説明

予後分子マーカー

本発明は、化学療法の結果を予測することができる一定レベルの分子マーカーを有する患者、特に低レベルのBRCA1発現を有する患者におけるエクテイナサイジン743の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、エクテイナサイジン743の使用、さらに具体的には、一定レベルの分子マーカーを有する患者、特には低レベルのBRCA1を発現する患者におけるエクテイナサイジン743の使用に関する。
【0002】
背景技術
癌は、2つの範疇に分割しうる悪性腫瘍群を含んでおり、診療所で観察される症例の大部分を含んでなる癌腫と、白血病、リンパ腫、中枢神経系腫瘍、および肉腫などの、余り多く見られないその他の癌とがある。癌腫は上皮組織にその起源を有するが、肉腫は結合組織、および中胚葉組織にその起源を有する構造から発生する。肉腫は、例えば、筋肉または骨を冒し、骨、膀胱、腎臓、肝臓、肺、耳下腺、脾臓などに生じる可能性がある。
【0003】
癌は侵襲性であり、新たな部位へ転移しがちである。癌は直接周囲の組織に広がり、リンパおよび循環系を介して広がることもある。
【0004】
局所疾患に対する外科手術および放射線、および薬剤など多くの治療法を癌に利用することができる。しかしながら、多くの癌の種類に対して利用可能な治療法の効力は限定されており、臨床的に有効な新たな改良治療形態が求められている。
【0005】
このことは、進行および/または転移状態の疾患を示す患者にとっては特に当てはまる。それはまた、確立された療法によって以前に治療した後に進行性疾患が再発し、耐性の獲得により、または関連毒性のための療法の適用の限界により、同一療法を用いてさらに治療することがほとんど無効である患者にとって当てはまる。
【0006】
化学療法は、離れた部位への転移を有する進行癌の治療に必要とされ、かつ手術前の腫瘍減少に役立つことが多いので、癌治療において重要な役割を演じている。多くの抗癌剤は、様々な作用様式に基づいて開発されてきた。
【0007】
最も一般的に用いられる種類の抗癌剤としては、DNA-アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、アイホスファミド(ifosfamide))、代謝拮抗剤(例えば、葉酸拮抗剤であるメトトレキセート、およびピリミジン拮抗剤である5-フルオロウラシル)、微小管破壊剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNA挿入剤(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)、およびホルモン療法(例えば、タモキシフェン、フルタミド)が挙げられる。理想的な抗腫瘍薬は、選択的に癌細胞を殺し、非悪性細胞に対するその毒性と比較して広汎な治療インデックスを有する。それはまた、薬剤に長時間暴露された後であっても、悪性細胞に対するその効力を保持する。残念ながら、現在用いられている化学療法のいずれも理想的プロフィールを持たない。ほとんどが極めて狭い治療インデックスを持ち、実際上いずれの事例でも、致死量を僅かに下回る濃度の化学療法剤に暴露された癌細胞は、その薬剤に対する耐性を生じ、極めて多くの場合に数種類の他の抗腫瘍薬に対する交差耐性を発現する。
【0008】
エクテイナサイジン(ecteinascidin:本明細書ではETと略記)は、海洋被嚢類であるEcteinascidia turbinataから単離された極めて強力な抗腫瘍薬である。数種類のエクテイナサイジンが、これまでに特許および科学文献に報告されている。例えば、米国特許第5,089,273号明細書を参照されたい。この明細書には、熱帯性海洋無脊椎動物であるEcteinascidia turbinataから抽出されエクテイナサイジン729、743、745、759A、759B、および770と呼ばれている重要な新規化合物が記載されている。これらの化合物は、哺乳類における抗菌および/または抗腫瘍薬として有用である。米国特許第5,478,932号明細書には、カリブ海被嚢類であるEcteinascidia turbinataから単離された他の新規なエクテイナサイジンであって、P388リンパ腫、B16黒色腫、M5076卵巣肉腫、ルイス肺癌、およびLX-1ヒト肺およびMX-Iヒト乳癌異種移植片に対するイン・ビボ防御を提供するものが記載されている。
【0009】
ETの一つであるエクテイナサイジン-743 (ET-743)は、ネズミおよびヒト腫瘍においてかなりのイン・ビトロおよびイン・ビボ抗腫瘍活性と、黒色腫や卵巣および乳癌など無胸腺マウスで増殖する様々なヒト腫瘍異種移植片に対する強力な抗腫瘍活性を有するテトラヒドロイソキノリンアルカロイドである。
【0010】
この化合物は、現在臨床試験が行われている。癌患者におけるET-743の臨床開発プログラムはフェーズI研究から開始され、1時間、3時間、24時間および72時間の静脈内輸液スケジュールおよび毎日1時間x5 (dx5)スケジュールを検討した。有望な応答が、肉腫や乳および卵巣癌の患者で観察された。従って、この新薬は現在、様々な腫瘍性疾患の癌患者において幾つかのフェーズII臨床試験で集中的に検討されている。人体における癌治療を目的としたET-743の使用についてのさらなる詳細は、WO 00 69441号明細書、WO 02 36135号明細書、およびWO 03 39571号明細書に記載されており、それらの明細書の内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0011】
ET-743、その化学的性質、作用機序、および前臨床および臨床開発の最近の総説は、Kesteren, Ch. Van et al., 2003, Anti-Cancer Drugs, 14 (7), 487-502頁: 「ET-743 (トラベクテジン, ET-743): 海洋起源の抗癌剤の開発」、およびその引用文献に見出すことができる。
【0012】
過去30年間、腫瘍医学者は癌患者への効果を最適にすることに集中してきており、現在では、利用可能な新規テクノロジーによって多形、遺伝子発現レベルおよび遺伝子突然変異を検討し、様々な群の癌患者における所定の療法の影響を予測して化学療法を調整することが可能となっている。典型的な例としては、TS mRNA発現と葉酸拮抗剤による応答および生存、β-チューブリンIII mRNAレベルとチューブリン相互作用薬に対する応答、PTENメチル化とCPT-11に対する耐性、およびSTAT3過剰発現とEGF相互作用薬に対する耐性の間の関係が挙げられる。
【0013】
潜在的な臨床的影響の分子的観察は、NER経路の効率とET-743の細胞毒性の間の逆説的関係に関係している。実際に、このDNA修復経路において有効な腫瘍細胞は、ET-743に一層感受性であると考えられる。この証拠は、この修復経路の活性に高度に依存している白金に基づく干渉によって表されるパターンと対照的である。
【0014】
細胞系におけるET-743の細胞毒性についてのNER経路の重要な役割については、強力な証拠がある。ET-743はDNAへリックス構造を歪ませたDNA形成付加物の副溝のG残基に結合しており、それらはNER機序によって認識される。Takebayasi et al. (Nature Medicine, 7(8), 961-966, 2001年8月)は、転写した遺伝子におけるこれらのDNA付加物の存在が開裂中間体を失速させかつ致死一本鎖切断(SSB)を産生することによって、転写カップリングNER(TC-NER)系をブロックすることを提案した。
【0015】
乳癌1(BRCA1)はDNA修復において決定的な役割を果たしており、散発性および遺伝性乳癌のいずれにおいてもBRCA1 mRNA発現の減少が観察されている(Kennedy RD. et al. Lancet, 2002, 360, 1007-1014)。BRCA1は転写カップリングヌクレオチド除去修復 (TC-NER)に関係しており、その発現の調節によってTC-NERが調節され、従って放射線および化学耐性を生じる。
【0016】
BRCA1発現のアップレギュレーションによって、SKOV-3ヒト卵巣癌細胞系におけるシスプラチン耐性が増加し(Husain A. et al. Cancer Res. 1998, 58, 1120-1123)、BRCA1ネガティブのHCC 1937ヒト乳癌細胞系におけるBRCA1の回復により、放射線耐性が回復した(Abbott DW. et al. J Biol Chem. 1999, 274, 18808- 18812)。
【0017】
BRCA1は、相同組換え修復(HRR)およびDNA損傷に応答する非相同末端結合にも関与している(Mullan PB. et al. Oncogene, 2001, 20, 6123-6131)。また、それは、BRCA1関連ゲノムサーベイランス複合体と呼ばれる大きなDNA修復複合体の一成分であり、多数のミスマッチ修復タンパク質を含んでおり、ミスマッチ修復におけるBRCA1の潜在的役割を示している(Kennedy RD. et al. Lancet, 2002, 360, 1007-1014)。
【0018】
BRCA1およびβ-チューブリンはまた、紡錘体の微小管および中心体に同時局在化するので、BRCA1は紡錘体集合体の調節因子である (Lotti LV. et al. Genes, Chromosomes & Cancer, 2002, 35, 193-203)。
【0019】
BRCA1発現の増進はc-Jun N末端キナーゼ経路を介してアポトーシスに関連付けられており(Harkin DP. et al. CeH, 1999, 97, 575-586)、これはシスプラチンによって誘発されるDNA損傷によって活性化され、この経路の阻害は細胞系におけるシスプラチン感受性を増加した(Potapova O. et al. J Biol Chem. 1997, 272, 14041-14044)。
【0020】
同時定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-QPCR)によって測定されるように、乳癌細胞系におけるBRCA1 mRNA発現の減少によって、シスプラチンおよびエトポシドに対する感受性が増したが、微小管緩衝剤であるパクリタキセルおよびビンクリスチンに対する耐性が増加した(Lafarge S. et al. Oncogene, 2001, 20, 6597-6606)。
【0021】
野生型BRCA1のBRCA1ネガティブなHCC1937乳癌細胞系への再構成(Tomlinson GE. et al. Cancer Res. 1998, 58, 3237-3242)により、シスプラチン耐性は20倍に増加し、対照的に、抗微小管薬(パクリタキセルおよびビノレルビン)に対する感受性は1000-10,000倍に増加した(Mullan PB. et al. Oncogene, 2001, 20, 6123-6131、およびKennedy RD. et al. Proc Am Soc Clin Oncol. 2003, 22, 848)。BRCA1の条件崩壊を有するマウスモデルはドキソルビシンおよびγ線照射に対する感受性が高いが、タモキシフェンには耐性であり、BRCA1発現に関連した特異な化学感受性についてさらなる証拠を示していた(Brodie SG. et al. Oncogene, 2001, 20, 7514-7523)。
【0022】
BRCA1発現を散在性乳癌の女性における半定量PCRによって検討したところ、低BRCA1mRNAレベル(下位4分の1)は離れた部位への転移の頻度が高いことと関連していた(Seery LT. et al. Int J Cancer (Pred Oncol), 1999, 84, 258- 262)。
【0023】
細胞系およびマウスモデルのデーターは多数になったが、臨床設定において、BRCA1およびBRCA2 mRNA発現と、化学療法に対する応答との相関は、一つの小規模試験で検討されているだけである。ドセタキセルを投与した局所的に進行したまたは転移した乳癌の25名の女性では(Egawa C. et al. Int J Cancer (Pred Oncol), 2001, 95, 255-259)、BRCA1およびBRCA2mRNAレベルのいずれも非応答者より応答者において低かったが、その差はBRCA2についてのみ統計学的に有意であった。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、癌の治療のためET-743を効果的に使用することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、一定レベルの分子マーカーを有する、特に低レベルのBRCA1を発現する患者におけるエクテイナサイジン743の効果的使用を提供することを目的とする。
【0025】
従って、本発明によれば、低レベルのBRCA1を発現する患者における癌の治療のためET-743の効果的使用が提供される。
【0026】
ET-743により効果的に治療される癌患者を選択するためのマーカーとしてのBRCA1の使用もまた提供される。
【0027】
他の態様によれば、本発明は、患者の癌の治療方法であって、個体由来の生物学的試料をBRCA1発現レベルについて測定し、発現レベルが低いときには患者をET-743で治療することを含んでなる方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0028】
ET-743は、下式によって表される天然化合物である。
【化1】

【0029】
本明細書で用いる「ET-743」という用語はまた、任意の薬学上許容可能な塩、エステル、溶媒和物、水和物または患者に投与したときに(直接または間接的に)化合物ET-743を提供することができるプロドラッグ化合物を包含する。塩および他の誘導体、およびプロドラッグの調製は、当該技術分野で知られている方法によって行うことができる。
【0030】
単一薬剤としてのET-743は、従来の療法に対して再発した肉腫、シスプラチン-パクリタキセルに耐性であるかまたは再発した卵巣癌の患者のサブセット、およびドキソルビシンおよびタキサンに暴露された乳癌患者において、長期間継続する他覚的緩解(objective remissions)および腫瘍制御を誘発することが明らかとなっている。
【0031】
本発明者らは、今般、BRCA1 mRNA発現がET-743で治療した癌患者の化学療法感受性の差の予測において重要な役割を果たすこともできることを見出した。
【0032】
従って、一つの態様によれば、本発明は、低レベルのBRCA1遺伝子発現を有する癌患者の治療のための医薬品の製造における、ET-743の使用に関する。
【0033】
「低」、「正常」または「高」レベルの発現についての値は、ET-743による治療の前に、癌患由来の生検試料中の腫瘍組織のコレクションにおいて測定したBRCA1の発現レベルのメジアン値(median value)に対応する再現性のある標準と比較することによって測定される。このメジアン値を確立したならば、患者由来の腫瘍組織で発現するこのマーカーのレベルをこのメジアン値と比較することによって、「低」、「正常」または「高」のレベルを割り振ることができる。
【0034】
相対的遺伝子発現の尺度は、当該技術分野で知られている他の方法を用いることができるが、BRCA1の相対的レベルを試料に割り振ることができる限り、好ましくは内因性コントロールとしてβ-アクチンを用いることによって作製される。mRNAまたは対応するタンパク質のレベルを測定して、BRCA1発現の相対的レベルを得ることができる。当該技術分野で周知の標準的測定方法が用いられる。
【0035】
基準レベルの由来する試料のコレクションは、好ましくは同じ種類の癌に罹っている患者から構成される。例えば、統計学的に典型的な例に記載されているものは、肉腫患者の61個の試料で構成した。いずれにせよ、これは、様々な数の試料を含むことができる。
【0036】
特定の態様によれば、発現レベルは、ホルマリン固定してパラフィン埋設した組織試料から得られるRNAを用いて測定される。利用可能性によっては、生検または血液試料由来の新鮮な組織のような他の組織試料が意図される。
【0037】
遺伝子発現プロファイリングの総ての技術並びにプロテオミクス(proteomics)技術は、本発明の上記態様の実施での使用に適しているが、遺伝子発現レベルは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって決定されることが多い。
【0038】
本発明者らは、癌患者、例えば、肉腫患者において、DNA修復遺伝子XPD、ERCC1およびBRCA1の発現レベルがET-743に対する感受性の差を誘発することがあるかどうかを評価した。本発明者らは、臨床成績に一層大きな相関を有するマーカー遺伝子がBRCA1であることを見出した。意外なことには、BRCA1発現に準じた2つの同等な部分母集団(「低」レベルの発現および「高」レベルの発現)における患者の全集団の再分割したところ、ターゲット部分母集団において、他覚的応答(objective response:部分応答+弱応答)については16%-21%、および6ヶ月を上回る進行なしの生存(progression free survival)(PFS6)については24%-38%、ET-743の効率の有意な増加を生じる。
【0039】
一方、本発明者らは、ERCC1およびXPD発現レベルはET-743療法の臨床成績には影響せず、ET-743は、ERCC1およびXPDの発現レベルが高いためにシスプラチンまたはドキソルビシンに対する応答が不十分な患者でも同様に活性であることを示していることを見出した。
【0040】
従って、本発明は、低レベルのBRCA1を有する患者における癌の治療のためのET-743の使用に関する。BRCA1レベルが<3である癌患者の治療が好ましく、BRCA1レベルが2未満がさらに好ましい。
【0041】
一態様によれば、相対的遺伝子発現の定量は、内因性コントロールとしてβ-アクチンおよびキャリブレーターとして市販のRNAコントロールを用いて比較Ct法によって計算される。最終結果は、式 2-(ΔCt試料-ΔCtキャリブレーター)によって決定され、キャリブレーターおよび試料のΔCT値は、β-アクチン遺伝子のCT値からターゲット遺伝子の値を引くことによって決定される。
【0042】
ET-743は、典型的には、治療用途に適切な処方物、特にマンニトールと適切なpHに緩衝したリン酸塩とを含む処方物中にET-743と薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる滅菌した凍結乾燥生成物として供給され、保管される。
【0043】
現在は、ET-743を輸液によって投与することが好ましい。輸液工程は、典型的には循環的に反復され、これは例えば1-20サイクルにわたって適宜反復することができる。サイクルは、ET-743の輸液段階、および通常はET-743を輸液しない段階を包含する。典型的には、このサイクルは数週間で行われ、従ってこのサイクルは通常、ET-743輸液段階を1週間以上、さらにサイクルを完結するために1週間以上を含んでなる。3週間のサイクルが好ましいが、これは2-6週間とすることもできる。輸液段階それ自身は、例えば、1-72時間、さらに通常は約1、3または24時間の各サイクルでの単回投与、または好ましくは1-5時間、特には1または3時間のサイクルの輸液段階での毎日の輸液、または好ましくは1-3時間、特には2または3時間のサイクルの輸液段階での1週間毎の輸液とすることができる。本発明者らは、現在は、各サイクルの開始時における単回投与を選択する。好ましくは、輸液時間は約1、3または24時間である。
【0044】
用量は、用量制限毒性(Dose Limiting Toxicity)について存在するデーターを考慮して投薬計画に準じて選択され、これについては、例えば、上述のWO 00 69441号、WO 02 36135号、およびWO 03 39571号特許明細書を参照されたい。また、Kesteren, Ch. Van et al., 2003, Anti-Cancer Drugs, 14(7), 487-502も参照されたい。この文献の内容もまた、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0045】
典型的な計画および投薬量は、例えば、
a) 約1.5mg/m2体表面積、サイクル間に3週間の間隔を置いて24時間の静脈内輸液として投与、
b) 約1.3mg/m2体表面積、サイクル間に3週間の間隔を置いて3時間の静脈内輸液として投与、
c) 約0.580mg/m2体表面積、3週間中に3時間の静脈内輸液として毎週投与し、1週間静止
である。
【0046】
Kesteren et al. (2003)の文献に記載されているように、ET-743とデキサメタゾンとの併用は予想外の好結果を生じる。これは、肝臓の防御に役割を有する。従って、本発明者らは好ましくは、典型的にはET-743の輸液とほぼ同時に患者にデキサメタゾンを投与する。例えば、本発明者らは好ましくは、ET-743の前日および/またはET-743の翌日にデキサメタゾンを投与する。デキサメタゾンの投与は、例えば、ET-743の翌日より後に延期することができる。特に、本発明者らは好ましくは、サイクルの1日目におけるET-743の単回投与に対して1、2、3および4日目にデキサメタゾンを投与する。
【0047】
本発明による使用によれば、化合物ET-743を他の薬剤と共に用いて併用療法を行うことができる。他の薬剤は同一組成物の一部を形成することができ、または同時または異なる時間に投与するための別種の組成物として提供することができる。他の薬剤の同一性は特に限定されず、適当な候補薬剤としては、a)抗有糸分裂作用を有する薬剤、特に、タキサン系薬剤(例えば、タキソール、パクリタキセル、タキソテレ(taxotere)、ドセタキセル)、ポドフィロトキシンまたはビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)のような微小管調節因子などの細胞骨格要素をターゲットとするもの;b) 代謝拮抗剤(5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、ペントスタチンのようなプリン類似体、メトトレキセートなど);c) アルキル化剤またはナイトロジェンマスタード(ニトロソウレア、シクロホスファミドまたはアイホスファミド(ifosfamide));d) アントラサイクリン薬であるアドリアマイシン、ドキソルビシン、ファーモルビシンまたはエピルビシンのようなDNAをターゲットとする薬剤;e)エトポシドのようなトポイソメラーゼをターゲットとする薬剤;エストロゲン、アンチエストロゲン(タモキシフェンおよび関連化合物)およびアンドロゲン、フルタミド、ロイプロレリン、ゴセレリン、シプロトロンまたはオクトレオチドのようなホルモン、およびホルモン作動薬または拮抗薬; g) ヘルセプチンのような抗体誘導体など、腫瘍細胞でのシグナル伝達をターゲットとする薬剤;h) 白金薬(シスプラチン、カルボプラチン、オキザリプラチン、パラプラチン)、またはニトロソウレアのようなアルキル化剤;i) マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤のような腫瘍の転移に潜在的に影響する薬剤;j) 遺伝子療法およびアンチセンス剤;k) 抗体療法薬;l) 海洋起源の他の生物活性化合物、特にアプリジンのようなジデムニン類;m) ステロイド類似体、特にデキサメタゾン;n) 抗炎症薬(非ステロイド薬(アセトアミノフェンまたはイブプロフェンなど)、またはステロイドおよびそれらの誘導体、特にデキサメタゾンなど);およびo) 5HT-3阻害薬(パロニセトロン、グラミセトロンまたはオンダセトロンなど)などの抗催吐薬が挙げられる。
【0048】
腫瘍の種類および疾患の展開段階によっては、本発明による治療法は、腫瘍発生の危険性を防止し、腫瘍退縮を促進し、腫瘍増殖を停止し、および/または転移を防止する上で有用である。特に、本発明による方法はヒト患者、特に再発または以前の化学療法に不応性である患者に適している。一次療法もまた、意図される。
【0049】
投薬の指標は上記に示しているが、化合物の正確な投薬量は、特定の処方物、適用様式、特定の位置、宿主、および治療を行う腫瘍によって変化する。年齢、体重、性別、食餌、投与時間、排泄速度、宿主の状態、薬剤の組合せ、反応感受性、および疾病の重篤度のような他の要因を考慮すべきである。投与は、最大許容用量内で連続的または周期的に行うことができる。
【0050】
本発明によるET-743の使用は、肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、中皮腫、腎臓癌、子宮内膜癌、および肺癌、好ましくは肉腫、さらに好ましくは平滑筋肉腫、脂肪肉腫、または骨肉腫の治療に特に好ましい。
【実施例】
【0051】
実施例1
試料および臨床データー収集
この研究では、化学療法剤で治療する前の肉腫患者由来の61個のパラフィン埋設した腫瘍試料について評価した。
【0052】
患者の大半は、以前に1または数種類の化学療法剤で治療を受け、後にET-743により治療を行った。様々な患者に投与した静脈内輸液ET-743の用量は1.650-1.0mg/m2の範囲内であり、投与計画は24時間または3時間のIV輸液であり、サイクル間に3週間の間隔を置き、サイクル数は幾人かの患者では1-25サイクルの範囲であった。
【0053】
患者の臨床データーを集めて臨床データーコレクションの形態とし、mRNA発現レベルの決定が完了した後の分子データーと適合させた(表1)。
【0054】
mRNA発現レベルの定量
本発明者らは、以前に報告されているように、61名の患者のホルマリン固定してパラフィン埋設した腫瘍標本におけるXPD、ERCC1および/またはBRCA1遺伝子発現を検討した(Specht K. et al. Am J Pathol, 2001, 158, 419-429、およびKrafft AE. et al. MoI Diagn. 1997, 3, 217-230)。キシレンおよびアルコールを用いて標準組織試料のパラフィンを除いた後、試料をトリス-クロリド、EDTA、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびプロテイナーゼKを含む緩衝液中で溶解させた。次いで、RNAをフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコールで抽出した後、グリコーゲンおよび酢酸ナトリウムの存在下にてイソプロパノールで沈澱させた。RNAをRNA貯蔵溶液に再懸濁し(Ambion Inc; オースティン, テキサス, 米国)、DNAの混入を避けるためDNアーゼIで処理した。M-MLVレトロトランスクリプターゼ酵素を用いて、cDNAを合成した。鋳型cDNAを、それぞれの遺伝子について特異的なプライマーとプローブを有する20-μLの反応系において、Taqman Universal Master Mix (AB; Applied Biosystems, フォスターシティー, カリフォルニア, 米国)に加えた。プライマーとプローブのセットは、Primer Express 2.0 Software (AB)を用いてデザインした。遺伝子発現の定量は、ABI Prism 7900HT Sequence Detection System (AB)を用いて行った。プライマーおよび5'標識蛍光レポーター色素(6FAM)プローブは、次の通りであった: β-アクチン: フォワード5' TGA GCG CGG CTA CAG CTT 3'、リバース5' TCC TTA ATG TCA CGC ACG ATT T 3'、プローブ5' ACC ACC ACG GCC GAG CGG 3'; BRCA1:フォワード5' GGC TAT CCT CTC AGA GTG ACA TTT TA 3'、リバース5' GCT TTA TCA GGT TAT GTT GCA TGG T 3'、プローブ5' CCA CTC AGC AGA GGG 3'; ERCC1: フォワード5' GGG AAT TTG GCG ACG TAA TTC 3'、リバース5' GCG GAG GCT GAG GAA CAG 3'、プローブ5' CAC AGG TGC TCT GGC CCA GCA CAT A 3'; XPD: フォワード5' GCT CCC GCA AAA ACT TGT GT 3'、リバース5' CAT CGA CGT CCT TCC CAA A 3'、プローブ5' ACC CTG AGG TGA CAC CCC TGC 3'。
【0055】
相対的遺伝子発現の定量は、内因性コントロールとしてβ-アクチンおよびキャリブレーターとして市販のRNAコントロール(Stratagene, ラ ホヤ, カリフォルニア)を用いて比較Ct法によって計算した。最終結果は下記のようにして測定した: 2-(ΔCt試料-ΔCtキャリブレーター) (式中、キャリブレーターおよび試料のΔCT値は、β-アクチン遺伝子のCT値からターゲット遺伝子の値を引くことによって決定される)。総ての実験では、Ct値の標準偏差(SD)が<0.20である3個の試料を採用した。さらに、分析を行ったそれぞれの試料について、コントロールを差し引いたレトロトランスクリプターゼを同一プレートで分析し、ゲノムDNAの混入がないことを確かめた。
【0056】
統計学的方法
SAS v8.2 (統計用ソフトウェア)を、総ての統計分析に用いた。分析を行う変数の性状によって一変量、二変量および多変量変数についての統計学的手法を選択し、すなわち、従属変数がセンサー・ステータス(censor status)を有する時間変数(temporal variable)であるときには、コックス回帰が適用され、変数間の相関を算出するときには、ピアソンおよび/またはスピアマン尺度が用いられる。0.05を下回るP-値は、適当な95%信頼区間も示されているときには、総ての試験で統計学的に有意と考えられる。
【0057】
結果
総数が61個のパラフィン埋設した腫瘍試料を評価した。表1は、61名の患者の最も関連性の高い臨床および分子データー(CR:完全応答; PR:部分応答; MR:弱応答; SD:安定疾患; PD:進行性疾患; OS:生存者総数; PFS:進行なしの生存者数)を示す。これらの試料は、化学療法剤で治療を行う前の肉腫患者から得た。
【0058】
ET-743で治療した後、55名の評価可能な患者の総応答率(RR)は、部分応答のみを考慮したときには15%(8 PR/55評価可能な患者)であるか、または弱応答(MR)も考慮したときには16%(8 PR + 1 MR/55患者)であった。また、安定疾患(SD)も考慮したときには((8 PR + 1 MR + 6 SD/55患者)、15名の患者(27%)が6ヶ月以上進行なしでの生存(PFS 6)を達成した。応答(PR+MR)のメジアン期間は13.6ヶ月(44.1〜3.8ヶ月)であり、15名のSDの6名がPFS 6に到達した。14名の患者がなお除外されているが、生存メジアンは7.7ヶ月(0.1〜66.9ヶ月)であった。6ヶ月後の進行なしの総生存(Kaplan-Meier)は27.65%であり、生存のメジアンは10.2ヶ月である(図1)。
【0059】
【表1−1】

【0060】
【表1−2】

【0061】
1. BRCA1 mRNA発現レベルとET-743治療成績との相関
BRCA1 mRNAの発現レベルと患者の臨床成績との関連性を、表2Aに示す。
【0062】
【表2A】

【0063】
β-アクチン (内部コントロール)に対するBRCA1 mRNAの量を56個の試料で決定し、0.35から11.14までの範囲であり、最小値から最大値までの差が32倍であることを見出した。メジアン発現値は、1.97であった。
【0064】
表2Aは、PFS6エンドポイントに到達する患者の12名中9名(75%)のBRCA1発現値が集団(cohort)メジアン値(1.97)を下回ったことを示している。同様に、他覚的応答(PR+MR)を有する8名の患者の中5名(63%)のBRCA1の発現値は、メジアン値を下回る。
【0065】
メジアン値より低いBRCA1発現を有する患者において、PFS6に到達するかまたは他覚的応答を有する確率は、統計学的に有意に高い。実際に、BRCA1の発現が低い患者の24名の中9名(38%)はPFS6に到達しているのに対して、BRCA1の発現が高い患者の26名の中3名(12%)しか到達していない。同様にBRCA1の低発現患者24名の中5名(21%)が他覚的応答を有したのに対して、高発現患者では27名の中3名(11%)であった。臨床応答およびFPFS6と相関が有意であるという事実は、BRCA1発現レベルがET-743による治療のマーカーであり、腫瘍浸潤のマーカーではないことを示している。
【0066】
これは、BRCA1発現に準じる2個の同等な部分母集団における患者の全集団の再分割により、他覚的応答では16%(8/51)から21%(5/24)へ(1.3倍の増加)、およびPFS6率では24%(12/50)から38%(9/24)へ(1.6倍の増加)のターゲット部分母集団におけるET-743の効率の有意な増加を生じることを意味する。
【0067】
図2AのKaplan-Meierプロットは、PFSにおける統計学的有意差[p=0.043]と、BRCA1発現がメジアン(1.97)を下回る患者での生存における明らかな差[p=0.077]を示している。生存メジアンは高発現患者については5.4ヶ月であり、低発現患者については11.7であり、PFSは1.5および2.3ヶ月であった。PFS6を有する患者の割合はBRCA1の発現が低い患者の41.67%であり、高発現の患者の11.54%であった。この差は、統計学的に有意である[p=0.011]。12ヶ月時点での生存メジアンは、それぞれ42.23%対35.71%であった[p=0.632]。
【0068】
2. ERCC1 mRNA発現レベルとET-743治療成績との相関
ERCC1 mRNAの発現レベルと患者の臨床成績との関連性を、表2Bに示す。
【0069】
【表2B】

【0070】
分析した38個の試料でのβ-アクチン(内部コントロール)に対するERCC1 mRNAの量は、1.01-22.9の範囲であり、最小から最大値まで21倍の差が見られた。メジアン発現値は5.86であった。
【0071】
表2Bは、PFS6エンドポイントに到達する患者の9名中6名(66%)のERCC1発現値が試料集団のメジアン値(5.86)を上回ったことを示している。同様に、他覚的応答(PR+MR)を有する6名の患者の中4名(67%)のERCC1の発現値は、メジアン値を上回る。ERCC1の発現中の他覚的応答の分布に関しては、高ERCC1を発現する患者の19名中6名(32%)がPFS6に到達しているのに対して、ERCC1の低発現では19名中3名(16%)が到達した。同様に、ERCC1の高発現19名中4名が他覚的応答(PR+MR)を有したのに対して、低発現患者では19名中2名(11%)であった。
【0072】
本明細書で提供された結果は、ERCC1の発現が高レベルでは有益であるか、または少なくとも患者のET-743治療に対する応答を減少させないことを示している。珍しいことには、この相関は、卵巣癌においてNSCLCおよびドキソルビシンについてシスプラチンで得た相関とは逆であり、ERCC1発現での増加、すなわちDNA修復効率が高くなれば、成績が悪くなることと関連している。
【0073】
図2BのKaplan- Meierプロットは、メジアンPFS(それぞれERCC1の低および高発現に対して1.4対2.2ヶ月[p=0.6315])およびPFS6(21.05%対31.58%, [0.458])の若干の増加を示している。生存メジアンは、高発現患者については19.4ヶ月であり、低発現患者については16.8ヶ月であった[p=0.7682]。
【0074】
3. XPD mRNA発現レベルとET-743治療との相関
XPD mRNAの発現レベルと患者の臨床成績と関連性を、表2Cに示す。
【0075】
【表2C】

【0076】
分析した37個の試料でのβ-アクチン(内部コントロール)に対するXPD mRNAの量は、0.8-13.38の範囲であり、最小から最大値まで17倍の差が見られた。メジアン発現値は1.99であった。
【0077】
表2Cは、PFS6エンドポイントに到達する患者の8名中5名(63%)のXPD発現値が試料集団のメジアン値(1.99)を上回ったことを示している。同様に、他覚的応答(PR+MR)を有する5名の患者の中3名(60%)のXPDの発現値は、メジアン値を上回る。XPDの発現中の他覚的応答の分布に関しては、高XPDを発現する患者の20名中5名(25%)がPFS6に到達しているのに対して、XPDの低発現では17名中3名(18%)が到達した。同様に、XPDの高発現20名中3名が他覚的応答(PR+MR)を有したのに対して、低発現患者では17名中2名(12%)であった。
【0078】
本明細書で提供された結果は、XPDの発現が高レベルでは有益であるか、または少なくとも患者のET-743治療に対する応答を減少させないことを示している。珍しいことには、この相関は、卵巣癌においてNSCLCおよびドキソルビシンについてシスプラチンで得た相関とは逆であり、XPD発現での増加、すなわちDNA修復効率が高くなれば、薬剤による治療の成績が悪くなることと関連している。
【0079】
図2CのKaplan-Meierプロットは、メジアンPFS(それぞれERCC1の低および高発現に対して1.2対2.0ヶ月[p=0.5681])およびPFS6(17.65%対30%, [0.3708])の若干の増加を示している。生存メジアンは、低発現患者については16.8ヶ月であり、高発現患者については19.4ヶ月であった[p=0.7682]。
【0080】
結論として、臨床成績に対する相関が大きいマーカー遺伝子はBRCA1である。実際に、BRCA1発現に準じる2個の同等な部分母集団における患者の全集団の再分割したところ、ターゲット部分母集団において、他覚的応答(PR+MR)では16%から21%へ、および6ヶ月を上回る進行なしの生存については24%から38%へ、ET-743の効率の有意な増加を生じる。
【0081】
ERCC1およびXPD発現レベルはET-743療法の臨床成績に影響を与えず、ERCC1およびXPDの発現レベルが高いため、ET-743はシスプラチンまたはドキソルビシンに対する応答がよくない患者で同程度に活性であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本研究に包含される患者のKaplan-Meierプロットである。
【図2A】BRCA1 mRNA発現レベルに準じた患者のPFSおよび生存数のKaplan-Meierプロット。
【図2B】ERCC1 mRNA発現レベルに準じた患者のPFSおよび生存数のKaplan-Meierプロットである。
【図2C】XPD mRNA発現レベルに準じた患者のPFSおよび生存数のKaplan-Meierプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低レベルのBRCA1を有する患者の癌治療薬の製造における、ET-743の使用。
【請求項2】
患者のBRCA1のレベルが<3である、請求項1に記載のET-743の使用。
【請求項3】
患者のBRCA1のレベルが<2である、請求項2に記載のET-743の使用。
【請求項4】
治療される癌が、肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、中皮腫、腎臓癌、子宮内膜癌および肺癌から選択される、先行するいずれかの請求項に記載のET-743の使用。
【請求項5】
治療される癌が、肉腫、好ましくは平滑筋肉腫、脂肪肉腫または骨肉腫から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ET-743により効果的に治療が行われる癌患者の選択用マーカーとしての、BRCA1の使用。
【請求項7】
患者における癌の治療方法であって、個体由来の生物学的試料をBRCA1発現レベルについて測定し、該発現レベルを決定し、患者の発現レベルが低いときには患者をET-743で治療することを含んでなる、方法。
【請求項8】
治療される癌が、肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、中皮腫、腎臓癌、子宮内膜癌および肺癌から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療される癌が、肉腫、好ましくは平滑筋肉腫、脂肪肉腫または骨肉腫から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的試料が腫瘍の生検試料である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
癌に罹っている患者をエクテイナサイジン743による治療のために選択するためのスクリーニング方法であって、
a) 患者の組織試料からmRNAを単離し、
b) 試料におけるBRCA1の遺伝子発現レベルを決定し、
c) 試料におけるBRCA1遺伝子発現レベルと、BRCA1遺伝子発現の予め設定された閾値レベルとを比較し、
BRCA1遺伝子発現レベルと、予め設定された閾値レベルとの比較の結果によって患者を「低」、「正常」、または「高」と定義される3群のうち一つに分類すること
を含んでなる、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−505862(P2008−505862A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519741(P2007−519741)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007605
【国際公開番号】WO2006/005602
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(505404208)ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MRS,S.A.
【Fターム(参考)】