分を混合して表4に示す組成を有する製品を作製した。
【0044】
【表4】

【0045】
飲料を提供するために十分な容量の望ましい液体、例えば水または脱脂粉乳と混合するのに備えた乾燥混合物を調製する。
【0046】
乾燥混合物の1回一人分(41.5グラム)で約125カロリー、タンパク質約20グラム、カルシウム約1グラム、κ−カゼインフラグメント106−169約4グラム、およびACE阻害ペプチド成分約4グラムが提供される。
【実施例4】
【0047】
この実施例は栄養補助組成物で強化した第3の粉末飲料混合物の処方を説明する。成分を混合して表5に示す組成を有する製品を作製した。
【0048】
【表5】

【0049】
飲料を提供するために十分な容量の望ましい液体、例えば水または脱脂粉乳と混合するのに備えた乾燥混合物を調製する。
【0050】
乾燥混合物の1回一人分(50グラム)で約162カロリー、タンパク質約21グラム、カルシウム約1グラム、κ−カゼインフラグメント106−169約4グラム、およびACE阻害ペプチド成分約4グラムが提供される。
【0051】
本発明の特定の態様を記載し、そして説明してきたが、当業者によってこれらに修飾を行うことが可能であり、本発明をここに限定するものではないことを理解すべきである。本出願は、本明細書で開示され、そして請求される基本の発明の精神および範囲内に入るいずれかおよび全ての修飾を企図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪細胞を減少させるために有効な量の乳鉱物(milk mineral)混合物、および
食物摂取後に満腹感を増強させるために有効な量のタンパク質化合物
を含んでなる体重管理組成物。
【請求項2】
前記組成物が酵素阻害ペプチドをも含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記酵素阻害ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む、請求項2の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの前記酵素阻害ペプチドがコレシストキニンの分解を制限する、請求項2の組成物。
【請求項5】
前記乳鉱物混合物が健康的な食生活を提供するためのカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたはそれ以上の鉱物(mineral)を含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記乳鉱物混合物が健康的な食生活を提供するためのカルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたはそれ以上の鉱物を含む、請求項3の組成物。
【請求項7】
前記タンパク質源が牛乳(milk)由来のタンパク質生成物、乳清由来のタンパク質生成物、大豆由来のタンパク質生成物およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記組成物は食間に投与される、請求項1の組成物。
【請求項9】
前記組成物は食事の一部として投与される、請求項1の組成物。
【請求項10】
脂肪細胞を減少させるために有効な量のカルシウム、および
満腹感を刺激するのに有効な量のκ−カゼインフラグメント106−169
を含んでなる、肥満を治療するための栄養補助食品(supplement)。
【請求項11】
前記栄養補助食品が栄養補助食品一人分あたり少なくとも約0.5グラムのカルシウムを含む、請求項10の栄養補助食品。
【請求項12】
前記栄養補助食品が一人分の栄養補助食品あたり少なくとも約3グラムのκ−カゼインフラグメント106−169を含む、請求項10の栄養補助食品。
【請求項13】
前記栄養補助食品が脂肪代謝を増強するのに有効な酵素阻害ペプチドを含む、請求項10の栄養補助食品。
【請求項14】
前記ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む、請求項13の栄養補助食品。
【請求項15】
前記栄養補助食品がコレシストキニンの分解を制限するのに有効な酵素阻害ペプチドを含む、請求項10の栄養補助食品。
【請求項16】
前記カルシウムが乳鉱物に由来する、請求項10の栄養補助食品。
【請求項17】
前記栄養補助食品が乾燥粉末の形態である、請求項10の栄養補助食品。
【請求項18】
前記栄養補助食品が栄養補助食品で強化されている食品を介して投与される、請求項10の栄養補助食品。
【請求項19】
治療上有効量の乳鉱物およびタンパク質成分を有する栄養組成物が個体に投与されることを含んでなる、肥満を治療する方法。
【請求項20】
前記乳鉱物が脂肪細胞の減少に有効であり、そしてタンパク質成分が食物摂取後の満腹感の増強に有効である、請求項19の方法。
【請求項21】
前記組成物が脂肪代謝の増強に有効な酵素阻害ペプチドを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドである、請求項21の方法。
【請求項23】
前記組成物を個体に摂取される食品に添加する、請求項19の方法。
【請求項24】
前記乳鉱物がカルシウムを含み、そして食品一人分あたり少なくともカルシウム約0.5グラムが提供される、請求項23の方法。
【請求項25】
前記タンパク質成分がκ−カゼインフラグメント106−169を含み、そして食品の一人分あたり少なくともκ−カゼインフラグメント106−169約3グラムが提供される、請求項23の方法。
【請求項26】
前記食品が酸性ジュース飲料、酸性飲料、中性pH飲料、高エネルギープロテインバー、菓子製品、乳製品、およびデンプン質製品からなる群から選択される、請求項23の方法。
【請求項27】
前記治療上有効な量の、乳鉱物混合物、タンパク質化合物および酵素阻害ペプチドからなる群から選択される2つまたはそれ以上の体重管理成分を含んでなる、体重管理組成物。
【請求項28】
前記乳鉱物混合物が、健康的な食生活を提供するために、カルシウム、銅、マグネシウム、リン、カリウム、セレニウムおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたはそれ以上の鉱物を含む、請求項27の組成物。
【請求項29】
前記タンパク質源が、牛乳由来のタンパク質生成物、乳清由来のタンパク質生成物、大豆由来のタンパク質生成物およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項27の組成物。
【請求項30】
前記酵素阻害ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む、請求項27の組成物。
【請求項31】
前記組成物は食間に個体または個人(indivisual)に投与される、請求項27の組成物。
【請求項32】
前記組成物は食事の一部として個体または個人に投与される、請求項27の組成物。
【請求項33】
前記組成物は食品と混合される、請求項27の組成物。
【請求項34】
治療上有効量の乳鉱物混合物、タンパク質化合物および酵素阻害ペプチドからなる群から選択される2つまたはそれ以上の体重管理成分を有する栄養組成物を個体に投与することを含んでなる、体重の状態を治療する方法。
【請求項35】
脂肪細胞を減少させるために有効な量で前記乳鉱物混合物を投与する、請求項34の方法。
【請求項36】
食物摂取後に満腹感を増強させるために有効な量で前記タンパク質化合物を投与する、請求項34の方法。
【請求項37】
脂肪代謝を増強させるために有効な量で前記酵素阻害ペプチドを投与する、請求項34の方法。
【請求項38】
前記ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドである、請求項37の方法。
【請求項39】
前記組成物を個体に摂取される食品に添加する、請求項34の方法。
【請求項40】
前記食品が、酸性ジュース飲料、酸性飲料、中性pH飲料、栄養補助食品、菓子製品、乳製品、およびデンプン質製品からなる群から選択される、請求項39の方法。
【請求項41】
治療上有効量の乳鉱物混合物、タンパク質化合物および酵素阻害ペプチドからなる群から選択される2つまたはそれ以上の成分を含んでなる、体重の状態を管理、治療または予防するための栄養補助食品。
【請求項42】
前記栄養補助食品が脂肪細胞を減少させるために有効な量のカルシウムを有する乳鉱物混合物を含む、請求項41の栄養補助食品。
【請求項43】
前記カルシウムが乳鉱物に由来する、請求項42の栄養補助食品。
【請求項44】
前記タンパク質化合物が満腹感を刺激するのに有効な量のκ−カゼインフラグメント106−169を含む、請求項41の栄養補助食品。
【請求項45】
前記栄養補助食品が脂肪代謝を増強するのに有効な量の酵素阻害ペプチドを含む、請求項41の栄養補助食品。
【請求項46】
前記ペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む、請求項45の栄養補助食品。
【請求項47】
前記栄養補助食品がコレシストキニンの分解を制限するのに有効な酵素阻害ペプチドを含む、請求項41の栄養補助食品。
【請求項48】
前記栄養補助食品が乾燥粉末の形態である、請求項41の栄養補助食品。
【請求項49】
前記栄養補助食品が栄養補助食品で強化されている食品を介して投与される、請求項41の栄養補助食品。

【公開番号】特開2010−189412(P2010−189412A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−89453(P2010−89453)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2003−572638(P2003−572638)の分割
【原出願日】平成15年2月25日(2003.2.25)
【出願人】(504330650)グランビア ニュートリショナルズ (アイルランド) リミテッド (4)
【Fターム(参考)】