説明

二成分形態の保護剤

【課題】従来の美容用保護剤の欠点を示さず、個々の皮膚および/あるいは毛髪の素質に応じて、また個々の皮膚および/あるいは毛髪の類型に応じて個別に手入れすることができる美容用保護剤を提供すること。
【解決手段】本発明の美容用保護剤は、使用前には、分離して保管されている、第一成分と第二成分からなる毛髪保護剤で、使用する直前まで、最終使用状態の製品を形成するように混合されないものであって、上記第一成分が少なくとも一種のカチオン性界面活性剤及び/又は少なくとも一種のカチオン性ポリマーを合計で1.0ないし20.0重量パーセントの量で含み、上記第二成分が、0.1ないし20.0重量パーセントの少なくとも一種のモノアルコール及び0.1ないし30.0重量パーセントの少なくとも一種の両性又は非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分形態で提供される美容用保護剤で、第一成分が保護作用物質を含有し、第二成分が本質的に保護作用を持たない、美容剤において一般的に使用されている担体ないしは基剤を含有するものであって、二つの成分が、使用に供されるまでは分離された状態で提供され、使用に供される最終製品において初めて量調整された上で混合されるという、保護剤、特に毛髪保護剤を対象とする。
【背景技術】
【0002】
毛髪および皮膚は、種々の作用を受けることによって、物理的、化学的および形態的特性が損なわれる。特に、無防備な状態にある皮膚および頭髪は、絶えず気候の変化、たとえば湿度変化や温度変化、あるいは太陽光線の影響を受けている。その一方で、たとえば漂白、パーマネントウェーブ加工あるいは染色のような理容処理を度々受けることによって、また脱脂作用を有する界面活性剤を用いて繰り返し洗浄することによって、毛髪の構造は傷つけられる。毛髪は脆弱となり、本来の光沢を失う。このように損傷した毛髪は櫛でとかしたり、ブラッシングの際に静電気を帯びやすく、また表面が毛羽立つために、もつれやすく、とかしにくくなる。このような毛髪の損傷は少しづつ継続的に進行していく。
【0003】
適切な手入れを行うに当たっては、またこれに対して有用な保護剤を選択する場合には、皮膚および毛髪の状態に大きな影響を及ぼす上に挙げたような体外的作用の他に、個々の皮膚および毛髪の性状も、充分に考慮する必要がある。とりわけ毛髪の場合、人間の種族が異なると、それに付随して毛髪の構造も異なる。
さらに、皮膚および毛髪の性状は、自然の成行きである加齢によっても、徐々に変化する。
毛髪および皮膚の性状は、一種族内の人々の間においても、あるいは個人個人においてさえ、異なることがあるが、その違いに基づいて個々に対処しながら皮膚あるいは毛髪の手入れを行うことは、従来の保護剤では、不可能である。個別の手入れを可能にするためには、保護作用物質の量を変えた製品を多数準備する必要がある。しかしそのようなことは不可能である。
【0004】
毛髪保護剤には多数の要件が課せられている。すなわち毛髪保護剤は、毛髪に対する負担を最小限に押えながら、毛髪の櫛通り性、感触、弾力性、艷および質量感を改善することができるものでなければならない。ここで毛髪に対する負担とは、毛髪処理剤を使用した者が毛髪上にそれと感じる程度の処理剤の付着があり、そのために毛髪が汚れていると感じることを意味する。従来の保護剤では、自分に合った手入れがしたいという要求に応じることができないので、この要求は課題として残っている。
【0005】
毛髪の好ましくない状態を改善する試みは、今日まで、養毛剤を用いて行われてきた。すなわち毛髪の手入れにおいては、毛髪保護作用および櫛通り性改善作用を有する養毛剤が非常に重要な役割を果たしている。養毛剤は、通常、乳化液あるいは懸濁液の形態で提供され、モノアルコールあるいは脂肪性アルコール、ワックス、油あるいは脂質、アニオン性、両性、非イオン性あるいはカチオン性界面活性剤あるいは乳化剤を含有している。この場合に乳化剤、特にカチオン性乳化剤が実質的に保護作用に寄与している。
【0006】
しかしこのような養毛剤の場合、保護作用がエマルジョン特性と密接に関連しているということは不都合なことである。これは、保護剤として使用できるカチオン性界面活性剤の量が限定されるということを意味している。界面活性剤の濃度を高くすれば、確かに望ましいエマルジョン特性を得ることができるが、その反面皮膚および毛髪には好ましくない作用が生じる。特に損傷していない毛髪の場合、過度の保護作用となり、湿った状態においても、乾燥した状態においても、毛髪に対する負担が大きすぎる。過度の保護作用は、毛髪には逆効果であり、場合によっては処理後の毛髪は、処理前よりも、艷を失い、とかしにくくなる。カチオン性界面活性剤の濃度が低い場合は、皮膚には損傷が生じないが、使用できる状態のエマルジョンを得ることができず、当然の結果として満足のいく保護効果を得ることはできない。
【0007】
公知の毛髪保護剤の場合、たとえば安定性、粘性およびクリーミー性などの乳化液特性に好ましくない影響を与えないように配慮がなされた結果、保護作用が不十分であることがある。またカチオン性乳化剤は、粘膜に対して刺激性を有すると共に、生物学的に分解し得ない、あるいは分解し難いという欠点を持っている。
カチオン性乳化剤を含有する毛髪保護剤と並んで、同様の形態のアニオン性毛髪保護剤も公知である。しかしこの毛髪保護剤は、満足のいく保護効果を得ることができないという欠点を有する。しかもこの保護効果は他の添加物、たとえば両性あるいは非イオン性界面活性剤によっても本質的に高めることができない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許明細書第0662816号
【特許文献2】欧州特許公開第0728460号公報
【特許文献3】欧州特許公開第0719539号公報
【特許文献4】欧州特許公開第0705593号公報
【特許文献5】欧州特許公開第0641557号公報
【特許文献6】米国特許第5118507号公報
【特許文献7】米国特許第5250289号公報
【非特許文献1】Chem.Abstr.119−55722t
【0008】
たとえば特許文献1には、カチオン性、両性および非イオン性重合物、アルキルポリグリコシドおよび脂肪族アルコールを含有する毛髪保護剤が記載されており、これを人の毛髪の手入れおよび清浄に使用することが記載されている。また、たとえば非特許文献1には一般的な美容剤が示されている。その他、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7にも一般的な美容剤が記載されている。他の場合もこれらの場合も同様に、保護作用物質と担体は一つに合わされ、混合物として提供されている。しかしなからこのような美容剤は、上に挙げた、本発明の課題を解決するには、不適切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち本発明は、上に挙げたような欠点を示さない、そして個々の皮膚および/あるいは毛髪の素質に応じて、また個々の皮膚および/あるいは毛髪の類型に応じて個別に手入れすることができるような美容用保護剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は請求項1に記載の美容用保護剤によって解決され得る。すなわちこの美容用保護剤は二成分形態で提供され、その場合に第一成分に保護作用物質が一個以上含有され、第二成分に本質的に保護作用を持たない、美容剤において一般的に使用されている担体が含有され、その場合に第一成分および第二成分が、使用に供されるまで分離された状態で中間製品として提供され、使用に供される最終製品において初めて混合されるものである。
本発明による好ましい実施形態において、美容用保護剤は計量可能な美容用保護剤として提供される。すなわちこの形態の美容用保護剤においては、第一成分および第二成分は、使用に供されるまでは分離された状態で提供され、使用に供される最終製品において初めて可変的に、選択的に、あるいは調整可能に計量された上で混合される。
【0011】
ここで「保護作用物質が一個以上」とは、第一成分に保護作用物質が一個あるいは複数個含有されていることを意味する。この場合に複数個の保護作用物質は一緒に混合した状態で提供することも、あるいは個々に分離した状態で提供することも可能である。しかしいずれの場合も、第一成分は、実際に処理剤(最終製品)として使用されるまで、本質的に保護作用を示さない第二成分とは、空間的に分離された状態にある。
【0012】
本発明による保護剤の場合、第二成分がそれ自体単独では保護作用を全く示さないか、あるいは実質的に示さないということ、および使用に供される最終製品における実質的な保護作用は、量を任意に変えることのできる第一成分によって与えられるということは、重要なことである。そしてこの場合第二成分は、実質的には、第一成分に含有される保護作用物質に対する担体あるいは基剤として作用する。
【0013】
適切な方法で適用しても、毛髪保護剤は必然的に頭部の皮膚に接触するので、毛髪の個別の手入れに使用されたものは、同時に皮膚に対しても用いられたことになる。しかし皮膚においても個々の皮膚の性状に応じた個別の手入れが必要である。これに対して、手入れの対象が皮膚であるか、あるいは皮膚の付属物(毛髪)であるかに関わりなく、本発明による美容用保護剤が美容処理の場において普遍的に有効に使用できることは、専門家には明白である。
【0014】
すなわち毛髪あるいは皮膚の性状、あるいは毛髪あるいは皮膚の類型が異なっていることによって生じる個別の要求に対して、本発明による保護剤を使用することによって、それぞれに適合した毛髪の手入れおよび/あるいは皮膚の手入れを有効に実施することができる。すなわち本発明による保護剤の場合、毛髪保護作用および/あるいは皮膚保護作用を有する薬剤の適用量が計量され得ることによって、同一の製品で保護作用を個々に調整することができる、すなわち保護作用の度合を個々に変えることができる。
【0015】
本発明においては、保護作用物質と担体物質が分離されており、使用直前に初めて第一成分に含有されている保護作用物質が事例に応じて配合されて最終製品とされることによって、皮膚および皮膚付属物(頭髪あるいは髭)を適切に保護処理することができる。ここで本発明による保護剤が毛髪保護剤として適用された場合でも、これによって同時に頭の皮膚あるいは顔の皮膚も手入され得ることは、明白である。
【0016】
本発明による処理剤を毛髪保護剤として使用した場合、それによって毛髪への負担を顕著に低減することができると同時に、毛髪の櫛通り性、感触、弾力性、艷および質量感を改善することができる。この場合に本発明による処理剤が二成分形態であることによって、事例に応じて保護作用物質の量を個々に調整することができるので、特殊な性状を持った毛髪あるいは著しく損傷した毛髪に対しても個別に適切な処理を行うことができるという非常に優れた特性が生じる。それほどひどく損傷していない毛髪の場合は、著しく損傷した毛髪に比べて、保護作用物質の量を減らすことができる。これに伴って付随的に原料の使用量も減らすことができる。
【0017】
さらに本発明による美容用保護剤は、付随的に、第一成分および第二成分に使用される構成成分そのものに関しても、また構成成分の使用濃度に関しても、化学的におよび/あるいは物理的に安定であるという特徴を有する。たとえば、製品の保管時および最終製品の使用時共に、pH−値は安定であり、またエマルジョンも安定である。これに対して従来の処理剤の場合は、助剤、担体および保護作用物質から成る混合物の組成および濃度が化学的および/あるいは物理的に不安定であるという欠点を持っている。
本発明による美容用保護剤は毛髪および皮膚の手入れに有効に使用することができる。すなわち本発明による保護剤の合目的的使用も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
本発明において美容剤用担体あるいは基剤とは、専門家において周知の、それ自体は、あるいは実質的には、保護作用を示さない物質、化合物あるいは混合物のすべてを意味する。
毛髪用あるいは皮膚用美容剤においてどの様な担体あるいは基剤を、またどの様な保護作用物質を使用するかは、基本的には、専門家が周知するところである。従ってこれ以上の詳述は実例を示すもので、本発明を具体的に説明するものに過ぎない。ついでながらこれに関して該当の文献、たとえばSCHRADER,K.著「美容剤の基剤および調合剤」第二版、1989、728−737頁あるいはDOMSCH,A.著「美容剤用薬剤、化学工業に対する出版物」(H.Ziolkowsky出版)、第4版、第2巻、1992、212−230頁を参照することができる。
【0019】
本発明による二成分形態の美容用保護剤、特に計量可能な二成分形態の美容用保護剤は、毛髪保護剤として提供することが好ましい。毛髪保護剤については以後実施例において説明するが、本発明の対象はこれに限定されるものではない。どの目的(皮膚あるいは毛髪の手入れ)に対してどの保護作用物質、添加剤、容器あるいは装置を使用することができるかは、当業者において周知の事柄である。
【0020】
本発明において、実質的な保護作用を受け持つ第一成分には、美容剤において公知の、種々の化合物群あるいは物質群に属する保護剤が一個あるいは複数個含有される。これに属するものとして、特にアニオン性、カチオン性、両性あるいは非イオン性の界面活性剤および/あるいは重合物、油、脂肪および/あるいはワックスあるいはこれらの誘導体(たとえばアルコール、エステル、シリコン化合物)が挙げられる。
保護作用物質は単独物あるいは混合物の形態で提供され得る。この場合に混合物としては、たとえば異種類のカチオン性界面活性剤の混合物、異種類のカチオン性重合物の混合物、界面活性剤と重合物の混合物、あるいは油、脂肪、ワックスあるいはこれらの誘導体のそれぞれの混合物、さらにはこれらの素材を二つ以上含む混合物が挙げられる。
第一成分の保護作用物質に関しては、カチオン性保護作用物質、特にカチオン性界面活性剤およびカチオン性重合物が好ましい。
【0021】
有用なカチオン性界面活性剤および重合物として、脂肪族アミン、第四級アンモニウム化合物、あるいはピリジン、モルホリンあるいはイミダゾリンの第四級化合物、あるいはこれらの混合物、並びにカチオン性共重合物、カチオン性混合重合物、カチオン性ポリサッカライド、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性ないしは加水分解によってカチオン性を示すコラーゲンあるいはケラチンのようなタンパク質、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
カチオン性界面活性剤に関しては、たとえばヘキスト社/ドイツのGenamin CTACないしはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(THA−Chlorid)、テトラデシルベタインエステルクロライドのようなエステル類(Esterquats)、ジパルミトイルエチルジメチルアンモニウムクロライド(アクゾ社/ドイツのArmocare VGH70)のようなジエステル類、ジステアロイルエチル−ヒドロキシエチルモニウム−メトスルヘートとセテアリルアルコールの混合物(ヘンケル社/ドイツのDehyquart F−75)、Abil Quat 3272(ゴールドシュミット社/ドイツのQuaternium−80)のようなジコータナリーシリコン、あるいはRewoquat W 575(ビトコ社/ドイツのQuaternium−87)のようなイミダゾリジニル誘導体が挙げられる。
【0022】
カチオン性重合物に関しては、たとえばBASF社/ドイツのLuviquat FC905(ビニルイミダゾリウムメトクロライド/ビニルピロリドン共重合物ないしはPolyquaternium−16)、ISP社/米国/ニュージャージのGafquat 755 N(ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタアクリレート共重合物ないしはPolyquaternium−11)、アマコール社/米国/ニュージャージのUcare Polymer JR 400(Polyquaternium−10)、ケムビロン社のMerquat 550(Polyquaternium−7)、ヘンケル社/ドイツのCosmedia Guar C261(ヒドロキシプロピル−グアル−ヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド)、ローネ・ポーレンス社/フランスのJaguar C13S(グアル−ヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド)、ヘンケル社のLamequat L(ラウリルジモニウム−ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン)、ヘンケル社のGluadin WQ(ラウリルジモニウム−ヒドロキシプロピル加水分解小麦タンパク質)、あるいはナショナル・スターチ社/米国/ニュージャージのCelquat L−200(Polyquaternium−4)が挙げられる。
【0023】
カチオン性保護作用物質は、特に界面活性剤の場合は、第一成分中に0.1ないし50.0重量パーセント含有され得る。カチオン性重合物の場合は、0.1ないし30.0重量パーセント含有されていることが好ましい。界面活性剤あるいは重合物の如何にかかわらず、一般に、カチオン性保護作用物質は合計で1.0ないし20.0重量パーセントの範囲内にあることが好ましい。
【0024】
保護剤としての役割を担う第一成分は、たとえば、揮発性シリコン油に溶解されているトコフェノールアセテートと植物油を一個以上含有する混合物によって構成することができる。また別の例として、セチルトリメチルアンモニウムクロライドとカチオン性重合物から成る溶液を挙げることができる。この溶液は、他に、毛髪の質感を高めるための強固用重合物溶液および/あるいはふけ抑制剤(たとえばクリムバゾールあるいはジンクピリチオン)および/あるいは保湿剤(たとえばパンテノールあるいはヒアルロン酸の水溶液および/あるいはグリセリン溶液)および/あるいは中和剤(たとえば洗い流せない酸化剤を中和するためのグリオキシル酸水溶液)を含有することができる。
【0025】
第一成分の好ましい実施形態に対する別の例として、実質的に毛髪および/あるいは皮膚に対して保護作用を有する一個あるいは複数個の、脂肪、油あるいはワックスの、単独物あるいは混合物から成る疎水性組成物を挙げることができる。このような保護作用物質に対しては、たとえばシリコン油(たとえばDow Corning 345 Fluidのようなシクロメチコン、Dow Corning200 Fluidのようなジメチコン、GE SiliconesのSM 2115−D2のようなアミノ基を有するシリコン、Toshiba XF49−811のようなシリコンゴム)、アボカド油のようなトリグリセリド、脂肪酸、脂肪族アルコール、ミリスチン酸イソプロピルのような易拡散性油、あるいはヘンケル社/ドイツのCetiol OE(ジカプリリル−エーテル)あるいはEutanol G(オクチルドデカノール)、並びにラノリン、リンゴワックス、イレックス樹脂、蜜蝋あるいはジョジョバ油のようなワックス、レシチンのような燐脂質、セラミド、あるいはパラフィン油、パラフィンワックスあるいはワセリンのような石油分留物が挙げられる。
【0026】
第一成分は保護作用物質としてシリコン油の他に脂肪酸エステル、脂肪族アルコールあるいは脂肪族アルコールエステルを、たとえば0.1ないし10重量パーセントの量において、含有することもできる。これらの化合物は飽和あるいは不飽和の脂肪酸あるいは脂肪族アルコールに基づくものであるが、これらは炭素原子を6個ないしは40個有する直状あるいは分枝状の炭素鎖を持っており、さらに鎖中にOH−基を含有していることもある。分枝鎖化合物は合成のエステルおよびエーテルの中、並びに天然ワックスの中に見られる。水酸基を有する不飽和の脂肪酸および脂肪族アルコールはトリグリセリドおよびワックスの中に見い出される。有用な化合物として、たとえば小麦胚芽油、マッコウクジラ油、ラノリンアルコール誘導体、ラノリン酸誘導体、ステアリン酸オクチル(ヘンケル社のCetiol 868)、ラウリン酸ヘキシル(ヘンケル社のCetiol A)、アジピン酸ジオクチル(ICI社のArlamol DOA)、ミリスチン酸イソプロピルおよびオクチルドデカノール(ヘンケル社のEutanol G)、鯨蝋、蜜蝋、果実蝋およびその他の植物蝋が挙げられる。これらの脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエーテルあるいは脂肪族アルコールエステルは、本発明による毛髪保護剤において、シリコン油に加えて添加してもよい。
【0027】
別の実施形態において、第一成分は、一個以上の飽和あるいは不飽和の脂肪酸グリセリド、たとえば0.6ないし40重量パーセント、および/あるいは飽和あるいは不飽和の脂肪酸と飽和あるいは不飽和の脂肪族アルコールによって形成される一個以上のエステル、たとえば0.3ないし20重量パーセント、および/あるいは一個以上のシリコン化合物、好ましくは揮発性シリコン化合物、たとえば0.3ないし20重量パーセントによって構成することができる。これらの保護作用物質の組合せては好ましい実施形態である。この実施形態において、脂肪酸(脂肪酸グリセリドおよびエステル)は不飽和のものが好ましく、また12ないし30個の炭素原子、特に16ないし22個の炭素原子から成る鎖を有するものが好ましい。エステルに対する脂肪酸グリセリドの量の割合は約1:2ないし約10:1、特に約1:1ないし約6:1であることが好ましい。脂肪酸グリセリドおよびエステルは天然物あるいは合成物のいずれも使用し得るが、好ましいのは自然界から得られるものである。
【0028】
脂肪酸グリセリドは混合物の形態で自然界に存在し得る。自然界から得られる脂肪酸グリセリド混合物の中で、たとえばアボカド油あるいはヒマワリ油が有用である。ヒマワリ油は実質的に脂肪酸グリセリドの混合物であり、この中には次のような脂肪酸が含有されている。すなわちパルミチン酸が4ないし9%、パルミトレイン酸が約1%、ステアリン酸が1ないし7%、オレイン酸が15ないし35%、リノール酸が50ないし72%、リノレン酸が約2%、アラシン酸が約1%、およびベヘン酸が約2%含有されている。アボカド油も実質的に脂肪酸グリセリドの混合物であり、この中には次のような脂肪酸が含有されている。すなわちパルミチン酸が5ないし25%、パルミトレイン酸が1ないし10%、ステアリン酸が約3%、オレイン酸が54ないし74%、リノール酸が6ないし16%、およびリノレン酸が約3%含有されている。その他の油、特に実質的に不飽和の脂肪酸グリセリドから成る天然油、たとえばミンク油、オリーブ油、アーモンド油、ヤシ油、落花生油、綿実油、菜種油、紅花油あるいは葡萄種子油も、同様に有用である。
【0029】
上記の、飽和あるいは不飽和の脂肪酸と飽和あるいは不飽和の脂肪族アルコールから成るエステルも、同様に、混合物として存在し得る。脂肪酸と脂肪族アルコールから成るエステルの混合物として、たとえばジョジョバ油のような自然界から得られるものが有用である。ジョジョバ油は実質的に脂肪酸と相応の脂肪族アルコールから成るエステルの混合物であり、この中には次のような脂肪酸が含有されている。すなわちパルミチン酸が約1ないし2%、ステアリン酸が約10%、アイコセン酸が約71%、およびドコセン酸が約13ないし14%含有されている。
【0030】
保護作用成分である第一成分の構成要素として、シリコン化合物ないしはシリコン油に対しては、一般に、公知の製品をすべて使用することができる。たとえば低粘度シリコン油、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン(INCI:ジメチコン)(単量体単位は8以下が好ましい)、環状ジメチルポリシロキサン(INCI:シクロメチコン)、たとえばシクロオクタメチルテトラシロキサン、シクロデカメチルペンタシロキサン(たとえばDow Corning 244 FluidあるいはDow Corning 200 Fluid)、フェニルトリメチコン(たとえばゴールドシュミット社製のAbil AVタイプ)、ジメチコノール(たとえばDow Corning 1401)、アルキルジメチコン(たとえばDow Corning 2502および2503)、あるいはアミノ基を有するシリコン(たとえばDow Corning 939および8220)が有用である。この場合にシリコン化合物は100mm2/s以下の、特に20mm2/s以下の粘度を有することが好ましい。シリコン化合物ないしはシリコン油の混合物も有用である。シリコン化合物ないしはシリコン油は0.02ないし20重量パーセント使用され得る。
【0031】
本発明による美容用保護剤において、第一成分は、飽和あるいは不飽和の脂肪酸グリセリド一個以上、飽和あるいは不飽和の脂肪酸と飽和あるいは不飽和の脂肪族アルコールから成るエステル一個以上、および揮発性シリコン化合物一個以上によって構成される複合物であることが好ましい。
自明のことであるが、第一成分においては、上に挙げた保護作用物質以外の物質も、単独で、あるいは混合して、さらには上に挙げた保護作用物質と混合して、使用することができる。これに対して、たとえばラノリン誘導体、コレステリン、ベタイン、カルニチンエステル、アミノ酸、ピプチド、タンパク質、ビタミン、並びにこれらの混合物が、たとえば0.1ないし10.0重量パーセントの量において、使用され得る。タンパク質としては、たとえばケラチンが0.1ないし4.0重量パーセント使用され得る。アミノ酸としては、たとえばシステインあるいはアラニンが0.01ないし0.5重量パーセント使用され得る。
これらは、第一成分における他の保護作用物質と同様に、個別に、あるいは相互に分離した状態で、あるいは一つに混合した状態で、提供され得る。
【0032】
実質的に保護作用を示さない第二成分は、美容剤において一般に使用されている基剤、助剤あるいは担体によって構成され得る。すなわち第二成分は乳化作用あるいは自己乳化作用および/あるいは粘性付与作用を有する美容剤用薬剤を一個以上含有する。このような薬剤は、たとえばエマルジョンの形態で、あるいはエマルジョンないしはベースエマルジョンの構成成分として、提供されている。この場合は、希薄水溶液状、希薄アルコール溶液状、脂肪状、油状、ワックス状、重合物状、あるいは高粘性状の担体すべてが有用である。これに対して、たとえば水、アルコール(たとえばエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール)、脂肪性アルコール、あるいはセルロース誘導体(たとえばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、珪酸アルミニウムあるいはタンパク質誘導体(たとえばコラーゲン加水分解物)のような粘性物質あるいは増粘剤、さらには界面活性剤、重合物、あるいは乳化剤が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは混合して用いられる。
【0033】
第二成分は両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性ベースエマルジョンあるいはアニオン性ベースエマルジョンを含有することが好ましい。
第二成分をエマルジョンの形態で提供する場合、界面活性剤として、特に両性および/あるいは非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。目的製品がシャンプーである場合は、両性界面活性剤を使用することが好ましい。しかし原則的には、どの目的に対してどのような界面活性剤を使用するかは、専門家が熟知していることである。
【0034】
両性界面活性剤に関しては、美容製品において公知の両性界面活性剤をすべて第二成分に対して使用することができる。この場合、特にベタイン、スルホベタイン、グリシネート、アセテート、あるいはプロピオネート、並びにこれらの酸付加塩の群に属するものが有用である。このうちでも、特にN−アルキルベタイン、N−アルキルアミノベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N−アルキルアミノプロピオネート、アルキルジメチルアンモニウムアセテート、および脂肪酸アルキルアミドベタインが成分A−第二成分−用両性界面活性剤として有用である。しかしこの場合に一番好ましいのはコカミドプロピルベタイン、ココアンホジプロピオネート、ラウロアンホカルボキシグリシネート、ココアンホアセテート、並びにこれらの酸付加塩、たとえばナトリウム−ココアンホアセテートである。自明のことであるが、上に挙げた両性界面活性剤は第二成分中に個別にあるいは混合物として含有され得る。両性界面活性剤は工業技術において公知であり、市場において手に入れることができる。市販品として、たとえばローネ・ポウレンス社のMiranol Ultra CLSが挙げられる。
【0035】
非イオン界面活性剤に関しても、同様に、美容剤調合物において一般的に使用されている非イオン界面活性剤をすべて第二成分に対して用いることができる。たとえばオキシエチル化脂肪族アルコール(たとえばヘンケル社のEumulginタイプ)、あるいは炭素原子を12ないし18個有する脂肪酸グリセリドで脂肪族アルコール1モル当りエチレンオキサイドを40モル以下を有するものが使用され得る。このようなものとして、たとえばオキシエチル化ラウリル−、テトラデシル−、セチル−、オレイル−あるいはステアリル−アルコールの単独物あるいは混合物、並びにオキシエチル化ラノリンあるいはオキシエチル化ラノリンから成る脂肪性アルコールが挙げられる。しかしこれらの他に、脂肪族アミンエトキシレート、脂肪酸アルカノールアミド、糖エステル(たとえばサッカロースエステル、たとえばシンタファーム社のRyotoタイプ)、糖エーテル(たとえばアルキルポリグルコシド、たとえばヘンケル社のPlantacareタイプ)、ポリグルセリルエステル、シリコン活性剤(たとえばオキシアルキル化ポリシロキサン、たとえばDow Corning Surfactant 193あるいはDow Corning 5324 Fluid、あるいはシリコン−糖−共重合物、たとえばWacker SPG 128)、およびオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステルも、非イオン界面活性剤として、あるいは界面活性剤混合物として有用である。
【0036】
アニオン性界面活性剤の場合も、同様に、美容剤において一般的に用いられているものをすべて使用することができる。これに対しては、たとえばアルカンスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルスルヘートおよびアルキルエーテルスルヘートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩あるいはアルカノールアミン塩が挙げられる。この場合にアルキル基は12ないし18個の炭素原子を有することが好ましく、特にラウリル−あるいはテトラデシルエ−テルスルヘートのナトリウム塩あるいはトリエタノールアミン塩が好ましい。
【0037】
第二成分として有用な公知の界面活性剤および重合物あるいはこれらの混合物は、0.1ないし30.0重量パーセント、好ましくは0.5ないし20.0重量パーセントの量において使用される。
毛髪の保護を目的とする場合、第二成分は乳化作用ないしは自己乳化作用および粘性付与作用を有する薬剤を一個以上含有することが好ましい。これに対しては、公知の、カルボン酸基、スルホン酸基あるいは硫酸エステル基を有するイオン性乳化剤、塩基性あるいは酸性親水性基を有する両性乳化剤、非イオン性乳化剤(たとえばグリコール脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステルあるいはソルビタン脂肪酸エステルのような脂肪酸エステル、ポリグリコールエーテル)、あるいはモノアルコール(ないしは脂肪性アルコール)をすべて用いることができる。モノアルコールに関しては、炭素原子を6ないし30個、好ましくは8ないし26個、特に好ましくは12ないし22個有する、一価の、飽和あるいは不飽和の、直鎖あるいは分枝鎖アルコール、あるいはこれらの混合物が挙げられる。脂肪族アルコールに対しては、たとえばオクタノール、デカノール、ドデカノールないしはラウリルアルコール、テトラデカノールないしはミリスチルアルコール、ヘキサデカノールないしはセチルアルコール、オクタデカノールないしはステアリルアルコール、あるいはこれらの混合物、たとえばセチルアルコールとステアリルアルコールの混合物(セテアリルアルコール)が挙げられる。本発明において用いられるモノアルコールは工業技術において公知のものであり、市場において、たとえばヘンケル社(ドイツ、ドュッセルドルフ)から、入手することができる。
モノアルコールあるいはその混合物は0.1ないし20.0重量パーセント、好ましくは0.5ないし10.0重量パーセント用いられる。
【0038】
有用な粘性付与剤ないしは増粘剤として、寒天、グア−ガム、アルギネート、キサンタン−ガム、あるいはエトキシル化ポリオールと脂肪酸から成るエステル、たとえばポリグリセリル(2)ポリオキシエチレン(4)ステアレートを挙げることができる。
本発明による保護剤は、別の好ましい実施形態において、第二成分に対してカチオン性あるいはアニオン性ベースエマルジョンを採用することができる。
本発明においてカチオン性ベースエマルジョンとは、水および親油性成分の他にカチオン性乳化剤を一個以上含有するエマルジョンを意味する。またアニオン性ベースエマルジョンとは、水および親油性成分の他にアニオン性乳化剤を一個以上含有するエマルジョンを意味する。
【0039】
有用なカチオン性ベースエマルジョンとして、たとえば親油性物質を一個以上、好ましくは3ないし10重量パーセント、カチオン性乳化剤を一個以上、好ましくは1ないし3重量パーセント、有機酸を0ないし3重量パーセント、好ましくは0.1ないし3重量パーセント、および水を、好ましくは60ないし90重量パーセント、組み合わせて含有するものを挙げることができる。
有用なアニオン性ベースエマルジョンとして、たとえば親油性物質を一個以上、好ましくは3ないし10重量パーセント、アニオン性乳化剤を一個以上、好ましくは1ないし3重量パーセント、有機酸を0ないし3重量パーセント、好ましくは0.1ないし3重量パーセント、および水を、好ましくは60ないし90重量パーセント、組み合わせて含有するものを挙げることができる。
【0040】
有用な親油性物質として、たとえば脂肪族アルコール、ワセリンあるいはパラフィン油が挙げられるが、この中でも特に脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールとしては、8ないし22個の炭素原子から成る鎖を有する直鎖の脂肪族アルコールが好ましい。
好ましいカチオン性乳化剤として、8ないし18個の炭素原子から成るアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物あるいはジアルキルジメチルアンモニウムのハロゲン化物が挙げられる。
好ましいアニオン性乳化剤として、たとえば脂肪酸の塩、あるいは脂肪族アルコール−あるいはアルキル−硫酸エステル、スルホン酸エステルあるいは燐酸エステルが挙げられる。この場合にアルキル基は炭素原子を8ないし18個有するアルキル基である。
有用な有機酸として、たとえば蟻酸、グリオキシル酸、乳酸、酒石酸あるいはクエン酸が挙げられるが、この中でも特にクエン酸が好ましい。
【0041】
好ましい実施形態として、カチオン性界面活性剤一個以上および/あるいはカチオン性重合物一個以上から成る第一成分と、乳化作用ないしは自己乳化作用および/あるいは粘性付与作用を有する薬剤一個以上から成る第二成分とによって構成されていることを特徴とする、計量可能な美容用保護剤が挙げられる。
特に好ましい実施形態として、カチオン性界面活性剤一個以上および/あるいはカチオン性重合物一個以上から成る第一成分と、モノアルコール一個以上および/あるいは両性あるいは非イオン性界面活性剤一個以上から成る第二成分とによって構成されていることを特徴とする、計量可能な美容用保護剤、特に毛髪用保護剤が挙げられる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態として、さらに、第一成分が飽和あるいは不飽和の脂肪酸グリセリド一個以上、飽和あるいは不飽和の脂肪酸と飽和あるいは不飽和の脂肪族アルコールから成るエステル一個以上、および揮発性シリコン化合物一個以上によって構成される複合物であること、および第二成分がカチオン性あるいはアニオン性ベースエマルジョンであることを特徴とする、美容用保護剤が挙げられる。
【0043】
本発明による保護剤に対して、上記以外の公知の美容剤用添加物、助剤および担体、たとえば炭素原子を1ないし4個有する低級脂肪族アルコール、たとえばエタノール、イソプロパノールあるいはプロパノール、あるいはグリコール、たとえばグリセリンあるいは1、2−プロピレングリコールのような溶剤なども、添加することができる。この場合溶剤は0.5ないし90重量パーセントの量において使用することが好ましい。これらの他に、さらに、香油を0.1ないし5重量パーセント、エチレングリコールジステアレートのような乳白剤を0.2ないし5重量パーセント、アニオン性、カチオン性、両性あるいは非イオン性界面活性剤の群に属する、たとえば脂肪族アルコールスルヘート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベタイン、エトキシル化脂肪族アルコール、エトキシル化ノニルフェノールあるいはエトキシル化脂肪酸エステルのような、湿潤剤ないしは乳化剤を0.1ないし30重量パーセント、さらに殺菌剤ないしは防かび剤、シックナー(たとえばベントナイ)、pH−調整剤、保湿剤、芳香剤ないしは香料、香油、染料(たとえば天然あるいは合成直接染料、その他フルオレセイン−ナトリウム塩のような蛍光染料)、遮光剤ないしは紫外線フィルター、保存剤、酸化防止剤(たとえばトコフェロール)、発熱性珪酸、錯化合物形成剤、ふけ抑制剤、生理学上問題のない無機あるいは有機酸(たとえば燐酸、酢酸、蟻酸、グリオキシル酸、乳酸、酒石酸あるいはクエン酸)、塩基、塩(たとえば塩化ナトリウム)、緩衝剤(たとえばクエン酸ナトリウムあるいは燐酸ナトリウム)、粘性付与剤、並びに天然、変性、部分合成あるいは完全合成重合物(たとえばキトサン、FMOC−キトサン、PVP)を含有することができる。
【0044】
添加剤、助剤あるいは担体として、他に、たとえばパラヒドロキシ安息香酸エステルのような保存剤(使用量:0.05ないし2.0重量パーセント)、たとえば2、4、4−トリクロル−2−ヒドロキシフェニルエーテルあるいはメチルクロルイソチアゾリノンのような殺菌剤ないしは防かび剤、たとえばイラクサ抽出物あるいはカミレ抽出物のような植物抽出物(使用量:0.1ないし2.0重量パーセント)、たとえばp−メトキシ珪皮酸イソアミルエステル、親油性珪皮酸エステル、サリシル酸エステル、4−アミノ安息香酸誘導体、あるいはベンゾフェノンのあるいは3−ベンジリデンカンファーの親水性スルホン酸誘導体のような遮光剤ないしは紫外線フィルター(使用量:0.01ないし2.0重量パーセント)、並びにセルロースあるいはセルロースエステルのような増粘剤(使用量:0.5ないし3.0重量パーセント)が挙げられる。またビタミンとして、たとえばビタミンCが、0.1ないし2.0重量パーセントの量において、用いられる。酸化防止剤としては、たとえはトコフェロールが0.001ないし5重量パーセント使用され得る。乳化剤としては、特に非イオン性乳化剤、たとえはヘンケル社(ドイツ/デュッセルドルフ)のPlantacareないしはアルキルオリゴグルコシドが0.1ないし2.0重量パーセント使用され得る。溶剤としては、たとえばBASF社(ドイツ/ルドビッヒスハーヘン)のCremophor RH 410ないしはグリセリン−ポリエチレングリコール−ヒドロキシステアレートが0.1ないし2.0重量パーセント使用され得る。
【0045】
自明のことであるが、本発明に基づいて好ましい保護剤を得るためには、どのような助剤および担体を添加しなければならないかは、専門家の周知事項である。たとえばクリーム状、ペースト状、ゲル状、ミルク状あるいはローション状の皮膚保護剤を目的とする場合、専門家によって適切な脂肪、油、ワックス、乳化剤、増粘剤あるいは香料が選択されるであろう。また本発明に基づいて毛髪保護剤を得る場合、同様に、専門家は、労せずに、適切な界面活性剤、重合物、乳化剤あるいは香料を選択するであろう。
【0046】
染料としては、生理学上問題のない公知の染料をすべて使用することができる。これらの染料を、第一成分中に含有されている保護作用物質の量あるいは保護作用の度合に対する指示薬として、さらには調合量指標として、使用することかできる。この場合染料は第一成分に添加される。これに対して用いることのできる染料は、毛髪あるいは皮膚に対して着色作用を持たないことが好ましい。このような染料として、たとえばフルオレセイン−ナトリウム塩が挙げられる。このような色指示薬は、ゲル状、泡状、ペースト状、クリーム状、あるいは他の適当な粘性を有する形態の場合に、考慮することが好ましい。このような色指示薬は二室備わった変形可能な容器あるいは固形容器(チューブ、缶、瓶)に第一成分と共に充填することが好ましい。
【0047】
保護剤を染毛剤として適用する場合も、本発明による保護剤に対して染料が添加される。これによって本発明による保護剤は毛髪を耐久的に染色することができるようになる。この場合、このような用途に対する公知の染料をすべて用いることができる。このような染料として、たとえばニトロ置換基あるいはアミノ置換基を有するベンゼン、ベンゾニトリルあるいはベンズアミドの群に属する公知のニトロ染料が挙げられる。さらに公知のアゾ染料あるいはキノン染料、並びにヘンナ、インジゴあるいはユガロンのような天然染料も用いることができる。
【0048】
第一成分および第二成分は所望とする目的および所望とする保護作用に応じて適当な割合で混合される。使用に供する保護剤における第一成分と第二成分の割合は、20:1ないし1:20であることが好ましい。
本発明による保護剤を使用するに当たっては、通常、使用前10分以内に、好ましくは2分以内に、特に好ましくは1分以内に両成分が混合される。
本発明による保護剤が毛髪保護剤として用いられる場合、保護剤は、毛髪上において1ないし30分間、好ましくは2ないし20分間、特に好ましくは2ないし10分間作用させた後、水で洗い流される。本発明による保護剤が皮膚保護剤として用いられる場合、保護剤は洗い流されることがなく、作用は長時間あるいは長い日数持続される。
【0049】
両成分および使用に供する最終製品のpH−値は2.0ないし7.0)好ましくは3.0ないし6.0である。ここで生理学上問題のないpH−値に調整する場合に、適当な酸が用いられる。これに対する酸として、クエン酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グリオキシル酸、グルコン酸およびリンゴ酸の添加が有用であるが、これ以外にも、たとえば燐酸のような無機酸も使用することができる。
使用に供する製品は、すなわち使用直前に第一成分と第二成分を量調整しながら混合することによって得られる製品は、専門家において周知の、そして利用者の望む、どのような方法を用いても、適用することができる。保護剤の最終製品の形態としては、適用方法に応じて、希薄液の形態(たとえばスプレー用)あるいはクリーム状からペースト状に至る粘性を有する形態(たとえば塗布用)が採用される。
【0050】
使用目的が毛髪保護剤である場合、本発明による保護剤は油/水−エマルジョンの形態で提供されることが好ましい。これはエアゾールとしてあるいはポンプを用いて、霧状あるいは泡状で付与することも可能である。
有用な適用形態として、美容剤、特に皮膚保護剤および毛髪保護剤において一般的に採用されている公知の適用形態ないしは付与形態をすべて採用することができる。たとえばエマルジョン、泡、ゲル、クリーム、ペースト、水溶液、アルコール溶液、水−アルコール溶液、乳液あるいは懸濁液(たとえばベントナイトあるいは他の粒子含有)の形態が採られる。保護剤は、たとえばシャンプー、リンス、治療剤、ヘアー・トニック、ローション、ゲル、泡あるいはゲルフォーム(ムース)の形態で、あるいは噴霧可能な(スプレー)形態で提供され得る。
【0051】
保護剤の適用形態(たとえばエマルジョン、ゲル、ペースト、スプレーあるいは泡)を決める第二成分は、専門家において周知の方法に従って製造され得る。
同様に、第一成分の構成成分もそれ自体公知の方法に従って、たとえば加熱下に撹拌することによって、製造ないしは混合され得る。
これらの調合物は、このような美容剤において一般的に用いられている変形可能容器あるいは固形容器(たとえば缶、瓶、チューブ、噴射剤を含有するあるいは機械的噴射機構を備えた噴射装置)のいずれにも充填することができる。この場合に容器は、第一成分と第二成分を空間的に分離することができるように、そして使用直前に両成分を合わせて、第二成分に対して第一成分を、あるいは反対に第一成分に対して第二成分を、可変的に、すなわち計量的に、混合することかできるように、二室を備えていることが、あるいは分離した二個の容器であることが要件である。この目的に適する装置は工業技術において、たとえばヨーロッパ特許明細書EP0335763あるいはドイツ特許明細書DE2141436において公知である。
【0052】
従って本発明は本発明による保護剤を含有する包装単位も対象とする。すなわち本発明は、第一成分および第二成分が空間的に相互に分離された状態で含有されていること、および使用直前に第一成分と第二成分が、適当な装置によって可変的に、選択可能に、あるいは調整可能に計量された上で、混合され得ることを特徴とする包装単位も対象とする。
さらに本発明は、有用な添加剤が第三成分として空間的に第一成分および第二成分と分離された状態て含有されている包装単位も、対象とする。この第三成分は別の保護作用物質を好ましい状態で含有することができる。このような実施形態を採用することによって、混合した場合に安定な状態で保存できないような添加物を、たとえば保護作用物質を、中間製品として分離して安定な状態で提供し、最終製品において、好ましい状態で調合しながら、使用することができるという利点が生じる。
【0053】
さらに本発明は、保護作用物質を一個以上含有する第一成分と実質的に保護作用を示さない第二成分を使用直前に混合すること、その場合に第一成分を第二成分に対して、可変的に、選択可能に、あるいは調整可能に計量しながら、添加することを特徴とする皮膚および毛髪の保護方法も、対象とする。第二成分に対する第一成分の混合割合は20:1ないし1:20である。
さらに、本発明による計量可能な美容用保護剤の製造方法も、本発明の対象である。この方法は、第一成分および第二成分をそれ自体公知の方法に従って別々に製造すること、および両成分を空間的に相互に分離した状態で提供することができるように、そして使用直前に第一成分と第二成分を、可変的に、選択可能に、あるいは調整可能に計量しながら、混合し、最終製品として提供することができるように、両成分を容器に充填することを特徴とする。
【実施例】
【0054】
次に実施例に基づいて本発明の対象をさらに詳しく説明する。しかし本発明はこれらに限定されない。実施例1ないし5に記載の油状複合体1ないし5は、第一成分の構成成分に関するものである。実施例6ないし9は、第二成分として提供される、一般的な美容剤用ベースエマルジョンに関するものである。実施例10は別の第二成分の例である。
【0055】
実施例1:油状複合体1
【表1】

【0056】
実施例2:油状複合体2
【表2】

【0057】
実施例3:油状複合体3
【表3】

【0058】
実施例4:油状複合体4
【表4】

【0059】
実施例5:油状複合体5
【表5】

【0060】
実施例6:第二成分用カチオン性ベースエマルジョン
【表6】

【0061】
実施例7:第二成分用カチオン性ベースエマルジョン
【表7】

【0062】
実施例8:第二成分用アニオン性ベースエマルジョン
【表8】

【0063】
実施例9:第二成分用アニオン性ベースエマルジョン
【表9】

【0064】
使用前に実施例6ないし9に記載のベースエマルジョン20ないし30mlを実施例1ないし5に記載の油状複合物2ないし8mlと混合する。この混合物を通常の方法に従って適用する。すなわち毛髪を洗浄し、本発明による処理剤を念入りに付与する。15ないし30分間作用させた後、処理剤を水で洗い流す。
【0065】
実施例10:クリームあるいはローション用、非イオン性、非保護作用性成分
【表10】

【0066】
それ自体公知の方法に従って製造する。すなわち水溶性原料溶液を80℃に加熱し、これを80℃において溶解したワックス相に撹拌しながら加える。80℃において5分間乳化し、必要に応じて均質化し、適時撹拌しながら冷却する。30℃において香料を加え、水の蒸発による減量分を完全脱塩水によって補う。
【0067】
実施例11:損傷の少ない毛髪用の、リンス形態の、両性担体含有毛髪保護剤
【表11】

【0068】
第二成分20.0gと第一成分2.0gを混合し、この混合物を、洗浄し、タオルで水分を拭き取った損傷の少ない毛髪に、付与する。5分間作用させた後、処理剤を洗い流す。これによって毛髪に負担をかけることなく、毛髪の感触が改善される。
【0069】
実施例12:損傷の大きな毛髪用の、リンス形態の、両性担体含有毛髪保護剤
【表12】

【0070】
第二成分20.0gと第一成分3.0gを混合し、この混合物を、洗浄しタオルて水分を拭き取った損傷の大きな毛髪に、付与する。5分間作用させた後、処理剤を洗い流す。これによって毛髪に負担をかけることなく、滑らかな感触の毛髪が得られる。
【0071】
実施例13:損傷の少ない毛髪用の、リンス形態の、両性担体含有毛髪保護剤
【表13】

【0072】
第二成分20.0gと第一成分1.0gを混合し、この混合物を、洗浄し、タオルで水分を拭き取った損傷の少ない毛髪に、付与する。5分間作用させた後、処理剤を洗い流す。これによって毛髪に負担をかけることなく、毛髪の感触が改善される。
【0073】
実施例14:損傷の大きな毛髪用の、リンス形態の、両性担体含有毛髪保護剤
【表14】

【0074】
第二成分20.0gと第一成分2.0gを混合し、この混合物を、洗浄し、タオルで水分を拭き取った損傷の大きな毛髪に、付与する。5分間作用させた後、処理剤を洗い流す。これによって毛髪に負担をかけることなく、滑らかな感触の毛髪が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用前には、分離して保管されている、第一成分と第二成分からなる毛髪保護剤で、使用する直前まで、最終使用状態の製品を形成するように混合されないものであって、
上記第一成分が少なくとも一種のカチオン性界面活性剤及び/又は少なくとも一種のカチオン性ポリマーを合計で1.0ないし20.0重量パーセントの量で含み、上記第二成分が、0.1ないし20.0重量パーセントの少なくとも一種のモノアルコール及び0.1ないし30.0重量パーセントの少なくとも一種の両性又は非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする二成分式毛髪保護剤。

【公開番号】特開2008−195735(P2008−195735A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108444(P2008−108444)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【分割の表示】特願平11−516214の分割
【原出願日】平成10年7月11日(1998.7.11)
【出願人】(591011627)ウエラ アクチェンゲゼルシャフト (64)
【氏名又は名称原語表記】WELLA AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】