説明

乾燥機

【課題】蒸発器で発生した除湿水を高所まで持ち上げる頻度を減らすことができ、排水ポンプの故障や騒音を低減することができる乾燥機を提供する。
【解決手段】ヒートポンプサイクル1と、凝縮器12、乾燥される衣類が収容されるドラム14、蒸発器13の順番で空気流が通過する送風経路2を有する乾燥機100であって、前記蒸発器13に前記空気流が通過することにより生じる除湿水Wを貯水する第1の貯水タンク3と、前記第1の貯水タンク3に接続されており、当該第1の貯水タンク3よりも容積が大きく、前記第1の貯水タンク3から移送される前記除湿水Wを貯水する第2の貯水タンク5と、一端が前記第2の貯水タンク5よりも高い位置に開口する排水管7と、前記第2の貯水タンク5と前記排水管7の他端とに接続されており、前記第2の貯水タンク5に貯水されている除湿水Wを、前記排水管7の一端から外部へと排出する排水ポンプ6と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプサイクルを備えた乾燥機において、蒸発器において生じる除湿水を排水する構造を有した乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類等を乾燥させるための乾燥機としては、その熱源として圧縮機、凝縮器、蒸発器から構成されるヒートポンプサイクルを備えたものがある。このような乾燥機は、送風機により凝縮器、濡れている衣類が収容されるドラム、蒸発器の順で空気流が通過する送風経路が形成されており、循環、あるいは、吸気された空気流が凝縮器で温められ、その暖められた空気流の熱でドラム中の衣類の水分を蒸発させるとともに、前記ドラムを通過し水分を多量に含んだ空気流から、蒸発器においてその熱を回収するように構成されている。ところで、前記蒸発器における空気流から熱を回収すると、空気流の温度が下がるため空気流に含まれていた水分が当該蒸発器に結露し、除湿水として現れる。
【0003】
この除湿水は例えば乾燥機の下部や蒸発器の下部に設けられた除湿水貯め等に一時的に貯水しておき、使用者が捨てるか、洗濯機と一体のものであれば洗濯排水等と併せて排水するよう構成されている。例えば、日本等であれば洗濯機や乾燥機を設置する部屋の床面には防水パン等の排水機構が予め設けられているため、重力により前記除湿水貯めから除湿水を下方の排水口へと流すことができる。
【0004】
ところで、欧米等においては日本のような防水パン等の排水機構が住宅には設置されていない地下室等に洗濯機や乾燥機は設置される事が多い。このため、乾燥機の除湿水は地上付近に設けられた下水管等へと流すために一度地上付近まで3mほど揚水して排水する必要がある。
【0005】
日本においても欧米等に比べると除湿水Wを揚水している高さは低いものの、特許文献1に記載されており、図5に示す乾燥機100のように除湿水貯め3に貯まった除湿水Wをドラム14が設置されている程度の高さまで排水ポンプ6により持ち上げることで、ドラム14に接続され床面の排水口に接続されている排水ホース7内に除湿水Wを落下させて流すための排水機構を有したものはある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されているような除湿水Wを排水ポンプで持ち上げる構造を参考として、図6に示すように、蒸発器13の下部に除湿水Wを貯めるための貯水タンク3と、前記貯水タンク3が満杯に近くなった時点で、3mほど持ち上げて、排水することができる大出力の排水ポンプ6と、を備えた除湿水Wの排水機構にすると、以下に説明するような様々な問題が生じてしまう。
【0007】
まず、図6の前記貯水タンク3は蒸発器13で発生する除湿水Wを重力により自然落下させて貯水するように構成されており、ドラム14や蒸発器14の下部に設ける必要がある。ドラム14の高さ等は使用上の制約からある程度高さが決まっているため貯水タンク3の高さを高くして貯水できる容積を大きくすることは難しい。従って、貯水タンク3の容積は小さくせざるを得ない。
【0008】
さらに図6(a)に示すように貯水タンク3に満水近くまで貯水された除湿水Wを大出力の排水ポンプ6により排水ホース7を介して排水したとしても、図6(b)のように貯水タンク3側に除湿水Wが無くたった時点で、空運転や故障、騒音を防止するために排水ポンプ6を停止する必要がある。すると、排水ホース7は3mほどの長さがあり、その内径も13mm程度のものが多いため、図6(c)に示すように0.4L程度の多量の除湿水Wが貯水タンク3内に戻ってくることになる。つまり、一度除湿水Wの排水が開始され始めると貯水タンク3の大半はデッドボリュームとなって排出されずに貯まり続けることになり、貯められる除湿水Wの量が減ってしまう。ただでさえ、貯水タンク3の容積を小さくせざるを得ない上に、排水のために有効に働く部分が少なくなってしまうため、すぐに貯水タンク3が満水となり、頻繁に排水ポンプ6を稼働させなくてはならず、単位時間当たりのON/OFF回数が多くなり、通常よりも早く排水ポンプ6に故障が生じてしまうことになる。また、大出力の排水ポンプ6が頻繁に稼働されるとその騒音も問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−087672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、蒸発器で発生した除湿水を高所まで持ち上げる頻度を減らすことができ、排水ポンプの故障や騒音を低減することができる乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の乾燥機は、圧縮機、凝縮器、蒸発器から構成されるヒートポンプサイクルと、前記凝縮器、乾燥される衣類が収容されるドラム、前記蒸発器の順番で空気流が通過する送風経路を有する乾燥機であって、前記蒸発器に前記空気流が通過することにより生じる除湿水を貯水する第1の貯水タンクと、前記第1の貯水タンクに接続されており、当該第1の貯水タンクよりも容積が大きく、前記第1の貯水タンクから移送される前記除湿水を貯水する第2の貯水タンクと、一端が前記第2の貯水タンクよりも高い位置に開口する排水管と、前記第2の貯水タンクと前記排水管の他端とに接続されており、前記第2の貯水タンクに貯水されている除湿水を、前記排水管の一端から外部へと排出する排水ポンプと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、前記蒸発器で発生する除湿水を、まず、第1の貯水タンクに集め、前記第1の貯水タンクに収容されている除湿水の量が所定量となるごとに、前記第1の貯水タンクよりも容積の大きい前記第2の貯水タンクに移すことにより、前記第1の貯水タンクに貯める事ができる容量よりも大量の除湿水を前記第2の貯水タンクに貯水することができる。従って、前記排水ポンプにより前記排水管を介して高所に揚水して外部へ排出する場合の除湿水の量をまとめて多くすることができるので、排水ポンプの単位時間当たりのON/OFF切替回数を少なくすることができる。また、前記排水ポンプの単位時間当たりのON/OFF切替回数を減らすことができるので、排水ポンプを稼働させるのに必要な消費電力や排水ポンプの劣化や故障を低減するとともに、高所に除湿水を持ち上げるために大出力のものとしても、起動回数を少なくすることができるので排水ポンプの騒音も低減することができる。
【0013】
さらに、前記第2の貯水タンクに除湿水を貯めこめばよいので、前記第1の貯水タンクの容積は小さくすることができ、乾燥機中の前記ドラムの下部や蒸発器の下部等スペースの余裕が無い場所にも容易に前記第1の貯水タンクを設けることができる。
【0014】
また、前記第2の貯水タンクは前記第1の貯水タンクとは離間して設けることができ、乾燥機中のスペースに余裕のある場所に設ければよく、その容積を大きくしやすい。さらに、前記第2の貯水タンクの容積を大きく設定できるので、前記排水ポンプを停止したときに前記排水管から戻ってくる除湿水に関しても余裕をもって前記第2の貯水タンクで吸収することができる。
【0015】
前記蒸発器から発生する除湿水を簡単な構成で前記第1の貯水タンクに貯め込むことができ、前記蒸発器を収容するケースと前記第1の貯水タンクとの間の配管やシールも不要にして低価格で構成するためには、前記第1の貯水タンクが、前記蒸発器を収容する蒸発器ケースの下部に一体となって設けられたものであればよい。
【0016】
前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクに除湿水を移送する際の消費電力や騒音をできる限り小さくするには、前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクに除湿水を移送する移送ポンプを更に備えたものであればよい。このように、前記移送ポンプを前記第1の貯水タンクと前記第2の貯水タンクとの間に設けておけば、前記排水ポンプのように高所へ除湿水を持ち上げる必要がない部分なので、前記移送ポンプは小型のものを選定することができる。従って、前記移送ポンプは小型のものであるから騒音もかなり小さくすることができる。また、騒音を小さくできる場合には前記移送ポンプを例えば常時稼働させるといったことも可能となり、前記第1の貯水タンクをより小型化することがしやすくなり、設置場所の制約を受けにくくすることができる。
【0017】
騒音や故障の低減に特に効果のある各ポンプの設定としては、前記排水ポンプが、前記移送ポンプと比較して高揚程・大流量に構成されているものが挙げられる。
【0018】
1つの排水ポンプのみで、前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクへの除湿水の移送と、前記第2の貯水タンクから外部への除湿水の排水を可能とし、コストを低減するには、前記排水ポンプが前記第2の貯水タンクと前記排水管とに接続されている第1状態と、前記排水ポンプが前記第1の貯水タンクと前記第2の貯水タンクとに接続されている第2状態と、を切り替えるための切り替え機構を更に有したものであればよい。
【0019】
各ポンプの単位時間当たりのON/OFF回数を減らしつつ、各貯水タンクに貯められた除湿水の処理を自動で行えるようにするには、前記第1の貯水タンクの水位を検出する第1水位検出部と、前記第2の貯水タンクの水位を検出する第2水位検出部と、前記第1水位検出部において前記第1の貯水タンクの水位が第1所定水位であることが検出された場合には、前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクへの除湿水の移送のために前記移送ポンプ又は排水ポンプを第1所定時間だけ運転させ、前記第2水位検出部において前記第2の貯水タンクの水位が第2所定水位であることが検出された場合には、前記第2の貯水タンクから外部へ除湿水の排水のために前記排水ポンプに第2所定時間だけ運転させるように構成された排水制御部を更に備えたものであればよい。
【0020】
前記排水管からの逆流により水漏れや前記第1の貯水タンクや蒸発器への逆流を確実に防止するには、前記第2所定水位が、前記第2の貯水タンクの最高水位から前記排水ホースの容積分の水位だけ低く設定されていればよい。このようなものであれば、前記第2の貯水タンクは常に排水管からの逆流に備えたキャパシティを持たせることができる。
【0021】
前記第2の貯水タンクにおいて除湿水の外部排出に有効に作用する容積をできる限り大きくするとともに、前記移送ポンプと前記排水ポンプが同時に稼働する可能性を低くするには、前記排水制御部が、乾燥機の運転スタート時に、前記第2水位検出部の出力に関わらず前記排水ポンプを第3所定時間だけ運転させるように構成されたものであればよい。
【0022】
前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクへ除湿水を移送する際の抵抗を小さくし、前記移送ポンプを小型化しやすくするには、前記第2の貯水タンクが、空気抜き管を有したものであればよい。
【0023】
さらに水漏れを防止できるとともに、安価に空気抜き管を構成するには、前記空気抜き管が、前記第2の貯水タンクの最高水位よりも高い位置で前記排水管に接続されていればよい。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明の乾燥機によれば、第1の貯水タンクと第2の貯水タンクの2つを用意し、容量の大きく設定してある第2の貯水タンクに多量の除湿水を貯め込んでから排水ポンプで一気に高所まで持ち上げて排水するように構成されているので、単位時間当たりにおける排水ポンプのON/OFF切替回数を低減することができる。従って、排水ポンプの故障や劣化、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る乾燥機の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態における乾燥時間と発生する除湿水の量との間の関係を示す模式図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る乾燥機の構成を示す模式図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る乾燥機の構成を示す模式図。
【図5】従来の乾燥機における除湿水を持ち上げて排出する構成の一例。
【図6】従来の乾燥機の排水機構を除湿水を高所で排出するように適応した場合に生じる除湿水の逆流に関する問題を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
第1実施形態の乾燥機100は、圧縮機11と、凝縮器12と、蒸発器13から構成されるヒートポンプサイクル1を用いたものであり、濡れている衣類の乾燥を行うたものものである。
【0028】
前記乾燥機100は、図1に示すように前記凝縮器12、衣類が収容されるドラム14、前記蒸発器13の順番で空気流が通過する送風経路2を有しており、この空気流は前記蒸発器13の下流に設けられた送風機構15により形成してある。このように構成することで、空気流は前記凝縮器12から熱を与えられて暖められ、前記ドラム14内の衣類から水分を蒸発させる。そして、水分を含んだ空気流は前記蒸発器13において熱を回収されるとともに送風機構15から排気される。また、空気流の温度の低下により前記蒸発器13において除湿水Wが結露することになる。
【0029】
第1実施形態の乾燥機100は、この蒸発器13において発生する除湿水Wを外部に排水するための排水機構200を備えたものである。また、この乾燥機100からの排水は、床面等に設けられた当該乾燥機100よりも低い位置にある排水口に排水を行うのではなく、例えば3mほど上方に設けられた排水箇所へ除湿水Wを持ちあげて排水するように構成してある。
【0030】
前記排水機構200は、図1に示すように前記蒸発器13から外部の排水個所に至るまでの間に設けてある第1の貯水タンク3、移送ポンプ4、第2の貯水タンク5、排水ポンプ6、排水ホース7で構成してある。さらに当該排水機構200は、前記移送ポンプ4、前記排水ポンプ6の制御を行う排水制御部(図示しない)と、を備えたものである。各部の機能について簡単に説明すると、前記第1の貯水タンク3は前記蒸発器13で発生した除湿水Wを一時的に収用しておくためのものであり、第1の貯水タンク3が満杯又は規定水量となった時点で、前記移送ポンプ4により前記第2の貯水タンク5へと除湿水Wを移送するようにしている。この動作を何回か繰り返して、前記第2の貯水タンク5の水量が満杯もしくは規定水量となった時点で前記排水ポンプ6により前記排水ホース7により乾燥機100の外部へと除湿水Wを排水するようにしてある。なお、前記排水ホース7は、一端が前記第2の貯水タンク5が設けられている地点から3mほど上方の位置に開口するものであり他端が前記排水ポンプ6に取り付けてある。
【0031】
以下では各部について詳述する。
【0032】
前記第1の貯水タンク3は、前記蒸発器13の収容されている蒸発器ケース131との間を配管で接続してあるものであり、前記蒸発器13の下方に設けてあるものである。すなわち、前記蒸発器13で発生した除湿水Wの水滴を重力による移動によって当該第1の貯水タンク3内に集められるようにしてある。この第1の貯水タンク3の形状及び大きさについて説明すると、前記乾燥機100の筐体内部において、前記蒸発器13の下部スペースに収容可能な大きさにしてある概略直方体形状のものである。後述する前記第2の貯水タンク5と比較して、その容積は小さく形成してあり、前記蒸発器13から除湿水Wを集めるのに適した位置に配置できるよう小型に形成してある。前記第1の貯水タンク3の上部には、満杯もしくは規定水量に対応する第1所定水位まで当該第1の貯水タンク3内に除湿水Wが収容されているかどうかを検出するための第1水位検出部31が設けてある。この第1水位検出部31は、例えば液面検出センサ等が挙げられるが、接触型、非接触型等様々なセンサを用いることができる。また、本実施形態では第1水位検出部31は、第1の貯水タンク3内の水位が第1所定水位であるかどうかのみを検出するものであるが、その他の水位を逐次測定できるものであっても構わない。
【0033】
前記移送ポンプ4は、後述する前記排水ポンプ6と比較して低容量、小型のポンプであり、前記第1の貯水タンク3から前記第2の貯水タンク5へと除湿水Wを移送するためのものである。ここで、前記移送ポンプ4は前記除湿水Wを乾燥機筐体の高さ程度までは持ち上げることのできる能力を有するものであり、3mほど上方に除湿を持ち上げることは想定していない。
【0034】
前記第2の貯水タンク5は、前記乾燥機筐体内において前記ドラム14、前記蒸発器13等の下部とは異なる場所で大きなスペースを確保できる箇所に設けてあるものであり、前記第1の貯水タンク3と比較して大きな容積を有するものである。より具体的には、前記第1の貯水タンク3が0.1L程度の容積を有する場合、前記第2の貯水タンク5の容積は1.0L程度の容積を有する。すなわち、前記第2の貯水タンク5は、前記第1の貯水タンク3に対して10倍程度の容積を有するように構成してある。このように各タンクの大きさを設定しているのは、例えば図2に示すように3.6kg程度の衣類を乾燥させた場合、トータルの除湿水Wの量は約1000mL程度であり、1分間に発生する除湿水Wの量が50mL/min程度であることに基づいている。さらに、前記第2の貯水タンク5も概略直方体形状をなすものであり、その上部には規定水量に対応する水位である第2所定水位まで除湿水Wが収容されているかどうかを検出するための第2水位検出部51が設けてある。この第2水位検出部51も第1水位検出部31と同様に液面検出センサを用いているが、その他の水位検出器、水量測定器であっても構わない。
【0035】
前記第2水位検出部51の取り付け位置について更に詳述すると、前記第2所定水位は前記排水ポンプ6により前記排水ホース7から外部へ除湿水Wを排出しているときに前記排水ホース7内にある除湿水Wの体積分、すなわち排水ホース7の容積分の水量逆流が生じた場合でも吸収できるように、前記第2水位検出部51は最高水位から所定水位低い位置に取り付けてある。また、当該第2の貯水タンク5の上面には、内部に除湿水Wが入ってきても内部空気が外部へと逃げることができるように開口を設けてある。この開口に空気抜き管52が取り付けてあり、前記第2の貯水タンク5の最高水位よりも高い位置で前記排水ホース7に合流するように取り付けてある。
【0036】
前記排水ポンプ6は、前記第2の貯水タンク5に集められた除湿水Wを3mほど高所まで持ち上げた後に外部へと排出できる能力を有したものである。つまり、前記移送ポンプ4と比較して前記排水ポンプ6は、高揚程・大流量に構成してある。より具体的には、前記移送ポンプ4が、揚程0.5m、流量0.5L/minの能力を有するのに対して、前記排水ポンプ6は、揚程3.0m、流量10L/minの能力を有する。
【0037】
前記排水制御部は、前記移送ポンプ4及び前記排水ポンプ6の動作を制御するものであり、CPU、メモリ、A/Dコンバータ等の入出力手段等を備えたいわゆるコンピュータやマイコン等によりその機能を実現されるものである。より具体的には、前記排水制御部は、前記第1水位検出部31において前記第1の貯水タンク3の水位が第1所定水位であることが検出された場合には、前記第1の貯水タンク3から前記第2の貯水タンク5への除湿水Wの移送のために前記移送ポンプ4又は排水ポンプ6を第1所定時間だけ運転させ、前記第2水位検出部51において前記第2の貯水タンク5の水位が第2所定水位であることが検出された場合には、前記第2の貯水タンク5から外部へ除湿水Wの排水のために前記排水ポンプ6に第2所定時間だけ運転させるように構成してある。
【0038】
ここで、前記第1所定時間は、前記移送ポンプ4を稼働させて前記第1の貯水タンク3における水位が前記第1所定水位から略ゼロとなるまでの時間であり、例えば、実験的に決めておけばよい。また第2所定時間は、前記排水ポンプ6を稼働させて前記第2の貯水タンク5における水位が前記第2所定水位から略ゼロとなるまでの時間であり、同様に実験的に求めておけばよい。このように、前記移送ポンプ4、前記排水ポンプ6を稼働させてから停止させるまでを水位ではなく時間に基づいて制御しているので、簡単な構成で効率よく除湿水Wの排水を行うことができる。
【0039】
また前記排水制御部は、前記乾燥機100の起動時には前記第1水位検出部31、前記第2水位検出部51からの出力に関わりなく、前記排水ポンプ6を第3所定時間だけ稼働させるようにも構成してある。このように前記乾燥機100の起動時にも前記排水ポンプ6を稼働させて第2の貯水タンク5の内部を略空にしておき、十分な量の除湿水Wを貯め込むことができるようになる。従って、前記移送ポンプ4と前記排水ポンプ6の稼働しているタイミングをずらしやすくなり、両方のポンプが稼働している可能性を低くすることができる。従って、各ポンプが同時に稼働していることにより、大きな騒音が発生するのを防ぐことができる。
【0040】
<第1実施形態の効果>
【0041】
このように構成された第1実施形態の乾燥機100によれば、前記蒸発器13で発生する除湿水Wを当該蒸発器13の下方に設けてある小型の第1の貯水タンク3に重力を利用して動力を用いることなく収集することができる。そして、前記第1の貯水タンク3に前記第1所定水位まで除湿水Wが貯められるごとに、小型で小出力の前記移送ポンプ4により大型の前記第2の貯水タンク5に移送して、除湿水Wを大量にまとめてから、大出力の前記排水ポンプ6により前記除湿水Wを高所に持ち上げて外部に排出することができる。すなわち、前記除湿水Wを少量ずつ複数回に分けて高所に持ち上げるのではなく、前記第2の貯水タンク5で大量に集めてから外部に排出するので、大出力の前記排出ポンプを単位時間当たりに稼働させる回数を減らすことができる。このため、前記排出ポンプを頻繁に稼働させることにより寿命が著しく短くなることを防ぐことができるとともに、前記排水ポンプ6の騒音も稼働回数が少ないことから大幅に低減することができる。
【0042】
さらに、前記第2の貯水タンク5を前記第1の貯水タンク3に比べて大きな容積を有するものとしており、大量の除湿水Wを排出までに貯め込むことができるので、1回の除湿水W排出で排出できる体積に対する、前記排出ポンプを停止した時に高所から前記第2の貯水タンク5まで逆流してくる除湿水Wの体積の割合を非常に小さくすることができ、排出時にデッドボリュームとなる除湿水Wの体積をできる限り小さくすることができる。従って、従来のものに比べて、排水ホース7の一端が高所に開口しており、前記除湿水Wを高所に持ち上げて排出する場合でも、効率よく除湿水Wを外部へ排出することができる。
【0043】
また、前記第1の貯水タンク3と、前記第2の貯水タンク5とを有していることから、前記第1の貯水タンク3は前記蒸発器13で生じる除湿水Wを収集するのに適した狭い場所等に設けられるように小型化するとともに、前記第2の貯水タンク5は除湿水Wを排出するまでにできる限り大量の除湿水Wを貯めこめるように大型化することができる。
【0044】
従って、主要部材である前記ドラム14や前記蒸発器13等の乾燥機筐体内における配置による制約があったとしても、前記第1の貯水タンク3は小型であるので、ほとんど影響を受けずに設けることができる。言い換えると、前記第1の貯水タンク3、前記第2の貯水タンク5に対する設計上の自由度を高くすることができる。
【0045】
さらに、第1実施形態の変形実施形態について説明する。第1実施形態では、前記移送ポンプ4は前記第1の貯水タンク3の水位が第1所定水位となった時点で所定時間だけ稼働させるようにしていたが、騒音が十分に小さい場合には常に稼働させるようにしても構わない。
【0046】
次に第2実施形態の乾燥機100について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すこととする。
【0047】
第2実施形態の乾燥機100の排水機構は、図3に示すように前記第1の貯水タンク3の設け方が第1実施形態とは異なっている。前記第1実施形態では蒸発器ケース131と前記第1の貯水タンク3は別々に設けていたが、第2実施形態では前記蒸発器ケース131の下部に前記第1の貯水タンク3を一体化させて設けてある。
【0048】
<第2実施形態の効果>
【0049】
このようなものであれば、前記第1の貯水タンク3をより小型化するとともに、効率よく除湿水Wを収集することができる。また、一体に設けることにより前記蒸発器ケース131と前記第1の貯水タンク3とを接続する配管や、水漏れなどが生じないようにシールを設ける必要が無くなるので、よりシンプルな構造にすることができる。
【0050】
次に第3実施形態の乾燥機100について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すこととする。
【0051】
第3実施形態の乾燥機100の排水機構200では、前記移送ポンプ4を設けずに前記排水ポンプ6のみで前記第1の貯水タンク3から前記第2の貯水タンク5への除湿水Wの移送と、前記第2の貯水タンク5から外部への除湿水Wの排出の両方を行うように構成している点が第1実施形態と異なる。
【0052】
すなわち、前記排水機構200は、前記排水ポンプ6が前記第2の貯水タンク5と前記排水管とに接続されている第1状態と、前記排水ポンプ6が前記第1の貯水タンク3と前記第2の貯水タンク5とに接続されている第2状態と、を切り替えるための切り替え機構8を備えている。
【0053】
より具体的には、図4に示すように前記第1の貯水タンク3は、三方弁である第1切替弁81を介して、前記排水ポンプ6と、前記第2の貯水タンク5の下側に配管により接続してある。また、前記排水ポンプ6は、三方弁である第2切替弁82を介して、前記排水ホース7の他端と、前記第2の貯水タンク5の上部に配管により接続している。また、前記排水制御部は、この第1切替弁81、第2切替弁82の向きを制御して各部材の接続の切り替えも制御するように構成してある。
【0054】
前記排水制御部は、前記第1の貯水タンク3が第1所定水位となり、当該第1の貯水タンク3から第2の貯水タンク5へと移送する場合には、図4(a)に示すように第1切替弁81を第1の貯水タンク3と前記排水ポンプ6を連通させるとともに、前記第2の貯水タンク5側への配管を閉塞するように制御する。さらに前記排水制御部は、前記第2切替弁82については、前記排水ポンプ6と前記第2の貯水タンク5とを連通するとともに前記排水ホース7側を閉塞するように制御する。その後、前記排水制御部は、前記排水ポンプ6を稼働させる。
【0055】
前記第2の貯水タンク5から前記排水ホース7を介して外部に除湿水Wを排水する場合には、前記排水制御部は、前記第1切替弁81を前記第2の貯水タンク5と前記排水ポンプ6を連通させて、前記第1貯水タンク側を閉塞するように制御し、前記第2切替弁82を前記排水ポンプ6と前記排水ホース7とを連通させ、前記第2の貯水タンク5側を閉塞するように制御する。その後、前記排水制御部は前記排水ポンプ6を稼働させて、除湿水Wを外部に排出する。
【0056】
<第3実施形態の効果>
【0057】
このように構成された第3実施形態の乾燥機100によれば、使用するポンプの数を減らすとともに、第1の貯水タンク3から第2の貯水タンク5への除湿水Wの移送と、前記第2の貯水タンク5からの外部への除湿水Wの排出を行うことができる。
【0058】
その他の実施形態について説明する。
【0059】
前記各実施形態では、第2の貯水タンクから外部へ除湿水を排出するための排水管の一例として排水ホースを示していたが、ホース以外の管であっても構わない。
【0060】
また、第1の貯水タンク、第2の貯水タンクの形状は特に限定されるものではなく、他のドラムや蒸発器等の配置に応じて変形させてもよい。要するに、前記第2の貯水タンクの容積のほうが前記第1の貯水タンクの容積よりも大きく形成してあるものであればよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100・・・乾燥機
1 ・・・ヒートポンプサイクル
11 ・・・圧縮機
12 ・・・凝縮器
13 ・・・蒸発器
131・・・蒸発器ケース
14 ・・・ドラム
2 ・・・送風経路
3 ・・・第1の貯水タンク
31 ・・・第1水位検出部
4 ・・・移送ポンプ
5 ・・・第2の貯水タンク
51 ・・・第2水位検出部
52 ・・・空気抜き管
6 ・・・排水ポンプ
7 ・・・排水ホース(排水管)
8 ・・・切替機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、蒸発器から構成されるヒートポンプサイクルと、
前記凝縮器、乾燥される衣類が収容されるドラム、前記蒸発器の順番で空気流が通過する送風経路を有する乾燥機であって、
前記蒸発器に前記空気流が通過することにより生じる除湿水を貯水する第1の貯水タンクと、
前記第1の貯水タンクに接続されており、当該第1の貯水タンクよりも容積が大きく、前記第1の貯水タンクから移送される前記除湿水を貯水する第2の貯水タンクと、
一端が前記第2の貯水タンクよりも高い位置に開口する排水管と、
前記第2の貯水タンクと前記排水管の他端とに接続されており、前記第2の貯水タンクに貯水されている除湿水を、前記排水管の一端から外部へと排出する排水ポンプと、を備えたことを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記第1の貯水タンクが、前記蒸発器を収容する蒸発器ケースの下部に一体となって設けられた請求項1記載の乾燥機。
【請求項3】
前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクに除湿水を移送する移送ポンプを更に備えた請求項1又は2記載の乾燥機。
【請求項4】
前記排水ポンプが、前記移送ポンプと比較して高揚程・大流量に構成されている請求項3記載の乾燥機。
【請求項5】
前記排水ポンプが前記第2の貯水タンクと前記排水管とに接続されている第1状態と、前記排水ポンプが前記第1の貯水タンクと前記第2の貯水タンクとに接続されている第2状態と、を切り替えるための切り替え機構を更に有した請求項1又は2記載の乾燥機。
【請求項6】
前記第1の貯水タンクの水位を検出する第1水位検出部と、
前記第2の貯水タンクの水位を検出する第2水位検出部と、
前記第1水位検出部において前記第1の貯水タンクの水位が第1所定水位であることが検出された場合には、前記第1の貯水タンクから前記第2の貯水タンクへの除湿水の移送のために前記移送ポンプ又は排水ポンプを第1所定時間だけ運転させ、前記第2水位検出部において前記第2の貯水タンクの水位が第2所定水位であることが検出された場合には、前記第2の貯水タンクから外部へ除湿水の排水のために前記排水ポンプに第2所定時間だけ運転させるように構成された排水制御部を更に備えた請求項1、2、3、4又は5記載の乾燥機。
【請求項7】
前記第2所定水位が、前記第2の貯水タンクの最高水位から前記排水ホースの容積分の水位だけ低く設定されている請求項6記載の乾燥機。
【請求項8】
前記排水制御部が、乾燥機の運転スタート時に、前記第2水位検出部の出力に関わらず前記排水ポンプを第3所定時間だけ運転させるように構成された請求項6又は7記載の乾燥機。
【請求項9】
前記第2の貯水タンクが、空気抜き管を有した請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の乾燥機。
【請求項10】
前記空気抜き管が、前記第2の貯水タンクの最高水位よりも高い位置で前記排水管に接続されている請求項9記載の乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94325(P2013−94325A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238345(P2011−238345)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】