説明

二モード燃焼バーナとそれを備えた燃料電池

【課題】 オフガスなどの燃焼速度の速いガスと、都市ガスなどの燃焼速度がそれほど速くないガスとを、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができるバーナと、それを用いる燃料電池を提供することを課題とする。
【解決手段】 一方端が有底で他方端が開口し、内部に第1気体流路を形成するバーナ内管;バーナ内管の外側に配置されたバーナ外管であって、バーナ内管と同じ側の一方端が有底で他方端がバーナ内管の前記開口と近接した位置に開口し、バーナ内管との間に第2気体流路を形成するバーナ外管;バーナ内管の底部近傍でバーナ内管内の第1気体流路に開口する第1気体供給口;バーナ外管の底部近傍でバーナ外管内の第2気体流路に開口する第2気体供給口;バーナ内管及びバーナ外管の開口側先端部に配置された点火手段を備えている二モード燃焼バーナ、及び当該バーナを備えている燃料電池を提供することによって、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二モード燃焼バーナとそれを備えた燃料電池に関するものであり、詳細には、燃焼速度の速い燃料ガスと、そうでない燃料ガスとを、一つのバーナで安全に燃焼させることができる二モード燃焼バーナと、それを備えた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池においては、供給体制が既に整備されている都市ガスやLPガスなどの炭化水素を原燃料とし、これを改質器で改質して、水素に富む燃料電池用の燃料ガスを連続的に製造することが行われているが、改質器における改質反応は触媒による吸熱反応であるため、改質器を作動させるには、バーナを用いて触媒を加熱し、その温度を上げる必要がある。
【0003】
この改質器を加熱するバーナの燃料には、例えば特許文献1に開示されているように、通常、燃料電池から排出される未反応の改質ガスであるオフガスが使用されている。しかし、燃料電池の運転開始時には、改質器が作動していないので、オフガスは未だ発生しておらず、オフガスを改質器を加熱するバーナの燃料とすることはできない。そこで、例えば特許文献2においては、燃料電池の運転開始時には、原燃料である都市ガスやLPガスなどの原燃料を燃料としてバーナを燃焼させ、燃料電池が定常運転に至った時点で、バーナの燃料を、都市ガス又はLPガスから、オフガス又は改質ガスに切り換えることが提案されている。
【0004】
しかし、都市ガス又はLPガスに比べて、オフガス又は改質ガスには水素が多く含まれているため、燃焼速度が速く、逆火を起こし易く、都市ガス又はLPガスと、オフガス又は改質ガスの両者を、一つのバーナで安全に燃焼させることは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−250508号公報
【特許文献2】特開2004−214083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における上記の不都合を解消するために為されたもので、例えば、オフガスや改質ガスなどの燃焼速度の速いガスと、都市ガス又はLPガスなどの燃焼速度がそれほど速くないガスとを、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができるバーナと、それを用いる燃料電池を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意開発努力を継続した結果、バーナの構造に改良を加え、一つのバーナにおいて、燃料ガスと燃焼用空気とを予め混合した状態でバーナに供給し燃焼させる予混合燃焼モードと、燃料ガスと燃焼用空気とをバーナ先端部で混合させて燃焼させる先混合燃焼モードとを、燃料ガスの種類に応じて切り換え可能とすることによって、水素に富み燃焼速度が速いオフガス又は改質ガスと、燃焼速度がそれほど速くない都市ガス又はLPガスとを、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、一方端が有底で他方端が開口し、内部に第1気体流路を形成するバーナ内管;バーナ内管の外側に配置されたバーナ外管であって、バーナ内管と同じ側の一方端が有底で他方端がバーナ内管の前記開口と近接した位置に開口し、バーナ内管との間に第2気体流路を形成するバーナ外管;バーナ内管の底部近傍でバーナ内管内の第1気体流路に開口する第1気体供給口;バーナ外管の底部近傍でバーナ外管内の第2気体流路に開口する第2気体供給口;バーナ内管及びバーナ外管の開口側先端部に配置された点火手段を備えている二モード燃焼バーナを提供することによって、また、当該バーナを備えている燃料電池を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明の二モード燃焼バーナにおいては、バーナ内管の開口が複数の開口に分割されており、それら複数の開口がバーナ外管の開口内に島状に配置されているのが望ましい。バーナ内管の開口とバーナ外管の開口とをこのような配置とすることによって、第2気体供給路を通過してバーナ外管開口へと向かう燃焼用空気又は燃料ガスは、島状に配置されているバーナ内管開口周辺にも回り込むことができ、バーナ内管開口から噴出する燃料ガス又は燃焼用空気とバーナ先端部で良く混合し、適宜の点火手段で着火すると、効率良く燃焼することになる。
【0010】
本発明の二モード燃焼バーナは、その好ましい態様においては、バーナ内管及びバーナ外管の開口が、気体が通過するに十分な表裏連通した細孔を有する多孔質体を介して外部に開口している。このような構成とするときには、本発明の二モード燃焼バーナは表面燃焼バーナとなり、バーナ表面からの輻射と高温燃焼ガスにより、効率の良い、均一な加熱を実現することができる。バーナ内管及びバーナ外管の開口に設けられる多孔質体としては、燃料ガスと空気との混合ガスを表面燃焼させることができるものであれば、どのような材質のものであっても良いが、例えば、多孔質のセラミックス、セラミックス繊維の集合体、金属繊維の焼結体、耐熱性金属繊維製編物、又は、耐熱性金属繊維製編物と金属製多孔板との積層体を用いることができ、中でも、加工や取り扱いの容易性という観点からは、耐熱性金属繊維製編物を用いるのが最も好ましい。
【0011】
さらに、本発明の二モード燃焼バーナは、その好ましい態様において、第1気体供給口及び第2気体供給口のいずれか一方又は双方に第1燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを供給する予混合燃焼モードと、第1気体供給口又は第2気体供給口のいずれか一方に燃焼用空気を供給し、他方に第2燃料ガスを供給する先混合燃焼モードとを切り換える燃焼モード切換装置を備えており、これによって、予混合燃焼モードと先混合燃焼モードとを自在に切り換えて、燃焼速度の速い燃料ガス及びそうでない燃料ガスのいずれでも、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができる。因みに、本発明の二モード燃焼バーナが燃料電池における改質器の加熱に使用される場合には、上記第1燃料ガスは燃料電池の原燃料ガスとして用いられる都市ガス又はLPガスなどであり、上記第2燃料ガスは燃料電池からのオフガス又は改質ガスである。
【0012】
本発明の二モード燃焼バーナは、主として燃料電池の改質器の加熱に使用されてその効果を発揮するものであるが、本発明の二モード燃焼バーナの使用対象は燃料電池に限られない。本発明の二モード燃焼バーナは、燃焼速度の速い燃料ガスと、燃焼速度がそれほど速くない燃料ガスとを切り換えて燃焼させなければならない状況下にある各種装置に使用することができるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二モード燃焼バーナによれば、燃焼モードを予混合燃焼モードと先混合燃焼モード間で切り換えることができるので、例えば、燃料電池におけるオフガス又は改質ガスなどの燃焼速度の速い燃料ガスと、都市ガスやLPガスなどの燃焼速度がそれほど速くない燃料ガスとを、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができるという利点が得られる。また、本発明の二モード燃焼バーナは、簡単な構造で二モード燃焼を実現することができるので、製造コストの低減を計ることができるという利点を有している。さらに、本発明の二モード燃焼バーナを備えた燃料電池によれば、燃料電池の運転開始時には、都市ガスやLPガスなどの原燃料ガスを用いてバーナを燃焼させて改質器を加熱し、燃料電池が定常運転に達した時には、燃料電池からのオフガス又は改質ガスを用いてバーナを燃焼させ、引き続き改質器を加熱して、安全に燃料電池を連続運転させることができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の二モード燃焼バーナの一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X’断面図である。
【図3】図1のY−Y’断面図である。
【図4】本発明の二モード燃焼バーナに燃焼モード切換装置を取り付けた状態を示す概念図である。
【図5】本発明の二モード燃焼バーナを備える燃料電池の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の二モード燃焼バーナを図面を用いて説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0016】
図1は、本発明の二モード燃焼バーナの一例を示す断面図である。図1において、1は本発明の二モード燃焼バーナ、2はバーナ内管であり、3はバーナ内管2の内部に形成される第1気体流路である。2aは、バーナ内管2の根元側の一方端を閉塞し、バーナ内管2を有底のものとする閉止部材、2b、2b、2bは、バーナ内管2の先端側の他方端の開口である。なお、本明細書において根元側とは、バーナの燃焼室から遠い側を指し、先端側とは、バーナの燃焼室に近い側を指すものとする。
【0017】
4は、第1気体流路3に開口する第1気体供給口であり、バーナ内管2の底部近傍に設けられている。本例において、バーナ内管2は円筒形状であるが、バーナ内管2の形状は円筒形状に限られず、閉止部材2aが存在する底部側から、開口2b、2b、2bが存在する先端側に向かって、次第に径が大きくなる円錐台形であっても良い。
【0018】
5はバーナ外管であり、バーナ外管5はバーナ内管2の外側に、バーナ内管2と同軸に配置されており、バーナ内管2との間に第2気体流路6を形成している。5aは、バーナ内管2と同じ側の一方端であるバーナ外管5の根元側を閉塞し、バーナ外管5を有底のものとする閉止部材、5bは、バーナ外管5の他方端である先端側の開口である。図に示すとおり、バーナ外管5の開口5bは、バーナ内管2の開口2b、2b、2bの周囲を取り囲み、バーナ内管2の開口2b、2b、2bと同一面上に開口している。但し、バーナ外管5の開口5bは、バーナ内管2の開口2b、2b、2bと近接した位置に開口していれば良く、その開口位置は、必ずしも、バーナ内管2の開口2b、2b、2bと同一面上になくても良い。例えば、バーナ外管5の先端部をバーナ内管2の先端部よりも若干突出させて、開口5bを、バーナ内管2の開口2b、2b、2bよりも先端側に位置させても良いし、逆に、バーナ内管2の先端部をバーナ外管5の先端部よりも若干突出させて、バーナ内管2の開口2b、2b、2bを、バーナ外管5の開口5bよりも先端側に位置させても良い。
【0019】
7は、第2気体流路6に開口する第2気体供給口であり、バーナ外管5の底部近傍に設けられている。本例において、バーナ外管5は、バーナ内管2と同じく円筒形状であるが、バーナ外管5の形状は円筒形状に限られず、例えば、閉止部材5aが存在する底部側から、開口5b、5bが存在する先端側に向かって、次第に径が大きくなる円錐台形であっても良い。
【0020】
8はスパークプラグであり、バーナ内管2の内側にバーナ内管2と同軸に配置されている。スパークプラグ8は、その長さ方向の大部分が絶縁シールドで覆われているが、その先端部において電極9が露出している。10はアース電極であり、電極9とアース電極10とで、バーナ内管2及びバーナ外管5の開口側先端部に配置された点火手段を構成している。なお、点火手段は、電極9とアース電極10の組み合わせに限られず、バーナ内管2及びバーナ外管5の開口2b、2b、2b及び開口5bから噴出する燃料ガスと燃焼用空気に点火して、着火させることができるものであれば、どのような機構のものを採用しても良い。
【0021】
11は、気体が通過するに十分な表裏連通した細孔を有する多孔質体であり、バーナ内管2及びバーナ外管5の開口2b、2b、2b及び開口5bに取り付けられている。第1気体流路3及び第2気体流路6を通過してきた燃料ガス及び燃焼用空気は、開口2b、2b、2b及び開口5bから、この多孔質体11を通ってバーナ外部へと噴出し、電極9とアース電極10とで構成される点火手段によって着火され、多孔質体11の表面で燃焼することになる。つまり、本例における二モード燃焼バーナ1は表面燃焼バーナである。
【0022】
多孔質体11としては、例えば、多孔質のセラミックス、セラミックス繊維の集合体、金属繊維の焼結体、耐熱性金属繊維製編物、又は、耐熱性金属繊維製編物と金属製多孔板との積層体などを用いることができるが、耐熱性金属繊維製編物が加工性も良く、取り扱いも容易であるので、最も好ましい。
【0023】
なお、本発明の二モード燃焼バーナ1は必ずしも表面燃焼バーナでなくても良く、多孔質体11を設けずに、通常のバーナと同様に、燃焼ガス及び燃焼用空気を開口2b、2b、2b及び開口5bから直接噴出させて、電極9とアース電極10とで構成される点火手段によって着火するようにしても良い。
【0024】
12a、12bは、それぞれバーナ内管2及びバーナ外管5に取り付けられたフランジであり、13は、フランジ12a、12bを用いてバーナ外管5をバーナ内管2に固定する固定ネジである。また、14は、本発明の二モード燃焼バーナ1を例えば燃料電池の改質器に取り付ける際に利用される取り付け用フランジである。
【0025】
図2は図1のX−X’断面図、図3は図1のY−Y’断面図である。図2、図3に示すとおり、バーナ内管2内に形成される第1気体流路3は、バーナ内管2の先端部において、分割された複数の開口2b、2b、2b・・・となって外部に開口している。図3に示すとおり、バーナ内管2の複数の開口2b、2b、2b・・・は、バーナ外管5の開口5b内に島状に配置されているので、第2気体流路6内を通過してきた燃料ガス又は燃焼用空気は、開口5bの手前で、図中矢印で示すように、開口2b、2b、2b・・・の周囲にも回り込み、開口2b、2b、2b・・・の周囲から外部へと噴出することになる。したがって、開口2b、2b、2b・・・から噴出する燃焼用空気又は燃料ガスとの混合がより速やかに行われることになる。特に、開口2b、2b、2b・・・及び開口5bに多孔質体11が設けられている場合には、多孔質体11の流路抵抗により、第2気体流路6内を通過してきた燃料ガス又は燃焼用空気の開口2b、2b、2b・・・の周囲への回り込みはより十分なものとなり、開口2b、2b、2b・・・から噴出する気体と、開口5bから噴出する気体とは、より効率良く混合されることになる。
【0026】
なお、図示の例では、開口2b、2b、2b・・・は、バーナ内管2の垂直断面において、中央に1個と、その周囲に均等に8個、合計9個の開口2bが配置されているが、開口2b、2b、2b・・・の個数や配置は図示のものに限られない。10個以上であっても良いし、7個未満であっても良く、極端な場合には、中央の開口2bをバーナ内管2の径と同じにまで拡大して、1個の開口2bとしても良い。しかし、バーナ内管2の開口2bは、図3に示すように、複数に分割され、バーナ外管5の開口5b内に島状に配置されている方が、開口2bから噴出する気体と開口5bから噴出する気体を効率良く混合させることができるので、好ましい。また、開口2bから噴出する気体と開口5bから噴出する気体を効率良く混合させるという観点からは、開口5b内における開口2b、2b、2b・・・の境界線が長い方が好ましく、図示の例では、複数の開口2b、2b、2b・・・の形状は円形であるが、例えば、長方形や長楕円、弧状、星形などであっても良い。なお、島状とは、複数の開口2b、2b、2b・・・が互いに孤立して存在し、開口5bによって分断されている状態をいうものであり、る。
【0027】
本発明の二モード燃焼バーナ1は、上述したような構造であるので、例えば、第1気体流入口4又は第2気体流入口7のいずれか、又はその双方から、予め混合した第1燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを供給し、開口2b、2b、2b・・・及び/又は開口5bから噴出させ、電極9とアース電極10間にスパークを発生させて点火、着火することにより燃焼させると、予混合燃焼モードで燃焼するバーナとなる。また、第1気体流入口4又は第2気体流入口7の一方から、第2燃料ガス又は燃焼用空気のいずれか一方を供給し、第1気体流入口4又は第2気体流入口7の他方から、第2燃料ガス又は燃焼用空気のいずれか他方を供給し、それぞれを、開口2b、2b、2b・・・又は開口5bから噴出させ、電極9とアース電極10間にスパークを発生させて点火、着火することにより燃焼させると、先混合燃焼モードで燃焼するバーナとなる。
【0028】
このように本発明の二モード燃焼バーナ1を先混合燃焼モードで燃焼させる場合には、第2燃料ガスが、例えば、オフガスや改質ガスのように水素に富み、燃焼速度の速い燃料ガスであっても、第1気体流路3又は第2気体流路6内では、未だ燃焼用空気とは混合しておらず、燃焼可能な混合ガスとはなっていないので、バーナ内管2及びバーナ外管5の開口側先端部に配置された点火手段で点火、着火しても、火炎がバーナ内管2又はバーナ外管5内に引き込まれる、いわゆる逆火現象が発生する恐れがなく、安全に燃焼させることが可能である。
【0029】
なお、本発明の二モード燃焼バーナ1を先混合燃焼モードで燃焼させる場合、第1気体流入口4又は第2気体流入口7から供給される第2燃料ガスには、燃焼可能な混合ガスとはならない範囲であれば、多少の燃焼用空気を混合しても良い。このように、燃焼可能な混合ガスとならない範囲で、第2燃料ガスと燃焼用空気とを予め混合しておく場合には、バーナ先端部での混合負担が小さくて済み、よりスムースな先混合燃焼が可能になるという利点が得られる。
【0030】
また、先混合燃焼モードで燃焼させる場合、第2燃料ガス及び燃焼用空気は、第1気体流入口4又は第2気体流入口7のいずれから供給しても良いが、開口から噴出する第2燃料ガスが燃焼用空気に包まれる方が好ましいので、第2燃料ガスは、主として、第1気体流入口4から第1気体流路3内に供給するのが好ましい。
【0031】
図4は、本発明の二モード燃焼バーナ1に燃焼モード切換装置を取り付けた状態を示す概念図である。図1におけると同じものには同じ符号を付してある。図4において、15は燃焼モード切換装置、16は制御装置、17は燃焼用空気源、18は第1燃料ガス源、19は第2燃料ガス源、20a〜20fは、流量調節機能付きの開閉弁である。制御装置16は、開閉弁20a〜20fを適宜開閉操作して、燃焼用空気源17からの燃焼用空気、第1燃料ガス源18からの第1燃料ガス、及び第2燃料ガス源からの第2燃料ガスを、適宜、二モード燃焼バーナ1の第1気体供給口4又は第2気体供給口7、或いはその双方に供給して、二モード燃焼バーナ1を、予混合燃焼モード又は先混合燃焼モードで燃焼させることができる。
【0032】
例えば、第1燃料ガス源18からの第1燃料ガスを用いて、予混合燃焼モードで燃焼させる場合には、制御装置16は、開閉弁20a及び20bを「開」とし、同じく、開閉弁20c及び20dを「開」として、燃焼用空気源17からの燃焼用空気と、第1燃料ガス源18からの第1燃料ガスを、第1気体供給口4及び第2気体供給口7の双方に供給する。開閉弁20a又は20bのいずれか一方、及び開閉弁20c又は20dの対応するいずれか一方のみを「開」として、燃焼用空気と第1燃料ガスを、第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方のみに供給するようにしても良い。
【0033】
図4に示すとおり、第1燃料ガス源18から開閉弁20c又は20dを経由する管路は、その先で、燃焼用空気源17と第1気体供給口4又は第2気体供給口7とを結ぶ管路に接続されているので、開閉弁20c又は20dを通過した第1燃料ガスは、その先の管路内で燃焼用空気と混合され、燃焼可能な混合ガスとなり、第1気体供給口4又は第2気体供給口7に供給されることになる。このとき、燃焼用空気源17から供給される燃焼用空気の量は、第1燃料ガスと混合したときに、空気比が1.0乃至はそれを上回る空気比となるように、その流量が調整されていることは勿論である。
【0034】
次に、第2燃料ガス源19からの第2燃料ガスを用いて、先混合燃焼モードで燃焼させる場合には、制御装置16は、開閉弁20a又は20bのいずれか一方を「開」、他方を「閉」とし、燃焼用空気源17からの燃焼用空気を第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方に供給するとともに、開閉弁20e又は20fのいずれか一方を「開」、他方を「閉」として、第2燃料ガス源19からの第2燃料ガスを第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか他方に供給する。1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれかにそれぞれ供給された燃焼用空気と第2燃料ガスとは、二モード燃焼バーナ1の先端部で混合され、先混合モードで燃焼することになる。このとき、燃焼用空気源17から供給される燃焼用空気の量は、二モード燃焼バーナ1の先端部で第2燃料ガスと混合したときに、空気比が1.0乃至はそれを上回る空気比となるように、その流量が調整されていることは勿論である。
【0035】
なお、燃焼に必要な空気量の全てを第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方に供給する代わりに、その一部を、第2燃料ガスに混合した状態で、第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか他方に供給するようにしても良い。すなわち、制御装置16は、開閉弁20a及び20bの双方を「開」とし、その一方を通過する燃焼用空気は、燃焼用空気単独で、第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方に供給し、他方を通過する燃焼用空気は、途中で第2燃料ガスと混合し、混合ガスとして、第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか他方に供給する。但し、この場合には、途中で第2燃料ガスと混合される燃焼用空気の量は、空気比を大きく下回るような流量に設定されるのはいうまでもない。
【0036】
図5は、本発明の二モード燃焼バーナ1を備える燃料電池の一例を示す概念図である。図5において、1は本発明の二モード燃焼バーナ、15は燃焼モード切換装置、21は改質器、22は燃料電池本体、23は都市ガスなどの原燃料の供給源、24は水蒸気の供給源であり、25は改質器21の内部に充填されている触媒、26は熱風ガイド管、27は一酸化炭素変成・除去器、28は例えばブロアなどの空気供給源である。
【0037】
燃料電池の起動時には、燃焼モード切換装置15は、図示しない開閉弁を操作して、まず、空気供給源28からの燃焼用空気と、源燃料供給源23からの源燃料を、予め混合した状態で、二モード燃焼バーナ1の第1気体供給口4又は第2気体供給口7、若しくはその双方に供給して、二モード燃焼バーナ1を予混合燃焼モードで燃焼させる。
【0038】
二モード燃焼バーナ1が着火すると、二モード燃焼バーナ1から排出される高温の燃焼ガスは、改質器21の熱風ガイド管26に沿って改質器21内に導かれ、改質器21内の所定の経路を通過して、触媒25を加熱する。触媒25が所定の温度にまで加熱されると、原燃料供給源23からの原燃料(例えば都市ガス)は、必要に応じて、図示しない脱硫器で脱硫された後、水蒸気供給源24からの水蒸気とともに改質器21に供給され、改質器21が運転を開始する。改質器21から生成する改質ガスは、一酸化炭素変成・除去器27を通過して一酸化炭素が除去された後、燃料電池本体22に燃料として供給される。燃料電池本体22には、改質ガスとともに、空気供給源28からの空気が供給され、電気化学反応によって電気が発生する。
【0039】
燃料電池本体22が運転を開始すると、燃料電池本体22からは、未反応の改質ガスであるオフガスが排出されるので、燃焼モード切換装置15は、図示しない開閉弁を切り換えて、二モード燃焼バーナ1への原燃料(例えば都市ガス)の供給を停止し、代わりに、燃料電池本体22から排出されるオフガスを、二モード燃焼バーナ1の第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方に燃料ガスとして供給する。同時に、燃焼モード切換装置15は、二モード燃焼バーナ1の第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか他方に空気供給源28からの燃焼用空気を供給し、二モード燃焼バーナ1を先混合燃焼モードで燃焼させる。なお、先混合燃焼モードにおいて第1気体供給口4又は第2気体供給口7のいずれか一方に供給する燃料ガスは、一酸化炭素変成・除去器27を通過した改質ガスであっても良い。
【0040】
燃料電池本体22から排出されるオフガス及び改質ガスは、水素に富み、燃焼速度が速いガスであるが、本発明の二モード燃焼バーナ1において先混合燃焼モードで燃焼するので、逆火の恐れがなく、安全に燃焼させることができる。したがって、本発明の二モード燃焼バーナ1を備える燃料電池は、その運転開始の起動時から、定常運転時まで、安定かつ安全な連続運転が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明の二モード燃焼バーナによれば、燃焼速度の速い燃料ガスと、燃焼速度がそれほど速くない燃料ガスとを、一つのバーナで、逆火の恐れなく、安全に燃焼させることができるので、燃料電池における改質器の加熱を始め、広範な用途に利用できるという優れた産業上の利点が得られる。また、本発明の二モード燃焼バーナは構造が簡単であるので、製造コストの低減を計ることができ、広範な用途に利用できるという産業上の利便性を有している。さらに、本発明の二モード燃焼バーナを備えた燃料電池によれば、運転開始の起動時から定常運転時まで、改質器の運転を安定して行うことが可能となり、燃料電池に燃料を安定して供給することが可能になるので、燃料電池の稼働効率が高まり、利便性が増すという産業上の利点が得られる。
【符号の説明】
【0042】
1 二モード燃焼バーナ
2 バーナ内管
2b、5b 開口
3 第1気体流路
4 第1気体供給口
5 バーナ外管
6 第2気体流路
7 第2気体供給口
8 スパークプラグ
9 電極
10 アース電極
11 多孔質体
12a、12b、14 フランジ
13 取付ネジ
15 燃焼モード切換装置
16 制御装置
17 燃焼用空気源
18 第1燃料ガス源
19 第2燃料ガス源
20a〜20f 開閉弁
21 改質器
22 燃料電池本体
23 原燃料供給源
24 水蒸気供給源
25 触媒
26 熱風ガイド管
27 一酸化炭素変成・除去器
28 空気供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端が有底で他方端が開口し、内部に第1気体流路を形成するバーナ内管;バーナ内管の外側に配置されたバーナ外管であって、バーナ内管と同じ側の一方端が有底で他方端がバーナ内管の前記開口と近接した位置に開口し、バーナ内管との間に第2気体流路を形成するバーナ外管;バーナ内管の底部近傍でバーナ内管内の第1気体流路に開口する第1気体供給口;バーナ外管の底部近傍でバーナ外管内の第2気体流路に開口する第2気体供給口;バーナ内管及びバーナ外管の開口側先端部に配置された点火手段を備えている二モード燃焼バーナ。
【請求項2】
バーナ内管の開口が複数の開口に分割されており、それら複数の開口がバーナ外管の開口内に島状に配置されている請求項1記載の二モード燃焼バーナ。
【請求項3】
バーナ内管及びバーナ外管の開口が、気体が通過するに十分な表裏連通した細孔を有する多孔質体を介して外部に開口している請求項1又は2記載の二モード燃焼バーナ。
【請求項4】
多孔質体が、多孔質のセラミックス、セラミックス繊維の集合体、金属繊維の焼結体、耐熱性金属繊維製編物、又は、耐熱性金属繊維製編物と金属製多孔板との積層体である請求項3記載の二モード燃焼バーナ。
【請求項5】
さらに、第1気体供給口及び第2気体供給口のいずれか一方又は双方に第1燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを供給する予混合燃焼モードと、第1気体供給口又は第2気体供給口のいずれか一方に燃焼用空気を供給し、他方に第2燃料ガスを供給する先混合燃焼モードとを切り換える燃焼モード切換装置を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の二モード燃焼バーナ。
【請求項6】
第1燃料ガスが燃料電池の原燃料ガスであり、第2燃料ガスが燃料電池からのオフガス又は改質ガスである請求項5記載の二モード燃焼バーナ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の二モード燃焼バーナを備えている燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286130(P2010−286130A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138239(P2009−138239)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000173359)細山熱器株式会社 (12)
【Fターム(参考)】