説明

二次電池、負極、正極および電解質

【課題】サイクル特性を向上させることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】負極集電体22A上に負極活物質層22Bを有し、その負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cが設けられている。この負極活物質層被覆膜22Cは、金属バリウム、あるいは酸化バリウムなどのバリウム化合物からなる。負極22の化学的安定性が高くなるため、その反応性が低減する。これにより、充放電時において電解液の分解反応が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極反応物質を吸蔵放出することが可能である負極および正極、溶媒および電解質塩を含む電解質、ならびにそれらを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
【0003】
中でも、充放電反応として電極反応物質の吸蔵放出を利用する二次電池は、大いに期待されている。鉛電池およびニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるからである。このような二次電池としては、電極反応物質としてリチウムイオンを用いたリチウムイオン二次電池などが知られている。
【0004】
この二次電池は、電極反応物質を吸蔵放出することが可能である正極および負極と共に、電解質を備えている。電解質は、溶媒に電解質塩などが溶解されたものである。
【0005】
二次電池の構成については、各種性能を向上させるために、さまざまな検討がなされている。具体的には、電池寿命特性、高温保存特性および電池容量を向上させるために、フッ素系有機金属塩を含有する被覆層により覆われたカーボンコアを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、充放電特性、生産性および安全性を向上させるために、負極の合剤層の表面に導電性炭素材料および絶縁性金属酸化物粒子を含む保護層を設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、充放電サイクル特性を向上させるために、非水電解質中に金属過塩素酸塩を含有させることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−505487号公報
【特許文献2】特許第3809662号明細書
【特許文献3】特開2006−278185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ポータブル電子機器は益々高性能化および多機能化しており、その消費電力は増大する傾向にあるため、二次電池の充放電は頻繁に繰り返され、そのサイクル特性は低下しやすい状況にある。よって、二次電池のサイクル特性について、より一層の向上が望まれている。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性を向上させることが可能な二次電池、負極、正極および電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二次電池は、電極反応物質を吸蔵放出することが可能な正極および負極と、電解質塩および溶媒を含む電解質とを備えている。特に、第1の二次電池は、負極が金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種からなる被膜を有している。第2の二次電池は、正極が上記した金属バリウム等を含んでいる。第3の二次電池は、電解質が上記した酸化バリウム等を含んでいる。
【0010】
本発明の負極は、電極反応物質を吸蔵放出することが可能であると共に、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種からなる被膜を有するものである。また、本発明の正極は、電極反応物質を吸蔵放出することが可能であると共に、上記した金属バリウム等を含むものである。さらに、本発明の電解質は、溶媒および電解質塩と、上記した酸化バリウム等とを含むものである。
【0011】
本発明の負極では、金属バリウム等からなる被膜を有しているため、化学的安定性が向上する。また、本発明の正極では、金属バリウム等を含んでいるため、充放電時において負極に金属バリウム等からなる被膜が形成される。さらに、本発明の電解質では、酸化バリウム等を含んでいるため、充放電時において負極に酸化バリウム等からなる被膜が形成される。これにより、本発明の負極、正極あるいは電解質を用いた二次電池では、負極の反応性が低減するため、充放電時において電解質の分解反応が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次電池、負極、正極あるいは電解質によれば、負極が金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種からなる被膜を有している。あるいは、正極が上記した金属バリウム等を含んでいる。または、電解質が上記した酸化バリウム等を含んでいる。よって、サイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における円筒型二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】図2に示した正極および負極の構成を表す平面図である。
【図4】負極活物質粒子および負極活物質粒子被覆膜の構成を表す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるラミネートフィルム型二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図6】図5に示した巻回電極体のVI−VI線に沿った構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるコイン型二次電池の構成を表す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態における円筒型二次電池の巻回電極体の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した正極および負極の構成を表す平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態におけるラミネートフィルム型二次電池の巻回電極体の構成を表す断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態におけるコイン型二次電池の構成を表す断面図である。
【図13】XPSによる負極の表面分析結果を表す図である。
【図14】TOF−SIMSによる負極の表面分析結果を表す図である。
【図15】XPSによるSnCoCの分析結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.第1実施形態(負極が金属バリウム等を含む二次電池)
1−1.円筒型二次電池
1−1−1.負極活物質層被覆膜
1−1−2.負極活物質粒子被覆膜
1−2.ラミネートフィルム型二次電池
1−3.コイン型二次電池
2.第2実施形態(正極が金属バリウム等を含む二次電池)
3.第3実施形態(電解質が酸化バリウム等を含む二次電池)
【0015】
<1.第1実施形態(負極がバリウム化合物等を含む二次電池)>
<1−1.円筒型二次電池>
<1−1−1.負極活物質層被覆膜>
まず、本発明の第1実施形態の二次電池について説明する。図1は円筒型二次電池の断面構成、図2は図1に示した巻回電極体20の一部拡大、図3は図2に示した正極21および負極22の平面構成をそれぞれ表している。ここで説明する二次電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムイオンの吸蔵放出により表されるリチウムイオン二次電池である。
【0016】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、図1に示したように、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20および一対の絶縁板12,13が収納されたものである。
【0017】
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有していると共に、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)あるいはそれらの合金などにより構成されている。この電池缶の11の表面には、ニッケル(Ni)などが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟むと共にその巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0018】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子16は、電池蓋14の内側に設けられている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大(電流制限)し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面には、アスファルトが塗布されていてもよい。
【0019】
巻回電極体20は、図1および図2に示したように、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回されたものであり、その中心にセンターピン24が挿入されていてもよい。正極21には、アルミニウムなどにより構成された正極リード25が接続されていると共に、負極22には、ニッケルなどにより構成された負極リード26が接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされて電池蓋14と電気的に接続されていると共に、負極リード26は、電池缶11に溶接などされて電気的に接続されている。
【0020】
[正極]
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、正極結着剤あるいは正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0021】
正極材料としては、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウム(Li)と遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物、あるいはリチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物などである。中でも、遷移金属元素としてコバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyの値は、充放電状態により異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0022】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物は、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、あるいは下記の式(1)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。なお、式(1)中のX(ハロゲン元素)は、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)のうちの少なくとも1種である。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物は、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などである。高い電池容量および優れたサイクル特性が得られるからである。
【0023】
Lia Cob Nic 1-b-c d-e e …(1)
(Mは、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、バリウム(Ba)、タングステン(W)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)およびアンチモン(Sb)のうちの少なくとも1種である。Xは、ハロゲン元素である。0.8<a<1.2、0≦b≦0.5、0.5≦c≦1.0、1.8<d<2.2および0≦e≦1.0である。)
【0024】
この他、正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物あるいは導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどである。
【0025】
もちろん、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。また、正極材料は、上記以外のものでもよい。
【0026】
正極結着剤としては、例えば、合成ゴムあるいは高分子材料などが挙げられる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0027】
正極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などでもよい。
【0028】
[負極]
負極22は、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。この負極22は、後述する金属バリウムおよびバリウム化合物のうちの少なくとも1種からなる被膜を有している。ここでは、負極22は、例えば、負極活物質層22B上に、上記した被膜である負極活物質層被覆膜22Cを有している。この負極活物質層被覆膜22Cは、負極活物質層22Bと同様に、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0029】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
【0030】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、負極結着剤あるいは負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、正極結着剤および正極導電剤と同様である。この負極活物質層22Bでは、例えば、充放電時において意図せずに金属リチウムが析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量が正極21の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0031】
負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。リチウムイオンの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られると共に、負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素、あるいは(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂あるいはフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0032】
また、負極材料としては、例えば、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料(金属系材料)が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。この金属系材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの2種以上でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。なお、本発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものだけでなく、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらが2種以上共存するものなどがある。
【0033】
上記した金属元素あるいは半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素であり、具体的には、以下の元素のうちの少なくとも1種などである。マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズあるいは鉛(Pb)である。ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)である。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方が好ましい。リチウムイオンを吸蔵放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0034】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を含む材料は、例えば、ケイ素あるいはスズの単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの2種以上でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。
【0035】
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、以下の元素のうちの少なくとも1種を含むものなどである。スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンあるいはクロムである。ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、酸素あるいは炭素を含むものなどである。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金について説明した元素のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。
【0036】
ケイ素の合金あるいは化合物は、例えば、以下のものである。SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 あるいはCu5 Siである。FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)あるいはLiSiOである。
【0037】
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、以下の元素のうちの少なくとも1種を含むものなどである。ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンあるいはクロムである。スズの化合物は、例えば、酸素あるいは炭素を含むものなどである。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金について説明した元素のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。スズの合金あるいは化合物は、例えば、SnSiO3 、LiSnOあるいはMg2 Snなどである。
【0038】
特に、ケイ素を含む材料(ケイ素含有材料)としては、ケイ素の単体が好ましい。高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。なお、「単体」とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)であり、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
【0039】
また、スズを含む材料(スズ含有材料)としては、例えば、スズを第1構成元素とし、それに加えて第2および第3構成元素を含むものが好ましい。第2構成元素は、例えば、以下の元素のうちの少なくとも1種などである。コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムあるいはジルコニウムである。ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル、タングステン、ビスマスあるいはケイ素である。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンのうちの少なくとも1種などである。高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
【0040】
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。その組成は、例えば、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%以上70質量%以下である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0041】
SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な相(反応層)であり、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムイオンが円滑に吸蔵放出すると共に、電解質などに対する反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質の相に加えて、構成元素の単体あるいは一部を含む相を含んでいる場合もある。
【0042】
X線回折により得られた回折ピークが反応相に対応するものであるか否かについては、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較して容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、反応相に対応するものである。この場合には、例えば、反応相の回折ピークが2θ=20°以上50°以下の範囲に得られる。このような反応相は、上記した一連の構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
【0043】
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態は、例えば、X線光電子分光法(XPS:x-ray photoelectron spectroscopy)により確認される。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線あるいはMg−Kα線などが用いられる。炭素の少なくとも一部が金属元素あるいは半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。ただし、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているため、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。XPSでは、C1sのピークの波形が表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で測定されるため、例えば、市販のソフトウェアを用いて解析して両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0044】
なお、SnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに以下の元素のうちの少なくとも1種などを含んでいてもよい。ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスである。
【0045】
スズ含有材料としては、SnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。SnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は30質量%以上70質量%以下である。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下である。また、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))は26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))は9.9質量%以上79.5質量%以下である。高いエネルギー密度が得られるからである。SnCoFeC含有材料の物性等(半値幅など)は、SnCoC含有材料と同様である。
【0046】
また、他の負極材料としては、例えば、金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
【0047】
もちろん、上記した一連の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。また、負極材料は、上記以外のものでもよい。
【0048】
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法あるいは焼成法(焼結法)、またはそれらの2種以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。気相法の一例としては、物理堆積法あるいは化学堆積法などが挙げられる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(chemical vapor deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などである。液相法の一例としては、電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などが挙げられる。溶射法とは、負極活物質を溶融状態あるいは半溶融状態で噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法と同様の手順で塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法については、公知の手法を用いることができる。一例としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法などが挙げられる。
【0049】
負極活物質層被覆膜22Cは、充放電前から負極活物質層22Bに設けられており、金属バリウムおよびバリウム化合物のうちの少なくとも1種(以下、総称して「金属バリウム等」という。)からなる。すなわち、負極活物質層被覆膜22Cの構成材料は、バリウム化合物のいずれか1種あるいは2種以上だけでもよいし、金属バリウムだけでもよいし、それらの混合物でもよい。負極22の化学的安定性が向上するため、反応性が低減するからである。これにより、充放電時において電解液の分解反応が抑制される。なお、負極活物質層被覆膜22Cは、単層でもよいし、多層でもよい。また、金属バリウム等については、1層中で複数の材料が混合されていてもよいし、多層である場合には層ごとに材料が異なっていてもよい。これらのことは、後述する負極活物質粒子被覆膜222(図4参照)についても同様である。
【0050】
バリウム化合物は、例えば、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウムあるいは有機酸バリウムなどである。中でも、ハロゲン化バリウムおよびリン酸バリウムが好ましい。負極22の化学的安定性がより向上するからである。ハロゲン化バリウムにおけるハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ化バリウムが好ましい。有機酸バリウムは、例えば、炭酸バリウム、シュウ酸バリウムあるいは酢酸バリウムなどである。
【0051】
中でも、負極活物質層被覆膜22Cは、金属バリウムからなることが好ましい。安定かつ強固な負極活物質層被覆膜22Cが形成されるため、バリウム化合物を含んでいる場合よりも負極22の化学的安定性が向上するからである。
【0052】
この負極活物質層被覆膜22Cは、負極活物質層22Bの表面全体を被覆してもよいし、一部だけを被覆していてもよいが、被覆範囲が広いほど好ましい。負極22の化学的安定性がより向上するからである。この際、負極活物質層被覆膜22Cの一部は、負極活物質層22Bの内部に入り込んでいてもよい。
【0053】
また、負極活物質層被覆膜22Cは、例えば、液相法あるいは気相法などにより形成されている。液相法は、例えば、塗布法あるいは浸積法(いわゆるディップコーティング法)などである。気相法は、例えば、抵抗加熱法、蒸着法、スパッタ法あるいは化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法などである。これらの方法は、単独でもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
中でも、金属バリウムを用いる場合には、気相法を用いることが好ましい。負極活物質層被覆膜22Cを短時間で容易に形成できるからである。一方、バリウム化合物を用いる場合には、それが溶解された溶液(以下、「被膜形成溶液」という。)を用いた液相法が好ましい。化学的安定性に優れた負極活物質層被覆膜22Cを容易に形成できるからである。被膜形成溶液の溶媒は、特に限定されないが、中でも、水が好ましい。極性が高いため、バリウム化合物を溶解しやすいからである。また、水系の負極活物質層被覆膜22Cが形成されるため、非水溶媒系の電解液と組み合わせて用いられた場合に負極活物質層被覆膜22Cが溶解しにくくなるからである。
【0055】
この負極22では、負極活物質層被覆膜22Cの存在に起因して、例えば、XPSを用いた負極22の表面分析により、Ba3d5/2に帰属するピークが778eV以上782eV以下の範囲に得られる。また、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:time of flight secondary ion mass spectrometry)を用いた負極22の表面分析により、正二次イオンとしてBa+ 、BaOH+ 、BaF+ 、BaOLi+ 、BaOHFLi+ 、BaF2 Li+ 、BaOLi2 + 、BaO2 Li3+、BaOHLi2 2+ 、BaLi2 3+、BaCO3 Li+ 、BaSO4 Li+ およびBaLi2 PO4+のうちの少なくとも1種のピークが得られる。これらの分析により、負極活物質層被覆膜22Cの有無を容易に確認することができる。
【0056】
ここで、正極21および負極22では、例えば、図3に示したように、正極活物質層21Bは正極集電体21Aの一部領域に設けられているのに対して、負極活物質層22Bおよび負極活物質層被覆膜22Cは負極集電体22Aの全領域に設けられている。このため、負極活物質層22Bおよび負極活物質層被覆膜22Cは、正極活物質層21Bと対向する領域R1および対向しない領域R2の双方に設けられている。なお、図3では、正極活物質層21Bおよび負極活物質層22Bに網掛けしている。
【0057】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離すると共に、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂あるいはセラミックなどからなる多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層されたものでもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどである。
【0058】
[電解液]
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、必要に応じて、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0059】
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。以下で説明する一連の溶媒(非水溶媒)は、単独でもよいし、2種以上混合されてもよい。
【0060】
非水溶媒としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタンあるいはテトラヒドロフランである。2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサンあるいは1,4−ジオキサンである。酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルあるいはトリメチル酢酸エチルである。アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノンあるいはN−メチルオキサゾリジノンである。N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルあるいはジメチルスルホキシドである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0061】
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種が好ましい。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0062】
特に、溶媒は、ハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。充放電時において負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。上記した「ハロゲン化」とは、少なくとも一部の水素がハロゲンにより置換されているという意味である。ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。ハロゲン化環状炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。ただし、ハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。溶媒中におけるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステル(単独あるいは混合)の含有量は、例えば、0.01重量%以上50重量%以下である。
【0063】
また、溶媒は、不飽和炭素結合環状炭酸エステルを含んでいることが好ましい。充放電時において負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレンあるいは炭酸ビニルエチレンなどであり、その溶媒中における含有量は、例えば、0.01重量%以上10重量%以下である。
【0064】
さらに、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)あるいは酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性が向上するからである。スルトンは、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどであり、その溶媒中における含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。酸無水物としては、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物あるいはカルボン酸スルホン酸無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸あるいは無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸あるいは無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
【0065】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上を含んでいる。以下で説明する一連の電解質塩は、単独でもよいし、2種以上混合されてもよい。
【0066】
リチウム塩としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )あるいは六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )である。テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )あるいはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )である。六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)である。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0067】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましい。この場合には、さらに、六フッ化リン酸リチウムおよび四フッ化ホウ酸リチウムのうちの少なくとも一方がより好ましく、六フッ化リン酸リチウムがさらに好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0068】
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0069】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充放電時において以下のようにリチウムイオンが吸蔵放出される。充電時には、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0070】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0071】
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して正極活物質層21Bを形成する。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などで正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0072】
次に、負極22を作製する。最初に、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。負極活物質層22Bを形成する場合には、上記した正極21と同様の形成手順でもよい。この場合には、負極活物質と必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとを混合した負極合剤を有機溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとしたのち、負極集電体22Aの両面に塗布し、必要に応じて圧縮成型する。あるいは、正極21とは異なる形成手順でもよい。この場合には、蒸着法などの気相法を用いて負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させる。最後に、負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを形成する。負極活物質層被覆膜22Cの形成材料としてバリウム化合物を用いる場合には、それが溶解された被膜形成溶液を準備し、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを被膜形成溶液中に数秒間浸漬させてから引き上げて乾燥させる。あるいは、被膜形成溶液を負極活物質層22Bの表面に塗布してもよい。一方、負極活物質層被覆膜22Cの形成材料として金属バリウムを用いる場合には、抵抗加熱法を用いて負極活物質層22Bの表面にバリウムを堆積させる。
【0073】
最後に、正極21および負極22と共に電解液を用いて二次電池を組み立てる。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして接続すると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして接続する。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら電池缶11の内部に収納する。この場合には、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接などして接続すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接などして接続する。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。これにより、図1〜図3に示した二次電池が完成する。
【0074】
本実施形態の円筒型二次電池によれば、負極活物質層22Bに金属バリウム等からなる負極活物質層被覆膜22Cが設けられているので、負極22の化学的安定性が向上する。これにより、負極22の反応性が低減するため、充放電時において電解液の分解反応が抑制される。よって、サイクル特性を向上させることができる。この場合には、負極材料として高容量化に有利な金属系材料を用いた場合において優れたサイクル特性が得られるため、炭素材料を用いた場合よりも高い効果を得ることができる。
【0075】
特に、充放電前からあらかじめ負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを設けているため、以降で説明するように、充放電時に形成する場合よりも負極活物質層被覆膜22Cの定着性および安定性などが高くなる。このため、サイクル特性をより向上させることができる。また、被膜形成溶液として水溶液を用いれば、非水溶媒系の電解液と組み合わせて用いた場合に、負極活物質層被覆膜22Cの耐溶解性が向上するため、サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0076】
ここで、あらかじめ負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを設けた場合における二次電池の特徴について言及しておく。図3に示したように、負極活物質層被覆膜22Cは、負極22の完成時(充放電前)に既に形成されているため、領域R1だけでなく領域R2にも存在している。正極活物質層21Bと負極活物質層22Bとが対向している領域R1は充放電反応に関与するため、その領域R1に形成されている負極活物質層被覆膜22Cは充放電反応の影響を受けて分解等する可能性がある。しかしながら、正極活物質層21Bと負極活物質層22Bとが対向していない領域R2は充放電反応に関与しないため、その領域R2に形成されている負極活物質層被覆膜22Cは充放電を経ても影響を受けずにそのまま残存しているはずである。よって、負極活物質層被覆膜22Cが二次電池の充放電前に既に形成されていたかどうかを確認するためには、領域R2に負極活物質層被覆膜22Cが存在しているかどうかを調べればよい。充放電後において領域R2に負極活物質層被覆膜22Cが存在しているということは、それが充放電前から既に形成されていたことになる。
【0077】
<1−1−2.負極活物質粒子被覆膜>
なお、被膜として負極活物質層被覆膜22Cを設ける代わりに、図4に示したように、他の被膜である負極活物質粒子被覆膜222により覆われた複数の粒子状の負極活物質(負極活物質粒子221)を用いてもよい。負極活物質粒子被覆膜222は、負極活物質層被覆膜22Cと同様に、金属バリウム等を含んでいる。この活物質粒子被覆膜222により被覆された負極活物質粒子221を形成する場合には、例えば、被膜形成溶液中に負極活物質粒子221を数秒間浸漬させてから引き上げて乾燥させればよい。これ以外の負極22の作製手順は、負極活物質層被覆膜22Cを形成した場合と同様である。この場合においても、負極活物質層被覆膜22Cを設けた場合と同様の理由により、負極22の化学的安定性が向上するため、サイクル特性を向上させることができる。
【0078】
もちろん、負極活物質層被覆膜22Cだけを用いてもよいし、負極活物質粒子被覆膜222により覆われた負極活物質粒子221だけを用いてもよいが、それらを併用してもよい。併用すれば、負極22の化学安定性が著しく高くなるため、サイクル特性をより向上させることができる。
【0079】
<1−2.ラミネートフィルム型二次電池>
本実施形態の二次電池は、円筒型以外の二次電池に適用されてもよい。図5はラミネートフィルム型二次電池の分解斜視構成、図6は図5に示した巻回電極体30のVI−VI線に沿った断面拡大、図7は図6に示した正極33および負極34の平面構成をそれぞれ表している。なお、以下では、ラミネートフィルム型二次電池の構成要素について、円筒型二次電池の構成要素を随時引用しながら説明する。
【0080】
この二次電池は、例えば、主に、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されたリチウムイオン二次電池である。この巻回電極体30には、正極リード31および負極リード32が取り付けられている。
【0081】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されていると共に、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。これらの材料は、例えば、薄板状あるいは網目状になっている。
【0082】
外装部材40は、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。このラミネートフィルムは、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように2枚のフィルムの融着層における外縁部同士が融着、あるいは接着剤などにより貼り合わされている。融着層は、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどの高分子フィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔である。表面保護層は、例えば、ナイロンあるいはポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムである。
【0083】
中でも、外装部材40としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材40は、アルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムでもよい。
【0084】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により構成されている。このような材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂である。
【0085】
巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37により保護されている。正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものであり、それらは正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様の構成を有している。負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bおよび負極活物質層被覆膜34Cが設けられたものであり、それらは負極集電体22A、負極活物質層22Bおよび負極活物質層被覆膜22Cと同様の構成を有している。セパレータ35は、セパレータ23と同様の構成を有している。
【0086】
電解質層36は、高分子化合物により電解液が保持されたものであり、必要に応じて、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。この電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解液の漏液が防止されるので好ましい。
【0087】
高分子化合物としては、例えば、以下の高分子材料うちの少なくとも1種などが挙げられる。ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサンあるいはポリフッ化ビニルである。ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートである。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体である。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0088】
電解液は、円筒型二次電池における電解液と同様の組成を有している。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36における溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。このため、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0089】
なお、高分子化合物により電解液が保持されたゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
【0090】
この二次電池では、充電時において、例えば、正極33からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極34からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して正極53に吸蔵される。
【0091】
このゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0092】
第1製造方法では、最初に、正極21および負極22と同様の手順により、正極33および負極34を作製する。具体的には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bおよび負極活物質層被覆膜34Cを形成して負極34を作製する。続いて、電解液、高分子化合物および溶剤を含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、その溶剤を揮発させてゲル状の電解質層36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を接続すると共に、負極集電体34Aに負極リード32を接続する。続いて、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層および巻回したのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を作製する。最後に、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。これにより、図5〜図7に示した二次電池が完成する。
【0093】
第2製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を接続すると共に、負極34に負極リード32を接続する。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
【0094】
第3製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、第2製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体など)が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体、あるいはフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質層36が形成されるため、二次電池が完成する。
【0095】
この第3製造方法では、第1製造方法よりも電池膨れが抑制されると共に、第2製造方法よりも高分子化合物の原料であるモノマーあるいは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らず、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36との間で十分な密着性が得られる。
【0096】
本実施形態のラミネートフィルム型二次電池によれば、負極活物質層34Bに金属バリウム等からなる負極活物質層被覆膜34Cが設けられているので、負極34の化学的安定性が高くなる。よって、円筒型二次電池と同様の作用が得られるため、サイクル特性を向上させることができる。これ以外の効果は、円筒型二次電池と同様である。
【0097】
なお、ラミネートフィルム型二次電池においても、円筒型二次電池と同様に、負極活物質層34Bに負極活物質層被覆膜34Cを設ける代わりに、負極活物質粒子被覆膜222により覆われた負極活物質粒子221を用いて負極活物質層34Bを形成してもよい。この場合においても、サイクル特性を向上させることができる。
【0098】
<1−3.コイン型二次電池>
また、本実施形態の二次電池は、コイン型二次電池に適用されてもよい。図8は、コイン型二次電池の断面構成を表している。なお、以下では、コイン型二次電池の構成要素について、円筒型二次電池の構成要素を随時引用しながら説明する。この二次電池は、正極51を収容する外装缶54と負極52を収容する外装カップ55とがセパレータ53およびガスケット56を介してかしめられたリチウムイオン二次電池である。
【0099】
外装缶54および外装カップ55、ならびにガスケット56は、電池缶11およびガスケット17と同様の構成を有している。
【0100】
正極51は、例えば、正極集電体51Aの片面に正極活物質層51Bが設けられたものであり、それらは正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様の構成を有している。負極52は、例えば、負極集電体52Aに負極活物質層52Bおよび負極活物質層被覆膜52Cが設けられたものであり、それらは負極集電体22A、負極活物質層22Bおよび負極活物質層被覆膜22Cと同様の構成を有している。セパレータ53は、セパレータ23と同様の構成を有しており、電解液は、円筒型二次電池における電解液と同様の組成を有している。
【0101】
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。最初に、正極21および負極22と同様の手順により、正極集電体51Aに正極活物質層51Bを形成して正極51を作製すると共に、負極集電体52Aに負極活物質層52Bおよび負極活物質層被覆膜52Cを形成して負極52を作製する。続いて、所定の直径のペレットとなるように正極51および負極52を打ち抜く。最後に、正極51を外装缶54に収容すると共に、負極52を外装カップ55に貼り付け、それらを電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層したのち、ガスケット56を介してかしめる。これにより、図8に示した二次電池が完成する。
【0102】
本実施形態のコイン型二次電池によれば、負極活物質層52Bに金属バリウム等からなる負極活物質層被覆膜52Cが設けられているので、負極52の電気化学的安定性が高くなる。よって、円筒型二次電池と同様の作用が得られるため、サイクル特性を向上させることができる。これ以外の効果は、円筒型二次電池と同様である。
【0103】
なお、コイン型二次電池においても、円筒型二次電池と同様に、負極活物質層52Bに負極活物質層被覆膜52Cを設ける代わりに、負極活物質粒子被覆膜222により覆われた負極活物質粒子221を用いて負極活物質層52Bを形成してもよい。この場合においても、サイクル特性を向上させることができる。
【0104】
<2.第2実施形態(正極が金属バリウム等を含む二次電池)>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は巻回電極体20の断面構成を表しており、図2に対応している。図10は、図9に示した正極21および負極22の平面構成を表しており、図3に対応している。
【0105】
この二次電池は、充放電前において負極活物質層被覆膜22Cが既に形成されていた第1実施形態とは異なり、充放電時において初めて負極活物質層被覆膜22Cが形成されるものである。なお、本実施形態の二次電池は、例えば、以下で説明することを除き、第1実施形態と同様の構成を有する円筒型二次電池である。
【0106】
正極21の正極活物質層21Bは、充放電前において、正極活物質と一緒に金属バリウム等を含んでいる。この正極活物質層21Bに含まれている金属バリウム等は、充放電時において負極活物質層22Bに活物質層被覆膜22Cを形成するために用いられるものである。このため、充放電時において活物質層被覆膜22Cが形成されたのちは、正極活物質層21Bは金属バリウム等を含んでいても含んでいなくてもよい。なお、正極活物質層21B中における金属バリウム等の含有量は、特に限定されない。
【0107】
負極22の負極活物質層22Bには、図9および図10に示したように、充放電前において負極活物質層被覆膜22Cが設けられていないが、図2および図3に示したように、充放電後において負極活物質層被覆膜22Cが設けられている。このため、充放電後の負極22では、第1実施形態と同様に、XPSを用いた表面分析によりBa3d5/2に帰属するピークが778eV以上782eV以下の範囲に得られる。また、TOF−SIMSを用いた表面分析により正二次イオンとしてBa+ 、BaOH+ 、BaF+ 、BaOLi+ 、BaOHFLi+ 、BaF2 Li+ 、BaOLi2 + 、BaO2 Li3+、BaOHLi2 2+ 、BaLi2 3+、BaCO3 Li+ 、BaSO4 Li+ およびBaLi2 PO4+のうちの少なくとも1種のピークが得られる。
【0108】
この二次電池では、充放電時において、正極21と負極22との間でリチウムイオンが電解液を介して吸蔵放出される際に、正極活物質層21Bに含まれている金属バリウム等を利用して負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cが形成される。この負極活物質層被覆膜22Cを形成するために要する充放電の回数は、少なくとも1回であればよい。
【0109】
この二次電池は、例えば、正極活物質と一緒に金属バリウム等を含む正極合剤を用いて正極活物質層21Bを形成すると共に、負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを形成しないことを除き、第1実施形態と同様の手順により製造される。
【0110】
本実施形態の円筒型二次電池によれば、充放電前において正極21の正極活物質層21Bが金属バリウム等を含んでいる。このため、充放電前にあらかじめ負極活物質層被覆膜22Cを形成しておかなくても、充放電時において負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cが形成される。よって、第1実施形態と同様の作用が得られるため、サイクル特性を向上させることができる。これ以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0111】
ここで、正極活物質層21Bに金属バリウム等を含有させる場合における二次電池の特徴について言及しておく。図10に示したように、負極活物質層被覆膜22Cは、充放電前においては未だ形成されていないため、領域R1,R2のいずれにも存在しない。これに対して、負極活物質層被覆膜22Cは、充放電反応を利用して形成されるため、充放電反応に関与する領域R1だけに形成され、充放電反応に関与しない領域R2には形成されないはずである。よって、負極活物質層被覆膜22Cが充放電反応を利用して形成されたものであるかどうかを確認するためには、領域R1に存在しているのに対して領域R2に存在していないかどうかを調べればよい。充放電後において領域R1だけに負極活物質層被覆膜22Cが存在しているということは、それが充放電時に形成されたことになる。
【0112】
なお、本実施形態の二次電池は、第1実施形態と同様に、円筒型二次電池に限らず、図11および図12に示したように、ラミネートフィルム型二次電池あるいはコイン型二次電池に適用されてもよい。この場合には、充放電前において負極活物質層被覆膜34C,52Cが形成されず、正極活物質層34B,52B中に金属バリウム等が含有されることになる。これらの場合においても、サイクル特性を向上させることができる。
【0113】
また、正極21が金属バリウム等を含む場合として、正極活物質層21Bが金属バリウム等を含む場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ここでは具体的に図示していないが、例えば、第1実施形態で説明したように、金属バリウム等を含む正極活物質層被覆膜が正極活物質層21Bに形成されてもよいし、金属バリウム等を含む正極活物質粒子被覆膜により覆われた正極活物質粒子を用いて正極活物質層21Bを形成してもよい。これらの場合においても、サイクル特性を向上させることができる。もちろん、上記した正極21が金属バリウム等を含む3種類の態様は、単独でもよいし、2種類以上組み合わされてもよい。
【0114】
<3.第3実施形態(電解質がバリウム化合物等を含む二次電池)>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の二次電池は、正極21あるいは負極22が金属バリウム等を含んでいる第1および第2実施形態とは異なり、電解質が酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種(以下、総称して「バリウム化合物等」という。)を含んでいるものである。この二次電池は、例えば、以下で説明することを除き、第1実施形態と同様の構成を有する円筒型二次電池である。
【0115】
電解質は、充放電前において、溶媒および電解質塩と一緒にバリウム化合物等を含んでいる。この電解質に含まれているバリウム化合物等は、充放電時において負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを形成するために用いられるものである。このため、充放電時において負極活物質層被覆膜22Cが形成されたのちは、電解質はバリウム化合物等を含んでいても含んでいなくてもよい。なお、電解質に含有させるバリウム化合物等としては、溶媒に十分に溶解可能である有機酸バリウムが好ましい。溶媒中におけるバリウム化合物等の含有量は、特に限定されない。
【0116】
負極22の負極活物質層22Bには、第2実施形態と同様に、充放電前において負極活物質層被覆膜22Cが設けられていないが、充放電後において負極活物質層被覆膜22Cが設けられている。このため、充放電後の負極22では、第1実施形態と同様に、XPSを用いた表面分析により、Ba3d5/2に帰属するピークが778eV以上782eV以下の範囲に得られる。また、TOF−SIMSを用いた表面分析により、正二次イオンとしてBa+ 、BaOH+ 、BaF+ 、BaOLi+ 、BaOHFLi+ 、BaF2 Li+ 、BaOLi2 + 、BaO2 Li3+、BaOHLi2 2+、BaLi2 3+、BaCO3 Li+ 、BaSO4 Li+ およびBaLi2 PO4+のうちの少なくとも1種のピークが得られる。
【0117】
この二次電池では、充放電時において、正極21と負極22との間でリチウムイオンが電解液を介して吸蔵放出される際に、電解質に含まれているバリウム化合物等を利用して負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cが形成される。
【0118】
この二次電池は、例えば、溶媒および電解質塩と一緒にバリウム化合物等を含むように電解質を調製すると共に、負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cを形成しないことを除き、第1実施形態と同様の手順により製造される。
【0119】
本実施形態の円筒型二次電池によれば、充放電前において電解質がバリウム化合物等を含んでいるので、充放電前にあらかじめ負極活物質層被覆膜22Cを形成しておかなくても、充放電時において負極活物質層22Bに負極活物質層被覆膜22Cが形成される。よって、第1実施形態と同様の作用が得られるため、サイクル特性を向上させることができる。これ以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0120】
なお、本実施形態の二次電池は、第1実施形態と同様に、円筒型二次電池に限らず、図11および図12に示したように、ラミネートフィルム型二次電池あるいはコイン型二次電池に適用されてもよい。この場合には、充放電前において負極活物質層被覆膜34C,52Cが形成されず、電解質にバリウム化合物等が含有されることになる。これらの場合においても、サイクル特性を向上させることができる。
【0121】
以上をもって、本発明の第1〜第3実施形態に関する説明を終了する。第1〜第3実施形態で説明したバリウム化合物等の含有場所(正極、負極あるいは電解質)に関する一連の態様は、単独でもよいし、2種類以上組み合わされてもよい。特に、バリウム化合物等の含有場所としては、電解質よりも正極および負極が好ましく、正極よりも負極が好ましい。正極および負極が好ましい理由は、充放電反応に直接関与する正極および負極にバリウム化合物等を導入することにより、電解質に導入する場合よりも安定かつ強固な被膜が再現性よく形成されるからである。また、負極が好ましい理由は、充電時において負極にリチウムイオンが吸蔵される場合には、その吸蔵先である負極にバリウム化合物等を導入することにより、負極の化学的安定性が飛躍的に向上するからである。
【実施例】
【0122】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0123】
(実験例1−1〜1−9)
以下の手順により、図8に示したコイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0124】
まず、正極51を作製した。最初に、正極活物質としてLi0.98Co0.15Ni0.80Al0.052.10(レーザ散乱法による平均粒子径=14μm)90質量部と、正極導電剤としてグラファイト5質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、アルミニウム箔(20μm厚)からなる正極集電体51Aに正極合剤スラリーを塗布したのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層51Bを形成した。最後に、正極活物質層51Bが形成された正極集電体51Aを直径15.5mmのペレットとなるように打ち抜いた。
【0125】
次に、負極52を作製した。最初に、電子ビーム蒸着法を用いて銅箔(10μm厚)からなる負極集電体52Aにケイ素を堆積させて負極活物質層52Bを形成した。続いて、負極活物質層52Bが形成された負極集電体52Aを直径16mmのペレットとなるように打ち抜いた。続いて、被膜形成溶液としてバリウム化合物の2%水溶液を準備したのち、その溶液中にペレットを数秒間浸漬させた。このバリウム化合物の種類は、表1に示した通りであり、複数種類のバリウム化合物を用いる場合には、各バリウム化合物の重量比を等しくした。最後に、被膜形成溶液中からペレットを引き上げて負極活物質層被覆膜52Cを形成した。
【0126】
次に、正極51と、負極52と、微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ53とを正極活物質層51Bと負極活物質層52Bとがセパレータ53を介して対向するように積層したのち、外装缶54に収容した。続いて、溶媒として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と炭酸ジエチル(DEC)とを混合したのち、電解質塩としてLiPF6 を溶解させて電解液を調製した。この際、FECおよびDECの混合比を重量比で50:50とし、LiPF6 の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。最後に、セパレータ53に電解液を含浸させたのち、ガスケット56を介して外装カップ55を被せてかしめることにより、コイン型の二次電池が完成した。この二次電池を作製する場合には、正極活物質層51Bの厚さを調節して、満充電時において負極52にリチウム金属が析出しないようにした。
【0127】
(実験例1−10)
抵抗加熱法を用いて負極活物質層52Bに金属バリウムを堆積させて負極活物質層被覆膜52Cを形成したことを除き、実施例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
【0128】
(実験例1−11)
負極活物質層被覆膜52Cを形成しなかったことを除き、実験例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
【0129】
これらの実験例1−1〜1−11の二次電池についてサイクル特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
【0130】
サイクル特性を調べる場合には、23℃の雰囲気中で2サイクル充放電して放電容量を測定したのち、同雰囲気中でサイクル数の合計が100サイクルとなるまで繰り返し充放電して放電容量を測定した。この結果から、放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。1サイクルでは、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで充電したのち、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。
【0131】
なお、実験例1−1〜1−11の二次電池については、XPSおよびTOF−SIMSを用いて負極52の表面分析も行った。
【0132】
XPSによる分析では、金属バリウム等の存在に起因してBa3d5/2に帰属するピーク(XPSピーク)が778eV以上782eV以下の範囲に得られるかどうかを調べた。この場合には、分析装置としてアルバックファイ社製のQUANTERA SXMを用いると共に、モノクロ化したAL−kα線(1486.6eV,ビームサイズ=約100μmΦ)を照射して光電子スペクトルを測定した。なお、帯電中和処理を行わなかった。また、スペクトルのエネルギー補正にF1sピークを用いた。詳細には、測定サンプルについてF1sスペクトルを測定したのち、市販のソフトウェアを用いて波形解析し、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置を685,1eVとした。図13は、XPSによる負極の表面分析結果(13A=実験例1−9,13B=実験例1−11)を表している。
【0133】
TOF−SIMSによる分析では、金属バリウム等の存在に起因する正二次イオンのピーク(TOF−SIMSピーク)が得られるかどうかを調べた。この正二次イオンとは、Ba+ 、BaOH+ 、BaF+ 、BaOLi+ 、BaOHFLi+ 、BaF2 Li+ 、BaOLi2 + 、BaO2 Li3+、BaOHLi2 2+ 、BaLi2 3+ 、BaCO3 Li+ 、BaSO4 Li+ およびBaLi2 PO4+のうちの少なくとも1種である。この場合には、分析装置としてION-TOF 社製のTOF-SIMS Vを用いた。また、分析条件として、一次イオン=Bi3+(9.7952×1011ions/cm2 )、イオン銃の加速電圧=25keV、分析モード=バンチングモード、照射イオンの電流(パルスビームでの計測)=0.3pA、パルス周波数=10kHz、質量範囲=1amu〜800amu、走査範囲=200μm×200μm、質量分解能M/ΔM=6800(C2 5+),5900(CH2-)とした。図14は、TOF−SIMSによる負極の表面分析結果((A)および(B)の上段=実験例1−11,下段=実験例1−9)を表している。
【0134】
【表1】

【0135】
負極活物質層被覆膜52Cを形成した実験例1−1〜1−10では、それを形成しなかった実験例1−11とは異なり、780eV近傍にXPSピークが得られると共に正二次イオンによるTOF−SIMSピークが得られた。また、実験例1−1〜1−10では、実験例1−11よりも放電容量維持率が高くなった。この場合には、フッ化バリウムあるいはリン酸バリウムを用いると放電容量維持率がより高くなり、金属バリウムを用いると放電容量維持率がさらに高くなった。これらのことから、本発明の二次電池では、金属バリウム等を含む負極活物質層被覆膜52Cが負極活物質層52Bに形成されている。これにより、負極活物質としてケイ素を用いると共に負極活物質層52Bの形成方法として電子ビーム蒸着法を用いた場合において、サイクル特性が向上する。
【0136】
(実験例2−1〜2−3)
焼結法を用いて負極活物質層52Bを形成したことを除き、実験例1−4,1−9,1−11と同様の手順を経た。負極活物質層52Bを形成する場合には、最初に、負極活物質としてケイ素粉末(メジアン径=1μm)90質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、負極集電体52Aに負極合剤スラリーを塗布したのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層52Bを形成した。最後に、400℃×12時間の条件で負極活物質層52Bを加熱した。これらの実験例2−1〜2−3の二次電池についてサイクル特性等を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
【0137】
【表2】

【0138】
表1の結果と同様に、実験例2−1,2−2では、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、実験例2−3よりも放電容量維持率が高くなった。これらのことから、負極活物質層52Bの形成方法として焼結法を用いた場合においても、サイクル特性が向上する。
【0139】
(実験例3−1〜3−3)
負極活物質としてSnCoC含有材料であるスズコバルト炭素合金(SnCoC)を用いると共に負極活物質層52Bの形成方法として塗布法を用いたことを除き、実験例1−4,1−9,1−11と同様の手順を経た。
【0140】
負極活物質層52Bを形成する場合には、最初に、コバルト粉末およびスズ粉末を合金化してコバルト・スズ合金粉末としたのち、炭素粉末を加えて乾式混合した。続いて、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中に、上記した混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと一緒にセットした。続いて、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換したのち、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。続いて、反応容器を室温まで冷却してSnCoCを取り出したのち、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0141】
SnCoCの組成を分析したところ、スズの含有量は48.0質量%、コバルトの含有量は23.0質量%、炭素の含有量は20.0質量%、スズおよびコバルトの割合(Co/(Sn+Co))は32.4質量%であった。この際、スズおよびコバルトの含有量については誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分析で測定し、炭素の含有量については炭素・硫黄分析装置で測定した。また、X線回折法によりSnCoCを分析したところ、2θ=20°以上50°以下の範囲に1.0°以上の半値幅を有する回折ピークが観察された。さらに、XPSによりSnCoCを分析したところ、図15に示したように、ピークP1が得られた。このピークP1を解析したところ、表面汚染炭素のピークP2と、それよりも低エネルギー側(284.5eVよりも低い領域)にSnCoC含有材料中におけるC1sのピークP3とが得られた。この結果から、SnCoC中の炭素は他の元素と結合していることが確認された。
【0142】
負極活物質としてSnCoC80質量部と、負極導電剤としてグラファイト11質量部およびアセチレンブラック1質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。最後に、負極集電体52Aに負極合剤スラリーを塗布したのち、ロールプレス機で圧縮成型した。
【0143】
これらの実験例3−1〜3−3の二次電池についてサイクル特性等を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
【0144】
【表3】

【0145】
表1の結果と同様に、実験例3−1,3−2では、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、実験例3−3よりも放電容量維持率が高くなった。これらのことから、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合においても、サイクル特性が向上する。
【0146】
(実験例4−1,4−2)
負極活物質として人造黒鉛を用いると共に負極活物質層52Bの形成方法として塗布法を用いたことを除き、実験例1−4,1−9と同様の手順を経た。負極活物質層52Bを形成する場合には、負極活物質として人造黒鉛粉末(メジアン径=20μm)90質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。そして、負極集電体52Aに負極合剤スラリーを塗布したのち、圧縮成型した。
【0147】
(実験例4−3,4−4)
負極活物質層被覆膜52Cを形成する代わりに、負極活物質粒子被覆膜222が形成された負極活物質粒子221を用いると共に負極活物質層52Bの形成方法として塗布法を用いたことを除き、実験例1−4,1−9と同様の手順を経た。負極活物質層52Bを形成する場合には、最初に、被膜形成溶液中に負極活物質粒子221として人造黒鉛粉末(メジアン径=20μm)を数秒間浸漬させた。続いて、被膜形成溶液を濾過すると共に乾燥させて、負極活物質粒子被覆膜222により覆われた負極活物質粒子221を得た。続いて、負極活物質として負極活物質粒子被覆膜222により覆われた負極活物質粒子221(人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。最後に、負極集電体52Aに負極合剤スラリーを塗布したのち、ロールプレス機で圧縮成型した。
【0148】
(実験例4−5〜4−7)
負極活物質層被覆膜52Cを形成せず、または金属酸化物であるα−酸化アルミニウム(Al2 3 :メジアン径=1μm)あるいは酸化チタン(TiO2 :メジアン径=1μm)を用いて被膜を形成したことを除き、実験例4−1,4−2と同様の手順を経た。被膜を形成する場合には、金属酸化物80質量部と、鱗片状黒鉛10質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン4質量部と、分散剤としてカルボキシメチルセルロース1質量部とを混合したのち、水を加えて混練してスラリーとした。こののち、負極活物質層52Bにスラリーを塗布して乾燥させた。
【0149】
(実験例4−8)
負極活物質層被覆膜52Cを形成する代わりに、電解液中に電解質塩として過塩素酸リチウム(LiClO4 )を含有させたことを除き、実験例4−1,4−2と同様の手順を経た。この場合には、LiPF6 の含有量を溶媒に対して1mol/kg、LiClO4 の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。
【0150】
これらの実験例4−1〜4−8の二次電池についてサイクル特性等を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
【0151】
【表4】

【0152】
表1の結果と同様に、実験例4−1,4−2では、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、実験例4−5よりも放電容量維持率が高くなった。また、実験例4−3,4−4においても、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、実験例4−5よりも放電容量維持率が高くなった。これに対して、バリウム化合物以外の化合物を用いた実験例4−6〜4−8では、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られなかったと共に、実験例4−5よりも放電容量維持率が低くなった。この結果は、バリウム化合物を用いると電解液の分解反応が抑制されるが、それ以外の化合物を用いると電解液の分解反応が抑制されないことを表している。なお、金属酸化物を用いた実験例4−6,4−7における被膜の膜質は、負極活物質層被覆膜52Cのように均一かつ平滑ではなく、焼結体のような不均一な粒子の集合体であったため、もはや「膜」とは言えないものであった。これらのことから、負極活物質として人造黒鉛を用いた場合においても、サイクル特性が向上する。
【0153】
(実験例5−1,5−2)
負極活物質層被覆膜52Cを形成する代わりに、電解液中にバリウム化合物を含有させたことを除き、実験例1−1〜1−10と同様の手順を経た。このバリウム化合物の種類は、表5に示した通りであり、溶媒中におけるバリウム化合物の含有量は、1重量%とした。
【0154】
(実験例5−3)
電解液中にバリウム化合物を含有させなかったことを除き、実験例5−1,5−2と同様の手順を経た。
【0155】
これらの実験例5−1〜5−3の二次電池についてサイクル特性等を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
【0156】
【表5】

【0157】
電解液中にバリウム化合物を含有させた実験例5−1,5−2では、それを含有させなかった実験例5−3とは異なり、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、高い放電容量維持率が得られた。これらのことから、電解液中にバリウム化合物を含有させることにより、充放電反応を利用して負極活物質層52Bに負極活物質層被覆膜52Cが形成されるため、サイクル特性が向上する。
【0158】
(実験例6−1,6−2)
負極活物質層被覆膜52Cを形成する代わりに、正極活物質粒子被覆膜が形成された正極活物質粒子を用いたことを除き、実験例1−1,1−3と同様の手順を経た。正極活物質層51Bを形成する場合には、最初に、被膜形成溶液中に正極活物質粒子としてLi0.98Co0.15Ni0.80Al0.052.10を数秒間浸漬させた。続いて、被膜形成溶液を濾過すると共に乾燥させて、正極活物質粒子被覆膜により覆われた正極活物質粒子を得た。続いて、正極活物質として正極活物質粒子被覆膜により覆われた正極活物質粒子(Li0.98Co0.15Ni0.80Al0.052.10)90質量部と、正極導電剤としてグラファイト5質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して正極合剤とした。最後に、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとし、正極集電体51Aに塗布したのち、圧縮成型した。
【0159】
(実験例6−3)
正極活物質粒子被覆膜を形成しなかったことを除き、実験例6−1,6−2と同様の手順を経た。
【0160】
これらの実験例6−1〜6−3の二次電池についてサイクル特性等を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
【0161】
【表6】

【0162】
正極活物質粒子被覆膜を形成した実験例6−1,6−2では、それを形成しなかった実験例6−3とは異なり、XPSピークおよびTOF−SIMSピークが得られたと共に、高い放電容量維持率が得られた。これらのことから、正極活物質粒子被覆膜を形成することにより、充放電反応を利用して負極活物質層52Bに負極活物質層被覆膜52Cが形成されるため、サイクル特性が向上する。
【0163】
なお、ここでは、正極51、負極52および電解質のうちの2つ以上に金属バリウム等を含有させた具体例を開示していない。しかしながら、正極51、負極52あるいは電解質に金属バリウム等を含有させた場合においてサイクル特性が向上することは、上記した結果から明らかである。また、正極51、負極52および電解質のうちの2つ以上に金属バリウム等を含有させた場合において、サイクル特性が低下する特別な理由も見当たらない。このため、正極51、負極52および電解質のうちの2つ以上に金属バリウム等を含有させた場合においてもサイクル特性が向上することは、明らかである。
【0164】
上記した表1〜表6の結果から、本発明の二次電池では、負極が金属バリウム等からなる被膜を有している。あるいは、正極が金属バリウム等を含んでいる。また、電解質がバリウム化合物等を含んでいる。このため、負極活物質の種類あるいは負極活物質層の形成方法などに依存せずに、サイクル特性が向上する。
【0165】
この場合には、負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合よりも金属系材料(ケイ素あるいはSnCoC含有材料)を用いた場合において、サイクル特性がより向上した。このことから、前者の場合よりも後者の場合において、より高い効果を得ることができる。この結果は、負極活物質として高容量化に有利な金属系材料を用いると、炭素材料を用いる場合よりも電解液が分解しやすくなるため、電解液の分解抑制効果が際立って発揮されたものと考えられる。
【0166】
以上、いくつかの実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の負極、正極および電解質の使用用途は、必ずしも二次電池に限らず、キャパシタなどの他の電気化学デバイスでもよい。
【0167】
また、二次電池の種類としてリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られない。本発明の二次電池は、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵放出による容量と金属リチウムの析出および溶解による容量とを含み、かつ、それらの容量の和により表される二次電池についても、同様に適用可能である。この場合には、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出することが可能な負極材料が用いられると共に、負極材料の充電可能な容量は正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0168】
また、電池構造が円筒型、ラミネートフィルム型あるいはコイン型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限られない。本発明の二次電池は、角型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合、ならびに電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
【0169】
また、電極反応物質の元素としてリチウムを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。電極反応物質の元素は、例えば、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムあるいはカルシウムなどの2族元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本発明の効果は、電極反応物質の元素の種類に依存せずに得られるはずであるため、その種類を変更しても、同様の効果を得ることができる。
【0170】
また、バリウム化合物の種類について、実施例の結果から導き出されたものだけ(酸化バリウムなど)を説明しているが、その説明は、他の種類のバリウム化合物が用いられる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記したバリウム化合物の種類は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい種類であるため、本発明の効果が得られるのであれば、他の種類のバリウム化合物を用いてもよい。
【符号の説明】
【0171】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,51…正極、21A,33A,51A…正極集電体、21B,33B,51B…正極活物質層、22,34,52…負極、22A,34A,52A…負極集電体、22B,34B、52B…負極活物質層、22C,34C,52C…負極活物質層被覆膜、23,35,53…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、54…外装缶、55…外装カップ、221…負極活物質粒子、222…負極活物質粒子被覆膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極反応物質を吸蔵放出することが可能な正極および負極と、電解質塩および溶媒を含む電解質とを備え、前記負極は、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種からなる被膜を有する、二次電池。
【請求項2】
前記負極は、負極活物質層上に前記被膜である負極活物質層被覆膜を有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極は、正極集電体上の一部に正極活物質層を有し、前記負極は、前記正極活物質層と対向する領域および対向しない領域に前記負極活物質層被覆膜を有する、請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極は、正極集電体上の一部に正極活物質層を有し、前記負極は、前記正極活物質層と対向する領域だけに前記負極活物質層被覆膜を有する、請求項2記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極は、前記被膜である負極活物質粒子被覆膜により覆われた複数の負極活物質粒子を含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極は、負極活物質として、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極は、負極活物質として、スズ、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含むSnCoC含有材料を含有し、
前記SnCoC含有材料では、スズ、コバルトおよび炭素を含むと共に前記電極反応物質と反応可能である反応相を有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であると共にスズおよびコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が20質量%以上70質量%以下であり、X線回折により2θ=20°以上50°以下の範囲に1.0°以上の半値幅を有する前記反応相の回折ピークが得られる、請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極は、負極活物質として炭素材料を含有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
電極反応物質を吸蔵放出することが可能な正極および負極と、電解質塩および溶媒を含む電解質とを備え、前記正極は、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む、二次電池。
【請求項10】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質層を有し、前記正極活物質層は、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項9記載の二次電池。
【請求項11】
前記正極は、正極活物質粒子被覆膜により覆われた複数の正極活物質粒子を含み、前記正極活物質粒子被覆膜は、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項9記載の二次電池。
【請求項12】
電極反応物質を吸蔵放出することが可能な正極および負極と、電解質塩および溶媒を含む電解質とを備え、前記電解質は、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む、二次電池。
【請求項13】
前記正極は、正極活物質として、下記の式で表される複合酸化物を含有する、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
Lia Cob Nic 1-b-c d-e e
(Mは、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、バリウム(Ba)、タングステン(W)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)およびアンチモン(Sb)のうちの少なくとも1種である。Xは、ハロゲン元素である。0.8<a≦1.2、0≦b≦0.5、0.5≦c≦1.0、1.8≦d≦2.2および0≦e≦1.0である。)
【請求項14】
X線光電子分光法を用いた前記負極の表面分析により、Ba3d5/2に帰属するピークが778eV以上782eV以下の範囲に得られる、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
飛行時間型二次イオン質量分析法を用いた前記負極の表面分析により、正二次イオンとしてBa+ 、BaOH+ 、BaF+ 、BaOLi+ 、BaOHFLi+ 、BaF2 Li+ 、BaOLi2 + 、BaO2 Li3+、BaOHLi2 2+ 、BaLi2 3+ 、BaCO3 Li+ 、BaSO4 Li+ およびBaLi2 PO4+のうちの少なくとも1種のピークが得られる、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記電極反応物質は、リチウムイオンである、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項17】
電極反応物質を吸蔵放出することが可能であると共に、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種からなる被膜を有する、負極。
【請求項18】
電極反応物質を吸蔵放出することが可能であると共に、金属バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む、正極。
【請求項19】
溶媒および電解質塩と、酸化バリウム、水酸化バリウム、ハロゲン化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウムおよび酢酸バリウムのうちの少なくとも1種とを含む、電解質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−23241(P2011−23241A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168098(P2009−168098)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】