説明

乾留による有機性廃棄物の処理方法とその処理装置

【課題】有機性廃棄物の乾留ガスから回収したガスと油化物を、乾留熱源の燃料とするものであり、有機性廃棄物を加熱し短時間で熱分解して良質な燃料を回収し、ガスを燃焼に適した圧力と量で回収する方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物を熱伝導の良い結束材で結束して乾留装置1に収納、有機性廃棄物の両側面と底部から加熱、内部を熱伝導の良い結束材からの伝熱で加熱し短時間で熱分解する。発生する乾留ガスは乾留ガス加熱装置3で再加熱し乾留ガス中の未分解物を熱分解し精製、ガスおよび油化物を良質な燃料で回収する。ガスは内槽と外槽よりなる二重槽の乾留ガス冷却装置4、乾留ガス分離装置8、ガス量調整装置9の内槽と外槽の水位調整で、ガス燃焼装置10に適した圧力と量で供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状の大きな有機性廃棄物を含む有機性廃棄物を乾留し、無機物と乾留ガスに熱分解。無機物は回収、乾留ガスはガスと油化物と水で回収する。回収したガスと油化物は乾留および回収した水の淨化のための加熱熱源燃料に使用し水を再利用する乾留による有機性廃棄物の処理方法とその処理装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
乾留による有機性廃棄物の処理は、熱分解速度を早めるため前処理で切断破砕をおこない、あるいは酸素含有量の多い廃木材と畳は、少量の空気を補給し自己燃焼させ炭化処理をおこなう、時間と費用をかけない処理方法が志向される。しかしながら、形状が大きく切断破砕を必要とする畳、あるいは繊維強化プラスチックで構成される廃船や槽類などの有機性廃棄物には結束材や強化材が含まれ切断破砕が難しく、また、時間当りの発生熱量が少ない自己燃焼による炭化には長い処理時間を必要とする。これらを時間と費用をかけない処理方法とするには、切断破砕の形状を運搬できる大きさにとどめ、また、乾留により発生するガスもしくは油化物を加熱熱源燃料とし、外部加熱により熱分解速度あるいは自己燃焼による炭化速度を速める方法が必要であり、この状況下、乾留に関する有機性廃棄物の処理技術が公開されている。
【0003】
例えば、特許文献1には建築廃材や間伐材などの長い木材を切断せず収納し炭化処理するもので、炭焼窯を上蓋と給気筒を設けた複数ユニットに分割し、先端ユニットに焚口、後端ユニットに排気口を設けるものである。炭化処理は焚口から排気口に向け自己燃焼部位を移動させながら木材を炭化、発生ガスを排気口より排気し、排気の吸引による圧力低下を利用しユニットの給気筒より空気を吸入し自己燃焼を促進、炭化した部位のユニットには空気の吸引を停止し、炭化物の収率を維持しようとするものである。
【0004】
また、特許文献2には、繊維強化プラスチック廃棄物を破砕し、外部加熱による乾留炉内を移動させながら熱分解、発生する乾留ガスを外部加熱の燃料とし、強化材を回収、再利用製品の原料にしようとするものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001―181646号公報
【特許文献2】特開2003―20360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された発明においては、自己燃焼部位への給気により燃焼部位を移動させながら自己燃焼を促進させることで、従来の炭焼窯方式に比べ処理時間は短くなるものの、炭化物の収率を上げるには空気供給量を減らす必要があり、空気供給量を減らせば発生熱量は減り炭化処理に時間を要する。また、ユニット毎の炭化状況の把握は燃焼部位から出る炎と煙の目視によらざるを得ず、処理時間を応じた労力を必要とする。処理は8〜12時間でおこなうことが望ましく、これには外部加熱で炭化を促進する方法によらざるを得ない。
【0007】
また、上述の特許文献2に開示された発明においては、発生する乾留ガスを外部加熱の燃料とし加熱熱源燃料に費用をかけずに処理するものであるが、乾留ガスの燃焼による加熱では臭気および有害ガスを発生するおそれがある。また、乾留ガスが燃焼に適した圧力となるまでの間は、購入燃料による燃焼加熱となるがこの燃焼加熱時間を短縮するには、乾留ガスの発生を促進するため、繊維強化プラスチックを微細に破砕し熱分解速度を早める必要がある。繊維強化プラスチックの微細な破砕には大きな動力を必要とし、さらにこの破砕した繊維強化プラスチックを移動させながら、粘度の高いプラスチックの融解物とし、繊維とガスに熱分解するには、移動にも大きな動力が必要となる。したがって、外部加熱熱源燃料の費用は低減するが、稼動動力に費用を要することとなる。
【0008】
本発明は、時間と費用をかけずに有機性廃棄物を乾留し、無機物と乾留ガスに熱分解、乾留ガスから回収したガスおよび油化物を燃焼させ乾留熱源と回収した水の再利用のための加熱熱源の燃料に使用するものであり、有機性廃棄物を短時間で処理するために効率の良い加熱で熱分解を促進すること、燃焼加熱の熱源として良質な燃料を回収すること、ガスを燃焼するため燃焼に適した圧力でガスを回収することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の乾留による有機性廃棄物の処理方法は、水を加熱し発生させた蒸気を圧入しながら有機性廃棄物を乾留し、乾留ガスと炭化物、珪酸化合物、金属などの無機物に熱分解し、無機物は乾留終了後に冷却し回収、乾留ガスは600〜800℃に加熱し脱臭精製する。精製した乾留ガスは200℃以下に水冷し設定圧力とするが、水冷の際、乾留ガスに有害な塩化水素ガス、亜硫酸ガスが含まれる場合は、この冷却水に置換剤の酸化マグネシュウムを混入し、各々無害な塩化マグネシュウム、硫酸マグネシュウムに置換え、これらは回収した水を加熱蒸発させる際に蒸発残渣で回収する。200℃以下に冷却した乾留ガスは、さらに水で駆動するジェットポンプで加圧するとともに、ジェットポンプの駆動水で100℃以下に水冷する。100℃以下に冷却した乾留ガスは油化物と水と設定圧力のガスに分離する。油化物と水は油水分離、設定圧力のガスは燃焼に適した量とし、油化物とともに乾留熱源および水の加熱熱源の燃料で回収する。回収した水は乾留の際に圧入する蒸気用水とするとともに、回収した水の一部を余剰油化物で加熱蒸発させ冷却淨化し再利用することにより、有機性廃棄物を無機物と水と油化物とガスで回収し再利用する作用を有している。
【0010】
請求項2に記載の乾留工程と再加熱工程は、水を加熱し発生させた蒸気を圧入し大気圧より高い圧力とし、空気の混入による可燃性の乾留ガスの爆燃を防止するとともに、有機性廃棄物の熱分解を促進し乾留ガスを発生させ、発生した乾留ガスを電熱加熱することにより乾留ガス中の未分解物を熱分解し脱臭精製、ガスと油化物を良質な燃料とする作用を有している。
【0011】
請求項3に記載の有機性廃棄物の側面からの燃焼加熱は、乾留ガスの発生量が少ない乾留開始時は前工程で貯留した油化物を燃焼し、底部からの電熱加熱を合わせ有機性廃棄物を乾留し乾留ガスを発生させ、発生ガスが燃焼に適した圧力になってから、ガスの燃焼加熱に切換えることにより、ガスを貯蔵せず燃料として使用することのできる作用を有している。
【0012】
請求項4に記載の乾留ガス冷却と乾留ガス分離とガスを燃焼に適した圧力と量にする工程の各々に必要な設定圧力は、乾留ガス冷却工程では乾留ガスが乾留ガス加熱工程へ逆流せず且つジェットポンプにより燃焼に適した圧力より高い圧力に加圧できる圧力とし、乾留ガス分離工程では燃焼に適した圧力とし、ガスを燃焼に適した圧力と量にする工程では燃焼に適した圧力のガスを燃焼に適した量とする。設定圧力とするには、乾留ガスもしくはガスを設定圧力のガス容積に等しい水の容積で、水面面積に負荷される設定圧力に対応する水深を持つ水槽に導入し水位を降下させ、降下により排除される水は水槽の外周に設けた槽の水位上昇で受け、水槽の設定圧力に対応する外周に設けた槽の設定圧力水位から溢水させる。ガスの圧力変化は水槽水面の水位変動に連動する外周に設けた槽の溢水を含む水位変動で受け設定圧力を平準化し、回収したガスを乾留熱源燃料と水の加熱熱源燃料として使用することのできる作用を有している。
【0013】
請求項5に記載の乾留による有機性廃棄物の処理装置は、有機性廃棄物を収納し水を加熱し発生させた蒸気を圧入しながら加熱乾留、乾留ガスと無機物に熱分解し無機物を回収する乾留装置と、乾留装置からの乾留ガスを加熱し未分解物を熱分解、乾留ガスを精製する乾留ガス加熱装置と、精製した乾留ガスを噴出水で水冷し設定圧力とする乾留ガス冷却装置と、水冷した乾留ガスを加圧し、さらに水冷する水で駆動するジェットポンプと、加圧した乾留ガスをガスと油化物および水に分離し、ガスを設定圧力とする乾留ガス分離装置と、設定圧力のガスをガス燃焼装置に適した量とするガス量調整装置と、油化物と水を分離する油水分離装置と、分離した油化物を貯留し油化物燃焼装置に適した量とする油化物貯留装置と、分離した水を加熱し乾留装置に圧入する蒸気とする蒸気供給装置および分離した水を加熱蒸発させ冷却淨化する蒸発処理装置と用水冷却装置により、乾留ガスをガスと油化物と水で回収する。回収したガスと油化物は乾留装置の加熱熱源燃料とし、その余剰熱量で回収した水の一部を加熱し乾留装置に圧入する蒸気で再利用するとともに、余剰油化物で回収した水の一部を加熱蒸発させ冷却淨化、水を淨化しつつ回収再利用する。これにより有機性廃棄物から無機物を回収するとともに、乾留ガスからガスと油化物と水を分離回収し再利用することのできる作用を有している。
【0014】
請求項6に記載の乾留装置は、運搬できる形状とし鎖やワイヤーで構成する熱伝導の良い金属製の結束材で束ねた有機性廃棄物を収納した乾留部の両側面に配備した側面燃焼加熱部から、ガスもしくは油化物の燃焼熱を伝熱板による熱交換で伝熱し加熱する。両側面からの加熱では熱の伝わりにくい底部は底部電熱加熱部から電熱で加熱し、併せて熱分解で底部に滴下する液化物を加熱しガスとする。両面の側面燃焼加熱部と底部電熱加熱部の三面からの加熱と、この熱を熱伝導の良い結束材により有機性廃棄物の内部に伝熱加熱することにより、効率の良い熱分解をおこなうことのできる作用を有している。
【0015】
請求項7に記載の乾留ガス冷却装置と乾留ガス分離装置とガス量調整装置は、底部で相互に通水する設定圧力のガス容積に等しい容積の水を満たし上部を閉じた内槽と、内槽の水面面積に負荷される設定圧力に対応する水深を内槽と分け持ち、且つ設定圧力となった内槽から排除される水の容積をもつ上部を開放した外槽の二重槽とすることにより、ガスの圧力上昇により下降する内槽の水位を外槽の水位上昇で受け、内槽のガスが設定圧力となる水位に対応した外槽の水位から水を溢水させ、内槽のガスを設定圧力とする。内槽のガスの圧力変化は内槽の水位変動に連動する溢水を含めた外槽の水位変動で受けることにより、内槽のガスの圧力を設定圧力に平準化する。この平準化により、乾留ガス冷却装置の乾留ガスの比重量が平準化されジェットポンプによる加圧圧力を安定させる。乾留ガス分離装置ではジェットポンプで安定的に加圧された乾留ガスを、燃焼に適した設定圧力とし、この設定圧力によりガス量調整装置でガス燃焼装置に適した量とし、ガスを燃料として使用することのできる作用を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、運搬できる形状とし熱伝導の良い結束材で束ねた有機性廃棄物を、回収したガスもしくは油化物の燃焼熱で両側面から伝熱板による熱交換で加熱し、電熱で底部から加熱、内部を熱伝導の良い結束材で伝熱加熱することにより、効率よく乾留ガスと無機物に熱分解することができる。
【0017】
乾留ガスは加熱により未分解物を熱分解し精製、ガスと油化物と水に分離する。分離したガスは内槽と外槽よりなる複数の二重槽を介して、燃焼機器に適した圧力と量にすることで、ガス量に応じて規模の大きくなる常温常圧の貯留装置、もしくは費用のかかる高圧貯留装置を設けることなく燃料として使用することができる。油化物は容易に貯留できることから、乾留ガスが燃焼に適した圧力になるまでは底部からの電熱加熱に併せて油化物の燃焼加熱をおこない、発生するガスが燃焼に適した圧力になってから、油化物をガスに切り替え燃焼加熱する燃料使用効率の良い燃焼加熱をおこなうことができる。
【0018】
燃焼加熱は伝熱板による熱交換であり余剰熱量を生じる。この余剰熱量を利用して回収した水の一部を加熱し発生させた蒸気を乾留装置に圧入し再利用、さらに回収した水の一部を余剰油化物で加熱蒸発させ冷却淨化しつつ再利用、水の再利用により余剰水量となる有機性廃棄物の含水相当分の水量を、乾留装置から無機物を回収する際の冷却兼飛散防止用の散水とすることにより、有機性廃棄物を時間と費用をかけず、安全に乾留処理をすることができる処理方法とその処理装置となる。
【0019】
本発明の実施例を図により説明する
【実施例1】
【0020】
以下に本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理装置について図1を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理装置のフロー図である。
【0021】
図1は本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理装置のフロー図である。図1においてステップS―1は運搬できる形状とし熱伝導の良い結束材で束ねた有機性廃棄物を、側面からガスもしくは油化物の燃焼加熱、底部から電熱加熱、内部を熱伝導の良い結束材の伝熱加熱で加熱乾留し、加熱乾留の余剰熱量で水を加熱した蒸気を圧入し熱分解を促進しながら、乾留ガスと無機物に分離する手段である。ステップS―2はステップS―1で分離した無機物に散水し冷却回収、乾留ガスは電熱加熱で脱臭精製し、噴出水で200℃以下に冷却、内槽と外槽の二重槽で設定圧力とし、設定圧力とした乾留ガスを水で駆動するジェットポンプで加圧冷却し、燃焼に適した設定圧力のガスと油化物と水に分離回収する手段である。
【0022】
ステップS―3は、分離回収したガスと油化物を、乾留熱源燃料として底部からの電熱加熱に併せ、乾留ガスの発生量が少ない乾留開始時には貯留した油化物を燃焼させ側面から加熱、発生ガスが燃焼に適した圧力になってから、ガスの燃焼加熱に切換え燃焼させ加熱することにより効率良く再利用し、分離回収した水はステップS―1の乾留加熱の際に圧入する蒸気およびステップS―2の乾留ガス冷却用の噴出水に再利用するとともに、回収した水の一部に、用水使用装置水槽の水の一部を定期的に集めた水を加え、加熱蒸発させ冷却淨化した水を一定温度が必要なジェットポンプの駆動水に再利用する手段である。このうち、乾留加熱の際に圧入する蒸気は乾留加熱の余剰熱量で加熱蒸発させることにより水を淨化するとともに、回収した水の一部に加え定期的に集めた用水使用装置水槽の水の一部を、余剰油化物を熱源燃料とし加熱蒸発させ冷却淨化することにより、分離回収したガスと油化物と水を効率良く再利用するものである。水の再利用により余剰水量となる有機性廃棄物の含水相当分の水量は、乾留装置から無機物を回収する際の冷却兼飛散防止用の散水とし、水の全量を再利用する。
【0023】
以上の説明において、本実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理装置においては有機性廃棄物を乾留し無機物と乾留ガスに熱分解。無機物は回収し、乾留ガスはガスと油化物と水で回収。回収したガスと油化物は乾留および回収した水の再利用のための加熱熱源燃料に使用し、水は全量を再利用する乾留による有機性廃棄物の処理装置となる。
【実施例2】
【0024】
以下に本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法について、図2を参照しながら説明する。図2は本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法の構成図である。図2において乾留による有機性廃棄物の処理方法は乾留装置1、蒸気供給装置2、乾留ガス加熱装置3、乾留ガス冷却装置4、ノズル5、用水装置6、ジェットポンプ7、乾留ガス分離装置8、ガス量調整装置9、ガス燃焼装置10、油水分離装置11、油化物貯留装置12、油化物燃焼装置13、蒸発処理装置14、空気エジェクター15、用水冷却装置16、排水貯留装置17で構成する。乾留装置1には熱伝導の良い結束材で束ねた運搬できる形状の有機性廃棄物を設定量搬入し、蒸気供給装置2より水の蒸気を圧入しながら加熱乾留、有機性廃棄物を無機物と乾留ガスに熱分解し分離する。無機物は乾留装置1に残置し乾留終了後、散水冷却し回収。乾留ガスは乾留ガス加熱装置3に導入する。乾留ガス加熱装置3では乾留ガスを600〜800℃に電熱加熱し、乾留ガスに含まれる未分解物を熱分解し脱臭精製する。
【0025】
精製した乾留ガスは、内槽と外槽の二重の槽で構成する乾留ガス冷却装置4の内槽に設けたノズル5に用水槽6からポンプで圧送した水を噴出させ200℃以下に冷却、設定圧力を乾留ガス加熱装置3に逆流しない圧力で、ガス燃焼装置10での燃焼に適した圧力より高い圧力にジェットポンプ7で加圧できる圧力とし、設定圧力の乾留ガスを水で駆動するジェットポンプ7で加圧するとともに、駆動水で100℃以下に冷却、内槽と外槽の二重の槽で構成する乾留ガス分離装置8の内槽に導入しガスと油化物および水に分離する。乾留ガス分離装置8で分離したガスの設定圧力は燃焼に適した圧力とし、内槽と外槽の二重の槽で構成するガス量調整装置9の内槽に導入、ガス燃焼装置10に適した量としガス燃焼装置10で燃焼する。油化物および水は油水分離装置11に送り油化物と水に分離し、油化物は油化物貯留装置12に貯留し、燃焼時は送油ポンプで油化物燃焼装置13に適した量とし、油化物燃焼装置13で燃焼する。
【0026】
油化物から分離した水は用水装置6に導入し、蒸気供給装置2と蒸発処理装置14へ水位差で給水する。蒸気供給装置2は乾留装置1の燃焼加熱後の燃焼ガスの余剰熱量で加熱し、燃焼ガスは空気エジェクター15で吸引排出する。蒸発処理装置14は用水装置6からの水の一部と用水使用装置の水槽の水の一部を定期的に廃水貯留装置17に集水しポンプで給水した水を、余剰油化物を燃料とし燃焼加熱し水を蒸発させ、蒸気を用水冷却装置16で冷却淨化し回収、一定温度が必要なジェットポンプ7の駆動用水に使用するとともに、用水再利用により余剰水量となる有機性廃棄物の含水相当分の水量を無機物回収時の冷却兼飛散防止用の散水とする。蒸気供給装置2と蒸発処理装置14の蒸発残渣は回収する。
【実施例3】
【0027】
以下に本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、乾留加熱方法について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、乾留加熱方法の構成図であり、加熱方法にかかる乾留装置の乾留部と側面燃焼加熱部と底部電熱加熱部と扉体の構成図である。
【0028】
図3において乾留装置の加熱方法は乾留装置1、蒸気供給装置2、乾留ガス加熱装置3、乾留ガス冷却装置8、ガス燃焼装置10、油化物貯留装置12、油化物燃焼装置13、蒸発処理装置14、用水冷却装置16、熱伝導の良い結束材18、乾留部19、扉体20、側面燃焼加熱部21、底部電熱加熱部22、伝熱板23、水蒸気圧入口24、燃焼ガス排気口25、乾留ガス排出口26で構成する。側面燃焼加熱部21はガス燃焼装置10もしくは油化物燃焼装置13で、ガスもしくは油化物を燃焼する空間であり、伝熱板23で燃焼熱を伝熱し、乾留部19の有機性廃棄物を加熱する。側面燃焼加熱部21から熱の伝わりにくい有機性廃棄物の底部は、乾留部19底部に電熱線を配備した底部電熱加熱部22から加熱し、併せて乾留により底部に滴下する液化物をガスにする。側面燃焼加熱部21と底部電熱加熱部22のいずれからも熱の伝わりにくい有機性廃棄物の内部は熱伝導の良い結束材18により伝熱加熱する。発生した乾留ガスは乾留ガス排出口26から乾留ガス加熱装置3に導入する。乾留部19上部の扉体20は冷却水管を配備し、熱による変形を防止する。
【0029】
側面燃焼加熱部21の燃焼加熱は、乾留ガスの発生量が少ない乾留開始時は油化物貯留装置12からの油化物を油化物燃焼装置13で燃焼させ、底部電熱加熱部22からの電熱加熱と合わせて有機性廃棄物を乾留し乾留ガスを発生、発生ガスが燃焼に適した圧力になってからガス燃焼装置10の燃焼に切換え加熱する。側面燃焼加熱部21の燃焼加熱は伝熱板23による熱交換方式であり余剰熱量を生じる。余剰熱量をもつ燃焼ガスを側面燃焼加熱部21に設けた燃焼ガス排気口25から蒸気供給装置2に導入し、用水装置6から水位差で給水した水を加熱し発生させた蒸気を乾留装置1に圧入する。側面燃焼加熱部21の燃焼物を油化物からガスに切換えた時点で、油化物貯留装置12に残った油化物は、次工程での乾留開始時の燃焼相当分を差し引いた余剰量を蒸発処理装置14で燃焼し、用水装置6から給水した水の一部と、用水使用装置の水槽の水の一部を定期的に集水した廃水貯留装置17からポンプで給水した水を加熱し、発生させた蒸気を用水冷却装置16で冷却淨化し回収、一定温度が必要なジェットポンプ7の駆動用水に使用するとともに、用水再使用の際に余剰水となる有機性廃棄物の含水相当分を、乾留装置1からの無機物回収時の冷却兼飛散防止用の散水とする。
【0030】
乾留装置1の温度が上がり乾留ガスの発生量が減少する乾留終了時は、側面燃焼加熱部21と底部電熱加熱部22からの加熱を停止し、側面燃焼加熱部21に空気を吹込み乾留部19に残置した無機物を冷却、無機物が100℃前後になった時点で散水し回収する。冷却により乾留槽1と乾留ガス加熱装置3の圧力は低下し、連携した空間の乾留ガス冷却装置8と、用水装置6から水位差で水を供給する蒸気供給装置2、蒸発処理装置14、用水冷却装置16の水位が上昇し、乾留装置1と乾留ガス加熱装置3の圧力低下で混入する空気による爆燃を防止する。
【実施例4】
【0031】
以下に本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、ガスを燃焼に適した圧力にする方法について図4を参照しながら説明する。図4は本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、ガスを燃焼に適した圧力にする方法の構成図であり、ガスを燃焼に適した圧力にする方法にかかる乾留ガス冷却装置と乾留ガス分離装置とガス量調整装置の構成図である。
【0032】
図4においてガスを燃焼に適した圧力とする方法は、乾留ガス加熱装置3、乾留ガス冷却装置4、用水装置6、ジェットポンプ7、乾留ガス分離装置8、ガス量調整装置9、ガス燃焼装置10、乾留ガス冷却装置の内槽27、乾留ガス冷却装置の外槽28、乾留ガス分離装置の内槽29、乾留ガス分離装置の外槽30、ガス量調整装置の内槽31、ガス量調整装置の外槽32、水位調整バルブ33で構成する。乾留開始時に、先工程の無機物の冷却により水位の上昇した乾留ガス冷却装置の内槽27の空間に、乾留ガス加熱装置3で加熱した乾留ガスを冷却しながら設定圧力の水位となるまで導入し、水で駆動するジェットポンプ7を稼動する。これにより有機性廃棄物の熱分解の部位で変化する乾留ガスの圧力を、乾留ガス冷却装置の内槽27の水位の変化を受ける乾留ガス冷却装置の外槽28の水位の変化で平準化し、比重量を安定させることによって、一定水圧且つ一定水量の水で駆動し乾留ガスの比重量に応じ乾留ガスを加圧するジェットポンプ7の加圧圧力を安定させる。
【0033】
ジェットポンプ7で安定的に加圧された乾留ガスは、ジェットポンプ7の駆動水で冷却され、乾留ガス分離装置の内槽29でガス、油化物、水に分離する。分離により乾留ガスは油化物と水に相当する量が液化し、ガス量は減少し且つ冷却により圧力は低下する。これに対応するためジェットポンプ7での加圧圧力をガスの燃焼に適した圧力以上の圧力で、乾留ガス分離装置の内槽29でガスの燃焼に適した圧力まで減圧できる圧力に設定する。乾留ガス分離装置8の設定圧力の平準化は、乾留ガス冷却装置4と同様に乾留ガス分離装置の内槽29の水位の変化を受ける乾留ガス分離装置の外槽30の水位の変化により平準化し、分離した油化物と水は設定圧力に対応した乾留ガス分離装置の外槽30の設定水位より溢水させ排出する。ガス燃焼装置10には装置により燃焼に適した圧力による使用ガス量があり、乾留ガス分離装置の内槽29のガス量に対しガス燃焼装置10の使用ガス量に応じて設けたガス量調整装置の内槽31に、乾留ガス分離装置の内槽29でガスの燃焼に適した圧力のガスを導入し、ガス量調整装置の内槽31の水位の変化を受けるガス量調整装置の外槽32の水位の変化でガス量を調整しガス燃焼装置10に導入する。なお、乾留ガス分離装置の外槽30の設定水位は乾留する有機性廃棄物の種類が変った場合、もしくはガス燃焼装置10を変える場合のガスの圧力変化、もしくは圧力変更に対応するため水位調整バルブ33で設定水位を調整する。
【0034】
以上に説明において、本実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法においては、運搬できる形状とし熱伝導を良い結束材で束ねた有機性廃棄物を両側面を側面燃焼加熱部で、底部を底部電熱加熱部で加熱し、内部は熱伝導の良い結束材の伝熱で加熱することにより有機性廃棄物の効率良い熱分解をおこない、発生する乾留ガスを加熱することによりガスおよび油化物を精製し、木材および畳の場合で、ガス熱量2,000〜4,000Kcal/kg、油化物熱量3,000〜5,000Kcal/kg。熱硬化性プラスチックを主に構成される繊維強化プラスチックの場合で、ガス熱量3,000〜5,000Kcal/kg、油化物熱量4,000〜6,000Kcal/kgの良質な燃料を回収することができる。ガスと油化物は乾留ガスの発生量が少ない乾留開始時には、貯留した油化物を燃焼加熱し、発生ガスが燃焼に適した圧力になってから、ガスの燃焼加熱に切換えることによりガスおよび油化物を乾留加熱の熱源燃料として効率よく利用することができ、ガスは内槽と外槽よりなる複数の二重槽でガス燃焼装置に適した圧力と量とし、ガスを貯留せず燃焼させることができる。水は回収再利用することにより、時間と費用をかけずに安全な乾留処理ができる処理方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理装置のフロー図 である。
【図2】本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法の構成図であ る。
【図3】本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、有機 性廃棄物の乾留加熱方法の構成図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる乾留による有機性廃棄物の処理方法のうち、ガス を燃焼に適した圧力にする方法の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1:乾留装置
2:蒸気供給装置
3:乾留ガス加熱装置
4:乾留ガス冷却装置
5:ノズル
6:用水装置
7:ジェットポンプ
8:乾留ガス分離装置
9:ガス量調整装置
10:ガス燃焼装置
11:油水分離装置
12:油化物貯留装置
13:油化物燃焼装置
14:蒸発処理装置
15:空気エジェクター
16:用水冷却装置
17:廃水貯留装置
18:熱伝導の良い結束材
19:乾留部
20:扉体
21:側面燃焼加熱部
22:底部電熱加熱部
23:伝熱板
24:水蒸気圧入口
25:燃焼ガス排気口
26:乾留ガス排出口
27:乾留ガス冷却装置の内槽
28:乾留ガス冷却装置の外槽
29:乾留ガス分離装置の内槽
30:乾留ガス分離装置の外槽
31:ガス量調整装置の内槽
32:ガス量調整装置の外槽
33:水位調整バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を乾留し乾留ガスと無機物に熱分解し、無機物を回収する乾留工程と、乾留ガスを加熱する乾留ガス加熱工程と、加熱した乾留ガスを冷却し設定した圧力にする乾留ガス冷却工程と、乾留ガスを加圧水冷し、設定した圧力のガスと油化物と水で分離回収する乾留ガス分離工程により、水を回収再利用し、回収したガスと油化物は乾留工程の加熱熱源燃料と回収した水を淨化し再利用するための加熱熱源燃料とすることを特徴とする乾留による有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記乾留工程と乾留ガス加熱工程では、水を加熱し発生させた蒸気を乾留工程に圧入し乾留ガスの発生を促進、発生した乾留ガスを乾留ガス加熱工程で加熱することを特徴とする請求項1記載の乾留による有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記乾留工程においては、有機性廃棄物を乾留開始時は貯留した油化物を燃焼し側面から加熱するとともに電熱で底部から加熱し乾留ガスを発生させ、発生ガスが燃焼に適した圧力になってから、油化物の燃焼による側面加熱をガスの燃焼による側面加熱に切換えることを特徴とする請求項1または2記載の乾留による有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記乾留ガス冷却工程と乾留ガス分離工程とガスを燃焼に適した圧力にする乾留ガス冷却工程では、各工程に必要な圧力を設定し、設定圧力のガス容積に等しい水の容積で、水面面積に負荷される設定圧力に応じた水深を持つ水槽にガスを導入し、水槽の外周に設けた槽との水位調整で設定圧力にすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乾留による有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
有機性廃棄物を乾留し、乾留ガスと無機物に熱分解し無機物を回収する乾留装置と、乾留ガスを加熱する乾留ガス加熱装置と、加熱した乾留ガスを水冷する乾留ガス冷却装置と、水冷した乾留ガスを加圧水冷するジェットポンプと、乾留ガスをガスと油化物および水に分離する乾留ガス分離装置と、分離したガスを燃料で回収するガス量調整装置と、油化物と水を分離する油水分離装置と、分離した油化物を燃料で回収する油化物貯留装置と、分離した水を加熱し乾留装置への圧入蒸気で再利用する蒸気供給装置および水を加熱蒸発させ冷却淨化する蒸発処理装置と用水冷却装置により、乾留ガスをガスと油と水で回収し再利用する手段を設けたことを特徴とする乾留による有機性廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記乾留装置は、熱伝導の良い結束材で束ねた有機性廃棄物を収納する乾留部と、乾留部の両側面からガスもしくは油化物の燃焼熱を伝熱板の熱交換により伝熱し、有機性廃棄物を加熱する側面燃焼加熱部と、乾留部の底部から電熱で有機性廃棄物を加熱する底部電熱加熱部と、さらに熱伝導の良い結束材により有機性廃棄物内部に伝熱加熱する手段を設けたことを特徴とする請求項5記載の乾留による有機性廃棄物の処理装置。
【請求項7】
前記乾留ガス冷却装置と乾留ガス分離装置とガス量調整装置は、各々について乾留ガスもしくはガスを設定した圧力とするために、底部で相互に通水する設定圧力のガス容積に等しい容積の水を満たした上部を閉じた内槽と、内槽の水面面積に負荷される設定圧力に対応する水深を内槽と分け持ち、且つ設定圧力となった内槽から排除される水の容積をもつ上部を開放した外槽の二重槽としたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の乾留による有機性廃棄物の処理装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−36164(P2010−36164A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204952(P2008−204952)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(307041698)
【Fターム(参考)】